(改訂版)-6韋荘84《巻2-34 菩薩蠻五首其一》「早くここにお帰ってきてください」と勧める歌と琵琶曲で、「東鄰の女」、美人で賢い女であるから、「花のようにきれいな女になっているから、待っている」と云っているのだろう。
『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-6韋荘84《巻2-34 菩薩蠻五首其一》二巻34-〈84〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5622
花間集 菩薩蛮五首 唐・蜀 韋莊
●溫助教庭筠 菩薩蠻十四首
『花間集』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠14《菩薩蠻十四首 其十四》溫庭筠66首巻一14-〈14〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5267
●韋荘(韋相莊) 菩薩蠻五首
●牛嶠(牛給事嶠)菩薩蠻七首
●歐陽舍人炯 菩薩蠻一首
●孫少監光憲 菩薩蠻五首
●閻處士選 菩薩蠻一首
●毛秘書熙震 菩薩蠻三首
●李秀才珣 菩薩蠻三首
(旧版)
菩薩蠻 一
紅樓別夜堪惆悵。 香燈半捲流蘇帳。
殘月出門時。 美人和涙辭。
琵琶金翠羽。 絃上黄鶯語。
勸我早歸家。 綠窗人似花。
赤く美しい富貴の女の家の高殿での別れの夜というに、たまらない恨み嘆ことにたえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜたふさで飾られたとばりを半ばかかげているのは心残りの表れなのだ。
有明の月このいえをさるときがきたようだ。美しい女性と涙ながらの別れを告げねばならない。
その美人は翡翠のかざられたばちで琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは鶯の春を告げる言葉のように私を引き留める。
そして、そのあとには「早くあなたの家にお帰りなさい」と勧め、「緑の窓のほとりに花のようにきれいな人が待っていることでしょう」を添えて云うのである。
菩薩蛮
紅樓の別れの夜 惆悵に堪へんや。香燈に半ば捲く 流蘇の帳【とばり】を。
殘月 門を出でし時、美人 涙と和【とも】に辭す。
琵琶 金翠の羽。絃上 黄鶯 語るに:
我に勸む 早【つと】に 家に歸れと。綠窗に 人 花の似【ごと】し。
(改訂版)-6韋荘84《巻2-34 菩薩蠻五首之 一》
菩薩蛮五首 其一
(この夜が最後の夜で、別の妃嬪のもとに行くという、最後の夜と翌朝を詠う。)
紅樓別夜堪惆悵、香燈半捲流蘇帳。
赤く美しい御殿での明日の朝には別れなければいけない、その夜だけに、恨み嘆くことをこらえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜた房に飾られたとばりを半ばかかげて、寝牀の中に入ってゆく。
殘月出門時、美人和涙辭。
名残の月が残る夜が明けて、門を出る時が来ると、美しい妃嬪に涙ながらの別れを告げた。
琵琶金翠羽、絃上黄鶯語。
妃嬪は翡翠のかざりが付いた撥で琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは響き渡って、鶯の春を告げる言葉のように二人を引き留める。
勸我早歸家、綠窗人似花。
「早くここにお帰ってきてください」と勧める歌と琵琶曲で、「東鄰の女」、美人で賢い女であるから、「花のようにきれいな女になっているから、待っている」と云っているのだろう。
(菩薩蛮五首その一)
紅樓の別夜 惆悵に堪え、香燈 半ばに捲く 流蘇の帳【とばり】を。
殘月 門を出でし時、美人 涙と辭を和【とも】にす。
琵琶 金翠の羽。絃上 黄鶯 語る。
我に勸む 「早【つと】に 家に歸れ」と。「綠窗の人」 花の似【ごと】し。
(改訂版)-6韋荘84《巻2-34 菩薩蠻五首其一》
『菩薩蛮五首 其一』 現代語訳と訳註
(本文)
菩薩蛮五首 其一
紅樓別夜堪惆悵、香燈半捲流蘇帳。
殘月出門時、美人和涙辭。
琵琶金翠羽、絃上黄鶯語。
勸我早歸家、綠窗人似花。
(下し文)
(菩薩蛮五首その一)
紅樓の別夜 惆悵に堪え、香燈 半ばに捲く 流蘇の帳【とばり】を。
殘月 門を出でし時、美人 涙と辭を和【とも】にす。
琵琶 金翠の羽。絃上 黄鶯 語る。
我に勸む 「早【つと】に 家に歸れ」と。「綠窗の人」 花の似【ごと】し。
(現代語訳)
(この夜が最後の夜で、別の妃嬪のもとに行くという、最後の夜と翌朝を詠う。)
赤く美しい御殿での明日の朝には別れなければいけない、その夜だけに、恨み嘆くことをこらえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜた房に飾られたとばりを半ばかかげて、寝牀の中に入ってゆく。
名残の月が残る夜が明けて、門を出る時が来ると、美しい妃嬪に涙ながらの別れを告げた。
妃嬪は翡翠のかざりが付いた撥で琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは響き渡って、鶯の春を告げる言葉のように二人を引き留める。
「早くここにお帰ってきてください」と勧める歌と琵琶曲で、「東鄰の女」、美人で賢い女であるから、「花のようにきれいな女になっているから、待っている」と云っているのだろう。
(訳注) (改訂版)-6韋荘84《巻2-34 菩薩蠻五首之 一》
菩薩蛮五首 其一
(この夜が最後の夜で、別の妃嬪のもとに行くという、最後の夜と翌朝を詠う。)
一定の期間を過ぎれば、子供できない場合、別の妃嬪に寵愛は移る。妃嬪の資格として、音楽、舞踊は最低限の嗜みであった。この詩は、妓優が朝別れるというには、全体的に優雅な雰囲気を感じさせるので、妃嬪の事と考える。。
唐の教坊の曲で花間集には四十一首所収、溫庭筠の菩薩蠻は十四首、双調 四十四字。換韻。前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段四句二仄韻に平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蛮五首 其一
紅樓別夜堪惆悵。 香燈半捲流蘇帳。
殘月出門時、美人和涙辭。
琵琶金翠羽、絃上黄鶯語。
勸我早歸家。 綠窗人似花。
○○●●○○● ○○●△○○●
○●●○○ ●○△?○
○○○●● △●?○●
●●●○○ ●○○●○
この詞は花間集 韋荘の菩薩蛮其一である。上片で恋人との切ない別れの情景が、下片では、女性を懐憶している。
・韋莊:韋荘。唐末、蜀の詞人。
溫庭筠 菩薩蠻十五首其一
小山重疊金明滅,鬢雲欲度香顋雪。
懶起畫蛾眉。弄妝梳洗遲。
照花前後鏡。花面交相映。
新帖繡羅襦。雙雙金鷓鴣。
●○△●○○● ●○●●○○●
●●●△○ ●○○●○
●○○●● ○●○△●
○●●○○ ○○○●○
紅樓別夜堪惆悵、香燈半捲流蘇帳。
赤く美しい御殿での明日の朝には別れなければいけない、その夜だけに、恨み嘆くことをこらえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜた房に飾られたとばりを半ばかかげて、寝牀の中に入ってゆく。
・紅樓:赤く色を塗った、美しい高殿。南の正門に続く御殿を示し、お金持ちの家の愛妾の住む建物で寵愛を受けるところ(基本、男が女の所に通う、「通い婚」)。青楼であれば、品が落ちてくるが、いずれにしても、この男女が密会した場所をいう場合が多い。
・別夜:別れの夜。男と女が別れた、その夜。
・堪:(現代語)たえがたい。たえられようか。この中心の語義は、古語と同じ「たえる」だが、ここでは違う。「紅樓の別夜 惆悵に堪へたり」(別れの辛さを克服できた)というのではなくて、少し字が多くなるが、「紅樓の別夜 (なんぞ)惆悵に堪へたらんや」とでもして、別れの耐え難さを表しているところ。
・惆悵:恨み嘆く。
・香燈:香しい灯火。香は、女性の居場所を暗示させる語。
・半捲:半ば巻く。大きく巻き上げていないところに、女性の微妙な気持ちが現れている。
・流蘇:五色の糸を混ぜたふさで、幕や旗などの飾りに使う。流蘇帳は、ふさの飾りが付いた幕。華麗で艶めかしいベッド等の家具を連想させる働きがある。初唐・上官儀の『八詠應制二首』之一に「啓重帷,重帷照文杏。翡翠藻輕花,流蘇媚浮影。瑤笙燕始歸,金堂露初晞。風隨少女至,虹共美人歸。」とある。
・帳:とばり。たれぎぬ。カーテン。ここは床帳(ベッドカーテン)か。(中国では、ベッドをカーテンで囲む習慣がある。あてにはできないが、「大明宮詞」でも武則天はカーテン付きのベッドに寝ていたが…。いつ頃からか、また調べておきます。)
殘月出門時、美人和涙辭。
名残の月が残る夜が明けて、門を出る時が来ると、美しい妃嬪に涙ながらの別れを告げた。
・殘月:有明の月。夜が明けてもまだ空にある月。この頃は、夜が明けるまでに帰らないといけなかった。名残月は20日頃の月をいう。
・出門:その人の元を立ち去るとき。
・美人:詞では妓優、歌妓(歌姫)を指すこと多い。元来、妃嬪をいう、隋唐の「内官」制度、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。上記のそれぞれの女性は官品をもち、合計で122人の多きに達した。普通に、美人といえば、やはり美しい女性を指すが、男性をいう場合や、心が立派な君子や君主など、いろいろな場合がある。ここは、涙と共に別れの言葉を言った訳であるから、やはり女性のことか。
・和涙:涙とともに。涙を含んで。
・辭:別れの挨拶の辞を言う。もしも美人を作者の男性ととると、辞去する、になる。ここは前者が相応しい。
妓優 玄宗は音楽、歌舞を特に愛好したので、彼の治世には宮妓の人数は大幅に増大し、教坊は隆盛を極めた。また玄宗は宮中に梨園、宜春院などを設け、特に才能のある芸妓を選りすぐり、宮中に入れて養成した。当時、宜春院に選抜された妓女は、「内人」とか、「前頭人」とよばれた。玄宗は常日頃、勤政楼の前で演芸会を開き、歌舞の楽妓は一度に数百人も出演することがあり、また縄や竹竿を使う、さまざまな女軽業師の演戯もあった。この後は、もうこれほどの盛況はなかったが、しかし教坊は依然として不断に宮妓を選抜して教坊に入れていた。憲宗の時代、教坊は皇帝の勅命だと称して「良家士人の娘及び衣冠(公卿大夫)の家の別邸の妓人を選び」内延に入れると宣言したので(『旧唐書』李緯伝)、人々は大いに恐れおののいた。そこで憲宗は、これは噂であると取り消さざるを得なかった。文宗の時代、教坊は一度に「霓裳羽衣」(開元、天宝時代に盛んに行われた楽曲)の舞いを踊る舞姫三百人を皇帝に献上したことがあった。
琵琶金翠羽、絃上黄鶯語。
妃嬪は翡翠のかざりが付いた撥で琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは響き渡って、鶯の春を告げる言葉のように二人を引き留める。
・琵琶:弦楽器の一。右端の女性が奏でているような楽器。
・金翠羽:金の翡翠(翠は雌のカワセミ)の羽の飾り模様。琵琶の表面か、ばちに画かれ・いる。羽がややこしいのは韻を踏むためでもあろう。
・絃上:絃を弦とする本も多い。弦で。演奏して。弦楽器を奏でることをいう。
・黄鶯:うぐいす。詞ではよく出てくる。ここでは、琵琶から流れ来る音楽の形容。
・語:言葉。黄鶯語の外にも解語花(女性のこと)等、という風に語を使う。琵琶から流れ来るメロディが、まるで弾く人の意を体して、語りかけてくるような感じを謂っている。
勸我早歸家、綠窗人似花。
「早くここにお帰ってきてください」と勧める歌と琵琶曲で、「東鄰の女」、美人で賢い女であるから、「花のようにきれいな女になっているから、待っている」と云っているのだろう。
・勸我:琵琶から流れ来るメロデイは、「はやくもどってきなさいね」と語りかけるようだ、ということ。
・早歸家:「早く戻れ。」「いってかえり」という出掛けのあいさつの様なもの。早の意味は、早期に。「近日中に帰ってこい」の意味であって、「もういい時間になったので、いそいで速く家に帰らないと」ではない。早、夙などと、速、快、疾などとでは、日本語では、どれも「はやい」と読むものの、意味が全く違う。
・綠窗:緑のうすぎぬのカーテンをした窓は東のまどで、「東鄰(窓)の女」宋玉の賦の中に出てくる美人、美人で賢い女性をイメージさせる。
・似:…の ようである。ごとし。如・似ともに「ごとし」と読み、意味も近いが、似は●、如は○のところでと、使い分ける。
韋莊
(836―910)、字は端己、京兆の杜陵(陝西省西安市の南郊)の人。中唐の詩人韋応物の玄孫で、宰相韋見素の孫。父母を早く失い、家は没落、貧に苦しんだ。五十代に入ってから、数年間、広く長江の中、下流域を渡り歩き、何度も科挙に落第した末、昭宗の乾寧元年(894年)、59歳でようやく進士に及第(高等文官試験)に合格し、校書郎に任じられた。66歳で四川省にいた王建が叛乱を起こしたので、朝廷では李詢を正使、韋荘を補佐として宣撫に赴かせたが、ほどなくして唐が亡び、王建が前蜀の帝を称えると、韋荘はそのまま王建に仕え、王建が前蜀王朝を建てるのに協力して、吏部侍郎・同平章事に任ぜられた。宰相にまで昇進している。前蜀の都は成都にあり、韋荘はその郊外の、かつて杜甫が住んでいた浣花草堂を修復して、自分の庵にした。温庭筠と並んで温韋と併称され、晩唐期を代表する詞人である。韋莊の詞は率直明快さを特色とし、『花問集』 には48首の詞が収められている。

























