玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

2014年05月

14-364《後庭花二首其二》孫光憲(24)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-547-14-(364) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4282

二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。


        
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後庭花二首其一

(昔から宮廷には瓊花の花びらのようにおびただしい宮女がいる。今日もまた新しい宴会が開かれる。)

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

陳の宮殿には景陽井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴ろうとも、早朝、鶯がなきはじめても、酒宴を開き続け、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶えなかった。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

そんな宮中の庭で、軽く頬を撫でてゆく程度の風が吹き上げ、小さな錠の花の瓊花の香りが漂う、香り良い葉を鋏みできった時のように香りがしたのだ。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

やがて夕刻になって、高楼の上に昇ってみた。玉の簾を巻き上げてみる。見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさん散り落ちているかのように宮女たちであふれているのである。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

宮女たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれるのだ。

(後庭花二首其の一)

景陽 鐘動して 宮には鶯が囀り,露涼して 金殿あり。

輕飇 吹起して 瓊花の綻,玉葉は翦の如し。

晚來して高閣に上り,珠簾 卷く,見れば 香千片墜つ。

脩蛾し 慢臉して 雕輦に陪すれば,後庭 新らたに宴す。

 

 

後庭花二首其二

 (歓楽街の若い美人たちも、宮女たちも絶世の美女陳の張貴妃もやがては散り去って、誰も覚えていない。悲しい女の定めを詠う。)

石城依舊空江國,故宮春色。

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。

七尺青絲芳草綠,世難得。

それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。

只是教人添怨憶,悵望無極。

こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

石城 舊に依りて  空しき江國, 故宮は  春色。

七尺の靑絲  芳草 碧なり, 絶世  得難し。

玉英 凋【しぼ】み落ちて 盡き, 更に 何人か 識らん。

 野棠 織るが如く, 只だ是れ 人をして 怨憶を 添へ敎【し】む, 悵望 極り無し。

 

唐時代 韓愈関連05
 

『後庭花二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

後庭花二首其二

石城依舊空江國,故宮春色。

七尺青絲芳草綠,世難得。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

只是教人添怨憶,悵望無極。

 

(下し文)

石城 舊に依りて  空しき江國, 故宮は  春色。

七尺の靑絲  芳草 碧なり, 絶世  得難し。

玉英 凋【しぼ】み落ちて 盡き, 更に 何人か 識らん。

 野棠 織るが如く, 只だ是れ 人をして 怨憶を 添へ敎【し】む, 悵望 極り無し。

 

(現代語訳)

(歓楽街の若い美人たちも、宮女たちも絶世の美女陳の張貴妃もやがては散り去って、誰も覚えていない。悲しい女の定めを詠う。)

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。

それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。

美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。

こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

 金陵城図00

 

(訳注)

後庭花二首

花間集に教坊曲『後庭花』は五首収められているが、孫光憲は二首である。双調四十六字、前段二十二字、三仄韻、後段二十五字、四仄韻で、❼❹7❹/5❸❺❼❹の詞形をとる。孫光憲と毛熙震とで独自の詞形を作ったもの。

『後庭花』とあるのは、後宮の庭に咲く花、杜甫は「先帝の侍女八千人」、白居易は「後宮の佳麗三千人」といっている。この時代は女性が人とされていないので、男も士族以上で人数として把握された。宮女は礼をもって迎い入れられたもの、貴族、富貴の者など家柄を重んじて選抜されたもの、一部の物を除いて、献上されたもの、罪人の家【藉跋・藉没】の女性、宮廷の官奴婢にされたものをいうのである。「後宮」は政治を営む場とは異なる、天子の私的生活の場。陳の後主(陳叔宝)が歓楽に溺れて国を亡ぼしたことに基づいてこの詩を読む。

後庭花 其二

 

石城依舊空江國, 故宮春色。

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。

・石城:石頭城。越は楚に滅ぼされ,この付近も楚の領域に入ったが,楚の威王のとき,この地に王気がみられるとして,これを鎮めるために金を埋め,今の清涼山付近に城を築いたことから,金陵と称したといわれる。これは秦淮河が長江に流入する地点をみおろす要害の地で,のちに孫権が石頭城を築く。 秦は金陵邑を秣陵県(ばつりようけん)とし,漢代に入ると周辺には丹陽,江乗,胡孰(こじゆく)などの諸県が設けられ丹陽郡に属した。石頭城は、秦淮河の畔にある古都の城郭。唐以前に六代の王朝のが置かれた。古来い多くの詩人が石頭城を詠う。

劉禹錫『石頭城』「山圍故國週遭在,潮打空城寂寞回。淮水東邊舊時月,夜深還過女牆來。」、

韋莊『金陵圖』「江雨霏霏江草齊,六朝如夢鳥空啼。無情最是臺城柳,依舊烟籠十里堤。」、

欧陽炯『江城子』「晩日金陵岸草平,落霞明,水無情。六代繁華,暗逐逝波聲,空有姑蘇臺上月,如西子鏡,照江城。」、11 -16 江城子一首 歐陽舍人炯十七首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-426-11-#16  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3677

・依舊 昔通りである。昔のままである。 

・空江國 六朝の江南の古城は残っているが、王朝は皆滅亡し、城郭だけが変わらずに残っていることを「空」と表した。

・故宮 昔の宮殿。 

・春色 春の景色。

 

七尺靑絲芳草碧, 絶世難得。

それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。

・七尺靑絲 南朝・陳の張貴妃の黒髪のような美しくて長い柳の枝。・七尺:唐の大尺で、1尺は約29.4センチメートル、小尺は約24.6センチメートル。七尺では大尺で:約2.05メートル、小尺で:約1.72メートル。 

・芳草 香りのよい春の草。 

・碧 緑色をしている。綠とするのもある。

・絶世 世に並ぶものがなく、すぐれていること。ここでは、前の「石城依舊」から、絶世の傾国、美女を指す、張貴妃のこと。 

・難得 得難い。

 

玉英凋落盡, 更何人識。

美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。

・玉英 ここは、美しい花びら、南京の歓楽街の美人を示している。 

・凋落 しぼみ落ちること。 

・盡 つきる。

・更 その上。さらに。 

・識 おぼえている。しる。ここは、前者の義。

 

野棠如織, 只是敎人添怨憶, 悵望無極。

こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

・野棠 棠梨。こりんご。やまなし。ここではその花も指す。 

・如織 野棠の花と葉の色の釣り合いが恰も織物の如くに美しいことをいう。

・只是 ただこれ。(美しい野棠の花も)ただ人に(かなしい思いを思い出させる)だけだ。 

・敎人 人をして…せしむ。人に…させる。人に(かなしい思いを思い出)させる。敎:使役の(助)動詞で、古語では、平声。 

・添 そえる。一層(かなしい思いをするだけだ)。 

・怨憶 うらめしい思い出。陳後主陳叔寶と張貴妃の故事等、六朝の哀史を指す。

・悵望 うらめしげに見遣る。 

・無極 極まり無い。果てしない。

 

陳後主、陳叔寶 582年に宣帝は崩御し、皇太子の陳叔寶が即位した。だがこの皇帝は相当な暗君で、貴妃張麗華と共に享楽に溺れ、沈客卿・施文慶ら奸臣を重用して国政を乱し、遊興にふけって政務を顧みなかった。このため陳の国力は衰退の一途をたどり、588年から北周を滅ぼして成立していた隋の文帝が50万の大軍を南下させると、陳は抵抗しきれずに589年に陳叔寶は降伏して陳は滅亡した。ここに400年に及ぶ魏晋南北朝時代が終結し、大陸は隋に支配されることになった。なお、陳叔寶は暗君だった事が逆に幸いして文帝に警戒されず生かされる事になり、陳の皇族や官僚、おびただしい捕獲品と共に長安に送られた。陳は国家として非常に繁栄、後主の時代には文化が爛熟し、六朝文化の粋として隋や唐の文化にも影響を与えた。ただし陳が滅亡した際、隋により首都建康の建造物や文化の象徴たるものは悉く破壊された。

 

李商隠『陳後宮』

茂苑城如畫、閶門瓦欲流。

還依水光殿、更起月華棲。

侵夜鸞開鏡、迎冬雉獻裘。

従臣皆牛酔、天子正無愁。

茂苑が広がる都は絵のように美しく、呉の都の西の閶門の瓦は水が流れうるおうようにかがやいていた。

水と光とする宮女との戯れを御殿により愛でた、月と華をと宮女たちを賞美する楼閣までさらに建てたのだ。

夜の更けるまで鑾を刻した鏡を開いてお化粧が続き、冬になると雉の首の裘という奇態な物も献上されました。

家来どもはみな酔い心地、無愁天子さまはその名の通り何の愁いもありませんでした。

李商隠『景陽井』
景陽宮井剰堪悲、不盡龍鸞誓死期。
腸断呉王宮外水、濁泥猶得葬西施。
宮殿の中の井戸に愛妃張麗華・孔貴人と共に身を隠した陳の後主の物語は、悲しさに耐えてなおも余りある出来事である。竜の国王、鸞の愛妃は万一の時、共に死のうと誓っていたが、その誓いは果されるものではなかった。女のやるせなさの話は、呉王夫差と西施との物語は呉が滅びてから、西施は不祥の者として宮殿の外、五湖の水に沈められたものである、呉王の墓陵近くその湖の濁った泥水であるが西施は葬られたわけだから考えようによっては救いがあるということなのだ。

 

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14-363《後庭花二首其一》孫光憲(23)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-546-14-(363)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4277

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている。

 

花間集 教坊曲『後庭花』五首

少監光憲

巻八

後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,

孫光憲 

巻八

後庭花二首其二

石城依舊空江國,

秘書熙震

巻十

後庭花三首其一

鶯啼鷰語芳菲節,

毛熙震 

巻十

後庭花三首其二

輕盈舞妓含芳豔,

毛熙震 

巻十

後庭花三首其三

越羅小袖新香蒨,

 

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後庭花二首其一

(昔から宮廷には瓊花の花びらのようにおびただしい宮女がいる。今日もまた新しい宴会が開かれる。)

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

陳の宮殿には景陽井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴ろうとも、早朝、鶯がなきはじめても、酒宴を開き続け、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶えなかった。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

そんな宮中の庭で、軽く頬を撫でてゆく程度の風が吹き上げ、小さな錠の花の瓊花の香りが漂う、香り良い葉を鋏みできった時のように香りがしたのだ。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

やがて夕刻になって、高楼の上に昇ってみた。玉の簾を巻き上げてみる。見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさん散り落ちているかのように宮女たちであふれているのである。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

宮女たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれるのだ。

(後庭花二首其の一)

景陽 鐘動して 宮には鶯が囀り,露涼して 金殿あり。

輕飇 吹起して 瓊花の綻,玉葉は翦の如し。

晚來して高閣に上り,珠簾 卷く,見れば 香千片墜つ。

脩蛾し 慢臉して 雕輦に陪すれば,後庭 新らたに宴す。

 

 

後庭花二首其二

石城依舊空江國,故宮春色。

七尺青絲芳草綠,世難得。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

只是教人添怨憶,悵望無極。

 

瓊花0102
 

『後庭花二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

 

(下し文)

(後庭花二首其の一)

景陽 鐘動して 宮には鶯が囀り,露涼して 金殿あり。

輕飇 吹起して 瓊花の綻,玉葉は翦の如し。

晚來して高閣に上り,珠簾 卷く,見れば 香千片墜つ。

脩蛾し 慢臉して 雕輦に陪すれば,後庭 新らたに宴す。

 

(現代語訳)

(昔から宮廷には瓊花の花びらのようにおびただしい宮女がいる。今日もまた新しい宴会が開かれる。)

陳の宮殿には景陽井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴ろうとも、早朝、鶯がなきはじめても、酒宴を開き続け、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶えなかった。

そんな宮中の庭で、軽く頬を撫でてゆく程度の風が吹き上げ、小さな錠の花の瓊花の香りが漂う、香り良い葉を鋏みできった時のように香りがしたのだ。

やがて夕刻になって、高楼の上に昇ってみた。玉の簾を巻き上げてみる。見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさん散り落ちているかのように宮女たちであふれているのである。

宮女たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれるのだ。

 

瓊花02
 

(訳注)

後庭花二首

花間集に教坊曲『後庭花』は五首収められているが、孫光憲は二首である。双調四十六字、前段二十二字、三仄韻、後段二十五字、四仄韻で、❼❹7❹/5❸❺❼❹の詞形をとる。孫光憲と毛熙震とで独自の詞形を作ったもの。

『後庭花』とあるのは、後宮の庭に咲く花、杜甫は「先帝の侍女八千人」、白居易は「後宮の佳麗三千人」といっている。この時代は女性が人とされていないので、男も士族以上で人数として把握された。宮女は礼をもって迎い入れられたもの、貴族、富貴の者など家柄を重んじて選抜されたもの、一部の物を除いて、献上されたもの、罪人の家【藉跋・藉没】の女性、宮廷の官奴婢にされたものをいうのである。「後宮」は政治を営む場とは異なる、天子の私的生活の場。陳の後主(陳叔宝)が歓楽に溺れて国を亡ぼしたことに基づいてこの詩を読む。

其一

(昔から宮廷には瓊花の花びらのようにおびただしい宮女がいる。今日もまた新しい宴会が開かれる。)

 

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

陳の宮殿には景陽井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴ろうとも、早朝、鶯がなきはじめても、酒宴を開き続け、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶えなかった。

○景陽井 江蘇省江寧県の北、陳の宮殿の井戸の名。隋の軍隊が国都建虚(南京)に侵入した夜もなお訪宴に耽っていた陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた。陳後宮 李商隠:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 53

○鐘動・鶯囀 「猿鳴鐘動不知曙」(猿鳴き 鐘動いて 曙を知らず)謁衡獄廟遂宿獄寺題門樓 韓退之(韓愈)詩<51-#4>Ⅱ中唐詩347 紀頌之の漢詩ブログ1120

○金殿  金で飾った宮殿。また、非常に美しい御殿。

 

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

そんな宮中の庭で、軽く頬を撫でてゆく程度の風が吹き上げ、小さな錠の花の瓊花の香りが漂う、香り良い葉を鋏みできった時のように香りがしたのだ。

○輕飇 軽く頬を撫でてゆく風。飇:つむじかぜ。涼飇】. 涼しい風。

○瓊花 江蘇省、揚州市が原産で、隋から唐の時代、「玉蘂」とも呼ばれ、その芳香のある黄白色の花が愛でられた。ただ不稔であったために、「聚八仙」という台木に接ぎ木して増やしていたが、元軍の進入とともに絶え、その後は残った台木の「聚八仙」が「瓊花」と呼ばれるようになったという。

○翦 =剪。切りそろえる。断ち切る。

 

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

やがて夕刻になって、高楼の上に昇ってみた。玉の簾を巻き上げてみる。見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさん散り落ちているかのように宮女たちであふれているのである。

 

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

宮女たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれるのだ。

○脩蛾 化粧をきちんと施すこと。蛾は眉をかくこと。

○慢臉 ゆったりと落ち着いた顔つき。
杏の花0055
 

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心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、一緒に過ごしたいと思う春心が報われないのは暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。


        
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoor14-362《虞美人二首(虞每人二首)》孫光憲(22)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-545-14-(362) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4272 
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 魚玄機全詩●花間集(6)●花間集(7)●花間集(8)●花間集(9)●花間集(10) 
 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
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花間集 教坊曲『虞美人』十四首

毛文錫(毛司徒文錫)

巻五

虞美人二首 其一

鴛鴦對浴銀塘暖,

 

巻五

虞美人二首 其二

寶檀金縷鴛鴦枕,

顧夐(顧太尉

巻六

虞美人六首 其一

曉鶯啼破相思夢,

 

巻六

虞美人六首 其二

觸簾風送景陽鐘,

 

巻六

虞美人六首 其三

翠屏閑掩垂珠箔,

 

巻六

虞美人六首 其四》

碧梧桐映紗晚,

 

巻六

虞美人六首 其五

深閨春色勞思想,

 

巻六

虞美人六首 其六

少年豔質勝瓊英,

孫光憲(孫少監光憲

巻八

虞美人二首其一

寂寂無人語

 

巻八

虞美人二首其二

好風微揭簾旌起,

鹿虔扆(鹿太保虔扆

巻九

虞美人一首

卷荷香澹浮煙渚

閻選(閻處士選

巻九

虞美人二首其一

粉融紅膩蓮房綻,

 

巻九

虞美人二首其二

楚腰蠐領團香玉,

李珣(李秀才珣

巻十

虞美人一首

金籠鶯報天將曙

 

 

虞美人二首       其一

           寂寂無人語,暗澹梨花雨。

           繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

           天涯一去無消息,終日長相憶。

           交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

(虞美人のような美人のもとを訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす美人を詠う。)

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春というのに長雨は梨の花を濡らすけれど、薄暗くひっそりとしている。

閨の刺しゅう入りのシーツを取り換え、お化粧をし直し新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回した。うとうとしてあの人を迎えようとする気持ちも消えてきた。

どこか遠くの果てに一度行ってしまったら音沙汰は全くない。日がな一日ずーっとあの人のことを思い続けるだけだ。

あのひとは行き着くところで思いをかよわすことだろうけれど、そんなことはいつやめてくれるのだろうか。恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

(虞美人二首    其の一)

 寂寂とし 人語ること無し,暗澹 梨花の雨。

繡羅 紋地 粉 新らた描き,博山 香炷 抽條旋る,睡魂 銷す。

天涯 一び去り 消息無く,終日 長く相いに憶う。

交人 相いに憶う 幾時 休まん? 悵觸 別離の愁に堪えざらん,淚 還た流る。

 

             

虞美人二首       其二

           好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

           翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

           畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

           交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

(約束の春の日、何時しか夏になるが帰ってこない。帰らぬ男を思う女の情を詠う)

心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。

翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、一緒に過ごしたいと思う春心が報われないのは暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。

奥座敷の閏には春には帰って来ると川の絵屏風をだしてたてかけたが空しく広がり寂しさに覆われている、帰って来るからと香炉に香を焚くが一筋の煙がほそながく漂ってのこっている。

あの人にこの思いを寄せたいと思うけれど居場所さえわからない、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、あの時逢瀬の約束日はとっくに過ぎてしまった、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

(虞美人二首其の二)

好風 微かに掲げ 簾旌を起こし、金巽 鸞 相い倚る。

翠簷 愁い聴く 乳禽の声、此の時 春態 暗に情に関わり、独り平らかなり難し。

画堂 流水 空しく相いに翳【おお】い、一穂 香 搖曳す。

交【こ】の人 相思を寄する処無く、落花 芳草 前期を過ぎて、人の知ること没し。

 

DCF00207
 

『虞美人二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

虞美人二首           其二

好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

 

 

(下し文)

(虞美人二首其の二)

好風 微かに掲げ 簾旌を起こし、金巽 鸞 相い倚る。

翠簷 愁い聴く 乳禽の声、此の時 春態 暗に情に関わり、独り平らかなり難し。

画堂 流水 空しく相いに翳【おお】い、一穂 香 搖曳す。

交【こ】の人 相思を寄する処無く、落花 芳草 前期を過ぎて、人の知ること没し。

 

(現代語訳)

(約束の春の日、何時しか夏になるが帰ってこない。帰らぬ男を思う女の情を詠う)

心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。

翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、一緒に過ごしたいと思う春心が報われないのは暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。

奥座敷の閏には春には帰って来ると川の絵屏風をだしてたてかけたが空しく広がり寂しさに覆われている、帰って来るからと香炉に香を焚くが一筋の煙がほそながく漂ってのこっている。

あの人にこの思いを寄せたいと思うけれど居場所さえわからない、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、あの時逢瀬の約束日はとっくに過ぎてしまった、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

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(訳注)

虞美人二首    

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調五十八字、前後段五句二十九字二仄韻三平韻で、❼❺⑦⑦③/❼❺⑦⑦③の詞形をとる。

○虞美人 項羽の愛姫で虞姫ともいう。5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか)(安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。虞美人草の名は,彼女の鮮血が化して草花になったという伝から来ている。

秦末 虞美人『虞美人歌』

漢兵已略地,四方楚歌聲。

大王意氣盡,賤妾何聊生。

(虞美人の歌)

漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。

大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

虞美人歌  秦末・虞美 詩<118>古代 女性詩 555 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1482

 

其二

(約束の春の日、何時しか夏になるが帰ってこない。帰らぬ男を思う女の情を詠う)

【解説】 旅に出たのか、他の女のもとなのか、登場の「虞美人」は、春というもの、四面幔幕で覆われ行楽を楽しむはずであったもの。それが、四面楚歌ならぬ四面静寂であるということなのだ。帰らぬ男を思う女の情を詠う。春は万物が成長するとき、また、“春情を抑えることが出来ない”というのを前提にしないとここに登場する「虞美人」の辛さがわからない。

 

好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。

○簾旌 簾が幔幕や吹き流しのように持ち上げられる様子であることをいう。旌は吹き流しの様な旗。

○金翼鸞 簾に金糸で刺繍された鸞。

 

翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、一緒に過ごしたいと思う春心が報われないのは暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。

○翠篇 翠色の庇。

○春態 春の姿、様態。

燕002
 

畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

奥座敷の閏には春には帰って来ると川の絵屏風をだしてたてかけたが空しく広がり寂しさに覆われている、帰って来るからと香炉に香を焚くが一筋の煙がほそながく漂ってのこっている。

○流水 ここでは川を描いた屏風を指すと同時に、流れ去る時を暗示している。

○翳 掩う。

 

交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

あの人にこの思いを寄せたいと思うけれど居場所さえわからない、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、あの時逢瀬の約束日はとっくに過ぎてしまった、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

○交人無処寄相思 交は使役の意味である。人をこんな気持ちにさせる。その思いを寄せるところがない。

○前期 以前に交わした逢瀬の約束の期日。
博山爐01
 

14-361《虞美人二首(虞每人二首)》孫光憲(21)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-544-14-(361) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4267

虞美人二首(虞每人二首)》孫光憲(21)閨の刺しゅう入りのシーツを取り換え、お化粧をし直し新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回した。うとうとしてあの人を迎えようとする気持ちも消えてきた。


        
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花間集 教坊曲『虞美人』十四首

毛文錫(毛司徒文錫)

巻五

虞美人二首 其一

鴛鴦對浴銀塘暖,

 

巻五

虞美人二首 其二

寶檀金縷鴛鴦枕,

顧夐(顧太尉

巻六

虞美人 其一

曉鶯啼破相思夢,

 

巻六

虞美人六首 其二

觸簾風送景陽鐘,

 

巻六

虞美人六首 其三

翠屏閑掩垂珠箔,

 

巻六

虞美人六首 其四》

碧梧桐映紗晚,

 

巻六

虞美人六首 其五

深閨春色勞思想,

 

巻六

虞美人六首 其六

少年豔質勝瓊英,

孫光憲(孫少監光憲

巻八

虞美人二首其一

寂寂無人語

 

巻八

虞美人二首其二

好風微揭簾旌起,

鹿虔扆(鹿太保虔扆

巻九

虞美人一首

卷荷香澹浮煙渚

閻選(閻處士選

巻九

虞美人二首其一

粉融紅膩蓮房綻,

 

巻九

虞美人二首其二

楚腰蠐領團香玉,

李珣(李秀才珣

巻十

虞美人一首

金籠鶯報天將曙

 

 

虞美人二首           其一

              寂寂無人語,暗澹梨花雨。

              繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

              天涯一去無消息,終日長相憶。

              交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

(虞美人のような美人のもとを訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす美人を詠う。)

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春というのに長雨は梨の花を濡らすけれど、薄暗くひっそりとしている。

閨の刺しゅう入りのシーツを取り換え、お化粧をし直し新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回した。うとうとしてあの人を迎えようとする気持ちも消えてきた。

どこか遠くの果てに一度行ってしまったら音沙汰は全くない。日がな一日ずーっとあの人のことを思い続けるだけだ。

あのひとは行き着くところで思いをかよわすことだろうけれど、そんなことはいつやめてくれるのだろうか。恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

             

虞美人二首           其二

              好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

              翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

              畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

              交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

 

Flower1-001
 

 

『虞美人二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

虞美人二首           其一

寂寂無人語,暗澹梨花雨。

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

天涯一去無消息,終日長相憶。

交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

 

(下し文)

(虞美人二首       其の一)

 寂寂とし 人語ること無し,暗澹 梨花の雨。

繡羅 紋地 粉 新らた描き,博山 香炷 抽條旋る,睡魂 銷す。

天涯 一び去り 消息無く,終日 長く相いに憶う。

交人 相いに憶う 幾時 休まん? 悵觸 別離の愁に堪えざらん,淚 還た流る。

 

 

(現代語訳)

(虞美人のような美人のもとを訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす美人を詠う。)

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春というのに長雨は梨の花を濡らすけれど、薄暗くひっそりとしている。

閨の刺しゅう入りのシーツを取り換え、お化粧をし直し新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回した。うとうとしてあの人を迎えようとする気持ちも消えてきた。

どこか遠くの果てに一度行ってしまったら音沙汰は全くない。日がな一日ずーっとあの人のことを思い続けるだけだ。

あのひとは行き着くところで思いをかよわすことだろうけれど、そんなことはいつやめてくれるのだろうか。恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

 

 

(訳注)

虞美人二首    

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調五十八字、前後段五句二十九字二仄韻三平韻で、❼❺⑦⑦③/❼❺⑦⑦③の詞形をとる。

○虞美人 項羽の愛姫で虞姫ともいう。5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか)(安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。虞美人草の名は,彼女の鮮血が化して草花になったという伝から来ている。

秦末 虞美人『虞美人歌』

漢兵已略地,四方楚歌聲。

大王意氣盡,賤妾何聊生。

(虞美人の歌)

漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。

大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

虞美人歌  秦末・虞美 詩<118>古代 女性詩 555 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1482

 

其一 

(虞美人のような美人のもとを訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす美人を詠う。)

ここに言う虞美人は少し年を重ねた虞美人のような美人。たれも自分のもとには訪れる人がなく四面静寂であることで生きることに憑かれたことを詠う。

 

寂寂無人語,暗澹梨花雨。

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春というのに長雨は梨の花を濡らすけれど、薄暗くひっそりとしている。

 

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

閨の刺しゅう入りのシーツを取り換え、お化粧をし直し新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回した。うとうとしてあの人を迎えようとする気持ちも消えてきた。

○繡羅紋地 閨の刺しゅう入りのシーツを取り換える。

○粉新描 お化粧をし直し新しく眉を書きなおした。

○博山香炷 香炉の一種で,豆(とう)形の火皿に先端のとがった山形の蓋をもつ。承盤をともなうものも多く,これは海中に浮かぶ神山(蓬莱山)にたとえたとみられ,神仙道との関係がうかがわれる。戦国末期にあらわれ,漢代に盛行し,青銅製品には金象嵌をほどこした華麗なものがある。江南では東晋,南朝代に青磁製のものがみられる。南北朝代には仏教徒も用い,仏像の台座正面や供養者の持物にあらわされた。隋・唐代には山形の蓋が蓮華をかたどった緑釉陶もつくられた。いずれにしても、高価なもので、それ相応の人物からの贈り物と考えられる。

○旋抽條 一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回すること。

博山爐01
 

天涯一去無消息,終日長相憶。

どこか遠くの果てに一度行ってしまったら音沙汰は全くない。日がな一日ずーっとあの人のことを思い続けるだけだ。

○相憶 相思ということはお互いに思うというのではなく相手を思う、一方的に思うということ。

 

交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

あのひとは行き着くところで思いをかよわすことだろうけれど、そんなことはいつやめてくれるのだろうか。恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

○交人 交は使役の意味である。人をこんな気持ちにさせる。
悵觸 惆悵に接触ということで、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいとうれうことにもうたえられない。

14-360《河瀆神二首其二》孫光憲(20)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-543-14-(360) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4262

女は独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごした女はある朝、あの人を思うのをやめようと決意したのだ。船に乗って行ってしまったあの人の行く先は全く分からない。

        
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14-360

《河瀆神二首其二》孫光憲(20)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-543-14-(360)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4262

 

 

河瀆神 一首 張泌【ちょうひつ】ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-359-7-#21  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3342

河瀆神 三首其一 温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞Gs-362-1-#68 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3357

河瀆神 三首其二 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-363-1-#69  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3362

河瀆神 三首其三 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-364-1-#70  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3367

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 孫少監光憲四十七首

菩薩蠻五首

河瀆神二首

虞美人二首

後庭花二首

子三首

臨江仙二首

酒泉子三首

清平樂二首

更漏子二首

女冠子二首

風流子三首

定西番二首

河滿子一首

玉蝴蝶一首

八拍蠻一首

竹枝一首

思帝一首

上行盃二首

謁金門一首

思越人二首

陽柳枝四首

望梅花一首

漁歌子二首

 

 

 

河瀆神二首       其一

(聖女子のもとに秋がおとずれるのと夜が早く来るその景色をうたう)

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

ここの汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

汾水の女神の「翠蛾」は去る時に又帰って来るとは言わなかったからやっぱり帰ってこないのだ、この西側の聖女祠のいた廟門はひっそりとして西日が照り輝く

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

廟の四方の壁には木々が鬱蒼として昔鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことだろう。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香

聖女祠の館樓はしんしんと更けてゆき清々しい夜が訪れる。閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

             

河瀆神二首           其一

汾水 碧 依依たり,黃雲 落葉 初めて飛ぶ。

翠蛾 一び去りて 歸るを言わず,廟門 空しく斜暉を掩う。

四壁 森を陰して古畫を排し,依舊 羽駕に 瓊輪す。

小殿 沉沉として清夜なり,銀燈 飄落して 香

 

河瀆神二首           其二

(春から祠や廟に棲いする女祠は男と一緒に過ごしたが春の終わりには別れ、秋にはもうあきらめたようだと詠う。)

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前には聖女祠の女がたくさんいる。

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけている。その色は、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空のようである。そう思っているといつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて行き去る。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

女は独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごした女はある朝、あの人を思うのをやめようと決意したのだ。

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

船に乗って行ってしまったあの人の行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がっている、あの人も港や祠の女と一緒に過ごしていることだろうからあの人のことはもう忘れようと思うのだ。

 

(河瀆神二首       其の二)

江上 草 芊芊たり,春晚 湘妃 廟前たり。

一方 柳色 楚の南天,數行 斜鴈 聯翩す。

獨り朱欄に倚るも 情 極らず,魂斷つ 終に朝 相憶するを。

兩槳 消息を知らず,汀を遠くして 時に鸂鶒起す。

花蕊夫人006

 

『河瀆神二首』 現代語訳と訳註

(本文)

河瀆神二首           其二

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

 

 

(下し文)

(河瀆神二首       其の二)

江上 草 芊芊たり,春晚 湘妃 廟前たり。

一方 柳色 楚の南天,數行 斜鴈 聯翩す。

獨り朱欄に倚るも 情 極らず,魂斷つ 終に朝 相憶するを。

兩槳 消息を知らず,汀を遠くして 時に鸂鶒起す。

 

 

(現代語訳)

(春から祠や廟に棲いする女祠は男と一緒に過ごしたが春の終わりには別れ、秋にはもうあきらめたようだと詠う。)

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前には聖女祠の女がたくさんいる。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけている。その色は、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空のようである。そう思っているといつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて行き去る。

女は独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごした女はある朝、あの人を思うのをやめようと決意したのだ。

船に乗って行ってしまったあの人の行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がっている、あの人も港や祠の女と一緒に過ごしていることだろうからあの人のことはもう忘れようと思うのだ。

 

 鸂鶒けいせき001

(訳注)

『花間集』には張泌の作が一首収められている。双調四十九字、前段二十四字四句四平韻、後段五字四句四灰韻で、⑤⑥⑦⑥/❼❻❻❻の詞形をとる。温庭筠、孫光憲の『河瀆神』参照。

河瀆神二首其二

(春から祠や廟に棲いする女祠は男と一緒に過ごしたが春の終わりには別れ、秋にはもうあきらめたようだと詠う。)

韓愈 『黄陵廟碑』には湘妃のことが面白く述べられている。

 

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前には聖女祠の女がたくさんる。

○芊芊 草木がぼうぼうと伸び茂るさま。

○湘妃 湘江の川の神は「湘妃」「湘君」といい、娥皇と女英の二人の女神からなる。娥皇・女英の二人の娘姉妹を舜の妃としたこと。娥皇と女英は舜帝の妃であったが、舜が没すると悲しんで川に身を投じ、以後川の神となった。斑竹の表面にある斑紋は、娥皇と女英の涙が落ちた跡が残って斑になったという言い伝えがあり、湘江竹、湘竹、涙竹などの別名がある。

○廟や祠そのものに、あるいは人の集まる港に近く、ところに女妓が集められていたその様子を「草」「湘妃」と表現している。男が船に乗って出かけて行ったのである。

 

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけている。その色は、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空のようである。そう思っているといつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて行き去る。

○柳色楚南天 柳の色は夏空の色である、季節が夏に変わったことをいう。

○數行斜鴈 列をなして空を斜めに横切る。

 

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

女は独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごした女はある朝、あの人を思うのをやめようと決意したのだ。

 

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

船に乗って行ってしまったあの人の行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がっている、あの人も港や祠の女と一緒に過ごしていることだろうからあの人のことはもう忘れようと思うのだ。

○兩槳 かじとかいなど舟を漕ぎ勧める道具。ここではそうした船に乗って行ってしまったあの人ということ。

○鸂鶒 おしどり。男がどこかで浮気をしているということをいう。

『江頭五詠:鸂鶒』 

故使籠寬織,須知動損毛。

看雲莫悵望,失水任呼號。

六翮曾經剪,孤飛卒未高。

且無鷹隼慮,留滯莫辭勞。 

(江頭の五詠:鸂鶒【けいせき】)

故【ことさら】に籠をして織を寛にせしむ、須【すべか】らく知るべし動けば毛を損するを。

雲を看て 猶お悵望す、水を失して呼号するに任す。

六翮【ろくかく】曾て剪らるるを経たり、孤飛 卒【つい】に未だ高からず。

且つ鷹隼【ようしゅん】の慮り無し、留滞 労を辞する莫れ。

鴛鴦を飼うのにわざわざ寵の目をあらく織らせた、なぜならば目を密にすればその中で動くとき鳥が毛を傷めるとおもうからだ。

籠から雲を見ては恨めしく眺めることだろうし、水から離れてしまうから悲しんで泣き叫ぶことだろうが、叫ぶがままにさせておく。

六枚の立ち羽は前に剪られてしまったから、ひとりで飛ぶ力が無くなっているので、高く飛べないのだ。

だけど、それで鷹や隼におそわれる心配がない、それを取り柄にすれば、ゆっくりこのかごのなかにとどまって苦労することを云うことなどなくなるといものだ。

江頭五詠:鸂鶒 蜀中転々 杜甫 <521  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2800 杜甫詩1000-521-754/1500
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ここの汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。汾水の女神の「翠蛾」は去る時に又帰って来るとは言わなかったからやっぱり帰ってこないのだ、この西側の聖女祠のいた廟門はひっそりとして西日が照り輝く

        
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河瀆神 一首 張泌【ちょうひつ】ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-359-7-#21  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3342

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 孫少監光憲四十七首

菩薩蠻五首

河瀆神二首

虞美人二首

後庭花二首

子三首

臨江仙二首

酒泉子三首

清平樂二首

更漏子二首

女冠子二首

風流子三首

定西番二首

河滿子一首

玉蝴蝶一首

八拍蠻一首

竹枝一首

思帝一首

上行盃二首

謁金門一首

思越人二首

陽柳枝四首

望梅花一首

漁歌子二首

 

 

 

河瀆神二首       其一

(聖女子のもとに秋がおとずれるのと夜が早く来るその景色をうたう)

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

ここの汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

汾水の女神の「翠蛾」は去る時に又帰って来るとは言わなかったからやっぱり帰ってこないのだ、この西側の聖女祠のいた廟門はひっそりとして西日が照り輝く

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

廟の四方の壁には木々が鬱蒼として昔鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことだろう。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香

聖女祠の館樓はしんしんと更けてゆき清々しい夜が訪れる。閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

             

河瀆神二首           其一

汾水 碧 依依たり,黃雲 落葉 初めて飛ぶ。

翠蛾 一び去りて 歸るを言わず,廟門 空しく斜暉を掩う。

四壁 森を陰して古畫を排し,依舊 羽駕に 瓊輪す。

小殿 沉沉として清夜なり,銀燈 飄落して 香

             

河瀆神二首           其二

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

花蕊夫人006
 

 

『河瀆神二首』 現代語訳と訳註

(本文)

河瀆神二首           其一

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香

 

(下し文)

河瀆神二首           其一

汾水 碧 依依たり,黃雲 落葉 初めて飛ぶ。

翠蛾 一び去りて 歸るを言わず,廟門 空しく斜暉を掩う。

四壁 森を陰して古畫を排し,依舊 羽駕に 瓊輪す。

小殿 沉沉として清夜なり,銀燈 飄落して 香す。

 

(現代語訳)

(聖女子のもとに秋がおとずれるのと夜が早く来るその景色をうたう)

ここの汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

汾水の女神の「翠蛾」は去る時に又帰って来るとは言わなかったからやっぱり帰ってこないのだ、この西側の聖女祠のいた廟門はひっそりとして西日が照り輝く

廟の四方の壁には木々が鬱蒼として昔鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことだろう。

聖女祠の館樓はしんしんと更けてゆき清々しい夜が訪れる。閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

 

Flower1-004

 

(訳注)

河瀆神 一首

『花間集』には張泌の作が一首収められている。双調四十九字、前段二十四字四句四平韻、後段五字四句四灰韻で、⑤⑥⑦⑥/❼❻❻❻の詞形をとる。温庭筠、孫光憲の『河瀆神』参照。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『河瀆神』六首

 

 

作者名/


初句

 

 

溫庭筠

巻一

河瀆神 三首其一 温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞Gs-362-1-#68 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3357

河上望叢祠,

 

 

 

巻一

河瀆神 三首其二 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-363-1-#69  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3362

孤廟對寒潮,

 

 

 

巻一

河瀆神 三首其三 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-364-1-#70  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3367

銅皷賽神來,

 

 

張泌

巻二

河瀆神 一首 張泌【ちょうひつ】ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-359-7-#21  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3342

古樹噪寒鴉,

 

 

孫光憲

巻八

河瀆神二首其一

汾水碧依依,

 

 

 

巻八

河瀆神二首其二

江上草芊芊,

 

 

 

 

 

 

 

 

河瀆神二首     其一

(聖女子のもとに秋がおとずれるのと夜が早く来るその景色をうたう)

             

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

ここの汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

汾水 山西省を南北に流れる大きな川で、渭河に次ぐ黄河第二の支流。 山西省北部の忻州市寧武県の管涔山に発する。黄土高原の谷間を流れる支流を集めて南西方向へ流れ、次いで南東方向へ、さらに北東方向へと大きく曲がりながら太原市で盆地に出る。晋中市から臨汾市へと、山西省中部の盆地を北東から南西の方向へ貫き、侯馬で西へ折れ、運城市河津で黄河左岸に合流する。春秋戦国時代以来の歴史的都市の多くが汾河流域にあり、黄河文明や中国の歴代王朝の多くを生んだ山西省の母なる川でもある。

黃雲 秋の日が落ち掛け夕焼になる前の黄色のうろこ雲。

 

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

汾水の女神の「翠蛾」は去る時に又帰って来るとは言わなかったからやっぱり帰ってこないのだ、この西側の聖女祠のいた廟門はひっそりとして西日が照り輝く

翠娥  ①青黒い三日月形の眉(マユ)。美人の美しい眉のこと。 ②転じて、美人のこと。この廟の聖女祠。

 

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

廟の四方の壁には木々が鬱蒼として昔鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことだろう。

四壁 この祠を囲む四方の壁、

陰森排古畫 この壁を蔽いかぶさるように木の枝が鬱蒼としていて、木の樹脂が飛んで以前は鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなる。

瓊輪羽駕 鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことをいう。

 

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香

聖女祠の館樓はしんしんと更けてゆき清々しい夜が訪れる。閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

飄落 ふんわりと落ちること。

 燃え残りの臣が油の香りを発すること。
金燈花02

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晩春になって、木綿の花が咲き水面に映る、草むらの中に祠が小さく見えてくる。そこの傍を通り抜けると、野鳥が裏の土塀を越えて朝日が昇る中で鳴きだした。銅鑼と太鼓が鳴ったらそれに合わせて南の異民族の歌を謡い始めた、嶺南山脈を越えるとそこの住民の人は土着のいろんな神が多くおり、船出を祈るのである。

        
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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14-358《菩薩蠻五首(5)》孫光憲(18)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-541-14-(358)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4252

 

菩薩蠻  其一

(女も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を待つ女を詠う)

           月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は水面を照らすように庭を照らすと水を照らすのと見まごう、庭に出ようとすると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれると錠の音が響くので、青の人を待つため開いていた門戸をはじめて閉じることにした。

           寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更けると高き庇の影寒々と地に落ちている。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らした。

           碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

それでもきっと来てくれると閨で青い薫香がなよなよと立ち上るし、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆ぜて嬉しき知らせと思わず笑みがうかべる。

           即此是高唐,掩屏秋夢長。

これだと、おんなはきっと「高唐賦」にいう化身をすることになる。寝牀のまわりにたてる屏風の用意をし、あの人を待つ。秋の夜は長いから、遅くなっても来てくれるかもしれないし、秋の夜の夢はあきらめることはない。

 

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻  其二

           花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

(やっと一緒に過ごすことが出来たというのに暗いうちからいろんなことで別れを知らせられる。別れたくない女を詠う)

           門外早鶯聲,背樓殘月明。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

           薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。

           握手送人歸,半拖金縷衣。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

手を握り交わしあの人が帰っていくのを見送る、半ば金糸の縫い取りの衣の裾を引きずり取りすがって別れを惜しむ。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

曉鶯001
 

菩薩蠻  其三

(昔春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんで一緒に過ごしたのに今は独りで春が過ぎようとしている)

           小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

愛妾の家の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているのに、掃除する人もいない。偶に焚くお香はこの中庭に漂い満ちていて春風も月日を重ね春を過ぎさせる。

           春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに便りもなく暗い気持ちになってどうしようもない。天下は広い何処にいるのかどうしたらいいのかだれに尋ねたらいいのか。

           曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けに奥座敷の閨には六曲の屏風と團扇を飾っている、眉も湘水流域の山々も遠く影を薄くする。

           爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちにどうしてなることなどあろうか、もうすぐだろう、もうしばらくすると考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか

(菩薩蠻          其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

 寒梅002
            

菩薩蠻  其四

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

           青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

           一隻木蘭舡,波平遠浸天。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

           扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

           紅日欲沉西,煙中遙解觽。

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

(菩薩蠻          其の四)

青巖 碧洞 朝雨を經り,隔花 相喚して南溪 去り。

一隻 木蘭の舡,波平らかにして 遠く天に浸む。

扣舡 翡翠驚き,嫩玉 香臂に擡す。

紅日 西に沉まんと欲し,煙中 遙か觽を解く。

              

Nature1-012

菩薩蠻  其五

 (旅先の一夜過ごしてくれた美人がひそかに見送ってくれる中急いで船に乗り旅に出る)


          木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

 晩春になって、木綿の花が咲き水面に映る、草むらの中に祠が小さく見えてくる。そこの傍を通り抜けると、野鳥が裏の土塀を越えて朝日が昇る中で鳴きだした。

          銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

銅鑼と太鼓が鳴ったらそれに合わせて南の異民族の歌を謡い始めた、嶺南山脈を越えるとそこの住民の人は土着のいろんな神が多くおり、船出を祈るのである。

           客帆風正急,茜袖隈牆立。

旅人となって船旅をするがここの風はまさに急に強く吹いたりするし、そうしたら旅は中断されるので急いで旅立つのである。南の美人は土塀の陰からそっと覗いて茜の袖を振って送ってくれた。

           極浦幾迴頭,煙波無限愁。

入り江の一番奥まった所の湊を何度も何度も振り返って見返した。朝靄に煙る中、少し波立つと、もうこれ以上の悲愁を感じることはないのだ。

(菩薩蠻          其の五)

木綿の花映し 叢祠 小し,禽越え 裏に聲えし 春 曉に光く。

銅皷 蠻歌を與え,南人 賽多を祈る。

客帆に 風は 正に急なり,茜袖 隈に 牆 立つ。

浦に極まり 幾びか頭を迴らさん,煙波 愁い限り無し。

唐時代 韓愈関連05
 

 

『菩薩蠻  其五』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其五

木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

客帆風正急,茜袖隈牆立。

極浦幾迴頭,煙波無限愁。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の五)

木綿の花映し 叢祠 小し,禽越え 裏に聲えし 春 曉に光く。

銅皷 蠻歌を與え,南人 賽多を祈る。

客帆に 風は 正に急なり,茜袖 隈に 牆 立つ。

浦に極まり 幾びか頭を迴らさん,煙波 愁い限り無し。

 

(現代語訳)

(旅先の一夜過ごしてくれた美人がひそかに見送ってくれる中急いで船に乗り旅に出る)

晩春になって、木綿の花が咲き水面に映る、草むらの中に祠が小さく見えてくる。そこの傍を通り抜けると、野鳥が裏の土塀を越えて朝日が昇る中で鳴きだした。

銅鑼と太鼓が鳴ったらそれに合わせて南の異民族の歌を謡い始めた、嶺南山脈を越えるとそこの住民の人は土着のいろんな神が多くおり、船出を祈るのである。

旅人となって船旅をするがここの風はまさに急に強く吹いたりするし、そうしたら旅は中断されるので急いで旅立つのである。南の美人は土塀の陰からそっと覗いて茜の袖を振って送ってくれた。

入り江の一番奥まった所の湊を何度も何度も振り返って見返した。朝靄に煙る中、少し波立つと、もうこれ以上の悲愁を感じることはないのだ。

 美女画557

(訳注)

菩薩蠻     『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

 

其五

(旅先の一夜過ごしてくれた美人がひそかに見送ってくれる中急いで船に乗り旅に出る)

 

木綿 花映 叢祠小,越禽 聲裏 春光曉。

晩春になって、木綿の花が咲き水面に映る、草むらの中に祠が小さく見えてくる。そこの傍を通り抜けると、野鳥が裏の土塀を越えて朝日が昇る中で鳴きだした。

・木綿 綿(わた),綿花とも呼ばれ,ワタになる種子についた繊維。綿織物を指すこともある。全紡織繊維中最大量の5割弱が消費される。ワタの花が落ちると子房がふくらみ始め,67週間でその皮が破れると,コットンボールと呼ばれる白い柔らかい種子毛繊維があふれてくる。コットンボールはそれぞれ数粒の種子の入った35室に分かれており,綿繊維は種子にくっついている。繰綿機(くりわたき)にかけて繊維を種子と分離する。木綿の花は「どこか遠くへとか」、「汚れがない」ということを意味する。蒔き時期は4月上旬~6月下旬(5月の連休頃が最適) 78月に開花。 9月ごろに綿の実がはじけ、コットンボールを収穫できる。

 

銅皷 與蠻歌,南人 祈賽多。

銅鑼と太鼓が鳴ったらそれに合わせて南の異民族の歌を謡い始めた、嶺南山脈を越えるとそこの住民の人は土着のいろんな神が多くおり、船出を祈るのである。

・銅皷 銅鑼と太鼓。船が出る報せであろう。

・與蠻歌 銅鑼と太鼓に合わせて南の異民族の歌を謡い始めること。

・南人 中国人にとって「南人」の南嶺山脈が分水嶺となる

・祈賽多 南嶺を超えると多民族となり、土着のシャーマニズムが多い、賽は賽子でまじない、占いを含めたこという

 

客帆 風正急,茜袖 隈牆立。

旅人となって船旅をするがここの風はまさに急に強く吹いたりするし、そうしたら旅は中断されるので急いで旅立つのである。南の美人は土塀の陰からそっと覗いて茜の袖を振って送ってくれた。

 

極浦 幾迴頭,煙波 無限愁。

入り江の一番奥まった所の湊を何度も何度も振り返って見返した。朝靄に煙る中、少し波立つと、もうこれ以上の悲愁を感じることはないのだ。

・極浦 入り江の一番奥まった所の湊。

・幾迴頭 何度も何度も振り返って見返すこと。

・煙波 朝靄が出てきて少し波立つ。詩では「煙」という場合、朝靄か夕靄である、ここでは朝早く、夜明けに合わせて舟が出る、

・無限愁 もうこれ以上の悲愁を感じることはない。
杏の花01
 

14-357《菩薩蠻五首(4)》孫光憲(17)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-540-14-(357) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4247

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。



        
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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14-357
《菩薩蠻五首(4)》孫光憲(17)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-540-14-(357)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4247

 

 

菩薩蠻  其一

(女も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を待つ女を詠う)

           月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は水面を照らすように庭を照らすと水を照らすのと見まごう、庭に出ようとすると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれると錠の音が響くので、青の人を待つため開いていた門戸をはじめて閉じることにした。

           寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更けると高き庇の影寒々と地に落ちている。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らした。

           碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

それでもきっと来てくれると閨で青い薫香がなよなよと立ち上るし、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆ぜて嬉しき知らせと思わず笑みがうかべる。

           即此是高唐,掩屏秋夢長。

これだと、おんなはきっと「高唐賦」にいう化身をすることになる。寝牀のまわりにたてる屏風の用意をし、あの人を待つ。秋の夜は長いから、遅くなっても来てくれるかもしれないし、秋の夜の夢はあきらめることはない。

 

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻  其二

           花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

(やっと一緒に過ごすことが出来たというのに暗いうちからいろんなことで別れを知らせられる。別れたくない女を詠う)

           門外早鶯聲,背樓殘月明。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

           薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。

           握手送人歸,半拖金縷衣。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

手を握り交わしあの人が帰っていくのを見送る、半ば金糸の縫い取りの衣の裾を引きずり取りすがって別れを惜しむ。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

曉鶯001
 

菩薩蠻  其三

(昔春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんで一緒に過ごしたのに今は独りで春が過ぎようとしている)

           小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

愛妾の家の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているのに、掃除する人もいない。偶に焚くお香はこの中庭に漂い満ちていて春風も月日を重ね春を過ぎさせる。

           春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに便りもなく暗い気持ちになってどうしようもない。天下は広い何処にいるのかどうしたらいいのかだれに尋ねたらいいのか。

           曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けに奥座敷の閨には六曲の屏風と團扇を飾っている、眉も湘水流域の山々も遠く影を薄くする。

           爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちにどうしてなることなどあろうか、もうすぐだろう、もうしばらくすると考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか

(菩薩蠻          其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

 寒梅002
            

菩薩蠻  其四

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

           青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

           一隻木蘭舡,波平遠浸天。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

           扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

           紅日欲沉西,煙中遙解觽。

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

(菩薩蠻          其の四)

青巖 碧洞 朝雨を經り,隔花 相喚して南溪 去り。

一隻 木蘭の舡,波平らかにして 遠く天に浸む。

扣舡 翡翠驚き,嫩玉 香臂に擡す。

紅日 西に沉まんと欲し,煙中 遙か觽を解く。

             

菩薩蠻    其五

              木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

              銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

              客帆風正急,茜袖隈牆立。

              極浦幾迴頭,煙波無限愁。

 

Nature1-012
 

『菩薩蠻  其四』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其四

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

一隻木蘭舡,波平遠浸天。

扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

紅日欲沉西,煙中遙解觽。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の四)

青巖 碧洞 朝雨を經り,隔花 相喚して南溪 去り。

一隻 木蘭の舡,波平らかにして 遠く天に浸む。

扣舡 翡翠驚き,嫩玉 香臂に擡す。

紅日 西に沉まんと欲し,煙中 遙か觽を解く。

 

(現代語訳)

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

 

(訳注)

菩薩蠻     其四

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

 

 

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

・南溪 四川省西部地図 e1 成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色。
四川省西部地区略図
 

一隻木蘭舡,波平遠浸天。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

 

扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

・扣舡 船端をたたいて船頭が舟歌を歌い始めること。王維輞川集二十首『欒家瀨』では水しぶきの音でシラサギが飛んでゆく、とある。

・嫩玉 美しく若い妓女。

・擡香臂 香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

 

紅日欲沉西,煙中遙解觽。

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

・觽  くじり。つのぎり。紐の結び目を角でほどいたことから すなわち 掘り下げる。えくじり. 「探る 」の意味

14-356《菩薩蠻五首(3)》孫光憲(16)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-539-14-(356) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4242

春も終ろうとするのに便りもなく暗い気持ちになってどうしようもない。天下は広い何処にいるのかどうしたらいいのかだれに尋ねたらいいのか。朝焼けに奥座敷の閨には六曲の屏風と團扇を飾っている、眉も湘水流域の山々も遠く影を薄くする。


        
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14-356《菩薩蠻五首(3)》孫光憲(16)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-539-14-(356)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4242

 

 

菩薩蠻  其一

(女も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を待つ女を詠う)

           月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は水面を照らすように庭を照らすと水を照らすのと見まごう、庭に出ようとすると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれると錠の音が響くので、青の人を待つため開いていた門戸をはじめて閉じることにした。

           寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更けると高き庇の影寒々と地に落ちている。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らした。

           碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

それでもきっと来てくれると閨で青い薫香がなよなよと立ち上るし、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆ぜて嬉しき知らせと思わず笑みがうかべる。

           即此是高唐,掩屏秋夢長。

これだと、おんなはきっと「高唐賦」にいう化身をすることになる。寝牀のまわりにたてる屏風の用意をし、あの人を待つ。秋の夜は長いから、遅くなっても来てくれるかもしれないし、秋の夜の夢はあきらめることはない。

 

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻  其二

           花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

(やっと一緒に過ごすことが出来たというのに暗いうちからいろんなことで別れを知らせられる。別れたくない女を詠う)

           門外早鶯聲,背樓殘月明。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

           薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。

           握手送人歸,半拖金縷衣。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

手を握り交わしあの人が帰っていくのを見送る、半ば金糸の縫い取りの衣の裾を引きずり取りすがって別れを惜しむ。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

曉鶯001
 

菩薩蠻  其三

(昔春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんで一緒に過ごしたのに今は独りで春が過ぎようとしている)

           小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

愛妾の家の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているのに、掃除する人もいない。偶に焚くお香はこの中庭に漂い満ちていて春風も月日を重ね春を過ぎさせる。

           春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに便りもなく暗い気持ちになってどうしようもない。天下は広い何処にいるのかどうしたらいいのかだれに尋ねたらいいのか。

           曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けに奥座敷の閨には六曲の屏風と團扇を飾っている、眉も湘水流域の山々も遠く影を薄くする。

           爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちにどうしてなることなどあろうか、もうすぐだろう、もうしばらくすると考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか

(菩薩蠻          其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

             

菩薩蠻    其四

              青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

              一隻木蘭舡,波平遠浸天。

              扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

              紅日欲沉西,煙中遙解觽。

             

菩薩蠻    其五

              木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

              銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

              客帆風正急,茜袖隈牆立。

              極浦幾迴頭,煙波無限愁。

紅梅00
 

『菩薩蠻  其三』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其三

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

春晚信沉沉,天涯何處尋。

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

爭那別離心,近來尤不禁。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

 

 

(現代語訳)

(昔春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんで一緒に過ごしたのに今は独りで春が過ぎようとしている)

愛妾の家の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているのに、掃除する人もいない。偶に焚くお香はこの中庭に漂い満ちていて春風も月日を重ね春を過ぎさせる。

春も終ろうとするのに便りもなく暗い気持ちになってどうしようもない。天下は広い何処にいるのかどうしたらいいのかだれに尋ねたらいいのか。

朝焼けに奥座敷の閨には六曲の屏風と團扇を飾っている、眉も湘水流域の山々も遠く影を薄くする。

心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちにどうしてなることなどあろうか、もうすぐだろう、もうしばらくすると考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか

 

(訳注)

菩薩蠻     『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

 

其三

(昔春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんで一緒に過ごしたのに今は独りで春が過ぎようとしている)

 

 

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

愛妾の家の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているのに、掃除する人もいない。偶に焚くお香はこの中庭に漂い満ちていて春風も月日を重ね春を過ぎさせる。

・小庭花落無人掃 この句は、孟浩然『春暁』王維の『田園楽』と同じような景色が連想される。孟浩然『春暁』 と王維『田園楽』 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞ブログ 1941 (02/17)

 

春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに便りもなく暗い気持ちになってどうしようもない。天下は広い何処にいるのかどうしたらいいのかだれに尋ねたらいいのか。

・沉沉 太陽は まるで灰がかぶさっているかのように,ぼうっと暗い.

 

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けに奥座敷の閨には六曲の屏風と團扇を飾っている、眉も湘水流域の山々も遠く影を薄くする。

・曉堂 朝焼けに奥座敷の閨であるが、夜も眠らずもやもやと過ごしたことを「曉」の語で表現している。暁の梁となったら日が昇ってくると閨の梁から明るくなるのを確認するということで、朝まで好きな男と一緒に過ごした意味になる。

・眉を峨眉山とかの山で表現するが、ここは、江南にどこかに行っている男を重いということで、遠くの山は遠近法で薄く描く、眉も湘水の山も遠く薄くということ。湘水の女神は《楚辞》九歌篇に歌われる2人の女神をいい。湖南省にある湘水の神とされ,また洞庭湖の水神でもあって,湖中の君山にその祠廟がある。《山海経(せんがいきよう)》に洞庭の山に住む天帝の2人の娘のことが見え,漢の《列女伝》では,この2人は尭帝の娘で舜の妃である娥皇と女英であって,舜が蒼梧で死ぬと2人は湘水に身を投げてその神になったのだとされている。湘君と湘夫人はこの2女神に比定されるが,一説には湘君は男神,湘夫人は女神で,2人は夫婦なのだともされる。

 

爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちにどうしてなることなどあろうか、もうすぐだろう、もうしばらくすると考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか

・爭 心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと葛藤する。
杏の花001

14-355《菩薩蠻五首(2)》孫光憲(15)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-538-14-(355) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4237

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。


        
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 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
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菩薩蠻  其一

(女も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を待つ女を詠う)

           月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は水面を照らすように庭を照らすと水を照らすのと見まごう、庭に出ようとすると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれると錠の音が響くので、青の人を待つため開いていた門戸をはじめて閉じることにした。

           寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更けると高き庇の影寒々と地に落ちている。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らした。

           碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

それでもきっと来てくれると閨で青い薫香がなよなよと立ち上るし、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆ぜて嬉しき知らせと思わず笑みがうかべる。

           即此是高唐,掩屏秋夢長。

これだと、おんなはきっと「高唐賦」にいう化身をすることになる。寝牀のまわりにたてる屏風の用意をし、あの人を待つ。秋の夜は長いから、遅くなっても来てくれるかもしれないし、秋の夜の夢はあきらめることはない。

 

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻  其二

           花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

(やっと一緒に過ごすことが出来たというのに暗いうちからいろんなことで別れを知らせられる。別れたくない女を詠う)

           門外早鶯聲,背樓殘月明。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

           薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。

           握手送人歸,半拖金縷衣。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

手を握り交わしあの人が帰っていくのを見送る、半ば金糸の縫い取りの衣の裾を引きずり取りすがって別れを惜しむ。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

曉鶯001
 

『菩薩蠻  其二』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

握手送人歸,半拖金縷衣。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

(現代語訳)

(やっと一緒に過ごすことが出来たというのに暗いうちからいろんなことで別れを知らせられる。別れたくない女を詠う)

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

手を握り交わしあの人が帰っていくのを見送る、半ば金糸の縫い取りの衣の裾を引きずり取りすがって別れを惜しむ。

 

(訳注)

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

 

菩薩蠻     其二

(やっと一緒に過ごすことが出来たというのに暗いうちからいろんなことで別れを知らせられる。別れたくない女を詠う)

【解説】 後朝の別れを詠う。朝化粧を整える暇もなく、昨夜の化粧のまま、着物の裾を引きずりながら男を見送ったのは、少しでも長く男と一緒にいたいがために時間を惜しむのは、これ以降帰ってこないことを思うからである。

 

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

○花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

○翼 ここでは羽を羽ばたかせること。「鶏鳴狗盗」とあるように鶏が鳴くと関所を開けて通行させる、夜が明けると朝賀が始まる、鳥がはばたく音で飛いうことで急いで帰り支度をすることをいう。女は帰したくないと思っているのに鳥のはばたきに邪魔をされる。すると「東方澹白連色」東の窓が白じんで来ることで、別れを予感する女の焦りを表現する。

 

門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ早いというのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方にまだ明るくのこっている。

○すると、鶯が鳴きが啼きはじめる。鶯聲は早春を意味する。これから盛春になろうというのに別れなければいけないのか、という意味になる。

〇残月 名残月。(20日前後から下弦月までの月をいう)夜明けの空に懸かる月。その日以降の別れを予見する月を意味する。

 

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

○依旧鉛華在 昨夜の化粧がそのままに残っていること。依旧は、もとのまま、以前どおり。旧は仲睦まじくしていたころのこと。鈆華は白粉。

 

握手送人歸,半拖金縷衣。

手を握り交わしあの人が帰っていくのを見送る、半ば金糸の縫い取りの衣の裾を引きずり取りすがって別れを惜しむ。
moon5411
 

14-354《菩薩蠻五首(1)》孫光憲(14)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-537-14-(354) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4232

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14-354《菩薩蠻五首(1)》孫光憲(14)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-537-14-(354)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4232

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

 

 

 

 

 

花間集卷第八 四十九首

 

 

 

 

 

 孫少監光憲四十七首

 

 

菩薩蠻五首

河瀆神二首

虞美人二首

 

 

後庭花二首

子三首

臨江仙二首

 

 

酒泉子三首

清平樂二首

更漏子二首

 

 

女冠子二首

風流子三首

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河滿子一首

玉蝴蝶一首

八拍蠻一首

 

 

竹枝一首

思帝一首

上行盃二首

 

 

謁金門一首

思越人二首

陽柳枝四首

 

 

望梅花一首

漁歌子二首

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魏太尉承班二首

 

 

菩薩蠻二首

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。孫光憲の詞は、王維の詩に通ずるものがある。

        
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花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

其四

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

風颭,波斂。

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

身已歸,心不歸。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

紅梅00
 

 

『河傳四首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

(下し文)

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

 

(現代語訳)

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

 

合歓の花
 

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其四

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

 

 

風颭,波斂。

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

斂【れん】1 引きしめ集める。取り入れる。「苛斂(かれん)・聚斂(しゅうれん)2 引きしまる。「収斂」3 死体を棺に収める。

采蓮003
 

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

閃閃【せんせん】1 ひらひらと動くさま。2 きらきらと輝くさま。

 

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

木蓮科の漢名である「木蘭」の 音読み「もくらん」が 「もくれん」に変化。 漢名の「木蓮」は、 花が「蓮(はす)」に 似ている木、から。

吳娃越豔 呉の美女。越王勾践が、呉王夫差に、復讐のための策謀として献上した美女たちの中に、西施や鄭旦などがいた。貧しい薪売りの娘として産まれた施夷光は谷川で洗濯をしている姿を見出されたといわれている。

 

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

大堤 李白53『大堤曲』

漢水臨襄陽。花開大堤暖。

佳期大堤下。淚向南云滿。

春風無復情。吹我夢魂散。

不見眼中人。天長音信斷。

漢江の水は、襄陽のまちに沿って流れゆく。町はずれの大堤の色町は、花が満開、なにかと暖かくする。

この大堤の下で逢うことを約束したのに来てくれない、南の空の雲をみると、涙がすぐにもこみあげてくる。

春風も、わたしにはつれなく吹いて、慕情の夢を冷ましてしまう。

恋しいあの人の面影は、もう見えない。遠い空のかなた、あの人の便りも途絶えてしまった。

大堤曲 『楽府詩集』#48「清商曲辞、西曲歌」。襄陽歌から派生したものとされる。 ・襄陽 湖北省、漢江にのぞむ町。 

・大堤 嚢陽の南郊外にあり、行楽の土地。遊女が住んでいた。・漢水 襄陽の街を北西から、南東に廻るように流れている。大堤からすると南は下流の方角になり、江南からの人ということになる。あるいは、李白が色町の女性と別れた時に作ったのかもしれない。 ・佳期 男女の逢う約束。あいびきの時。・南雲 晋の陸機の「親(肉親)を憶う賦」に「南雲を指して、まごころを寄せ、帰風を望みて誠をいたす」とあり、故郷の肉親を思うと解釈されることが多いが、恋人を思う気持ちを詠っている。

 大堤で逢う約束を破られ、故郷の空へ向かって涙する女性というなら、最終句にもっていかないと理解できない。「いとしい人からの便りも途絶えた」を最終句にしているのは李白の心情だからと考えるほうが、自然体の纏まりがいい。

 

身已歸,心不歸。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

身已歸心不歸 体は故郷に帰ったとしても心はこの街に残してゆく。

 

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

鸂鶒(オシドリに似た水鳥)

14-352《河傳四首(3)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-535-14-(352) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4222

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

        
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14-352

《河傳四首(3)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-535-14-(352)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4222

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

 茶苑

 

 

『河傳四首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

 其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

(下し文)

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

 

(現代語訳)

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

 kairo10682

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其三

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

【解説】 晩春の孤閏の恨みを詠う。後段の冷たい灰となった香は、女主人公の心そのものであり、

梁の巣に帰って来た燕は番で女主人公の孤独感を一層際立たせる働きをしている。そこには、燕は

帰って来たのに、あの人の帰らぬまま春は過ぎようとしている、という気持ちが込められている。

 

 

花落,煙薄,謝家池閣。

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

○謝家 美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。

 

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

○翠蛾 ここでは翠蛾に同じ。女性の美しい眉を言う。顧夐「酔公子二首其二」○斂袖翠蛾攢 泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直すことをいう。あきらめの境地をいう。

『醉公子二首』其二「岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。家在綠楊邊,往來多少年。馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。」13-338《醉公子二首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

 

沾襟,無人知此心。

こぼす涙に襟をば濡らす。この心知る人はなし。

 

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

○梁燕帰紅杏 燕は梁の巣に紅い杏の花咲く時節に帰って来た。

 

晚來天,空悄然。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

○晩来天 宵闇迫る時分。

 

孤眠,枕檀雲髻偏。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

〇枕檀 香木で作った枕。

14-351《河傳四首(2)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-534-14-(351) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4217

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

        
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14-351《河傳四首(2)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-534-14-(351)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4217

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首
其一

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。
(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

襞花牋,豔思牽。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

花間集02
 

『河傳四首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

 

(下し文)

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

 

(現代語訳)

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

 

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

 

其二

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

 

 

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

〇拖 1(重いものを)ずるずる引っ張る,引きずる,引く機関車は15両の貨車を引っ張っている.

〇縷 1 細々と連なる糸筋。「一縷」2 細く、途切れずに続くさま。こまごまとしたさま。

〇濛濛 1 霧・煙・ほこりなどが立ちこめるさま。2 心がぼんやりとしているさま。

 柳絮。

 

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

鳳皇 六朝時代から鳳凰の絵を描いている飾り船で風流に遊ぶのが江南では流行した。鳳凰は伝説上の霊鳥。鳳が雄,凰が雌。鳳皇とも書く。餌は竹の実で,梧桐の木にしか止まらぬとされる。殷墟卜辞に,風神として鳳の字が用いられ,天帝の使者だともされている。その字体から見て,孔雀のような鳥が鳳凰の原像となったのであろう。この殷の鳳凰と同じ特徴的な冠羽を持つ鳥が,殷末から西周期の青銅器の文様に見え,おそらくこれは,鳥形をとって祭祀の場に降臨する祖霊の観念と結びついていたのであろう。《書経》に,舜帝が天下を安定させると,音楽につれて祖霊とともに鳳凰がやってきたとあるのは,祖霊と祥瑞との二つの性格をあわせみせている。

〇楚女 戦国時代、楚國の女。高唐賦にいう雨に化身した巫山の巫女を示す。ここでは楚地方の美女、妓女をいう

〇皷:鼓【コ】 中空の筒に皮を張ったもの。意味: つづみ、太鼓、鼓を打つ、叩く、鳴らす、震わす、励ます、はかり、という意味がある。 

この詩と同じ雰囲気を持っている詩は韋荘の『菩薩蠻 二』と同じ畫船による舟遊びを風流に詠う。

韋莊『菩薩蠻 二』

人人盡説江南好,遊人只合江南老。

春水碧於天,  畫船聽雨眠。

爐邊人似月,  皓腕凝雙雪。

未老莫還鄕,  還鄕須斷腸。

だれもかれも、江南はいいところだといいます。よそのくにへ遊びに出た人は、江南へいって年をとるまでくらすのが一ばんよいとおもっているのです。 

春は、雪解けの増水したながれは空の青さと一体化する。舟遊びの美しく彩られた船にのって、雨をききながら寄り添って眠ります。

酒爐のほとりには、お月さまを彷彿させる美人が居ます。その人の真白な腕から想像して、まるで雪がかたまったようなうつくしい体をしているのです。

一旦こういうところへ来たならば、年をとりたくはないし、まして故郷へ帰ることなど思いはしないのです。故郷などへ帰ったならば、この性的欲求不満を解決することが出来はしないことがわかるのです。

 

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

〇龍爭虎戰 五代史平話˙梁史˙卷上: 龍爭虎戰幾春秋,五代梁唐晉漢周。 亦作 龍爭虎鬥 。形容鬥爭或競賽很激烈。同“龍爭虎鬥”。『例子』.

〇桃葉 風流の達人の冠、王獻之の愛妾のために作った『桃葉復桃葉二首』「桃葉復桃葉,渡江不用楫。 但渡無所苦,我自迎接汝。」の金陵の桃葉渡は今に至るも艶称される。桃葉渡は又の名を南浦渡という,中国江蘇省南京市古地名。桃葉渡は是れ“十里の秦淮河にあり古渡し口のじょうりゅうにある。六朝の時代以降“金陵四十八景”の一つとして名勝となっている。

 

襞花牋,豔思牽。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

襞 プリーツスカート。1 衣服や布地などにつけた細長い折り目。2 衣服のひだのように見えるもの。精神的なものについてもいう。「山の―」「心の―に触れる」3 キノコの傘の裏側にあるしわ。菌褶(きんしゅう

〇花牋 薛濤䇳に詩をしたためる。

 

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

 

春秋戦国勢力図
 

14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212

河傳四首(1)》孫光憲≫ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。


        
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14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 海棠花021

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

杏の花0055
 

 

『河傳四首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

 

 

(下し文)

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

 

(現代語訳)

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

 

 花間集

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其一

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

 

太平天子,等閑 遊戲,疏河 千里。

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

〇疏河千里 川の流れは千里先まで続く。川の流れは東にながれる。川の流れは弾く方に流れてゆき千里先まで流れて行く、そうしたことは常識なのだ。

 

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

〇淥波春水 増水して川の水嵩は上がっているが、雪解け水なので浸みきっていることをいう。

〇長淮 中国四大河川の長江と淮河で、長江から運河を経て淮河に入る大河の廣い隆起をいう。

 

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

〇三千女 後宮には宮女は三千人以上いた。

〇爭雲雨 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

 

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

 

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

14-349《浣溪紗九首(9)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-532-14-(349) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4207

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

        
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14-349

《浣溪紗九首(9)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-532-14-(349)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4207

 

花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。    
 

浣溪沙九首           其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

浣溪沙九首       其九

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

     烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

     將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

花蕊夫人006
 

 

『浣溪沙九首 其九』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其九

烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

 

 

(現代語訳)

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)

酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。

女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

紅莓苔子002
 

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

其九

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)

【解説】妓女は、男が門を叩けばそれだけで誰が来たかとすぐに分かり、また男に会っては袖でちょっと顔を隠し、男から可愛がられれば少々初心な態度をとり差ずかしそうに俯いて壁に書かれた詩を尋ねる。彼女のこのような仕草は、男を引きつけるための爛れた作戦ではなく、孫光憲が作詞して壁に書いた詩の意味が全く分からなかった。この時のお客は孫光憲であり、女は尊敬の気持ちで理解しようとした、ということで妓女遊びも楽しい。

 

烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。

○烏帽 烏紗帽。隋、唐時代には身分の高い者がかぶったが、後には貴賎に関係なく用いられ、さらには閑居の際にかぶるようになった。

○魚 魚袋。唐代には五品官以上の官僚が身に付けた魚の形をした飾り。品級の違いによって金製、銀製、銅製があった。○倫歩 足音を忍ばせて歩く。○仙居 仙女の館。ここでは妓楼を指す。あるいは女道士のいる道観の可能性もある。当時の通観の尼は多くが春を禦いでいた。

 

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

○掩赦 顔を覆いかくすようにして眼を流し目にしてみて、羞ずかしそうにする。

○且生疎 少男の方を見ないでもじもじする。初心な仕草。
合歓の花
 

14-348《浣溪紗九首(8)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-531-14-(348) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4202

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

        
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14-348《浣溪紗九首(8)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-531-14-(348)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4202


花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。    
 

浣溪沙九首           其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

紅梅00

『浣溪沙九首 其八』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其八

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

 (現代語訳)

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

浣溪沙九首 其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

 

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

○輕打銀箏墜鷰泥 梁に作られた燕の巣の泥が、琴を奏でる急に弾いたその響きで銀で飾った琴の上に落ちる。

○断糸 千切れた蜘蛛の糸。

○胃 引っ掛かる。

○花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

○午塔 南真正面の土壌。午は真南の方位を表す。

 

 

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

○粉籍 白い粉を吹いた笋の皮。

○紅苞 花のつぼみ。ここでは花の意。苞(ほう):植物用語の一つで、花や花序の基部にあって、つぼみを包んでいた葉のことをいう。苞葉ともいう。また個々の苞を苞片という。 多くの場合、普通の葉より小さくて緑色をしたものである。しかし、花弁(「花びら」のこと)や萼に見えるような植物もある。

○旧桃践 後段第一、二句は対句になっており、この意味はないが、強いていえば「旧」 の字は第一句の 「新」と対にするために使ったもので特に深い「馴染みの」。
海棠花021
 

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(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。


        
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花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。            

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

                           

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

 

『浣溪沙九首 其七』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其七

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。

 

 

(現代語訳)

(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

浣溪沙九首 其七

(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

【解説】 女の閨に様子を奇麗に表現し、歳を重ねるにしたがって、男は帰ってこない。異常なくらい女遊びをする男、周りから女たらしだからと注意されていた。そんなことはないと思っていたのにいつしかそれを思い知らされた。女性の恨みを過ぎれば諦めるということなのだ。風に揺れて舞う簾の鳳凰の刺繍は、女性のあきらめを予感させるものとなっている。孫光憲の詞はいやらしさが微塵もない。

 

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

○風遞殘香出繡簾 香炉の残香が風に運ばれて簾から流れ出る。

○團窠金鳳 円形の金糸で刺繍した鳳凰。円形は団欒の意を含む。窠 瓜を輪切りにした形に似た文様または紋所。一説に、蜂の巣の形ともいう。の紋。木瓜(もっこう)

○襜襜 揺れるさま。襜:前隠し、「《爾雅·釋器》衣蔽前、謂之襜(衣の前を覆う、これを襜(セン)という)」とあり、 和訓には、 「まえかけ、ひとえもの、ととのふ」等があるという(篆文詳注日本大玉篇)。

○落花微雨恨相兼 落花と微雨とがともに恨みを誘う。散る花は女の年を重ねることこれからの行く末を憂うことであり、雨に煙るのは女の満たされない気持ちの愁いをいう。宋玉「高唐の賦」に言う、雨に化身して男のもとに洗われるというもので、それが「微」霞むのであるから、靄に思いを消されるという愁いになる。

 

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

○去来 行く。去の字だけに意味がある偏義詞。

○狂太甚 全く常軌を逸している。ここでは男が女遊びに夢中なことを指す。狂:まわりのこと気にせず一つのことに懸命になる様子をいう。太甚【たいじん】ひどすぎる,あまりにもひどい.物事の程度のはなはだしいさま。

○空推 見え透いた言い訳をする。

○宿酒 昨夜飲んだ酒。

○睡無猒 飽くことなく眠る、眠りを貴る。

○争教人不別猜嫌 遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。争教は人から教えられたことと争うこと。人はここに登場する女性。別はわかれ。猫嫌は疑う、清疑心を抱くようなこと、嫌われようとするのかということ。

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河傳四首(1)》孫光憲≫ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。


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孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

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(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

        
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浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

杏の花0055
             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

             

浣溪沙九首           其六

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

花間集
 

『浣溪沙九首 其五』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其五

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

 

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 

(現代語訳)

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

浣溪沙九首 其五

 

【解説】 前段、自分の所に来てくれる細身の素晴らしい妓女を、簾越しに見かけた時から、一緒に過ごすも、最初からなれなれしくはできないことをじれったく思い、後段、蝋燭が薄くなるまで、踊るのを見て、事の調べを聞いて、時間の許す限り過ごした。し賈至、それから後に行くこともなく、その女妓がどうなったのか知る由もない。

この詞は、あこがれの妓女ではあるが高嶺の花であったのだろう。しかし、女性に対してシャイな性格をあらわす、また、その場所と場面を奇麗に表現しようとするこれが孫光憲である。女にうつつを抜かすとか溺れることはなかったような表現で詠んだもの。

 

 

半踏 長裾 宛約行,晚簾 疎處 見分明,此時 堪恨 昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。

○半踏 一歩を半歩にして小股に歩むこと。

○宛約 婉約/艶約 繊細でたおやかなさま。細腰の妓女が色っぽく動く様子をいう。宛:[訓]あてる あて ずつ あたかも〈エン〉1 曲がる。くねる。「宛転」2 あたかも。まるで。「宛然」.約:[訓]つづめる つづまやか   ひもで結ぶ。締めくくる。「制約・括約筋」 ひもで結び目を作り、取り決めの目印とする。広く、約束のこと。3ひかえめなこと。

○昧平生 日頃からの見知りのないことを言う。なじみの客でないことをいう。

 

早是 銷魂 殘燭影,更愁 聞著 品絃聲,杳無 消息 若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

○残燭影 消えかかる灯火の光に映し出された影。蝋燭の火が薄くなるまで一緒にいたことをいう。

○聞著 ただ聞いている、の意。著は動作の進行や継続を表す接尾辞。

〇品絃声 弦の調べの音。ここでは琴の音を指す。詩を取り交わすとか次の逢瀬を約束するとか何にもない様子をいう。シャイな様子をいうのであろう。

○若為 どうしよう、どうしようもない。

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14-344《浣溪紗九首(4)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-527-14-(344)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4182

 

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。             

             

浣溪沙九首           其五

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

楊貴妃清華池002

 

『浣溪沙九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其四

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

 

(下し文)

浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

 

(現代語訳)

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

花間集02
 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

浣溪沙九首 其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

 

攬鏡 無言 淚欲流,凝情 半日 懶梳頭,一庭 疎雨 濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

攬[ラン]取り集めて持つ。手中に収める。「収攬・総攬」

この三句は春が来ても訪ねてくれる人がいない何にもする気がない様子を詠う。

懶梳頭 物憂げで、櫛で頭を梳くこともしない。

 

楊柳 秖知 傷怨別,杏花 應信 損嬌羞,淚沾 魂斷 軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

・楊柳秖知 男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ

・傷怨別 やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思うこと。

・杏花 春の盛りの杏の花の咲くころ。

・應信 手紙で答えてくれること。

・損嬌羞 恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。

・軫離憂 愁いに思い、それを忘れようとするが又愁い悲しみが襲ってくる。・軫:憂える。悲しむ。「軫悼(しんとう)・軫念」。まわる。
杏の花001
 

14-343《浣溪紗九首(3)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-526-14-(343) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4177

浣溪紗九首(3)》孫光憲≫化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。


        
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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14-343《浣溪紗九首(3)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-526-14-(343)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4177




浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。


             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。




浣溪沙九首   其三』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首   其三

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。


(下し文)

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。



(現代語訳)

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。


(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三


花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来て来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

漸1 長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま。やっとのことで。2 苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか。3 物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん。


膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けぼくろも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠のの香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

金靨子 金の付けぼくろ。靨:〔笑(え)窪(くぼ)の意〕 笑うと,頰にできる小さなくぼみ。 ほくろ。仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。

蕙心 美人の麗しい心。

金燈花01


 


 


 


 


 


 


 


 


 紅莓苔子002


 


 


 


 


 花間集02


 


 


















14-342《浣溪紗九首(2)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-525-14-(342) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4172

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

        
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14-342《浣溪紗九首(2)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-525-14-(342)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4172

 

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

             

浣溪沙九首           其三

             

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

             

             

             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

花間集02
 

 

 

『浣溪沙九首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其二

桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

             

 

(下し文)

浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

 

(現代語訳)

(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 珠櫻001


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(秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

        
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 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
 孟郊張籍     
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
 ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている 
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 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
 毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻 
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14-341
《浣溪紗九首(1)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-524-14-(341)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4167


 

 

花間集第七 五十首

 

顧太尉三十七首

 

孫少監光憲十三首

 ・浣溪紗九首 

 ・河傳四首

 

花間集卷第八 四十九首

 

孫少監光憲四十七首

菩薩蠻五首 河瀆神二首 虞美人二首(虞每人二首)

後庭花二首 生子三首 臨江仙二首

酒泉子三首 清平樂二首 更漏子二首

女冠子二首 風流子三首 定西番二首

河滿子一首 玉蝴蝶一首 八拍蠻一首

竹枝一首 思帝一首 上行盃二首

謁金門一首 思越人二首 陽柳枝四首

望梅花一首 漁歌子二首

 

魏太尉承班二首

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

浣溪沙九首       其一

          

           蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

           目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

              (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二

             

              桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

              繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

             

             

             

浣溪沙九首           其三

             

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

             

             

             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

海棠花022

『浣溪沙九首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首其一

蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

 

 

(現代語訳)

(秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

豆蔻 なつめぐ01
 

 

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以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

        
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更漏子一首

(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。

 

(更漏子一首)

舊には歡,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。

濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。

簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。

歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

 終南山04

 

『更漏子一首』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

 

(下し文)

(更漏子一首)

舊には歡,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。

濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。

簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。

歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

 

(現代語訳)

(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。

ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。

 

(訳注)

更漏子

『花間集』には顧夐の作が一首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。逢瀬は時間を気にして過ごしたが、今は眠れず夜を過ごすというのが大方のストーリーである。

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『更漏子』十六首

 

 

溫助教庭筠

『更漏子 一』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-15-2-#1 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1676

 

 

 

『更漏子 二』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-16-2-#2 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1680

 

 

 

『更漏子 三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-17-2-#3 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1684

 

 

 

『更漏子 四』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-18-2-#4 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1688

 

 

 

『更漏子 五』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-19-2-#5 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1692

 

 

 

『更漏子 六』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-20-2-#6 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1696

 

 

韋相莊

更漏子一首 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-282-5-#36  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2957

 

 

牛嶠(牛給事嶠)

更漏子三首 其一 牛嶠【ぎゅうきょう】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-325-6-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3172

 

 

 

更漏子三首 其二 牛嶠【ぎゅうきょう】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-326-6-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3177

 

 

 

更漏子三首 其三 牛嶠【ぎゅうきょう】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-327-6-#14  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3182

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

更漏子 毛文錫【もうぶんせき】  ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-367-8-#3  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3382

 

 

(顧太尉

更漏子一首

 

 

孫少監光憲

更漏子二首

 

 

 

 

 

 

毛秘書熙震

更漏子二首

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇この詩は最終句にまとめられているように、(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

 

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

〇歡 よろこび楽しむこと。 「美人西施を洒掃(せいそう)の妾(しよう)たらしめ,一日の歓娯に備ふべし

悵望 心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。

擁鼻 かなしくて涙と鼻水がこぼれたのを拭く。

含嚬 悔しさをかみしめ、口をゆがめる

 

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

〇この三句、聯は春が過ぎ夏が過ぎて逝く季節の変わりを述べる。

 

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。

〇簾半捲 簾の陰に隠れて遠方を眺める。見ている姿を見られたくないという女心をいう。

〇屏斜掩 屏風は逢瀬の際ベッドのそばにたててこべやのようにして使用する。ここは男が来ないから使うことがなく壁に立てかけておくことをいう。

〇岫【くき】1 山の洞穴。2 山の峰。

〇參差① 長短の等しくないさま。そろわないさま。② 入りまじるさま。入り組むさま。

〇迷眼 めをこらすことがなく、おちつかないこと。

 

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。
終南山01
 

13-339《醉公子二首 其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-522-13-(339) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4157

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、

        
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醉公子二首 其一

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

睡起橫波慢,獨望情何限。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。

 

其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

 

(其の二)

岸柳 金線垂れ,雨晴れ 鶯 百囀す。

家 綠楊の邊に在り,往來 少年多し。

馬嘶 芳草 遠く,高樓 簾 半ば捲く。

袖を斂【まと】め 翠蛾 攢【ひそ】む,相いに逢うは 爾許【かくのごと】く難し。

 

 

『醉公子二首』 現代語訳と訳註

(本文)

其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

 

(下し文)

(其の二)

岸柳 金線垂れ,雨晴れ 鶯 百囀す。

家 綠楊の邊に在り,往來 少年多し。

馬嘶 芳草 遠く,高樓 簾 半ば捲く。

袖を斂【まと】め 翠蛾 攢【ひそ】む,相いに逢うは 爾許【かくのごと】く難し。

 

 

(現代語訳)

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

 

 

 (訳注)

醉公子二首

『花間集』には四首所収。顧夐の作は二首収められている。双調四十字、前後段二十字四句二仄韻二平韻で、❺❺⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『醉公子』四首

 

 

薛侍郎昭蘊

醉公子一首

 

 

(顧太尉

醉公子二首其一

 

 

 

醉公子二首其二

 

 

閻處士選

醉公子一首

 

 

 

 

 

 

其二

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

【解説】 

柳の色彩を言った前段第一句の「金線」と第三句の「緑楊」今年芽吹いたばかりの枝、「緑楊」が去年から生える枝というのがこの詩の斬新なところである。

 

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

○金線 柳の黄色い芽吹き。今春初めてデビューした女妓をいう。

 

家在綠楊邊,往來多少年。

美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

〇家在綠楊邊 美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある。

〇往來多少年 李白・杜甫・王維に少年行がある。富貴・貴族の二男坊たち。金に飽かせて徒党を組んで遊び回る。

唐詩で「少年」といえば、王維 少年行
新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。
相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。
李白 17少年行
少年行      
五陵年少金市東、銀鞍白馬度春風。
落花踏尽遊何処、笑入胡姫酒肆中。
杜甫 少年行

馬上誰家白面郎、臨階下馬坐人牀。
不通姓氏麤豪甚、指點銀瓶索酒嘗。
 
王昌齢『少年行』
走馬遠相尋,西樓下夕陰。結交期一劍,留意贈千金。高閣歌聲遠,重門柳色深。夜闌須盡飲,莫負百年心。
いなせな若者や壮士を詠う。

溫庭筠『贈少年』

江海相逢客恨多,秋風葉下洞庭波。

酒酣夜別淮陰市,月照高樓一曲歌。

贈少年 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-56-9-# 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1840

 

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

○馬噺芳草遠 遊び人の貴公子が若草茂る道を馬に跨り遥か遠ざかって行く。彼らは去ったまま帰ってくることはない。後段末句の「相逢爾許難」を生み出す要因になっている。馬で去るのか、舟で去るか、貴公子の行為の常套手段の語である。

 

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

○斂袖翠蛾攢 泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直すことをいう。あきらめの境地をいう。

○爾許 このように。

13-338《醉公子二首 其一》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。


        
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13-338《醉公子二首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

 

 

醉公子二首 其一

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

睡起橫波慢,獨望情何限。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。 

其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

采蓮003
 

 

 醉公子二首』 現代語訳と訳註

(本文) 醉公子二首 其一

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

睡起橫波慢,獨望情何限。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

 

(下し文)

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。

 

(現代語訳)

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

pla880014
 

 

(訳注)

醉公子二首

『花間集』には四首所収。顧夐の作は二首収められている。双調四十字、前後段二十字四句二仄韻二平韻で、❺❺⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『醉公子』四首

 

 

薛侍郎昭蘊

醉公子一首

 

 

(顧太尉

醉公子二首其一

 

 

 

醉公子二首其二

 

 

閻處士選

醉公子一首

 

 

 

 

 

其一

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

 

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

〇漠漠 ぼんやりとして遠くはるかな様子をいう。

〇紅耦 赤い蓮の花。女妓の頬紅を連想させる語である。

〇侵檻 池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる。

 

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

〇小山屏 女妓がよこたわる。

〇金鋪向晚扃 夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

 

 

睡起橫波慢,獨望情何限。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

〇橫波慢 日ごろ物憂いで目だけを動かすだけである。

〇何限 こんなにもかぎりがないほどだ。無限と同じ。

 

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

〇衰柳數聲蟬 これまで、柳も枯れ、数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。

〇魂銷 男のことを思う気持ちが消えてきた

〇似去年 去年の秋と同じようなものであること。
花蕊夫人006

13-337《臨江仙三首 其三》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-520-13-(337) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4147

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。


        
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 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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13-337《臨江仙三首 其三》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-520-13-(337)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4147

 

 

臨江仙三首

其一

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

博山鑪暖澹煙輕。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

 

其二

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。(臨江仙三首 其の二)

幽閨 小檻 春光の晚,柳濃 花淡 鶯稀れなり。

舊歡 思想 尚お依依たり,翠嚬 紅斂,終日 芳菲を損う。

何事ぞ 狂夫 音信斷ちたるは,梁鷰 猶の歸る不如たるは。

畫意 深處 麝煙 微にし,屏虛 枕冷,風 細雨霏霏たり。

 

其三

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

閨に続くきざはしの奥の砌には、枝につけた咲く花の二つ三つとあり、夜露にしっとりと濡れています。恨みに満ちた顔は泣き崩れてしまいました。あの人がわたしを思う心は断絶し、わたしは自分の身繕いをすることもしたくないのです。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

あの人を迎えるための香炉には香を焚くこともなく高台の上の鴨の飾りも冷え切ったままです。前におあいした時の約束日に来ないというわたしの心が踏みにじられたことに堪えなければいけないのです。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

刺繍の入った襦袢を着たり、雲型や見蜜らの髪型を整えることもしたくなくなり、何度も何度も辛い悲しい思いをすることか、こんなふうに思い続けていくことが人生、生きていくことと云うことなのでしょう。

 

(其の三)

月色 簾を穿ち 風 竹に入る,屏を倚り 雙つの黛 時に愁う。

砌の花 兩つ三つの枝に露を含み,如啼 臉に恨み,魂斷ちて 容儀を損う。

香燼 暗く銷し 金鴨冷かなり,前期を辜負するを堪える可し。

繡襦 鬢鬟の欹 整わず,幾多 惆悵たり,情緒 天涯に在る。


 

 

『臨江仙三首 其三』 現代語訳と訳註

(本文) 其三

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

 

(下し文)

(其の三)

月色 簾を穿ち 風 竹に入る,屏を倚り 雙つの黛 時に愁う。

砌の花 兩つ三つの枝に露を含み,如啼 臉に恨み,魂斷ちて 容儀を損う。

香燼 暗く銷し 金鴨冷かなり,前期を辜負するを堪える可し。

繡襦 鬢鬟の欹 整わず,幾多 惆悵たり,情緒 天涯に在る。

 

(現代語訳)

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)

夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。

閨に続くきざはしの奥の砌には、枝につけた咲く花の二つ三つとあり、夜露にしっとりと濡れています。恨みに満ちた顔は泣き崩れてしまいました。あの人がわたしを思う心は断絶し、わたしは自分の身繕いをすることもしたくないのです。

あの人を迎えるための香炉には香を焚くこともなく高台の上の鴨の飾りも冷え切ったままです。前におあいした時の約束日に来ないというわたしの心が踏みにじられたことに堪えなければいけないのです。

刺繍の入った襦袢を着たり、雲型や見蜜らの髪型を整えることもしたくなくなり、何度も何度も辛い悲しい思いをすることか、こんなふうに思い続けていくことが人生、生きていくことと云うことなのでしょう。

 十三夜月

 

(訳注)

臨江仙三首 其二

唐の教坊の曲名。『花間集』には下に示した表のとおり、二十六首所収。顧夐の作は三首収められている。双調五十八字、前後段二十九字五句三平韻で、7⑥⑦4⑤/7⑥⑦4⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『臨江仙』 二十四首

 

 

張舍人泌

 

臨江仙一首

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

臨江仙一首

 

 

牛學士希濟

 

臨江仙七首其一

 

 

 

 

臨江仙七首其二

 

 

 

 

臨江仙七首其三

 

 

 

 

臨江仙七首其四

 

 

 

 

臨江仙七首其五

 

 

 

 

臨江仙七首其六

 

 

 

 

臨江仙七首其七

 

 

和學士凝

 

臨江仙二首 其一

 

 

 

 

臨江仙二首 其二

 

 

(顧太尉

 

臨江仙三首

 

 

孫少監光憲

 

臨江仙二首

 

 

魏太尉承班

 

臨江仙二首

 

 

閻處士選

 

臨江仙二首

 

 

毛秘書熙震

 

臨江仙二首

 

 

李秀才珣

 

臨江仙二首

 

 

 

 

 

 

其三

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)

合歓の花
 

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。

・月色穿簾 月が穿簾を突き抜け部屋に入って來ることは、真上にあがっていては入らない、つまり、西に傾くまで寝ずに待っていたことをいう。また、月が明るいことをいみする。すなわち、十日すぎから二十日月の間に帰って来ると約束したと思われる。風が竹林を抜けると音を立てるのは、風が船の帆を押して早く帰って来ることを願うという意味であり、待っている女の様子をあらわしている。

 

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

閨に続くきざはしの奥の砌には、枝につけた咲く花の二つ三つとあり、夜露にしっとりと濡れています。恨みに満ちた顔は泣き崩れてしまいました。あの人がわたしを思う心は断絶し、わたしは自分の身繕いをすることもしたくないのです。

・砌花の句 この女妓には約束の日に男は来なかったが、階の向うの花には(他の女妓をいう場合が多い。)他の女妓は男性が来てくれていて、逢瀬を楽しんでいるという意味である。

 

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

あの人を迎えるための香炉には香を焚くこともなく高台の上の鴨の飾りも冷え切ったままです。前におあいした時の約束日に来ないというわたしの心が踏みにじられたことに堪えなければいけないのです。

・辜負 「辜」「負」はともにそむく意で. 強い意志をもってそむくこと。

 

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

刺繍の入った襦袢を着たり、雲型や見蜜らの髪型を整えることもしたくなくなり、何度も何度も辛い悲しい思いをすることか、こんなふうに思い続けていくことが人生、生きていくことと云うことなのでしょう。

・鬢鬟 びんとみみつら。耳の傍に垂らす髪型。

・欹 そばだてる。

花間集02

13-336《臨江仙三首 其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-519-13-(336) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4142

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

        
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13-336《臨江仙三首 其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-519-13-(336)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4142

 

 

臨江仙三首

其一

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。
博山鑪暖澹煙輕。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

博山爐01
 

其二

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。

(臨江仙三首 其の二)

幽閨 小檻 春光の晚,柳濃 花淡 鶯稀れなり。

舊歡 思想 尚お依依たり,翠嚬 紅斂,終日 芳菲を損う。

何事ぞ 狂夫 音信斷ちたるは,梁鷰 猶の歸る不如たるは。

畫意 深處 麝煙 微にし,屏虛 枕冷,風 細雨霏霏たり。

 

其三

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

 

 

『臨江仙三首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

其二

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

 

(下し文)

(臨江仙三首 其の二)

幽閨 小檻 春光の晚,柳濃 花淡 鶯稀れなり。

舊歡 思想 尚お依依たり,翠嚬 紅斂,終日 芳菲を損う。

何事ぞ 狂夫 音信斷ちたるは,梁鷰 猶の歸る不如たるは。

畫意 深處 麝煙 微にし,屏虛 枕冷,風 細雨霏霏たり。

 

 

(現代語訳)

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。

 

(訳注)

臨江仙三首 其二

唐の教坊の曲名。『花間集』には下に示した表のとおり、二十六首所収。顧夐の作は三首収められている。双調五十八字、前後段二十九字五句三平韻で、7⑥⑦4⑤/7⑥⑦4⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『臨江仙』 二十四首

 

 

張舍人泌

 

臨江仙一首

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

臨江仙一首

 

 

牛學士希濟

 

臨江仙七首其一

 

 

 

 

臨江仙七首其二

 

 

 

 

臨江仙七首其三

 

 

 

 

臨江仙七首其四

 

 

 

 

臨江仙七首其五

 

 

 

 

臨江仙七首其六

 

 

 

 

臨江仙七首其七

 

 

和學士凝

 

臨江仙二首 其一

 

 

 

 

臨江仙二首 其二

 

 

(顧太尉

 

臨江仙三首

 

 

孫少監光憲

 

臨江仙二首

 

 

魏太尉承班

 

臨江仙二首

 

 

閻處士選

 

臨江仙二首

 

 

毛秘書熙震

 

臨江仙二首

 

 

李秀才珣

 

臨江仙二首

 

 

 

 

 

 

其二

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

 

 

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

・幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。この二句は女のまわりの春景色が過ぎてゆくことをいい、女盛りが過ぎ、歳を重ねて、男が全く音信不通になったことをいう。

 

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

嚬 苦々しげに口をゆがめる。

芳菲 草花のよいにおいがすること。また、草花が美しく咲きにおっていること。

 

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

・狂夫 一つのことに一生懸命になることで、他が見えないことをいい、ここでは、若い女に入り浸っていることをいう。

・梁鷰猶歸 春が来れば梁の上に巣を作り子作りをして秋には飛び去るが、新しい春と共に帰ってきてくれること。

 

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。

・畫意の句 書画を遺して行っているのでそこの思い出があり、楽しかったころと同じことをしてみることをいう。

・屏虛枕冷 男が全く寄り付かないことの表現。屏風は女の閨は広い部屋で、寝牀も広いので帳や屏風で寝姿が見えないよう隠すが、その屏風牙鬚買われることもなく空しくあるだけ、同じ意味で枕も使われて体温のために暖められることがなく冷たいままである。

・霏霏 1 雪や雨が絶え間なく降るさま。「―として秋雨が降る」2 物事が絶え間なく続くさま。春から夏にかけての小ぬか雨をいう、季節が変わったことをいい、歳を重ねたことをいう。
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晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

        
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 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
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 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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13-335《臨江仙三首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-518-13-(335)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4137

 

 

臨江仙三首 其一

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。
博山鑪暖澹煙輕。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

 

其二

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

 

其三

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

桄榔00
 

 

『臨江仙三首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

臨江仙三首 其一

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

博山鑪暖澹煙輕。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

 

(下し文)

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

 

 

(現代語訳)

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。
神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。 
 

(訳注)

臨江仙三首

唐の教坊の曲名。『花間集』には下に示した表のとおり、二十六首所収。顧夐の作は三首収められている。双調六十字、前後段三十字六句三平韻で、7⑥⑦43③/7⑥⑦43③の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『臨江仙』 二十四首

 

 

張舍人泌

 

臨江仙一首

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

臨江仙一首

 

 

牛學士希濟

 

臨江仙七首其一

 

 

 

 

臨江仙七首其二

 

 

 

 

臨江仙七首其三

 

 

 

 

臨江仙七首其四

 

 

 

 

臨江仙七首其五

 

 

 

 

臨江仙七首其六

 

 

 

 

臨江仙七首其七

 

 

和學士凝

 

臨江仙二首 其一

 

 

 

 

臨江仙二首 其二

 

 

(顧太尉

 

臨江仙三首

 

 

孫少監光憲

 

臨江仙二首

 

 

魏太尉承班

 

臨江仙二首

 

 

閻處士選

 

臨江仙二首

 

 

毛秘書熙震

 

臨江仙二首

 

 

李秀才珣

 

臨江仙二首

 

 

 

 

 

 

 

其一

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

作中の主人公は調度品から高貴な人の愛妾であることが知れる。楽しき思い出とは、愛人と過ごした日々のことを指す。

紅莓苔子002
 

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

碧染長空 晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空をいう。

 

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。  

象床・珍簟・障掩・玉琴 これらの物は相当高貴な人か、富貴の愛妾であったことをあらわしている。

 ○象床 象牙の飾りの付いた寝台。

○珍簟 上等な夏用の敷物。簟は、竹の皮を薄く剥いで編んだ竹筵シーツで涼しい模様に編んでいた。

○山障 山形の衝立。

○玉琴 玉を飾った琴。
 

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。

懽笑事/贏得愁生 昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。

○懽 懽・歡で 喜ぶ,楽しむ.((方言)) 形容詞 勢いがよい,活発である,盛んである.

得 苦労の末、手に入れたもの、残ったもの。

 

博山鑪暖澹煙輕。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

○博山 神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

 ○博山 大型の高価な香炉の形であるが、ここでは香が置いてあるその部屋を指す。

博山炉【はくさんろ】中国の香炉の一種で,豆(とう)形の火皿に先端のとがった山形の蓋をもつ。承盤をともなうものも多く,これは海中に浮かぶ神山にたとえたとみられ,神仙道との関係がうかがわれる。戦国末期にあらわれ,漢代に盛行し,青銅製品には金象嵌をほどこした華麗なものがある。江南では東晋,南朝代に青磁製のものがみられる。南北朝代には仏教徒も用い,仏像の台座正面や供養者の持物にあらわされた。隋・唐代には山形の蓋が蓮華をかたどった緑釉陶もつくられた。
 

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

 博山爐01

13-334《漁歌子一首》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-517-13-(334) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4132

漁歌子一首≫顧夐≫(隠遁者の心得を詠う)奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

        
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13-334《漁歌子一首》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-517-13-(334)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4132

 

 

漁歌子

(隠遁者の心得を詠う)

曉風清,幽沼綠,倚欄凝望珍禽浴。

初秋の明け方の清々しい風にあたる。誰もいない沼には緑があふれている。水際の欄干に倚りかかって珍しい鳥が水浴びをしているのを少し離れてはいるがじっと眺める。

畫簾垂,翠屏曲,滿袖荷香馥郁。

奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

好攄懷,堪寓目,身閑心靜平生足。

思いを広くしていくのはよいことであり、風流なものを注目することは何よりいいことであり、身体はうごかさず、こころは静かにする、これが隠遁者の平生の生活なのである。

酒盃深,光影促,名利無心較逐。

酒を呑むのは十分に飲むし、日中の夜においてもそうする。名誉と利益については全く関心がないし、人と競い合うことなどもしない。

(漁歌子)

曉風 清【すがすが】しく,幽沼 綠なり,欄に倚り 珍禽の浴を凝望するなり。

畫簾 垂れ,翠屏 曲し,袖に 荷香馥郁【ふくいく】を滿たす。

攄懷【ちょかい】を好み,寓目に堪え,身は閑し 心は靜す 平生足る。

酒盃 深く,光影 促し,名利 較逐するに無心なり。

水鳥ケリ001
 

 

『漁歌子』 現代語訳と訳註

(本文)

漁歌子

曉風清,幽沼綠,倚欄凝望珍禽浴。

畫簾垂,翠屏曲,滿袖荷香馥郁。

好攄懷,堪寓目,身閑心靜平生足。

酒盃深,光影促,名利無心較逐。

 

 

(下し文)

(漁歌子)

曉風 清【すがすが】しく,幽沼 綠なり,欄に倚り 珍禽の浴を凝望するなり。

畫簾 垂れ,翠屏 曲し,袖に 荷香馥郁【ふくいく】を滿たす。

攄懷【ちょかい】を好み,寓目に堪え,身は閑し 心は靜す 平生足る。

酒盃 深く,光影 促し,名利 較逐するに無心なり。

 

(現代語訳)

(隠遁者の心得を詠う)

初秋の明け方の清々しい風にあたる。誰もいない沼には緑があふれている。水際の欄干に倚りかかって珍しい鳥が水浴びをしているのを少し離れてはいるがじっと眺める。

奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

思いを広くしていくのはよいことであり、風流なものを注目することは何よりいいことであり、身体はうごかさず、こころは静かにする、これが隠遁者の平生の生活なのである。

酒を呑むのは十分に飲むし、日中の夜においてもそうする。名誉と利益については全く関心がないし、人と競い合うことなどもしない。

 花間集

 

(訳注)

漁歌子

花間集には、教坊曲『漁歌子』は八首所収されている。

総長五十字、前後二十五字六句四仄韻、3❸❼3❸❻/3❸❼3❸❻の詞形をとる。若いころの放蕩を改め、風流、興を感じる隠士の生活を詠うものを基本とする。

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『漁歌子』八首

 

 

(顧太尉

漁歌子一首

 

 

孫少監光憲

漁歌子二首

 

 

魏太尉承班

漁歌子一首

 

 

李秀才珣

漁歌子四首

 

 

 

 

 

 

 

曉風清,幽沼綠,倚欄凝望珍禽浴。

初秋の明け方の清々しい風にあたる。誰もいない沼には緑があふれている。水際の欄干に倚りかかって珍しい鳥が水浴びをしているのを少し離れてはいるがじっと眺める。

 

畫簾垂,翠屏曲,滿袖荷香馥郁。

奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

○馥郁 よい香りがただよっているさま。

 

好攄懷,堪寓目,身閑心靜平生足。

思いを広くしていくのはよいことであり、風流なものを注目することは何よりいいことであり、身体はうごかさず、こころは静かにする、これが隠遁者の平生の生活なのである。

攄懷 おもいをひろくめぐらす。

○寓目 目を向けること。注目すること。

 

酒盃深,光影促,名利無心較逐。

酒を呑むのは十分に飲むし、日中の夜においてもそうする。名誉と利益については全く関心がないし、人と競い合うことなどもしない。

○名利(個人の)名誉と利益.用例名利思想=個人の利益・名誉・地位を追い求める考え.名利双收((成語))=名誉と利益を両方とも手に入れる.

○較逐 (競逐). ;較對. (競爭對抗). ;較逐. (角逐,競爭追求).
鸂鶒けいせき001
 

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