毛文錫 醉花間二首 其一
休相問,怕相問,相問還添恨。春水滿塘生,鸂鶒還相趁。
咋夜雨霏霏,臨明寒一陣。偏憶戍樓人,久絕邊庭信。
(教坊の曲、寵愛を失った妃嬪が、自分を出征した夫を待つ寡婦として、同じ心境であると詠うものである。)尋ねるのをやめよう、尋ねることが怖い、そして、尋ねた様子がわかってしまうと、また、恨みが増すというもの。又春が来てゆきどけの春の增水、堤にはびっしりと春草を生えている、見れば鸂鶒のオスがことしもまた、メスを追いかけている。昨夜はしとどに雨の降る音がしていて、明け方になると急に冷え込み、寒さがひとしきりである。瞭望臺にいる人と一緒にすごしたころをひたすら思い出し、随分ながいこと辺境の地からの便りも途絶えている。
7毛文錫《巻五22醉花間二首》『花間集』223全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6387
毛文錫(生卒年未詳)、字を平珪と言い、南陽(今の河南省南陽)の人。十四歳で進士に及第し、前萄の王建に仕え、司徒に任じられ、毛司徒と呼ばれた。その後、前覇が亡びると、後主の王術に従って後唐に降り、さらに後局に仕え、欧陽胴、闇選、鹿虔辰、韓暮らと詞をもって後局の孟池に奉仕し「五鬼」と称された。著書に『前局紀事』二巻、『茶譜』一巻がある。毛文錫の詞は大多数が男女の離別の情や傷惜春の情を詠ったものであるが、中には功名富貴を主張したものや、辺境の戦を詠ったものもある。『花間集』には二十一首の詞が収められている。
醉花間二首 其一
(教坊の曲、寵愛を失った妃嬪が、自分を出征した夫を待つ寡婦として、同じ心境であると詠うものである。)
休相問,怕相問,相問還添恨。
尋ねるのをやめよう、尋ねることが怖い、そして、尋ねた様子がわかってしまうと、また、恨みが増すというもの。
春水滿塘生,鸂鶒還相趁。
又春が来てゆきどけの春の增水、堤にはびっしりと春草を生えている、見れば鸂鶒のオスがことしもまた、メスを追いかけている。
昨夜雨霏霏,臨明寒一陣。
昨夜はしとどに雨の降る音がしていて、明け方になると急に冷え込み、寒さがひとしきりである。
偏憶戍樓人,久絶邊庭信。
瞭望臺にいる人と一緒にすごしたころをひたすら思い出し、随分ながいこと辺境の地からの便りも途絶えている。
(花間に醉う)【すいかかん】
相い問うを 休【や】めよ,相ひ問うを怕【おそ】る,相い問わば 還【ま】た恨みを添えん。
春水 滿塘に生じ,還た相い趁【お】う。
昨夜 雨 霏霏として,明けに 臨みて 寒さ一陣。
偏に 憶う 戍樓【じゅうろう】の人,久しく 邊庭の信【たより】を 絶つ。
醉花間二首 其二
深相憶,莫相憶,相憶情難極。
銀漢是紅牆,一帶遙相隔。
金盤珠露滴,兩岸榆花白。
風搖玉珮清,今夕為何夕。
『醉花間』 現代語訳と訳註
(本文)
醉花間二首 其一
休相問,怕相問,相問還添恨。
春水滿塘生,還相趁。
昨夜雨霏霏,臨明寒一陣。
偏憶戍樓人,久絶邊庭信。
(下し文)
(花間に醉う)【すいかかん】
相い問うを 休【や】めよ,相ひ問うを怕【おそ】る,相い問わば 還【ま】た恨みを添えん。
春水 滿塘に生じ,還た相い趁【お】う。
昨夜 雨 霏霏として,明けに 臨みて 寒さ一陣。
偏に 憶う 戍樓【じゅうろう】の人,久しく 邊庭の信【たより】を 絶つ。
(現代語訳)
(教坊の曲、寵愛を失った妃嬪が、自分を出征した夫を待つ寡婦として、同じ心境であると詠うものである。)
尋ねるのをやめよう、尋ねることが怖い、そして、尋ねた様子がわかってしまうと、また、恨みが増すというもの。
又春が来てゆきどけの春の增水、堤にはびっしりと春草を生えている、見れば鸂鶒のオスがことしもまた、メスを追いかけている。
昨夜はしとどに雨の降る音がしていて、明け方になると急に冷え込み、寒さがひとしきりである。
瞭望臺にいる人と一緒にすごしたころをひたすら思い出し、随分ながいこと辺境の地からの便りも途絶えている。
(訳注)
醉花間二首 其一
(教坊の曲、寵愛を失った妃嬪が、自分を出征した夫を待つ寡婦として、同じ心境であると詠うものである。)
初めの三句「相問」を三度繰り返し使い、この詩はこの聯が強烈に心情を表している。やわらかい言い回してあるが、強烈に、「なぜ愛してくれないのですか?」と問いかけたいができない。こうした表現に当てはまるのは、寵愛を待ち続けるつまり、妃嬪の立場での心情を表している。そして又春が来て、万物の成長を目にするだけであると。後半は、一人過ごす春の雨の夜は寒さがひとしお身に浸み、西域の高楼で見張りをしている夫を待つ女と同じであるという。
唐教坊曲名。唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。
唐の教坊の曲名。『花間集』 には毛文錫の二首のみ巻五に所収。双調四十一字、前段二十一字五句四仄韻、後段二十字四句三仄韻で、❸❸❺5❺/5❺❺❺の詞形をとる。
醉花間二首 其一
休相問,怕相問,相問還添恨。春水滿塘生,鸂鶒還相趁。
△△● ●△● △●○○● ○●●○△ ○△△
昨夜雨霏霏,臨明寒一陣。偏憶戍樓人,久絶邊庭信。
●●●○○ △○○●● △●●○○ ●●○○△
休相問,怕相問,相問還添恨。
尋ねるのをやめよう、尋ねることが怖い、そして、尋ねた様子がわかってしまうと、また、恨みが増すというもの。
・添恨:恨みがましい思いが加わる。 添:加わる。足す。
・相問:①おくること、相遺。②いたわる、相勞。③様子をうかがう。
杜甫 《1048重簡王明府》「甲子西南異,冬來只簿寒。江雲何夜盡,蜀雨幾時幹?行李須相問,窮愁豈自寬?君聽鴻雁響,恐致稻粱難。」(甲子 西南の異,冬來りて只寒に簿【いた】る。江雲 何ぞ夜に盡せん,蜀雨 幾時に幹せんや?行李 須く相い問わん,窮愁 豈に自ら寬かん?君聽くや鴻雁の響あるを,恐れ致【いだ】くは 稻粱の難なり。)(重ねて書簡を王明府に送ります。)この年、甲子の月、西南のこの蜀の地方において異変が起きた。冬が到来しているこのような寒波が来ている時期であるというのに。
長江にかかる雲はどういうことで夜になると覆い尽くし雨を降らせるのであろうか、そして、蜀地方は何時になったら乾いてくれるのだろうか。
こうしてまた旅に出ることで互いにの思いをぶっつけ合おうではないか。苦しみ悲しむことを何とかして自分自身で打ちやぶって晴らそうではないか。
君はもう聞いているだろうとは思うのだが、大鳥や、雁が鳴くのが響いて伝わってきたのは元号も変わりどんな変化があるのだろうか。一番心配するのは五穀豊穣が難しくなりはしないかということなのだ。
杜甫《1733秋興八首其八》「昆吾禦宿自逶迤,紫閣峰陰入渼陂。香稻啄餘鸚鵡粒,碧梧棲老鳳凰枝。佳人拾翠春相問,仙侶同舟晚更移。彩筆昔遊幹氣象,白頭吟望苦低垂。」
昆吾 御宿 自ら逶迤(いい)たり、紫閣の峰陰渼陂に入る。香稲 啄み余す 鸚鵡の粒、碧梧 棲み老ゆ 鳳凰の枝。佳人と翠を拾いて春に相い問い、仙侶と舟を同じくして晩に更に移る。綵筆【さいひつ】は昔曾て気象を干【おか】せしに、白頭 吟望して低垂【ていすい】に苦しむ。
長安の西の方面では昆吾だの御宿だのというところのあたりの地形がうねりくねっておる、そこらをとおって紫閣峰の北、沃陵へといりこむのである。途中では秋は香稲に鵜鵡の啄むべき粒がのこされており、碧棺には鳳風の棲むべき枝が棲みふるされていたりした。また春は佳人の野あそびして翠羽を拾う様子をたずねたり、夏は仙人なかまと同じ舟にのって晩になってもかまわず場所がえをしてあそんだりした。この自分は昔はかつて文彩の筆を以て天の気象をもおかししのいだことのあるものであるが、いまや老衰して白髪あたまをかかえてこの諸詩篇を吟じつつ長安の方をながめやるにどうもあたまがたれさがりがちでこまるのである。なんといくじのうなったものではないか。
春水滿塘生,鸂鶒還相趁。
又春が来てゆきどけの春の增水、堤にはびっしりと春草を生えている、見れば鸂鶒のオスがことしもまた、メスを追いかけている。
・春水・塘生:春の池や川の水に雪解け水で増水すること。堤防にびっしり春の草が生えている。滿:いっぱいに。塘:池。つつみ。
謝靈運《登池上樓》「池塘生春草,園柳變鳴禽。」(池の塘【つつみ】は春の草生じ、園の柳に鳴く禽【とり】も変りぬ。)
登池上樓 #2 謝靈運<25>#2 詩集 396 kanbuniinkai紀 頌之漢詩ブログ1005
鸂鶒:おおきなおしどり。1.鸂鶒,亦作“鸂鶆”。水鳥名。形大于鴛鴦,而多紫色,好并游。俗称紫鴛鴦。2.山西祁縣方言中特指討人喜歓的意思。常用作不鸂鶒,一般指不招人喜歓的人。
・還相趁:鸂鶒のオスがなおもメスを追いかけている。 ・鸂鶒:〔けいちょく〕オシドリ(鴛鴦)に似た水鳥。つがいで動く。紫鴛鴦。 ・還:なおもまた。 ・相趁:…を追いかけていく。鳥の仲睦まじいさま。 ・趁:追う。後からついて行く。張泌『南歌子三首其三』「錦薦紅鸂鶒,羅衣繡鳳凰。綺疎飄雪北風狂,簾幕盡垂無事,鬱金香。」
南歌子 三首之三 張泌【ちょうひつ】 ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-356-7-#18 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3327
魚玄機『隔漢江寄子安』
江南江北愁望,相思相憶空吟。
鴛鴦暖臥沙浦,鸂鶒閑飛橘林。
煙裏歌聲隱隱,渡頭月色沈沈。
含情咫尺千裏,況聽家家遠砧。
隔漢江寄子安 魚玄機 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-110-45-# 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2097
昨夜雨霏霏,臨明寒一陣。
昨夜はしとどに雨の降る音がしていて、明け方になると急に冷え込み、寒さがひとしきりである。
・霏霏:雨がしとしとと降るさま。
・臨明寒一陣:明け方が近づいたときは、寒さがひとしきりだった。臨明:明け方が近づいて。寒一陣:寒さがひとしきりだった。
偏憶戍樓人,久絶邊庭信。
瞭望臺にいる人と一緒にすごしたころをひたすら思い出し、随分ながいこと辺境の地からの便りも途絶えている。
・戍樓人:要塞の望楼にいる人。出征している男。瞭望臺,守邊軍士用來遠望的高樓。ここでは寵愛を失った妃嬪が、天使の存在を比喩して述べる。
牛嶠『定西番』
紫塞月明千里,金甲冷,戍樓寒,夢長安。
鄉思望中天闊,漏殘星亦殘。
畫角數聲嗚咽,雪漫漫。
定西番 牛嶠【ぎゅうきょう】 ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-337-6-#24 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3232
・久絶:長い間絶たれている。性交を長くしていないことと、手紙が長い間来ていないこと、この語を手紙が耐えてこないという意味ではこの詩は成り立たない。「休相」,「怕相」,「相問」「還添恨」「春水」「滿」「塘生」「還相趁」「昨夜雨」「霏霏」「寒一陣」「偏憶」「久絶」この語はすべて、交情に関する隠語である。
・邊庭:辺疆。国境。
・信:便り。手紙。


















