玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

2015年05月

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

(改訂版Ver.2.1)牛嶠《巻四11菩薩蠻七首 其一》『花間集』162全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6082

牛嶠  菩薩蠻七首 其一  

舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。

門外柳花飛,玉郎猶未歸。

愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。

何處是遼陽,錦屏春晝長。

(寵愛を受ける時は短く、ツバメが来て、しばらくヒナがうるさくし始める頃にはすでに寵愛を失う。そのごは、毎日、寵愛を受けていた時と同じようにただ、待ち続ける毎日が繰り返される。まるでどこか北の遠くの遼陽に送り出した人を待つ寡婦と同じようになってしまうと詠う)

(改訂版Ver.2.1)牛嶠《巻四11菩薩蠻七首 其一》『花間集』162全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6082

 
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貴族の女性たち

貴族の女性たちが夫の貴賎栄辱の運命のままに翻弄され浮沈定まらない生活をおくったことを反映している。

 

「栄耀栄華は束の間のことで長続きはしない」といつも恐れおののいていたほかに、貴族の婦人たちがそれこそ絶えず感じていたのは閨の孤独、夫の薄情に対する恨み、それに容色の衰え易さに対する嘆きであった。唐詩の中で百首に上る「閏怨」詩の大部分が、彼女たちのこの種の心情をよく表現している。花間集以外でたとえば、

王昌齢「閏怨」

閨中少婦 不曽愁、春日凝粧上翠楼。

忽見陌頭 楊柳色、悔教夫婿覓封侯。

閨中の少婦かつて愁えず、春の日に粧いを凝らして翠楼を上る。

忽ち見る陌頭の楊柳の色を、夫婿をして封侯を求めしむるを悔ゆる。

陳羽「古意」

妾年四十絲滿頭、郎年五十封公侯。

男兒全盛日忘舊、銀床羽帳空飃

妾の年四十にして絲の頭に滿ち、郎の年五十にして公侯に封ぜらる。

男兒は全盛なれば、日びに舊を忘れ、銀床、羽帳は、空しく飃飅たり。

などの詩。こうした心情は彼女たちがただ終日飽食し、何の心配もなく暮らしていたから生れたというだけではない。それよりも重要なのは、彼女たちは下層の労働する女性たちに比べて独立した経済的能力が無かったため、男性に対する依存心が強く、また家庭の中でも地位が低かったために、夫の自分に対する感情に頼らざるを得なかったことによる。しかし、貴族の男たちは往々にしてたくさんの妻妾を持ち、あちこちで女色を漁ったので、おのずから彼女たちは一日中夫の薄情に苦悩し、家庭の中での自分の行く末を案じ、従って自分の容色の衰えを嘆く以外に為すすべがなかった。

 

 

 

下級官吏の家の女性

貴顕の家柄には入らない下級官吏の家の女性について述べる。彼女たちの生活は一般に朝廷から支給される官俸の収入に頼っていた。杜甫が、「自京赴奉先縣詠懷五百字」(「京より奉先県に赴き詠懐す五百字」)「生常免租,名不隸徵伐。」生は(生活の上では)常に租税を免れ、名は征伐(徴兵名簿)に隷らず」と、自らについて語っているように、下級官吏の身分の者には一般民衆のような租税や諸役の苦しみはなかった。しかし彼らの官俸は往々きわめて少なかったので、衣食の心配や飢寒の苦しみは一般的にはなかったにせよ、生活に十分な余裕があるわけでなく、甚だしい時には貧困窮迫を免れることはできなかった。杜甫の生涯は大半が下級官吏の生活であり、妻と娘の生活はかなり苦しく、多年人に寄食して暮らしたのである。

戦乱(安史の乱)によって、杜甫《北徵》(「北征」)「經年至茅屋,妻子衣百結。慟哭松聲回,悲泉共幽咽。平生所嬌兒,顏色白勝雪。見耶背面啼,垢膩不襪。床前兩小女,補綴才過膝。」妻と子、衣は百結だらけ」、「床前の両少女、補綴(つぎはぎだらけの衣服)綾かに膝を過ぐ」というありさま。彼は最も貧しい時には薪を背負い、橡の実を採ってその日暮らしをせねばならなかった。暮らし向きがよかった時のこと、ある日杜甫は友人に妻を紹介した。友人は家に帰るとすぐ妻に命じて、杜甫の妻のために夜飛蝉(婦人の衣裳)をおしゃれ用にと送らせた。おそらく杜甫夫人の着物があまりに簡単で質素だったからであろう(張泌『粧楼記』)。元槙が下級官吏である校吾郎になった時、家族の生活はわりに苦しかった。彼は「悲懐を遣わす」という詩において、「顧我無衣捜藎篋、泥他沽酒抜金釵。野蔬充膳甘長藿、落葉添薪仰古槐。」(我を顧みて衣無ければ画筐(衣裳箱)を捜し、他に泥みて酒を活わんとすれば金銀を抜く。野読 膳に充ちて長き蓉甘く、落葉 薪に添えんとして古き椀を仰ぐ)と、亡き妻の寺氏との生活を懐しんでいる。少なくとも生活はそれほど豊かでなかったことが分かる。この階層の女性は一般に生産労働には参加しなかった。といっても彼女たちの多くは、完全に奴僕に任せきりで家事労働から解放されていたというわけでもなかった。小官吏であった王績は官を棄てて家に帰った後、詩の中で「床に借りて婦の織を看る」と書いている。また白居易は江州司馬に左遷された時、「内子に贈る」という詩の中で「寒衣補燈火、小女戲牀頭。」(〔妻は〕寒衣にて灯下に補い、小女は床頭に戯る)と書いている。この階層の女性たちは、しばしば一定の家事労働をやらねばならなかったことが分かる。

この階層の女性たちは出身も教養も低く、また自分の地位が高まる可能性も特にはなかったので、夫の官途が順調で、とんとん拍子に出世することを祈るというのが共通した心理であり、さし迫った願いであった。

 

 

(改訂版Ver.2.1

菩薩蠻七首 其一

(寵愛を受ける時は短く、ツバメが来て、しばらくヒナがうるさくし始める頃にはすでに寵愛を失う。そのごは、毎日、寵愛を受けていた時と同じようにただ、待ち続ける毎日が繰り返される。まるでどこか北の遠くの遼陽に送り出した人を待つ寡婦と同じようになってしまうと詠う)

舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。

香炉の火が暖かく、香付の舞衣裳のスカートには金泥の鳳模様がきれいである、赤青の塗りの梁の上の燕が鳴き交わすと名残りの夢は破られてしまう。

門外柳花飛,玉郎猶未歸。

宮殿門の外は春もさかり、池端からの並木の柳絮の花が舞い飛ぶのが終わると約束の春は過ぎてしまう、愛しいひとはそれでも未だに帰って来ない。

愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。

妃嬪の憂いは、涙で頬紅と白粉がくずれてはなおしても崩れてしまう。眉は春山の翠のようにかいて整えたので涙で何もかも崩れてしまう。

何處是遼陽,錦屏春晝長。

待つのが定めというものの、ここの錦屏風の閨の内の、春の日の長い昼間に、怠惰になって何もする気になれない、ほんとに愛しの人は遼陽の様な遠方にでも行ったのかと感じられ、ほんとうは何処にいいているか。

 

(菩薩蠻七首 其の一)

舞裙 香 暖かく 金泥の鳳,畫梁【がりょう】語る 殘夢を驚く。

門外 柳花 飛,玉郎 猶お未だ歸らず。

愁は紅粉の淚を勻【あまね】し,眉は春山の翠を剪る。

何處か 是れ遼陽なる,錦屏 春晝 長し。

 

其二

柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。

金鳳小簾開,臉波和恨來。

今宵求夢想,難到青樓上。

贏得一場愁,鴛衾誰並頭。

 

其三

玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。

樓上望卿卿,寒新雨晴。

薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。

何處有相知,羨他初畫眉。

 

其四

畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。

朝暮幾般心,向他情漫深。

風流今古隔,虛作瞿塘客。

山月照山花,夢迴燈影斜。

 

其五

風簾鷰舞鶯啼柳,粧臺約鬢低纖手。

釵重髻盤珊,一枝紅牡丹。

門前行樂客,白馬嘶春色。

故故墜金鞭,迴頭應眼穿。

 

其六

綠雲鬢上飛金雀,愁眉斂翠春煙薄。

香閣掩芙蓉,畫屏山幾重。

寒天欲曙,猶結同心苣。

啼粉羅衣,問郎何日歸。

 

其七

玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。

簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。

柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。

須作一生拚,盡君今日歡。

 

 

(改訂版Ver.2.1

『菩薩蠻七首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻七首 其一

舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。

門外柳花飛,玉郎猶未歸。

愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。

何處是遼陽,錦屏春晝長。

 

(下し文)

(菩薩蠻七首 其の一)

舞裙 香 暖かく 金泥の鳳,畫梁【がりょう】語る鷰 殘夢を驚く。

門外 柳花 飛,玉郎 猶お未だ歸らず。

愁は紅粉の淚を勻【あまね】し,眉は春山の翠を剪る。

何處か 是れ遼陽なる,錦屏 春晝 長し。

 

 

(現代語訳)

(寵愛を受ける時は短く、ツバメが来て、しばらくヒナがうるさくし始める頃にはすでに寵愛を失う。そのごは、毎日、寵愛を受けていた時と同じようにただ、待ち続ける毎日が繰り返される。まるでどこか北の遠くの遼陽に送り出した人を待つ寡婦と同じようになってしまうと詠う)

香炉の火が暖かく、香付の舞衣裳のスカートには金泥の鳳模様がきれいである、赤青の塗りの梁の上の燕が鳴き交わすと名残りの夢は破られてしまう。

宮殿門の外は春もさかり、池端からの並木の柳絮の花が舞い飛ぶのが終わると約束の春は過ぎてしまう、愛しいひとはそれでも未だに帰って来ない。

妃嬪の憂いは、涙で頬紅と白粉がくずれてはなおしても崩れてしまう。眉は春山の翠のようにかいて整えたので涙で何もかも崩れてしまう。

待つのが定めというものの、ここの錦屏風の閨の内の、春の日の長い昼間に、怠惰になって何もする気になれない、ほんとに愛しの人は遼陽の様な遠方にでも行ったのかと感じられ、ほんとうは何処にいいているか。

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

菩薩蠻七首 其一

(寵愛を受ける時は短く、ツバメが来て、しばらくヒナがうるさくし始める頃にはすでに寵愛を失う。そのごは、毎日、寵愛を受けていた時と同じようにただ、待ち続ける毎日が繰り返される。まるでどこか北の遠くの遼陽に送り出した人を待つ寡婦と同じようになってしまうと詠う)

こんなにも寵愛を受けられないのは、辺境に出かけて帰らぬ男を思う女の情のようである。それでも妃嬪は、寵愛を失っても、ひたすら待つしかない。この詩は「愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。」と愁いがすべてをくずれてゆくという表現に象徴される。この詩が、辺境に出かけて帰らぬ男を思う女の情であり、遙かな男へ思いを馳せ、屏風の陰に引き籠もり、遅々として進まぬ春の日長の所在なさについて語るというだけの詩であるはずはなく、毎日労働もせず、豪華な着物を見に着け、大きな部屋に住まい出来る、富貴の者の愛妾か、踊りなどを担当する、美人身分の妃嬪と推察できる。宮中の内官制度で妃嬪は皇后を補佐し、六儀は。九卿に四徳を教え、皇后の儀礼を讃える。美人は、女冠を率いて祭礼接客を事とし、才人は宴会、寝所の世話、絲枲をおさめ、織り上がった反物を帝に献ずる。何もしなくて生活できる女性は、限られた地位の者だけである。

唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

菩薩蠻七首 其一

舞裙香暖金泥,畫梁語鷰驚殘

門外柳花,玉郎猶未

愁勻紅粉,眉剪春山

何處是遼,錦屏春晝

●○○●○△●  ●○●●○○△

○●●○○  ●○△●○

○○○●●  ○●○○●

△●●○○  ●△○●△

 

舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。

香炉の火が暖かく、香付の舞衣裳のスカートには金泥の鳳模様がきれいである、赤青の塗りの梁の上の燕が鳴き交わすと名残りの夢は破られてしまう。

○春暖 薫きしめた香の香りが暖かく感じられる。この頃の香炉は、暖房も兼ねていたから、この事で着る服は外套のものではなく踊用の薄手の服をイメージさせる。

舞裙 妃嬪、宮女妓優などの演舞の際のスカート。牛嶠《巻三50柳枝五首其五》「裊翠籠煙拂暖波,舞裙新染麴塵羅。」翡翠の髪飾りが妖艶に揺れ、香煙は香炉の網を抜けて細く揺れ起ちあがり、暖かな風波に払われて揺れている。舞い踊る女たちの裙はみだれ、その下のあらたに麴塵色に染められたうす絹が見えて奇麗だ。

牛嶠《巻三50 柳枝五首 其五》『花間集』151全詩訳注解説(改訂版)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5957

 

金泥鳳 鳳凰が巣作りをする画を金絲で刺繍されている。舞踊担当の妃嬪(美人)。

唐:李存勖(885年-926年)《陽臺夢》

薄羅衫子金泥鳳,困纖腰怯銖衣重。笑迎移步小蘭叢,嚲金翹玉鳳。

嬌多情脈脈,羞把同心捻弄。楚天雲雨卻相和,又入陽臺夢。

①金泥鳳:這裏指羅衫的花色點綴。②銖衣:衣之至輕者。多指舞衫。③嚲:下垂。金翹、玉鳳:皆古代婦女的首飾。④同心:即古代男女表示愛情的“同心結”。⑤陽臺:宋玉《高唐賦序》:楚襄王嘗遊高唐,夢一婦人來會,自雲巫山之女,在“高臺之下”。舊時因稱男女歡會之所爲“陽臺”。

 

門外柳花飛,玉郎猶未歸。

宮殿門の外は春もさかり、池端からの並木の柳絮の花が舞い飛ぶのが終わると約束の春は過ぎてしまう、愛しいひとはそれでも未だに帰って来ない。

○柳花 綿毛の生えた柳の種。柳絮の飛ぶのは春の一時期であることから、春が過ぎてゆく憂いを表現する。

○玉郎 美男。ここでは愛しい男の意。古代女子對其夫、或所歡愛的男子的暱稱。唐.牛嶠〈菩薩蠻.舞裙香暖金泥鳳〉詞:「門外柳花飛,玉郎猶未歸。」道教中的仙官名。唐.李商隱〈重過聖女祠〉詩:「玉郎會此通仙籍,憶向天階問紫芝。」對男子的美稱。

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韋莊《巻三11天仙子五首其四》「夢覺雲屏依舊空,杜鵑聲咽隔簾櫳,玉郎薄倖去無蹤。」

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愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。

妃嬪の憂いは、涙で頬紅と白粉がくずれてはなおしても崩れてしまう。眉は春山の翠のようにかいて整えたので涙で何もかも崩れてしまう。

愁勻 愁いは~にあまねし。朱松 太康道中二首其二 「一色春勻萬樹紅,坐愁吹作雪漫空。誰知莢楊花意,只擬春殘卷地風。

○春山 女件の美しい眉を言う。愁いに染まり、眉には愁いに曇る女性を表現するがそれがとても美しく見えることをいう。

李商隠《代贈二首 其二》 「總把春山掃眉黛、不知供得幾多愁。」(あなたのいない今、あまたの男を相手にしてきたが眉墨でまゆを画く、自分も年を取ってきた、幾多の愁いを伴ってここまで来たのだがどこまで知ってくれているだろう。)○総把 全てを束にして握る。○春山 男女の情欲の気持ちのかたまり。○掃眉 まゆをかく。 ・眉黛眉毛を剃って墨で描いたまゆ。眉には年を取ってくるという意味を含む。

代贈二首 其二 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 98

溫庭筠《菩薩蠻十四首 其十二》「繡簾垂簌,眉黛遠山綠。」(この生き方も仕方ないこととし、刺繍をした簾には道教のお札を張り、涙が垂れる様に、すだれを止める房が垂れ下っている。そのすだれをかかげて、遠い山々をながめるとみどりのまゆずみを掃いたかのようにうすくかすんで、近い所におわすお方も遠い存在となってしまった。)

『花間集』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠12《菩薩蠻十四首 其十二》溫庭筠66首巻一12-〈12〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5257

 

何處是遼陽,錦屏春晝長。

待つのが定めというものの、ここの錦屏風の閨の内の、春の日の長い昼間に、怠惰になって何もする気になれない、ほんとに愛しの人は遼陽の様な遠方にでも行ったのかと感じられ、ほんとうは何処にいいているか。

○遼陽 遼寧省南部遼陽。古代より軍事上の重要都市であったため、なかなか帰ってこれないということの表現として使う。実際に行ってはいないと思われる。

春晝長 季節の移ろいを表現するのと、怠惰になってゆくことを表現する。

牛嶠《巻四10望江怨》『花間集』161全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6077

 

牛嶠  望江怨  

東風急,惜別花時手頻執。

羅幃愁獨入,馬嘶殘雨春蕪

倚門立,寄語薄情郎,粉香和淚泣。

(春に昇進して、赴任地に出発する頃は、花も咲き乱れ、女盛りのころだった、書簡を出しても音沙汰がなく、約束のころに門で待っても帰って来る気配はない、門に立つたびに化粧を整えるが涙で崩れてしまう。それでも女は、待っているだけしかないと詠う。)

 

牛嶠《巻四10望江怨》『花間集』161全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6077

 
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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●作者  牛嶠 【花間集ID-5 牛嶠(生卒年未詳、)】字は松卿、また延峰という。隴西(甘粛省)の人。唐宰相牛僧孺の子孫にあたるという唐僖宗の乾符五年(878)の進士。唐朝に仕えて、拾遺・補闕・校書即の官を歴任した。王建が節度使となって蜀(四川)を鎮めたとき、招かれて判官となった。

 

王建が蜀国を建ててから、蜀に仕えて給事中の官を拝した。よって牛給事とよばれている。博学で文学をよくし、詩歌においてはとくに名があらわれていた。ひそかに李賀(長吉)の歌詩を慕って、筆をとればただちにその詩風にならうことが多かったといぅ。詞はとくにその長ずるところで、女冠子詞の「繍帯芙蓉帳、金紋芍薬花」とか、菩薩蛮詞の「山月照山花、夢回鐙影斜」などはかれの佳句として知られていたといぅ。いわゆる花間沢とよばれる一派のなかで、況庭箔の詞風をうけてその辞句の美しきや情味の深いことでとくにすぐれた詞人である。集三十巻歌詩三巻があったというが今わずかに一部分が伝わるだけである。詞は花間集に三十二首を収めている。

 

・白居易

《憶江南》

江南好,風景舊曾諳。 

日出江花紅勝火,春來江水綠如藍。

能不憶江南。」

(江南好し。風景 旧【もと】より 曽て諳【そら】んず、日出づれば 江花 紅きこと火に勝り。春来れば 江水 緑なること 藍の如し、能く 江南を 憶はざらんや。)江南は素晴らしい。その風景はずっと昔から私の記憶に焼きついている。太陽が昇ると江上の花は火のように真っ赤に見え、春が来れば江の水は藍のように緑色になる。どうして江南を慕わずにいれよう。「夢江南」と「憶江南」は同一詞調。

江南好  風景舊曾
日出江花紅勝火  春來江水綠如藍 能不憶江

○○●  △●●○○

●●○○○△●  ○△○●●△○  △△●○○

牛嶠

・『花間集』には牛嶠の作が二首収められている。単調二十七字、五句三平韻で、37⑦⑤の詞形をとる。

夢江南二首其一

㘅泥,飛到畫堂前。

占得杏梁安穩處,體輕唯有主人憐,堪羨好因緣。

其の一

泥を㘅【ふく】む【つばめ】,飛びて畫堂の前に到る。

占め得たり 杏梁【きょうりょう】の安穩【あんのん】の處,體 輕くして唯だ主人の憐れむ有り,羨やむに堪えたり 好き因緣を。

 

夢江南二首 其二

紅繡被,兩兩間鴛鴦。

不是鳥中偏愛爾,為緣交頸睡南塘,全勝薄情郎。

夢江南【ぼうこうなん】二首

其の二

紅 繡 被い,兩兩にして 鴛鴦を間にす。

鳥 中【あた】る是れならず 爾を偏愛し,交頸するを緣と為し 南塘に睡り,全ては薄き情郎に勝【たえ】ることなり。

 

牛嶠《夢江南二首其一》

㘅泥鷰、飛到畫堂
占得杏梁安穩處、體輕唯有主人憐、堪羨好因



 

牛嶠《望江怨》

東風  惜別花時手頻
羅幃愁獨  馬嘶殘雨春蕪
倚門  寄語薄情郎 粉香和淚

○△●  ●●○○●○●

○○○●●  ●○○●○○●

△○●  ●●●○○ ●○△●●

 

 

 

 

●花間集に《望江怨》は一首、旅の一夜を思い出して詠うもの。

(改訂版Ver.2.1

望江怨

東風急,惜別花時手頻執。

羅幃愁獨入,馬嘶殘雨春蕪

倚門立,寄語薄情郎,粉香和淚泣。

東風は春を知らせる強い風(春一番)、別れを惜んだのは花の時で、繰り返し手を握り交わしたものでした。

薄い肌襦袢にとばりは愁いを誘い、独り閨にはいるのです、あの人の乗る馬は嘶き、行ってしまうと名残りの雨に春草は濡れるのです。

きっと帰って来てくれると門口に佇んで、薄情もののあの人に言葉を寄せるのですが、涙が頬を濡らし、頬の白粉が溶ける日々が続くのです。

 

望江怨【ぼうこうえん】(改訂版Ver.2.1

東風 急なり,惜別 花の時 手頻に執る。

羅幃 愁いて獨り入れば,馬は殘雨に嘶きて 春蕪は【うるお】う

門に倚りて立ち,語を薄き情郎に寄せども,粉香 淚に和【まざ】りて泣く。

 

 

『望江怨』 現代語訳と訳註

(本文)

望江怨

東風急,惜別花時手頻執。

羅幃愁獨入,馬嘶殘雨春蕪

倚門立,寄語薄情郎,粉香和淚泣。

 

(下し文)

望江怨【ぼうこうえん】

東風 急なり,惜別 花は時に の手に頻りに執る。

羅幃に愁いて獨り入れば,馬は殘雨に嘶きて 春蕪は【うるお】う

門に倚りて立ち,語を薄き情郎に寄せれども,粉香 淚に和【まざ】りて泣く。

 

(現代語訳)

(春に昇進して、赴任地に出発する頃は、花も咲き乱れ、女盛りのころだった、書簡を出しても音沙汰がなく、約束のころに門で待っても帰って来る気配はない、門に立つたびに化粧を整えるが涙で崩れてしまう。それでも女は、待っているだけしかないと詠う。)

めでたい東風はが強くふきつける、別れを惜んで、繰り返し手を握り交わしたのはおんなも花の咲くさかりのころだった。

見送ってから、独り閨にはいると昨日の、薄い肌襦袢と、とばりが目に入り、心配な気持ちになったもの、名残りの雨は馬の嘶きがすぐ聞えなくなり、その雨はみちの春草をうるおしていく。

薄行の情夫に手紙を出しても音沙汰はないし、同心結して約束した秋になって、門口に佇んでみたもののかえってはこない、涙が頬を濡らし、頬の白粉が溶け、まじりあって流れ落ちる。(それでも待っているしかない)

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

望江怨

(春に昇進して、赴任地に出発する頃は、花も咲き乱れ、女盛りのころだった、書簡を出しても音沙汰がなく、約束のころに門で待っても帰って来る気配はない、門に立つたびに化粧を整えるが涙で崩れてしまう。それでも女は、待っているだけしかないと詠う。)

旅立ったまま帰らぬ男を恨む女の情を詠う。第一句から第四句までは、男の旅立ちを見送った時の回想をのべ、第五句から末句までは、男の帰りを待ちわびる女の心情を述べる。すべて男目線の女の情をのべるものである。

 

花間集には「望江怨」が牛嶠一首のみ所収。単調三十五字、七句六仄韻で、❸❼❺❼❸5❺の詞形をとる。

東風  惜別花時手頻
羅幃愁獨  馬嘶殘雨春蕪
倚門  寄語薄情郎 粉香和淚

○△●  ●●○○●○●

○○○●●  ●○○●○○●

△○●  ●●●○○ ●○△●●

 

東風急,惜別花時手頻執。

めでたい東風はが強くふきつける、別れを惜んで、繰り返し手を握り交わしたのはおんなも花の咲くさかりのころだった。

○東風 ①ひがしかぜ、こちかぜ。(めでたい生気をあおる風)李白《巻22-19 春日独酌二首其一》「東風扇淑氣,水木榮春暉。」②春風、《禮記、月令》(孟春之月東風解凍, 蟄蟲始振, 魚上冰, 獺祭魚, 鴻雁來。」③草の名。一に冬風に作る。東風菜。

○惜 別 別れを惜しむ。別れるのを名残惜しく思う。

○花 咲く花。女性を暗示しているようにも見える。

○手頻執 頻りに手に執る。頻執手:手をしきりに執る。

 

 

羅幃愁獨入,馬嘶殘雨春蕪

見送ってから、独り閨にはいると昨日の、薄い肌襦袢と、とばりが目に入り、心配な気持ちになったもの、名残りの雨は馬の嘶きがすぐ聞えなくなり、その雨はみちの春草をうるおしていく。

○羅幃 うすぎぬのとばり。うすぎぬの(ベッド)カーテン。ここでは薄絹の肌襦袢、帳を垂れた閏を指す。

愁獨入 (別れを)かなしんで、(ベッドカーテンの中へ)独りだけで入る。

馬嘶 馬がいななく。

殘雨 ひとしきり降った後の止みかけの雨。

春蕪 春の草。

濕 潤す。

 

倚門立,寄語薄情郎,粉香和淚泣。

薄行の情夫に手紙を出しても音沙汰はないし、同心結して約束した秋になって、門口に佇んでみたもののかえってはこない、涙が頬を濡らし、頬の白粉が溶け、まじりあって流れ落ちる。(それでも待っているしかない)

倚門立:門によってたちつくす。ここの「門」は女性のいる建物のかど口。

寄語:ことづてする。伝言をたのむ。=寄言。

○薄情郎 薄は薄行、情郎:いろおとこ。もておとこ。情夫。薄情郎 夢のような付き合いをしたのにもう心変わりをした情けの薄い男を云う。この時代の情けの強い男を「潘郎」といい、劉郞、阮郎、檀郎、安仁など色町の女が男をそう呼んだ。

巻四06夢江南二首其二「紅繡被,兩兩間鴛鴦。不是鳥中偏愛爾,為緣交頸睡南塘,全勝薄情郎。」

牛嶠《巻四02夢江南二首其二》『花間集』153全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6037

○粉香和涙泣 (おしろいの香は)涙と一緒になりながら、泣いた。流す涙に頬の白粉が溶けること。和:まぜあわす。

牛嶠《巻四09更漏子三首 其三》『花間集』160全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6072

牛嶠  更漏子三首 其三  

南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。

招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

(更漏子三首 其の三:城郭の南の渡し場の秋の風物詩である、男女の別離の風物詩、別離の夜から朝の時間経過と、そうした光景が去年も今年も来年もと続いてゆく時間経過を詠う。)

 

牛嶠《巻四09更漏子三首 其三》『花間集』160全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6072

 

 
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 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
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(改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其一

(春の夜、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、寵愛を受け絶頂であった頃を思い浮かべる)

星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。

今宵は眠れずうとうとしてまた起きて夜空を見れば、星屑の空もようやく疎らになってきて、漏刻の浮子ももしきりに転じている。どこの楼殿で演奏しているのか西域の輪臺曲の演奏の音が聴こえてくるのが寵愛を失った今、怨みに思う。

香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。

きっとそこの閣殿にお香が被っているし、杏の花はこんな夜でも紅を保っている。月はここの庭だけでなく、すべてを明るく照らし、楊柳は風に吹かれてゆれている。

挑錦字,記情事,惟願兩心相似。

寂しくないように、すぐれて美しい詩句をかかげて示され、そして、心の思いを書き記してくれる。ただ、願うのは、二人の心に思うことが「同じことを思う」ということ。

收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

妃嬪は、涕と一緒にその言葉を収め、燈火を背に横になる。耀く簪も枕の傍においてしまっている。

 

(更漏子【こうろうし】三首 其の一)

星 漸【ようや】く稀れにして,漏 頻に轉じ,何處にか輪臺 聲怨す。

香 閣掩い,杏花の紅,月明く 楊柳 風す。

錦字を挑げ,情事を記し,惟だ願う 兩つながらの心 相い似る。

淚 語を收め,燈を背にして眠り,玉釵 枕邊に橫わる。

 

(改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其二

(更漏子三首 其の二:春の短い夜に夢からさめ、『同心結』の約束を破られて、恨む気持ちになるけれど、天に聞いたら、やっぱり「待つ」ことが女の道であるという。)

春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。

春の夜は短く一番良い時もすぐ過ぎてしまう、本当に、時の流れははやく過ぎる、金で飾った燭台の灯芯の燃えさしを替える事は無く、かき立てるだけでよいほどだ。

驚夢斷,錦屏深,兩明月心。

あのひとの夢をみていてもすぐに覚めて現実におどろく、錦のきれいな屏風の奥の閏にも、同じ月明かりが照らしているはずなのに、離れ離れに暮らす二人の心は別々になったのだろう。

閨艸碧,望歸客,還是不知消息。

春も進み、閏から見える草木も緑が濃くなる、あの人は他郷の客、帰りを待ち望むだけ、しかし、今もなお消息さえ知れない。

辜負我,悔憐君,告天天不聞。

私との「同心結」を裏切ったあの人に、情を捧げていることを悔やまれるので、天にそれを告げてみたけれど天は答えてくれなくてなにも聞えない。待つことしかないと教えられる。

 

(更漏子【こうろうし】三首 其の二)

春夜 闌【たけなわ】は,更漏 促し,金燼【きんじん】暗く 殘燭を挑【かか】ぐ。

夢 斷えるを驚き,錦屏 深く,兩 明月の心。

閨艸 碧に,歸客を望むも,還た 是れ消息を知ることなし。

我を辜負【こふ】す,君を憐れみしを悔い,天に告ぐるも天は聞かず。

 

(改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其三

(更漏子三首 其の三:城郭の南の渡し場の秋の風物詩である、男女の別離の風物詩、別離の夜から朝の時間経過と、そうした光景が去年も今年も来年もと続いてゆく時間経過を詠う。)

南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。

城郭の南の渡し場では、南に行く男と情を交わしての別離がある、その夜、女の涙は、頬紅も白粉もながし、そんな二人が、どうして、この二人の気持ちが落ち込んでゆくことを争うようにさらに落ち込んでしまうのだろう。

低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。

旅立ちの朝は、女は、不満や心配でみどりの眉が下がりっぱなしで、男は旅装を身に着け、馬が嘶くのが朝の空に響き、枯葉が空に舞う。(北西風を背に受けて南に出かける))

招手別,寸腸結,還是去年時節。

そして、男は最後の別れと手招きをし、つかの間の真心を結びあう。この光景は去年のこの時期もあったし、別れの風物詩である。

書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

そんな女は、書簡を雁に託すものであり、夢にみるのは家に帰ってくることだ。そんなことばかり思っていても、春が来ても、夢が現実にならず、眠れぬ夜は過ぎてゆき、大江の上の月も西に傾いている。(女は死ぬまで待ち続けるのである。―女の方から男を棄てる、離婚するということはできない時代である)

 

(更漏子 三首 其の三)

南浦 情あり,紅粉 淚し,柰んぞ爭わん 兩人 意を深くするを。

翠黛を低くして,征衣を卷き,馬は嘶き 霜葉 飛ぶ。

手を招いて別れ,寸腸 結び,還た是こ去りて年も時節なり。

書 鴈に托し,夢 家に歸り,覺めて 月斜めになるも江に來る。

 

(改訂版Ver.2.1

『更漏子三首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子三首 其三

南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。

低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。

招手別,寸腸結,還是去年時節。

書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

 

 

(下し文)

(更漏子 三首 其の三)

南浦 情あり,紅粉 淚し,柰を爭うて 兩人 意を深くす。

翠黛を低くして,征衣を卷き,馬は嘶き 霜葉 飛ぶ。

手を招いて別れ,寸腸 結び,還た是こ去りて年も時節なり。

書 鴈に托し,夢 家に歸り,覺めて 月斜めになるも江に來る。

 

 

(現代語訳)

(更漏子三首 其の三:城郭の南の渡し場の秋の風物詩である、男女の別離の風物詩、別離の夜から朝の時間経過と、そうした光景が去年も今年も来年もと続いてゆく時間経過を詠う。)

城郭の南の渡し場では、南に行く男と情を交わしての別離がある、その夜、女の涙は、頬紅も白粉もながし、そんな二人が、どうして、この二人の気持ちが落ち込んでゆくことを争うようにさらに落ち込んでしまうのだろう。

旅立ちの朝は、女は、不満や心配でみどりの眉が下がりっぱなしで、男は旅装を身に着け、馬が嘶くのが朝の空に響き、枯葉が空に舞う。(北西風を背に受けて南に出かける))

そして、男は最後の別れと手招きをし、つかの間の真心を結びあう。この光景は去年のこの時期もあったし、別れの風物詩である。

そんな女は、書簡を雁に託すものであり、夢にみるのは家に帰ってくることだ。そんなことばかり思っていても、春が来ても、夢が現実にならず、眠れぬ夜は過ぎてゆき、大江の上の月も西に傾いている。(女は死ぬまで待ち続けるのである。―女の方から男を棄てる、離婚するということはできない時代である)

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其三

(更漏子三首 其の三:城郭の南の渡し場の秋の風物詩である、男女の別離の風物詩、別離の夜から朝の時間経過と、そうした光景が去年も今年も来年もと続いてゆく時間経過を詠う。)

毎年、秋になって南浦で別離があり、駅亭での別れを惜しむ一夜を過ごし、翌朝、同心結を誓って別れてゆくという光景は、毎年同じようにあるし、春には帰ってくると、待っているが、待ち侘びて川辺に佇む女の光景もまたいつも通りである。。旅だった男を恨もうと、憎もうと、女は待っていなければ罪になる時代である。この詩は別離の夜から朝の時間経過と、そうした光景が去年も今年も来年もと続いてゆく時間経過を詠っている。

 

『花間集』には牛嶠の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。

更漏子三首 其一

星漸稀,漏頻,何處輪臺聲

香閣掩,杏花,月明楊柳

挑錦,記情,惟願兩心相

收淚語,背燈,玉釵橫枕

○△○ ●○● △●○○○△

○●● ●○○ ●○○●△

△●● ●○● ○●●○△●

△●● ●○○ ●○△△○

双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻に三平韻、後段二十三字六句二仄韻二平韻で、③❸❻3③⑤/3❸❻3③⑤の詞形をとる。

更漏子三首 其二

春夜,更漏,金燼暗挑殘

驚夢斷,錦屏,兩明月

閨艸碧,望歸,還是不知消

辜負我,悔憐,告天天不

○●○  △●●  ○●●△○●

○△●  ●△△  ●○○●○

○●●  △○●  ○●△○○●

○●●  ●○○  ●○○△△

双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。

更漏子三首 其三

南浦情,紅粉,爭柰兩人深

低翠黛,卷征,馬嘶霜葉

招手,寸腸,還是去年時

書托鴈,夢歸,覺來江月

○●○  ○●●  ○●●○△●

○●●  △○△  ●○○●○

○●●  ●○●  ○●●○○●

○●●  △○○  ●△○●○

 

南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。

城郭の南の渡し場では、南に行く男と情を交わしての別離がある、その夜、女の涙は、頬紅も白粉もながし、そんな二人が、どうして、この二人の気持ちが落ち込んでゆくことを争うようにさらに落ち込んでしまうのだろう。

○南浦 南の入り江の津。船で行く男を見送る別離の場を象徴する。洛陽、成都、長江下流域の江南の港、武昌、武漢、襄陽、揚州などや、会稽、紹興をいう。北に入る女にとって東風か、南風の吹く季節でなければ帰ってこれないから、春が来ると帰還を胸躍らせるから、春から初夏への経過を感じさせ、夏が過ぎれば風が変わるので帰りは期待できない。すると、また歳を重ねるわけで、女盛りを過ぎようとする時間経過も感じさせる。下句の「西風」で完全に別れてしまったことを感じさせるものである。南の港から帰って来るのには春風、夏の南風で秋冬の風では帰れない。南浦情は有るから夏に帰ってきて逢えるということをこっころ情である。冬でも帰りを期待できるとすれば、洛陽ぐらいで、通常は、動かないものだ。

花間集 南浦 に関する詩

◍ 溫庭筠 巻二02清平樂二首其二「洛陽愁,楊柳花飄雪。終日行人爭攀折,橋下流水嗚咽。上馬爭勸離觴,南浦鶯聲斷腸。愁殺平原年少,迴首揮淚千行。」

◍ 溫庭筠 巻二16荷葉盃三首其三「楚女欲歸南浦,朝雨。濕愁紅。小船搖漾入花裏,波起。隔西風。」

◍ 牛嶠 巻四08感恩多二首其二「自從南浦別,愁見丁香結。近來情轉深,憶鴛衾。幾度將書托煙鴈,淚盈襟。淚盈襟,禮月求天,願君知我心。」

◍ 牛嶠 巻四13更漏子三首其三「南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。」

◍ 欧陽烱 巻六04子八首其四「洞口誰家,木蘭舡繫木蘭花。紅袖女郎相引去,游南浦,笑倚春風相對語。

◍ 和凝 巻六28春光好二首其二「蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。」

柰 からなし、柰何:いかん、いかに、いかんぞ。

 

低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。

旅立ちの朝は、女は、不満や心配でみどりの眉が下がりっぱなしで、男は旅装を身に着け、馬が嘶くのが朝の空に響き、枯葉が空に舞う。(北西風を背に受けて南に出かける))

○低翠黛 不満や心配で眉が下がる。伏し目がちになる。白居易 琵琶行 「低眉信手續續彈,盡心中無限事。」(眉を低れ 手に信せて 續續と 彈き,説き盡くす 心中 無限の事。)眉を低くたれて、従順、柔和な表情で、手の動きに任せておもいのままに次から次へと弾く。心の中の限り無い多くの事がらを言い尽くす(かのようである)。・低眉:眉を低くたれて、努めて従順、柔和な表情をすること。 ・信手:おもいのままに。手当たり次第に。手の動きに任せて。 ・續續:次から次へと。

○征衣 1 旅に出るときの服装。旅装。2 兵士が戦争に行くときの服装。

 

招手別,寸腸結,還是去年時節。

そして、男は最後の別れと手招きをし、つかの間の真心を結びあう。この光景は去年のこの時期もあったし、別れの風物詩である。

招手別 招手:手で招く。さしまねく。

寸腸結 つかの間の真心で結ばれる。杜甫《贈特進汝陽王二十韻》「寸長堪繾綣,一諾豈驕矜。」(寸長繾綣に堪えたり 一諾 豈に驕矜せんや)その人物に一寸の長所があればそれと親密にし、いか そうとされる情合いがある、なにか人に頼みごとをしてやっても、それでいばったりする様なことはない。』

贈特進汝陽王二十韻  杜甫

 

書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

そんな女は、書簡を雁に託すものであり、夢にみるのは家に帰ってくることだ。そんなことばかり思っていても、春が来ても、夢が現実にならず、眠れぬ夜は過ぎてゆき、大江の上の月も西に傾いている。(女は死ぬまで待ち続けるのである。―女の方から男を棄てる、離婚するということはできない時代である)

書托雁 書簡、書信を鴻雁に託すこと。《漢書·蘇武傳》「昭帝即位數年,匈奴與漢和親,漢求武等,匈奴詭言武死。後漢使複至匈奴,常惠請其守者與俱,得夜見漢使,具自陳道。教使者謂單于,言天子射上林中,得雁,足有絲帛書,言武等在某澤中。

牛嶠《巻四08更漏子三首 其二》『花間集』159全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6067

牛嶠《更漏子三首 其二》

春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。

驚夢斷,錦屏深,兩明月心。

閨艸碧,望歸客,還是不知消息。

辜負我,悔憐君,告天天不聞。

(更漏子三首 其の二:春の短い夜に夢からさめ、『同心結』の約束を破られて、恨む気持ちになるけれど、天に聞いたら、やっぱり「待つ」ことが女の道であるという。)私との「同心結」を裏切ったあの人に、情を捧げていることを悔やまれるので、天にそれを告げてみたけれど天は答えてくれなくてなにも聞えない。待つことしかないと教えられる。

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(改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其一

(春の夜、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、寵愛を受け絶頂であった頃を思い浮かべる)

星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。

今宵は眠れずうとうとしてまた起きて夜空を見れば、星屑の空もようやく疎らになってきて、漏刻の浮子ももしきりに転じている。どこの楼殿で演奏しているのか西域の輪臺曲の演奏の音が聴こえてくるのが寵愛を失った今、怨みに思う。

香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。

きっとそこの閣殿にお香が被っているし、杏の花はこんな夜でも紅を保っている。月はここの庭だけでなく、すべてを明るく照らし、楊柳は風に吹かれてゆれている。

挑錦字,記情事,惟願兩心相似。

寂しくないように、すぐれて美しい詩句をかかげて示され、そして、心の思いを書き記してくれる。ただ、願うのは、二人の心に思うことが「同じことを思う」ということ。

收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

妃嬪は、涕と一緒にその言葉を収め、燈火を背に横になる。耀く簪も枕の傍においてしまっている。

 

(更漏子【こうろうし】三首 其の一)

星 漸【ようや】く稀れにして,漏 頻に轉じ,何處にか輪臺 聲怨す。

香 閣掩い,杏花の紅,月明く 楊柳 風す。

錦字を挑げ,情事を記し,惟だ願う 兩つながらの心 相い似る。

淚 語を收め,燈を背にして眠り,玉釵 枕邊に橫わる。

 

(改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其二

(更漏子三首 其の二:春の短い夜に夢からさめ、『同心結』の約束を破られて、恨む気持ちになるけれど、天に聞いたら、やっぱり「待つ」ことが女の道であるという。)

春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。

春の夜は短く一番良い時もすぐ過ぎてしまう、本当に、時の流れははやく過ぎる、金で飾った燭台の灯芯の燃えさしを替える事は無く、かき立てるだけでよいほどだ。

驚夢斷,錦屏深,兩明月心。

あのひとの夢をみていてもすぐに覚めて現実におどろく、錦のきれいな屏風の奥の閏にも、同じ月明かりが照らしているはずなのに、離れ離れに暮らす二人の心は別々になったのだろう。

閨艸碧,望歸客,還是不知消息。

春も進み、閏から見える草木も緑が濃くなる、あの人は他郷の客、帰りを待ち望むだけ、しかし、今もなお消息さえ知れない。

辜負我,悔憐君,告天天不聞。

私との「同心結」を裏切ったあの人に、情を捧げていることを悔やまれるので、天にそれを告げてみたけれど天は答えてくれなくてなにも聞えない。待つことしかないと教えられる。

 

(更漏子【こうろうし】三首 其の二)

春夜 闌【たけなわ】は,更漏 促し,金燼【きんじん】暗く 殘燭を挑【かか】ぐ。

夢 斷えるを驚き,錦屏 深く,兩 明月の心。

閨艸 碧に,歸客を望むも,還た 是れ消息を知ることなし。

我を辜負【こふ】す,君を憐れみしを悔い,天に告ぐるも天は聞かず。

 

 

其三

南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。

低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。

招手別,寸腸結,還是去年時節。

書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

 

 

(改訂版Ver.2.1

『更漏子三首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子三首 其二

春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。

驚夢斷,錦屏深,兩明月心。

閨艸碧,望歸客,還是不知消息。

辜負我,悔憐君,告天天不聞。

 

 

(改訂版Ver.2.1

 (下し文)

其二

春夜 闌【たけなわ】,更漏 促し,金燼【きんじん】暗く 殘燭を挑【かか】ぐ。

驚夢 斷え,錦屏 深く,兩 明月の心。

閨艸 碧に,歸客を望み,還お 是れ消息を知らず。

我に辜負【こふ】す,君を憐れみしを悔い,天に告ぐるも天は聞かず。

 

 

(改訂版Ver.2.1

 (現代語訳)

(更漏子三首 其の二:春の短い夜に夢からさめ、『同心結』の約束を破られて、恨む気持ちになるけれど、天に聞いたら、やっぱり「待つ」ことが女の道であるという。)

春の夜は短く一番良い時もすぐ過ぎてしまう、本当に、時の流れははやく過ぎる、金で飾った燭台の灯芯の燃えさしを替える事は無く、かき立てるだけでよいほどだ。

あのひとの夢をみていてもすぐに覚めて現実におどろく、錦のきれいな屏風の奥の閏にも、同じ月明かりが照らしているはずなのに、離れ離れに暮らす二人の心は別々になったのだろう。

春も進み、閏から見える草木も緑が濃くなる、あの人は他郷の客、帰りを待ち望むだけ、しかし、今もなお消息さえ知れない。

私との「同心結」を裏切ったあの人に、情を捧げていることを悔やまれるので、天にそれを告げてみたけれど天は答えてくれなくてなにも聞えない。待つことしかないと教えられる。

 

(改訂版Ver.2.1

 (訳注)

更漏子三首 其二

(更漏子三首 其の二:春の短い夜に夢からさめ、『同心結』の約束を破られて、恨む気持ちになるけれど、天に聞いたら、やっぱり「待つ」ことが女の道であるという。)

前段は春の夜半過ぎに目が覚めた時の様子を詠じる。後段は夜明けの後、高殿から男の帰りを待ち望んでも消息知れずで、不安な男を愛したことを後悔し、天に男の不実を訴えるが、天はやっぱり「待つ」ことが女の道であるということで、耳を傾けてくれぬと、現状と道理を述べる。

『花間集』には牛嶠の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。

更漏子三首 其一

星漸稀,漏頻,何處輪臺聲

香閣掩,杏花,月明楊柳

挑錦,記情,惟願兩心相

收淚語,背燈,玉釵橫枕

○△○ ●○● △●○○○△

○●● ●○○ ●○○●△

△●● ●○● ○●●○△●

△●● ●○○ ●○△△○

双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻に三平韻、後段二十三字六句二仄韻二平韻で、③❸❻3③⑤/3❸❻3③⑤の詞形をとる。

更漏子三首 其二

春夜,更漏,金燼暗挑殘

驚夢斷,錦屏,兩明月

閨艸碧,望歸,還是不知消

辜負我,悔憐,告天天不

○●○  △●●  ○●●△○●

○△●  ●△△  ●○○●○

○●●  △○●  ○●△○○●

○●●  ●○○  ●○○△△

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-45韋荘123《巻3-23 更漏子一首》三巻23-〈123〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5817

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『花間集』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠20《更漏子六首其六》溫庭筠66首巻一20-〈20〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5297

 

春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。

春の夜は短く一番良い時もすぐ過ぎてしまう、本当に、時の流れははやく過ぎる、金で飾った燭台の灯芯の燃えさしを替える事は無く、かき立てるだけでよいほどだ。

○春夜闌 春の真夜中過ぎ。春の一番良い時期を過ぎてしまうこと。闌は盛りを過ぎるの意。

○更漏促 春の夜は短く、その上時間が早く経過すること。更漏は水時計。ここでは時間、春が過ぎ去ることを意味する。

○金燼暗挑殘燭 暗くなった灯火の芯の燃えさしをかき立てる。挑はかき立てる。

 

驚夢斷,錦屏深,兩明月心。

あのひとの夢をみていてもすぐに覚めて現実におどろく、錦のきれいな屏風の奥の閏にも、同じ月明かりが照らしているはずなのに、離れ離れに暮らす二人の心は別々になったのだろう。

○驚夢断 寵愛を受け、良かったころを夢見ることから、はっと夢が覚め、現実に戻っておどろくこと。

〇両郷明月心 同じ月明かりが照らしているはずなのに、離れ離れに暮らす二人の心は別々になってしまったこと。去るもの日々に疎し。

 

閨艸碧,望歸客,還是不知消息。

春も進み、閏から見える草木も緑が濃くなる、あの人は他郷の客、帰りを待ち望むだけ、しかし、今もなお消息さえ知れない。

○閨艸碧 艸:1草本植物的總稱。2. 「竹」之異體。

○帰客 帰り来る旅人。ここでは女が帰りを待ちち望んでいる男を指す。

○還是 相変わらず、今もなお。

 

辜負我,悔憐君,告天天不聞。

私との「同心結」を裏切ったあの人に、情を捧げていることを悔やまれるので、天にそれを告げてみたけれど天は答えてくれなくてなにも聞えない。待つことしかないと教えられる。

○辜負 背く、裏切る。

○憐 愛惜を注ぐ。

○告天天不聞 天に告げてみたけれど天は答えてくれなくてなにも聞えない。どんなに恨んでも、どんなに二君でも、女としては待つことしかない。この表現と違った表現をしたのが、牛嶠《巻四06應天長二首其二》「莫信綵牋書裏,賺人腸斷字。」ただ、信じることはできないはずなのに、手紙の中の、愛妾のこころをたぶらかす「断腸」の文字はこころゆらせる。

ということで、牛嶠の比興手法ということである。

牛嶠《巻四07更漏子三首其一》『花間集』158全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6062

更漏子三首 其一

星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。

香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。

挑錦字,記情事,惟願兩心相似。

收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。
(春の夜、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、寵愛を受け絶頂であった頃を思い浮かべる)

今宵は眠れずうとうとしてまた起きて夜空を見れば、星屑の空もようやく疎らになってきて、漏刻の浮子ももしきりに転じている。どこの楼殿で演奏しているのか西域の輪臺曲の演奏の音が聴こえてくるのが寵愛を失った今、怨みに思う。

 

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(改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其一

(春の夜、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、寵愛を受け絶頂であった頃を思い浮かべる)

星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。

今宵は眠れずうとうとしてまた起きて夜空を見れば、星屑の空もようやく疎らになってきて、漏刻の浮子ももしきりに転じている。どこの楼殿で演奏しているのか西域の輪臺曲の演奏の音が聴こえてくるのが寵愛を失った今、怨みに思う。

香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。

きっとそこの閣殿にお香が被っているし、杏の花はこんな夜でも紅を保っている。月はここの庭だけでなく、すべてを明るく照らし、楊柳は風に吹かれてゆれている。

挑錦字,記情事,惟願兩心相似。

寂しくないように、すぐれて美しい詩句をかかげて示され、そして、心の思いを書き記してくれる。ただ、願うのは、二人の心に思うことが「同じことを思う」ということ。

收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

妃嬪は、涕と一緒にその言葉を収め、燈火を背に横になる。耀く簪も枕の傍においてしまっている。

 

更漏子【こうろうし】三首 其の一

星 漸【ようや】く稀れにして,漏 頻に轉じ,何處にか輪臺 聲怨す。

香 閣掩い,杏花の紅,月明く 楊柳 風す。

錦字を挑げ,情事を記し,惟だ願う 兩つながらの心 相い似る。

淚 語を收め,燈を背にして眠り,玉釵 枕邊に橫わる。

 

其二

春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。

驚夢斷,錦屏深,兩明月心。

閨艸碧,望歸客,還是不知消息。

辜負我,悔憐君,告天天不聞。

 

其三

南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。

低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。

招手別,寸腸結,還是去年時節。

書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

 

(改訂版Ver.2.1

『更漏子三首 其一』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

更漏子三首 其一

星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。

香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。

挑錦字,記情事,惟願兩心相似。

收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

(下し文)
更漏子【こうろうし】三首 其の一

星 漸【ようや】く稀れにして,漏 頻に轉じ,何處にか輪臺 聲怨す。

香 閣掩い,杏花の紅,月明く 楊柳 風す。

錦字を挑げ,情事を記し,惟だ願う 兩つながらの心 相い似る。

淚 語を收め,燈を背にして眠り,玉釵 枕邊に橫わる。

(現代語訳)
(春の夜、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、寵愛を受け絶頂であった頃を思い浮かべる)

今宵は眠れずうとうとしてまた起きて夜空を見れば、星屑の空もようやく疎らになってきて、漏刻の浮子ももしきりに転じている。どこの楼殿で演奏しているのか西域の輪臺曲の演奏の音が聴こえてくるのが寵愛を失った今、怨みに思う。

きっとそこの閣殿にお香が被っているし、杏の花はこんな夜でも紅を保っている。月はここの庭だけでなく、すべてを明るく照らし、楊柳は風に吹かれてゆれている。

寂しくないように、すぐれて美しい詩句をかかげて示され、そして、心の思いを書き記してくれる。ただ、願うのは、二人の心に思うことが「同じことを思う」ということ。

妃嬪は、涕と一緒にその言葉を収め、燈火を背に横になる。耀く簪も枕の傍においてしまっている。


(訳注) (改訂版Ver.2.1

更漏子三首 其一

(春の夜、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、寵愛を受け絶頂であった頃を思い浮かべる)

更は五更、夕方から、夜明けまで時を告げることを示す。特に秋以降、待ち侘びる夜が長いことを強調するシチュエーションのものをいう。

この詩は寵愛を失った妃嬪が、少し離れた宮殿で夜通しの演舞が催されていて、眠りに付けず、庭を散策し、寵愛を受けている時のことを思い出し、今、寵愛の絶頂にある妃嬪のことを予想するということを詠っている。

『花間集』には牛嶠の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。

更漏子三首 其一

星漸稀,漏頻,何處輪臺聲

香閣掩,杏花,月明楊柳

挑錦,記情,惟願兩心相

收淚語,背燈,玉釵橫枕

○△○ ●○● △●○○○△

○●● ●○○ ●○○●△

△●● ●○● ○●●○△●

△●● ●○○ ●○△△○

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-45韋荘123《巻3-23 更漏子一首》三巻23-〈123〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5817

『花間』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠15《更漏子六首其一》溫庭筠66首巻一15-〈15〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5272

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『花間集』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠18《更漏子六首其四》溫庭筠66首巻一18-〈18〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5287

『花間集』全詩訳注解説(改訂)-1溫庭筠19《更漏子六首其五》溫庭筠66首巻一19-〈19〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5292

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星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。

今宵は眠れずうとうとしてまた起きて夜空を見れば、星屑の空もようやく疎らになってきて、漏刻の浮子ももしきりに転じている。どこの楼殿で演奏しているのか西域の輪臺曲の演奏の音が聴こえてくるのが寵愛を失った今、怨みに思う。

・星漸稀 深夜の満点の星屑から時間経過し空が少し明るくなってきた様子を云う。一人で過ごす夜、眠りに付けずうとうとして目が醒めて星空を眺めているのを表現する句である。

・漏頻轉 漏水の水時計がひたひたと過ぎていく様子を云う。水の水槽が五段あり、一番上の水槽から一段下の水槽に水を漏らしてゆく、それぞれの水槽に時刻の旗を立てた浮が浮かんでいて、水があるうちは浮んでいるからそれを見て詠み取る。仕掛けには相当の財力と地位の者でないと漏刻はもっていない。それぞれの御殿には用意してある。

・輪臺 唐の楽曲で德鱒が作る西域の舞曲。輪臺は漢代西域にある地名で、此処に屯田した、現在の新疆省庫車縣東、輪臺縣。この楽を序、≪靑海波≫を破として連続して舞うもので、此処では夜通し演舞されたのであろう。。

・聲怨 西域の音楽、人のうわさが聞えて來るのが怨めしく思う。

 

香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。

きっとそこの閣殿にお香が被っているし、杏の花はこんな夜でも紅を保っている。月はここの庭だけでなく、すべてを明るく照らし、楊柳は風に吹かれてゆれている。

・香閣掩 お香が夜中中焚かれて高閣に広がっていること、時間経過を示す言葉と、侘しさを示すものである。

・杏花紅 杏の花は女盛りをあらわすものである。こんなに一人で居てもまだ女盛り、女としてそのままであるということ。

・月明楊柳風 月は女性を示し、楊柳は楊が男、柳が女をあらわし、情事が終わった後に汗ばんだところに微風が吹いてきたことを云うのである。ここの三句は楽しかった日々のことをいうものである。

 

挑錦字,記情事,惟願兩心相似。

寂しくないように、すぐれて美しい詩句をかかげて示され、そして、心の思いを書き記してくれる。ただ、願うのは、二人の心に思うことが「同じことを思う」ということ。

・挑錦字 ・錦字 すぐれて美しい詩句。錦字をかかげるというのは、この女性に対して美辞麗句をしめされていたということ。

・記情事 心が動かされる言葉を書き記した。

 

 

收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

妃嬪は、涕と一緒にその言葉を収め、燈火を背に横になる。耀く簪も枕の傍においてしまっている。

・背燈 燈火を後ろに離れて淋しい様子を云う。一人で居るので明るくなくてもよいことをいう。韋荘『更漏子』.

鐘鼓寒,樓閣暝,月照古銅金井。

深院閉,小樓空,落花香露紅。

煙柳重,春霧薄,燈背水窗高閣。

閑倚,暗沾衣,待郎郎不歸。

123 更漏子 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-282-5-#36  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2957

 

輪臺 位於新疆省庫車縣東。見「輪臺縣」條。古地名。漢西域之地。本為輪臺國,被李廣利所滅。漢武帝為牽制匈奴,在此屯田。唐置縣,並置府。即今新疆省輪臺縣。 縣名。位於新疆省庫車縣東。

牛嶠《巻四06應天長二首其二》『花間集』157全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6057

牛嶠  應天長二首 其二  

雙眉澹薄藏心事,清夜背燈嬌又醉。

玉釵橫,山枕膩,寶帳鴛鴦春睡美。

別經時,無恨意,虛道相思憔悴。

莫信綵牋書裏,賺人腸斷字。

(別離の後、手紙では、口先だけのうまいことを言うだけで、誠実さに欠けた男とおもうのに、また、騙される言葉であるのに、なぜか、期待して待っているという女の心を詠う。)

牛嶠《巻四06應天長二首其二》『花間集』157全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6057

 

 
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 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
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 Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog元結 《舂陵行(并序)-#3》【7分割】 <杜甫詩1939同元使君舂陵行>関連 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6055 
 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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牛嶠《巻四05應天長二首其一》『花間集』156全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6052

應天長二首 其一

玉樓春望晴煙滅,舞衫斜卷金調

黃鸝嬌囀聲初歇,杏花飄盡攏山雪。

鳳釵低赴節,筵上王孫愁

鴛鴦對㘅羅結,兩情深夜月。

(天運に随えばこれほど恵まれるものか、春が来れば鶯が恋の歌を歌い、杏の花が雪のように咲く、秋になれば空高くあがった月のように、愛情あふれる生活を詠う詩)

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牛嶠《巻四04感恩多二首其二》『花間集』155全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6047

(改訂版Ver.2.1

牛嶠《花間集巻四04感恩多二首其二》

自從南浦別,愁見丁香結。

近來情轉深,憶鴛衾。

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

(感恩多 二首其の二:丁香のような固い思い、同心結で誓って送り出したが、帰って来ないばかりか、いくら書簡を送っても、連絡もない。月に礼拝して男の心を変えてもらいたいと女の心情を詠う。)牛嶠の、願わくばシリーズ第2弾! 

 

牛嶠《巻四04感恩多二首其二》『花間集』155全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6047


 
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感恩多二首其一  (改訂版Ver.2.1

(富貴の者に嫁げば、何の不自由もないと思っていたのに、春が来たというのに、音沙汰がなく、取り合ってもらえないばかりか、寄り付きもしない、桃李の枝を折って縁起をかついで心を癒す、「帰ってやろう」と思ってほしいと詠う。)

兩條紅粉淚,多少香閨意。

若い赤い頬、おしろいにふた筋の涕が流れる。あの頃のお香の匂いがどれほどが残っているこの閨には思いは残ったまま。

強攀桃李枝,斂愁眉。

いまは、春というのに、ただ眉をひそめて愁いている。「桃李不言、下自成蹊。」ということで、人が寄ってくる縁起のものというので、無理やりに桃李の枝を折り取り、自ら愁いを慰める。

陌上鶯啼蝶舞,柳花飛。

大通りに鶯が啼き、蝶は花に飛び舞い交う。そして、そこに柳絮が飛んでくる。

柳花飛,願得郎心,憶家還早歸。

柳絮が飛んでくると、願うことはあの方の心に「この家のことを思い、またすぐに帰ろうとしてくれる」と、そんな気持ちになってほしい。

 

感恩多 二首の一

兩條の紅粉の淚,多少 香閨【こうけい】の意。

強いて桃李の枝を攀【よ】じ,愁眉を斂【お】さむ。

陌上 鶯啼き蝶舞い,柳花飛ぶ。

柳花飛び、願わくば郎の心「家を憶いて還た早に歸らん。」を得ん。

 

 

感恩多二首其二  (改訂版Ver.2.1

(感恩多 二首其の二:丁香のような固い思い、同心結で誓って送り出したが、帰って来ないばかりか、いくら書簡を送っても、連絡もない。月に礼拝して男の心を変えてもらいたいと女の心情を詠う。)

自從南浦別,愁見丁香結。

南の船着き場で舟を見送り、別れをつげてから、女は丁字の花のつぼみのように貞操を守り、旅立ちの前に同心結をしたけれど、それを見るたび心配は募る。

近來情轉深,憶鴛衾。

近頃、音信不通であり、思いが揺れ動き、それがいよいよ深まってゆく、きっとどこかで、鴛鴦の掛け布団におちついてしまっていることを心配しておもう。 

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

行き先と思えるところに、幾度か書簡を送り、空を飛ぶ雁に託したけれど、何の返事もないので、涙は襟を濡らしてかわかない。

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

涙は襟を濡らしてかわかないから、月に拝礼して、天運を求めるのは、「君に願うことなら、私のこれだけ思っていることを思いおこしてほしい」、ということ。

 

(感恩多 二首の二)

南浦にて別れて自從【より】,丁香の結ぶを愁い見る。

近來 情 轉【うた】た深く,鴛衾【えんきん】を憶う。

幾度 將に書を煙鴈【えんがん】に托せる,淚 襟に盈ち,淚 襟に盈つ。

月に禮し 天に求む,「願わくば 君が我が心を知れ」と。

 

 

(改訂版Ver.2.1

『感恩多二首』 現代語訳と訳註

(本文)

牛嶠『感恩多二首』其二

自從南浦別,愁見丁香結。

近來情轉深,憶鴛衾。

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

 

 

(下し文)

(感恩多 二首其の二)

南浦にて別れて自從【より】,丁香の結ぶを愁い見る。

近來 情 轉【うた】た深く,鴛衾【えんきん】を憶う。

幾度 將に書を煙鴈【えんがん】に托せる,淚 襟に盈ち,淚 襟に盈つ。

月に禮し 天に求む,「願わくば 君が我が心を知れ」と。

 

 

(現代語訳)

(感恩多 二首其の二:丁香のような固い思い、同心結で誓って送り出したが、帰って来ないばかりか、いくら書簡を送っても、連絡もない。月に礼拝して男の心を変えてもらいたいと女の心情を詠う。)

南の船着き場で舟を見送り、別れをつげてから、女は丁字の花のつぼみのように貞操を守り、旅立ちの前に同心結をしたけれど、それを見るたび心配は募る。

近頃、音信不通であり、思いが揺れ動き、それがいよいよ深まってゆく、きっとどこかで、鴛鴦の掛け布団におちついてしまっていることを心配しておもう。 

行き先と思えるところに、幾度か書簡を送り、空を飛ぶ雁に託したけれど、何の返事もないので、涙は襟を濡らしてかわかない。

涙は襟を濡らしてかわかないから、月に拝礼して、天運を求めるのは、「君に願うことなら、私のこれだけ思っていることを思いおこしてほしい」、ということ。

 

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

(感恩多 二首其の二)

(感恩多 二首其の二:丁香のような固い思い、同心結で誓って送り出したが、帰って来ないばかりか、いくら書簡を送っても、連絡もない。月に礼拝して男の心を変えてもらいたいと女の心情を詠う。)願わくばシリーズ第2弾! 

男と南の入り江で別れたとある、春の東から初夏の南と時間の経過を感じさせる。その時間経過は、女の蕾を女盛りを過ぎようとする時間経過も感じさせる。ただ、この詩は、前半の「丁香結」に対して、後半の“禮月求天,「願君知我心」”というのがすべてである。牛嶠は、男というものが、外に出れば、外に女がいるものである。夫を待つ女性というものはおおよそこんなふうにして泣いているし、月に願をするものだろう。牛嶠は、時代を客観的に見た詩であって、いわゆる中唐期から流行した「比興体制」手法というものである。ここに登場する女性は、長江下流域の商家の嫁ということであろう。

 

唐の教坊の曲名。『花間集』には牛嶠の二首のみ所収。㈱ほ、双調三十九字、前段十八字四旬二灰韻二平韻、後段二十一字五句三平韻で、❺❺⑤③/6③③4

自從南浦  愁見丁香
近來情轉  憶鴛
幾度將書托煙鴈  淚盈
淚盈  禮月求天 願君知我

  
  
  
  
 

 

 

自從南浦別,愁見丁香結。

南の船着き場で舟を見送り、別れをつげてから、女は丁字の花のつぼみのように貞操を守り、旅立ちの前に同心結をしたけれど、それを見るたび心配は募る。

〇自從 〜から。

○南浦 南の入り江の津。船で行く男を見送る別離の場を象徴する。都市として考えられるのは、洛陽、成都、鄂州、揚州、抗州のように城郭の南に港がある所である。

『荷葉杯』其三 

楚女欲歸南浦,朝雨,濕愁紅。

小船搖漾入花裏,波起,隔西風。

・南浦 長江下流域の江南の港、浙江省、会稽、紹興をいう。

春から初夏への経過を感じさせ、女盛りを過ぎようとする時間経過も感じさせる。下句の「西風」で完全に別れてしまったことを感じさせるものである。

荷葉盃 三首 其三 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-306-5-#60  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3077

○丁香結 クローブの花蕾は釘に似た形をしているため、中国では「釘」と同義の「丁」の字を使って「丁香」、「丁子」の名があてられ、非常に強い香気を持っているので、百里香という別名もある。固い蕾を示し貞操を表し、同心結の意味をもめての造語である。同心結を表す語。若くして、夫を見送る女性の心を表現するものである。おそらく、後半のの句に「書托煙鴈」の書簡に丁子の一粒を張り付けて贈ったということ。

 

近來情轉深,憶鴛衾。

近頃、音信不通であり、思いが揺れ動き、それがいよいよ深まってゆく、きっとどこかで、鴛鴦の掛け布団におちついてしまっていることを心配しておもう。 

○憶鴛衾 オシドリ模様の掛け布団を偲ぶ。旅の空、他の女性の家で過ごしていることを思って、嫉妬を表現するのではなく、帰ってこないことを心配する。現代の間隔とは違っている。

 

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

行き先と思えるところに、幾度か書簡を送り、空を飛ぶ雁に託したけれど、何の返事もないので、涙は襟を濡らしてかわかない。

○幾度將書托煙鴈 何度も手紙を送ったが、手紙にはなしのつぶてであったこと。将は〜を。雁は手紙を運ぶ使者。煙鴈は雲間を飛んでゆく雁。伝書の意味。これと同じものは温庭筠にもある

溫庭筠  《菩薩蠻 十》
滿宮明月梨花白,故人萬裏關山隔。
金雁一雙飛,淚痕沾繡衣。
小園芳草綠,家住越溪曲。
楊柳色依依,燕歸君不歸。

(若耶渓の西施が見初められた出会いのように寵愛を受けたが、離宮に、避暑地に行くことは、別の妃嬪の所に行くことでお越しになることはないと覚悟して生きていくと詠う)

温庭筠酒泉子 (四)

楚女不歸,樓枕小河春水。

月孤明,風又起,杏花稀。

斜簪雲鬟重,裙上金縷鳳。

八行書,千裏夢,雁南飛。

いつか「八行書」受け取ること、高唐賦の「夢」であり、雁が南に帰るように、帰ってきてくれて寵愛を受けたいと思うことだけ考えて毎日を生きる。南に飛んで帰ってゆく雁をただ見ているだけである。
・八行書 寵愛を受けていたころに贈られた行七字で八行の格調高い男性の楽府・律詩の短い手紙。ここでは尽くせぬ思いを八行、一行七字の手紙に凝縮して愛を書いたことを意味する。六朝より、高貴な人が書く詞詩をいう。平仄、韻を踏んで作るのは高度で、常時詩人の作られせることができる人物に書かせたということであろう。・千裏夢 後宮という狭い空間なのに、それが千里の遠い、儚い夢となっていることをいう。この夢と初句の「楚女」を夢に見たことに基づいてこの詩が出来上がっている。楚の懐王がみた夢を題材にした宋玉の「高唐賦」に登場する。その内容は巫山の神女が懐王と夢の中で出会い、親しく交わるというものである。なかでも、朝には雲に、夕方には雨になって会いたいという神女の言葉が有名となり、巫山雲雨や朝雲暮雨など男女のかなり親密な様子を表す熟語が生まれた。・雁南飛 狩が南に飛び帰って行くけれど、妃嬪であるが故、南の楚の国に帰ることもできず見上げるだけなのであるという意味。雁は匈奴に捕らわれた漢の蘇武が、雁の脚に手紙を結わえて放った故事から、手紙を運ぶ使者を意味する。

 

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

涙は襟を濡らしてかわかないから、月に拝礼して、天運を求めるのは、「君に願うことなら、私のこれだけ思っていることを思いおこしてほしい」、ということ。

禮月求天 月に拝礼して、天運を求める。禮月は拜月。禮:拜。自分がどれほど思っていたとしても、相手の心が変わらなければ、自分のもとに帰ってこないということを前提にして、天にその心の変革を求めたのである。月を崇拝していのること。

 

 

代贈二首 其一

樓上黄昏欲望休、玉梯横絶月中鉤。

芭蕉不展丁香結、同向春風各自愁。

 

高楼にたそがれがせまる、あなたがおいでくださらないか、遙か小道を眺めることはしないことにしました。輝く綺麗な階段にあなたの姿は、楼閣を結ぶ渡り廊下橋が横たわり、空に浮かんでいるのは、鉤のように細い月、何を見てもあなたとのこと。

硬く丸まった芭蕉の葉、硬く結ばれた丁子のつぼみ、ともに春風に吹かれながらそれぞれの悲しみをかかえ、愁えているのだ。

 

代わりて贈る二首 其の一

楼上 黄昏 望まんと欲して休め、玉梯 横絶す 月中の釣。

芭蕉は展びず 丁香は結ぶ、同に春風に向かいて 各自愁う。

 

代贈二首 其一 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 97

 

 

代贈二首 其二
東南日出照高樓、樓上離人唱石州。

總把春山掃眉黛、不知供得幾多愁。


冬の夜長冬枯れの寂しさのただよう高楼にやっと日の出で日差しがさして来た。北方の塞の見張り台にいるだろう出征の兵士のあのひと、待ちわびる女同士では「石州」を歌い唱和している。
あなたのいない今、あまたの男を相手にしてきたが眉墨でまゆを画く、自分も年を取ってきた、幾多の愁いを伴ってここまで来たのだがどこまで知ってくれているだろう。


東南 日出でて高楼を照らす、楼上の離人 石州を唱う。
総て春山を把って眉黛を掃う、知らず 幾多の愁いを供し得たるかを。

代贈二首 其二 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 98

 

牛嶠《巻四03感恩多二首其一》『花間集』154全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6042

(改訂版Ver.2.1

牛嶠《巻四03感恩多二首其一》

兩條紅粉淚,多少香閨意。

強攀桃李枝,斂愁眉。

陌上鶯啼蝶舞,柳花飛。

柳花飛,願得郎心,憶家還早歸。

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67 -#6 《讀巻02-04 論今年停挙選状》 -#6 韓愈(韓退之)ID 802年貞元18年 36歳<1411> Ⅱ5章7分割 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6039 
 ・李商隠詩 (1) 136首の75首・李商隠詩 (2) 135首の61首●韓愈index-1 ・孟郊、張籍と交遊・汴州乱41首●韓愈詩index-2[800年 33歳~804年 37歳]27首●韓愈詩index-3 805年 38歳・]陽山から江陵府 36首●韓愈詩index-4 806年 39歳 江陵府・権知国子博士 51首(1)25首 
 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
 孟郊張籍     
 ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。" 
 Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog杜甫 《1515 遺懷-#5》【5分割】 杜甫詩index-15-766年大暦元年55歲-51 <915-#5> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6040 
 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
 ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている 
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集 Fc2Blog 
        
 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoorBlog牛嶠《巻四03感恩多二首其一》『花間集』154全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6042 
 薛濤の全詩花間集(1巻花間集(2巻花間集(3巻花間集(4巻花間集(5巻 
 魚玄機全詩花間集(6巻花間集(7巻花間集(8巻花間集(9巻花間集10巻 
 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
 毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻 
 魏承班15首 花間集8・9巻鹿虔扆6首 花間集9巻閻選8首 花間集9巻尹鶚6首 花間集9巻