kanbe1000

ヤッサン一座忍法帳

27 1月

第三部 其の八 兵馬俑の襲来の巻

そのころ京都府南丹市郊外の長老ヶ岳へ向かった第二隊は、摩耶志保を隊長として、菅野佐助、チャカ丸、ははうえ、はじまり、ダッシュ、フータン、幸念等が和知の薬師神社付近から長老ヶ岳へ向かう計画が立てられていた。

長老ヶ岳の裾野に着くと同時に、前方の地中からいきなり弓矢や槍、鉾を持った兵馬俑が10体ほど現れた。目は血走り恐ろしい形相で摩耶志保達を襲撃してきた。摩耶志保は、隊から離れ地を蹴って10メートルほどの高さまで飛び上がったと思うと1メートル65センチの棒をビュンとしならせ一直線に兵馬俑の中に突入していった。棒を脇に抱えビューンと横に払うと兵馬俑の胴あたりを捉えあっという間に3体が崩れ落ちて土と化した。

摩耶志保の形相は鬼神と化していた。大きく振りかざし斜め上からビュンとしならせ、振り下ろされた棒は1体の肩先に命中しその場に崩れ落ちてこれも土と化した。次に棒の先を握りブルンブルンとまわしたかと思うと、その遠心力の勢いのまま棒を投げた。回転しながらビュンビュンと音を立てて飛んでいった先にいた兵馬俑2体は、その場から逃げることも出来ず立て続けに崩れ落ちやがて土と化した。摩耶志保は、地面を蹴り、まるで計算していたかのように投げた棒のそばに着地しそのまま棒を握り、その返す力で一体の足を払い、続いて肩先あたりにとどめを刺すとその場に跡形をとどめないぐらいに崩れ落ちた。摩耶志保は、戦いとなると全く容赦しなかった。

次に棒を地面に突き立てるとその棒を支えにして一体を蹴り倒し、もう一体を肘打ちで仕留めた。退却をはじめた残り一体に対して棒を槍投げのような姿勢で投げ出すと棒は放物線を描きながら兵馬俑の背中を捉え、背中を貫かれその場で崩れ落ちた。

たかだか1分程度の出来事だった。

改めて摩耶志保の強さとその恐ろしさを隊員一同が感じ取った。

はじまりやフータンは、摩耶志保が敵でなくてよかったと胸をなぜおろした。

長老ヶ岳の裾野の奥まったところにその一部始終をニタニタと薄笑いを浮かべる人馬の影があった。馬の手綱をひきながら静かに反転し長老ヶ岳の森の中へと消えていった。チャカ丸等が一体何者かと騒いでいる中、この隊の中では一番博識のある幸念が、あの風貌、出で立ちは項羽であると断言した。

今の出来事を見ても一切動じず、薄笑いを浮かべていた姿を見て背筋が寒くなるのを隊員達は感じていた。

26 1月

第三部 其の七 危うしはるるの巻

一方はるるは、ぼん丸より更に山中深く侵入していた。キーキーという鳥か獣かわからない鳴き声が先ほどから山中の木々にこだましていた。

その鳴き声はまるではるるの動きに合わせているかのような間合いだった。

すると、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッという音と同時に長さ10センチほどの長針がはるるのすぐそばの木々に打ち込まれていった。はるるは、地面を蹴って上空の木の枝に身を隠した。さらにヒュッ、ヒュッ、ヒュッと長針がはるるを追いかけるように襲ってきた。はるるは、懐の小太刀を抜くと次々と打ち込まれてくる長針をものの見事に撃ち落としていった。その時だった、ぼん丸より撤退の合図が送られてきた。

一瞬合図を知らせるレーダーに見入ったときだった。はるるの赤備えのスーツのふくらはぎあたりを長針が貫いた。この赤備えのスーツは、至近距離でなければ拳銃の弾さえ弾くほどの強度を持っていたが、打ち込まれた長針は赤備えのスーツを貫いていた。幸い、ほんの紙一重で身体には当たっていなかったために命拾いをした。はるるは瞬時に煙玉を空中で破裂させると同時に背中の鞄から5センチ角厚み1センチ程のものを取り出し、中央のボタンを押した。するとあっという間に2メートル四方に広がりそこにははるるが映し出されていた。次の瞬間ヒュッ、ヒュッ、ヒュッという音がしたと思うとはるるがハリネズミのようになって下に落下していった。

落下していったはるるは、能勢忍軍が逃げる時に使う陽炎の術であった。

以前、御所でグリエモンが使ったが、あれより改良が重ねられて10分の1ぐらいの大きさ、重さも5分の1、EL技術も進み更に高性能になっていた。

はるるは、ふくらはぎ付近に打ち込まれた長針を引っこ抜き木々の間を高速で抜けていった。危機一髪だった。ぼん丸は、一足先に隊に戻り団丸に報告をしていた。そこへ少し遅れてはるるも戻ってきた。

ぼん丸「これより先、山中は敵が待ち伏せています。うかつには先に進めません。」

はるる「私を狙った長針です。神経を麻痺させる薬が塗ってあります。敵は、私たちを生け捕りにするつもりだったのでは…」と言って、ふくらはぎ近くを貫通した長針を団丸に手渡した。

団丸「まあ、二人とも無事でよかったよ。相手はおっそろしいからね。少し時間をおいて次は僕が偵察にいくよ。」

団丸はそういうとスペースジェットの中でカップヌードルにお湯を注いで一気に3つを平らげると椅子にもたれ、いびきをかいて寝だした。

度胸が据わっているのか、無謀なのかよく判らないが30分ほどそのままにしておこうという意見でまとまった。

はるるは、先ほど穴のあいた赤備えのスーツを予備の赤備えのスーツに着替えた。

25 1月

第三部 其の六 ぼん丸、はるるの斥候の巻

青森県むつ市郊外の朝比奈岳上空にスペースジェットは到達した。団丸を隊長とする第一隊は、目的地より少し離れた山の裾野にスペースジェットを着陸させた。

団丸をはじめ、あおくま、グリエモン、らっきょむ、紋次郎、ぼん丸、はるる等は、作戦通り各自武器を持ち朝比奈岳の決められた地点へと向かっていった。朝比奈岳より500メートル手前の岩場がその地点となっていた。

団丸は、ぼん丸とはるるを斥候として先に朝比奈岳の山中に向かわせた。朝比奈岳山中は昼の12時というのにどんよりとした霧がかかり山中全体に霊気が漂っていた。ぼん丸は右側の谷沿いに、はるるは左側の裾野より山中に入っていった。ぼん丸とはるるは腕に取りつけた小型高性能レーダーを頼りに徐々に山中の奥深く進んで行った。

ぼん丸の目の前は霧のために3メートル先が見えなかった。すると前方にボーとした青白い光の玉がゆらゆらと揺れてこちらへ迫ってきたかと思うと鋭い槍のようなものが赤備えのスーツをかすった。ぼん丸は一瞬の出来事に反射しその槍から身を交わしていた。次の手、そして次の手というように次から次へと槍を繰り出してきた。ぼん丸は、その槍をよけながら自分の武器である釵(さい)を取り出し構えた。

ぼん丸は、霧の中より次々と繰り出される槍の筋を釵でカキンカキンとかわしながら徐々に体勢を立て直していった。

ぼん丸は、1ヶ月前摩耶志保と手合わせをして、軽くあしらわれたことからこの1ヶ月間死に物狂いで訓練に励んだ。その甲斐があって、実力は大幅に上昇していた。

ぼん丸は、霧の中の見えない敵に対して言葉をかけた。

「左右に回転させながらしなるような槍さばきは中国南派槍術と見た。名を名乗れ。」

「クワッ。いいだろう名前を教えてやろう、ぼん丸。わしは閼手魔(あずま)だ。わしの槍を受けきれるか

敵は、ぼん丸の名前を知っていた。

霧の中の閼手魔からは、人の気配が感じられなかった。生きているのか死んでいるのか全く見分けがつかなかった。

ぼん丸は、少しずつではあるがぼんやりと相手の姿が見えるようになってきていた。その姿は人間とはおよそかけ離れたばけもののように思えた。

ぼん丸は、閼手魔の急襲に遭いその鋭い槍先を避けることに必死だったが、ようやく冷静さを取り戻し我に返った。自分は斥候として山中に入っていることを思い出した。閼手魔から繰り出された槍を大きく弾くと地面を強く蹴ると10メートルの高さまで飛び上がり、木の枝に足をかけると木から木へと木伝いに山中から抜け出すことに成功した。その中ではるるに撤退するよう信号を送った。

9 1月

第三部 其の五 決戦間際の巻

いよいよゾーナとの最終決戦を明日に迎えた能勢忍軍たちは、最終の作戦会議に臨んでいた。

SHK諜報部員からもたらされたゾーナ側の情報を基に最終の作戦が組み立てられ、それに相応した陣容が発表された。

今回の作戦総責任者は、SHKの牧野長官が執ることになった。実戦の総帥として師匠こと16代目霧隠才吉、右参謀として鬼夢羅婆、左参謀として官兵衛、第一隊隊長が団丸、第二隊隊長が摩耶志保、第三隊隊長はてるさん遊撃隊隊長にドビンゴがそれぞれ任ぜられた。第一隊は、副隊長にあおくま、メンバーにグリエモン、らっきょむ、紋次郎、ぼん丸、はるる。第二隊は、副隊長に菅野佐助、メンバーにチャカ丸、ははうえ、はじまり、ダッシュ、フータン、幸念。第三隊は副隊長にかこ丸、メンバーとしてチッチ、若丸、せんべえ、みよよ、ひでんか、ノンデルセン。遊撃隊は、副隊長にわら王、メンバーとして京丸、じんなり、らんたま、サルサン等がそれぞれ選ばれた。

また、さらに改良されパワーアップしたアンドロイド犬プリ吉は、作戦本部の連絡係として黄金バットの円盤内で待機することになった。

第一隊は、青森県むつ市郊外の朝比奈岳へ、第二隊は、京都府南丹市郊外の長老ヶ岳へ、第三隊は、高知県安芸市の烏帽子ヶ森へと向かうことになった。

白々と夜が明け、各自準備を済ませると円盤のホールに全員が集まった。

全員には、蓬莱の魔女より贈られてきた、護身と魔除け効果のあるディディア(ムーンストーンのブレスレット)が配られた。このブレスレットは、ゾーナ怪人マスターの一人白虎鬼の強力な霊力を封じ込めるほどのパワーを持っていた。

全員がそのディオディアを腕に巻つけるとホールに座り込んで座禅を組み、各自がそれぞれ思い思いに印を結び出した。

臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前(リン、ピョウ、トウ、シャ、カイ、ジン、レツ、ザイ、ゼン)という声がホールに響き渡った。印を切るということは精神を統一すると共に邪霊などから自分の身を守るためのまじないでもある。

臨は、左右の手を組んで、人差し指を立てて合わせ、兵は、左右の手を組み、人差し指を立てながら、中指をからめる。

闘は、互いの中指と人差し指をからめて伏せる、親指と薬指と小指を立て合わせ、者は、互いの中指により薬指をからめ、人差し指を立てて合わせる。

皆は、左右の指をそれぞれ外側に組み、右手の親指を外側に向け、陣は、互いの指を内に組み合わし入れ、左側の親指を内側に入れる。

列は、左の四指を握ると共に、親指を立て、右手で握りしめ、在は、左右の親指・人差し指の先をくっつけて、余った四指は開く。前は、左側の手を握って、右の手を上へ寄せて添わせる。

そうするうちに全員を乗せた黄金バットの円盤が、地球の日本上空に到達した。第一隊、第二隊、第三隊、遊撃隊がそれぞれ4台のSHKのスペースジェットに乗船し、それぞれの目的地へと向かった。

 

8 1月

お詫び

本来なら毎日一話の予定で「ヤッサン一座忍法帳」を書いてきましたが、年末より仕事が重なり思うように進んでいないのが現状です。「ヤッサン一座忍法帳」は、いよいよクライマックスです。 できる限り早く書き進めたいと思っていますので今後とも宜しくお願いします。
8 1月

第三部 その四 玄武呪の巻

高知県安芸市の烏帽子ヶ森に降り立った玄武呪は、山間の中で更地を探し、さっそくその更地の上に結界を結んだ。その結界を塩で清め、その中に護摩を炊くための台座を組み、その台座の中に火を投じた。玄武呪は、作務衣の懐よりサンスクリット文字で綴られた長さ30センチほどの護摩木を取出し、火中に投げ込んだ。数珠を握り大きく息を吸い込むと、一気に経を読み出した。その経を読む声はおどろおどろしく低い声で山中に鈍く響き渡った。すると火中に投げ込まれた護摩木は、ボッという音と共に朱色に染まり轟々と燃え出した。そして同時に結界の中に人とも獣とも見分けがつかない化け物の影が現れた。玄武呪は、次の護摩木を作務衣から取り出し、同様に投げ込むと次は真っ青な色に轟々と燃え出した。先に現れた影と同じように人とも獣とも見分けのつかない化け物の影が現れた。

同じように、護摩を火中に投げ込むと次は、紫色に燃え、そして次は黄色、そして緑色というふうに計5体の化け物の影が結界の中に現れた。

影たちは、それぞれが薄ら笑いを浮かべ奇声を漏らしながら、徐々にその気色の悪い姿を現しはじめた。

彼らは、玄武呪の配下の土鬼、水鬼、火鬼、風鬼、雷鬼の5鬼であった。玄武呪は、彼らの姿を確認すると目を閉じて呪文を唱えたかと思うと、地響きするような声で喝と言い放つと影達は一瞬に消えた。

玄武呪は、インドの奥地で古来より続くインド密教から派生したカルト教団の教祖の子として生まれた。少年期より頭脳明晰でカリスマ性のあった玄武呪は、父にかわいがられ、3人の兄を差し置き若き教祖として跡を継いだ。しかし、兄達は玄武呪だけがかわいがられることに嫉妬した。3人は手を組み若き教祖に対し、あらぬ罪を着せ教祖の地位を剥奪した。命だけは助けられたが日の当たらない湿気が充満した洞窟の地下牢に閉じ込められた。玄武呪は、閉じ込められた洞窟の中で、壁に隠されていた密教の裏奥義書を見つけた。その裏奥義書は、洞窟内の湿気のせいでうじゃうじゃとした蛭や蠢虫たちの住処となっていた。経文は全部で500巻余あったがその経文に魅入られたように寝食を忘れついに読破した。しかし、その経文を読み終えた玄武呪はその経文の持つ強力な極魔パワーにより人心を失い悪魔へと成り果てていた。その裏奥義を会得した玄武呪は、洞窟を脱した。その後世界中を廻り、あらゆる妖術、魔術、幻術、邪術集団等を勢力下におさめ冷酷無比な教団をつくりあげた。ゾーナとは当初敵対したが、ゾーナの強大なパワーに屈しその後配下となり怪人4マスターの一人となった。

4 1月

第三部 其の三 邪朱雀の巻②

孫武(そんぶ)は、紀元前5世紀初期に柏挙の戦いで三万の兵をもって二十万の楚軍を破り、その名を轟かせた。孫呉の兵法で知られた中国屈指の戦略家であったが、その後歴史の世界から姿を消した。

呉起(ごき)は戦国時代に、秦等と戦い圧倒し、その名が知られるようになったが、最後は呉起のやり方に反対する勢力により誅殺された。

楽毅(がっき)は、戦国時代の燕国の将軍で燕の昭王を助け、斉を滅亡寸前まで追い込む活躍をみせたが、終盤は確執のために追われる身となった。

張飛(ちょうひ)は、後漢末期に劉備に使え、関羽と共に義兄弟となり、劉備の入蜀後、五虎大将軍となる。その後も多大な活躍をみせたが関羽の弔い合戦のため呉へ向かう途中部下に殺害された。

呂布(りょふ)は、後漢末期の最強の将軍で弓術と馬術にすぐれ、抜群の腕力を有していたが主を2度に渡り裏切り、最後は曹操により囚われ処刑される。

士会(しかい)は、中国春秋時代、晋の上軍の将として活躍した。中将に昇格した士会の手腕をおそれて、盗賊がみな秦に逃亡したという逸話がある。

王翦(おうせん)は、王翦は、秦の始皇帝に仕えた名将で、秦の天下統一に大きく貢献した。気候や地形、風土等あらゆる条件下においても勝利する常勝将軍であった。

白起(はくき)は、中国戦国時代末期の秦に仕えた最強将軍であったが同時に、残忍で傲慢であった。そして余りの強さを危惧した秦により剣を渡され、自刎して果てた。

樗里疾(ちょりしつ)は、戦国時代中期に秦の知恵袋といわれ、戦闘能力より知将として知られ、秦の中興に軍事、政治面で活躍した。

これら10人の将軍達はいずれも一騎当千の強さを持つと共に戦闘に対する知略も備えていた。

しかし、それぞれが一時代のヒーローとして活躍したものの、彼らは生涯の中でまだまだやり残したことがあった。また、彼らは衰えていく肉体に自身が失望し、血たぎる若き肉体を欲する欲望も持ちあわせていた。そしてそれらの強い念が増幅されDNAに書き込まれていた。彼らがアンドロイドとして再生した時にはDNAに書き込まれた通り若き時代の肉体を取り戻していた。しかし当時は、冷静沈着だった知将もアンドロイドとなった今は、理性をなくし、血に飢えた獣のような形相と化し、殺戮のみを楽しむ獣鬼に成り果てていた。

邪朱雀は、これら凶暴化したアンドロイドの将軍達を制しながら来るべき能勢忍群達との決戦の圧倒的勝利を確信し、ほくそ笑んだ。

3 1月

第三部 其の二 邪朱雀の巻①

一方、京都府南丹市郊外の長老ヶ岳に降り立った邪朱雀は、自分のつくり出したアンドロイド軍を集結させていた。

邪朱雀はこれまで、京都の地下湖の海竜ティロサウルス、ポセイドン、トリトン等のアンドロイドを造り出していた。邪朱雀のアンドロイド技術は、世界最先端のアンドロイド技術が稚拙に思えるほど進化していた。そして更に、邪朱雀の持つ高い技術力にゾーナの持つ莫大な資金力が結びつき今世紀では不可能と言われたアンドロイドを次々と生み出していった。もともと邪朱雀は、米国の大学でロボット工学のマスターを取得し国防省に招聘された。国防省内で戦闘用アンドロイド開発の天才博士として名が知れ渡るとともに、アンドロイド開発の責任者として活躍していた。しかし、国防省の戦闘用アンドロイド開発中にプログラミング上のバグにより戦闘用アンドロイドが暴走し基地を壊滅状態にしてしまった。その責任を問われたことに腹を立て、それまで培った戦闘用アンドロイドのデータをすべて破棄した上、設備を破壊して国防省を去った。この件で逆恨みをした邪朱雀は、国防省への報復のためにゾーナの傘下に入り世界征服のためのアンドロイド開発に従事していた。

その邪朱雀の造ったアンドロイドが長老ヶ岳山中の林の中から次々と姿を現した。

まず、最初に現れたのは兵馬俑を再現した軍隊だった。およそ200体のアンドロイドの兵馬俑が弓・矢・槍等の武器を携えて林の闇の中から姿を現した。

そしてその後に現れたのは、それぞれ馬にまたがった、項羽(こうう)、韓信(かんじん)、孫武、呉起、楽毅、張飛、呂布(りょふ)、士会、王翦、白起、樗里疾(ちょりしつ)という中国歴代の最強の将軍達を模写したアンドロイドだった。

邪朱雀は、秦の始皇帝の墓に埋蔵されていた兵馬俑と中国史上最強の将軍をモデルとしてアンドロイドをつくっていた。兵馬俑も将軍も普通の人間の1.5倍ほど大きく、その精悍な面構えの中にも冷酷さを秘めていた。

邪朱雀は、アンドロイド海竜ティロサウルスを進化させ、ポセイドン、トリトンを造った。そして、更に研究し進化させたのがこの兵馬俑と10人の将軍達だった。

これらのアンドロイドは、AI機能を更に高めるとともに、残された髪の毛や衣服からDNAを抽出し、それを培養してアンドロイドに組み込むことに成功した。

それによりアンドロイド自体がそれぞれ性格を持つと共に判断力が向上していた。

項羽は楚の国の大将として、漢の劉邦と闘った。百戦中九十九勝する桁違いの強さを持ちながら、最後の一戦に負け自刎してしまった。負けたというより騙し討ちにあったようなものだった。まともに戦っていたら項羽に軍配が上がっていたに違いなかった。

韓信は、漢の劉邦の配下として最強の楚の項羽を苦しめる大活躍をした。漢が天下を取った一番の功労者ながら、その軍事能力を危惧した漢の首脳が言いがかりをつけて粛正してしまった。

(続きは次号)

2 1月

第三部 其の一 魔青龍の巻

ゾーナは、修理の終わった円盤を地球に向けて発進した。ゾーナが宇宙から地球に到達するまで半日も掛からなかった。

地球に戻ったゾーナは、能勢忍軍や黄金バットを迎え撃つため、ゾーナ怪人4マスターの3人をそれぞれの地に就かせた。魔青龍を青森県むつ市郊外の朝比奈岳へ、邪朱雀を京都府南丹市郊外の長老ヶ岳へ、玄武呪を高知県安芸市の烏帽子ヶ森の地へと。

ゾーナが最終決戦の場所として3ヶ所の山間を選んだのには理由があった。

ゾーナは、怪人4マスターの能力を最大限に活かすために、霊力の集積地である3ヶ所を選んだのだった。

むつ市郊外の朝比奈岳に降り立った魔青龍は、さっそく一族を集結させた。

魔青龍は、中国で生まれた。が、すぐに河南省嵩山少林寺の門前に捨てられた。魔青龍は嵩山少林寺に拾われて、幼少期から青年期までこの嵩山少林寺で過ごした。魔青龍には、持って生まれた武術の才能があった。そしてその才能に加え、日々朝早くから夜遅くまで鍛錬を繰り返し、嵩山少林寺でめきめきと頭角を現した。嵩山少林寺では一二を争うほどの達人となり、一目を置かれるようになっていった。しかし、魔青龍はそれに飽き足らず、更に強さを求めていった。その頃、巷で流行した強さのみを追求する邪悪教に魅せられやがてその宗教に傾倒していった。そのために性格は一変した。嵩山少林寺では、乱暴狼藉の限りを繰り返したために、ついに嵩山少林寺を追われることになった。嵩山少林寺を追われた魔青龍は、中国・モンゴル・インド、中近東をはじめ世界中を武者修行した。少林寺拳法をはじめムエタイ、サバット、サンボ、テコンドー、カポエラ、その他の武術を習得するために道場荒らしを繰り返した。千回闘って一度も負けることなく千回勝利して、その力の差を見せつけた。やがて自ら裏少林寺拳の開祖と名乗った。しかし、容赦なく対戦相手を倒すことで世間から恐れられ、誰も魔青龍には近づかなくなった。

魔青龍は、邪悪教に魂を売ることで強靭な肉体と精神力を手に入れていた。魔青龍は、人間でありながら霊界の魑魅魍魎の輩と一族の契りを結ぶとともに自分自身も魑魅魍魎に身を落としていた。

朝比奈岳は、すっかり夜間になっていた。すると魔青龍の周りに青白い霊魂が10個ほど漂いはじめた。

その霊魂は次々と人間の風貌とはかけ離れた奇怪な姿へと変貌していった。

彼らは、まるで血に飢えた吸血鬼のように目は血走り口からは鋭い牙がはみ出していた。

彼らは、ずっとこの機を待っていたかのように舌なめずりをし、薄気味悪い笑いを浮かべた。

深々とした山深い朝比奈岳のあたり一面、どんよりとした重苦しい、吐き気のするような霊気が漂い始めだした。

25 12月

第二部終了のお知らせ

ヤッサン一座忍法帳第二部は「其の三十二 最終決戦前夜の巻」をもって終了しました。
本来は、第二部で終わらせる予定でストーリーを考えていましたが話が進むにつれて、ゾーナと能勢忍群達の戦いをスケールアップしたいと考えました。
そのため最初は構想になかった黄金バットの円盤での特訓や摩耶志保の登場などを追加しました。
第三部は、年明け1月1日から始まります。
今日から年末にかけて今考えている構想を再チェックして手に汗握るシーンやユニークで面白い箇所、摩耶志保、団丸等の活躍等を描きたいと思っています。
この話の登場人物は、ヤッサン一座の座員等ほとんどが実在の人物です。
第三部も宜しくお願いします。

官兵衛
25 12月

第二部 其の三十二 最終決戦前夜の巻

 能勢忍軍の月面基地での訓練も6ヶ月近くになり、ほぼ予定していた訓練のプログラムは終了していた。

ちょうどその頃、ゾーナの円盤の動向を追跡していた超高速レーダーに小さな変化が生じた。

これまでコントロール機能をなくし、宇宙空間を浮遊していたゾーナの円盤が僅かながら自分の意志で動いたのだった。

黄金バットは、いよいよゾーナが円盤を修復させ、再び地球へもどるのも時間の問題と考えた。

そのころ、ゾーナは、円盤の修理をほぼ完成させていた。

ゾーナは、ゾーナ怪人4マスターの魔青龍、邪朱雀、玄武呪を自室へと呼び寄せた。

ゾーナ怪人4マスターの一人白虎鬼は、大文字基地襲撃に失敗し、魂は4次元に囚われたまま、生ける屍として大文字基地内の隔離医療施設に拘置されていた。

ゾーナは、みんなの前の机上に3Dの日本地図を映し出し作戦を話し出した。

ゾーナ「いよいよ最終決戦の日が近づいてきた。一気に片をつけるべくそれぞれ生命を架して任に当たれ。今度の決戦は、我々が有利となるよう敵をおびき出し壊滅させる。」

そういうと3Dの日本地図を指差しながら4マスターの魔青龍、邪朱雀、玄武呪に緻密に指示を与えていった。また、ゾーナが開発したシュミレータによる戦況予測の解析も行なった。

ゾーナはこれまで、ここまで緻密な作戦会議をしたことがなかった。

ゾーナは、白虎鬼の件や月での黄金バットの奇襲でプライドがズタズタにされていた。日頃は冷静なゾーナも復讐心でメラメラと燃えたぎっていた。

ゾーナは万全を期して決戦の準備を進めていた。

ゾーナは、円盤の修理を終え点検も済ませた時点でSHK大文字基地にメッセージを送った。

SHK大文字基地では、ゾーナからのメッセージを牧野長官、月面基地の黄金バット、師匠、鬼夢羅婆、官兵衛等に転送した。

メッセージは、これより2日後の正午に3地点にゾーナ達が降り立つというものだった。

その3地点というのは、青森県むつ市郊外の朝比奈岳、京都府南丹市郊外の長老ヶ岳、高知県安芸市の烏帽子ヶ森としてあった。

このメッセージの意図は、明らかに能勢忍軍やSHK等をおびき出す作戦だと読み取れた。しかし、指定された場所は人里離れたところで、人々が巻き添えをくうことは少なく、このことは能勢忍軍達にも都合がよかった。

SHK牧野長官等は、ゾーナに対し「承知」というメッセージを送り返した。

そして、牧野長官を乗せたスペースジェットが黄金バットの月面基地へ到着したのは、その1時間後だった。

作戦会議は、黄金バットの円盤内の遮蔽ルームで行われた。この遮蔽ルールは、外部との一切を遮断するための特殊合金が使われていて,情報が外部に漏れることはなかった。

会議は、牧野長官、師匠こと第十六代霧隠才吉、鬼夢羅婆、官兵衛、団丸が参加した。

会議は丸一日掛かった。

円盤内では、能勢忍軍28名と、摩耶志保、菅野佐助等が武器等の最終チェックを行い、それぞれ来るべき決戦に備え座禅を組み心頭を滅却し各自の戦闘種ミレーションを瞑想していた。

いよいよ決戦の火ぶたは切られようとしていた。

 

23 12月

第二部 其の三十一 摩耶志保幻影棒術の巻

すると、摩耶志保も特殊訓練ルームの中央のぼん丸に向かい合う形で中央へと進んだ。

摩耶志保「宜しくお願いします。」

そういうと志保は、頭を下げて1メートル65センチ自分の背丈ほどの棒を静かに構えた。

ぼん丸も頭を下げ挨拶をすると、両手に持った釵(さい)を軽くぶつけてカチンという音をさせた。左手の釵を親指と人差し指の間に挟み釵の底の丸みのある部分を前にして上段に構えた。これは、相手の攻撃を受けるための構えだった。右手の釵は、柄の部分をにぎり尖った先の部分を相手に向けた。これは、突く、叩く、の攻撃の構えだった。

そして、志保の周りを静かにまわりながら左手の釵をくるくると廻し出した。ビシュ、ビシュという音がした。

一方、志保は、棒を静かに自分の喉の位置を頂点に45度斜め右下に構えた。

志保は、その構えのまま静かに目を閉じて相手の動きを観察していた。

志保の顔は鬼神のような顔に変貌していた。

ぼん丸は、志保の斜め後にまわると、くるくるとまわしていた左手の釵を手首を返して志保に打ちかかった。

その釵は、志保の肩の辺りに当たったように見え、誰もがアッと息を飲んだ瞬間、そこには志保の姿はなかった。志保は、スルスルとぼん丸の向い側に現れたかと思うと凄まじい形相でぼん丸をにらみつけた。

するとぼん丸の額から汗がしたたり落ちたかと思うとその場にしりもちを突いた。ぼん丸は呆然としてその場から動くことができなくなっていた。

ぼん丸は、小さな声で「参りました」と告げそのまま気を失ってしまった。

いったい何が起こったのか判らないまま、志保とぼん丸の手合わせはあっけなく終わってしまった。

すると「おいらにも挑戦させてよ」という声が聞こえたかと思うと団丸が特殊訓練ルームの中央にゆっくりと現れた。

団丸「志保さんはすごいね。強い、本当に強い、棒は静止されているように見えていたが、実は何回もぼん丸めがけて打ち出されていたんだ。目にも留まらぬ早技だね。本戦ならぼん丸5回ぐらい棒で叩かれていたよ。」

そういうと団丸は、志保と同じような棒を取り出して言った。

団丸「勝ち目はないかもしれないけど、手合わせお願いします。」

そういうと団丸も棒を志保と同じように右斜め45度に構えた。

志保と団丸は、向かい合った。

志保「宜しくお願いします。」

団丸「こっちこそ宜しくお願いしまーす。ちょっと手加減してね。それからあんまり怖い顔しないでね。」

言葉だけ聞いていると団丸は真剣なのかチャケているのかよく判らないが、今回は真剣だった。

今度の対戦は、二人の動きを見ることができた。ぼん丸と対戦した時のように小手先の動きでは相手を制しきることができないと感じた志保は、右に左にヒョイヒョイと飛び跳ねるように高速に動き回った。時折ゴツン、ゴツンという棒と棒がぶつかり合う凄まじい音が聞こえた。コツン、コツンと相手を挑発するような棒の触れ合う音がしたかと思うとゴツン、ゴツンという大木さえ倒しかねない音が特殊訓練ルームに響き渡った。

1時間近く過ぎても決着がつかなかった。

すると鬼夢羅婆が特殊訓練ルームの中央に歩み寄り、二人を制した。

鬼夢羅婆「志保、もう終りにせい。」

師匠「団丸も終りにしろ。」

志保と団丸は、ようやく動きを止めて鬼夢羅婆と師匠の前に膝まづいた。

団丸「いやー参った。志保さん強すぎ。僕も棒術には自信があったんだけどね。」

志保「いいえ、団丸さんこそお強い。」

師匠「いや志保さんは強い。我々は5ヶ月間訓練を受けているのに対し志保さんは今日地球からきたばかりでこの身のこなし。志保さんが加わってくれて我々はとても心強い。」

その日は、訓練を早く終え鬼夢羅婆等の歓迎と親睦を兼ねた宴が開かれた。

22 12月

第二部 其の三十 最強戦士 摩耶志保

月面基地では、能勢忍軍の面々が新しい武器を使い実戦訓練をしていた。

そこへ、地球の大文字基地からスペースジェットで鬼夢羅婆等3人が到着した。

3人がスペースジェットを降りるとその場にはポータロボットが待っていた。3人に能力増強スーツと新しい武器が渡された。黄金バットが事前に3人の能力や得意とする武器を調べ、月面基地に到着するまでに作り上げていた。

能勢忍軍の能力増強スーツの赤色に対し、鬼夢羅婆たちの能力増強スーツは黒色で作られていた。鬼夢羅婆等一族の使用する装束に合わせてあった。そして胸のところには、呪文のような模様が描かれていた。

その呪文こそ、以前あおくまやグリエモンがむつ市山中に鬼夢羅婆を訪ねた時に鬼夢羅婆が顔の前につけていた布に描かれた呪文だった。その文字とは古典サンスクリット(古典梵語)で秦という文字が描かれていた。

ポータロボットは、3人が能力増強スーツに着替えるのを確認すると、次に3人を能勢忍軍の訓練場所へと案内した。

訓練は、特殊訓練ルームで行われていた。特殊訓練ルームに入った3人は、能勢忍軍訓練中の真っただ中を通り抜けて行った。3人が通り過ぎる中、摩耶志保が一際注目を浴びた。志保を見た能勢忍軍は男女に関わらず、訓練の手を止め見入った。その美貌と彼女から放たれるオーラに特に男は魂を奪われたように呆然となっていた。

3人は、訓練中の師匠の前に案内された。3人は、師匠に深々と頭を下げて挨拶をした。

師匠「官兵衛から連絡がありました。私が能勢忍軍の頭領16代目霧隠才吉です。あなたがたの協力に感謝します。」

鬼夢羅婆「いや、ゾーナは我々の同族でその反乱を鎮めるのは我々の務めじゃ。こちらこそ宜しくお願いします。」

師匠は、何気なく鬼夢羅婆たちを見たが、驚いたことに着けたばかりの能力増強スーツを着こなしていた。自分たちが能力増強スーツを着こなすまでに数日かかったのに比べ、いとも簡単に着こなしていることを不思議に思った。そこで鬼夢羅婆に尋ねた。

師匠「その能力増強スーツは、我々が装着して自由に動けるまでに数日掛かりました。鬼夢羅婆さんたちは、なぜそのスーツを着用してすぐに自在に動けるのですか?」

鬼夢羅婆「我々の祖先は、1800年前に黄金バットの円盤の中で訓練を受けた際この能力増強スーツを着用したと伝えられておる。祖先は、このスーツ着用を想定し、木の皮で重い服をつくり更に水で濡らし、身体の自由を奪った状態で訓練をしてきましたのじゃ。我々もその訓練がこうして役に立つとは今の今までわからんかった。」

鬼夢羅婆は言葉を続けた。

「ところで霧隠どの。うちの志保とだれか手合わせをしてくれませんか。」

師匠「それは結構ですが、まだこの基地に着いたばかりでしかも訓練も受けておられないが…」

鬼夢羅婆「大丈夫じゃ、ぜひお願いしたい。」
師匠は躊躇したが、
鬼夢羅婆の強い申し入れを受けることにした。 

師匠「わかりました。それではぼん丸、お相手をしろ。」

ぼん丸「ははっ。」

ぼん丸は釵(さい)使いの名手だった。釵は、琉球古武術で使われている21組で左右それぞれの手に持って扱う。江戸時代の捕物に使われた十手に似ている。棒の手元に鈎(かぎ)が2つ付いていて山の字のような形をしている。通常のサイズは50センチ程度だが、ぼん丸の釵は60センチと一回り大きかった。

更に、黄金バットによりぼん丸の釵は数倍の威力を持つように改良されていた。

真っ赤な赤備えスーツを着たぼん丸が、釵を親指の付け根のところでくるくると器用に廻しながら特殊訓練ルームの中央に現れた。

21 12月

第二部 其の二十九 摩耶志保の実力の巻

会議は、深夜まで続いた。

鬼夢羅婆は、ゾーナの生い立ちから性格、能力等、知りうるすべてを話した。

しかし、ゾーナに対してこれといった弱点を見つけることはできなかったが、それでもゾーナのことが詳しく判っただけでも大きな成果であった。

会議が一段落した後、牧野長官から鬼夢羅婆らに提案が出された。

牧野長官「鬼夢羅婆さん、摩耶志保さん、萱野佐助さん、あなた方に月面基地でおこなわれている訓練に加わっていただけませんか。期間は、後一ヶ月足らずですが、それでもこれからの戦闘には役立つと思います。ぜひ訓練を受けて頂きたいと思ってます。ただし、基礎体力がないと訓練は受けられませんが…」

鬼夢羅婆「我々は幼少期より日々厳しい訓練を受けてきました。基礎体力には自信があります。」

鬼夢羅婆等一族も能勢忍軍同様に幼少の頃より厳しい訓練を受けていたのだった。

鬼夢羅婆は続けて言った。

「我々一族の中でも、志保が圧倒的な格闘能力を持っておる。冷静沈着で戦闘分析にも優れているし、肝も坐っている。我々一族の歴代の強者の中でも志保を越えるものはおらん。72代目の頭領鬼夢羅婆(キムラバ)になることも志保に決まっておるぐらいじゃ。」

鬼夢羅婆によると一族の頭領は女性が務めることになっていた。

平安時代の初期、17代目頭領の鬼夢羅は蝦夷の勇者アテルイ(阿弖流爲)の片腕として、蝦夷征伐にやってきた都の朝廷軍と戦った。第一次蝦夷征伐に送り込まれた征東将軍紀古佐美に対しては、最初苦戦を強いられるが、アテルイの神出鬼没の戦術で打ち破ることができた。しかし、第二次蝦夷地征服に送り込まれた征夷大将軍坂上田村麻呂との戦いでは長期戦を余儀なくされた。敵将田村麻呂は強く戦いは過酷を極めた。そのため頭領の鬼夢羅等一族の男はことごとく戦死してしまった。

その後、アテルイが田村麻呂に降伏したため、戦いは終った。アテルイの計らいで一族への咎めは間逃れた。戦いで一族から強者の男がいなくなったため、一族の18代目は、女性が継いだ。その後現代に至るまで頭領は女がつとめるようになった。

 

会議は終了した。

軽い食事を済ました後、鬼夢羅婆、摩耶志保、菅野佐助は3時間ほどの仮眠を取った。そして早朝にSHK諜報機関の最新型スペースジェットで黄金バットの月面基地へ向かった。

 

月面基地では、能勢忍軍の面々が新しい武器を使い訓練をしていた。

そこへ、地球の大文字基地よりスペースジェットで鬼夢羅婆等が到着した。

スペースジェットを降りるとポータロボットが3人の能力増強スーツと新しい武器を運んできた。黄金バットが事前に3人を調査し、月面基地に到着するまでに作り上げていたのだった。

19 12月

第二部 其の二十八 ゾーナの生い立ちの巻

次の日の早朝、官兵衛と鬼夢羅婆、摩耶志保、菅野佐助らは、SHKの用意した高速ジェットヘリコプタでSHK大文字基地へと向かった。

到着後さっそくSHK大文字基地で会議が開かれた。黄金バット、牧野長官、官兵衛、鬼夢羅婆、摩耶志保、菅野佐助の6人が参加した。黄金バットは、月面基地より3DTV会議システムで参加した。

本来ならこのような重要な会議には、能勢忍者の頭領として師匠が参加するのだが、今は月面基地で訓練中のため参加できなかった。

師匠が訓練に参加することに対して、年齢的なこともあり周囲から見合わしてほしいという意見が多かったが、師匠はそれを押し切った。師匠は、近々起こるゾーナとの対戦に危機感を募らせていて、自分も参戦する覚悟の現れだった。

そのため、師匠は官兵衛に全権を託していた。

師匠が欠席したまま会議は始められた。

会議でまず最初に話を切り出したのは鬼夢羅婆だった。

鬼夢羅婆「話を始める前に一つお願いしたいことがある。我々は以前、ゾーナの反乱を鎮めようとして逆襲され捕縛されてしまった。その時にゾーナから今後一切関わらないことを条件に助命された。もし、我々がみなさんに協力してゾーナのことを話したとなると今後、どのような禍いが我々に降り掛かるかわからん。私は見ての通り老婆だし命は惜しいとは思わんが、他のものはそうではない。どうか私以外の者を守ってやってくれぬか。」

摩耶志保「婆様、わたしたちはもう覚悟はできています。私たちも徐福様の高弟の子孫です。たとえどのような試練があろうと怯むことはありません。」

菅野佐助「よく言った。志保の言う通り母上だけを危険な目に遭わせる訳にはまいりません。」

牧野長官「我々は、必ずあなた方を守ってみせます。安心してください。」

そういうと牧野長官はすぐにSHK青森支部に連絡を取った。すぐに鬼夢羅婆一族を保護しゾーナとの決戦が終わるまで安全な場所にかくまうように命じた。

鬼夢羅婆「ありがとうございます。それではゾーナのことについてお話ししましょう」

鬼夢羅婆はゾーナのことについて話し出した。

ゾーナは、70年前に徐福の教えに背き地球征服を企てたナゾーの孫だった。しかし反乱罪で逮捕されたナゾーとは一緒に生活をしていなかったため、父母共々逮捕されなかった。ゾーナは12歳で東京大学の工学、科学系の単位をすべて習得した。中学校では、ハーバード大学の首席を凌ぐ頭脳を発揮した。特に情報処理系に強く、15歳で今のSNS(ソーシャルネットワークシステム)ITで事業を始めた。このころマスコミに1000年に一度の大天才として取り上げられ、世間から注目をあびた。

その後二十歳のころには、SNSITベンチャー企業を数社立ち上げ、あっという間に世界長者番付で1位となった。

しかし、それに留まらなかった。次々と企業を買収し、あっという間に1000近い企業を傘下に収めてしまった。そしてそれら企業を統合してコンツェルンを形成し、その後ゾーナ財団をつくるに至った。

そして利益の大半は先進的な技術開発等に費やした。

そして数年後、今回の暴挙に出たのだった。

当初、ゾーナの暴挙を阻止するために徐福の高弟の子孫たちが結束して立ちはだかったがあっけなく捕縛された。あまりの実力差に恐れおののき、鬼夢羅婆一族以外は、降伏してゾーナの傘下に加わっていった。

ゾーナは、最先端の技術を開発する一方で最近では超自然現象にも興味を持ち研究を重ねていた。

この前、SHK大文字基地で事件を起こした白虎鬼がそうだった。四次元を自由に操るというものだった。一瞬にして500人近い基地の人間を生ける屍にする恐るべき能力は、超自然現象の研究がもたらしたものだと考えられる。

18 12月

第二部 其の二十七 鬼夢羅婆と摩耶志保の巻

黒装束の者「して、私に会いにきた用件とは。」

官兵衛「ご存知と思いますが、我々は今ゾーナと戦っています。近々ゾーナとの最終決戦を迎えようとしています。しかし、我々はゾーナのことをあまりよく知りません。鬼夢羅婆殿にぜひゾーナのことを教えていただきたいと思いこのような手段を取りました。」

黒装束の者「官兵衛と言えば、能勢忍軍やSHKの軍師として知られているが、その御仁か。その証拠は…」

官兵衛「私の胸ポケットのマルチカードをご覧ください。」

黒装束の男は、官兵衛の胸ポケットからマルチカードを取り出した。

官兵衛は、そのマルチカードに向かい「黄金バットにつなげ」と言うと数秒後そのマルチカードの液晶部分に黄金バットが現れた。

このマルチカードは、名刺大のサイズで厚みは1ミリ程度だがスマートフォン以上の機能を備えていた。操作は、持主の音声認識により行う仕組みになっていた。

マルチカードに映った黄金バットを見ると黒装束の者3名は、ハッと顔色を変え、刀を鞘に納め、顔を覆っていた黒頭巾を外し、その場にひれ伏した。

そして各自が自分自身の名前を名乗った。鬼夢羅婆、摩耶志保、萱野佐助という名前がそのカードに向かって告げられた。

黄金バットは、鬼夢羅婆たちにとって自分たちの祖である徐福が師として仰いでいた天上の人であった。

黄金バットは、慇懃をもって鬼夢羅婆たちに協力の要請を懇願した。

すると、鬼夢羅婆はひれ伏したまま、感無量で目を潤ませながらふたつ返事で協力することを承諾した。

黄金バットがマルチカードから消えた時には、これまで殺気立っていた場の雰囲気が一気に和んだ。鬼のような形相だった鬼夢羅婆の顔も一気に緩んで本来はそうであろうと思われるやさしい顔に変わっていた。

官兵衛も含め、全員がいままで張りつめて緊張感から解放された。

鬼夢羅婆は官兵衛に改めてみんなを紹介した。

萱野佐助は鬼夢羅婆の長男だった。彼が、建築現場の作業員風に変装して情報収集をしていた。そのおかげで鬼夢羅婆に会うことができた。摩耶志保は萱野佐助の次女で鬼夢羅婆の孫にあたった。

その日は、ニューむつホテルで摩耶志保の手料理で朝方まで友情を深めた。

ニューむつホテルは、以前摩耶志保が女将としてあおくま、グリエモンをもてなした経緯があり、冷凍庫にはまだたくさんの肉や野菜があり、地酒等もふんだんに残されていた。

お互いに気を許すと昔からの知己のように話はずみ、官兵衛と萱野佐助は、義兄弟の盃を交わすまでに至った。

それにしても摩耶志保は、本当に美しかった。

摩耶志保は、清楚で控えめで笑顔が絶えない、そして気遣いのできる素晴らしい女性だった。これでは、あおくまやグリエモンがのぼせ上がるのも無理がないと思った。ただ、あおくまやグリエモンが言っていたような妖艶な感じではなかった。恐らく鬼夢羅婆の指示でそういう風にしていたのだろう。

官兵衛さえも歳に似合わず、ほのぼのとしたときめきが鼓動を速めた。

 

17 12月

第二部 其の二十六 官兵衛の居酒屋通いの巻

摩耶志保や鬼夢羅婆は徐福の3高弟のひとりの末裔で、徐福から恐山を統治するように命ぜられ、一族がこのむつ市近辺に根づいていたとすれば、必ずその一族のものがこのむつ市近辺で情報網をはりめぐらしているはずだと考えた。

そこで官兵衛は、摩耶志保や鬼夢羅婆に逢うため毎夜むつ市の飲食街に出かけた。毎夜居酒屋をはしごしながら摩耶志保や鬼夢羅婆の一族と接触する機会を伺っていた。居酒屋では、ひとりで飲んでいる客を狙い、近づいて酒を振るまった。そうして仲良くなったとしても決して無理に聞き出すことはせず、話の合間にそれとなく摩耶志保や鬼夢羅婆の名前を言って相手の反応を確かめるようにしていた。

宿泊は、ニューむつホテルを使った。電気水道が使え、布団もすこしカビ臭いのを我慢すれば十分に使用できた。

夕方から朝方まで飲食店に出向き活動を続けた。

一週間ほどたった頃、ある居酒屋で建築現場の作業員風の男と意気投合した。

官兵衛は、それとなく摩耶志保の名前を出してみた。

官兵衛「そういえば、このむつ市に摩耶志保さんっていう絶世の美女がいるんだってね。所用でこのむつ市に来ているが、一度摩耶志保さんに会ってみたいものだ。」

それを聞いた作業員風の男は一瞬官兵衛から目をそらした。

その瞬間の動作を官兵衛は見逃さなかった。

官兵衛には、彼が摩耶志保や鬼夢羅婆の仲間か敵か、判らなかったが話を続けた。

官兵衛「所用でむつ市に来ているが、いまニューむつホテルに宿泊しているから一度遊びにきてくれ。」

作業員風の男「ニューむつホテルは、今は営業していないはずだけど…」

官兵衛「そう、ひとっこひとりいないんだ。でも玄関は開いていたし、電気や水が使えて、それに温泉だって出るんだ。もちろん宿泊料は払うつもりではいるが、どこに支払えばいいかわからない。もしむつホテルの持主を知っているなら教えてくれ。とりあえず私の電話番号を教えておくよ。また飲もう。」

官兵衛はそう言って、作業員風の男に電話番号を書いたメモ用紙を手渡した。

作業員風の男と別れてニューむつホテルに戻った。

ほろ酔い気分で部屋に入り電気をつけたとたん、官兵衛ののど元に鋭い刃が光った。

黒装束した者3名が官兵衛を待ち伏せしていたのだ。

黒装束の者「おまえは何者だ。何を調べに来ている。」

穏やかだがドスの利いた声がした。

官兵衛「私は官兵衛といいます。あなたは鬼夢羅婆さんですね。私は、黄金バットやSHKから頼まれ、あなたに会いに来ました。」

官兵衛は、あおくまから鬼夢羅婆のことを聞いていた。その独特の声ですぐに鬼夢羅婆だと判った。

17 12月

第二部 其の二十五 摩耶志保・鬼夢羅婆の巻

話は、黄金バットの月面基地に戻る。

赤備えスーツを着こなし、その能力を十分に使えるようになった能勢忍軍30名に、それぞれの武器が渡された。

それぞれが得意とする武器に黄金バットが改良を加えたものだった。

武器を手にした能勢忍軍は、これまで使い慣れてきたはずの武器に手こずっていた。武器の性能が大幅にアップした代わりにこれまで目測で自在に操ってきたものが目測ではついて行けないほど速く、強くなっていた。そのために目測を誤り、向こうずねを打ったり、たんこぶを造ったり、日々傷が絶えることがなかった。

そんな中、能勢忍軍は少なくとも残りの1ヶ月でこの新しい武器を使いこなさなければならなかった。

 

その頃、官兵衛はというと黄金バットやSHKの牧野長官、SHK幹部と戦術会議をしていた。

官兵衛は、月面基地の訓練には参加していなかった。官兵衛の体力では参加するのが無理だった。もとも能勢忍軍のような訓練も積んでいなかったし、体育系は子どものころから、からっきしダメだった。

その戦術会議の中でもっとゾーナの情報収集が必要だという意見がだされた。そして全員一致でその意見が取入れられた。

そして太秦、剣山、恐山の3地へゾーナの情報収集に向かうことになった。

官兵衛は恐山へSHK諜報部員数名と一緒に行くことになった。

恐山は最重要地点とされていた。そして官兵衛には特別任務が与えられた。

その特別任務というのは、恐山で摩耶志保と鬼夢羅婆を探し出し、ゾーナの情報を聞き出すことだった。

摩耶志保や鬼夢羅婆は、徐福の3高弟の子孫だった。

同じくゾーナも徐福の3高弟の子孫だったが、ゾーナは祖父のナゾーと同様に徐福の教えに背き造反に走った。

その時、陰ながらSHKにゾーナの情報を提供してくれていた。

SHKに太秦、剣山、恐山というキーワードを教えたり、あおくまやグリエモンに近づき鬼夢羅婆を通してヒントを与えてくれていた。

官兵衛は、その任務を果たすため高速ジェットヘリコプタで一路恐山へ向かった。

上空から見る恐山界隈は、どんよりとした中に赤っぽい濃霧が発生していた。まるで恐山全体が薄気味の悪い霊気や妖気に包まれていた。

官兵衛は、まず最初にニューむつホテルに向かうことにした。

ニューむつホテルは、まったく人の気配がなかった。

ところどころ蜘蛛の巣がはられていたが、電気や水道は使える状態だった。

以前、このホテルは摩耶志保が、あおくまらと接触するため利用されていた。

どうやらそれ以降このホテルは、使われた形跡がないゆうだった。

その足で次はむつ市郊外の山中の鬼夢羅婆のあばら家も訪ねてみたが、ここもまったくの無人で家屋が朽ちかけていた。

官兵衛は思案した。どうすれば摩耶志保や鬼夢羅婆に逢えるのか。

 

12 12月

第二部 其の二十四 赤備えスーツの威力の巻

 黄金バット「みなさん、今日からゾーナとの戦いが終わるまでは、ずっとこの能力増強スーツを着用したままで過ごしてください。慣れるのに一週間程度かかると思われます。ただし、慣れさえすれば、自分が思い浮かべた動作がより速く、より強力に発揮できます。」

この能力増強スーツは、重さ300グラム程度で着用してもまるで裸でいるように錯覚するぐらい身体にフィットしていた。

実は、黄金バットも色や形こそ違うものの以前よりこの能力増強スーツを身につけていた。黄金バット強さの秘密はここにもあった。

しかし、このスーツは厄介だった。なにか動作をしょうとするとバランスをくずし、思うように身体を動かせずこのスーツをつけたままだと、まともに歩くことが出来なかった。

そんな中で、団丸はスーツを着たみんなの動作を見てお腹を抱えてひとりゲラゲラと笑っていた。アヒルやかめが歩いているような動作やへびがにょろにょろと地を這うような動作に、団丸はこみ上げてくる笑いに堪えきれなかった。必死で訓練をしている他のものから冷たい視線を浴びせられてもついつい笑ってしまった。という自分も同じようなものだったが、それもまたおかしかった。

スーツを身に着けた1日目は全く身体の自由が利かなかった。

しかし、2日目になると全員がなんとかまっすぐ歩けるようになっていた。3日前になるとジャンプや駆け足で走ることができるようになり4日目には通常の状態に戻った。本来なら能力増強スーツを着て通常の状態に戻るのに身体能力の高いものでも一週間以上かかったが、能勢忍者30名は4日間で通常の状態に戻していた。

しかし、それからが本来の訓練だった。トレーニングはライフメンテナンスルームから重力ルームに移された。この重力ルームは、地球上の5倍の重力が掛かっていた。この中でまず5秒で50メートルを走る課題が与えられた。次に高飛びで2メートルの高さを越える課題が与えられた。次に100kgのバーベルを持ち上げる課題が与えられた。次々に与えられる課題をクリアするうちに徐々に能力増強スーツの本来のパワーが発揮できるようになっていた。

次に頭脳面の成果が試されることになった。

まず計算力が試された。30100行の四則計算を20秒以内にする。

次に100冊の書物から、推理力や洞察力、観察力、判断力を試すための設問が与えられた。そして最後は、アルファー波、ベーター波、シーター波等を発生させる訓練が行われ、最後はそれらを組み合わせた波動によるテレパシー発生の訓練が行われた。

もともと人間の脳は、10パーセント前後して使われていないと言われている。

脳の活用を高めるとテレパシーのような能力をつけることも可能であると黄金バットは考えていた。その昔、徐福がその能力を備えていた。

こうしてスーツを着用して2ヶ月が過ぎ去った。

今や全員が50メートルを2秒で走り、20メートルの高さを飛び越え、1tの重さのものを持ち上げ、壁をよじ上り、一瞬にして相手の次の動作を予測し、仲間同士テレパシーで交信することができるまでになっていた。

 

その頃、ゾーナは宇宙空間に漂う円盤の中で円盤の修復を進めていた。

黄金バットが予想したように、修復はちょうど6ヶ月で完了する。後1ヶ月にはパワーアップしたゾーナの円盤が地球に戻ってくる。

11 12月

第二部 其の二十三 赤備え(あかぞなえ)のスーツの巻

3ヶ月の月日が過ぎた。イメージトレーニングが終了した。ライフメンテナンスルームにイメージトレーニング終了のチャイムが鳴った。それと同時にあちらこちらから大きなあくびがいくつも発せられた。緊張続きだったイメージトレーニングからようやく解放されたことで緊張がほぐれ、一息ついたと同時にあくびが出たのだった。また終わったことの喜びで中には拍手をするものもいた。
この3ヶ月の間に行われたイメージトレーニングは過酷を極めた。しかしその成果としてそれぞれが自己の5倍の能力を身につけることができた。心身を鍛え上げてきた能勢忍者たちも5倍の能力増強剤を服用したときは苦痛が走った。身体をガタガタと震わせるものや歯を食いしばり必死に堪えるもの、失神しそうになるもの等、多かれ少なかれ全員が極限の苦痛を味わった。それを乗り越えようやくイメージトレーニングが終了したのだった。
能勢忍者全員が、このトレーニングで脳や筋肉や骨が増強され、身体には筋肉がつき、骨も太くなっていた。
次のプログラムに移る間にしばしの休憩時間が与えられた。団丸やグリエモン、京丸、ラッキョム等はカプセルから出て増強された自分自身の筋肉を鏡に写しいろいろなポーズをとったりしていた。
その場に紋次郎が通りかかった。
団丸がまたも紋次郎にちょっかいをかけた。団丸はいつも紋次郎をからかう。
団丸「紋次郎、ちょっとそこで筋肉のポーズ取って見てよ。ほら、こんな風に」
団丸は、紋次郎の方を向いて、筋肉を強調するようなポーズを取ってみせた。紋次郎はフンというような仕草をして団丸を無視したまま通り過ぎて行った。
団丸「あーあ、退屈していたんで、ちょっとからかってやろうと思ったら無視かよ…」
らっきょむ「団丸止めろや、しまいに股間蹴られるぞ。」
そこへ能勢くのいち3人娘が通りかかった。それぞれが和菓子やケーキ、だんごやくだものなどをいっぱい抱えていた。
団丸「君たち、そんなに食べたら筋肉が脂肪に変わってスーツ着れなくなっちゃうよ。」
今度は、能勢くのいち3人娘にちょっかいをかけだした。
かこ丸「私たちがあの過酷なイメージトレーニングに耐えきれたのは、トレーニングが終われば好きなものを好きなだけ食べてもいいって言われたからなんだよ。」
団丸「それにしても量が多すぎるんじゃないの。ぞうの餌でもそんなに入らないよ」
能勢くのいち3人集は、団丸をジッと睨みつけた。
団丸「わかった。わかった。食い物の恨みは大きいっていうからね。いまのは冗談、冗談。」
側でらっきょむが能勢くのいち3人集に平謝りに頭を下げていた。
そんな和やかな時間が2時間ほど続いた。
すると、ライフメンテナンスルームに黄金バットのメッセージが流れた。
黄金バット「諸君、ご苦労様でした。厳しいトレーニングでしたが、よく耐えましたね。さすが能勢忍軍だけのことはあります。次にみなさんに能力増強スーツを配ります。」
すると、ライフメンテナンスルームの扉が開き、30体のポーターロボットが能勢忍軍のひとりひとりに能力増強スーツを届けた。
能力増強スーツは真っ赤な色をしていた。
黄金バット「能力増強スーツの赤は、あなたがたの祖である真田幸村とその家臣が最終合戦の時に身につけたといわれる赤備えの鎧(よろい)と同じ色です。そして、胸の所には真田家の旗印六文銭のマークを入れておきました。
このスーツを着ることで更に能力が5倍にアップされ能力増強プログラムと併せ10倍の能力となりますが、それでようやく相手と互角に戦えるかどうかいうところです。残りの3ヶ月間、更に訓練を積んで決戦に備えてください。」
黄金バットは、全員に能力増強スーツをつけさせた。
全員が赤備えと同じ色のスーツを身につけるとライフメンテナンスルームは一気に華やぎ、それぞれにメラメラと闘志が沸き上がってきた。

10 12月

第二部 其の二十二 バーチャルトレーニングの巻

次の日の早朝、大文字基地に能勢忍軍の30名が集結した。

能勢忍軍の中から黄金バットの強化訓練を受けるために選抜された者たちだった。

十六代目霧隠才吉こと紙芝居の師匠ヤッサン、団丸、グリエモン、らっきょむ、あおくま、ドビンゴ、京丸、紋次郎、五右衛門、チッチ、ははうえ、はじまり、若丸、せんべえ、かこ丸、はるる、みよよ、てるさん、ひでんか、ダッシュ、じんなり、わら王、らんたま、チャカ丸、ぼん丸、サルサン、フータン、ノンデルセン、幸念、以上の30名が黄金バットの円盤に乗り込んで行った。

全員が円盤に乗ったことを確認し、扉を閉めようとした時、大文字基地より一匹の犬が全速力で駆けてきた。

アンドロイド犬のプリ吉だった。プリ吉も一緒に行く気満々でシッポを振りながらワンワンワンと吠えていた。

師匠の判断で一緒に連れて行くことにした。

能勢忍軍30名と一匹の犬を乗せた円盤は静かに地上を離れて行った。

円盤は、月の基地に向かった。

大文字基地から20分ほどで月の基地に到着した。

黄金バットは、月に到着すると円盤を基地のドッグにガチャンという音を立てながら固定させた。

黄金バットの円盤の内部は上層スペース、中層スペース、下層スペースの3層に別れていた。全員は上層スペースにあるライフメンテナンスルームに居た。

ここには、無数のカプセルが3段ベッドのように並んでいた。このカプセルは生命維持が主の装置だがバーチャルトレーニングにも使われる。

今から2200年前、秦の徐福ら一行3000名余が円盤内で300年間過ごした。

その時に使われたのがこのカプセルだった。

そのカプセルを使い、いよいよバーチャルトレーニングが開始された。バーチャルトレーニングは、夢を見るようなかたちで行われた。まず生まれて物心ついた頃より現在までが脳裏に映し出された。このカプセルに入った30名はすべて小学校に入ると同時に能勢忍者として特訓を受けた。野山を駆け巡り、剣術、棒術、柔術、空手、弓、手裏剣、馬術、高飛び、幅跳び、水泳、ダイビング、ロッククライミング、等ありとあらゆる武術や運動を取入れた訓練。孫呉の兵法、六韜、五輪書、その他兵法に関連したものや最新兵器の使用法まで学び、そして同時に高いレベルの勉学や判断力や即断力のためのトレーニングも行ってきた。

そして記憶が現在まで巡ったところでその記憶がすべて書き直されていった。

まずは、自分の記憶している元の能力の2倍の能力を有していたということを自己暗示のようなかたちで自分自身に植えつけられた。そしてそれを裏づけるために記憶を小学校時代に戻し、最初から2倍の能力を有していたという形で記憶をつくっていくというものだった。これは、記憶にあるあらゆる武術や学業に反映された。脳を刺激し、身体の筋肉や骨等も刺激し、その能力に耐えうる脳、身体を作り上げていった。脳や心身に重度の負担がかかるため、一度に5倍の能力に上げることは不可能で徐々に高めていく必要があった。

 

8 12月

第二部 其の二十一 最強能勢忍軍への道の巻

ゾーナの円盤は、宇宙の彼方に消えて行った。
さっそく黄金バットは、師匠や牧野長官に連絡を取った。
黄金バットの目の前には、師匠と牧野長官、官兵衛の立体画像が映し出されていた。
黄金バットは、ゾーナとのこれまでの経緯をこれも立体映像で説明した。
映像は、黄金バットがゾーナの円盤を自己破壊プログラムのウイルスにより破壊し、ゾーナの円盤が宇宙の彼方へ消えて行くところまで映し出し、そこで消えた。
黄金バット「ゾーナは、自己破壊プログラムのウイルスによりシステムは完全に崩壊しました。そのため少なくとも半年間はこの地球に戻って来れないでしょう。しかし、ゾーナの技術力を持ってすれば半年後には円盤の機能を更に強化し、システムも構築し直し再度攻撃してくるでしょう。それもこれまでのような戦い方ではなく本気で徹底的に抗戦してくるでしょう。恐らくこのままでは我々に勝ち目はありません。」
師匠「なにか手立てはないのだろうか…」
牧野長官「こういう状況では最善を尽くすとしかいいようがありませんね。」
黄金バット「本来ならゾーナの円盤が制御不能になった時、円盤のシールドも外れていたので攻撃を加えれば円盤を破壊することもできました。しかし、我々N-8星人には、攻撃能力のない敵に攻撃を加えることはできませんでした。」
師匠「我々も能勢忍軍の祖でもある真田幸村からどのような場合でも人を殺めることは禁じられています。」
黄金バット「しかし、まったく手立てがない訳ではありません。すこし過酷になりますが、今はその方法以外浮かびません。」
牧野長官「その方法というのは…」
黄金バット「この半年間で能勢忍軍30名を私の円盤で体質や頭脳の能力を5倍まで増強します。これには危険が伴いますが、鍛え抜かれた能勢忍軍のみなさんならこれに耐えうると思います。」
黄金バットは、能力増強のプログラムを説明した。
それによると、まずバーチャルでイメージトレーニングをして、能力アップのレベルを徐々に上げていく。平行して実際の筋肉や骨、脳、内蔵等にも徐々に負荷を与え、それに応じて増強剤を投与していく。この増強剤には後遺症として残るような副作用はないが、一時痛みを伴う。脳や心身の増強を2倍、3倍、4倍、上げていき5倍になった時点で、高熱を出し一時意識を失うかもしれない。これをクリアすると身体と脳の両方が5倍の能力となる。これには、ほぼ3ヶ月を要する。これが終わると能力増強スーツを着用し、スーツを着た状態で2ヶ月実戦訓練を行う。この5ヶ月の間にそれぞれが得意とする武器を極限まで強化し製造する。残り1ヶ月間でこの武器を使いこなす訓練を行う。
というプログラムだった。
6ヶ月間フルに身体を使うため故障者が出る可能性があった。しかし、故障者が出ると戦力が低下する。どうしても全員が揃ってこの能力増強プログラムをクリアさせる必要があった。
7 12月

基本的には毎日UPさせるつもりでしたが…

基本的には、毎日1話アップさせることを目標としてきましたが、最近本業が忙しくなかなか書き進めることができません。構想は、大枠決まっています。出来る限り毎日UPしたいと思います。
どうぞ宜しくお願いします。
7 12月

第二部 其の二十 ゾーナ対黄金バットの巻

ゾーナが大文字基地上空から黄金バットのいる月の基地に到着するのに10分も掛からなかった。
その頃黄金バットは、月の基地でゾーナを迎え撃つ準備を進めていた。
黄金バットは、2200年前はじめてN-8星から太陽系に来た時に月面に基地をつくっていた。この月面基地には黄金バットがN-8星から持ち込んだ機材が置かれていた。
ゾーナは、黄金バットの月面基地に重力波砲が届く距離で円盤を停止させた。
そして、月面基地の黄金バットに対してメッセージを出した。
メッセージの内容は黄金バットに「すぐに降伏しろ。そうすれば命だけは助けてやる」というものだった。
黄金バットは拒否をした。
再度ゾーナは黄金バットに降伏を迫ったが黄金バットに応じる様子はなかった。
ゾーナは、重力波砲の照準を黄金バットのいる月面基地にロックするように命じた。
不思議なことに黄金バットのいる月面基地には攻撃防御用のシールドが張られていなかった。
そのためゾーナの重力波砲が命中すると基地は一瞬にして木っ端みじんとなってします。
ゾーナは重力波砲の発射命令を下した。
ついに重力波砲のボタンが押された。しかし、重力波砲は発射されなかった。そればかりかゾーナの円盤に異常が起きた。キーンという超音波のような音が聞こえると同時にゾーナの円盤がカタカタカタカタと震え出しかと思うとブシュブシュという何かが溶け出すような音がした。そして、ゾーナの円盤内の昨日がすべて停止するのと同時に照明がすべて消えてしまった。
ゾーナは何が起こったのか全く皆目がつかなかった。円盤のすべてが操作不能になっていた。ゾーナは、緊急予備コントロールに切り替えようとしたが、その予備コントロールさえも操作不能になっていた。ゾーナの円盤は、宇宙空間に位置していたためにみるみる黄金バットのいる月の基地から遠ざかりはじめた。しばらくして酸素生成装置のみが再稼働したが、他の装置はまったく機能なかった。
黄金バットの作戦は成功した。
黄金バットは、ゾーナの円盤を操作不能にしたのだった。
黄金バットは、自分の円盤と自分の円盤を真似て造ったゾーナの円盤の構造がおなじというところに着目した。
黄金バットは自分の円盤のアーキテクチャーを解析し、自己破壊プログラムを作成した。その自己破壊プログラムをウイルス化してゾーナの円盤のシステムに送り込んだ。そのため黄金バットは自分の円盤のシールドをはずし、ゾーナが重力波砲を発射する瞬間のタイミングを待っていた。重力波砲を発射する瞬間ゾーナの円盤もシールドをはずすため、その瞬間を狙いウイルスを送り込んだ。送り込まれたウイルスは、みるみるゾーナの円盤の全機能を破壊していった。しかし、しばらくして黄金バットは、ゾーナ側の生命に関わる酸素生成装置だけは、再稼働させた。
ゾーナの円盤は制御を失い、宇宙空間に投げ出された。

3 12月

第二部 其の十九 白虎鬼の断末魔の巻

目をカッと見開いた白虎鬼は大きく息を乱し、「そんなはずはない」と未だに信じられない様子だった。

白虎鬼は更に強く呪文を唱えた。しかし、結果は一緒だった。

それに対して、大文字基地の全員だれ1人として倒れる者はいなかった。

それどころか、白虎鬼の黒ダイヤの数珠にヒビが入ったかと思うと次の瞬間粉々に砕け散ってしまった。

白虎鬼は、その場にガクッと膝をついたかと思うと口からブクブクと泡を吹き奇声をあげ、目を見開いたままその場に仰向けにひっくり返った。

しばらくけいれんを起こしていたが、やがて微動だに動かなかった。

大文字基地内はシーンと静まり返った。

10分程時間が経過した。

恐る恐るSHK諜報部員が白虎鬼に近寄って様子をうかがった。完全に意識がなくなっているようだった。

白虎鬼は前回と同じように大文字基地全員を4次元の世界へ送り込むために念力を送り続けた。白虎鬼は、全く念力が効かないことに苛立った。そして自分を見失い4次元を操る自分の能力の域を超えた念力を更に送り続けてしまった。そのことで白虎鬼は、4次元のバランスを崩し自分自身が4次元の彼方に捕われ引き込まれてしまった。

あわれ白虎鬼は、ついに自分自身が生ける屍となってしまった。

しかし意識はないものの生命に異常はなかった。

白虎鬼は、大文字基地内の隔離医療施設へと運ばれていった。

白虎鬼が大文字基地では、基地内の全員がそっと胸をなぜおろした。そして基地全体から大きな歓声が上がった。

そして、全員が腕につけていたムーンストーンの威力に驚いた。

500個余りのムーンストーンの波動が集結され、白虎鬼の念力をはね除けたのだった。

このムーンストーンは、蓬莱の魔女が自分の娘を中心とした多くのヒーラー達に急きょ創らせたものだった。 

大文字基地で白虎鬼が失敗したことを知るとゾーナは、大文字基地の真上に停泊していた円盤を発進させた。

そして黄金バットの待つ月の基地に向かった。

ゾーナは、黄金バットの円盤より高度な円盤が造れる技術やその他あらゆる面で自分たちの方の能力が勝っていると慢心していた。そのため、これまで黄金バットや能勢忍軍に対して本気を出さずに小手先で相手をしてきた。太秦の地下基地の時も予めシュミレータを使い一部始終を予測していた。能勢忍軍やSHK諜報機関等が想定以上の攻撃をしかけてきても全く動じなかった。敵ながらよくやった程度にしか考えていなかった。

しかし、今回の大文字基地での白虎鬼の件はそうではなかった。

今まで侮っていた能勢忍軍やSHKが、ゾーナが誇る4マスターの1人白虎鬼を破ったのだ。これは、ゾーナの自尊心を大きく傷つけた。

ゾーナは本気になった。ゾーナは一気に片をつけるために黄金バットの待つ月に向かった。

1 12月

第二部 其の十八 能勢忍軍の反撃の巻

蓬莱山の魔女のエッセンスにより能勢忍軍、SHKの諜報部員等4次元に追いやられていたすべての者が意識を回復した。何ごともなかったように全員が眠りから覚めた。しかし、体力の消耗は激しく体力を回復するのに丸2日を費やした。

官兵衛は、大文字基地の事件後ずっと黄金バットに連絡を取っていた。しかし全く連絡がとれなかった。

ようやく、黄金バットと連絡がとれたのは3日目の昼過ぎだった。

黄金バットから連絡が入ってきた。

黄金バットは、まず最初に大文字基地のことを聞いてきた。

官兵衛が全員の無事を告げると黄金バットは安堵したかのように大きく胸をなぜおろした。

黄金バットは、官兵衛に自分の今の状況を伝えた。

今、月の基地にいること。ゾーナの重力波砲で通信装置が壊れたこと。そしてこの大文字基地後のゾーナの円盤との出来事等を手短に告げた。

官兵衛も、大文字基地の事件の経緯、蓬莱の魔女のエキスにより全員が意識を取り戻したことを黄金バットに告げた。

黄金バットは、秘密裏でゾーナに対抗する作戦を進めていたが、ゾーナ側に傍受される可能性があるため官兵衛には知らせなかった。

ゾーナは、12時間遅れで月付近まで近づいたが、月を通り過ぎ、地球へ向かった。月へ向かう前に行くべき所があった。

ゾーナが地球へ戻る間に、京都に送り込んでいたゾーナの手下から、白虎鬼が倒したはずの大文字基地の全員が回復したという報告があった。

白虎鬼が大文字基地全員を4次元の世界に閉じ込めた後、なんらかの方法で全員が4次元の世界から解放されたとのことだった。

白虎鬼は、ゾーナに申し出た。

白虎鬼「フェ、フェ、フェ、今度こそ、もっと強力な念力で大文字基地全員を4次元に閉じ込め今度こそ2度と出られないようにしてやる。フェ、フェ、フェ。」

そのため黄金バットの挑戦をあえて無視し、大文字基地までやってきたのだった。

京都の大文字基地の真上に円盤を停泊させた。そして前回と同じように白虎鬼を大文字基地に侵入させた。

白虎鬼が大文字基地に侵入した。

大文字基地に居た能勢忍軍やSHKがフロアに集まってきた。

白虎鬼はこの前と同様に懐から黒ダイヤの数珠を取り出した。

そして、この前より更に恐ろしい形相でなにやら呪文を唱えた。

しかし、白虎鬼の4次元の術は全く効かなかった。

28 11月

第二部 其の十七 クリスタルエッセンスの巻

その頃、白虎鬼に4次元の世界へ送り込まれた能勢忍軍のメンバーやSHKの諜報部員たちは、京都大学病院、京都市立病院、京都日赤病院、近隣の病院に分散して収容されていた。
官兵衛、蓬莱の魔女は、まず京都大学病院を訪れた。
この病院には、ラッキョム、グリエモン、紋次郎、ははうえ、チャカ丸、団丸等が治療を受けていた。
しかし、院長を始め医療の権威たちが八方手を尽くして治療に当たったが、ラッキョムらの症状は、現在の医療では解明できなかった。
ラッキョム等は京都大学病院の集中治療室から特別病棟に移っていた。至急に面会手続きを取り、特別病棟へ急いだ。
特別病棟に着いてすぐに蓬莱の魔女は、鞄の中から小さな瓶を取り出した。そして瓶の液をラッキョムに噴霧した。
そばに居た病院の看護士は、慌てて蓬莱の魔女のこの行為を静止しようとした。
「やめてください。」
看護士がこの言葉を発すると同時に病床のラッキョムが静かに目を開けた。
らっきょむが目を開けたことに驚いた看護士は、蓬莱の魔女を静止した手を緩めた。その隙に蓬莱の魔女は次々と液を噴霧していった。
ラッキョムが、グリエモンが、団丸が目を開けた。
ラッキョム「ここは、どこですか。どうしてここに…」
グリエモン「アーぐっすり寝た。」
団丸「せっかく特大のステーキを食べるところだったのに…」
官兵衛「詳しい話は後ほど、まずはこの瓶のエキスを噴霧することが先決です。」
眠りから覚めてキョトンとするラッキョムたちに瓶を手渡した。
その場に居た看護士も状況が理解できないものの、ついさっきまで原因不明の植物人間になっていたラッキョム等を知っているだけに、この効果に驚きながら、他のメンバーが収容されている部屋を教えてくれた。
看護師「このことを医師らに説明しても、状況把握してこの瓶のエキスを噴霧する許可を得るのに相当時間がかかると思われます。わたしが後で責任をとりますのでもし、他の部屋で制止されたら婦長の今泉から許可をもらったといってこの書面を見せてください。」
婦長の今泉は、機転の効く人らしい。ラッキョム等にエキスを噴霧し手居る間にメモし今泉の判を押し、それを手渡してくれた。
さっそく、ラッキョム、グリエモン、団丸たちは、足早に各部屋を回り全員にこのエキスを噴霧した。

このエキスには、何種類ものクリスタルから抽出したエッセンスが入っていた。そのエッセンスとは、ボージーストーン・ブルーサファイア・フルオライト・バイオレットトルマリン・ダイヤモンド・チャロアイト・ゴールドカルサイト・アジュライト・アメジスト・イエローサファイア・カーネリアン・クリアクオーツ・ジェイド(翡翠)・ソーダライト等でそれらが融合して作り出す波動により4次元と3次元を繋ぐことができた。
宇宙に存在するあらゆる物質は、原子の集合体である。原子を構成する電子の回転運動が波動を起こす。原子の集合体の分子で構成される人間や動物、植物から水、石、鉄、その他、すべてがそれぞれ固有の波長を持っている。そしてそれらは、存在している間、波動を発していることになる。
これは物体だけではなく生命体にも通ずるという。ひとの「想い」が人から人へ伝わるように「意思」という「波動」のエネルギーが存在する。一種の電磁波として共鳴しエネルギーが人から人へと伝達されている。仮定ではあるが、この波動が増幅されれば3次元空間が二乗倍になり4次元空間に達するとされている。
そしてこれら3次元を4次元に変えるほどの強力な波動は、クリスタルから発せられるクォーツにより作り出される。
蓬莱山の魔女は、そのクリスタルのパワーを自在に作り出すことができた。それによって マイナス波動をプラス波動に変えることができ、心身的に苦しむ多くの人々を救済してきた。
しかし、蓬莱山の魔女が作り出すクリスタルエッセンスの力は、心身的に救済するだけではなく4次元の世界にも作用するほど強大なパワー持っていた。

27 11月

第二部 其の十六 蓬莱の森の巻

蓬莱山の魔女は深く深呼吸をして話し出した。
蓬莱の魔女「わたしは、たとえどのような理由があろうと、争いごとのためにブレスレットを作るつもりはありません。このブレスレットは、人に幸せをもたらすためのものです。」
官兵衛「わたしもあなたと同じ考え方です。出来る事ならあなたの力を借りずに解決したいと考えています。わたしたちは、決して私利私欲のために戦っているのではありません。世の中に平和をもたらすことを目的としています。
それにわたしたちには、いかなる理由があろうと決して人を殺めてはいけないという強い掟があり、相手を傷つける事が目的ではありません。しかし、仲間を4次元の世界から呼び戻すためにはどうしてもあなたの力が必要です。どうか仲間を救うためにブレスレットを作ってもらえないものでしょうか。」
官兵衛は床に頭を伏せて懇願した。
それでも蓬莱の魔女は首を縦に振らなかった。
蓬莱の魔女「申し訳ありませんが、私にはできません。今日のところはお帰りください。」
官兵衛「わかりました。しかし、あなたが首を縦に振るまでは、何時間でも何日でも待っています。今はこれしか方法がないのです。」と言うと官兵衛は、蓬莱の魔女に深く頭を下げ佇まいを出た。
そして蓬莱山の魔女の佇まいのすぐ横の鬱蒼とした森の中の切り株の上で座禅を組んだ。
蓬莱の魔女が協力してくれることを願い、そして今後の先行きのことを思案していた。
それから何時間たっただろう。
この地に訪れたときは日が真上だったのに、今はもう日が傾き木々の長い影を作っていた。もう夕暮れになっていた。
ただ、聞こえるのは小川のせせらぎや風の音、森の木の葉のすれる音と時折鳥か獣かの鳴き声が聞こえるだけだった。この蓬莱山中では、さすがに夕方にもなると肌寒かった。しかし師匠たちのことを考えるとただただ、蓬莱の魔女にすがるしかなかった。

すると、蓬莱の魔女の佇まいの方向から一匹の犬が駆け出してきた。
犬は、官兵衛に飛びかかったと思うとベロベロと顔を舐めはじめた。
蓬莱の魔女の愛犬でトイプードルだった。
その犬の後から「チャチャ」という声が聞こえた。愛犬のトイプードルを追うように蓬莱の魔女が官兵衛のそばへやってきた。そして暖かい飲み物を官兵衛に手渡し会釈をしたかと思うと言葉を切り出した。
蓬莱の魔女「わかりました。協力しましょう。ただし、ムーンストーンのブレスレットづくりに人手が入ります。出来る限りの人手をここへ集めていただけますか。その後のことは娘に指示しておきました。私は勘兵衛さんと一緒にその場へ向かいます。4次元から引き戻すためのエキスを創っておきました。その前に、身体が冷えたでしょう。ハーブティですが、どうぞお飲み下さい。」
官兵衛「えっ、その場に向かうって、一緒に来ていただけるのですか…」
蓬莱の魔女「私がその場に行って対処したほうがよいと思います。」
官兵衛は、蓬莱の魔女を高速ヘリコプターに乗せて京都の病院へ向かった。

26 11月

第二部 其の十五 ムーンストーンの巻

話は、大文字基地事件直後に戻る。

官兵衛は、ムーンストーンを調べるべく、さっそくSHK諜報機関に彼女の住所を調べさせた。

送られてきたデータには、これまで住まいとしていた大阪の堀江から2年程前に滋賀蓬莱に引っ越したと記してあり、詳細に住所と地図が描かれていた。そして、今では、通り名が「蓬莱の魔女」として広く知られていることもつけ加えてあった。

さっそく、官兵衛はそのデータを手がかりに「蓬莱山の魔女」に会うことにした。官兵衛はSHKに連絡しチャーターした高速ヘリコプターで滋賀県蓬莱山へと向かった。

高速ヘリコプターは、大文字基地から大原を抜けて琵琶湖東岸に達した。

琵琶湖東岸は、比叡山から比良山地まで山並みが続き、中でも蓬莱山は雄大な姿を呈している。比良山地は古生層の花崗岩が大半を占め、東側は断崖となっているため屏風のような山が聳えていた。

蓬莱とは元来中国の伝説で仙人が住む東海にある霊山であり、比良山地も修験者の霊山であったことに由来するとされる。

官兵衛は、蓬莱山の麓に高速ヘリコプターを待機させ、自らは蓬莱山の山中へと入っていった。

鬱蒼とした森の中に「蓬莱山の魔女」の佇まいがあった。

彼女が蓬莱山の魔女と呼ばれるようになったのは、滋賀県蓬莱に移住してからのことだった。蓬莱山の聖水で創られたクリスタルエッセンスの高波動により多くの奇跡を実現し、心身共に多くの人々を救った。そのために人々から尊敬され、愛着の意味を込めいつの間にかそう呼ばれるようになっていた。

 

官兵衛は蓬莱山の魔女にこれまでの経緯を話した。

そして、ムーンストーンと今回の大文字基地で全員が生命はあるものの意識がない生ける屍となった関連性について聞いた。

蓬莱の魔女「ムーンストーンは、昔から身につけている人を守護する魔除けの石として知られています。特に官兵衛さんが身につけていたムーンストーンは純度が高く、私が創ったプレスレットの中では優れたものです。そのブレスレットが粉々になったというのは、よほど強い邪念か邪気が働いたものと考えられます。残念ながらムーンストーンの効力について科学的なことは判りませんが、大文字基地のみなさんの症状からみるとどうやら4次元の世界へ連れ込まれた可能性があります。著名なヒーラーによると4次元の世界は、霊界に位置し、3次元とは複雑に絡み合っているそうです。その白虎鬼というものは、4次元を自由に操る能力があるものと考えられます。」

官兵衛は、今回の事件の解決のために蓬莱の魔女に協力を求めた。

しかし、蓬莱の魔女は首を縦に振らなかった。

25 11月

第二部 其の十四 黄金バットの作戦の巻

その頃、黄金バットはというと、ゾーナ財団に動きを止められていた。大文字基地に白虎鬼が侵入した時すぐに救助に向かったが、ゾーナ財団の円盤の周りには強力なシールドが張り巡らされていたために、さすがの黄金バットもゾーナの円盤に近づくことができなかった。
黄金バットは、大文字基地に向かってあらゆる通信を試みたが、円盤のシールドが基地への連絡を遮っていた。
そうこうするうちに、大文字基地で一仕事を終えた白虎鬼がゾーナの円盤に吸い上げられ円盤は大文字山を離れた。すると矛先は、黄金バットの円盤に向けられた。そしてゾーナの円盤から黄金バットの円盤をめがけて強力な重力波砲が発せられた。重力波砲は、その場の磁場を高速回転させ磁場のエネルギーを消すことで重力波を発生させる。その威力は、強力で対象物を一瞬に破壊する。
第一波、第二波と黄金バットの円盤に攻撃が加えられた。黄金バットの円盤にはシールドがはってあったもののダメージは大きかった。
もし、この重力波砲が京都の街にあたると京都の街は壊滅的な被害を被ると黄金バットは考えた。そう判断した黄金バットは、重力波砲の攻撃をかわしながら向きを変えて全速力で宇宙へ飛び出して行った。
黄金バットは、ゾーナの円盤を地球から遠ざけるべく一定の距離を保ったまま太陽系の天王星付近までやってきた。
その間、地球のSHK諜報部や能勢忍軍に連絡を試みたが、さきほどの重力波砲のダメージのせいか、全く通信が繋がらなかった。
黄金バットは、大文字基地の様子も気になったが、今はゾーナをできるだけ地球から遠ざけるのが最良の策と考えた。
そのため、わざとゾーナの放つ重力波砲の射程距離圏内で飛行を続けた。時折あたる重力波砲のために更にダメージが広がっていった。
しかし、黄金バットにはひとつの策があった。
黄金バットは、さらに冥王星付近までゾーナの円盤を誘導した。
黄金バットは、冥王星を越えたあたりで円盤を急反転させた。そして円盤を地球に向け急発進させた。
これまでのスピードとは桁違いに速く、ゾーナの円盤を見る見る引き離して行った。
もともとゾーナの円盤は、黄金バットの円盤を徹底的に解明しその技術を真似て造ったものだった。円盤を巨大化したことや武器の能力、その他で性能は黄金バットの円盤を凌いでいた。
しかし、操縦技術では黄金バットが遥かに優れていたこととゾーナの円盤は黄金バットの円盤に比べ体積が8倍と大きく、そのためスピードでは、黄金バットの円盤には適わなかった。
黄金バットは、最大のスピードで月に辿り着いた。月は、黄金バットが最初に地球に到達した時に基地を築いていた。ゾーナの円盤とはスピードで12時間の時間差がついていた。
月の基地の通信機器でようやく地球に連絡を取ることができた。
大文字基地の事件から丸3日が経っていた。
25 11月

あらすじ

あらすじのご要望がありました。これまでのあらすじです。

関ヶ原の戦いの後、勢力を増す徳川氏に対抗すべく九度山から真田幸村を大坂城に迎え入れた。幸村は、優れた忍者を養成して各地に放ち徳川氏を撹乱させる戦法を考えた。そこで大阪に近い能勢の地で霧隠才蔵や猿飛佐助に忍者の養成に当たらせるが、時すでに遅く大阪夏の陣で豊臣氏は滅亡した。幸村、才蔵、佐助等も茶臼山の家康の本陣まで迫るがあと一歩届かず討ち死にした。能勢の地に残った才蔵が一子霧隠才吉は、幸村から能勢忍軍として世のため人のために働くことを命じられていた。しかも幸村から、掟としてどんなことがあっても決して人を殺めてはならないという強いお達しがあった。

時は現代に移り、平成の世になっていた。16代目霧隠才吉は、表向きは紙芝居ヤッサン一座の座長として世界平和のための紙芝居を口演しながら、実際は日本の諜報機関SHKと連動して世界の平和を守るための活動をしていた。恐山、剣山、太秦で事件が起こった。その事件を解明するうちに、恐山の霊媒師の鬼夢羅婆から事件の真相を聞き出した。

秦の時代、徐福は占星術により秦の始皇帝の命運がまもなく尽きることを知る。また占星術により東の方向に不死の妙薬があると知らされた徐福は秦の始皇帝に進言し不死の妙薬を探す旅に出かける。東の海上で徐福の前に現れたのは遠い宇宙から円盤でやってきた黄金バットだった。

徐福は、黄金バットから不死の妙薬を受取るが、時化等で結局秦の始皇帝に届けることができなかった。その後黄金バットの円盤で宇宙に飛び立ち500年後再び地球に戻った。徐福は、高弟3人に不死の妙薬の秘密を勾玉、柩、剣の中に隠しそれぞれに持たせた。

事件は、高弟の子孫の中の1人が裏切ったことから始まった。

今から70年前、その高弟の子孫はナゾーと名乗り地球征服を企んだ。

黄金バットは、ナゾーの地球征服は阻止したものの体力は限界を超えていた。

そして現代、1000年に1人の大天才というナゾーの孫が現れた。ゾーナと名乗り、祖父のナゾーを遥かに凌ぐ巨大な財力とテクノロジーで地球征服をもくろむ。

そのゾーナの野望を阻止すべく、能勢忍軍、SHK情報機関、黄金バットが力を併せこれに立ち向かう。

恐山、剣山、太秦の事件を解決し、事件は一件落着するかのように思われた。しかし、恐山、剣山、太秦の事件は序章だった。

その間ゾーナは、黄金バットの円盤を研究しそれ以上の性能を持つ円盤を開発した。そして最強の4マスターを率いて地球に戻ったゾーナは、大文字基地に4マスターの1人白虎鬼を送り込み、一瞬にして全員を生きる屍とした。

今や黄金バットを凌ぐ力を持つゾーナにどう対抗していくのか…。

続きは本章で。

22 11月

第二部 其の十三 蓬莱山の魔女の巻

 

 

 

官兵衛は、外部にいたSHK諜報部員に連絡し、緊急事態発生を告げた。

しかし官兵衛は、なぜ自分だけが無事だったのか疑問に思っていた。

いろいろと思いめぐらしてみた。その中で官兵衛はふと自分の腕を見た。すると、いつも腕につけているムーンストーンのブレスレットがなかった。

このムーンストーンのブレスレットは、身につけているだけで精神が安定し、冷静沈着に物事がはかどった。そのため官兵衛はいつも身につけていた。

そのムーンストーンのブレスレットを探すために周りを見渡してみた。すると自分が倒れていた場所にムーンストーンが粉々になって散らばっていた。この壊れようは、あきらかに倒れた時のものではなかった。ムーンストーンを金槌かなにかで何度も叩いたように見事に粉々になっていた。

官兵衛は、自分だけが助かったこと、ムーンストーンが粉々に壊れたこと、この二つに何か関係があるように思えた。

そう思いを巡らしているうちに、基地には通報を受けた自衛隊の救護班が続々入り込んできた。官兵衛は、まだ十分に動かない身体を起こしながら救護班の隊長に経過と今後の指示を出していた。

救護班は、基地内の全員を救急車やヘリコプターに乗せて、治療のため京都市内、その他近隣の各病院へ向かっていった。

全員意識はないものの生命には異常はなかった。

その報告を受けて官兵衛はそっと胸をなで下ろした。

官兵衛はというと、意識はあるものの頭痛や体中がしびれていた。今にも倒れそうだった。救護班から病院で治療を受けるように勧められたが、事態の解明が急務であることを理由に病院行きは断った。

官兵衛は粉々になったムーンストーンをジッと眺めて考えていた。

官兵衛は思い出した。以前スピリチュアルの書物にムーンストーンのことについて詳細に書いてあったこと。早速SHK情報機関のネットにアクセスしSHK情報図書館からその本を探し出した。

その本は、パワーストーンの詳細について書かれていた。その中のムーンストーンの項目を開いた。そこにはムーンストーンの謂れから、成分、効用までこと細かく解説してあった。その中でムーンストーンは危険から心身を守護する力があり。邪気払い、徐霊に効果的と記してあった。もしも、ムーンストーンの力で自分だけが難を逃れたのであれば、それを解明することで全員を救えるのではないかと考えた。

そのためには、もっと、もっとムーンストーンについて更に詳細に知る必要があると考えた。

官兵衛は、急ぎブレスレットの作者を訪ねることにした。

ブレスレットの作者とは、そのブレスレットを購入した時に一度会っている。今から5年ほど前だった。何気なく出かけた大阪天満のOMMビルのスピリチュアルフェアーに彼女は出店していた。いろいろな占いやオーラ撮影、スピリチュアルの製品等が会場内でひしめき合っていた。官兵衛は元来スピリチュアルや占いに関して全く興味を持っていなかった。しかし彼女のブースに並べられたパワーストーンのブレスレットには、何か引きつけられものがあった。そして、まるで衝動買いのようにそのブレスレットを購入していた。思い起こすとなぜ、何の興味もないスピリチュアルフェアーにでかけ、そしてブレスレットを購入したのか…。そう思うと更に不思議に思った。

 

 

 

21 11月

第二部 其の十二 恐るべき白虎鬼の巻

フロアには、一時シェルターに非難していた師匠を始め能勢忍軍、SHK諜報部員、その他主だったメンバーが集まっていた。

「フェッ フェッ フェッ、おれは、白虎鬼だ。ゾーナ様からの伝言じゃ。いますぐ降伏しろ。おまえたちにはもう選択の余地はない。でないとおまえたちは、後悔することになる。フェッ フェッ フェッ。」男は不気味な笑いを浮かべながらそう名乗った。

白虎鬼は、懐の中に手を入れた。

その動作を見ていた基地の諜報部員等は、構えていた銃の安全装置を外した。

諜報部員等は懐から武器が出てくるのではないかと固唾をのみながら次の行動に注視していた。

すると白虎鬼は、懐から黒ダイヤの数珠を取り出した。

そして、その数珠を手にぐるりと3重に巻きつけた。

そして再度、低い声で話し出した。

白虎鬼「フェッ、フェッ、フェッ、もう一度言う。お前達に勝ち目はない。今すぐゾーナ様に降伏しろ。そしてコスモスエナジーを渡せ。そうすれば命だけは助けてやる。フェッ、フェッ、フェッ。」

白虎鬼がそう伝え終わると同時に警護員が白虎鬼を取り囲んだ。

警護員が白虎鬼を取り調べるべく身柄を確保するためだった。

警護員は白虎鬼の両腕を掴み連行しようとした。

その瞬間、白虎鬼は掴まれた両腕を振り払い、カッと目を見開き黒ダイヤの数珠を手の中で樅ながら何やら呪文を唱えた。

すると目の前が一瞬にして黄濁色に染まったかと思うと能勢忍軍、SHK諜報部員、その他、大文字基地に居たすべての人間が生気を失い次々にバタバタと倒れていった。

そして誰1人ピクリともしなくなった。大文字基地全体から生気がなくなった。

白虎鬼は、ゾーナが放ったゾーナ財団最強の4怪人のひとりだった。ヒマラヤ山脈の山奥で体得した裏ラマ教の奥義で4次元を自由に操ることができる能力を備えていた。

ほんの数分の出来事だった。

白虎鬼は、ぶつぶつと呪文を唱えながらその場をこつ然と立ち去った。

 

どれだけ時間が経っただろうか。

生気のなくなった大文字基地の中で緊急事態発生時の警報音だけが建物中に鳴り響いていた。全員が生ける屍となったと思われていたが、その中で1人だけ意識を取り戻しつつある人物がいた。

それは、官兵衛だった。他のものは生きているのか、死んでいるのか判らないぐらい微動だに動かなかった。

官兵衛は、他のものの存命を確かめるべく、そばにいたSHK諜報部員の首筋に触れてみた。

生きている。確かに体温は保たれている。脈は正常に打っている。

官兵衛は、すこしずつ身体を動かしながら、スマートフォンを上着のポケットから取り出した。


18 11月

第二部 其の十一 死神白虎鬼現れるの巻

それから1年近くの年月が過ぎ去っていった。

世界は、1年前のゾーナの事件などまるでなかったかのように、極地でいくつかの紛争等はあるものの平穏に動いていた。

日本も同様だった。

しかし、事態は急変した。

2010930日正午、雲一つなかった真っ青な秋晴れの大文字山上空に入道雲のような暗雲がたちこめた。ほんの数分で大文字山上空に発生した暗雲は京都市内まで広がり京都を覆った。するとあちらこちらで大きな稲光りが始まり、それに合わせて耳をつんざくような大きな落雷の音が鳴り響いた。

そして、気がつけばいつの間にか、大文字山上空に巨大な物体が飛来していた。直系200メートルの大きな円盤だった。円盤は大文字山の頂上付近に停滞していた。SHK大文字基地の秘密の入口の真上だった。円盤は空中に停止したまま微動だにしなかった。ただ、円盤の外周のボディが回転した時に発すると思われる不気味な低い音だけが近辺に響いていた。

SHK大文字基地では、緊急事態発生時に鳴る警報音と回転灯が点灯し、基地内は情報部員が右往左往しながら所定のポジションに就き、上空の円盤の情報を収集しはじめた。

この日、能勢忍軍とSHKの作戦会議が開かれていた。

能勢忍軍16代目頭領霧隠才吉こと紙芝居師師匠ヤッサン、SHK諜報部牧野長官、官兵衛、団丸、あおくま、グリエモン、らっきょむ、ドビンゴ、京丸、紋次郎、ちゃか丸、てるさん、能勢くのいち3人衆のかこ丸、チッチ、若丸、ゴエモン、ランタマ、笑王、じんなり等能勢忍軍の主要メンバーとSHKの幹部、海外のSHK各支部長官等が一同に集まっていた。

ゾーナの事件後、作戦会議として月に数回こうして集まっていた。

円盤の次ぎなる行動を注視しながら、円盤からの攻撃に備えて全員が地下のシェルターへと移動した。

円盤は、数時間停滞したままだった。円盤が到来してすぐにSHKが連絡した自衛隊、米軍等が大文字山付近に集合し待機していた。京都の上空に自衛隊機、米軍機、それに援助を求めた中国機・韓国機も飛来し円盤の挙動を監視していた。

黄金バットの円盤も地下湖から琵琶湖に抜け比叡山付近で様子を伺っていた。

すると大文字山頂上付近で停止していた円盤から一条の閃がSHK大文字山基地に向って放たれた。

それから数分後、大文字基地内で異変が起きた。

大文字基地の中央フロアに黒づくめの法衣をまとった顔面蒼白でこの世のものとは思えない形相をした男が立っていた。

 

17 11月

第二部 其の十 黄金バットの約束の巻

黄金バットは、徐福と約束していた。

これより2000年間地球に留まり、地球を守ること。そして救世主が現れるのを待ち、不死の妙薬(コスモスエナジー)を渡すことを。

黄金バットは、京都の地下湖に停留させている円盤の中で生命維持装置を作動させ2000年の眠りについた。

しかし、1700年後地球に危機が迫った。

徐福の高弟の子孫が反乱を起こしたのだった。反乱の主は、京都太秦の地を任された智泰の直系子孫だった。名前をナゾーと名乗り、科学の天才で最新の技術を駆使して地球制服を狙った。

黄金バットは、この地球制服を阻止した。ナゾーは、倒されその後行方不明となった。しかし、それから70年を経てナゾーの孫がゾーナと名乗り再び地球制服を企んだ。ゾーナは、1000年に1人という大天才で、Webを活用したビジネスで日本の国家予算に匹敵する富を築いた。また現在の科学とは比べものにならないほどの高度な科学力を持っていた。

N-8星の科学力さえ凌駕する恐るべきゾーナの科学力に打つ術がないというのが現状だった。

ゾーナは、徐福の高弟の1人四国剣山を束ねていた一族の子孫を降伏させ、恭順させた。もう1人の高弟の子孫、恐山の一族には徹底抗戦されたが、やがてこれも降伏させた。服従することを良しとしない恐山の一族は、命こそ助けられたものの、二度と秦一族の名を名乗ることも禁止され、その地を追われた。

しかし、その者たちは徐福の教えを捨てることはできず、今回の事件でも影となり情報を提供してくれた。そのおかげで黄金バットまで辿り着くことができた。

謎の人物、鬼夢羅婆こそが徐福の高弟の1人の子孫であった。摩耶志保は、その娘だった。

黄金バットは、N-8星で生まれたこと、地球にきた経緯、徐福とのこと、秦一族、ゾーナのことなど、これまでのあらゆる経緯と知りうるすべてのことを話してくれた。

黄金バット「これがすべてです。私は徐福との約束で彼の一族を見守ること。そして2000年間は地球の平和を守ることを約束しました。しかし、その約束を全うすることが出来ませんでした。しかし、今一度皆さんと共に地球を全力で守るつもりです。」

黄金バットと能勢忍軍、そしてSHK諜報部が協力してゾーナに立ち向かうこととなった。

 

16 11月

第二部 其の九 3人の高弟の巻

 

 

3人の高弟は、名前を徳正、判光、智泰と言った。3人は徐福が占星術で選んだ3地へ就くことになった。その3地とは、恐山、剣山、山背の国(後の太秦)であった。徳正はこの地恐山に留まり、判光は剣山、智泰は山背の国へ向かうことになった。

旅立つ前に徐福は、3人の高弟を集めた。

徐福は机の上に3つの宝物(ほうもつ)を並べた。勾玉と柩、そして剣であった。

この3つの宝物は、3つを組み合わせることにより鍵となり、地下深く京都の地下湖に停泊している大きな陸(円盤)の扉を開けることができるというものだった。

徐福の占星術で、今から2000年の間にこの星に最大の危機が。しかし、その時救世主が現れるというものだった。その救世主に不死の妙薬(コスモスエナジー)を委ねるというものだった。この件に関しては黄金バットも賛同していた。黄金バットは、もしN-8星人が生存していたとしても、この地までくることは九分九厘不可能と考えた。ましてこのコスモスエナジーを使い、別の宇宙空間へいくことなど更に不可能だと考えた。であれば徐福のいう救世主にこのコスモスエナジーを委ねるのもひとつの方法だと思った。

一方徐福は、3人の高弟に3つの掟を厳守することを誓わせた。3つの掟とは、一つ黄金バットや円盤等について一切他言せず、子々孫々代々跡継ぎの長子に口伝のみで伝承していくこと。一つ、3つの宝物をそれぞれ家宝として、2000年間死守すること。一つ、問題が生じた時は一同に集まり協力してことの解決にあたること。であった。 高弟3人以外の同行者3000人に対しては、記憶リセット装置で黄金バットやコスモスエナジーのこと等関連することすべてを一瞬にして記憶から消し去っていた。ただし、円盤内で学んだ技術だけは記憶として残されていた。

徐福自身は、智泰と一緒に山背の国(京都太秦)の地へ赴くことにした。

徐福自身は、神仏を奉り平和を祈願する役目を担った。姓名を徐福から秦福に変えた。

山背の国の地形は、中国陰陽道五行の理に適っていた。北側の山(船岡山)が玄武を現し、東側の川(鴨川)が青龍、西の大道(山陽・山陰)が白虎、南側に大池(巨椋池)があり朱雀、鬼門には、鞍馬・比叡山あり山背の国を守護していた。

黄金バットは、徐福に同行した。
恐山、剣山、太秦では、高弟がそれぞれ国づくりが始まった。周辺の部族達と交わり最新の技術を伝え、一緒に農業や漁業を行い、いろいろな道具を作った。そして、いつの間にか部族が集まり村が形成されていった。

徐福は、太秦に着くとさっそく宗教の調査を行った。土着の宗教を尊重し、自己の方士としての法力も加え、新しい宗教の形を創っていった。

やがて徐福が天に召された。
黄金バットからコスモスエナジーを使うことを勧められたが、固辞し自身の寿命を全うしたのだった。



15 11月

第二部 其の八 新たな国づくりの巻

黄金バットは徐福にコンタクトを取った。

徐福から送られてきた波動を元にその波動を解析し、徐福宛にメッセージを送った。

徐福は、そのメッセージを受け取った。そして、すぐに秦の始皇帝に報告し、願い出て東の方向へ向かった。

そして、徐福は、黄金バットより不死の妙薬としてこのコスモスエナジーを手渡された。

徐福は大いに喜び、黄金バットに対して幾度も幾度も礼拝をして感謝の意を表した。

黄金バットは、不死の妙薬として手渡したが、実際には寿命の23倍ということもつけ加え。秦の始皇帝の寿命が尽きたときはその不死の妙薬を東の海に投げ入れるよう指示した。

黄金バットは、徐福が持参した酒を酌み交わし、お互いに打ち解けた。徐福、黄金バット共に名残惜しかったが、秦の始皇帝に残された時間は少なく、一夜のみの親交ではあったが、お互いが認め合う義兄弟としてとして乾杯をして別れた。

その後、徐福等一行は一路帰途についた。しかし、思いもよらぬ大しけに遭遇し、船を全く進めることができず、月日が費やし、ついに秦の始皇帝には届かず始皇帝は崩御してしまった。

その事を占星術で知ると、徐福は慚愧に耐えきれず高熱を出して寝込んでしまった。症状は日々悪化するばかりであった。

すると、黄金バットが再び現れた。

黄金バットは、徐福にコスモスエナジーを使うことを勧めた。

しかし徐福は、秦の始皇帝に不死の妙薬を届けられなかったことを後悔し、自分はこのまま死を迎えると言い張った。

黄金バットは、徐福の私心のない実直な人柄こそ、この地球の未来に必要と思った。黄金バットは、徐福に戦乱のない豊かな国づくりを自らの手で行うことを強く勧めた。真から徐福を思う黄金バットの心根の波動が徐福に伝わった。

徐福は生きる決意をした。すると、これまで土色をしていた徐福の身体全体に血色が戻り、生気を取り戻していった。

黄金バットは、徐福が元気になったのを見計らって徐福等一団を宇宙船に乗せて大空へ飛び立ちたった。宇宙船は、月面に停泊した後、宇宙船全体に生命維持の装置を配置し、3000人を500年の眠りに就かせた。500年間という時間は徐福等が活躍できる時代背景を考えての上だった。

そして500年が過ぎ去った。黄金バットは、徐福等が目覚めるとすぐに、N-8星の先進の技術を全員に教えた。

そして目覚めてから1ヶ月後、ついに地球に戻る日がやってきた。

黄金バットは、東の果ての地に降り立つことを提案した。

山地に囲まれ、自然豊かな四季、水質、作物等なにを取っても他より優れた日出ずる国を指していた。

徐福等一行は大いに喜び、そしてその国に降り立つことになった。

日出ずる東の国に降り立った後、徐福は連日連夜占星術を開始した。

そして、占星術により3地点を示した。この3地点に結界を結べば禍い少なく、幸運の兆しありという結果が出た。この3つの地を拠点にし国づくりをすることにした。ただし、力づくでその地に根づくのではなく、農業、漁業、道具づくりの技術を教え、また神仏を尊んで争いごとを極力避けることに注力するとした。

そして徐福は、3人の高弟を各地の長に任命した。

14 11月

第二部 其の七 コスモスエナジーの巻

その波動は、地球歴でいう紀元前220年旧暦5月3日に送られてきた。その波動を解析すると、次のような内容だった。偉大なる皇帝の命運が尽きかけている。戦乱に明け暮れていた大地を統一し、ようやく平和が訪れた。この偉大なる皇帝の生命がまもなく終焉を迎える。その後再び戦乱となる不吉な予感がする。天の神よ願わくば皇帝の生命を長らえる不死の妙薬を我に与えよ。というものだった。
さっそく、黄金バットは波動の出所を詳しく調べた。
この波動を宇宙に送り込んでいるのは、秦の首都咸陽の近くに住む徐福という方士であった。その徐福から断続的に波動が送られてきた。
黄金バットの調査では、この地球という惑星に生存する人間と呼ばれる生物は、
各大陸ごとに原始的な文明を築いていた。秦はその中でも最大のもので、しかも律令制の中央集権国家という当時では最新の文明国であった。
その秦は、紀元前221年に中国の大半を統一していた。
徐福は、明け暮れる戦乱に心を痛めていたが、秦の始皇帝の国家統一後の統治に期待していた。しかし、方士である徐福が占星術で占ってみると始皇帝の命運が尽きかけていることが知らされた。徐福は、始皇帝の生命が長らえるように日々夜間になると満天の星空に対し祈祷していた。
徐福は精神を統一し、全神経を脳に集中し強く念じた。その念が波動となり黄金バットに通じた。
人間の脳には第三脳室といわれるものがあり、第三の眼と言われる松果体に関係がある。チャクラとも呼ばれ、その脳の波動は波長が高く綿密で宇宙と交信ができると言われている。
黄金バットは思案していた。それは首相から特命で預かったコスモスエナジーの使い道だった。本来は、異空間宇宙へ向かうためのものであった。ホワイトホールのエキスがブラックホールと対峙してそこで出来た空間を通り抜けることで異空間宇宙に達する。これは、N-8星人の夢でもあった。
しかし、このエナジーは生命保持の力があり、このコスモスエナジーを身につけている限りは、その生物の臓器類が絶えず活性化され病気や老衰を癒されるのだ。ただし、生命体にはいくら病気や老衰を回避しても生命の終焉というものがあり本来の寿命の2〜3倍程度伸びるというのが実際のところだった。
黄金バットは、地球から送られてくる波動の主、徐福にこのコスモスエナジーを預けることを思案していた。
シミュレーター測定の結果、この地球に生息する人間という生き物がこのコスモスエナジーの効力を使いこなすためには、3000年以上文明が進まなければ不可能と出ていた。
N-7星人が黄金バットを追跡している軌跡も少なくとも90万光年内には見つからず、この近辺の宇宙に高度な文明を持った星も無かった。また、このコスモスエナジーは容器自体もダイヤモンドより堅く壊れる心配もなく、紛失してもすぐに探し出せるトレサビリティも備わっていた。このトレサビリティにより、どういう使い方をしたか等のリアルタイムの情報も黄金バットにもたらされるようになっていた。
黄金バットは、N-8星人から何らかの連絡があるまでは、この地球に身を寄せることを考えていた。
徐福の波動には邪念がなかった。自分の生命さえ犠牲覚悟の念があった。
黄金バットは、ついに決心した。

12 11月

第二部 其の六 90万光年の旅の巻

それから時はめぐり3000年が過ぎていった。

静寂の中、微かな音が黄金バットの耳元にささやくように流れ出した。N-8星の音楽だった。黄金バットにとってその音楽は、故郷で幼い頃によく聞いた曲だった。なつかしく、とても心地よかった。その音楽の中で黄金バットは両親と姉の夢を見ていた。家族全員で食卓をかこんでいる自分が子どもの頃の夢であった。夢がしばらく続いた、その後音楽と共に軽い振動が黄金バットの身体を揺り動かし始めた。振動は徐々に強くなり、ついに黄金バットは振動に気づいて目を覚めした。両親や姉の夢から現実の世界に引き戻された。

しかし黄金バットは、目は覚めたものの身体の自由がほとんど効かない状態だった。精一杯、力をこめて腕を伸ばして目覚まし装置のスイッチを切った。

30分程そのままの状態が続いたが、30分を過ぎるころから徐々に身体の機能が回復し出した。黄金バットはゆっくりと生命維持装置のボタンを止めて這い出るように容器から身体を出した。

コンパスのパネルを見るとちょうど3000年が経過していた。距離でいうと90万光年離れた宇宙空間に到達していた。

そこは宇宙の端に位置する太陽系の地球という惑星の宇宙空間であった。

真っ青な地球が目の前に広がっていた。

黄金バットは思った。なんて美しい惑星なんだろう。ここにはどんな生命体が存在しているのだろうか。文明は存在するのか、黄金バットは3000年の長旅も忘れるかのように地球を見入っていた。

地球に生命体がいることは、生命体調査装置で判明していた。しかし、どのような生命体が存在しているかは、判らなかった。

黄金バットは、地球のデータを収集しはじめた。温度、湿度、微生物、ウイルスをはじめ生物、植物、地質、酸素量、その他ありとあらゆるものを細部まで調査した。

調査は、1週間程かかった。地球の環境はN-8星人の黄金バットにも順応できるものだった。しかし、重力がN-8星より重く、5倍の体力を消耗することが判明した。調査も終わりかけようとした時、地上から機械的ではない、なにか生命体の波動が宇宙に向けて発信されているのに気づいた。

黄金バットはさっそく、その波動の送られてくる場所を探した。

発信場所が解明された。そこは、古代中国秦という新興国家からだった。

11 11月

第二部 其の五 K-18星の怪物の巻

その大きな影は、ますます巨大化し黄金バットを一気に飲み込もうとした。その時側面からさらに大きな影が黄金バットを狙っていた大きな影を飲み込んだ。この惑星の霧に生息する怪物の姿はまるで見えない。黄金バットは、磁力反発装置のコントロールを更に強め全速力で地上に向かって突き進んだ。不気味な怪物の鳴き声が遠くで、間近で聞こえた。黄金バットは更に進んだ。すると霧の先に真っ赤な水面が見えた。がしかし、水面に気がついた時には、もう水中に突っ込んでいた。水の中もまるで血の池のように真っ赤だった。黄金バットは、水を酸素に変える装置のスイッチを入れた。これにより水中でも地上のように息ができた。しかしほっとするのもつかの間で、この水中にも霧の中と同様、獰猛な生き物が棲息していた。頭部が巨大な牙を持つトドで胴体がたこのような生物が現れた。このたこのような胴体の前2本の足は大きなハサミになっていた。口元の大きな牙とはさみで黄金バットに攻撃を加えてきた。黄金バットは、サーベルを抜き放ち、牙とはさみを切り落とした。次にエイとガラガラヘビを組み合わせたような生物が黄金バットを襲ってきた。これもシッポを切り落とすことで難を逃れた。巨大なヤドカリの中にぞうのような鼻をもつ生き物や目が100以上ある巨大クラゲ等次々と黄金バットに襲いかかってきた。黄金バットは辛うじてそれら得体の知れない獰猛な生物を蹴散らしながら、やがてホログラムが示す地点に辿りついた。水中の奥深く示された場所に向かおうとした時、黄金バットは何者かに後から両腕をガシッと掴まれた。黄金バットは身動きが全くとれなかった。すると前方からN-8星語で話しかけてくるものがいた。

よく見るとそれは、ロボットだった。そのロボットは黄金バットの全身をスキャニングし、何者であるかチェックしていた。スキャニングし終わると身分が証明されたせいか前方のロボットは、丁寧に108桁の乱数暗号を尋ねてきた。乱数暗号とは、103桁までは固定の記号で104桁〜108桁の5桁は自身が思い浮かべた乱数の番号をつけ加える。これは、暗号を解読されないための工夫であった。100桁程度の固定記号なら高度な記号処理機を使うと1時間余りで解読できるため、後の5桁は解読できないようにインスピレーションで思い浮かんだ乱数つまり、その時に思いついた記号を5桁つけ加えるというものだった。

黄金バットは、戦闘訓練の中で乱数発生学を習得していた。暗号が一致すると、後から掴まれていた腕が離された。

前方のロボットは、赤い水の水底を堀りだした。そして10センチ角ほどの特殊金属でできた箱らしいものを取り出した。

ロボットは、その箱を黄金バットに手渡した。ロボット2体は連結して電磁バリアを張りめぐらし、水中を霧の中を先導し黄金バットを宇宙船まで送り届けた。そして任務を終えた2体のロボットは霧の奥深くに消えていった。

黄金バットは、コスモスエナジーを手に入れた。

このコスモエナジーをM-7星人から守るためにこのO星雲から遥か彼方の宇宙を目指すことになっていた。N-8星の消滅で消息がわからない両親やその後の戦乱で姉の行方さえ判らなくなっていた。そういう思いを残しながら首相からの特命任務を遂行するために黄金バットは、この地を離れることになった。
10 11月

第二部 其の四 コスモスエナジーの巻

首相は深手を負っていたが、意識はハッキリしていた。命には別状ないようだった。黄金バットは介抱しながら首相に訪ねた。

黄金バット「他の乗組員がいませんが、どうしました?」

首相「敵の急襲を受け、他の乗組員は全員小型宇宙船に乗り込み迎撃に向かった。その時に、この宇宙船を自動操縦に変え、私を出来るだけ遠くへ逃がすようにセットしてくれた。しかし敵の追跡を辛うじてかわしたものの船体は壊れ、この星に不時着した。」

黄金バット「命に別状ありませんが、深手を負っておられます。M星系のM-4星の病院へ向かおうと思います。あそこなら敵も手をだせないでしょう。これからそちらへ向かいます。」

黄金バットは首相を宇宙船に乗せて全速力でM-14星に向かった。

その途中、首相から重要な話が切り出された。

首相「これは、国家機密の話だが君に託したい。君の活躍は司令官から聞いている。ところで君はコスモスエナジーのことを聞いたことがあるか?」

黄金バット「名前だけは、子どもの頃に聞いた覚えがあります。しかし、それは実在しない伝説の中の話として聞かされていました。」

首相「実は存在しているのだ。このコスモスエナジーには、宇宙のホワイトホールのエネルギーが凝縮されている。このホワイトホールのエネルギーをブラックホールのエネルギーと相対させることで別の宇宙へワープすることができる。我々は凶暴なM-7星人の脅威を避けて新しい新天地を別の宇宙空間に求める計画を立てていた。しかし、M-8星は消滅してしまった。私は宇宙に散らばったM-8星人を探索する。君はM-7星人からの難を避け、遠い宇宙の果てに身を隠しこのコスモスエナジーを守ってほしい。いずれ必ず役立つ日がくるだろう。コスモスエナジーを隠した位置を示すホログラムがこれだ。これの指し示す場所が隠し場所だ。しかし、このコスモスエナジーを隠した場所にはとてつもなく凶暴な怪物のような生き物が生息している。くれぐれも注意するように。」

黄金バットは、首相からコスモスエナジーの在処を記したホログラムの地図を受取った。首相を無事N星系の隣に位置するM星系のM-14星の病院へ送り届けた。

その後すぐに黄金バットは、母船のあった場所に向かった。しかし、近辺には母船らしきものはなく、母船以外の他の宇宙船すべての通信が途絶えていた。

黄金バットは皆の安否を気遣いながらも国家機密の任務を遂行すべくホログラムに示された場所へと向かった。

その場所は、O星雲G銀河K星系のK-18星で丸5日間の道のりの後、黄金バットは目的地の惑星に着いた。黄金バットは宇宙船を降りたが、惑星全体に濃い霧が掛かっていたために1m先も見えない状態だった。その霧の中を目的地に向かっていった。黄金バットの制服は磁気反発装置が組み込まれていて、磁気を自在にコントロールできるため自由に空中を飛ぶことができた。黄金バットは、ホログラムを頼りに霧の奥深くに向かって行った。

その時、黄金バットの背後には大きな影が忍び寄っていた。

8 11月

長年の夢「小説を書く」にチャレンジ。ご意見ください。

自分の長年の夢でもあった「小説を書く」ということにチャレンジしました。
拙い文章、誤字脱字等もあり、ブログという小説発表には向いていない場所にも関わらず、多くの方に訪れて頂いているのには感謝しています。希望ですが可能であれば忌憚のないご意見がいただければ更に幸いです。宜しくお願いします。

今、一般社団法人国際紙芝居協会の企画・運営の仕事をしています。協会に参加する紙芝居師は、理事長・師匠であるヤッサンをはじめとしてユニークな 人材ばかり。その紙芝居師達が実は、紙芝居師は世を忍ぶ仮の姿。実は日本の諜報機関と連携して世界平和を願う正義の使者で実態は忍者だったとしたら…という発想から「ヤッサン一座忍法帳」が生まれました。師匠が能勢に居を構えていることから、能勢忍者が誕生。能勢の地は、大阪に近い山間部で忍者が生息していてもおかしくない絶好のロケーション。この地は歴史的にも豊臣氏と能勢氏とのエピソードがあったりとか、材料がいっぱいです。一方、紙芝居の金字塔といえば黄金バットと悪の科学者ナゾーとの戦い。この小説に黄金バットをどう絡ませるかということで考えたのが宇宙から来た宇宙人という設定です。この宇宙人は、O星雲のG銀河に属しているN星系の8番目の惑星からやってきました。(語呂合わせでオーゴンバットになります。)また、このストーリーの根底には、日本のルーツに繋がる秦氏を登場させました。秦氏は、秦の始皇帝に仕える方士の徐福が東方、蓬莱山を目指し日本に定着し名前を徐福から秦氏へと変え、日本の礎を形成していったというような説が数多くあります。秦氏は昔から日本の信仰の草分けとされてきました。恐山、剣山、太秦は特に秦氏と関係が深く、その地を戦いの場所としました。京都には琵琶湖に匹敵する地中湖が実在し、そこでも壮絶な戦いが行われます。第二部のこれからの話は、黄金バットがなぜ地球に来たのか、不死の妙薬の謎等。最強の敵ゾーナとゾーナ軍団をどうやっつけるか、ゾーナ側のこれまた最強の超人たちとどう戦うか等、今後のストーリー展開に頭を痛めています。この小説は、最終12万文字を予定しています。12万文字は単行本1冊分です。しかし12万文字で収まるかどうか疑問です。今で7万5千文字程度です。将来的にこの小説をベースとした長編紙芝居作成を目標にしています。出来れば紙芝居も自分でつくりたいと欲張っています。今後とも宜しくお願いします。
8 11月

第二部 其の四 N-8星の悲劇の巻

官兵衛「今回黄金バットに会いにきましたのは、ゾーナ財団に対抗するための知恵をお借りしたいと思ったからです。」
黄金バット「わかりました。私の知恵というより、こういう事態です。
一緒に対抗策を考えましょう。
しかし、その前に私が何者か、なぜ地球にやってきたかについてお話ししましょう。今回のゾーナ財団の事件も私に深い関わりがあります。ゾーナ財団の対策のためにもみなさんに知ってもらったほうがよいでしょう。」
黄金バットは語りだした。
黄金バットは、一千万光年先のO星雲G銀河N星系8番目の惑星からやってきた。地球年で換算するといまから5000年前、N-8星で黄金バットは誕生した。黄金バットは両親と姉の4人家族で平和な日々を過ごしていた。しかし、黄金バットが地球年10歳の時にN-8星に暗雲が立ちこめた。巨大な力を持つ、N-7星人が突如N-8星を襲撃してきた。もともとN-7星人もN-8星人も同じN-8星人であったが、N-8星で政権を握っていた首相が複数の政党と徒党を組み、政権下既得権を我がもの顔にし、民衆とは格差の利益を得ていたことに、民衆が反発した。民衆はついに選挙に勝利し、政権を交代させた。既得権を失った元首相は、一部支持者と共にN-7星に新しい国を樹立し、そこへ移住した。しかし、既得権者同士の争いが絶えず、N-7星は不安定な政局となり、N-7星に同行した支持者もN-8星へ逃げ出す者が続出した。N-7星では、各政党間で軍備増強が図られてついに政党間同士の戦争が勃発した。その中で最大の勢力を持つ元首相の党が他党を倒しN-7星を吾がものにした。そして、その勢いのまま今度は、N-8星に攻撃を仕掛けてきた。N-8星政府軍は、民衆との連携で総力を上げこれに対抗し、N-7星軍を退けた。しかしN-7星軍は、N-8星を掌握できないことを知ると腹いせにN-8星をクォーツ爆弾により、星まるごと吹き飛ばし、粉々にした。ところが、N-8星はN-7星との引力バランスでその宇宙空間に存在していたため、バランスが崩れたN-7星は、猛スピードでN星系のN-1太陽星に吸い込まれやがて溶けてしまった。あっという間に2つの星が消えた。黄金バットは、姉と共にN-8星が爆発する寸前にN-8星警備隊に助けられ宇宙空間へと逃れていた。両親の行方は判らなかった。その後、二人を助けたN-8星警備隊隊長が二人の面倒を見ることになった。そして黄金バットは、地球年齢で15歳になった時志願してN-8星警備隊に入隊した。警備隊といっても総勢二十数名で、後の隊員の行方は判らなかった。黄金バットはその後5年間宇宙船で厳しい戦闘訓練を受けた。その後は探索隊員として、宇宙に散らばったN-8星人を探索する任務についた。地球年齢28歳の時に能力が認められ探索隊隊長に昇進した。
ある時、探索隊に向けてSOS信号が発せられていた。しかし、隊長以外の隊員はそれぞれ救助の任務につき母船を離れていたため、結局黄金バットは、1人で大型宇宙船に乗り込みSOS信号が発せられた場所へ救助に向かった。
丸一日が過ぎ、SOS発信元まで半分の距離に達した時。母船から緊急連絡が入った。母船がN-7星人の急襲に会ったという知らせだった。その後連絡が途切れてしまいそれきり母船との連絡がつかなくなってしまった。
救助に向かうか、母船に戻るか迷ったが、まずは救助に向かうことにした。
救助に向かった先は、N星系より2光年の距離にあった。大型宇宙船により光速の300倍近いスピードでも丸2日の道のりだった。
そこは、O星雲H銀河S-15星だった。レーダーが示す場所に壊れた宇宙船を発見した。その宇宙船は攻撃を受けた痕跡がその凄まじさを物語っていた。宇宙船の船体の半分以上が焦げて変形し、異様な金属音と金属が焦げた臭気があたりいちめん漂っていた。しかし、その宇宙船の内部には、生命反応があった。黄金バットは、ひん曲がった船体をこじ開けて中に入ってみるとそこには、N-8星首相が深手を負い倒れ込んでいた。

4 11月

休刊のお知らせ

いよいよ11月6日「紙芝居甲子園」です。
その準備に追われ、執筆する間がありません。
11月7日より再開します。申し訳ありません。
3 11月

官兵衛像

この物語に登場する官兵衛とは、どんな人物なのか?ストーリーから想像すると頭脳聡明でカッコいいレッドクリフの諸葛亮公明役の金城武のように想像される方もおられるでしょうが、実際は全く逆です。例えるなら刑事コロンボを少しメタボにした感じの初老の冴えないおっさんです。

官兵衛は、師匠の弟子ではなく、客分として能勢忍軍に所属しています。

この物語では、軍師・参謀といったところで次々と難題を解決します。

師匠から信頼され、SHKの牧野長官からも頼りにされています。

しかし、武術が全くダメ。危険が迫るとすぐ逃げる。等ダメおやじです。

官兵衛の過去は、第二部で紹介されます。

3 11月

第二部 其の三 黄金バット伝説の巻

地中湖の円盤へ向かうメンバーは、師匠、グリエモン、らっきょむ、団丸、官兵衛、笑王、らんたま、そして牧野長官、まさえに決定した。

計画は、まずゾーナの秘密の地下アジトからエレベータを使い一気に地中湖まで行く。そこで師匠、官兵衛、団丸、グリエモン、らっきょむ、牧野長官、まさえが円盤へ向かう。後のメンバーはアジト内に残り後方支援をするというものだった。

メンバーは、地下アジトの入口からエレベータで一気に地下湖の入口に着いた。

SHKの潜水艇が地下湖の入口で待機していた。さっそく師匠等は潜水艇に乗り込んで円盤の入口と思われるところへ向かった。円盤は1900年以上地中湖の中に停留されていたためほとんど岩礁と化していた。潜水服に着替えたグリエモン、らっきょむ、団丸が潜水艇を離れ入口付近を調査し、近辺を撮影した。20分ほど経ってグリエモンたちは潜水艇にもどってきて入口近辺の映像をチェックした。映像を見ると、円盤に近づいくほど岩礁化や藻の茂みがひどかった。しあし、入口付近は、他に比べると浅くなんとなく入口のディテールが判った。映像を更に拡大してよく見てみると入口の上部にくぼみが見つかった。柩の中から取り出した箱がすっぽり入るぐらいのくぼみだった。恐らくそのくぼみに柩の中の箱をはめ込めば円盤の入口の扉が開くだろうと思えた。師匠が指示を出し、さっそく箱をはめ込むことにした。先ほど竹簡に従い位置を調整した箱は全体を強化ガラス繊維を含んだ特殊ポリプロピレンでコーティングした。水中に持ち込むための処理でこの加工により箱や小剣や勾玉の位置が寸分も狂わずに固定できた。

グリエモンとらっきょむ潜水スーツに着替え、その箱をそっと入口上部のくぼみに押し込んだ。

すると、円盤全体が一瞬黄金色に輝き、ついさきほど体験した同じ光が、天に向かうのと地中湖に向かうのと一線になり突き抜けていった。

一瞬、静寂になったかと思うと、ギュギュギュギュと金属がきしむような音が鳴り出し、円盤の扉が少しずつ開き出した。円盤の扉が開き終わったところでグリエモンとらっきょむが、まず扉の中を調べるために先に入った。すると不思議なことに円盤の中には湖水は入ってこず、入口を境目にして円盤の中には地上と同じ空気が存在した。グリエモンとらっきょむは、入口付近を再度調査した上で牧野長官をはじめ残りのメンバーを誘導し円盤内に入った。

円盤内は、眩しいくらいに煌々として明るかった。全員が円盤内に入った時、それを見届けたかのように、円盤の入口が自動的にゆっくりと閉じられていった。師匠等一同は、入口から奥へ続く長いアーチ型の通路をまっすぐに進んだ。20メートルほど先に次の扉があり、その扉も自動的に開き一同を中へ導き入れた。そしてまた20メートルほど進むとまた次の扉があり、同様に一行が中に入ると扉は閉じた。そこは大きな部屋になっていた。ここも煌々とした明かりが部屋全体を照らしていた。その部屋の中央には円柱形のテーブルだけが置かれてあった。そして数秒でそのテーブルを照らし出すように光が集まりだした。その光は何かをかたどっていった。徐々に形が定まって行った。そこには黄金バットが映し出された。どうやらホログラムのようだが、まるで本物のような完成度の高いものだった。

立体的な3Dでサイズこそ実物の1/2程度だが、映像という感じがしない本物の黄金バットがそこに居た。そして黄金バットは静かに口を開いた。

2 11月

第二部 其の二 柩の秘密の巻

官兵衛が言った通りゾーナの地下アジトから剣が見つかった。

さっそくSHK本部に運ばれてきた。

さっそく、会議を開いた。この会議には世界的な考古学の権威である笑王(わらわん)も参加しこの3種の宝の謎解きにかかった。

剣は、全長31センチ、柄の部分が12センチ、刃の部分が19センチの小剣だった。剣は中国の遺跡から出土した秦時代の剣と同じ種類のものだった。

これで、恐山の勾玉と剣山の柩、太秦の剣の3種の宝すべてが揃った。

師匠「さて、これをどうすれば、円盤の中に入れるようになるのか?」

笑王「師匠、先般恐山菩提寺から持ち帰った竹簡のコピーを解析したところ、この3種の宝にも触れていました。竹簡によると勾玉と柩、剣の扱いには寸分の狂いも許されないと記してあります。そこで精密機械に詳しく、鍵師としても右に出るものが居ないと言われているらんたまを呼んでいます。」
と笑王が言うと同時にらんたまが会議室に入ってきた。

師匠「らんたまか。久しぶりだな、宜しく頼む」

らんたまは会釈をして黙って頭を下げた。

らんたまは、持参した道具箱から大、中、小の電子ノギスを取り出した。この電子ノギスは、見た目はノギスと同じだが電気機器が組み込まれていて0.0001ミリメートルの単位まで計測することができた。

机の上に並べられた勾玉と柩、剣を手に取り電子ノギスで寸法を測りはじめた。

柩の長さ60.2543ミリ±1.4355、幅29.8991ミリ±1.2321ミリ高さ30.3122ミリ±1.2449と正確な数値がはじき出された。この数値は基地のモニターに形状と共にサイズの数値が自動的に映し出された。次に勾玉、剣もというふうに次々とモニターに形状とサイズの数値が映し出されて行った

数値を測り終わったところで、らんまるは笑王の方を見て目で合図を送った。

笑王は、竹簡に書かれた内容を読みはじめた。

柩の上部の蓋を下方に3.23センチずらし蓋を右回転に5.12度上に持ち上げる。すると、柩の箱上部側面より直径5.23センチの丸棒が1.22センチ飛び出した。その丸棒を4.15センチ引っ張り出す。すると反対面の側板が3.2ミリ下方にズレた。まるで寄木のからくり箱のようなしくみになっていた。竹簡の指示に従い558回柩の各部所をズラしたり、ひっぱったり、押したりした後、パカンという音とがして中から別の金属製の箱が現れた。竹簡に記された指示通り、その箱をそっと取り出し蓋を開けると、中には勾玉と小剣が収まるくぼみがあった。しかし、竹簡にはそのままそのくぼみに勾玉や小剣を収めてはいけないと記してあった。しくみは判らないがくぼみは微調整できる設計になっているようだった。0.00の単位で指示がしてありその通りにくぼみを移動した。そして勾玉と小剣をそのくぼみにはめ込んだ。

すると、いきなりその箱が黄金の光が発しだした。まわりのすべてを眩しいほどの黄金色に変えてしまった。すると光は、基地の天井を突抜け大空の彼方、宇宙へと突き刺すように放たれていった。数秒時間が経過した。先ほど大空へと向かって一直線に消えた光が今度は宇宙の彼方より地上に舞い降りてきて箱に収まった。今の光は一瞬基地の天井を突き破ったように思えたが、天井には、何の損傷も見られなかった。一瞬の出来事に全員あっけにとられていたが、師匠が場の緊張をほぐすように話し出した。

師匠「笑王、らんたま、よくやった。おそらくこれで地中湖の円盤に入れるだろう。さすがらんたま腕は全く衰えていないな。」

牧野長官「ご苦労様でした。私もまさえ君も地中湖へ向かう準備をしています。今から2時間後に作戦開始とします。」全員席を立ち準備に取りかかることになった。 

2 11月

第一部のあらすじ

紙芝居一座の座長ヤッサンとその座員は、表向きは紙芝居師として活動していたが、実態は世界の平和を守ることを使命にした能勢忍者の一団だった。

能勢忍軍は、真田幸村を祖とし、配下の霧隠才蔵の一子才吉を頭領とした。その16代目が紙芝居師のヤッサンである。そんなある日、世界平和のための紙芝居が次々とキャンセルされた。不審に思ったヤッサンは配下に調べさせることにした。

そんな時、世界の要人がさらわれるニュースが入った。そしてそれはヤッサンたちにも深い関わりがあった。突如現れたナゾの集団ゾーナ財団は、財力と最先端テクノロジーをもち、事件に深く関与していた。

事件の真相は恐山の鬼夢羅婆から知らされた。秦の始皇帝に仕えていた方士徐福が星占いにより始皇帝の命運が尽きることを知り、不死の妙薬を手に入れるべく東へと向かい、そこで大きな陸、すなわち直径100メートルの円盤に遭遇する。その円盤の中から現れた宇宙人から不死の妙薬を受取ったが、始皇帝に届ける寸前に始皇帝は崩御してしまった。その後宇宙人に連れられ宇宙へ旅立った。500年後徐福等一行は、恐山に降り立ち、不死の妙薬を守るため恐山、剣山、太秦の3地に別れそれぞれ剣、柩、勾玉に秘密を隠した。徐福は秦氏と名乗り葛野の地(京都)に新しい国造りをはじめた。円盤の宇宙人は、徐福との約束で2000年間日本を守ることになり、京都の地下800メートルにある地下湖に円盤を隠し、生命維持装置の中で眠りについた。

そして、今から70年前に世界に未曾有の危機が訪れた。この世界の危機に円盤の宇宙人が立ち上がった。宇宙人は黄金バットと名乗り、世界征服を企むナゾーと戦いこれを制圧した。しかし、環境の違う地球で戦ったため極端にエネルギーが奪われ、再び生命維持装置で眠りについていた。そして、今ナゾーの孫で1000年に1人という大天才のゾーナが現れた。恐山、剣山、太秦を舞台にゾーナ対能勢忍者の戦いがはじまった。そして苦労の末、勾玉と柩を手にいれた。そしてついに敵最大の地下アジトを制圧した。しかし、ゾーナからアジト制圧のことはシュミレータで予測していたことを告げ、直径200mを越す円盤で、宇宙へと飛び立っていった。

1 11月

第二部 其の一 黄金バットとの再開の巻

ゾーナは、直径200mの円盤で遠く空の彼方へ消えて行った。

直後、対策本部長が能勢忍軍、諜報機関SHK、警察特殊部隊、政府軍等の代表を集め、SHK大文字基地で会議を行なった。

場は重苦しい空気が流れていた。ゾーナ側のシュミレータにより、アジト奇襲その他の行動がすべて予測されていたということに大きなショックを受けていた。そのため会議は精彩を欠き、今後の行動について結論が出ないままそれぞれ自国、自局に戻り、対策を練ることとなった。

ゾーナの地下アジトの後処理は、諜報機関SHKと能勢忍軍が担当することになった。

会議終了後、諜報機関SHKと能勢忍軍は別室で今後の対策について再度話し合うこととなった。

SHK牧野長官、師匠、官兵衛、団丸、グリエモン、ラッキョム、あおくま、ドビンゴの面々が集まった。

会議が始まって30分が過ぎても誰も声を発しない沈黙が続いた。いや発せられなかった。ゾーナとの力のギャップがあまりにも大きく、これからの対策が思いつかなかったのだ。

その中で師匠が官兵衛に声をかけた。

師匠「官兵衛、手立てはないのか?」

官兵衛「いろいろと考えてはいるのですが、これといったものは浮かびません。

ただ、ひとつ思うところがあります。しかし、これはへたをすると世界がゾーナの手中に収まることになるでしょう。たいへん危険な賭けになってしまいます…」

牧野長官「どうせこのままでも、いずれゾーナがこの世界を支配することになるでしょう。官兵衛の考えを聞いて、後で全員で判断するとして、まずはその話を聞かせてくれませんか。」

官兵衛「わかりました。それでは、話しましょう。まず考えていただきたいのが、これまでの経緯です。苦労はしましたが、勾玉にしても、柩にしても、手に入れることができました。しかし、ゾーナのあの実力を持ってすれば本当なら我々が手に入れることはまずできなかったでしょう。そして3つめの剣もおそらく地下のアジトのどこかから遠からず見つかるでしょう。つまり、ゾーナは、勾玉、柩、剣をわれわれが手に入るように仕向けていると考えられませんか。では、なぜ我々に3種の宝を与えるのか…これも全くの仮説ですが、3種の宝で円盤を開けることはできるでしょう。でも不死の妙薬を手に入れるためには、円盤の中の黄金バットを目覚めさせその不死の妙薬を手に入れなければならない。黄金バットは決してゾーナには不死の妙薬は渡さないでしょう。そこで我々に3種の宝を与え、黄金バットを目覚めさせ我々が不死の妙薬を手にしたところで、それを奪うという考えではないではないでしょうか?そう考えると、シュミレータで予測出来た事態を見過ごし、配下のマスク男やアンドロイドたちを犠牲にして、宇宙へ飛び立ったこともうなずけます。問題は、三種の宝で円盤を開けて黄金バットから不死の妙薬を譲り受けるのか、黄金バットに預けたままにしておくのかということです。しかし、ゾーナが地下湖の円盤を模してさらに巨大な円盤をつくるテクノロジーは、黄金バットから不死の妙薬を奪い去るのも時間の問題でしょう。ゾーナは円盤の秘密を解き明かすために円盤から情報を抜き去り、それを探しに宇宙へ旅立ったとも考えられます。今度地球に帰ってきた時にはおそらく黄金バットから不死の妙薬を奪いさる力を備えていることも想定できます。危険な賭けと言ったのは、不死の妙薬は我々が預かることになる。つまり最大の危険がせまるということです。さてどうするのか…。あくまでもこれは仮説ですが、十分に考えられることだと思います。」

師匠「その不死の妙薬を預かり、ゾーナから守ることができるのか?」

官兵衛「現状では無理でしょう。」

師匠「では、どうすればいいのか。」

官兵衛「どうするか決める前に一度、黄金バットに会ってみませんか。幸いにも牧野長官やまさえさんは、黄金バットと関係があります。黄金バットの知恵を借りてみてはどうでしょう。」

牧野長官「わかりました。私も黄金バットには是非会いたいと思っていた。手はずは官兵衛に任せます。」

牧野長官が他の者にも意見を求めたが、全員がまず官兵衛に任せるという結論にたっした。

その時、SHK本部から牧野長官に連絡が入り、ゾーナの地下アジトで剣が見つかったことが報告されたのだった。

30 10月

第二部にあたって

いよいよ、「ヤッサン一座忍法帳」第二部が始まります。
今は、紙芝居甲子園の準備で忙しく書いたものをまとめる時間がありません。
この「ヤッサン一座忍法帳」は、電車の移動や仕事の合間の休憩時間を利用して書いています。
琵琶湖の湖西沿線に住んでいるので、休みの日に琵琶湖一周しながら小説を書いたこともありました。
小説は、はじめての試みのため、誤字脱字や文脈にも辻褄のあわないところが多々あろうかと思いますが、宜しくお願いします。
国際紙芝居協会の運営をしていますが、紙芝居師が「表向きは紙芝居師のおっちゃんだけど、実は世界平和のために活動している忍者なのだ。」というのがこの小説を書くきっかけとなりました。将来は紙芝居師ひとりひとりの物語が書きたいですね。
恐らく、「ヤッサン一座忍法帳」は、第二部で終了します。
恐らくというのは、書いていて気が変わるかもしれないからです。本来は一話で終わらせるつもりだったのですが、どんどん話が広がってしまってどうしても第二部をつくることになりました。
小説を書くのはたいへんだけど、充実感があります。
どうぞ「ヤッサン一座忍法帳」第二部を宜しくお願いします。
ただ、11月6日が紙芝居甲子園のため一部連載が遅れる可能性もあります。
その時はご容赦ください。
livedoor プロフィール
カテゴリ別アーカイブ
  • ライブドアブログ