(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしていたら春も終ってしまう。
13-333《荷葉盃九首,其九》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-516-13-(333) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4127
荷葉杯九首
其一
(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)
春盡小庭花落,寂寞。
春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。
凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。
高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。
知摩知?知摩知?
此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。
(荷葉杯九首 其の一)
春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。
檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。
知らんや知らん?知らんや知らん?
其二
(放蕩男を待つ女を詠う)
歌發誰家筵上,寥亮。
歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。
別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。
別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。
愁摩愁,愁摩愁。
愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。
其の二
歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。
別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。
愁えんや愁う,愁えんや愁う。
其三
(都の貴公子男について詠う)
弱柳好花盡拆,晴陌。
若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。
陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。
そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。
狂摩狂,狂摩狂。
どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。
どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。
(其の三)
弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。
陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。
狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。
其四
(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)
記得那時相見,膽戰。
私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。
鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。
髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。
羞摩羞,羞摩羞。
それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。
それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。
(其の四)
記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。
鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。
羞らんや羞り,羞らんや羞る。
其五
(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)
夜久歌聲怨咽,殘月。
秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。
菊冷露微微,看看濕透縷金衣。
菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、
歸摩歸,歸摩歸。
あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。
あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。
(荷葉杯九首 其の五)
夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。
菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。
歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。
其六
(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)
我憶君詩最苦,知否。
あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。
字字盡關心,紅牋寫寄表情深。
その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。
吟摩吟,吟摩吟。
この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、
この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。
(其の六)
君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。
字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。
吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。
其七
(全てが絶頂の可愛くて仕方がない女を詠う)
金鴨香濃鴛被,枕膩。
鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。
小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。
夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。
憐摩憐,憐摩憐。
可愛いいですかとても可愛いでしょう、
可愛いいですかとても可愛いでしょう。
(其の七)
金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。
小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。
憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。
其八
(女最盛期は最上の扱いであることを詠う)
曲砌蝶飛煙暖,春半。
奥座敷の奥まった階のみぎりの所に花壇があり、朝が飛んできて、春霞の暖かい陽だまりに、春は真っ只中の景色である。
花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。
花が一杯に開き、柳の梢は葉をつけたれかけているこの街にも春の盛りを迎えている。ここの美女も春の盛りで、両の瞳は花が開いたようであり、その細い腰つきは柳を揺らせるように美しい。
嬌摩嬌,嬌摩嬌。
これはなよなよと愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。
愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。
(其の八)
曲砌 蝶飛び 煙暖か,春半ばなり。
花は發き 柳條を垂れ,花は雙臉の如く柳は腰の如し。
嬌せんや嬌し,嬌せんや嬌す。
其九
(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)
一去又乖期信,春盡。
一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしていたら春も終ってしまう。
滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。
この庭には長いこと姫蔓コケモモが一杯になるけれど、女もこれとおんなじで庭に出るだけだ。手をこすり合わせ、スカートに帯を付けて一人この庭を歩き回ることしかできない。
來摩來,來摩來。
帰って来るのか、いや帰って来る。
帰って来るのか、きっと帰って来る。
(其の九)
一たび去り 又た期信を乖【かい】す,春盡る。
滿院 長しく莓苔あり,手挼【しゅだい】裙帶【くんたい】獨り徘徊す。
來らんや來り,來らんや來る。
『荷葉盃九首其八』 現代語訳と訳註
(本文)
其九
一去又乖期信,春盡。
滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。
來摩來,來摩來。
(下し文)
(其の九)
一たび去り 又た期信を乖【かい】す,春盡る。
滿院 長しく莓苔あり,手挼【しゅだい】裙帶【くんたい】獨り徘徊す。
來らんや來り,來らんや來る。
(現代語訳)
(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)
一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしていたら春も終ってしまう。
この庭には長いこと姫蔓コケモモが一杯になるけれど、女もこれとおんなじで庭に出るだけだ。手をこすり合わせ、スカートに帯を付けて一人この庭を歩き回ることしかできない。
帰って来るのか、いや帰って来る。
帰って来るのか、きっと帰って来る。
(訳注)
荷葉杯九首
『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❻❷/⑤⑦③③の詞形をとる。
唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。
| | | | |
| 花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首 | | ||
| 溫助教庭筠 | | | |
| | | | |
| | | | |
| 韋荘(韋相莊) | | | |
| | | | |
| 顧敻(顧太尉敻) | | 荷葉盃九首 | |
| | | | |
其九
(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)
一去又乖期信,春盡。
一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしてたら春も終ってしまう。
乖とは。意味や日本語訳。[形](1) (子供が)おとなしい,素直な这孩子真乖この子は本当に素直だ.(2) 賢い,利口な乖觉機敏で賢い.(1) 非常識な,道にもとる乖舛間違った.(2) ひねくれた.乖乖 guāiguāi[形](~儿的)おとなしい,ききわけがよい
滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。
この庭には長いこと姫蔓コケモモが一杯になるけれど、女もこれとおんなじで庭に出るだけだ。手をこすり合わせ、スカートに帯を付けて一人この庭を歩き回ることしかできない。
・莓苔 紅莓苔子のことで、蔓苔桃という植物。常緑低木の総称。北半球、寒帯の酸性の沼地に見られる。 主な種はツルコケモモ(蔓苔桃)、ヒメツルコケモモ(姫蔓苔桃)、オオミノツルコケモモ(大実蔓苔桃)、アクシバ(灰汁柴、青木柴)。
挼とは。意味や日本語訳。[動](1) (紙などが)皺(しわ)になる.(2) (布などが)すりへる.
來摩來,來摩來。
帰って来るのか、いや帰って來る。
帰って来るのか、きっと帰って來る


























































