入門!知的財産法

2014年04月28日

知的財産法においては、百選を読み込むことはマストである。
知財法の判例解説書もかなり色々あるけど、司法試験との関係ではやはり百選が論点集としても秀逸だし、解説も割と分かりやすい。

とは言え、とくに特許法においては、「司法試験にはおそらく出せない」と思われる判例もかなり載っている。それは例えば理系問題になってしまうもの、法改正によって判例がつくられた当時と状況が変わってしまったもの等である。
こういったものは、ある程度見極めて「適当に流す」ようにしてしまっても良いと思うが…全くゼロからスタートすると、見極めをすることはなかなか難しい。そのため、「スピルナプラテンシスってなんだ…これが分からないと特許法できるようにならないのか…?」などと悩む事になってしまう恐れがある。

そこで、完全初学者向けに、ここである程度試験との関係で「ランク付け」をしてみようと思う。かなり主観によることになってしまうが・・・基本は「B」、問題の作りやすさ、過去問に出た回数等に鑑みてA、Cをつけるようにしておく。
また、論証化が必要な判例については簡単な論証を用意しておく。これを好みの形にカスタマイズしてwordとかにコピー・印刷し百選に貼りつけておくと・・・復習がしやすくなるかもしれない。

・A…繰り返し試験で問われうる、解説も読み込み深く理解しておくべきもの。
・B…知財選択者としては抑えておくべきもの
・C…試験に出るとは考え難い・知識として結論を知っていれば良いもの
・D…試験範囲外(102以降のみ)
・条文…当該判例がどの条文の解釈をしているか。判例タイトル横とかに書いておくと便利。
・~点…ポイント

【1】 C
・2条1項「発明」
・そもそも発明該当性を検討させる問題は出難い。
・数学的課題の解決方法・計算手法が「発明」に当たらないとした判例。

【2】 C
・2条1項「発明」
・同上。試験には出難い。
・人の精神活動それ自体は「発明」ではない。
 発明の本質が精神活動を支援する、又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものである場合は、「発明」にあたる。

【3】 C
・【2】と同旨。「発明」にあたるとした。

【4】 C
・2条1項「発明」
・魚の飼育方法に関する用途発明が「発明」にあたるとした判例。
・用途発明…既知の物質のある未知の属性を発見し、この属性により、当該物質が新たな用途をへの使用に適することを見出した事に基づく発明。(東京後半H13.4.25)
・問題の所在…発明に当たらない「発見」ではないか。
・「用途発明は、当該物の容易には見いだせない未知の属性を発見し、これを一定の用途に使うと言う創作的要素が加えられるから、発明として成立する」(解説・P11右段2段落目冒頭)

【5】 C
・【6】との関係で、29条1項柱書
・発明実施に必ず危険が伴い、危険を回避する事が出来ない場合には「産業的な技術的効果を生ずる程度にも至っていない」として特許を受けられないとした判例。
∵利用できず、産業の発達に貢献しないため特許権付与に値しない
・未完成品として扱われる。

【6】 C
・29条1項柱書
・問題の所在…特許法には未完成品に関する事項について定めた規定は無いと考えられるが、未完成である事を理由に拒絶できるのか。
・完成・未完成の基準を示した点(判旨冒頭)

【7】 B
・2条1項
・2条1項「自然法則を利用した」の意義について示した点
・反復可能性について、成功確率が高い事を要しないとした点
・反復可能性は出願当時にあれば良いとした点

【8】 C
・29条1項柱書
・学部試験の小問としては出し易いが、司法試験ではあまりにもプロパーな問題になってしまうため出しづらいと思われる。
・医療行為の特許性を否定した点
∵人道に反する

【9】 C
・29条1項柱書
・現在の運用と異なる(解説p21右段上)ため、判例として学ぶ意味は殆ど無い

【10】 A
・29条1項1号「公然知られた」
・29条1項1号「公然知られた」の意義について示した点
・論証
特許権は、公開の代償として認められるものであるから、「公然知られた」とは、秘密状態を脱した事を言い、守秘義務を負わない不特定の第三者が発明を知りうる状態にあればこれに当たると考える。

【11】 A
・29条1項2号「公然実施」
・29条1項2号「公然実施」の意義について示した点
・論証
特許権は公開の代償として認められるものであるから、「公然実施」とは、不特定多数の者の前で実施した事により当該発明の内容を知り得る状況となったことを意味する。
 そして、発明の実施品が市場において販売されている場合には、特段の事情の無い限り、当該実施品を分析してその構成ないし組成を知り得る状況となったと言うべきである。
 ⇒最も、本件では組成を知ることは技術的に困難だった。

【12】 A
・29条1項3号「頒布された刊行物」
・「頒布された刊行物」の意義について示した点
・論証
 特許権を公開の代償として認める法の趣旨に鑑みると、「頒布された刊行物」とは、公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書等の情報伝達媒体であって、頒布されたもののみならず、頒布可能な状態におかれたものも含むと考える。

【13】 B+
・29条1項3号
・頒布された刊行物に「記載された発明」と言えるための発明の程度について示した点
・論証
 特許権を公開の代償として認める法の趣旨に鑑みると、「頒布された刊行物に記載された発明」と言うためには、当業者が当該発明を実施する事が出来る程度に、発明の内容が開示されていることが必要である。何故なら、当業者がその発明を実施できなければ、未だ公開の代償を求める意義があるからである。

【14】 C
・特許法30条1項(現2項)
・特許公報掲載が新規性喪失の例外事由に当たらない事を示した判例だが、23年改正により、30条2項カッコ書きにそのことが示されるに至ったので、判例として学ぶ意義はもはや殆ど無い。

【15】 B
・30条1項「意に反して」
・特許を受ける権利の権利者の過失により公開された場合には「意に反して」とは言えないとした点
・「意に反して」の意義につき解説2冒頭
・権利者の過失により公開された場合、「意に反して」に当たらなくとも30条2項「行為に起因して」にあたることになる。1項該当性を検討する実益は、30条3項の手続きが不要になる点

【16】~【19】 C
・29条2項
・進歩性判断をさせる問題が出る可能性は殆ど無い。4つの判例全てが弁護士解説と言うあたりが、進歩性については実務家でなければ扱えない事を示していると言える。教養として斜め読みしておく程度。

【20】 C
・32条「公の秩序…を害する恐れ」
・公序良俗要件の内容について判断した点。司法試験で論文としてきくようなものではない…が、知財検定では割と見かける。

【21】【22】 C
・36条6項1号、36条4項1号
・サポート要件に関する判例。どちらもあてはめが技術的事項になるため、事例問題としては出せない。

【23】【24】 B-
・条文無し
・冒認出願に関する判例。分野的には重要だが、23年改正による立法的解決が計られたため、この判例の処理の仕方を学ぶ意義は薄い(判例は現行法の処理と異なる)。教科書の冒認のところを読む際に、確認しておく程度。

【25】 C
・民法709条
・冒認出願された際の被冒認者の不法行為請求を認めた判例。被冒認者が特許出願・移転請求を出来ない事を前提として、不法行為による救済を図った判例であるため、現在とは状況が異なる。

【26】 B
・条文なし
・特許をうける権利の二重譲渡につき、背信的悪意者排除論をとりいれた点
・判断としては、殆ど悪意者排除論に近い結論になる(二重譲渡を受けた会社が悪意であった事により、不正競争防止法違反等が間に入ってくるため、結局そのまま背信性まで認定される事になる)。

【27】 B-
・条文なし。ただし、26条、パリ条約4条の3など参照
・発明者名誉権に関する判例。地裁裁判例である上、あまりに狭い論点であるため書くことはまずないか。オマケで書く可能性に備え、結論だけ抑えておく程度。

【28】 B
・発明者の認定手法について示した点
・解説1は秀逸

【29】 B
・発明者の認定の基準を2つに分けて検討した点
・地裁裁判例であるし、ここまで基準をあげて緻密に発明者認定をさせる問題は出にくいか。
・解説2はまとめとして便利

【30】【31】 A
・35条1項
・論証
 職務発明の趣旨は、費用や設備等を提供する使用者と、実際に発明をおこなった従業者の利害を調整する事にある。そうだとすると、「従業者」とは、金銭的・物的支援体制があり指揮命令関係にあれば足りる。また、「使用者の業務範囲」は、定款記載の業務に限られず、現に行っている業務や将来行う具体的業務も含むと考えるべきである。更に、「職務」とは、当該従業者の地位、職種、当該発明完成過程への使用者の寄与の程度から、当該従業者が当該発明を完成させる事が一般的に予定無いし期待されていれば足りる。
・【31】では、命令に反していても、結局会社の設備や人員を使っていたのであれば、職務発明に該当するとした。

【32】 B-
・34条3項、4項
・事前の取り決めに従い支払われた額が「相当な対価」に満たない場合34条3項の規定に基づき不足分を請求できるとした点
∵同条の趣旨
・相当対価請求権の消滅時効起算点及び時効期間について

【33】【34】 C
・相当対価の額を算定するような問題は出せないと思われる

【35】 C
・外国の特許を受ける権利について、34条を類推適用できるとした点



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2013年11月20日

入門!司法試験知的財産法(1) 知的財産法への誘い
入門!司法試験知的財産法(2) 知的財産法の種類

Ⅰ.イントロダクション
選択科目は、どれも皆基本7科目どれかの法体系に含まれます。
労働法は民法、環境法は行政法と言ったように。
そして、どの法体系に含まれるかということを理解するのは、当該法を理解し、解釈するのにとても役立ちますから、試験勉強においてもそのことをしっかり意識しておくことが大切になります。


それでは、知的財産法(特に断りのない限り、司法試験科目である著作権法、特許法のことを指すものとします)は基本7科目のどの法体系に含まれるのでしょうか?

それは、やはり民法と言うことができるのです。確かに、特許法の一部等は行政法的な面もありますが、全体を通してみれば、やはり知的財産法は民法の特別法なのです。そして、民法の中でも、「物権編」が故郷ということができるでしょう。

知的財産権は、「知的所有権」とも呼ばれる権利です。それは、知的財産法の世界が、民法における所有権の世界と酷似していることを意味しているのです。


それでは、知的財産法がどうして民法の物権編を故郷にしていると言えるのか、そしてそのことが司法試験の問題を解く上でどのように役に立つのかを見ていくこととしましょう。

Ⅱ、民法との関係

1、民法との関係を考えるために、まず、民法の物権の基本部分を確認してみましょう。

物権(所有権)とは、物に対する直接支配権です。
これは、「人」が「物」について持っている「権利」です。

物権

そして、物権が「物の直接支配権」であることから論理必然的に、「排他性」という性質が導かれます。
何故なら、「物」はこの世に一つしか存在しない以上、「私が直接それを支配する」為には、「他の人が使っているときには使うなと言える(=排他性を有する)」のでなければならないからです。

例えば、あなたが車の所有権を持っているとしましょう。
あなたは、車を直接、全面的に支配しています。乗りたい時はいつでも乗れるはずです。
しかし、他の人が勝手に乗って使っているときあなたが何も言えないとしたら、あなたは車に乗れません。これでは、直接支配していることになりません。そのため、「直接支配している」ということは、他人との関係では「排他性を有している」と言えなければおかしいのです。


さて、若干話が前後してしまいましたが、物権の客体となる「物」とはなんだったでしょうか?

それは、民法85条に規定があります。

民法85条 この法律において、「物」とは有体物を言う。

有体物である以上、「それ」は世界に一つしかありえず、一つしかないからこそ、直接性の表裏としての排他性が認められるのです。

2、今度は、知的財産法に目を向けてみましょう。

知的財産とは、著作権法で言えば「表現」、特許法で言えば「発明」のことです。
言うまでもなく、これらは、民法85条に言う「物」には当たりませんから、物権それ自体は認められるはずがありません。

もっとも、知的財産法は、「人」が「知的財産」について「権利」を持つことを定めています。
この関係は、「人」―「物権」→「物」という関係によく似ています

物権

そして、単に関係性が似ているだけではなく、な、なんと驚くべきことに、「知的財産法」は、「政策的に」「無理やり」知的財産権に排他性を付与したのです。

物権における排他性は、直接性という物権の本質から論理必然的に導かれるものでした(だからこそ、条文すらおく必要がありませんでした)。
しかし、知的財産権は、直接性から論理必然的に排他性は導かれません。

なぜでしょうか?考えてみましょう。


そう、知的財産は、「他の人が使っていても使える」からです。

例えば、私が「フジツボさん」というキャラクターを描いたとしましょう。私は、この絵の著作権を取得します。ここで、Aさんがフジツボさんの絵を真似して描いて、絵本を出しました。

・・・でも、別に、私はそれによってフジツボさんが書けなくなるわけではありません。
つまり、第三者が使ったとしても、私の絵に対する直接支配は揺らいでいないと言えるのです。

こう考えると、当然には排他性は認められ無いのです。


そこで、法律が政策的に排他性を認めることになりました(どういった政策的考慮があるのかは、次回お話することになるでしょう。)。


3、まとめると?
つまり、知的財産法は、民法85条の「物」には当たらない、「表現」とか「発明」だとかいった無体物に、政策的に排他性を付与することにより、あたかも知的財産権が物権(所有権)であるかのように取り扱うことができるようにした法律だということができるのです。

Ⅱ、で、これがどう役に立つのか?

いよいよ本題に入りましょう。
ここで述べることは、これから知的財産法を学習していく上でとても大事なことです。この視点なく知的財産法を勉強するのはあまりに非効率だと思いますが、案外どの本にも載っていないので、ここでしっかり把握しておきましょう。

抽象的な説明をしてもなんなので、いきなり具体的事例を見てもらいましょう。


民法物権の最も基本的な問題

A所有の土地甲に、B所有の建物が建っている。AはBにどのような請求をすることができるか。

この場合、AはBに対して「勝手に甲土地を使うな」と要求(法律構成は、言うまでもなく所有権に基づく妨害排除請求ですね)することになります。この請求が認められるように、Aは

ア、Aの甲土地所有(自己が甲の権利者であること)
イ、Bの甲土地占有(侵害行為)

を主張することになります。
これに対して、Bは、例えば借地権(占有権原の抗弁)等を主張していくことになります。


・著作権法の最も基本的な問題

Aの絵画の著作物甲を、Bがコピーしている。AはBにどのような請求ができるか。

この場合、AはBに対して「勝手に甲をコピーするな」と要求することになります。の請求が認められるように、Aは、

あ、甲が著作物であること
い、自己が甲の権利者であること
う、侵害行為

を主張していくことになります。
これに対して、Bは例えば利用許諾があるといった抗弁を主張していくことになります。

ここでの「い、う」は、民法における物権的請求の「ア、イ」をスライドさせたものです。
「あ」は民法の物権にはありません。何故なら、「この土地は民法85条における「物」かどうか」なんて検討するまでもないことだからです。他方、著作物性は結構微妙な判断が必要な場合もあるので、請求原因となっているわけです。



これを見てわかるとおり、問題の作りが民法物権と知的財産法はそっくりなのです。


民法と知的財産法の問題をより抽象化すると、以下のようになります。

「私」は、「これ」に「物権」を持っている。誰かが「物権」を侵害した。侵害行為をやめさせたい。金を払ってもらいたい。

知的財産法の問題を簡略化すると、以下のようになります。

「私」は「これ」に「知的財産権」を持っている。誰かが「知的財産権」を侵害した。侵害行為をやめさせたい。金を払ってもらいたい。


こういうわけなので、知的財産法の答案は、割と型が決まっています。
請求原因として、特許法であれば「発明である」「権利者である」「侵害行為がある」ことを主張し、著作権法であれば「著作物である」「権利者である」「侵害行為がある」ことを主張する。

それに対する否認として「発明じゃない」「権利者じゃない」「侵害してない」というのがあり、抗弁としては「利用許諾がある」「権利は時効消滅した」といったものが出てくる。

そこに民法で言う「共有」のような捻り(共同発明・共同著作)をしてきたりする。



はい、大事なので最後にもう一度はっきり言いましょう。
知的財産法は、民法の物権編に酷似しています。


言われてみればなぁんだという簡単な話かもしれません。
しかし、これを、勉強開始のときからわかって居る人はそれほど多くはありません。
この視点を持った上で教科書を読んでいくことが、効率の良い試験勉強なのです。


次回は、知的財産法の目的…の前に、知的財産法の教材を見ていきましょうか。


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2013年11月08日

入門!司法試験知的財産法(1)

前回は、「そもそも知的財産法って何?」「何を対象とした法律なの?」という点について、ざっと外観したつもりです。今回は、その中身をもうすこし細かく見ていきましょう。


1、知的財産権の種類
一口に「知的財産権」といっても、実は様々な種類があります。

なぜでしょうか?


それは、権利の対象となる「知的財産」に様々な種類があるからです。
権利の対象がことなれば、権利の対象の性質も変わる。
権利の対象の性質が変われば、必要な法規制も変わる。
必要な法規制が変わってくるのなら、違う法律を作る必要があるというわけです。

さて、では知的財産にはどんな種類があったでしょうか。
もう一度、知的財産基本法における知的財産の定義を確認してみましょう。

========================
第二条  この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
=======================

Ⅰ発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物、その他人間の創造的活動により生み出されるもの、
Ⅱ商標、商号、その他事業活動に用いられる商品または役務を表示するもの、
Ⅲ営業秘密およびそのほかの事業活動に有用な技術または営業上の情報

知的財産には、これだけの種類があります。

そして、各知的財産ごとに知的財産権を観念することになり、そのための法律が作られることになったのです。この「知的財産」「知的財産権」「法律」を整理すると、以下の表のようになります。

知的財産

この表の①②③④⑤⑥は、Ⅰの類型にあたり、講学上は「創作法」と呼ばれることがあります。⑦⑧⑨は基本的にⅡの類型にあたり、講学上は「標識法」と呼ばれますが、Ⅲの類型と被る部分があります。⑩はⅢの類型にあたります。

また、特許庁は自身が主務官庁となる①②③⑦を「工業所有権法(industrial property law)」と定めてきましたが、工業中心ではなくなってきた現代社会においては種苗法や著作権法の一部、不正競争法がカバーする分野もindustrial propertyに含まれるとして、工業所有権法ではなく産業財産権法と呼ばれるようになってきました。

こういった類型は、他にも着目する点によって色々ありますが、それ自体に特に深い意味があるわけではありません。本にその言葉が出てきた時に、意味がわかるぐらいにしておけば十分でしょう。

2、司法試験の範囲
さて、このように、いくつもの知的財産の種類に応じて知的財産法があるわけですから、「知的財産法」という分野はそれなりに広いです。しかし、「司法試験科目としての知的財産法」の分野は、もっとずっと狭いものとなっています。

(法務省:
http://www.moj.go.jp/content/000002104.pdf)
=========================

「知的財産法においては,特許法と著作権法の2法を中心として出題することとし,実用新案法,意匠法,商標法,不正競争防止法等については,それ自体の知識や法律上の論点を問うことはしない。」

=========================

司法試験における知的財産法の範囲は,特許法,著作権法に絞られるということになります。
さらに、その中でも

==========================

「なお,特許法については,「総則」(目的,定義,補正関係),「特許及び特許出願」(特許の要件,発明の新規性の喪失の例外,特許を受ける権利,職務発明,特許出願,共同出願,先願),「審査」(拒絶の査定,拒絶理由の通知),「出願公開」(出願公開の効果等),「特許権」(特許権の効力,特許権の効力が及ばない範囲,特許発明の技術的範囲,他人の特許発明等との関係,共有に係る特許権,専用実施権,通常実施権,先使用による通常実施権,登録の効果),「権利侵害」,「審判」(拒絶査定不服審判,特許無効審判,訂正審判,共同審判,訂正の請求関係,職権による審理,審決の効力,訴訟との関係)及び「訴訟」を中心として出題する。また,著作権法については,「総則」(目的,定義),「著作者の権利」(「著作物」,「著作者」,「権利の内容」,「著作者人格権の一身専属性等」,「著作権の譲渡及び消滅」,「権利の行使」)及び「権利侵害」を中心として出題する。」

===========================

とされており、ここでは、著作権法における著作者隣接権は明確に外されています。
まぁ、「中心に出題する」としか書いてないので、「出そうと思えば出せる」ようになっているのがイヤラシイところですが、今のところ一度も出題されてはいません。

また、「特許出願手続」という分野は、明確には外されていませんが、過去一度も出題されていません。弁理士試験や、知的財産管理技能士資格試験では出願手続はむしろメイン分野の一つですが、司法試験論文式では手続的なことは聞きづらいのかも知れません。したがって手続をおさえるのに力を割く必要はあまり無いと考えてよいと思われます。
手続といっても、例えば民事訴訟法は(仮に出題されなかったとしても)実務で使うため勉強しておくべきですが、特許出願は、実務上普通は弁理士がやるものであって弁護士が出願手続をするということはあまりありません。ですから、(もちろん勉強することは良いことですが)、試験に出ない以上あまり力を入れなくても良いということができるでしょう。



こんかいは、知的財産法のカバーする範囲を概括しました。
次回はいよいよ、司法試験科目である特許法、著作権法の世界に入っていきましょう。

入門!司法試験知的財産法(3) 民法との関係


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2013年10月28日

「大真面目にふざける」と言うのが、俺のボケスタイルだと思っている。

 ◆        ◆          ◆


1、知的財産法への誘い
知的財産法は、司法試験における選択科目の一つです。
平成25年司法試験における知的財産法選択者は12.4%、8科目中3番目の人気科目になっています。

知的財産法は、選択科目の中では租税法に並んで身近なものです。

言うまでもないことですが、私たちの身の回りは知的財産で溢れています。
朝、JRという「商標」のついた電車に乗り、電車の中で「特許」の塊であるスマートフォンを弄り、自習室につけば「著作物」である神田先生の会社法を開く。今や私たちの生活は知的財産抜きでは語れないのです。

ビジネスの世界では、より知的財産の重要性が強調されていることも、皆さんならご存知でしょう。

今や会社にとって最も重要な財産は不動産や工業用機械ではなく、知的財産かもしれません。
特許法における「職務発明」が争点となった青色発光ダイオード訴訟は、200億円の請求認容という、国内最高クラスの高額訴訟となりました。
アップルVSサムスンの特許戦争で、世界中の優秀なパテントローヤーの奪い合いが起こったことはご存知でしょうか。
「クールジャパン」の標語の下、様々なコンテンツが海外展開されていることも、良くニュースで耳にします。
TPP交渉では、日本が知的財産権保護を強化しようと動いています。

「ムダヅモ無き改革」(大和田秀樹,竹書房)に出てくる小泉純一郎は言いました。

=================
「ダイゾーよ
 小さくて資源が無い 我が国が
 大国と 対等にやり合うにはこれしかない
 力に対抗する唯一の手段 それが・・・


 技術立国 ニッポン!」
=================

実際、2001年の小泉政権下時代、日本は「知的財産立国」を掲げ、知的財産権保護の強化に乗り出したのでした。もともと、加工貿易で外貨を稼いでいた日本は「技術」が強みの国でした(日本が有する国際特許数は世界2位、世界の国際特許数の約2割を占めています)。

そして今後は「物」が売れなくなっていく時代、知的財産権の重要性はますます高まっていくことでしょう。知的財産法は、激アツの、まだまだ発展途中の法分野なのです。

2、知的財産とは何か、知的財産法とは何か、知的財産権とは何か。

「知的財産法」という法典は存在しません。
「知的財産法」は、知的財産に関する法の集合体をそう呼んでいるにすぎません。

この手の話は、皆さんが学ばれている法律でもあります。

そう、「行政法」で出てくる話です。
「行政法」という法典は存在しません。それ故、「行政とはなにか」という、大事なのかもしれないけど法律解釈にはまず役に立たない議論が出てきていました。

知的財産法が対象とする「知的財産」については、「知的財産基本法」にて定義されています。

========================
第二条  この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
=======================

「人間の創造的活動により生み出されるもの」
「商品または役務を表示するもの」
「情報」

これらが、「知的財産」ということになります。
この定義は答案上に書くとか解釈の指針になるとかそういうことはまずありませんが、知的財産法を学ぶ者であればマナーとして心にとどめておいて良いでしょう。

「知的財産法」は、この「知的財産」にまつわる権利関係を規律する法なのです。

そして、この「知的財産にまつわる権利」=知的財産権についても、同条2項に規定されています。

=======================

 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

========================

知的財産基本法の2条1項に言う「知的財産」に、2条2項の「知的財産権」が及ぶ。
法の建てつけは、そのようになっています。

でも、これだけでは結局何を言っているのか良く分からないかもしれません。もう少し詳しい話は、次回以降見ていくことにしましょう。

⇒次回
入門!司法試験知的財産法(2) -知的財産権の種類、司法試験の試験範囲

  ◆         ◆       ◆


何をやって居るんだ俺は



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