玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

2015年09月

10和凝 (改)《巻六33漁父一首   》『花間集』284全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6692

和凝  漁父  

白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

(春の日、早朝から、釣り糸を垂れる風流人の隠遁者の目に映る、白にまつわる景色、白瀕、波が寄せる渚、ツガイの白鷺、日ごとに長くなる日差し、釣り糸、そこに、咲き初める芙蓉の花が香りに引き寄せられる。)

ヨロイグサの白い小さな花があつまって生えている早春朝の寒気がひろがる水際に白鷺が羽を広げ降り立つ、白い小花の浮水草が渡る風にゆれ、さざ波起こる時よろい草も揺れれば、驚いて白露が飛び上がる。靄は冪冪と広がり霞む、春の日は日ごとに日暮れが遅くなり、日一日と日が伸びる。蓮の花の香りがひろがり、漁父は釣り糸を垂れているが、その香りに引き寄せられる。

10和凝 (改)《巻六33漁父一首   》『花間集』284全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6692

 

 

 
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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

漁父 

(春の日、早朝から、釣り糸を垂れる風流人の隠遁者の目に映る、白にまつわる景色、白瀕、波が寄せる渚、ツガイの白鷺、日ごとに長くなる日差し、釣り糸、そこに、咲き初める芙蓉の花が香りに引き寄せられる。)

白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。

ヨロイグサの白い小さな花があつまって生えている早春朝の寒気がひろがる水際に白鷺が羽を広げ降り立つ、白い小花の浮水草が渡る風にゆれ、さざ波起こる時よろい草も揺れれば、驚いて白露が飛び上がる。

烟冪冪,日遲遲。

靄は冪冪と広がり霞む、春の日は日ごとに日暮れが遅くなり、日一日と日が伸びる。

香引芙蓉惹釣絲。

蓮の花の香りがひろがり、漁父は釣り糸を垂れているが、その香りに引き寄せられる。

 

(漁父)

白芷の汀 寒くして鷺鷥 立つ、蘋風 軽く浪花を剪る時。

烟は 冪冪として、日は 遅遅たり。

香引して 芙蓉 釣糸を惹う。

 

 

『漁父』 現代語訳と訳註

(本文)

漁父

白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。

烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

(下し文)

(漁父)

白芷【はくし】の汀【みぎわ】寒くして鷺鷥【ろし】立つ、蘋風【ひんふう】軽く浪花を剪る時。

烟【もや】は冪冪【べきべき】として、日は 遅遅たり。

香引して 芙蓉 釣糸を惹【さそ】う。(芙蓉の香りは釣り糸を引き惹う)

 

(現代語訳)

(春の日、早朝から、釣り糸を垂れる風流人の隠遁者の目に映る、白にまつわる景色、白瀕、波が寄せる渚、ツガイの白鷺、日ごとに長くなる日差し、釣り糸、そこに、咲き初める芙蓉の花が香りに引き寄せられる。)

ヨロイグサの白い小さな花があつまって生えている早春朝の寒気がひろがる水際に白鷺が羽を広げ降り立つ、白い小花の浮水草が渡る風にゆれ、さざ波起こる時よろい草も揺れれば、驚いて白露が飛び上がる。

靄は冪冪と広がり霞む、春の日は日ごとに日暮れが遅くなり、日一日と日が伸びる。蓮の花の香りがひろがり、漁父は釣り糸を垂れているが、その香りに引き寄せられる。

 

(訳注)

漁父

(春の日、早朝から、釣り糸を垂れる風流人の隠遁者の目に映る、白にまつわる景色、白瀕、波が寄せる渚、ツガイの白鷺、日ごとに長くなる日差し、釣り糸、そこに、咲き初める芙蓉の花が香りに引き寄せられる。)

【解説】 隠遁者、風流者の漁父が釣り糸を垂れる水辺に、白芷と白鷺、白蘋とさざ波、もやとの日差し、白い花の香り、芙蓉と釣り糸の白、美人の白い肌、白という関連性で10種のものを織り込んでいる。そして、この画の向こう側に女妓の存在を感じさせる情景を詠う。末尾、垂れた釣り糸は蓮の香りに引き寄せられるかのように、風に吹かれてすーっと水面を移動する、の意。

漁父は、漁歌子のまたの名。漁歌子は唐の教坊の曲名。漁歌子には、漁父の他に、漁父詞、漁父歌、漁楽の別名がある。『花間集』には和凝の漁父一首と顧夐の漁歌子一首が収められている。和凝の作は、単調二十七字、五句四平韻で、⑦⑦3③⑦の詞形をとる。

白芷汀寒立鷺  蘋風輕剪浪花
●●△○●●○  ○△△●△○○

烟冪冪  日遲
○●●  ●○○

香引芙蓉惹釣

○●○○●●○

花間集第七巻 顧夐『漁歌子』調五十字、前後段二十五字、六句四仄韻で、3❸❼3❸❻/3❸❼3❸❻の詞形をとる。

曉風清,幽沼,倚欄凝望珍禽

畫簾垂,翠屏,滿袖荷香馥

好攄懷,堪寓,身閑心靜平生

酒盃深,光影,名利無心較

●△○  ○●● △○△△○○●

●○○ ●△●  ●●△○●●

●○○  ○●● ○○○●○△●

●○△ △●●  ○●○○●●

 

白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。

ヨロイグサの白い小さな花があつまって生えている早春朝の寒気がひろがる水際に白鷺が羽を広げ降り立つ、白い小花の浮水草が渡る風にゆれ、さざ波起こる時よろい草も揺れれば、驚いて白露が飛び上がる。

白芷 1 ヨロイグサの漢名。また、その根。漢方で鎮痛・鎮静薬などに用いる。2 ハナウドの漢名。花ウド。水辺に生える。

鷺鷥 鷺に同じ。サギ。王維 《輞川集、欒家瀬》「颯颯秋雨中、浅浅石溜瀉。波跳自相濺、白鷺驚復下。」(颯颯たる秋雨の中、浅浅として石溜に瀉ぐ。波は跳って自ら相い濺ぎ、白鷺は驚きて復た下れり。)

 

烟冪冪,日遲遲。

靄は冪冪と広がり霞む、春の日は日ごとに日暮れが遅くなり、日一日と日が伸びる。

烟冪冪 靄に霞むさま。

 

香引芙蓉惹釣絲。

蓮の花の香りがひろがり、漁父は釣り糸を垂れているが、その香りに引き寄せられる。

香引芙蓉惹釣糸 「芙蓉香引惹釣糸」(芙蓉の香りは釣り糸を引き惹う)が平灰の関係で語順が変わったもの。漁父は隠遁者、風流人であり、芙蓉は蓮の花、美人である。

 

花間集と同時期の「漁歌子」詞。

 

徐積 『漁歌子』

水曲山隈四五家、夕陽煙火隔蘆花。

漁唱歇、醉眠斜。綸竿蓑笠是生涯。

(漁歌子)

水の曲 山の隈 四、五の家、夕陽の煙火蘆花を隔つ

漁唱歇【や】み、醉眠斜めなり。綸竿【りんかん】蓑笠【さりゅう】是れ 生涯。

 

水面が湾曲して入り組んでいるところや、山の折れ曲がって奥まったところに四、五軒の娼屋がある。夕日の中に、炊煙がアシの花の向こう側に騰がっている。

漁の歌声は、やんで。だんだんと酔って、徐々に眠りについている。釣り糸と釣り竿、蓑と笠が、生涯の命である。

 

徐積 1028年天聖六年~1103年崇寧二年、字は仲車。楚州山陽の人で、治平二年の進士。

徐積は若い頃から殺すことを戒め、蟻の群を見て踏まないよう気を使った。仏書を読んだことはないが、仏を論じれば的を得ていた。いつも一室に黙って座り、世の中とは関わり無いようであったが、天下の事を論じれば次から次へと倦むことは無かった。広東から変える途中の人が客としてやってきて徐積に会い、辺境の事を語った。徐積は山川の険しさ、堡塞の疎密さ番禺の搶手の利害について、まるで手元にあるが如く論じた。客は嘆息して言った。「家から出ないで天下のことを知るとはまさに徐公のことである」

 

これは填詞。『漁歌子』とは填詞の詞牌の一で、唐代に既にあった填詞形式。『漁歌子』は詩題ではなく形式名(正確には詞に着けられた曲名)だが、『漁歌子』など(宋詞以前の)初期のものは本意(詞の本来の意味、詞題の性質)の場合が多い。この作品もそうである。特に、『漁歌子』は、釣りをして暮らすなどの隠逸生活を詠う。中国では伝統的に、漁師や樵人は半仙の雰囲気を漂わせたものとして捉えられている。

『漁歌子』で代表的な者には『漁歌子』(西塞山前白鷺飛)唐・張志和、『漁歌子』(壯誤功名老學詩)清・趙懿、『漁歌子』漁父樂(水曲山隈四五家)宋・徐積、『漁父詞』(好個神仙張志和)宋・周紫芝、『漁歌子』(一任孤舟正又斜)元・無名氏、『漁父・和張志和詞』(雪色髭鬚一老翁)唐・無名氏、『漁父』(釣臺漁父褐爲裘)唐・張志和、『漁父』(松江蟹舎主人歡)唐・張志和などがある。(『漁父』も、『漁歌子』の同調異名(形式は同じで、名称が異なるだけのもの))。

10和凝 (改)《巻六32柳枝三首其三 》『花間集』283全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6687

和凝  柳枝三首其三  

鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

(七夕の日には銀河にはカササギが川に並んで橋を作ってくれて仙郎が逢うことができるし、むかし、桂樹によじ登ったことを生かせば、月の嫦娥を探し求めることができるだろう、と詠ったもの)

カササギが銀河に並んで橋となってくれたが、はじめてこれを渡ろうとして、カササギがうるさく鳴く。七夕の今夜、一年ぶりに訪ねた仙人の男は自れの姓名を告げてつげて和やかになる。今はここにはないけれどその昔には桂の樹が青い葉をつけて大きな樹にそだち攀じ登ったものだが、それを生かして、月の里に行ったなら、

10和凝 (改)《巻六32柳枝三首其三 》『花間集』283全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6687

 

 
  2015年9月29日 の紀頌之5つのBlog  
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柳枝三首 其一

(早春に、結同心で別れたひとでも、盛春のころには風流人なり、柳がうっそうと茂る初夏には浮気心が、真夏には女性と夜を過ごすようになるものであると詠う)その一。

軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。

(見送る女)みどりの色もまだやわらかい早春のころ、朝靄が瑤煙のようにただよう朝のはやい時間、旅立つ人は皆早く、旅人は皆よく似ている。見送り終えて、花に日差しがあたる頃には、顔に手を当て、緑の蛾の眉をひそめて泣いている。

青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

(旅立った男)旅中の安全を願った柳の木は青々と茂るころには、旅人は自然に風流人となっていることだろうし、その柳が、金糸のように枝裾を吹き上げるころには、洛水の女神を待っているだろう。

(柳枝三首 其の一)

碧軟らかに瑤煙なれば送りし人に似たり,花を映す時には 翠蛾 嚬【しか】めるを把む。

青青 自ら是れ 風流の主に,慢颭【まんせん】 金絲 洛神を待つ。

 

柳枝三首 其二

(見送り、別れて、泣き腫らしたが、その後は、酔いつぶれ、淫らな声を出し、高級官僚、仙人にも愛嬌を振りまく。)その二。

瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。

風が寂しく吹き、薄絹のスカートが風にしずかに揺れ、金の練り糸の縫い付けが細い腰にまとわる。見送りがおわれば、涙で眉黛、化粧は崩してしまっても、そのままで、いつまでもなおさず、かさねて化粧をすることはない。

醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

それからというもの、閨で酔ってしまい、淫ら声を上げ、顔にポチポチを描いたように新しい化粧を施しているかのよう、こんどは、仙人をつかまえて、愛嬌を振り巻きつくしている。

(柳枝三首、其の二)

瑟瑟として 羅裙 金縷の腰,黛眉 隈破して未だ重ねて描かず。

醉い來りて 咬損し 新たに花子し,仙郎を拽住し 盡く嬌を放たん。

 

柳枝三首 其三

(七夕の日には銀河にはカササギが川に並んで橋を作ってくれて仙郎が逢うことができるし、むかし、桂樹によじ登ったことを生かせば、月の嫦娥を探し求めることができるだろう、と詠ったもの)

鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。

カササギが銀河に並んで橋となってくれたが、はじめてこれを渡ろうとして、カササギがうるさく鳴く。七夕の今夜、一年ぶりに訪ねた仙人の男は自れの姓名を告げてつげて和やかになる。

不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

今はここにはないけれどその昔には桂の樹が青い葉をつけて大きな樹にそだち攀じ登ったものだが、それを生かして、月の里に行ったなら、

(柳枝三首其の三)

鵲橋 初めて就きて 銀河に咽く,今夜 仙郎 自ら姓和す。

是にあらず 昔年 桂樹に攀るを,豈に能く月の裏 嫦娥を索めん。

 

 

『柳枝三首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

柳枝三首其三

鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。

不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

 

(下し文)

(柳枝三首其の三)

鵲橋 初めて就きて 銀河に咽く,今夜 仙郎 自ら姓和す。

是にあらず 昔年 桂樹に攀るを,豈に能く月の裏 嫦娥を索めん。

 

(現代語訳)

(七夕の日には銀河にはカササギが川に並んで橋を作ってくれて仙郎が逢うことができるし、むかし、桂樹によじ登ったことを生かせば、月の嫦娥を探し求めることができるだろう、と詠ったもの)

カササギが銀河に並んで橋となってくれたが、はじめてこれを渡ろうとして、カササギがうるさく鳴く。七夕の今夜、一年ぶりに訪ねた仙人の男は自れの姓名を告げてつげて和やかになる。

今はここにはないけれどその昔には桂の樹が青い葉をつけて大きな樹にそだち攀じ登ったものだが、それを生かして、月の里に行ったなら、あの美しい女性の「嫦娥」を何とかうまく探すことが出来るのだろう。

 

(訳注)

柳枝三首其三

(七夕の日には銀河にはカササギが川に並んで橋を作ってくれて仙郎が逢うことができるし、むかし、桂樹によじ登ったことを生かせば、月の嫦娥を探し求めることができるだろう、と詠ったもの)

七夕の傳説を詠ったもので、初句二句は銀河のカササギのわたらせる橋を、三四句は、月の嫦娥伝説を詠うものである。

 

唐の教坊曲。『花間集』には、単調、雙調とあり、最初の表に示したように二十四首ある。和凝の柳枝三首其一は単調二十八字、四句三平韻で、⑦⑦7⑦の詞形である。

和凝 《柳枝三首 其三》単調二十八字、四句三平韻で、⑦⑦7⑦の詞形。

鵲橋初就咽銀,今夜仙郎自姓

●○○●△○○  ○●○○●●△

不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦

△●●○○●●  ●△●●●○○

和凝 《柳枝三首 其一》単調二十八字、四句三平韻で、⑦⑦7⑦の詞形。

軟碧瑤煙似送,映花時把翠蛾

●●○○●●○  ●○○●●△○

青青自是風流主,慢颭金絲待洛

○○●●△○●  ●●○○●●○

和凝 《柳枝三首 其二》単調二十八字、四句三平韻で、⑦⑦7⑦の詞形。

瑟瑟羅裙金縷,黛眉隈破未重

醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放

  
  

 

顧夐  《楊柳枝》 雙調四十字、前段二十字四句四平韻、後段二十字四句二平韻二仄韻で、⑦③⑦③/❼❸⑦③の詞形である。

秋夜香閨思寂  漏迢迢 鴛幃羅幌麝煙  燭光
○●○○△●△  ●○○ ○○○●●○○  ●△○

正憶玉郎遊蕩  無尋 更聞簾外雨蕭  滴芭

△●●○○●●  ○○● △△○●●○○  ●○○

 

鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。

カササギが銀河に並んで橋となってくれたが、はじめてこれを渡ろうとして、カササギがうるさく鳴く。七夕の今夜、一年ぶりに訪ねた仙人の男は自れの姓名を告げてつげて和やかになる。

鵲橋 李商隠『辛未七夕』「豈能無意酬烏鵲、惟與蜘蛛乞巧絲。」天上の恋人たちが会う為に、烏鵲が河をうずめて橋をかけてくれるということだが、せっかくの努力に酬いる気もないのであろう。ただ、地上の蜘蛛の五色の糸の七夕の飾り物や果物をお供えさせておくだけというのは、献身して働く者は放っておいて、権力を持ったものには厚遇しょうということなのか。

・烏鵲 七夕の夜、烏鵲が銀河の橋渡しをするという「鵲橋」伝説。鵲橋(しゃくはし、かささぎばし)とは、中国の伝説で旧暦の77日の七夕の日に天の川上にできる橋の名前である。この橋は織姫と彦星が出会うためにできることから、鵲橋とは男女が良縁で結ばれる事を意味する。『淮南子』からの引用とされている「烏鵲河を填めて橋を成し、織女を渡らしむ」という白孔六帖の文章が出典とされる。辛未七夕 李商隠紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 34 「辛未七夕」李商隠

仙郎【せんろう】仙人。尚書省の各部郎中の員外をいう。唐·王維《重酬苑郎中詩》「仙郎有意憐同舍, 丞相無私斷掃門。」劉禹錫《衢州徐員外使君遺以縞紵兼竹書箱,因成一篇用答佳貺》「爛柯山下舊仙郎, 列宿來添婺女光。」

五位の蔵人(くろうど)の唐名。仕事を捨てて仙女を求めている男。娼屋に來る男。「劉郎」「阮郎」「檀郎」潘郎」など、女遊びをするもの、妓女があこがれる男の名称である。

・阮郎 別れ去って久しく帰らぬ愛しい男。後漢の劉展、阮肇は天台山に薬草を採りに入り、道に迷って仙女に出合い、しばらくともに暮らした。しかし家のことが思い起こされ、帰ってみると、既に数世が過ぎ、見知った人は誰もいなかった。そこで再び山に尋ね入ったが、仙女を探し当てられなかったと言う。以来、阮郎、劉郎は、別れ去る男や別れ去って久しく帰らぬ愛しい男を指すようになった。・檀郎/安仁/潘郎 晋の潘岳のあざな。彼は美男子であり、詩人であったが、妻の死にあい「悼亡」の詩三首を作った。後世、妻の死をなげいた模擬作が多く作られた。潘岳の幼名が檀奴だったので、「檀郎」は夫や恋い慕う男を意味する。・潘岳:安仁。滎陽(けいよう)中牟(河南省)の人。陸機と並ぶ美文の文学の大家で,錦を敷きのべたような絢爛(けんらん)たる趣をたたえられた。ことに人の死を悼む哀傷の詩文を得意とし,亡妻への尽きぬ思いをうたった〈悼亡詩(とうぼうし)〉3首はよく知られる。絶世の美男として,また権門の間を巧みに泳ぎまわる軽薄才子として,とかく話題にこと欠かなかった。八王の乱の渦中で悲劇的な刑死を遂げた。

 

不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

今はここにはないけれどその昔には桂の樹が青い葉をつけて大きな樹にそだち攀じ登ったものだが、それを生かして、月の里に行ったなら、あの美しい女性の「嫦娥」を何とかうまく探すことが出来るのだろう。

桂樹 桂は木犀など香木の総称。月に生えている伝説上の木。優れたものの喩として使われるが、ここは、月の中の桂の葉の香しいであろう匂いも実際にはとどかない。女が自分にて手の到かねものとなったという意味である。・青桂苑 青が五行思想で春を示す、桂は奥座敷の部屋の柱ほか材料であり、桂の植わる庭園は、屋外の情交の場所。1 カツラ科の落葉高木。山地に自生。葉は広卵形で裏面が白い。雌雄異株。5月ごろ、紅色の雄花、淡紅色の雌花をつけ、花びらはない。材を建築・家具や碁盤・将棋盤などに用いる。おかつら。かもかつら。2 中国の伝説で、月の世界にあるという木。

嫦娥 神話中の女性。神話の英雄、羿(がい)が西方極遠の地に存在する理想国西王母の国の仙女にお願いしてもらった不死の霊薬を、その妻の嫦娥がぬすみ飲み、急に身軽くなって月世界まで飛びあがり月姫となった。漢の劉安の「淮南子」覧冥訓に登場する。なお、魯迅(1881l936)にこの神話を小説化した「羿月」がいげつと題する小説がある。

李商隠『嫦娥』 
(嫦娥のように裏切った恋は後悔の念にきっと苛まれる。)
雲母屏風燭影深、長河漸落暁星沈。
半透明の雲母を一面に貼りつめた屏風に、ろうそくの影があやしく映っている。眠られぬ独り寝の床で、その揺らめく焔の影を眺めているうちに、夜はいつしか白らけはじめ、天の川は次第に傾いて光をおとし、薄明の中に暁の明星も沈んで消えてゆく。
嫦娥應悔倫塞薬、碧海青天夜夜心。
裏切られた心の痛み故に、夜のあけるまで、こうして星や月を眺めているのだ。あなたはいま何処にいるのだろうか。月の精である嫦娥は、夫の不在中に不思議な薬を飲み、その為に空に舞いあがったのだという。そのように、人間の世界を去った嫦娥は、しかしきっと、その薬をぬすみ飲んだ事をくやんでいるだろう。
青青と広がる天空、その極みなる、うすみどりの空の海原、それを眺めつつ、夜ごと、嫦娥は傷心しているに違いない。私を裏切った私の懐しき恋人よ。君もまた新らしい快楽をなめて、身分高い人のもとに身を寄せたことを悔いながら、寒寒とした夜を過しているのではなかろうか。

10和凝 (改)《巻六31柳枝三首其二 》『花間集』282全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6682

和凝  柳枝三首 其二  

瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。

醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

(見送り、別れて、泣き腫らしたが、その後は、酔いつぶれ、淫らな声を出し、高級官僚、仙人にも愛嬌を振りまく。)その二。

風が寂しく吹き、薄絹のスカートが風にしずかに揺れ、金の練り糸の縫い付けが細い腰にまとわる。見送りがおわれば、涙で眉黛、化粧は崩してしまっても、そのままで、いつまでもなおさず、かさねて化粧をすることはない。それからというもの、閨で酔ってしまい、淫ら声を上げ、顔にポチポチを描いたように新しい化粧を施しているかのよう、こんどは、仙人をつかまえて、愛嬌を振り巻きつくしている。

10和凝 (改)《巻六31柳枝三首其二 》『花間集』282全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6682

 

 
  2015年9月28日 の紀頌之5つのBlog  
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10和凝 (改)《巻六30柳枝三首其一 》『花間集』281全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6677

和凝  柳枝三首 其一  

軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。

青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

(早春に、結同心で別れたひとでも、盛春のころには風流人なり、柳がうっそうと茂る初夏には浮気心が、真夏には女性と夜を過ごすようになるものであると詠う)その一。

(見送る女)みどりの色もまだやわらかい早春のころ、朝靄が瑤煙のようにただよう朝のはやい時間、旅立つ人は皆早く、旅人は皆よく似ている。見送り終えて、花に日差しがあたる頃には、顔に手を当て、緑の蛾の眉をひそめて泣いている。

(旅立った男)旅中の安全を願った柳の木は青々と茂るころには、旅人は自然に風流人となっていることだろうし、その柳が、金糸のように枝裾を吹き上げるころには、洛水の女神を待っているだろう。

10和凝 (改)《巻六30柳枝三首其一 》『花間集』281全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6677


 
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1

溫庭筠

巻一30楊柳枝八首其一

宜春苑外最長條,閑裊春風伴舞腰。正是玉人腸處,一渠春水赤欄橋。

2

溫庭筠

巻一31楊柳枝八首其二

牆東御路傍,須知春色柳絲黃。杏花未肯無情思,何事行人最斷腸。

3

溫庭筠

巻一32楊柳枝八首其三

蘇小門前柳萬條,毿毿金線拂平橋。黃鶯不語東風起,深閉朱門伴舞腰。

4

溫庭筠

巻一33楊柳枝八首其四

金縷毿毿碧瓦溝,六宮眉黛惹香愁。晚來更帶龍池雨,半拂欄干半入樓。

5

溫庭筠

巻一34楊柳枝八首其五

館娃宮外鄴城西,遠映征帆近拂堤。繫得王孫歸意切,不同芳草綠萋萋。

6

溫庭筠

巻一35楊柳枝八首其六

兩兩黃鸝色似金,裊枝啼露動芳音。春來幸自長如線,可惜牽纏蕩子心。

7

溫庭筠

巻一36楊柳枝八首其七

御柳如絲映九重,鳳凰窗映繡芙蓉。景陽樓畔千條路,一面新粧等曉風。

8

溫庭筠

巻一37楊柳枝八首其八

織錦機邊鶯語頻,停梭垂淚憶征人。塞門三月猶蕭索,縱有垂楊未覺春。

9

皇甫松

巻二21楊柳枝二首其一

春入行宮映翠微,玄宗侍女舞煙絲。如今柳向空城綠,玉笛何人更把吹。

10

皇甫松

巻二22楊柳枝二首其二

爛熳春歸水國時,王宮殿柳絲垂。黃鶯長叫空閨畔,西子無因更得知。

11

牛嶠

巻三46柳枝五首其一

解凍風來末上青,解垂羅袖拜卿卿。無端裊娜臨官路,舞送行人過一生。

12

牛嶠

巻三47柳枝五首其二

王宮裡色偏深,一簇纖條萬縷金。不憤錢塘蘇小小,引郎松下結同心。

13

牛嶠

巻三48柳枝五首其三

橋北橋南千萬條,恨伊張緒不相饒。金羈白馬臨風望,認得楊家靜婉腰。

14

牛嶠

巻三49柳枝五首其四

狂雪隨風撲馬飛,惹煙無力被春欺。莫交移入靈和殿,宮女三千又妬伊。

15

牛嶠

巻三50柳枝五首其五

裊翠籠煙拂暖波,舞裙新染麴塵羅。章華臺畔隋堤上,傍得春風爾許多。

16

張泌

巻四47柳枝

粉瓊粧透碧紗,雪休誇。金鳳搔頭墮鬢斜,髮交加。倚著雲屏新睡覺,思夢笑。紅腮隱出枕函花,有些些。

17

和凝

巻六30柳枝三首其一 

 軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

18

和凝

巻六31柳枝三首其二 

 瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

19

和凝

巻六32柳枝三首其三 

 鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

20

顧夐

巻七16楊柳枝

秋夜香閨思寂寥,漏迢迢。鴛幃羅幌麝煙銷,燭光搖。正憶玉郎遊蕩去,無尋處。更聞簾外雨蕭蕭,滴芭蕉。

21

孫光憲

巻八42楊柳枝四首其一

閶門風暖落花乾,飛遍江城江城雪不寒。獨有晚來臨水驛,閑人多凭赤欄干。

22

孫光憲

巻八43楊柳枝四首其二

有池有榭即濛濛,浸潤飜成長養功。恰似有人長點檢,着行排立向春風。

23

孫光憲

巻八44楊柳枝四首其三

根柢雖然傍濁河,無妨終日近笙歌。驂驂金帶誰堪比,還共黃鶯不校多。

24

孫光憲

巻八45楊柳枝四首其四

萬株枯槁怨亡隋,似弔臺各自垂。好是淮陰明月裏,酒樓橫笛不勝吹。

 

 

柳枝三首 其一

(早春に、結同心で別れたひとでも、盛春のころには風流人なり、柳がうっそうと茂る初夏には浮気心が、真夏には女性と夜を過ごすようになるものであると詠う)その一。

軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。

(見送る女)みどりの色もまだやわらかい早春のころ、朝靄が瑤煙のようにただよう朝のはやい時間、旅立つ人は皆早く、旅人は皆よく似ている。見送り終えて、花に日差しがあたる頃には、顔に手を当て、緑の蛾の眉をひそめて泣いている。

青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

(旅立った男)旅中の安全を願った柳の木は青々と茂るころには、旅人は自然に風流人となっていることだろうし、その柳が、金糸のように枝裾を吹き上げるころには、洛水の女神を待っているだろう。

(柳枝三首 其の一)

碧軟らかに瑤煙なれば送りし人に似たり,花を映す時には 翠蛾 嚬【しか】めるを把む。

青青 自ら是れ 風流の主に,慢颭【まんせん】 金絲 洛神を待つ。

 

其二

瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。

醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

 

其三

鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。

不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

隋堤002
 

 

『柳枝三首、其一』 現代語訳と訳註

(本文)

柳枝三首 其一

軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。

青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

 

(下し文)

(柳枝三首 其の一)

碧軟らかに瑤煙なれば送りし人に似たり,花を映す時には 翠蛾 嚬【しか】めるを把む。

青青 自ら是れ 風流の主に,慢颭【まんせん】 金絲 洛神を待つ。

 

(現代語訳)

(早春に、結同心で別れたひとでも、盛春のころには風流人なり、柳がうっそうと茂る初夏には浮気心が、真夏には女性と夜を過ごすようになるものであると詠う)その一。

(見送る女)みどりの色もまだやわらかい早春のころ、朝靄が瑤煙のようにただよう朝のはやい時間、旅立つ人は皆早く、旅人は皆よく似ている。見送り終えて、花に日差しがあたる頃には、顔に手を当て、緑の蛾の眉をひそめて泣いている。

(旅立った男)旅中の安全を願った柳の木は青々と茂るころには、旅人は自然に風流人となっていることだろうし、その柳が、金糸のように枝裾を吹き上げるころには、洛水の女神を待っているだろう。

 

 

(訳注)

柳枝三首 其一

(早春に、結同心で別れたひとでも、盛春のころには風流人なり、柳がうっそうと茂る初夏には浮気心が、真夏には女性と夜を過ごすようになるものであると詠う)その一。

 

唐の教坊曲。『花間集』には、単調、雙調とあり、最初の表に示したように二十四首ある。和凝の柳枝三首其一は単調二十八字、四句三平韻で、⑦⑦7⑦の詞形である。

和凝 《柳枝三首 其一》単調二十八字、四句三平韻で、⑦⑦7⑦の詞形。

軟碧瑤煙似送,映花時把翠蛾

●●○○●●○  ●○○●●△○

青青自是風流主,慢颭金絲待洛

○○●●△○●  ●●○○●●○

 

顧夐  《楊柳枝》 雙調四十字、前段二十字四句四平韻、後段二十字四句二平韻二仄韻で、⑦③⑦③/❼❸⑦③の詞形である。

秋夜香閨思寂  漏迢迢 鴛幃羅幌麝煙  燭光
○●○○△●△  ●○○ ○○○●●○○  ●△○

正憶玉郎遊蕩  無尋 更聞簾外雨蕭  滴芭

△●●○○●●  ○○● △△○●●○○  ●○○

 

軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。

(見送る女)みどりの色もまだやわらかい早春のころ、朝靄が瑤煙のようにただよう朝のはやい時間、旅立つ人は皆早く、旅人は皆よく似ている。見送り終えて、花に日差しがあたる頃には、顔に手を当て、緑の蛾の眉をひそめて泣いている。

瑤煙 朝もやにかすむが山の葉だけがはっきりしてアメジスト玉の切断面の幾重にも山の端が重なるような景色。

 〔嚬める・顰める〕【ひそめる】(「眉をひそめる」の形で)眉の辺りにしわをよせる。不快な時や悲しい時の表情にいう。顔をしかめる。

 1 束ねたものを数えるのに用いる。2 射芸で、矢を数えるのに用いる。

 

青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

(旅立った男)旅中の安全を願った柳の木は青々と茂るころには、旅人は自然に風流人となっていることだろうし、その柳が、金糸のように枝裾を吹き上げるころには、洛水の女神を待っているだろう。

慢颭 風が物をふるわせる。

洛神 洛神、洛嬪(らくひん)は、古代中国の伝説に出てくる伏義氏の娘であり、水と川を司る洛水の女神。黄河の神・河伯の妻。黄河にそそぐ川の一つ・洛水(らくすい)と伊川(いせん)が合流するあたりに住んでいる。後に后羿(こうげい)が洛嬪を奪って結婚したという伝説でもある。あるいは、洛神の賦は兄嫁に対する恋慕を意味するものである。

隋堤01

10和凝 (改)《巻六29採桑子一首  》『花間集』280全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6672

和凝  採桑子   

蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。

叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

(せっかく大勢の中から妃賓に選抜されても、全く寵愛にあずからないことはよくあった。妃嬪は、最大百数十名いることもあり、しかも、何もないまま実家に帰され、次の妃賓が選ばれるということを前提に、若くてかわいい生娘が後宮に上がっての様子を詠ったものである。)

白い首を囲む襟には、訶梨勤の刺繍の飾りのついた羽衣をつけ、胸前がひらいている襟から垂れる刺繍の縫い取り帯が二本ある。やがて、妃嬪の部屋は椒泥塗りであり何事もなくしずかなもので、時折、宮女と荔枝を賭けて賽子勝負をする。

爪先に花飾り付けた靴に、細く紅い紐を編みこんで、金糸飾りスカートは床を引きずる。何事も起きないし、好きな男が居るわけもないからなにもはじまらない、だから、眉をくもらせる、春が来て寵愛を受けたいと思いはつのるが、いつになったら、寵愛を受けられるのだろうかと「阿母」は後宮に入ってよかったのかと心配する。

10和凝 (改)《巻六29採桑子一首  》『花間集』280全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6672

 

 
  2015年9月26日 の紀頌之5つのBlog  
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採桑子

(せっかく大勢の中から妃賓に選抜されても、全く寵愛にあずからないことはよくあった。妃嬪は、最大百数十名いることもあり、しかも、何もないまま実家に帰され、次の妃賓が選ばれるということを前提に、若くてかわいい生娘が後宮に上がっての様子を詠ったものである。)

蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,

白い首を囲む襟には、訶梨勤の刺繍の飾りのついた羽衣をつけ、胸前がひらいている襟から垂れる刺繍の縫い取り帯が二本ある。

閑時,競學樗蒲賭荔枝。

やがて、妃嬪の部屋は椒泥塗りであり何事もなくしずかなもので、時折、宮女と荔枝を賭けて賽子勝負をする。

叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。

爪先に花飾り付けた靴に、細く紅い紐を編みこんで、金糸飾りスカートは床を引きずる。

無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

何事も起きないし、好きな男が居るわけもないからなにもはじまらない、だから、眉をくもらせる、春が来て寵愛を受けたいと思いはつのるが、いつになったら、寵愛を受けられるのだろうかと「阿母」は後宮に入ってよかったのかと心配する。

(採桑子)

蝤蠐【しゅうせい】の領上の訶梨子,繡帶【しゅうたい】雙び垂る,椒【しょうこ】閑なる時,競いて樗蒲【ちょぼ】を學びて荔枝【れいし】を賭く。

叢頭【そうとう】の鞋子【あいし】紅 編むこと細【こまか】く,裙は 金絲を窣く。

事 無く 眉を嚬【ひそ】め,春思 飜りて 阿母を教【し】て疑わしむ。

 

桑畑
 

『採桑子』 現代語訳と訳註

(本文)

採桑子

蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。

叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

 

(下し文)

(採桑子)

蝤蠐【しゅうせい】の領上の訶梨子,繡帶【しゅうたい】雙び垂る,椒【しょうこ】閑なる時,競いて樗蒲【ちょぼ】を學びて荔枝【れいし】を賭く。

叢頭【そうとう】の鞋子【あいし】紅 編むこと細【こまか】く,裙は 金絲を窣く。

事 無く 眉を嚬【ひそ】め,春思 飜りて 阿母を教【し】て疑わしむ。

 

 

(現代語訳)

(せっかく大勢の中から妃賓に選抜されても、全く寵愛にあずからないことはよくあった。妃嬪は、最大百数十名いることもあり、しかも、何もないまま実家に帰され、次の妃賓が選ばれるということを前提に、若くてかわいい生娘が後宮に上がっての様子を詠ったものである。)

白い首を囲む襟には、訶梨勤の刺繍の飾りのついた羽衣をつけ、胸前がひらいている襟から垂れる刺繍の縫い取り帯が二本ある。

やがて、妃嬪の部屋は椒泥塗りであり何事もなくしずかなもので、時折、宮女と荔枝を賭けて賽子勝負をする。

爪先に花飾り付けた靴に、細く紅い紐を編みこんで、金糸飾りスカートは床を引きずる。

何事も起きないし、好きな男が居るわけもないからなにもはじまらない、だから、眉をくもらせる、春が来て寵愛を受けたいと思いはつのるが、いつになったら、寵愛を受けられるのだろうかと「阿母」は後宮に入ってよかったのかと心配する。

 

(訳注)

採桑子

(せっかく大勢の中から妃賓に選抜されても、全く寵愛にあずからないことはよくあった。妃嬪は、最大百数十名いることもあり、しかも、何もないまま実家に帰され、次の妃賓が選ばれるということを前提に、若くてかわいい生娘が後宮に上がっての様子を詠ったものである。)

【解説】 妃嬪選抜に及第し、末席妃嬪になっても、それ自体が名誉であるものの、寵愛を受けるための努力はしないといけない。「繡帶雙垂」刺繍に思いを込めて帯を縫い、その帯を思い人に渡し、それを身に着ければ、離れることはないという、「結同心」、と同じ性格のものであるが、そうした準備もむなしく、いつまでも寵愛を受けることはない。いつしか、荔枝をかけて、サイコロ遊びをする、暇な妃嬪たちと同じようになってゆく。貞操を必死で守った「羅敷」の故事とは違うが、この詩も、処女、貞操はしっかりと守られている。桑をとる娘は戦場に出た夫に貞操を守る立派な女性を云うものであるが、この詩では、寵愛を受けることがないために貞操が守られるという和凝のユーモアを詠うものである。

頭のよい和凝の形を先に決め、後から語句をはめ込む、パズルゲームのようにして作ったもので、当時の倫理観、生活習慣、結婚観、風俗など、意味的にも総合的に判断しないと、通り一遍の解釈になってしまう。

 

採桑子は花間集には和凝の一首のみである。唐の教坊の曲名である楊下採桑に由来すると言われるが、教坊の大曲に采桑があり、採桑子との関係はいずれも明確ではない。またの名を采桑子令、添字采桑子、醜奴児、醜奴児令、羅敷媚、羅敷媚歌と言う。『花間集』には和擬の一首のみ所収。双調四十四字、前後段二十二字四句三平韻で、7④④⑦/7④④⑦の詞形をとる。

採桑子一首

蝤蠐領上訶梨子  繡帶雙垂   競學樗蒲賭荔
叢頭鞋子紅編細  裙窣金絲 無事嚬  春思飜教阿母

○○●●○○●  ●●○○ ○●○○  ●●○○●●○

○○○●○△●  ○●○○ ○●○○  ○△○△○△○

採桑子一首(羅敷媚歌)  欧陽脩

畫船載酒西湖好  急管繁弦 玉盞催  穩泛平波任醉
行云却在行舟下  空水澄鮮 俯仰流  疑是湖中

●○●●○○●  ●●○○ ●●○△  ●●○○△●○

△○●●△○●  △●○△ ●△○○  ○●○△●●○

《醜奴児》辛棄疾

少年不識愁滋味,愛上曾,愛上曾,爲賦新詞強説

●○●●○○● ●●○○ ●●○○ ●●○○●●○ 

而今識盡愁滋味,欲説還,欲説還,卻道天涼好箇

○○●●○○● ●●○○ ●●○○ ●●○○●●○

 

蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,

白い首を囲む襟には、訶梨勤の刺繍の飾りのついた羽衣をつけ、胸前がひらいている襟から垂れる刺繍の縫い取り帯が二本ある。

蝤蠐領上 白い首を囲む襟。蝤蠐は木食い虫の幼虫。白く長いので、ここでは色白の首を喩える。

訶梨子 訶梨勤。中国南方産の常緑喬木。ここではその実にかたどった襟飾りのこと。訶梨勤の刺繍の飾りのついた肩掛け。・訶梨勒1 インドなどに産するシクンシ科の高木。高さ30メートルに達し、葉は長楕円形。枝先に白い花が群がって咲く。果実を風邪・便通などの薬にし、材は器具用にする。2 象牙・銅・石などでカリロクの実の形を作り、美しい袋に入れ、柱に掛けた飾り物。

繍帯 襟から垂れた刺繍のある帯。なお帯については、上衣の束帯、肩掛けの帯、衣の帯、腰帯と女の生活環境によって、讀む人の知識度により解釈は深まる。これは艶歌に対する考え方である。通常は帯は一本であるが、同心結の帯を女性から好きな男性におくり、それを下に結ぶ場合日本の帯をするという。ここでは、その思い人に渡せるように心を込めて作った帯を身に着けていて、其時が来れば、その帯を解いて渡すということが前提である。

 

閑時,競學樗蒲賭荔枝。

やがて、妃嬪の部屋は椒泥塗りであり何事もなくしずかなもので、時折、宮女と荔枝を賭けて賽子勝負をする。

○椒 椒の粉末を混入した壁土を塗った部屋。椒のために室内は香りよく、暖かく、蟲が寄り付かない。この語は、処女、淑女を感じさせる句である。

樗蒲 賽子を使った賭け事。1 中国の賭博(とばく)の一。1個のさいころで出る目を予測し、予測が当たれば賭け金の4倍または5倍を得る仕組みになっているもの。転じて、博奕(ばくち)のこと。2 いんちき。でたらめ。3 ばかをみること。

『唐六典』 の内官制度の規定によると、后妃たちにも職務が決められていた。妃嬪は皇后を補佐し、「坐して婦礼を論じ」、「内廷に在って万事を統御する」、六儀(後宮にある六つの官庁)は「九御(天子に奉侍する女官たち)に四徳(婦徳・婦言・婦容・婦功)を教え、傘下の婦人を率いて皇后の儀礼を讃え導く」、美人は「女官を率いて祭礼接客の事を修める」、才人は「宴会、寝所の世話を司り、糸枲のことを理め、その年の収穫を帝に献じる」等々。しかしながら、これらの仕事も大半は形式的なもので、なんら実際の労働ではなかった。形式的な「公職」以外で、彼女たちの生活の最も重要なことは、言うまでもなく皇帝の側に侍り、外出の御供をすることであった。彼女たち自身の私的な生活はと言えば、ただいろいろな娯楽、遊戯を思いついては日時をすごし、いかにして孤独と退屈をまぎらわすかということに尽きる。「内庭の嬪妃は毎年春になると、宮中に三人、五人と集まり、戯れに金銭を投げ表裏を当てて遊んだ。これは孤独と苦悶の憂さを晴らすためであった」、「毎年秋になると、宮中の妃妾たちは、美しい金製の小龍に蟋蟀を捉えて閉じ込め、夜枕辺に置いて、その鳴き声を聴いた」(王仁裕『開元天宝遺事』巻上)。これらが彼女たちの優閑無聊の生活と娯楽や気晴らしのちょっとした描写である。

 

叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。

爪先に花飾り付けた靴に、細く紅い紐を編みこんで、金糸飾りスカートは床を引きずる。

○叢頭鞋子 爪先に花飾りの付いた靴。富貴の若い娘の間で、靴に刺繍や飾り物をつけるのは流行であった。

 

無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

何事も起きないし、好きな男が居るわけもないからなにもはじまらない、だから、眉をくもらせる、春が来て寵愛を受けたいと思いはつのるが、いつになったら、寵愛を受けられるのだろうかと「阿母」は後宮に入ってよかったのかと心配する。

○嚬 却って。ここでは好きな男がいるわけではないのに、の意。

○阿母 お母さんのことであるが、阿は親しみを表す接頭語で、ここでは後宮についてきた母親代わりの乳母を言う。

后妃・妃嬪たちの生活は富貴であり、また賛沢でもあった。彼女たちは衣食の心配の必要はなく、内庫(宮中の資材課)が必要なもの一切を支給された。だから、妃嬪選抜には多くの応募があった。「汝州(河南省臨安。洛陽の東南)、鄭州(河南省鄭州)一帯の高貴な身分の家の子女を対象に新婦を求めた」(王講『唐語林』巻四「企羨」)。十数歳に達した「良家の子女」は、この種の選抜をへて多数宮廷に入ったのであるが、彼女たちの中のほんの少しの者だけが幸運を得て妃嬢に列し、大多数の者は名もなき宮女のままで生涯を終えたのである。このように良家の子女を選抜するのが、宮廷女性の主要な来源であり、宮廷女性の中で少なからざる比率を占めていた。

 

「採桑子」 の背景

「採桑子」は、采桑子令、添字采桑子、醜奴児、醜奴児令、羅敷媚、羅敷媚歌と言う。宮中酒宴、サロンでの歌会で、競って歌われたものである。特に西暦1000年前後、性倫理は自由な傾向が強く、貞操観念は低かった。したがって、逆に詩歌では、貞操を見事に守った《羅敷》という題材が好まれたのである。

邯鄲(河北省) の人なる秦氏に羅敷という娘があって邑人王仁の妻となった。王仁は後に趙王の家令となった。羅敷がある時、路で桑摘みをしていると、趙王が台の上から見て悦び、宴によびよせて奪い取ろうとした。羅敷は筝をひき、「陌上桑」の歌をうたって、自らを明らかにしたので、趙王は思いとまったとある。この詩をみると、趙王ではなくて、土地の長官大守が羅敷を見そめたことになっている。

列女伝、東家の女。秋胡詩、日出東南隅ということで、ほぼ同様な詩である。

《日出東南隅行》謝靈運

柏梁冠南山,桂宮燿北泉。晨風拂幨幌,朝日照閨軒。

美人臥屏席,懷蘭秀瑤璠。皎潔秋松氣,淑德春景暄。

日出東南隅 謝霊運(康楽) 詩<68>Ⅱ李白に影響を与えた詩490 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1287

身を売った西家の女は傾城といわれるほどの妓女となって黄金で身を飾り、刺繍を施した肌着を身に纏えるほどの生活をしている。 しかし東家の女はただただ貧しさに苦しみながらも、その玉体を北国の人買いの手には渡さなかった。

 

 

    

李白《巻19-21 春日游羅敷潭 》

行歌入谷口,路盡無人躋。攀崖度壑,弄水尋迴溪。

雲從石上起,客到花間迷。淹留未盡興,日落群峰西。

(華州の漢の蘿敷の所縁の湖の淵で春の日に遊ぶ)

湖のほとりを歩行しつつ詩を歌うと、やがて谷の入り口より奥に入って行くと、道は尽きて昇ってゆく人がいなくなる。

景色が素晴らしい谷ということで、断崖を攀じ登り、壑をわたって、流水を弄して、曲がり曲った峡谷をたずねあるいた。

雲は石場より湧きあがり、客は花間に分け入るけれど路を迷ってしまう。

何時まで経っても興が尽きることが無く何時までもその地にとどまることになり、日は、華山から西に続く山の峰に沈んでゆくので帰り道を急ぐことになる。

176 《巻19-21 春日游羅敷潭 Index-11 Ⅱ―6 -731年開元十九年31 43首 <176> Ⅰ李白詩1388 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5488

 

 

 

相和歌辭相和曲   漢の無名氏
《陌上桑》. (日出東南隅行)
日出東南隅、照我秦氏樓。秦氏有好女、自名為羅敷。
羅敷善蠶桑、採桑城南隅。青絲為籠系、桂枝為籠鉤。
頭上倭墮髻、耳中明月珠。緗綺為下裙、紫綺為上襦。
行者見羅敷、下擔捋髭須。少年見羅敷、
帽著幛頭。

耕者忘其犁、鋤者忘其鋤。來歸相怨怒、使君從南來。
五馬立踟躕、使君遣吏往。問此誰家姝、秦氏有好女。
自名為羅敷、羅敷年幾何。二十尚不足、十五頗有餘。
使君謝羅敷、寧可共載不。羅敷前致辭、使君一何愚。

使君自有婦、羅夫自有夫。東方千餘騎、夫婿居上頭。

何用識夫婿、白馬從驪駒。青絲系馬尾、黃金絡馬頭。

腰中鹿盧劍、可千萬餘。十五府小史、二十朝大夫。

三十侍中郎、四十專城居。為人潔白皙、髯髯頗有須。

盈盈公府步、冉冉府中趨。坐中數千人、皆言夫婿殊。

 

東南の隅から出た朝日が、まず、わが秦氏の高殿を照らす。その秦氏の美しい娘がいて自ら羅敷と名乗っている。羅敷は養蚕が上手、城郭の南隅で桑つみをする。そのいでたちは青い糸を籠のひもにし、桂の枝を籠のさげ柄にし、頭の上に垂れ髪のまげをむすび耳には明月の珠をかざり、浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫のあやぎぬを上衣としている。
その美しい姿に道行く男は荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁ぶり、若者は彼の女を見ると帽をぬいて、髻をつつんだ頭をあらわして気どって見せる。田を耕す人は犂を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。家に帰ってから怨んだり怒ったり、夫婦争いをするのも、じつはただ羅敷を見たことがもとなのだ。
ある日、国の太守が南の方からやって来て羅敷を見とめ、五頭立の馬車もそこに立ちどまって進もうとしない。太守は下役をよこしてたずねる。「これはどこの娘さんか」と。人々が答えた。
「秦家の美しい娘、その名は羅敷と申します」「年はいくつか」「二十にはまだならぬが、十五は大分過ぎています」
太守はそこで羅敷にあいさつし、「どうだ、わしの車で一緒に行くことはできぬか」と。羅敷が進み出て申しあげる。「太守さまはほんとにおばかさんだ。あなたさまにはもともと奥さまがいらっしゃるし、わたしにも夫があります。東地方千余騎の軍隊、わたしの夫はその頭にいます。
夫を何で見わけるかといえば、白い馬に黒の若駒を従え、青糸の紐をしりがいにし、黄金のおもがいをかざり、自分の腰には鹿盧の剣をおびている。その価は千万金余もする名剣。十五の歳に役所の書記だった夫は、二十で朝廷の大夫、三十では侍従職、四十では一城の主となりました。生まれつきのすっきりした色白、ふさふさとしたあごひげ、堂々と役所を歩み、さっさと役所内を急ぎまわる。威風あたりをはらって同坐の人々数千人、みなわたしの夫が目立ってすぐれていると申します」 と。

10和凝 (改)《巻六28春光好二首其二》『花間集』279全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6667

和凝  春光好二首其二   

蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。

春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

(科挙合格の祝宴、探花使に選ばれた者は花を探し、牡丹か、杏か、桃李か、宮女にか、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれるのか春の無礼講のことである)

早春の浮水草の葉はやわらかく育ち、池に映る杏の花に明るく日差しが照る、絵塗りの船は軽やかに浮ぶ。

澄んだ水の渚に出ているのは二つ並んで水浴びをしている鴛鴦、そこに、船頭が歌う舟歌にあわせて合格者たちが船縁を叩きながら歌うので驚いている。

春の淥水は風もなく波もたたず鏡のよう、春の空はかわりやすく小雨が降ったかと思うと今度はぱっと晴れる。

及第者に若い宮女たちは連れ立って、暮れてきた南の入り江の船着き場の方に入っていく、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれ、育つのだろう。

10和凝 (改)《巻六28春光好二首其二》『花間集』279全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6667

 

 
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和凝(898955)、字を成績と言い、鄆州の須昌(今の山東省東平の西北)の人。彼は幼い時から聡明で、早くから書物を学び、一読すれば常に大義に通じた。梁の義成軍節度使賀瓌に招かれて従事となったが、賀瓌が唐の荘宗との戦いに敗れると、彼一人が賀瓌に従った。賀瓌は和凝に対して、自分に従うのをやめて己の道を求めるように勧めたが、和凝は「男子たるもの、人の知遇を得ながら危難の際に恩に報いないのは、本意ではない」と言い、行動をともにし、追っ手を射倒して、賀瓌の命を救った。そこで、賀瓌は自分の娘を和凝に娶らせ、「和凝は将来重位に就くであろぅから、謹んで仕えるように」と子供らに諭した。そのために、和凝の名は一時に轟いた。彼は、梁、唐、晋、漢、周の五朝に仕え、多くの後進を導いたので、人々から広く慕われたと言う。和凝は若い時に好んで艶詞を作ったが、晋の宰相になると詞を回収して焼き捨てさせた。しかし、艶詞のために名を汚すことになり、契丹は晋に入朝すると、彼を曲子相公と呼んだと言う。和凝の詞は二十七首が伝わり、『花間集』 には二十首の詞が収められている。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。

 

和學士凝(和凝)二十首 和凝,字成績,五代詞人。曾官翰林學士知制誥等職。

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

和學士凝(和凝)二十首 和凝,字成績,五代詞人。曾官翰林學士知制誥等職。

 

 

1014

春光好二首 其一

(うららかな春に、寵愛を受けた、あさが来ても起きるのが億劫になるほどの夜を過ごした。その時、西施のように飾ったし、窓からうかがってくれたからそんな春を過ごしたが、今、同じように寵愛を受ける準備をしているが、何事も起こらない、どうしたらいいのかわからない、希望をなくしてしまいそうだと妃賓気持ちを詠う。)

暖,畫屏閑,嚲雲鬟。

春の季節になって、沙羅絹を張った窓に日が当たり暖かくなる、絵の屏風の閨には静かにねむりからさめる。髪のみだれをはらってなおす。

睡起四肢無力,半春間。

二度寝入りをして、寝牀から出られなくて、起き上がってみたが手足にまったく力が入らない。「春眠暁を覚えず」の真っただ中のころである。

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。

白く輝くようなその指でうす絹を見事に裁断する。金色のかざりのかがやく寝牀には姑蘇山の宮殿の西施のように、お迎えの飾りつけをしている。

窺宋深心無限事,小眉彎。

宋玉を隣の女がのぞき見した故事のように窓から覗いてくれる、そう深く心に思うが、なにごともおこらず、何もわからなくなってしまった。憂いで眉尻が湾曲している。

(春光好二首 其の一)

 暖か,畫屏 閑かなり,雲鬟を嚲【なお】す。

睡起するも四肢 無力,春間を半にす。

玉指 剪裁 羅勝り,金盤 蘇山を點綴【てんてい】す。

宋を窺い 心を深くし 事を限る無し,小眉の彎。

1014

春光好二首其二

(科挙合格の祝宴、探花使に選ばれた者は花を探し、牡丹か、杏か、桃李か、宮女にか、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれるのか春の無礼講のことである)

蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。

早春の浮水草の葉はやわらかく育ち、池に映る杏の花に明るく日差しが照る、絵塗りの船は軽やかに浮ぶ。

雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。

澄んだ水の渚に出ているのは二つ並んで水浴びをしている鴛鴦、そこに、船頭が歌う舟歌にあわせて合格者たちが船縁を叩きながら歌うので驚いている。

春水無風無浪,春天半雨半晴。

春の淥水は風もなく波もたたず鏡のよう、春の空はかわりやすく小雨が降ったかと思うと今度はぱっと晴れる。

紅粉相隨南浦晚,幾含情。

及第者に若い宮女たちは連れ立って、暮れてきた南の入り江の船着き場の方に入っていく、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれ、育つのだろう。

(春光好 二首 其の二)

蘋葉【ひんよう】軟らかく,杏花 明るく,畫舡【がしゅう】輕し。

雙【なら】び浴するの鴛鴦 淥汀【ろくてい】を出づ,棹歌の聲に。

春水 風無く 浪無く,春天 半ば雨ふり 半ば晴る。

紅粉 相い隨いて 南浦の晚,幾ばくの含情に。

 

 

『春光好二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

春光好二首其二

蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。

雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。

春水無風無浪,春天半雨半晴。

紅粉相隨南浦晚,幾含情。

 

(下し文)

(春光好 二首 其の二)

蘋葉【ひんよう】軟らかく,杏花 明るく,畫舡【がしゅう】輕し。

雙【なら】び浴するの鴛鴦 淥汀【ろくてい】を出づ,棹歌の聲に。

春水 風無く 浪無く,春天 半ば雨ふり 半ば晴る。

紅粉 相い隨いて 南浦の晚,幾ばくの含情に。

 

 

(現代語訳)

(科挙合格の祝宴、探花使に選ばれた者は花を探し、牡丹か、杏か、桃李か、宮女にか、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれるのか春の無礼講のことである)

早春の浮水草の葉はやわらかく育ち、池に映る杏の花に明るく日差しが照る、絵塗りの船は軽やかに浮ぶ。

澄んだ水の渚に出ているのは二つ並んで水浴びをしている鴛鴦、そこに、船頭が歌う舟歌にあわせて合格者たちが船縁を叩きながら歌うので驚いている。

春の淥水は風もなく波もたたず鏡のよう、春の空はかわりやすく小雨が降ったかと思うと今度はぱっと晴れる。

及第者に若い宮女たちは連れ立って、暮れてきた南の入り江の船着き場の方に入っていく、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれ、育つのだろう。

 

(訳注)

春光好二首其二

(科挙合格の祝宴、探花使に選ばれた者は花を探し、牡丹か、杏か、桃李か、宮女にか、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれるのか春の無礼講のことである)

【解説】 春、杏園で合格の宴があり、街に繰り出すもの、花を愛でるもの、舟遊びをするもののうち、女性達の水上の行楽の様子を詠う。唐代において、進士たちは、曲江の西にあった杏園において宴遊するのが常であったが、新たに及第した進士の杏園の初会を探花宴といい、その時には合格者中の最年少者二人を選んで探花使とし、諸処の名園を徧遊させ、名花を探らせた。探花の名はこれより起こる。宋初においてもこの風習は行われ、いずれもこの探花使に選ばれた者を探花といい、特に廷試第三名の及第者に限ることはなかった。

 

春光好二首其二

唐の教坊の曲名。またの名を愁倚欄、愁倚欄令、倚欄令と言う。『花間集』には和凝の二首のみ所収。

春光好二首 其一双調四十一字、前段十九字、五句三平韻、後段二十二字四句二平韻で、3③③6③/6⑥7③の詞形をとる。

暖,畫屏,嚲雲睡起四肢無力,半春

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇。窺宋深心無限事,小眉

○?●  ●△○ ●○○ ●●●○○● ●○△

●●●△○△ ○○●●○○ ○●△○○●● ●○○

春光好二首其二は双調四十一字、前段十九字、五句三平韻、後段二十二字四句二平韻で、3③③6③/6⑥7③の詞形をとる。

蘋葉軟,杏花,畫舡。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌

春水無風無浪,春天半雨半。紅粉相隨南浦晚,幾含

○●●  ●○○ ●○△  ○●○○●●△ ●○○

○●○△○△ ○○●●●○  ○●△○○●● △○○

 

作者:晏幾道 北宋

《愁倚欄令》双調四十二字、前段十九字、五句三平韻、後段二十三字四句三平韻で、3③③6③/6⑥7③の詞形をとる。

憑江閣、看煙、恨春。還有當年聞笛淚、酒東

時候草綠花、斜陽外、遠水溶。渾似阿蓮雙枕畔、畫屏

○○●  △○△ ●○○ ○●△○△●● ●○△

○●●●○○ ○○●  ●●△△ △●○△○△●  ●△△

 

 

蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。

早春の浮水草の葉はやわらかく育ち、池に映る杏の花に明るく日差しが照る、絵塗りの船は軽やかに浮ぶ。

蘋葉軟 浮草が育ち始めて淡い色でやわらかい葉をつききって舟が進む。。この三句は待ち遠しかった春に舟遊びをする池のようすをいう。

杏花明 池の岸にあんずの花に日が射していて花が際立って奇麗な様子。杏の花は科挙の合格発表=合格者=無礼講、曲江の池を連想させる。

畫舡輕 絵塗りの船での遊びは江南で始まり広がったもの。

 

雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。

澄んだ水の渚に出ているのは二つ並んで水浴びをしている鴛鴦、そこに、船頭が歌う舟歌にあわせて合格者たちが船縁を叩きながら歌うので驚いている。

鴛鴦 オシドリ。

漁汀 水の清く澄んだ渚。

棹歌 船を漕ぐ櫂で船縁を叩きながら歌うこと。またその歌、舟歌。

 

春水無風無浪,春天半雨半晴。

春の淥水は風もなく波もたたず鏡のよう、春の空はかわりやすく小雨が降ったかと思うと今度はぱっと晴れる。

春水 雪解け水で増水した様子を云う。増水しても澄んでいるのが春水である。植物の成長に必要なミネラル分を多く含んでいる時期で、期待感を持たせる語である。

春天 春ののどかな空を云う。行楽時の天候が良いことを云うが、男心と春の空、行楽の時の浮気心を云う。

 

紅粉相隨南浦晚,幾含情。

及第者に若い宮女たちは連れ立って、暮れてきた南の入り江の船着き場の方に入っていく、そこで、どれだけの恋する情愛が生まれ、育つのだろう。

紅粉 紅と白粉。ここでは紅と白粉で化粧した女の意。

南浦 よく別離の岸辺などを意味することが多いが、ここは人目を避ける南側の岸辺の奥の方に行くことを言う。いわゆる「しけ込む」ことさす。

幾含情 この日のためにどれほどの女が、その男のことを思い続けていきていくことになるのだろうかという意味になる。一夫多妻制の時代の倫理観で見てもらいたい。

 

探花(たんか)は中国の科挙制度で殿試で、第3位の成績で進士に及第した者の名称。首席及第者の状元、第2位及第者の榜眼と併せて「三鼎甲」「三魁」などと呼ぶ。

当初首席及第者を状元、次席及第者・三位及第者を榜眼と称していた。

 

探花の名は、唐代に、進士及第した者を対象に皇帝から祝宴を賜り、その祝宴を探花宴と称した。この宴会で進士の最年少の者に、首都の庭園から牡丹を探して持ってこさせ、披露する役を命じ、あわせて宴会後進士一同が牡丹の出所の庭園を鑑賞するのを先導させた。この先導役を探花使あるいは探花郎と称したことに由来する。

北宋代末期に至って、次席及第者だけを榜眼とし、第3位及第者は探花と呼ばれるようになった。このころに、探花使が3位及第者に命じられるようになり、元では科挙が廃止され、末期に復活し、明以後、探花宴は催されず、探花の名のみ残った。

探花の名称は状元、榜眼と同様、正式名称ではなく慣習として呼ばれていた名称である。科挙合格者名を正式発表する立て札の金傍には「一甲第三名」と記載されている。状元、榜眼、探花はいずれも「進士及第」の称号を賜った。

10和凝 (改)《巻六27春光好二首其一》『花間集』278全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6662

和凝  春光好二首 其一   

暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

(うららかな春に、寵愛を受けた、あさが来ても起きるのが億劫になるほどの夜を過ごした。その時、西施のように飾ったし、窓からうかがってくれたからそんな春を過ごしたが、今、同じように寵愛を受ける準備をしているが、何事も起こらない、どうしたらいいのかわからない、希望をなくしてしまいそうだと妃賓気持ちを詠う。)

春の季節になって、沙羅絹を張った窓に日が当たり暖かくなる、絵の屏風の閨には静かにねむりからさめる。髪のみだれをはらってなおす。二度寝入りをして、寝牀から出られなくて、起き上がってみたが手足にまったく力が入らない。「春眠暁を覚えず」の真っただ中のころである。白く輝くようなその指でうす絹を見事に裁断する。金色のかざりのかがやく寝牀には姑蘇山の宮殿の西施のように、お迎えの飾りつけをしている。宋玉を隣の女がのぞき見した故事のように窓から覗いてくれる、そう深く心に思うが、なにごともおこらず、何もわからなくなってしまった。憂いで眉尻が湾曲している。

10和凝 (改)《巻六27春光好二首其一》『花間集』278全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6662

 

 
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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

和學士凝(和凝)二十首 和凝,字成績,五代詞人。曾官翰林學士知制誥等職。

 

 

1214春光好二首 其一

暖,畫屏閑,嚲雲鬟。

睡起四肢無力,半春間。

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。

窺宋深心無限事,小眉彎。

(うららかな春に、寵愛を受けた、あさが来ても起きるのが億劫になるほどの夜を過ごした。その時、西施のように飾ったし、窓からうかがってくれたからそんな春を過ごしたが、今、同じように寵愛を受ける準備をしているが、何事も起こらない、どうしたらいいのかわからない、希望をなくしてしまいそうだと妃賓気持ちを詠う。)

春の季節になって、沙羅絹を張った窓に日が当たり暖かくなる、絵の屏風の閨には静かにねむりからさめる。髪のみだれをはらってなおす。

二度寝入りをして、寝牀から出られなくて、起き上がってみたが手足にまったく力が入らない。「春眠暁を覚えず」の真っただ中のころである。

白く輝くようなその指でうす絹を見事に裁断する。金色のかざりのかがやく寝牀には姑蘇山の宮殿の西施のように、お迎えの飾りつけをしている。

宋玉を隣の女がのぞき見した故事のように窓から覗いてくれる、そう深く心に思うが、なにごともおこらず、何もわからなくなってしまった。憂いで眉尻が湾曲している。

(春光好二首 其の一)

 暖か,畫屏 閑かなり,雲鬟を嚲【なお】す。

睡起するも四肢 無力,春間を半にす。

玉指 剪裁 羅勝り,金盤 蘇山を點綴【てんてい】す。

宋を窺い 心を深くし 事を限る無し,小眉の彎。

 

其二

蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。

雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。

春水無風無浪,春天半雨半晴。

紅粉相隨南浦晚,幾含情。

 

 

『春光好二首』 現代語訳と訳註

(本文)

春光好二首 其一

暖,畫屏閑,嚲雲鬟。

睡起四肢無力,半春間。

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。

窺宋深心無限事,小眉彎。

 

(下し文)

(春光好二首 其の一)

 暖か,畫屏 閑かなり,雲鬟を嚲【なお】す。

睡起するも四肢 無力,春間を半にす。

玉指 剪裁 羅勝り,金盤 蘇山を點綴【てんてい】す。

宋を窺い 心を深くし 事を限る無し,小眉の彎。

 

(現代語訳)

(うららかな春に、寵愛を受けた、あさが来ても起きるのが億劫になるほどの夜を過ごした。その時、西施のように飾ったし、窓からうかがってくれたからそんな春を過ごしたが、今、同じように寵愛を受ける準備をしているが、何事も起こらない、どうしたらいいのかわからない、希望をなくしてしまいそうだと妃賓気持ちを詠う。)

春の季節になって、沙羅絹を張った窓に日が当たり暖かくなる、絵の屏風の閨には静かにねむりからさめる。髪のみだれをはらってなおす。

二度寝入りをして、寝牀から出られなくて、起き上がってみたが手足にまったく力が入らない。「春眠暁を覚えず」の真っただ中のころである。

白く輝くようなその指でうす絹を見事に裁断する。金色のかざりのかがやく寝牀には姑蘇山の宮殿の西施のように、お迎えの飾りつけをしている。

宋玉を隣の女がのぞき見した故事のように窓から覗いてくれる、そう深く心に思うが、なにごともおこらず、何もわからなくなってしまった。憂いで眉尻が湾曲している。

 

 (訳注)

春光好二首其一

(うららかな春に、寵愛を受けた、あさが来ても起きるのが億劫になるほどの夜を過ごした。その時、西施のように飾ったし、窓からうかがってくれたからそんな春を過ごしたが、今、同じように寵愛を受ける準備をしているが、何事も起こらない、どうしたらいいのかわからない、希望をなくしてしまいそうだと妃賓気持ちを詠う。)

和凝(898955)、字を成績と言い、鄆州の須昌(今の山東省東平の西北)の人。彼は幼い時から聡明で、早くから書物を学び、一読すれば常に大義に通じた。梁の義成軍節度使賀瓌に招かれて従事となったが、賀瓌が唐の荘宗との戦いに敗れると、彼一人が賀瓌に従った。賀瓌は和凝に対して、自分に従うのをやめて己の道を求めるように勧めたが、和凝は「男子たるもの、人の知遇を得ながら危難の際に恩に報いないのは、本意ではない」と言い、行動をともにし、追っ手を射倒して、賀瓌の命を救った。そこで、賀瓌は自分の娘を和凝に娶らせ、「和凝は将来重位に就くであろぅから、謹んで仕えるように」と子供らに諭した。そのために、和凝の名は一時に轟いた。彼は、梁、唐、晋、漢、周の五朝に仕え、多くの後進を導いたので、人々から広く慕われたと言う。和凝は若い時に好んで艶詞を作ったが、晋の宰相になると詞を回収して焼き捨てさせた。しかし、艶詞のために名を汚すことになり、契丹は晋に入朝すると、彼を曲子相公と呼んだと言う。和凝の詞は二十七首が伝わり、『花間集』 には二十首の詞が収められている。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。

 

唐の教坊の曲名。またの名を愁倚欄、愁倚欄令、倚欄令と言う。『花間集』には和凝の二首のみ所収。

春光好二首 其一双調四十一字、前段十九字、五句三平韻、後段二十二字四句二平韻で、3③③6③/6⑥7③の詞形をとる。

暖,畫屏,嚲雲睡起四肢無力,半春

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇。窺宋深心無限事,小眉

○?●  ●△○ ●○○ ●●●○○● ●○△

●●●△○△ ○○●●○○ ○●△○○●● ●○○

春光好二首其二は双調四十一字、前段十九字、五句三平韻、後段二十二字四句二平韻で、3③③6③/6⑥7③の詞形をとる。

蘋葉軟,杏花,畫舡。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌

春水無風無浪,春天半雨半。紅粉相隨南浦晚,幾含

○●●  ●○○ ●○△  ○●○○●●△ ●○○

○●○△○△ ○○●●●○  ○●△○○●● △○○

 

作者:晏幾道 北宋

《愁倚欄令》双調四十二字、前段十九字、五句三平韻、後段二十三字四句三平韻で、3③③6③/6⑥7③の詞形をとる。

憑江閣、看煙、恨春。還有當年聞笛淚、酒東

時候草綠花、斜陽外、遠水溶。渾似阿蓮雙枕畔、畫屏

○○●  △○△ ●○○ ○●△○△●● ●○△

○●●●○○ ○○●  ●●△△ △●○△○△●  ●△△

 

暖,畫屏閑,嚲雲鬟

春の季節になって、沙羅絹を張った窓に日が当たり暖かくなる、絵の屏風の閨には静かにねむりからさめる。髪のみだれをはらってなおす。

 春の季節になって、沙羅絹を張った窓に日が当たり暖かくなるこという。夜明け近くまで情交を重ねたことを暗示する。

畫屏閑 寝床には帳を張り、その周りに屏風を立てて、ベッド空間とするので、日が差し始めてやっと目が覚めると、辺りは静けさに包まれている。

嚲雲鬟 美しく結った髪のみだれをはらってなおすこと。雲鬟【うんかん】 〔「鬟」はまげの意〕. 美しく結った髪。撣:(はたきなどでちり・ほこりを)はたく,払う.ほこりをはたく.

 

睡起四肢無力,半春間。

二度寝入りをして、寝牀から出られなくて、起き上がってみたが手足にまったく力が入らない。「春眠暁を覚えず」の真っただ中のころである。

睡起 二度寝入りをして、起きづらい様子を言う。

半春間 春、真っただ中のころをいう。

 

玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。

白く輝くようなその指でうす絹を見事に裁断する。金色のかざりのかがやく寝牀には姑蘇山の宮殿の西施のように、お迎えの飾りつけをしている。

剪裁 1 布・紙などを裁ち切ること。また、花を摘み切ること。2 文章に手を入れること。文章を練ること。

羅勝 うすぎぬをことごとく。・勝:たえる。ことごとく。のこらず。かつ。さかんに。まさる。すぐれる。

金盤 ・盤:1 大きな平たい器。大きな皿。「盤台/水盤・銅盤・杯盤」2 皿状のもの。「円盤・音盤・胎盤・羅針盤」3 大きな平たい岩。「岩盤・落盤」4 支えとなる堅い土台、寝牀。高貴なもののベッドは、檀、盤の上に設置される。

點綴 飾り付ける; 付き合いとしてする.

蘇山 蘇台 姑蘇台をさす。紀元前5世紀、呉の国王夫差の宮殿があった。江蘇省蘇州市の西・姑蘇山山頂にある。西施八景はどこに作られたかというと姑蘇に姑蘇台、香水渓、百花洲があり、郊外の霊岩山に西施洞、玩花池、採香径、碧泉井、館娃宮があったことになる。伝承によれば姑蘇台は今の蘇州市中ではなく、蘇州の西南郊外にあった。

(ここでいう山は女性が横たわっている姿を云うもので蘇生された女という意味をあんじさせる。)

 

窺宋深心無限事,小眉彎。

宋玉を隣の女がのぞき見した故事のように窓から覗いてくれる、そう深く心に思うが、なにごともおこらず、何もわからなくなってしまった。憂いで眉尻が湾曲している。

窺宋 美男子であるおとこを、隣の女がのぞき見した故事にもとづくもの。・宋玉 戦国の末、紀元前三世紀ごろの楚の国の詩人。美男子で、隣の女がのぞき見したという。わたしはやはり宋玉のような、美しいお方でりっはな詩人のかたを好きになってこの身をささげたいとおもいます。

魚玄機『贈鄰女』「羞日遮羅袖、愁春懶起粧。易求無價宝、難得有心郎。枕上潜垂涙、花間暗断腸。自能窺宋玉、何必恨王昌。」(日を羞じて羅袖【らしゅう】を遮り、春を愁いて 起きて粧するに懶【う】し。無價【むか】の宝を求むることは易すきも、有心の郎を得ることは難し。枕の上に潜【ひそ】かに涙を垂れ、花の間に暗して腸を。断る自ら能く宋玉を窺い、何ぞ必ず王昌を恨まん。

10和凝 (改)《巻六26天仙子二首其二》『花間集』277全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6657

和凝  天仙子二首其二

洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

(初夜の時の心配はすぐに現実のものとなってしまった。平日しなければいけないこともする気にならない。恋い慕う阮郎はもう帰って来ない、曲水の宴で願掛けて桃の花を流すけれど、寵愛を受けることはなかった)

初夜を迎え、洞房の入口から寝牀に至るまで赤い花を飾り、そこに赤い花びらを飛ばし振りまいてさらさら散っている。この仙郷の閨に仙女である妃嬪は翠の眉を愁いに曇らせる。恋い慕う阮郎はなにごとだろう、帰って来ない。思うことは阮郎のことばかり、香もたかず、飾ることもせず、玉を刻むのも、なにをするのも億劫になる。曲水の宴で桃の花を願いを込めて流水に浮べるけれど、願い空しく途切れ途切れに流れてゆくだけ。

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天仙子二首 其一

(春のころあれほど熱く愛してくれていたのに、今度は春が来てもちょうあいをうけることはない、、桃の花一輪のような妃嬪は、「今宵は、どなたと過ごされるのか」と、それだけを思うようになって愁えて過ごすようになったと詠う。)

柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。

柳も緑こくなって繁れば、その陰に着物のように隠れ、それは金紫の鳳凰の上服のようである、そしてかぼそい手の軽くそろえて愛撫し、軽くたたいて胸を愛撫する。翠濃い柳葉の眉、眉間に二筋の皺を寄せて、まさにもっと寵愛を受けたいと思い続ける。

桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

妃嬪の寝所の前の桃の花は咲き乱れて、玉で飾った美しい御殿での寵愛を受けたこともいまはただの夢、この桃の花びら一片のような妃嬪の春心の愁いは、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」と心配なのだ。

(天仙子二首 其の一)

柳色 衫を披い 金縷の鳳たり,纖手 輕拈 紅豆弄し,翠蛾 雙斂 正に情を含む。

桃花の洞,瑤臺の夢,一片の春愁は「誰をか共に與とせんか。」。

 

天仙子二首 其二

(初夜の時の心配はすぐに現実のものとなってしまった。平日しなければいけないこともする気にならない。恋い慕う阮郎はもう帰って来ない、曲水の宴で願掛けて桃の花を流すけれど、寵愛を受けることはなかった)

洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。

初夜を迎え、洞房の入口から寝牀に至るまで赤い花を飾り、そこに赤い花びらを飛ばし振りまいてさらさら散っている。この仙郷の閨に仙女である妃嬪は翠の眉を愁いに曇らせる。

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。

恋い慕う阮郎はなにごとだろう、帰って来ない。思うことは阮郎のことばかり、香もたかず、飾ることもせず、玉を刻むのも、なにをするのも億劫になる。

流水桃花空斷續。

曲水の宴で桃の花を願いを込めて流水に浮べるけれど、願い空しく途切れ途切れに流れてゆくだけ。

天仙子二首 其の二

洞の口 春の紅 飛びて蔌蔌【そくそく】たり、仙子 愁いを含みて 眉黛 緑なり。

阮郎 何事ぞ 帰り来たらざる、金を焼くも懶【ものう】く、玉を纂むも慵【ものう】く。

桃花を水に流し 空しく断続す。

 

『天仙子二首』 現代語訳と訳註

 (本文)

天仙子二首其二

洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。

流水桃花空斷續。

 

(下し文)

(天仙子二首 其の二)

洞の口 春の紅 飛びて蔌蔌【そくそく】たり、仙子 愁いを含みて 眉黛 緑なり。

阮郎 何事ぞ 帰り来たらざる、金を焼くも懶【ものう】く、玉を纂むも慵【ものう】く。

桃花を水に流し 空しく断続す。

 

(現代語訳)

(初夜の時の心配はすぐに現実のものとなってしまった。平日しなければいけないこともする気にならない。恋い慕う阮郎はもう帰って来ない、曲水の宴で願掛けて桃の花を流すけれど、寵愛を受けることはなかった)

初夜を迎え、洞房の入口から寝牀に至るまで赤い花を飾り、そこに赤い花びらを飛ばし振りまいてさらさら散っている。この仙郷の閨に仙女である妃嬪は翠の眉を愁いに曇らせる。

恋い慕う阮郎はなにごとだろう、帰って来ない。思うことは阮郎のことばかり、香もたかず、飾ることもせず、玉を刻むのも、なにをするのも億劫になる。

曲水の宴で桃の花を願いを込めて流水に浮べるけれど、願い空しく途切れ途切れに流れてゆくだけ。

 

(訳注)

天仙子二其二

(仙女といわれる女性を詠う。)

○天仙子(仙郷と表現される、皇城、仙女とされる、后妃、妃嬪、宮女たち、道教の女祠、寺の尼などと満たされない女性のつらさ、くるしさ、悲しみを詠う。)

 

【解説】 天台山の仙女が去ったきり帰らぬ阮郎を偲んだ詞。本作は仙女を借りて後宮の人間模様を詠っている。最も幸せであろう女性と、最も人間の尊厳を軽視された女性とが同時に存在する宮中、詩の材料はいくらでもある。

『花間集』には和擬の作が二首収められている。天仙子二首其一は、単調三十四字、六句二平韻、四仄韻で、❼❼⑦❸❸⑦の詞形をとる。

天仙子二首 其一

柳色披衫金縷,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含

桃花,瑤臺,一片春愁誰與

●●△○○●●  ○●△○○●● ●△○●△○○

○○△ ○○△  ●●○○○△△

天仙子二首其二は、単調三十四字、六句四仄韻で、❼❼73❸❼の詞形をとる。

洞口春紅飛蔌,仙子含愁眉黛

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆

流水桃花空斷

△●○○○●●  ○●○○○●●

△○△●△○△  ●△○

○●●  ○●○○△●●

 

皇甫松の「天仙子」作は二首収められている。単調三十四字、六句五仄韻で、❼❼7❸❸❼の形をとる。

晴野鷺鷥飛一  花發秋江
劉郎此日別天仙  登綺
淚珠  十二晚峯高歷

  
  
  

 

 

皇甫松

巻二17天仙子二首其一 晴野鷺鷥飛一隻,水花發秋江碧。劉郎此日別天仙,登綺席,淚珠滴,十二晚峯高歷歷。

皇甫松

巻二18天仙子二首其二 躑躅花開紅照水,鷓鴣飛遶青山觜。行人經始歸來,千萬里,錯相倚,懊惱天仙應有以。

韋莊

巻三08天仙子五首其一 悵望前回夢裏期,看花不語苦尋思。露桃花裏小腰肢,眉眼細,鬢雲垂,唯有多情宋玉知。

韋莊

巻三09天仙子五首其二 深夜歸來長酩酊,扶入流蘇猶未醒。醺醺酒氣麝蘭和,驚睡覺,笑呵呵,長道人生能幾何。

韋莊

巻三10天仙子五首其三 蟾彩霜華夜不分,天外鴻聲枕上聞,繡衾香冷嬾重熏。人寂寂,葉紛紛,才睡依前夢見君。

韋莊

巻三11天仙子五首其四 夢覺雲屏依舊空,杜鵑聲咽隔簾櫳,玉郎薄倖去無蹤。一日日,恨重重,淚界蓮腮兩線紅。

韋莊

巻三12天仙子五首其五 金似衣裳玉似身,眼如秋水鬢如雲,霞裙月帔一羣羣。來洞口,望煙分,劉阮不歸春日曛。

和凝

巻六25天仙子二首其一 柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

和凝

巻六26天仙子二首其二 洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

皇甫松、韋荘の詩、天仙子参照。

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-67-2皇甫松1《巻2-17 天仙子二首其一》皇甫松12首巻二17-〈67〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5537

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-68-2皇甫松2《巻2-18 天仙子二首其二》皇甫松12首巻二18-〈68〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5542

 

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-30韋荘108《巻3-08 天仙子五首 其一》三巻8-〈108〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5742

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-31韋荘109《巻3-09 天仙子五首 其二》三巻9-〈109〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5747

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-32韋荘110《巻3-10 天仙子五首 其三》三巻10-〈110〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5752

花間集』全詩訳注解説(改訂版)-33韋荘111《巻3-11 天仙子五首 其四》三巻11-〈111〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5757

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-34韋荘112《巻3-12 天仙子五首 其五》三巻12-〈112〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5762

 

 

 

洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。

初夜を迎え、洞房の入口から寝牀に至るまで赤い花を飾り、そこに赤い花びらを飛ばし振りまいてさらさら散っている。この仙郷の閨に仙女である妃嬪は翠の眉を愁いに曇らせる。

洞口春紅 春の紅い花。ここでは桃の花。新婚初夜の閨の洞口に赤い花を飾る、花でいっぱいになる飾り物もすべて赤い色のもの。①洞穴の入り口。聖女祠・道妓女/仙女の住む所、ヤオトンである場合が多かった、房、室という場合もある。同時に妓楼の意も含む。②洞庭湖の入り口。③御殿寝所の内側の丸い穴のような間仕切り。

歐陽炯『南子八首 其四』

洞口誰家,木蘭舡繫木蘭花。

紅袖女郎相引去,游南浦,笑倚春風相對語。

聖女祠の所に来たけれどこの洞口は誰が住んでいる家なのか、ここまでの水路の岸辺に木蘭がつづき、舟を繋いで進むと木蘭の花のように私だけを見てくれているように迎い入れてくれる。紅い木蘭の花の中に紅い袖の女祠を携えて此処を去る。ここ南の港町で遊んだ時の事。微笑み合い、倚りそいあう、情を交わす時節になる春かぜが抜け、互いに見交わして語り合う。

蔌蔌 【そくそく】 . 木の葉などががさがさと音を立てるさま。 . 涙がはらはらと落ちるさま。

 

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。

恋い慕う阮郎はなにごとだろう、帰って来ない。思うことは阮郎のことばかり、香もたかず、飾ることもせず、玉を刻むのも、なにをするのも億劫になる。

阮郎何事不歸來 後漢の劉郎、阮肇の故事を踏まえる。

皇甫松『天仙子二首其一』

晴野鷺鷥飛一隻,水花發秋江碧。

劉郎此日別天仙,登綺席,

淚珠滴,十二晚峯高歷歷。

天仙子二首其一 皇甫松 ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-375-6-#67  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3422

劉郎此日別天仙,登綺席,

ここに來ると皆、劉郎となってこの日、仙女と別れるのだ。それは送別の宴に着くところからだ。

劉郎 別れ去る愛しい男。仙桃を味わった浦島太郎のような人物である劉晨=劉郎である夢心地の状態にある男、何年も訪れてくれなくなっているのでこのようにいう。12年もたっていることと、全く景色が変わって、ここにいる女を含めみんなが全く変わっていたというものだ。 

劉禹錫『再遊玄都觀』

百畝庭中半是苔,桃花淨盡菜花開。

種桃道士今何歸,前度劉郞今又來。

再遊玄都觀 本文 劉禹錫 薛濤関連 唐五代詞・宋詩 薛濤-239--#95 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2742

白居易『贈薛濤』

蛾眉山勢接雲霓,欲逐劉郎北路迷。

若似剡中容易到,春風猶隔武陵溪。

贈薛濤 白居易 全唐詩 巻462  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-131--#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2202

牛嶠『女冠子 其三』

星冠霞帔,住在蘂珠宮裏。佩叮

明翠搖蟬翼,纖珪理宿粧。

醮壇春艸綠,藥院杏花香。

青鳥傳心事,寄劉郎

女冠子四首 其三 牛嶠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-316-5-#57-7  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3127

牛嶠『夢江南二首 其二』

紅繡被,兩兩間鴛鴦。

不是鳥中偏愛爾,為緣交頸睡南塘,全勝薄情郎

夢江南二首 其一 牛嶠【ぎゅうきょう】 ⅩⅫ唐五代詞、「花間集」 Gs-319-6-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3142 

阮郎 別れ去って久しく帰らぬ愛しい男。後漢の劉展、阮肇は天台山に薬草を採りに入り、道に迷って仙女に出合い、しばらくともに暮らした。しかし家のことが思い起こされ、帰ってみると、既に数世が過ぎ、見知った人は誰もいなかった。そこで再び山に尋ね入ったが、仙女を探し当てられなかったと言う。以来、阮郎、劉部は、別れ去る男や別れ去って久しく帰らぬ愛しい男を指すようになった。・檀郎/安仁/潘郎 晋の潘岳のあざな。彼は美男子であり、詩人であったが、妻の死にあい「悼亡」の詩三首を作った。後世、妻の死をなげいた模擬作が多く作られた。潘岳の幼名が檀奴だったので、「檀郎」は夫や恋い慕う男を意味する。・潘岳:安仁。滎陽(けいよう)中牟(河南省)の人。陸機と並ぶ美文の文学の大家で,錦を敷きのべたような絢爛(けんらん)たる趣をたたえられた。ことに人の死を悼む哀傷の詩文を得意とし,亡妻への尽きぬ思いをうたった〈悼亡詩(とうぼうし)〉3首はよく知られる。絶世の美男として,また権門の間を巧みに泳ぎまわる軽薄才子として,とかく話題にこと欠かなかった。八王の乱の渦中で悲劇的な刑死を遂げた。

温庭筠 『思帝郷』

花花、満枝紅似霞。

羅袖画簾腸断、阜香車。

廻面共入閑語、戦箆金鳳斜。

唯有阮郎春尽、不帰家。

思帝郷 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-303-5-#57  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3062

牛嶠『夢江南二首其二』

紅繡被,兩兩間鴛鴦。

不是鳥中偏愛爾,為緣交頸睡南塘,全勝薄情郎

江南二首 其一 牛嶠【ぎゅうきょう】 ⅩⅫ唐五代詞、「花間集」 Gs-319-6-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3142

天仙 天台山の仙女。ここでは道教の寺の尼を指す。

登綺席 素晴らしい酒席に着く。ここでは別離の宴の席に着くこと。

懶燒金,慵篆玉 不老長生の仙薬を作るのに気乗りしない。懶と慵は、億劫、面倒である、の意。焼金は錬金に同じ。篆玉は玉を煉るためにまず土・石を刻んで粉末にすること。なお、焼金、篆玉の語を、金や玉の香炉で香を薫く、あるいは、道家が丹を煉ったり金丹、符を書く、と解する説もある。

 

流水桃花空斷續。

曲水の宴で桃の花を願いを込めて流水に浮べるけれど、願い空しく途切れ途切れに流れてゆくだけ。

桃花 可愛らしい女性、若々しい女性。

流水桃花:艶姚な美しい女性が次第に薄れていくという意味になる。

古い時代から上巳に水辺で禊を行う風習があり、それが33日に禊とともに盃を水に流して宴を行うようになったとされる。 中国古代、周公の時代に始まったとも秦の昭襄王の時代に始まったとも伝えられている。永和9年(353年)33日、書聖と称された王羲之が曲水の宴を催したが、その際に詠じられた漢詩集の序文草稿が王羲之の書『蘭亭序』である。

 

 

洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。

流水桃花空斷續。

10和凝 (改)《巻六25天仙子二首其一》『花間集』276全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6652

和凝  天仙子二首 其一

柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

(春のころあれほど熱く愛してくれていたのに、今度は春が来てもちょうあいをうけることはない、、桃の花一輪のような妃嬪は、「今宵は、どなたと過ごされるのか」と、それだけを思うようになって愁えて過ごすようになったと詠う。)

柳も緑こくなって繁れば、その陰に着物のように隠れ、それは金紫の鳳凰の上服のようである、そしてかぼそい手の軽くそろえて愛撫し、軽くたたいて胸を愛撫する。翠濃い柳葉の眉、眉間に二筋の皺を寄せて、まさにもっと寵愛を受けたいと思い続ける。妃嬪の寝所の前の桃の花は咲き乱れて、玉で飾った美しい御殿での寵愛を受けたこともいまはただの夢、この桃の花びら一片のような妃嬪の春心の愁いは、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」と心配なのだ。

10和凝 (改)《巻六25天仙子二首其一》『花間集』276全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6652

 

 
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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

 

天仙子二首 其一

柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。

桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

(春のころあれほど熱く愛してくれていたのに、今度は春が来てもちょうあいをうけることはない、、桃の花一輪のような妃嬪は、「今宵は、どなたと過ごされるのか」と、それだけを思うようになって愁えて過ごすようになったと詠う。)

柳も緑こくなって繁れば、その陰に着物のように隠れ、それは金紫の鳳凰の上服のようである、そしてかぼそい手の軽くそろえて愛撫し、軽くたたいて胸を愛撫する。翠濃い柳葉の眉、眉間に二筋の皺を寄せて、まさにもっと寵愛を受けたいと思い続ける。

妃嬪の寝所の前の桃の花は咲き乱れて、玉で飾った美しい御殿での寵愛を受けたこともいまはただの夢、この桃の花びら一片のような妃嬪の春心の愁いは、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」と心配なのだ。

(天仙子二首 其の一)

柳色 衫を披い 金縷の鳳たり,纖手 輕拈 紅豆弄し,翠蛾 雙斂 正に情を含む。

桃花の洞,瑤臺の夢,一片の春愁は「誰をか共に與とせんか。」。

天仙子二首 其二

洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。

流水桃花空斷續。

(仙女のいる洞の入口恋い慕う阮郎はもう帰って来ない、待ち続けて女の盛りを過ぎてしまった)

仙女(聖女祠)のいる洞の入口には春の紅い花がちらほらと散り春の盛りを終えようと報せる、仙女は愁いに翠の眉を曇らせる。

恋い慕う阮郎はもう帰って来ないのだろうか。思うことは阮郎のことばかり、金丹を煉るにも心弾まず、玉を刻むのも億劫なのだ。

この春も阮郎がこないまま過ぎ去るのか、桃の花びらも川水に浮かび空しく途切れ途切れに流れてゆく。

 

洞の口 春の紅 飛びて蔌蔌【そくそく】たり、仙子 愁いを含みて 眉黛 緑なり。

阮郎 何事ぞ 帰り来たらざる、金を焼くも懶【ものう】く、玉を纂むも慵【ものう】く。

桃花を水に流し 空しく断続す。

 

 

『天仙子二首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

天仙子二首 其一

柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。

桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

 

(下し文)

(天仙子二首 其の一)

柳色 衫を披い 金縷の鳳たり,纖手 輕拈 紅豆弄し,翠蛾 雙斂 正に情を含む。

桃花の洞,瑤臺の夢,一片の春愁は「誰をか共に與とせんか。」。

 

(現代語訳)

(春のころあれほど熱く愛してくれていたのに、今度は春が来てもちょうあいをうけることはない、、桃の花一輪のような妃嬪は、「今宵は、どなたと過ごされるのか」と、それだけを思うようになって愁えて過ごすようになったと詠う。)

柳も緑こくなって繁れば、その陰に着物のように隠れ、それは金紫の鳳凰の上服のようである、そしてかぼそい手の軽くそろえて愛撫し、軽くたたいて胸を愛撫する。翠濃い柳葉の眉、眉間に二筋の皺を寄せて、まさにもっと寵愛を受けたいと思い続ける。

妃嬪の寝所の前の桃の花は咲き乱れて、玉で飾った美しい御殿での寵愛を受けたこともいまはただの夢、この桃の花びら一片のような妃嬪の春心の愁いは、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」と心配なのだ。

 

(訳注)

妃嬪の寝所の前の桃の花は咲き乱れて、玉で飾った美しい御殿での寵愛を受けたこともいまはただの夢、この桃の花びら一片のような妃嬪の春心の愁いは、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」と心配なのだ。

『花間集』には和擬の作が二首収められている。天仙子二首其一は、単調三十四字、六句二平韻、四仄韻で、❼❼⑦❸❸⑦の詞形をとる。

天仙子二首 其一

柳色披衫金縷,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含

桃花,瑤臺,一片春愁誰與

●●△○○●●  ○●△○○●● ●△○●△○○

○○△ ○○△  ●●○○○△△

天仙子二首其二は、単調三十四字、六句四仄韻で、❼❼73❸❼の詞形をとる。

洞口春紅飛蔌,仙子含愁眉黛

阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆

流水桃花空斷

△●○○○●●  ○●○○○●●

△○△●△○△  ●△○

○●●  ○●○○△●●

 

皇甫松の「天仙子」作は二首収められている。単調三十四字、六句五仄韻で、❼❼7❸❸❼の形をとる。

晴野鷺鷥飛一  花發秋江
劉郎此日別天仙  登綺
淚珠  十二晚峯高歷

  
  
  

 

 

皇甫松

巻二17天仙子二首其一 晴野鷺鷥飛一隻,水花發秋江碧。劉郎此日別天仙,登綺席,淚珠滴,十二晚峯高歷歷。

皇甫松

巻二18天仙子二首其二 躑躅花開紅照水,鷓鴣飛遶青山觜。行人經始歸來,千萬里,錯相倚,懊惱天仙應有以。

韋莊

巻三08天仙子五首其一 悵望前回夢裏期,看花不語苦尋思。露桃花裏小腰肢,眉眼細,鬢雲垂,唯有多情宋玉知。

韋莊

巻三09天仙子五首其二 深夜歸來長酩酊,扶入流蘇猶未醒。醺醺酒氣麝蘭和,驚睡覺,笑呵呵,長道人生能幾何。

韋莊

巻三10天仙子五首其三 蟾彩霜華夜不分,天外鴻聲枕上聞,繡衾香冷嬾重熏。人寂寂,葉紛紛,才睡依前夢見君。

韋莊

巻三11天仙子五首其四 夢覺雲屏依舊空,杜鵑聲咽隔簾櫳,玉郎薄倖去無蹤。一日日,恨重重,淚界蓮腮兩線紅。

韋莊

巻三12天仙子五首其五 金似衣裳玉似身,眼如秋水鬢如雲,霞裙月帔一羣羣。來洞口,望煙分,劉阮不歸春日曛。

和凝

巻六25天仙子二首其一 柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

和凝

巻六26天仙子二首其二 洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

皇甫松、韋荘の詩、天仙子参照。

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-67-2皇甫松1《巻2-17 天仙子二首其一》皇甫松12首巻二17-〈67〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5537

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-68-2皇甫松2《巻2-18 天仙子二首其二》皇甫松12首巻二18-〈68〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5542

 

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-30韋荘108《巻3-08 天仙子五首 其一》三巻8-〈108〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5742

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-31韋荘109《巻3-09 天仙子五首 其二》三巻9-〈109〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5747

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花間集』全詩訳注解説(改訂版)-33韋荘111《巻3-11 仙子五首 其四》三巻11-〈111〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5757

『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-34韋荘112《巻3-12 天仙子五首 其五》三巻12-〈112〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5762

 

 

 

柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。

柳も緑こくなって繁れば、その陰に着物のように隠れ、それは金紫の鳳凰の上服のようである、そしてかぼそい手の軽くそろえて愛撫し、軽くたたいて胸を愛撫する。翠濃い柳葉の眉、眉間に二筋の皺を寄せて、まさにもっと寵愛を受けたいと思い続ける。

柳色 柳が芽吹き、茂ることは春の盛りを云う。柳は男性自身のことであり、おとこの浮気心をさすもの。

披衫 単衣の上衣に柳の枝に覆われて隠れる。

金縷鳳 黄金の糸で刺繍された鳳凰。

纖手 か細い容姿で繊細な手。

輕拈 かるくひねる。

紅豆弄 あずきをもてあそぶ。女の乳首をもてあそぶ。

翠蛾 柳の眉の美しい女。

雙斂 眉間にしわを寄せる。

正含情 このまま会えずに、この春が過ぎていきそうなので愁いに沈んでいる様子。

 

桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

妃嬪の寝所の前の桃の花は咲き乱れて、玉で飾った美しい御殿での寵愛を受けたこともいまはただの夢、この桃の花びら一片のような妃嬪の春心の愁いは、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」と心配なのだ。

桃花洞 仙女(聖女祠)のいる洞の入口には春の桃の紅い花。妃嬪の寝所の前の桃の花。

瑤臺夢 政治をつかさどるところ。瑤台 李白「古朗月行」「清平調詞其一」につかう。崑崙山にある神仙の居所。『拾遺記』に「崑崙山……傍らに瑤台十二有り、各おの広さ千歩。皆な五色の玉もて台の基と為す」というように十二層の楼台。十二は道教の聖数に由来する。ここでは李白、謝朓の「玉階怨」のイメージを重ねているように見える。『楚辞·離騒』第十一段「望瑶臺之偃蹇兮,有娥之佚女。」(瑤台の偃蹇たるを望み、有娀の佚女を見る。)

一片 花の一片。女妓のこと。

春愁 春になれば来てくれるだろうかと愁うこと。

誰與共 此の夜を誰と共に過ごすのだろう。妃嬪は寵愛を受けるための準備は、毎日欠かさずしなくてはいけない、それでも、寵愛がない、だから、「此の夜を誰と共に過ごすのだろう」ということでむなしさ、閨怨を表しているが、時間とともにその気持ちを失ってゆくのは。柳の茂、桃の花によってやがて枯れ落ちることで表現している。

10和凝 (改)《巻六24望梅花一首  》『花間集』275全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6647

和凝  望梅花   

春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

(春が来ることは若賓に年齢を重ねていくのみ、香草もすぐ枯れ凋み、その上に足跡残してゆく、古楽府の題名を受け継ぎ、梅花が落ち、香草が枯れ、あしあともきえ、笛の音も消えてゆくと悲哀を詠う。)

春になって芳草が生い茂っていたがいつしか全部萎れ、枯れたのも消えていくと、12月も暮れて雪が積もり根雪として残り、進んだ足跡もそこに残る。秦嶺山脈を越えると落葉して寒々とした枝には新たな息吹がその枝から出ていて、手折ってみると萌えの香りがしてくる。冷ややかな色気というのはその中に秘めているもので、とてもすてきな香は我慢するに堪えない。なにごとが起こったのだろう、あれほど寵愛を受けていたお方が、洛陽の上陽宮のどこにいるのであろうか、ただ、今、どこからか、耳に聞こえてきたのは、梅の花はどんなに妖艶に咲いても直に落花すると歌われてきた「横笛曲」にある「梅花落」の曲である。

10和凝 (改)《巻六24望梅花一首  》『花間集』275全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6647

(梅花を望む)

 
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10和凝 (改)《巻六23薄命女一首  》『花間集』274全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6642

 

和凝  薄命女一首   

天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

(妃嬪としての夢も断たれて、誰も訪ねてこない閨で、眠れない夜を過ごす毎日、それでも、妃嬪としての矜持は、寵愛を受ける準備だけはしておかなければと鏡に向かうのであると詠う。)

朝まだ期の空が白んで、暁になろうとしている。後宮の漏刻の聲が、寝殿庭の花の間を通り抜け、耳にまとわりつくように聞こえてくる。天窓から見える星のきらめきは暁にけされて次第に少なくなる、冷たい朝霧の寒気が戸張と窓額に張った絹布を抜けて閨に浸透してくる。名残月は、樹梢の向こうに沈んで、月影も消えてしまう。いまは、妃嬪としての夢も断たれてしまうし、ただひとり、錦のとばりの内に、悄悄と落ち込んでひっそりとしているが、こんなことではいけないと、思い切って起きて、朝化粧をしようと鏡を見ると愁眉はふかまり、ちいさくなっている。

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薄命女一首

(妃嬪としての夢も断たれて、誰も訪ねてこない閨で、眠れない夜を過ごす毎日、それでも、妃嬪としての矜持は、寵愛を受ける準備だけはしておかなければと鏡に向かうのであると詠う。)

天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。

朝まだ期の空が白んで、暁になろうとしている。後宮の漏刻の聲が、寝殿庭の花の間を通り抜け、耳にまとわりつくように聞こえてくる。

裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。

天窓から見える星のきらめきは暁にけされて次第に少なくなる、冷たい朝霧の寒気が戸張と窓額に張った絹布を抜けて閨に浸透してくる。名残月は、樹梢の向こうに沈んで、月影も消えてしまう。

夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

いまは、妃嬪としての夢も断たれてしまうし、ただひとり、錦のとばりの内に、悄悄と落ち込んでひっそりとしているが、こんなことではいけないと、思い切って起きて、朝化粧をしようと鏡を見ると愁眉はふかまり、ちいさくなっている。

 

 

『薄命女』 現代語訳と訳註

(本文)

薄命女

天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。

牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹。

夢斷空悄悄,強起愁眉小。

 

(下し文)

薄命女

天曉ならんと欲し,宮漏 花を穿つの聲 繚繞す。

牎裏 星光 少く,冷霞 寒侵す 帳の額,殘月 樹杪に光沉す。

夢斷 錦幃空く,強起して愁眉 小し。

天 暁ならんと欲し、宮漏 花を穿ちて 声 繚繞たり。

牎裏 星の光 少に、冷霞 寒くして 帳額を侵し、残月 光 樹杪に沈む。

夢は錦幃に断え 空しく悄悄たり、強いて起くれば 愁眉 小さし。

 

(現代語訳)

(妃嬪としての夢も断たれて、誰も訪ねてこない閨で、眠れない夜を過ごす毎日、それでも、妃嬪としての矜持は、寵愛を受ける準備だけはしておかなければと鏡に向かうのであると詠う。)

朝まだ期の空が白んで、暁になろうとしている。後宮の漏刻の聲が、寝殿庭の花の間を通り抜け、耳にまとわりつくように聞こえてくる。

天窓から見える星のきらめきは暁にけされて次第に少なくなる、冷たい朝霧の寒気が戸張と窓額に張った絹布を抜けて閨に浸透してくる。名残月は、樹梢の向こうに沈んで、月影も消えてしまう。

いまは、妃嬪としての夢も断たれてしまうし、ただひとり、錦のとばりの内に、悄悄と落ち込んでひっそりとしているが、こんなことではいけないと、思い切って起きて、朝化粧をしようと鏡を見ると愁眉はふかまり、ちいさくなっている。

 

(訳注)

薄命女

(妃嬪としての夢も断たれて、誰も訪ねてこない閨で、眠れない夜を過ごす毎日、それでも、妃嬪としての矜持は、寵愛を受ける準備だけはしておかなければと鏡に向かうのであると詠う。)

【解説】 夢途絶えた夜明け間近の女性の孤独な憂愁を詠う。唐より前にあった古曲『西河薄命女』としてしられていたもの。唐大暦年間に張紅紅が、韋靑将軍に見初められて愛姫となり、かって楽工の伝えた古西河薄命女の曲を屏風の陰で聞き、すっかり覚えていた。それを歌い演奏すると宮中で賞賛され、その愛姫名は宮中に知れ渡った。その後愛姫は「記曲娘子」とよばれたという。しかし、その名声もわずかの間であったという。  末尾の「小」の字には、ふさぎ沈む女性の心情も込められている。

○唐の教坊の曲名。またの名を薄命女令、長命女と言う。『花間集』には和擬の一篇のみ所収。単調三十九字、七句六仄韻で、❸❼❺6❻❼❺の詞形をとる。

天欲  宮漏穿花聲繚
牎裏星光  冷霞寒侵帳額 殘月光沉 

夢斷空悄 強起愁眉

○●●  ○●△○○△●

○●○△●  △○○△●● ○●△○●

△●△●● ○●○○●

李白 《妾薄命》

漢帝寵阿嬌、貯之黃金屋。咳唾落九天、隨風生珠玉。

寵極愛還歇、妒深情卻疏。長門一步地、不肯暫回車。

雨落不上天、水覆難再收。君情與妾意、各自東西流。

昔日芙蓉花、今成斷根草。以色事他人、能得幾時好。

漢帝 阿嬌 寵【いつく】 しむ、之を黃金の屋に貯【おさ】む。

咳唾(がいだ) 九天に落つ、風隨う 珠玉 生ず。

寵極 愛 還た歇【つきる】、妒み深く 情 卻く疏【うと】んず。

長門 一たび 地を步む、肯って 暫く 回車されず。

雨落 天に上らず、水覆 再び收り難し。

君情 與 妾意、各々自ら 東西に流る。

昔日 芙蓉の花,今成る斷根の草。

色を以て他人に事へ,能く幾時の好【よろし】きを得たりや。

妾薄命 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -238

 

曹植《妾薄命二首其一》 

攜玉手喜同車,比上雲閣飛除。

釣台蹇清虛,池塘靈沼可

仰泛龍舟綠波,俯擢神草枝柯。

想彼宓妃洛河,退詠漢女湘娥。

玉手を携え 車を同じくするを喜び、此びて 雲闇 飛除に上る。

釣台は蹇として清虚、池塘 霊沼 娯しむ可し。

仰ぎて竜舟を緑波に汎べ、併しで神草の枝村を擢く。

彼の 宓妃の洛河を想い、退きて 漢女と湘蛾を詠ず。

妾薄命二首 其一 曹植 魏詩<71> 女性詩740 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2248

曹植《妾薄命二首 其二》

日月既逝西藏,更會蘭室洞房。

華燈步障舒光,皎若日出扶桑。

促樽合坐行觴,主人起舞娑盤。

能者冗觸別端,騰觚飛爵闌干。

同量等色齊顏,任意交屬所歡。

妾薄命二首 其二 曹植 魏詩<72-#1> 女性詩741 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2253

朱顏發外形蘭,袖隨禮容極情。

妙舞仙仙體輕,裳解履遺纓。

俯仰笑喧無呈,覽持佳人玉顏。

齊舉金爵翠盤,手形羅袖良難。

腕弱不勝珠環,坐者嘆息舒顏。

妾薄命二首 其二 曹植 魏詩<72-#2> 女性詩742 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2258

御巾裛粉君傍,中有霍納都梁,

雞舌五味雜香,進者何人齊姜,

恩重愛深難忘。召延親好宴私,但歌杯來何遲。

客賦既醉言歸,主人稱露未晞。

妾薄命二首 其二 曹植 魏詩<72-#3> 女性詩743 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2263

(妾薄命二首其二)

日月既に逝きて西に藏【かく】る、更に 蘭室の洞房に会す。

華鐙 歩障に光を舒べ、皎として日の扶桑より出づるが若し。

樽を促し坐を合せて觴を行る、主人 起ちて舞うや婆盤たり。

能者は冗にして別端に触る、觚を騰げ爵を飛ばして闌干たり。

量を同じくし色を等しくし顔を斉しくす、意に任せて交ごも歓ぶ所に属ぐ。

 

朱顔 外に発【あらわ】れて 形 蘭たり、袖は礼容に随いて情を極め。

妙舞 仙仙として体軽し、裳 解け履遣りで纓を絶ち。

俯仰し笑喧して呈無し、佳人の玉顔を覧持ち。

斉しく金爵と翠盤を挙ぐ、手 羅袖より形わるるは良に難く。

腕 弱くして珠環に勝えず、坐する者 嘆息して顔を舒ぶ。

 

巾を御し粉を裛う君が傍、中に有り霍納と都梁と。

鶏舌と五味の雑香と、進む者は何人ぞ 斉姜なり。

恩は重く愛は深く 忘れ難し、親好を召延して宴私す。

但だ歌う 杯の来る何んぞ遅きやと、客は賦す 既に酔う言に帰らんと、主人は称す 露未だ晞【かわ】かずと。

 

天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。

朝まだ期の空が白んで、暁になろうとしている。後宮の漏刻の聲が、寝殿庭の花の間を通り抜け、耳にまとわりつくように聞こえてくる。

○天欲暁 空が明けかかる。欲は今にも〜しそうだ、の意。

○宮漏 宮中の水時計。ここでは時を告げる鐘や太鼓の音を言う。015「更漏子」 の 「漏声」 の注参照。・更漏(夜の時を知らせる漏刻)を取材している。詞には詞詞の本意を詠ずるもの(初期の詞詞には比較的そういうものが多い)、およびただ詞調を借るものがある。更は五更、夕方から、夜明けまで時を告げることを示す。特に秋以降、待ち侘びる夜が長いことを強調する

○穿花 花を1 穴を掘るようにつつく。また、つつき回して中の物を出す。ほじる。2 隠されているわずかなものを、ことさらに追及する。ほじる。

○声繚繞 音がまつわりつくように巡る。ここでは音が長く響くことを言う。声は音の意で、待ち侘びる夜が長いことを強調する語。

 

牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。

天窓から見える星のきらめきは暁にけされて次第に少なくなる、冷たい朝霧の寒気が戸張と窓額に張った絹布を抜けて閨に浸透してくる。名残月は、樹梢の向こうに沈んで、月影も消えてしまう。

○牎裏 天窓の内側。

○冷霞 放射冷却で外に冷たい霞がかかっており、閨に隙間風のように冷気が入ってきたことを云う。

○冷霞寒侵帳額 この句は、2月末に、一日中冷たいものを食べる。前後3日間、火を焚くこと、夜間に灯りをつけることを禁じられた、寒食節を連想させるもので、これが終わると清明節で、初冬まで行楽の季節、行事がある。

○帳額 帳の向こう側、窓額に張った絹布。

○残月 この詩の語句から、二月の二十日過ぎの月、名残月、夜明けの空に懸かる月と考えられる。もうすぐ、寒食節が来るという期待感を言う。

○樹杪 冷気。なお、冷たい夜明こずえ、枝先。

 

夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

いまは、妃嬪としての夢も断たれてしまうし、ただひとり、錦のとばりの内に、悄悄と落ち込んでひっそりとしているが、こんなことではいけないと、思い切って起きて、朝化粧をしようと鏡を見ると愁眉はふかまり、ちいさくなっている。

○錦幃 錦のとばり。宮女・妓女の閨。

○悄悄 ひっそりとするさま。

○強起 妃嬪は、どんな場合っでも寵愛を受ける準備をしておかないといけない、後宮に入ることも、数千人の中から選抜されているのである、妃嬪の矜持として寵愛を受けなくても凛としなくてはいけないというのをあら合わす語である。

○愁眉小 眉間のしわ、眉間のしわが深まって、眉が小さくなることを言う。

10和凝 (改)《巻六22河滿子二首其二》『花間集』273全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6637

和凝  河滿子二首 其二   

寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

(選抜されて宮中に入り、寵愛を受けたこともあった、その時、魚箋紙に書かれた詞を何度も書き写すのが日課となる、それでも寵愛を受けることだけがんが得た毎日だが、できることなら、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、そのころに戻れたらと、羨ましく詠う。)その二。

あのお方からの魚箋紙に書かれた詞を何度も写し取り尽くしたのに、きりがないほどにしている。その詞は、まるで花の環に春の日差しの中に輝いているかのようだから。巫山で夢に神女と契った神女は朝には巫山の雲となり夕べには雨になって交情したというのに、それも今、目にすることはないし、仏教の教えのように心を「無」にしてみるけれど、忘れられない楽しい夢は残り、慕う気持ちは何時までも続いていることがわかるだけ。愛も、お香の薫る良さも、なんか何にも知らない、純真無垢だったころに戻れたら、四面、屏風と戸張に囲まれたところにずっと長くいるこの身にとっては、そんな無邪気な頃を羨ましいと思うだけ。

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和凝

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

和凝

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

孫光憲

巻八31河滿子  冠劍不隨君去,江河還共恩深。歌袖半遮眉黛慘,淚珠旋滴衣襟。惆悵雲愁雨怨,斷魂何處相尋。

毛熙震

《巻十01河滿子二首 其一》  寂寞芳菲暗度,華如箭堪驚。緬想舊歡多少事,轉添春思難平。曲檻絲垂金柳,小絃斷銀箏。深院空聞鷰語,滿園閑落花輕。一片相思休不得,忍教長日愁生。誰見夕陽孤夢,覺來無限傷情。

毛熙震

《巻十02河滿子二首 其二》  無語殘粧澹薄,含羞嚲袂輕盈。幾度香閨眠曉,綺疎日微明。雲母帳中惜,水精枕上初驚。笑靨嫩疑花坼,愁眉翠斂山橫。相望只教添悵恨,整鬟時見纖瓊。獨倚朱扉閑立,誰知別有深情。

 

 

河滿子二首 其一

(選抜されて宮中に入り、十六歳になって、初めて経験をした妃嬪が、二十を少し過ぎれば、年増の妃賓とされ、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、昔を思い出し、羨ましく詠う。)

正是破瓜年幾,含情慣得人饒。

ちょうど、あれは十六歳の年で初体験をさせられたのだが、何年になろうか。いまでは情愛を求め、甘えて自分の方から求めるようになっている。 

桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。

若く、初々しい桃李の精神を持ったまま、今では、口上手に鸚鵡のように話しているのに、いつしか、こんなに素晴らしい夜にも、空しく過ごすことがおおくなった。 

卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

むしろ、愛などなく無邪気に、藍色のうすぎぬのスカートを、いつもしなやかに細く長い腰でしめて、身に着けている今の若い妃嬪たちを羨ましく思う。

(河滿子二首其の一)

正に是れ 破瓜【はか】しより 年幾【いくばく】ぞ,情を含んで 人饒を慣得せん。

桃李 精神 鸚鵡の舌,虛しく度【すご】す良宵に堪える可けんや。

愛を卻【しりぞけ】て藍羅の裙子をひらく,他を羨む 纖腰 長束するを。

 

河滿子二首 其二

(選抜されて宮中に入り、寵愛を受けたこともあった、その時、魚箋紙に書かれた詞を何度も書き写すのが日課となる、それでも寵愛を受けることだけがんが得た毎日だが、できることなら、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、そのころに戻れたらと、羨ましく詠う。)その二。

寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。

あのお方からの魚箋紙に書かれた詞を何度も写し取り尽くしたのに、きりがないほどにしている。その詞は、まるで花の環に春の日差しの中に輝いているかのようだから。

目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。

巫山で夢に神女と契った神女は朝には巫山の雲となり夕べには雨になって交情したというのに、それも今、目にすることはないし、仏教の教えのように心を「無」にしてみるけれど、忘れられない楽しい夢は残り、慕う気持ちは何時までも続いていることがわかるだけ。

卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

愛も、お香の薫る良さも、なんか何にも知らない、純真無垢だったころに戻れたら、四面、屏風と戸張に囲まれたところにずっと長くいるこの身にとっては、そんな無邪気な頃を羨ましいと思うだけ。

 

(河滿子二首其の二)

魚牋を寫得す 限り無し,其れ 花鏁の春輝の如し。

巫山の雲雨 目斷あひ,空しく殘夢 依依とするを教【いましめ】む。

愛を卻【しりぞけ】て 小鴨を熏香す,他を羨む 屏幃 長在するを。

 

木蘭02
 

『河滿子二首』 現代語訳と訳註

(本文)

河滿子二首 其二

寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。

目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。

卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

 

(下し文)

(河滿子二首其の二)

魚牋を寫得す 限り無し,其れ 花鏁の春輝の如し。

巫山の雲雨 目斷あひ,空しく殘夢 依依とするを教【いましめ】む。

愛を卻【しりぞけ】て 小鴨を熏香す,他を羨む 屏幃 長在するを。

(現代語訳)

(選抜されて宮中に入り、寵愛を受けたこともあった、その時、魚箋紙に書かれた詞を何度も書き写すのが日課となる、それでも寵愛を受けることだけがんが得た毎日だが、できることなら、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、そのころに戻れたらと、羨ましく詠う。)

その二。

あのお方からの魚箋紙に書かれた詞を何度も写し取り尽くしたのに、きりがないほどにしている。その詞は、まるで花の環に春の日差しの中に輝いているかのようだから。

巫山で夢に神女と契った神女は朝には巫山の雲となり夕べには雨になって交情したというのに、それも今、目にすることはないし、仏教の教えのように心を「無」にしてみるけれど、忘れられない楽しい夢は残り、慕う気持ちは何時までも続いていることがわかるだけ。

愛も、お香の薫る良さも、なんか何にも知らない、純真無垢だったころに戻れたら、四面、屏風と戸張に囲まれたところにずっと長くいるこの身にとっては、そんな無邪気な頃を羨ましいと思うだけ。

 

(訳注)

河滿子二首其二

(選抜されて宮中に入り、寵愛を受けたこともあった、その時、魚箋紙に書かれた詞を何度も書き写すのが日課となる、それでも寵愛を受けることだけがんが得た毎日だが、できることなら、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、そのころに戻れたらと、羨ましく詠う。)

その二。

唐の教坊曲、花間集には河滿子は五首あり、和凝は二首所収。河滿子二首 其二は、単調三十六字、三平韻6⑥6⑥6⑥の詞形をとる。

寫得魚牋無限,其如花鏁春

●●○○○●  ○△○?○○

目斷巫山雲雨,空教殘夢依

●●○○○●  △△○△△△

卻愛熏香小鴨,羨他長在屏

●●○○●●  ○△△●△○

河滿子二首 其一は単調三十八字、三平韻6⑥7⑥6⑥の詞形をとる。

河滿子二首 其一

正是破瓜年幾,含情慣得人

△●●○○△  ○○●●○△

桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良

○●△○○●●  ●○○●○

卻愛藍羅裙子,羨他長束纖

●●○○○●  ○△△●○

 

毛文錫《河滿子》は、単調三十六字、三平韻6⑥6⑥6⑥の詞形をとる。

紅粉樓前月照  碧紗窓外鶯

○●○○●●  ●○○●○○

夢斷遼陽音信  那堪獨守空

△●○○○△  △○●●△○

恨對百花時節  王孫綠草萋

●●●○○●  △○●●○○

孫光憲《河滿子》は、単調三十六字、三平韻6⑥7⑥6⑥の詞形をとる。

冠劍不隨君去,江河還共恩

△●△○○●  ○○○△○△

歌袖半遮眉黛慘,淚珠旋滴衣

○●●○○●●  ●○△●△○

惆悵雲愁雨怨,斷魂何處相

○●○○●△  ●○△●△○

 

寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。

あのお方からの魚箋紙に書かれた詞を何度も写し取り尽くしたのに、きりがないほどにしている。その詞は、まるで花の環に春の日差しの中に輝いているかのようだから。

○魚牋 魚の紋様を漉きこんだ最高級品の紙(箋)魚箋雁書《「漢書」蘇武伝の、匈奴(きょうど)に捕らえられた前漢の蘇武が、手紙を雁の足に結びつけて放ったという故事から》便り。手紙。かりのたまずさ。かりのたより。かりのふみ。雁書。雁使(がんし)。≪双鯉≫の詩、或いは”魚腹蔵書”の故事と、漢朝 蘇武の”雁足伝書”故事を連想し”魚雁”をも書簡の別名として”魚腸雁足”、”雁封鯉素”” 魚雁沈浮”等に用いています。「鯉魚尺素」の略。鯉の腹の中から白絹(=素)に書かれた手紙が出てきた故事による。 「古楽府」飲馬長城窟行

○花鏁 はなのくびかざり。・鏁【じょう】 〔錠・鏁・鎖〕① 戸・箱の蓋(ふた)などにつけて,自由に開閉できないようにする金具。1 金属製の輪を数多くつなぎ合わせて、ひもや綱のようにしたもの。かなぐさり。「犬を―でつなぐ」「懐中時計の―」. 2 物と物とを結びつけているもの。

 

目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。

巫山で夢に神女と契った神女は朝には巫山の雲となり夕べには雨になって交情したというのに、それも今、目にすることはないし、仏教の教えのように心を「無」にしてみるけれど、忘れられない楽しい夢は残り、慕う気持ちは何時までも続いていることがわかるだけ。

○巫山雲雨 男女の交情をいう。楚王:蜀の国。ここの巫山県の東部に巫山がある。現・四川省のこと。・雲雨:男女の交情をいう。楚の襄王が巫山で夢に神女と契ったことをいう。神女は朝には巫山の雲となり夕べには雨になるという故事からきている。

宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

牛希濟『臨江仙七首』其一

峭碧參差十二峯,冷煙寒樹重重。

宮殿是仙蹤,金鑪珠帳,香靄晝偏濃。

一自楚王驚夢斷,人間無路相逢。

至今雲雨帶愁容,月斜江上,征棹動晨鐘。

10 -5 臨江仙七首其一 牛學士希濟(牛希濟)ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-402-10-#5  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3557

○空教【くうきょう】仏語。三時教(さんじきょう)の一。有()に執着している者を悟らせるため、すべては空であると説く教法。

○依依 思い慕うさま。離れがたいさま。ここでは心配して心をその人に寄せること。

 

 

卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

愛も、お香の薫る良さも、なんか何にも知らない、純真無垢だったころに戻れたら、四面、屏風と戸張に囲まれたところにずっと長くいるこの身にとっては、そんな無邪気な頃を羨ましいと思うだけ。

卻愛:愛することをしりぞける。卻:ひとえに。 あえて、かえって、逆に。かつて。しりぞける。

○小鴨【こがも】利用しやすい仲のよい可愛い女。「従兄弟同士は鴨の味」(いとこ婚。)いとこ同士の夫婦の仲はとても睦まじいということ。

カモ科の鳥。全長約38センチ、日本のカモ類では最小。雄は背が灰色がかった色で、顔は茶色、目の後方が緑色。雌は全体に淡褐色。冬鳥として各地の池沼に渡来するが、北日本では繁殖するものもある。たかぶがも。《季 冬》

この二首其二の最終聯は其一の変化形である。

和凝『河滿子二首其一』「卻愛藍羅裙子、羨他長束繊腰」(愛することなくして(無邪気に)藍色のうすぎぬのスカートを身に着けて、今の若い女は、いつもしなやかに細い腰をしめているのは羨ましくなるのです。)・卻愛:愛することをしりぞける。卻:ひとえに。 あえて、かえって、逆に。かつて。しりぞける。・藍:藍色。 ・羅裙子:うすぎぬのスカート。・羨:うらやましく思う。 ・他:それ。その少女のスカートを指す。・長:いつも。いつまでも。とこしえに。=常。 ・束:(帯を)しめる。 ・繊腰:(若い女性の)細い腰。

○他 他日。上句を受けているから、純真無垢だったころのことを指す。

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先秦時代(秦の始皇帝以前の時代)から唐代以前まで、どの時代にも常に女道徳を称揚する人がいたけれども、大体において支配者たちはまだそれほど切迫した危機感がなかったので、女性に対する束縛もそれほど厳重ではなく、彼女たちもまだ一定の地位と自由をもっていた。ただ宋代以降になると、支配者たちは種々の困難に遭遇し、自分に対して日ごとに自信を喪失したので、道徳家たちはそこで始めて女性に対するしつけを厳格にするようになった。明、清という封建時代の末期になると、封建道徳はますます厳格になり、完備して厳密になり、残酷になり、ついには女性を十八界の地獄の世界に投げ込むことになった。まさに封建社会の最盛期にあった唐朝は、非常に繁栄し強盛であったから、支配者たちは充分な自信と実力を持っており、人々の肉体と精神をさらに強く束縛する必要を感じなかったため、唐朝は各方面でかなり開明的、開放的な政策を実施したのである。

 

このようにして、唐代の社会はその特有の開放的な気風によって古代の輝かしい存在となった。こぅした社会の気風はおのずから女性たちの生活の中にも波及し、もともと比較的緩やかであった封建道徳を強化発展させなかったばかりか、逆にいくらかの方面で弱めさえしたのである。

 

もう一つの重要な原因は、唐代は漢民族が「胡化」(西・北方民族への同化)し、民族が融合した時代であったことである。この時代においては、少数民族の文化、習俗の影響はきわめて強烈であり、それらは社会生活の各領域に湊透し、中原の漢民族の道徳観念に大きな打撃を与えた。いわゆる「胡化」の風習には二つの来源があった。一つは唐朝の李姓の皇族自体が北方少数民族の血統であ。、彼らはかつて長期にわたって北方少数民族と生活を共にし、また鮮卑族が樹でた北魂から台頭し、その後、鮮卑族を主とする北朝政権を直接慧したがゆえに、文化、習俗において北朝の伝統を踏襲し、「胡化」の程度がきわめて深かったのである。唐は天下を統一すると、さっそくこれら北方少数民族の習俗を中原にもたらした。まさに朱子が論じたように「唐の源は夷警あったから、家庭の礼儀作法に欠けるところがあったのも不思議ではない」のである(『朱子語類』巻三六、歴代さて、来源の第二は、唐代に紅民族の間の交際と国際交流が空前の繁栄をみ、雄津な精神をもっていた唐朝が「蛮夷の邦」の文物や風習に対しても来る者は拒まず差別なく受け入れ、さらに「胡化」の風習が日ごとに盛んになるのを助長したことである。当時、唐の周辺にあった少数民族の国々には、鮮卑はもちろん、その他に突原、契丹、吐谷津、党項などが雷、彼らの婚姻関係ほどこもかなり原始的であった。それゆえ女性の地位はわりに高く、極端な場合には女尊男卑でさえあって、女性の受ける拘束も少なく、比較的自由奔放であった。たとえば、盛唐時代の少数民族出身の将軍安禄山は自らについて、「胡人は母を先にし、父を後にする」(『資治通鑑』巻二二九、玄宗天宝六載)といったことがある。「その俗は、婦人を重んじ男子を軽んずる」少数民族もあった(『旧唐書』南蛮西南蛮伝・東女国)。女性が権力を掌握する制度や習俗をまだ保持している民族や国家もたくさんあって、日本、新羅、林邑、東女(唐代、中国南方の少数民族)等の国には女王、女官がいたし、また回紇、突蕨等の民族でもよく女君主が政治を行うことがあった。その他に、北方少数民族の大半は遊牧民族であり、女性たちは農耕や織物をする中原地区の女性とは異なり、馬に乗って放牧したり、狩猟をしたりして、大砂漠や大荒原を縦横に駆けまわったので、しぜんに一種の剛悼、勇武、雄健の風を身につけた。少数民族の気風の影響を受けて、北方の女性は古来地位はわりに高く開放的であった。北朝の顔之推は、「郡(北朝の都、現在の河北省臨港県)下の風俗では、もっぱら家は女で維持されている。彼女らは訴訟をおこして是非を争ったり、頼みごとに行ったり、人を接待したりするので、彼女らの乗る皐で街路はふさがれ、彼女らの着飾った姿は役所に溢れている。息子に代って官職を求め、夫のために無罪を訴えているのである。これは恒、代(鮮卑族の建てた北魂王朝が最初に都を置いた現在の大同一帯の古地名)の遺風であろうか」(『顔氏家訓』治家)と述べている。これら異民族の習俗と北朝の遺風は、李氏による唐王朝の建国とその開放的な政策によって、絶えることなく中原の地に滑々として流れ込み、さらに唐王朝の広大な領域に波及し、もとからあった封建的な道徳と束縛に強烈な打撃を与えた。

 

以上のような種々の原因によって、唐朝はこの王朝特有の「家庭の風紀の乱れ」、「封建道徳の不振」という状況を生みだした。こうした状況は後世の道学者たちの忌み嫌うところとなったが、しかし逆にこの時代に生きた女性たちにはきわめて大きな幸運をもたらし、彼女たちが受ける抑圧、束縛をいささか少なくしたので、彼女たちは心身共に比較的健康であった。こうして、明朗、奔放、勇敢、活発といった精神的特長、および独特の行動や風格、思想や精神などが形成されたのである。

 

歴史絵巻は私たちに唐代の女性の生き生きとした姿を示してくれる。

彼女たちはいつも外出して活動し、人前に顔をさらしたまま郊外、市街、娯楽場に遊びに行き、芝居やポロを見物した。毎年春には、男たちと一緒に風光明媚な景勝地に遊びに行き、思うぞんぶん楽しむことさえできた。「錦を集め花を潜めて 勝游を闘わせ、万人行く処 最も風流」(施肩吾「少婦遊寿詞」)、「三月三日 天気新なり、長安の水辺 麗人多し」(杜甫「麗人行」)などの詩句は、みな上流階級の男女が春に遊ぶさまを詠んだものである。

彼女たちは公然とあるいは単独で男たちと知り合い交際し、甚だしくは同席して談笑したり、一緒に酒を飲んだり、あるいは手紙のやりとりや詩詞の贈答をしたりして、貞節を疑われることも意に介さなかった。白居易の「琵琶行」という詩に出てくる、夫の帰りを待つ商人の妻は夜半に見知らぬ男たちと同船し、話をしたり琵琶を演奏しあったりしている。それで、宋代の文人洪遇は、慨嘆して「瓜田李下の疑い、唐人は譏らず」(『容斎三筆』巻六)といった。

瓜田李下の疑い、唐人はらず。「瓜田李下之疑, 唐人不譏也。」

「瓜田に履を入れず、李下(すももの木の下)に冠を正さず」 の格言に基づく、疑われやすい状況のたとえ。

宋洪邁《容齋三筆白公夜聞歌者》:然鄂州所見, 亦一女子獨處, 夫不在焉。 瓜田李下之疑, 唐人不譏也。”

 

 

 

 

 

 

10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

河滿子二首 其一

(選抜されて宮中に入り、十六歳になって、初めて経験をした妃嬪が、二十を少し過ぎれば、年増の妃賓とされ、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、昔を思い出し、羨ましく詠う。)

正是破瓜年幾,含情慣得人饒。

ちょうど、あれは十六歳の年で初体験をさせられたのだが、何年になろうか。いまでは情愛を求め、甘えて自分の方から求めるようになっている。 

桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。

若く、初々しい桃李の精神を持ったまま、今では、口上手に鸚鵡のように話しているのに、いつしか、こんなに素晴らしい夜にも、空しく過ごすことがおおくなった。 

卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

むしろ、愛などなく無邪気に、藍色のうすぎぬのスカートを、いつもしなやかに細く長い腰でしめて、身に着けている今の若い妃嬪たちを羨ましく思う。

 

其二

寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。

目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。

卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

 

 

『河滿子二首』 現代語訳と訳註

(本文)

河滿子二首 其一

正是破瓜年幾,含情慣得人饒。

桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。

卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

 

(下し文)

(河滿子二首其の一)

正に是れ 破瓜【はか】しより 年幾【いくばく】ぞ,情を含んで 人饒を慣得せん。

桃李 精神 鸚鵡の舌,虛しく度【すご】す良宵に堪える可けんや。

愛を卻【しりぞけ】て藍羅の裙子をひらく,他を羨むは 長束の纖腰を。

 

(現代語訳)

(選抜されて宮中に入り、十六歳になって、初めて経験をした妃嬪が、二十を少し過ぎれば、年増の妃賓とされ、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、昔を思い出し、羨ましく詠う。)

ちょうど、あれは十六歳の年で初体験をさせられたのだが、何年になろうか。いまでは情愛を求め、甘えて自分の方から求めるようになっている。 

若く、初々しい桃李の精神を持ったまま、今では、口上手に鸚鵡のように話しているのに、いつしか、こんなに素晴らしい夜にも、空しく過ごすことがおおくなった。 

むしろ、愛などなく無邪気に、藍色のうすぎぬのスカートを、いつもしなやかに細く長い腰でしめて、身に着けている今の若い妃嬪たちを羨ましく思う。

 

(訳注)

河滿子二首其一

(選抜されて宮中に入り、十六歳になって、初めて経験をした妃嬪が、二十を少し過ぎれば、年増の妃賓とされ、新たに入ってきた無邪気な少女たちを見て、昔を思い出し、羨ましく詠う。)

杜甫はかつて《観公孫大娘弟子舞剣器行井序》「先帝の侍女八千人」(「公孫大娘が弟子の剣器を舞うを観る行」)と詠い、白居易もまた《長恨歌》」「後宮の佳麗三千人」と言った。これらは決して詩人の誇張ではなく、唐代の宮廷女性は、実際はこの数字をはるかに越えていた。

唐の太宗の時、李百薬は上奏して「無用の宮人は、ややもすれば数万に達する」(『全唐文』巻一四二、李百薬「宮人を放つを請うの封事」)といった。『新唐書』の「官者伝」上に、「開元、天宝中、宮嬪はおおよそ四万に至る」と記されている。後者は唐代の宮廷女性の人数に関する最高の具体的な数字であり、まさに盛唐の風流天子玄宗皇帝時代のものである。宋代の人洪邁は、この時期は漢代以来、帝王の妃妾の数が最も多かった時代であるといっている(『容斎五筆』巻三「開元宮嬪」)。うまい具合に、この時期の女性の総人口は先に紹介した数字 - およそ二千六百余万であるから、四万余人とすれば、じつに全女性人口の六百分の一を占める。つまり、女性六百人ごとに一人が宮廷に入ったことになる。唐末になり、国土は荒れ、国勢は衰えたが、いぜんとして「六宮(後宮)の貴・賤の女性は一万人を減らない」(『資治通鑑』巻二七三、後唐の荘宗同光三年)という状態だった。この驚くべき数字の陰で、どのくらい多くの「曠夫怨女」(男やもめと未婚の老女)を造り出したことか計り知れない。唐末の詩人曹鄴はこれを慨嘆して「天子 美女を好み、夫婦 双を成さず」(「捕漁謡」)と詠った。

宮中にはいわゆる「内職」という制度があり、『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。上記のそれぞれの女性は官品をもち、合計で122人の多きに達した。皇后だけが正妻であり、その他は名義上はみな「妃嬪」-皇帝の妾とされた。

彼女たちは皇帝の妻妾であり、錦衣を着て山海の珍味を食し、ひとたび呼ばわれば百人の下婦が答える、最も高貴にして最も権勢の高い人々であった。しかし、その運命は逆にまた最も不安定であり、いつでも天国から地獄に堕ち、甚だしい場合には「女禍」の罪名を負わされ犠牲の羊にされた。したがって多くの詞詩誌文に取り上げられている。

○女禍 君主が女色に迷い、国事を誤ったため引き起された禍い。

 

唐の教坊曲、花間集には河滿子は五首あり、和凝は二首所収。河滿子二首 其一は単調三十八字、三平韻6⑥7⑥6⑥の詞形をとる。

河滿子二首 其一

正是破瓜年幾,含情慣得人

△●●○○△  ○○●●○△

桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良

○●△○○●●  ●○○●○

卻愛藍羅裙子,羨他長束纖

●●○○○●  ○△△●○

河滿子二首 其二は、単調三十六字、三平韻6⑥6⑥6⑥の詞形をとる。

寫得魚牋無限,其如花鏁春

●●○○○●  ○△○?○○

目斷巫山雲雨,空教殘夢依

●●○○○●  △△○△△△

卻愛熏香小鴨,羨他長在屏

●●○○●●  ○△△●△○

 

毛文錫《河滿子》は、単調三十六字、三平韻6⑥6⑥6⑥の詞形をとる。

紅粉樓前月照  碧紗窓外鶯

○●○○●●  ●○○●○○

夢斷遼陽音信  那堪獨守空

△●○○○△  △○●●△○

恨對百花時節  王孫綠草萋

●●●○○●  △○●●○○

 

正是破瓜年幾、含情慣得人饒。

ちょうど、あれは十六歳の年で初体験をさせられたのだが、何年になろうか。いまでは情愛を求め、甘えて自分の方から求めるようになっている。 

正是:ちょうど~。 

破瓜【はか】《「瓜」の字を縦に二分すると二つの八の字になるところから》① 82倍で、女性の16歳のこと。② 88倍で、男性の64歳のこと。③ 性交によって処女膜が破れること。破瓜期【はかき】月経の始まる年ごろ。ここでは処女の初めての経験をいう。碧玉はエメラルド色の玉のように、尊いものを意味し、破瓜とあわせて、処女をいう。

年幾:幾年① どれほどの年数。何年。いくとせ。② いつの年。何年。「今年は平成―ですか」③ (「いくねんか」の形で)比較的少ない年数。何年。いくとせ。「ここ―か前」④ (「いくねんも」の形で)ある程度まとまった年数。何年。いくとせ。「―も会わなかった友人」

含情:思いを込める。色っぽく。 

慣得:甘えることが常態化していることの結果をいう。売春に慣れたことと云うことが最大であるが、ここでは、初めての経験というものに対して、慣れて自分の方から求めていくというほどの意味になる。 

人饒:ここでは、男性に、媚を売って、甘えたり、おねだりをしているさまをいう。

 

 

桃李精神鸚鵡舌、可堪虚度良宵。

若く、初々しい桃李の精神を持ったまま、今では、口上手に鸚鵡のように話しているのに、いつしか、こんなに素晴らしい夜にも、空しく過ごすことがおおくなった。 

○桃李精神:司馬遷《史記》「桃李不言下自成蹊」“桃や李(すもも)は何も言わないが、花の美しさに惹かれて多くの人が集まってくるから、木の下には自然と道ができる。徳望のある人のところには、自(みずか)ら求めなくても、その徳を慕て人が自然と集まって来ることの喩え。”  

李白『送姪良携二妓赴会稽戯有此贈』「遙看若桃李。 雙入鏡中開。」((はるか)に看る 桃李(とうり)の若く、双(ふた)つながら鏡中に入って開くを。)きっと、二人の妓女が赤い桃花と白い李花がさいているのようだろう、そして、二人の妓女は鏡湖の中に入って、舟を浮かべ宴は、はなやかに開かれているだろう、わたしは、はるかに長江流れからこの地から見ているのだ。

・若桃李 魏の曹植の詩に「南国に佳人有り、容華は桃李の若し」とある。桃と李とはどちらも希望を持つ花とし、書生、弟子、ういういしい芸妓などの世界を指す。

○鸚鵡舌:恥ずかしくて話すことが出来ないことから、恥ずかしさもなく話すことが出来るようになったことを云う。言うことがてきぱきしている。口がうまい。口上手。元『寄贈薛濤』「言語巧偸鸚鵡舌,文章分得鳳皇毛」。 

すばらしい夜を空しく過ごすことに堪えられようか。 

○可堪:たえられようか。 

○虚度:空しく過ごす。 

○良宵:すばらしい夜。

 

卻愛藍羅裙子、羨他長束繊腰。

むしろ、愛などなく無邪気に、藍色のうすぎぬのスカートを、いつもしなやかに細く長い腰でしめて、身に着けている今の若い妃嬪たちを羨ましく思う。

○卻愛:愛することをしりぞける。卻:ひとえに。 あえて、かえって、逆に。かつて。しりぞける。

○藍:藍色。 

○羅裙子:うすぎぬのスカート。

○羨:うらやましく思う。 ・他:それ。その少女のスカートを指す。 

○長:いつも。いつまでも。とこしえに。=常。 

○束:(帯を)しめる。 

○繊腰:(若い女性の)細い腰。

*長束繊腰 古来より続く伝統的な美的感覚、長身で細長い美人を言うが腰がおなかで帯を締めてもくびれないくらいに繊細なほど良いとされていたことを言う。

10和凝 (改)《巻六20山花子二首其二》『花間集』271全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6627

和凝  山花子二首 其二   

銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。

幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

(また秋の日が来る、屏風に書かれた銀字、のシーツ、腕輪とたくさんの楽しい思い出を残してくれ、寵愛を受ける準備をすると、それを見るにつけ、腹立たしさを覚え、ハエたたきでたたいてやりたいと詠う。)

秋の日に、銀書を背景に、笙の笛をまさに長く吹かれると肌寒く、心寂しく思う。水琴に水紋は広がり、簟のシーツは一層冷たく感じられ、銀字の屏風は、なお更涼しく感じられるようになる。あの春の日は、たくましく輝くような腕に抱かれ、金のような重たさを身体に感じ、腕枕をしてくれ、そして、髪をゆっくり梳き、お化粧をなおした。それから、何度もお香に火をつけてくれ、冷たい繊細な指をあたためて、一度注いでもらったお酒を飲めば、紅い唇にお酒で潤い光ったものだ。それでも、紅い糸で結ばれていると逢瀬の約束をするだけでもてあそぶのなら、「蠅払子」でもって、あの「檀郎」を打ちたたいてやりたいとおもう。

和凝《山花子二首 其二》

10和凝 (改)《巻六20山花子二首其二》『花間集』271全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6627

 

 
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和凝(898955)、字を成績と言い、鄆州の須昌(今の山東省東平の西北)の人。彼は幼い時から聡明で、早くから書物を学び、一読すれば常に大義に通じた。梁の義成軍節度使賀瓌に招かれて従事となったが、賀瓌が唐の荘宗との戦いに敗れると、彼一人が賀瓌に従った。賀瓌は和凝に対して、自分に従うのをやめて己の道を求めるように勧めたが、和凝は「男子たるもの、人の知遇を得ながら危難の際に恩に報いないのは、本意ではない」と言い、行動をともにし、追っ手を射倒して、賀瓌の命を救った。そこで、賀瓌は自分の娘を和凝に娶らせ、「和凝は将来重位に就くであろぅから、謹んで仕えるように」と子供らに諭した。そのために、和凝の名は一時に轟いた。彼は、梁、唐、晋、漢、周の五朝に仕え、多くの後進を導いたので、人々から広く慕われたと言う。和凝は若い時に好んで艶詞を作ったが、晋の宰相になると詞を回収して焼き捨てさせた。しかし、艶詞のために名を汚すことになり、契丹は晋に入朝すると、彼を曲子相公と呼んだと言う。和凝の詞は二十七首が伝わり、『花間集』 には二十首の詞が収められている。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。

 

山花子二首 其一

(又春を迎えたが、この春こそ寵愛という「春の思い」にかられるが、寵愛の準備をしてもそのまま春は過ぎてゆく。

鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。

鶯の絵柄の錦、蝉の羽柄のように鮮やかで美しい着物を着て、麝香の香りは閨に漂う。軽やかに裾をうごかして庭に出てゆくと早咲きの梅の花は夜のほのぼのと明ける中で迷ってしまう。

鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。

川辺にはツガイのおしどりは翅の金模様を激しく動かして交尾している、紅い色を上げたり下げたりしていて、春の霞が低く漂っている。

星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。

微笑を隠しながら、その顔には星のような可憐なえくぼがあり、薄紅かかった若々しいほほの面立ちである。金絲のスカートの前を開いたら、銀泥の下着をつけている。

春思半和芳草嫩,碧萋萋。

春景色のなかで春を思う気持ちとこの若草の萌えるかぐわしい香となかば調和していくので、春草は萋萋として色濃くなっていくだけだ。

 

山花子二首 其二

(また秋の日が来る、屏風に書かれた銀字、のシーツ、腕輪とたくさんの楽しい思い出を残してくれ、寵愛を受ける準備をすると、それを見るにつけ、腹立たしさを覚え、ハエたたきでたたいてやりたいと詠う。)

銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。

秋の日に、銀書を背景に、笙の笛をまさに長く吹かれると肌寒く、心寂しく思う。水琴に水紋は広がり、簟のシーツは一層冷たく感じられ、銀字の屏風は、なお更涼しく感じられるようになる。

玉腕重金扼臂,澹梳粧。

あの春の日は、たくましく輝くような腕に抱かれ、金のような重たさを身体に感じ、腕枕をしてくれ、そして、髪をゆっくり梳き、お化粧をなおした。

幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。

それから、何度もお香に火をつけてくれ、冷たい繊細な指をあたためて、一度注いでもらったお酒を飲めば、紅い唇にお酒で潤い光ったものだ。

佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

それでも、紅い糸で結ばれていると逢瀬の約束をするだけでもてあそぶのなら、「蠅払子」でもって、あの「檀郎」を打ちたたいてやりたいとおもう。

 

山花子二首 其の二)

銀字 笙は 正に長ずるに寒くして調べす,水紋の簟 冷く 畫屏は涼し。

玉腕 金を重くし 臂を扼く,澹く梳粧す。

幾度 香を試【さぐ】りて 纖手暖む,一たび迴れば 酒を嘗め 絳脣光る。

佯弄【ようろう】 紅絲【こうし】 蠅の拂子【ほっす】,檀郎を打つ。

 

 

『山花子二首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

山花子二首 其二

銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。

玉腕重金扼臂,澹梳粧。

幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。

佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

 

 

(下し文)

(山花子二首 其の二)

銀字 笙は 正に長ずるに寒くして調べす,水紋の簟 冷く 畫屏は涼し。

玉腕 金を重くし 臂を扼く,澹く梳粧す。

幾度 香を試【さぐ】りて 纖手暖む,一たび迴れば 酒を嘗め 絳脣光る。

佯弄【ようろう】 紅絲【こうし】 蠅の拂子【ほっす】,檀郎を打つ。

 

(現代語訳)

(また秋の日が来る、屏風に書かれた銀字、のシーツ、腕輪とたくさんの楽しい思い出を残してくれ、寵愛を受ける準備をすると、それを見るにつけ、腹立たしさを覚え、ハエたたきでたたいてやりたいと詠う。)

秋の日に、銀書を背景に、笙の笛をまさに長く吹かれると肌寒く、心寂しく思う。水琴に水紋は広がり、簟のシーツは一層冷たく感じられ、銀字の屏風は、なお更涼しく感じられるようになる。

あの春の日は、たくましく輝くような腕に抱かれ、金のような重たさを身体に感じ、腕枕をしてくれ、そして、髪をゆっくり梳き、お化粧をなおした。

それから、何度もお香に火をつけてくれ、冷たい繊細な指をあたためて、一度注いでもらったお酒を飲めば、紅い唇にお酒で潤い光ったものだ。

それでも、紅い糸で結ばれていると逢瀬の約束をするだけでもてあそぶのなら、「蠅払子」でもって、あの「檀郎」を打ちたたいてやりたいとおもう。

 

(訳注)

山花子二首 其二

(また秋の日が来る、屏風に書かれた銀字、のシーツ、腕輪とたくさんの楽しい思い出を残してくれ、寵愛を受ける準備をすると、それを見るにつけ、腹立たしさを覚え、ハエたたきでたたいてやりたいと詠う。)

其一は、春の日の妃賓のことを詠い、其二は、秋の日に寵愛を受けていたあの春の日を思い出して詠うもの、前段は閨情詩の愛し合う二人の思い出の品の数々が並べられている。後段、約束の日に二人で過ごすことを過去のものを思い出すことで、一人さびしいことを強調し、最後に、悔しいから蝿払いでたたいてやりたいという、男目線で男を待つ女を詠う教坊曲、和凝のハイセンスな詩である。

唐の教坊曲、花間集には和凝の二首のみ所収。

山花子二首 其二

 和凝詞《山花子二首 其二》,前段起句〔銀字笙寒調正長〕,銀字平聲;第二句〔水紋簟冷畫屏涼〕,水字、簟字俱仄聲;第三句〔玉腕重因金扼臂〕,玉字、重字俱仄聲,金字平聲;

和凝の時 已に名《山花子》とある,故に另編の一體とす。 和凝詞,前段の起句に〔銀字笙寒調正長〕,銀字平聲;第二句〔水紋簟冷畫屏涼〕,水字、簟字俱仄聲;第三句〔玉腕重因金扼臂〕,玉字、重字俱仄聲,金字平聲;

山花子二首 其二は、調四十七字、前段二十三字二平韻、二仄韻、後段二十四字二平韻で⑦⑦❻❸/7⑦7③の詞形をとる。

 

銀字笙寒調正  水紋簟冷畫屏涼 玉腕重金扼  澹梳
幾度試香纖手暖  一迴嘗酒絳脣光 佯弄紅絲蠅拂子  打檀

○●○○△△△  ●○●△●△△

●●△○●●  △○?

△●●○○●●  ●△○●●○△

○●○○○●●  ●○○

山花子二首 其一単調四十七字、前段二十三字三平韻、後段二十四字二平韻⑦⑦6③/7⑦7③の詞形をとる。

鶯錦蟬縠馥麝臍 輕裾花早曉烟迷 鸂鶒戰金紅掌墜 翠雲
星靨笑隈霞臉畔 蹙金開襜襯銀泥 春思半和芳草嫩 碧萋

○●○●●●○  △○○●●○○ ○?●○○●●  ●○○

○●●△○△●  ●○○△●○△ ○△●△○●●  ●○○

 

山花子

唐教坊曲名。一名《南唐浣溪沙》,《梅苑》名《添字浣溪沙》,《樂府雅詞》名《攤破浣溪沙》,《高麗史樂志》名《感恩多令》。

 

雙調四十八字,前段四句三平韻,後段四句兩平韻

此詞即《浣溪沙》之別體,不過多三字兩結句,移其韻於結句耳,此所以有〔添字〕、〔攤破〕之名,然在《花間集》,和凝時已名《山花子》,故另編一體。

此の詞は即ち《浣溪沙》の別體であり,兩結句に三字を過多するだけではない,結句に於てのみ其の韻を移し,此所 以って〔添字〕有り、〔攤破〕の名《攤破浣溪沙》なり,然るに《花間集》に在る,

 

牛嶠《感恩多二首其一》

兩條紅粉,多少香閨。強攀桃李,斂愁

●○○●● ○●○○● ○○○●○ ●○○

陌上鶯啼蝶舞,柳花。柳花,願得郎心,憶家還早

●●○○●● ●○○ ●○○ ●●○○ ●○○●○

 

欧陽烱《浣溪沙三首其三》

落絮殘鶯半日  玉柔花醉只思  映竹滿爐

●●○○●●○  ●○○●△△○  ●?●●●○○

獨掩畫屏愁不語  斜欹瑤枕髻鬟  此時心在阿誰 

●●●△○△●  ○○○△●○△  ●○○●○○○ 

攤破浣溪沙《山花子》

菡萏香銷翠葉殘。西風愁起綠波間。還與韶光共憔悴。不堪看。

細雨夢回難塞遠。小樓吹徹玉笙寒。多少淚珠何限恨。倚欄杆。

◎●○○●●○ ●●○○ ○◎● ●○○

◎●◎○○●● ◎○●●○○ ●◎○○●● ●○○

南唐李璟:李 璟は、十国南唐の第2代皇帝。烈祖李昪の長男。初名は徐景通であったが、南唐建国後に李璟と改名し、さらに後周の臣下を称したあと後周の信祖郭璟の諱を避けて李景と再改名した。

 

銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。

秋の日に、銀書を背景に、笙の笛をまさに長く吹かれると肌寒く、心寂しく思う。水琴に水紋は広がり、簟のシーツは一層冷たく感じられ、銀字の屏風は、なお更涼しく感じられるようになる。

銀字 色紙、屏風など手紙より比較的大きなものに書かれた文字。ここでは仲の良い時期に書かれたもの。

 雅楽で用いられる笙は、その形を翼を立てて休んでいる鳳凰に見立てられ、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれる。匏(ふくべ)とも呼ばれる。

水紋簟冷 水滴が堕ち広がる模様が入った簟の敷物がもう冷たすぎる。夏には帰って來ると約束したのに秋になって涼しすぎる。ということであろうが、詩の全体から見ると、二人が楽しく過ごしたアイテムを羅列ととらえた方が最後の「檀郎を打つ」が強調されるということで、夏の涼感を得るための水琴とした。

 

玉腕重金扼臂,澹梳粧。

あの春の日は、たくましく輝くような腕に抱かれ、金のような重たさを身体に感じ、腕枕をしてくれ、そして、髪をゆっくり梳き、お化粧をなおした。

扼臂 扼:1 強く押さえる。締めつける。2 要所を占める。臂:うで。方から手首まで。

澹梳 澹:風や波によってゆったりと動くさま。梳:くしけずる【梳る】櫛で髪の毛をとかして整える。けずる。すく。

 

幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。

それから、何度もお香に火をつけてくれ、冷たい繊細な指をあたためて、一度注いでもらったお酒を飲めば、紅い唇にお酒で潤い光ったものだ。

絳脣 点絳唇「口紅を塗る」

 

佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

それでも、紅い糸で結ばれていると逢瀬の約束をするだけでもてあそぶのなら、「蠅払子」でもって、あの「檀郎」を打ちたたいてやりたいとおもう。

佯弄 佯:振りをする,見せ掛ける佯死死んだ振りをする.弄:1 もてあそぶ。思うままに操る。「策を―・する」「諧謔(かいぎゃく)を―・する」2 あざける。からかう。なぶりものにする。

ほっす【払子】とは。意味や解説。《唐音》獣毛や麻などを束ねて柄をつけたもの。もとインドで蚊・ハエやちりを払うのに用いたが、のち法具となって、中国の禅宗では僧が説法時に威儀を正すのに用いるようになり、日本でも真宗以外の高僧が用いる

檀郎 ・檀郎/安仁/潘郎 晋の潘岳のあざな。彼は美男子であり、詩人であったが、妻の死にあい「悼亡」の詩三首を作った。後世、妻の死をなげいた模擬作が多く作られた。潘岳の幼名が檀奴だったので、「檀郎」夫や恋い慕う男を意味する。・潘岳:安仁。滎陽(けいよう)中牟(河南省)の人。陸機と並ぶ美文の文学の大家で,錦を敷きのべたような絢爛(けんらん)たる趣をたたえられた。ことに人の死を悼む哀傷の詩文を得意とし,亡妻への尽きぬ思いをうたった〈悼亡詩(とうぼうし)〉3首はよく知られる。絶世の美男として,また権門の間を巧みに泳ぎまわる軽薄才子として,とかく話題にこと欠かなかった。八王の乱の渦中で悲劇的な刑死を遂げた。

10和凝 (改)《巻六19山花子二首其一》『花間集』270全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6622

和凝  山花子二首 其一  

鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。

星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

(又春を迎えたが、この春こそ寵愛という「春の思い」にかられるが、寵愛の準備をしてもそのまま春は過ぎてゆく。)

鶯の絵柄の錦、蝉の羽柄のように鮮やかで美しい着物を着て、麝香の香りは閨に漂う。軽やかに裾をうごかして庭に出てゆくと早咲きの梅の花は夜のほのぼのと明ける中で迷ってしまう。

川辺にはツガイのおしどりは翅の金模様を激しく動かして交尾している、紅い色を上げたり下げたりしていて、春の霞が低く漂っている。

微笑を隠しながら、その顔には星のような可憐なえくぼがあり、薄紅かかった若々しいほほの面立ちである。金絲のスカートの前を開いたら、銀泥の下着をつけている。

春景色のなかで春を思う気持ちとこの若草の萌えるかぐわしい香となかば調和していくので、春草は萋萋として色濃くなっていくだけだ。

10和凝 (改)《巻六19山花子二首其一》『花間集』270全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6622

 

 
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韓愈88-#13 §3-2 (改訂)巻一26 赴江陵途中寄贈王二十補闕、李十一拾遺李二十六員外翰林三學士 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1527> Ⅱ#13 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6619  
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  index-5 806年39歳 50首の(2)25首 index-6[807年~809年 42歳]20首 index-7[810年~811年 44歳] 34首 index-8 [812年~814年47歳]46首 index-9[815年~816年 49歳] 57首 index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首  
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  孟郊 張籍          
  ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"  
  Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog 766年-125杜甫 《巻1737詠懷古跡,五首之四【案:吳若本作〈詠懷〉一章、〈古跡〉四首。】》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55歲-125 <988> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6620  
  杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首 杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩)  杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首 杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首 杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首 杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首  
  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
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和凝(898955)、字を成績と言い、鄆州の須昌(今の山東省東平の西北)の人。彼は幼い時から聡明で、早くから書物を学び、一読すれば常に大義に通じた。梁の義成軍節度使賀瓌に招かれて従事となったが、賀瓌が唐の荘宗との戦いに敗れると、彼一人が賀瓌に従った。賀瓌は和凝に対して、自分に従うのをやめて己の道を求めるように勧めたが、和凝は「男子たるもの、人の知遇を得ながら危難の際に恩に報いないのは、本意ではない」と言い、行動をともにし、追っ手を射倒して、賀瓌の命を救った。そこで、賀瓌は自分の娘を和凝に娶らせ、「和凝は将来重位に就くであろぅから、謹んで仕えるように」と子供らに諭した。そのために、和凝の名は一時に轟いた。彼は、梁、唐、晋、漢、周の五朝に仕え、多くの後進を導いたので、人々から広く慕われたと言う。和凝は若い時に好んで艶詞を作ったが、晋の宰相になると詞を回収して焼き捨てさせた。しかし、艶詞のために名を汚すことになり、契丹は晋に入朝すると、彼を曲子相公と呼んだと言う。和凝の詞は二十七首が伝わり、『花間集』 には二十首の詞が収められている。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。

 

山花子二首 其一

鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。

鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。

星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。

春思半和芳草嫩,碧萋萋。

(又春を迎えたが、この春こそ寵愛という「春の思い」にかられるが、寵愛の準備をしてもそのまま春は過ぎてゆく。)

鶯の絵柄の錦、蝉の羽柄のように鮮やかで美しい着物を着て、麝香の香りは閨に漂う。軽やかに裾をうごかして庭に出てゆくと早咲きの梅の花は夜のほのぼのと明ける中で迷ってしまう。

川辺にはツガイのおしどりは翅の金模様を激しく動かして交尾している、紅い色を上げたり下げたりしていて、春の霞が低く漂っている。

微笑を隠しながら、その顔には星のような可憐なえくぼがあり、薄紅かかった若々しいほほの面立ちである。金絲のスカートの前を開いたら、銀泥の下着をつけている。

春景色のなかで春を思う気持ちとこの若草の萌えるかぐわしい香となかば調和していくので、春草は萋萋として色濃くなっていくだけだ。

 

山花子二首 其二

銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。

玉腕重金扼臂,澹梳粧。

幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。

佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

 

『山花子二首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

山花子二首 其一

鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。

鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。

星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。

春思半和芳草嫩,碧萋萋。

 

(下し文)

(山花子二首 其の一)

鶯 蟬縠【せみから】を錦し 麝臍【じゃさい】を馥す,裾を輕く花早く 曉烟【ぎょうえん】に迷う。

鸂鶒【けいちょく】金を戰い 紅 掌げたり墜したり,翠雲 低くす。

星の靨【えくぼ】 笑隈にし 霞の臉 畔にす,金を蹙め 襜を開き 銀泥を襯す。

春思は半ば和【とも】にし 芳草 嫩【わか】くし,碧【あお】きに萋萋たり。

 

(現代語訳)

(又春を迎えたが、この春こそ寵愛という「春の思い」にかられるが、寵愛の準備をしてもそのまま春は過ぎてゆく。)

鶯の絵柄の錦、蝉の羽柄のように鮮やかで美しい着物を着て、麝香の香りは閨に漂う。軽やかに裾をうごかして庭に出てゆくと早咲きの梅の花は夜のほのぼのと明ける中で迷ってしまう。

川辺にはツガイのおしどりは翅の金模様を激しく動かして交尾している、紅い色を上げたり下げたりしていて、春の霞が低く漂っている。

微笑を隠しながら、その顔には星のような可憐なえくぼがあり、薄紅かかった若々しいほほの面立ちである。金絲のスカートの前を開いたら、銀泥の下着をつけている。

春景色のなかで春を思う気持ちとこの若草の萌えるかぐわしい香となかば調和していくので、春草は萋萋として色濃くなっていくだけだ。

 

(訳注)

山花子二首 其一

(又春を迎えたが、この春こそ寵愛という「春の思い」にかられるが、寵愛の準備をしてもそのまま春は過ぎてゆく。)

唐教坊曲名。一名《南唐浣溪沙》,《梅苑》名《添字浣溪沙》,《樂府雅詞》名《攤破浣溪沙》,《高麗史樂志》名《感恩多令》。

唐の教坊曲、花間集には和凝の二首のみ所収。単調四十八字、前段二十四字四平韻、後段二十四字三平韻⑦⑦⑦③/7⑦⑦③の詞形をとる。

 

山花子二首 其一

鶯錦蟬縠馥麝臍 輕裾花早曉烟迷 鸂鶒戰金紅掌墜 翠雲
星靨笑隈霞臉畔 蹙金開襜襯銀泥 春思半和芳草嫩 碧萋

○●○●●●○  △○○●●○○ ○?●○○●●  ●○○

○●●△○△●  ●○○△●○△ ○△●△○●●  ●○○

 

山花子二首 其二

銀字笙寒調正  水紋簟冷畫屏
玉腕重金扼臂  澹梳粧
幾度試香纖手暖  一迴嘗酒絳脣
佯弄紅絲蠅拂子  打檀

○●○○△△△  ●○●△●△△

●●△○●●  △○?

△●●○○●●  ●△○●●○△

○●○○○●●  ●○○

山花子

唐教坊曲名。一名《南唐浣溪沙》,《梅苑》名《添字浣溪沙》,《樂府雅詞》名《攤破浣溪沙》,《高麗史樂志》名《感恩多令》。

 

雙調四十八字,前段四句三平韻,後段四句兩平韻

此詞即《浣溪沙》之別體,不過多三字兩結句,移其韻於結句耳,此所以有〔添字〕、〔攤破〕之名,然在《花間集》,和凝時已名《山花子》,故另編一體。

此の詞は即ち《浣溪沙》の別體であり,兩結句に三字を過多するだけではない,結句に於てのみ其の韻を移し,此所 以って〔添字〕有り、〔攤破〕の名《攤破浣溪沙》なり,然るに《花間集》に在る,

 

牛嶠《感恩多二首其一》

兩條紅粉,多少香閨。強攀桃李,斂愁

●○○●● ○●○○● ○○○●○ ●○○

陌上鶯啼蝶舞,柳花。柳花,願得郎心,憶家還早

●●○○●● ●○○ ●○○ ●●○○ ●○○●○

 

欧陽烱《浣溪沙三首其三》

落絮殘鶯半日  玉柔花醉只思  映竹滿爐

●●○○●●○  ●○○●△△○  ●?●●●○○

獨掩畫屏愁不語  斜欹瑤枕髻鬟  此時心在阿誰 

●●●△○△●  ○○○△●○△  ●○○●○○○ 

攤破浣溪沙《山花子》

菡萏香銷翠葉殘。西風愁起綠波間。還與韶光共憔悴。不堪看。

細雨夢回難塞遠。小樓吹徹玉笙寒。多少淚珠何限恨。倚欄杆。

◎●○○●●○ ●●○○ ○◎● ●○○

◎●◎○○●● ◎○●●○○ ●◎○○●● ●○○

南唐李璟:李 璟は、十国南唐の第2代皇帝。烈祖李昪の長男。初名は徐景通であったが、南唐建国後に李璟と改名し、さらに後周の臣下を称したあと後周の信祖郭璟の諱を避けて李景と再改名した。

 

鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。

鶯の絵柄の錦、蝉の羽柄のように鮮やかで美しい着物を着て、麝香の香りは閨に漂う。軽やかに裾をうごかして庭に出てゆくと早咲きの梅の花は夜のほのぼのと明ける中で迷ってしまう。

○錦 様々な色糸を用いて織り出された絹織物の総称。 錦のように鮮やかで美しいものを指して用いる言葉。例として錦絵、錦鯉、錦鶏、錦眼鏡など。

馥:ふく【馥】[漢字項目]とは。意味や解説。[音]フク(漢)[訓]かおりかんばしい。ゆたかな香り。

○麝臍 麝香はその独特の芳香が最大の特徴で、「麝」という文字はその香りが(矢を)射るように遠くまで伝わるということから「鹿」の下に「 ... 中国語では「麝」という文字がジャコウジカを表し、生薬の麝香は「麝の臍にある匂い袋の香り」ということで「麝臍香」

○輕裾 春風に裾が軽やかに揺れる。

○花早 早咲きの梅の花。

○曉烟 夜のほのぼのと明けるころ。夜明け方。「あけぼの」より少し明るくなったころをいうか。有明・春暁・鶏旦・暁やみ・彼者誰・暁天・黎明・早暁・明け・日出・明けがた・彼誰時・鶏鳴・有り明け・引き明け・夜明・引明・夜あけ・有明け方・有り明け方・彼誰・平明・早天・引明け・明け方・有りあけ・夜明け・白白明け・払暁・暁闇・白々明・暁・暁方・遅明・有明け・彼は誰時・曙・彼者誰時・白白明・有明方・日の出・彼は誰・明方。

 

鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。

川辺にはツガイのおしどりは翅の金模様を激しく動かして交尾している、紅い色を上げたり下げたりしていて、春の霞が低く漂っている。

鸂鶒 〔けいちょく〕オシドリ(鴛鴦)に似た水鳥。つがいで動く。紫鴛鴦。

○翠雲 はるかすみ。わかい妓女の髪型。

 

星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。

微笑を隠しながら、その顔には星のような可憐なえくぼがあり、薄紅かかった若々しいほほの面立ちである。金絲のスカートの前を開いたら、銀泥の下着をつけている。

靨 【えくぼ】(笑窪、ゑくぼ)は、人が笑うとき、頬にできる小さなくぼみのこと。 赤ちゃんは一般的にえくぼを持っているが、成長とともに消え、大人になってもえくぼを持ったままの人は少ない。えくぼは魅力的であるとされる場合がある。

霞臉 薄紅かかったほほ。

蹙  (1) (眉を)(しか)める,(しわ)を寄せる.【関】 zhòu (2) 切迫した,追い詰められた.蹙 cùsuō[](1) 収縮する,皺が寄る.【同】蹙(2) 畏縮(い/しゆく)する,尻込みする.

 「《爾雅·釋器》衣蔽前、謂之襜(衣の前を覆う、これを襜(セン)という)」とあり、 和訓には、 「まえかけ、ひとえもの、

 内側に当てる,下に着る.用例里边衬上一件衣裳 shang 。〔主(場所)++方補+目〕=内に着物を1枚着込む.

 

春思半和芳草嫩,碧萋萋。

春景色のなかで春を思う気持ちとこの若草の萌えるかぐわしい香となかば調和していくので、春草は萋萋として色濃くなっていくだけだ。

【わかい】 新緑。  生じたばかりで柔らかい。新しく柔らかい。 【嫩草】わかくさ. 若々しく柔らかい草。 「若草」とも書く。「どんそう」とも読む。 【嫩葉】わかば. 芽生えたばかりに柔らかい葉。 嫩葉 ( どんよう ) 」に同じ。 「若葉」とも書く。

芳草路萋萋 旅立った男が旅先で春草(女)に心奪われて帰って来ないことを。『楚辞』招隠士第十二「王孫遊兮不歸、春草生兮萋萋。」(王孫 遊びて歸らず、春草 生じて萋萋たり。)に基づいている。

韋荘『望遠行』

欲別無言倚畫屏、含恨暗傷情。

謝家庭樹錦鶏鳴、残月落邊城。

人欲別、馬頻噺、綠槐千里長堤。

出門芳草路萋萋、雲雨別來易東西。

不忍別君後、却入旧香閏。

100 望遠行 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-285-5-#39  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2972

10和凝 (改)《巻六18菩薩蠻一首》『花間集』269全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6617

和凝  菩薩蠻   

越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。

閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

(南の国から妃賓となったものの春が来ることを抒情的にうたい、誰も来ない春の日をだれにも話すことは難しいと詠う。)

まだ少し寒い裏庭に越の国の梅の花が咲かせている、その梅の枝を少し折り取って飾る、桶には冰が清らかに張っているが、花籠の陰の水は藍色に映る。

日が昇り暖かくなると杏の梢の花が色鮮やかにてらされて、そこに柳の枝が風に揺られ、そこに、強い風が吹くと狂ったように揺れる。

階はしずかなもので、しなやかな莎草の小路は緑にあふれ、遠く故郷の夢を見るだけで惜しいと思うことに耐えている。

くやしさ、うらみから逃れる春が又来る、あのお方のことを思い、あの人のことをかさねて話すことはもう難しい。

10和凝 (改)《巻六18菩薩蠻一首》『花間集』269全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6617

 

 
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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

菩薩蠻

越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。

暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。

閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。

離恨又迎春,相思難重陳。

(南の国から妃賓となったものの春が来ることを抒情的にうたい、誰も来ない春の日をだれにも話すことは難しいと詠う。)

まだ少し寒い裏庭に越の国の梅の花が咲かせている、その梅の枝を少し折り取って飾る、桶には冰が清らかに張っているが、花籠の陰の水は藍色に映る。

日が昇り暖かくなると杏の梢の花が色鮮やかにてらされて、そこに柳の枝が風に揺られ、そこに、強い風が吹くと狂ったように揺れる。

階はしずかなもので、しなやかな莎草の小路は緑にあふれ、遠く故郷の夢を見るだけで惜しいと思うことに耐えている。

くやしさ、うらみから逃れる春が又来る、あのお方のことを思い、あの人のことをかさねて話すことはもう難しい。

 

(菩薩蠻)

越梅 半拆 輕く寒い裏には,冰清く 澹薄して 籠藍の水。

暖 杏梢の紅に覺め,遊絲 狂いて風に惹かる。

閑堦 莎徑碧にし,遠夢 猶お堪え惜む。

離恨 又た春を迎え,相思 重ねて陳べ難し。

 

 

和凝『菩薩蠻一首』 現代語訳と訳註

(本文) 菩薩蠻

越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。

暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。

閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。

離恨又迎春,相思難重陳。

 

(下し文)

(菩薩蠻)

越梅 半拆 輕く寒い裏には,冰清く 澹薄して 籠藍の水。

暖 杏梢の紅に覺め,遊絲 狂いて風に惹かる。

閑堦 莎徑碧にし,遠夢 猶お堪え惜む。

離恨 又た春を迎え,相思 重ねて陳べ難し。

 

(現代語訳)

(南の国から妃賓となったものの春が来ることを抒情的にうたい、誰も来ない春の日をだれにも話すことは難しいと詠う。)

まだ少し寒い裏庭に越の国の梅の花が咲かせている、その梅の枝を少し折り取って飾る、桶には冰が清らかに張っているが、花籠の陰の水は藍色に映る。

日が昇り暖かくなると杏の梢の花が色鮮やかにてらされて、そこに柳の枝が風に揺られ、そこに、強い風が吹くと狂ったように揺れる。

階はしずかなもので、しなやかな莎草の小路は緑にあふれ、遠く故郷の夢を見るだけで惜しいと思うことに耐えている。

くやしさ、うらみから逃れる春が又来る、あのお方のことを思い、あの人のことをかさねて話すことはもう難しい。

 

(訳注)

菩薩蠻

(南の国から妃賓となったものの春が来ることを抒情的にうたい、誰も来ない春の日をだれにも話すことは難しいと詠う。)

唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

菩薩蠻一首

越梅半拆輕寒,冰清澹薄籠藍

暖覺杏梢,遊絲狂惹

閑堦莎徑,遠夢猶堪

離恨又迎,相思難重

●○●●△○●  ○○△●△○●

●●●△○  ○○△●△

○○○●●  ●△△○●

△●●△○  △△△△△

 

越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。

まだ少し寒い裏庭に越の国の梅の花が咲かせている、その梅の枝を少し折り取って飾る、桶には冰が清らかに張っているが、花籠の陰の水は藍色に映る。

○拆(1) 解体する,ばらばらに壊す.(2) はがす,引離す.拆除 chāichú[]解体除去する,取り壊す.

越梅 越の国の梅の花。

 

暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。

日が昇り暖かくなると杏の梢の花が色鮮やかにてらされて、そこに柳の枝が風に揺られ、そこに、強い風が吹くと狂ったように揺れる。

 

閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。

階はしずかなもので、しなやかな莎草の小路は緑にあふれ、遠く故郷の夢を見るだけで惜しいと思うことに耐えている。

○堦 庭に出る階段、部屋の前の廊下の間際の段差部分。

○莎徑 しなやかな莎草の小路。

 

離恨又迎春,相思難重陳。

くやしさ、うらみから逃れる春が又来る、あのお方のことを思い、あの人のことをかさねて話すことはもう難しい。

10和凝 (改)《巻六17臨江仙二首其二》『花間集』268全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6612

和凝  臨江仙二首 其二  

披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。

肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

(呉に送られた西施は心に秘めて閨に入り、春を迎えて晴れやかな気持ちで身をゆだねのを詠う。)

暖かい綿入れの服を身に着けている衣の下から風が吹き上げ、紅い宮錦をまきあげる、鶯が春を告げる朝にときとして囀ってくれる声が軽やかに聞こえてくる。みどりの薄絹の上掛け布で、しとやかに象牙の簪を付けて、顔を隠す。金細工の鳳凰は歩くに従い雌雄そろって揺れる。しなやかで、ほっそりとしたからだ、きめこまかい肌がつやつやして美しい。それにどうしたのか顔に表情を少し変えて、春を迎えて晴れやかな気持ちを微笑に伝えて、贈ってくる。なまめかしさと恥じらいをみせていて、閨の布団にあえて入ろうとはしない。部屋には蘭膏の香りが広がり、燈火の内にふたりのこころは深くなっていく。

10和凝 (改)《巻六17臨江仙二首其二》『花間集』268全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6612

 

 
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10和凝 (改)《巻六16臨江仙二首其一》『花間集』267全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6607

和凝  臨江仙二首 其一   

海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。

碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

(越王句踐の命を受けて呉に嫁ぐ西施の美しさを詠い、復讐を遂げた越王の朝廷のあったところには、恥辱をいやす勾践の妻のように赤い蓼の花が夏を過ぎるまで咲いていると詠う。)

海棠花は好ましい香りが熟成されてまろやかになり、晩春の銭塘江の景色も変わろうとしている、小楼は仙境のように霧霞の薄い衣にまかれ、ぼんやりと薄暗くぼんやりしている。若くてみどりの黒髪のもとどりにした髪型で初めて出て宮中にあがると、刺繍の簾にかこまれた宮殿である。麝香はあたり中にただよい、鸞の佩び玉は風の中にあるように揺れる。磨かれた宝玉の花鈿に、簪から垂れる鸂鶒の金細工が爭っているように揺れる、真白な雪のような肌、両鬢にくも型の流行の髪型、まさにそれらが見事に融和している。あのお方を思う気持ちは遥か先の東海の蒼海の東の仙界の三山に向かう。ここには越王が復讐をはたした朝廷があったところに夏を迎えた今でも、蓼の花が赤く咲いている。

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  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

臨江仙二首 其一

(越王句踐の命を受けて呉に嫁ぐ西施の美しさを詠い、復讐を遂げた越王の朝廷のあったところには、恥辱をいやす勾践の妻のように赤い蓼の花が夏を過ぎるまで咲いていると詠う。)

海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。

海棠花は好ましい香りが熟成されてまろやかになり、晩春の銭塘江の景色も変わろうとしている、小楼は仙境のように霧霞の薄い衣にまかれ、ぼんやりと薄暗くぼんやりしている。

翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。

若くてみどりの黒髪のもとどりにした髪型で初めて出て宮中にあがると、刺繍の簾にかこまれた宮殿である。麝香はあたり中にただよい、鸞の佩び玉は風の中にあるように揺れる。

碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。

磨かれた宝玉の花鈿に、簪から垂れる鸂鶒の金細工が爭っているように揺れる、真白な雪のような肌、両鬢にくも型の流行の髪型、まさにそれらが見事に融和している。

含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

あのお方を思う気持ちは遥か先の東海の蒼海の東の仙界の三山に向かう。ここには越王が復讐をはたした朝廷があったところに夏を迎えた今でも、蓼の花が赤く咲いている。

 

其二

披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。

碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。

肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。

嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

 

 

『臨江仙二首』 現代語訳と訳註

(本文)

臨江仙二首 其一

海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。

翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。

碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。

含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

 

(下し文)

(臨江仙二首 其の一)

海棠 香老 春江の晚,小樓 霧縠し 濛す。

翠鬟 初めに出でて 繡簾の中,麝煙 鸞珮 風に蘋す。

碾玉 釵搖して鸂鶒の戰,雪肌 雲鬢 將に融る。

含情 遙指 碧波の東,越王の臺殿 蓼花 紅なり。

 

(現代語訳)

(越王句踐の命を受けて呉に嫁ぐ西施の美しさを詠い、復讐を遂げた越王の朝廷のあったところには、恥辱をいやす勾践の妻のように赤い蓼の花が夏を過ぎるまで咲いていると詠う。)

海棠花は好ましい香りが熟成されてまろやかになり、晩春の銭塘江の景色も変わろうとしている、小楼は仙境のように霧霞の薄い衣にまかれ、ぼんやりと薄暗くぼんやりしている。

若くてみどりの黒髪のもとどりにした髪型で初めて出て宮中にあがると、刺繍の簾にかこまれた宮殿である。麝香はあたり中にただよい、鸞の佩び玉は風の中にあるように揺れる。

磨かれた宝玉の花鈿に、簪から垂れる鸂鶒の金細工が爭っているように揺れる、真白な雪のような肌、両鬢にくも型の流行の髪型、まさにそれらが見事に融和している。

あのお方を思う気持ちは遥か先の東海の蒼海の東の仙界の三山に向かう。ここには越王が復讐をはたした朝廷があったところに夏を迎えた今でも、蓼の花が赤く咲いている。

 

(訳注)

臨江仙二首其一

(越王句踐の命を受けて呉に嫁ぐ西施の美しさを詠い、復讐を遂げた越王の朝廷のあったところには、恥辱をいやす勾践の妻のように赤い蓼の花が夏を過ぎるまで咲いていると詠う。)

臨江仙は擣教坊の曲であり、基本的に詠懐詩である。河川の神にまつわるものを詠ったものが多い。湘江の神霊となった娥皇と女英、湘江に身を投じた屈原、黄河の洛神賦、水と川を司る洛水の女神。黄河の神・河伯の妻。黄河にそそぐ川の一つ・洛水(らくすい)と伊川(いせん)が合流するあたりに住んでいる。「雒嬪(らくひん)」「洛神」とも呼ばれる)、琴を弾いていると、夜中に洛浦の女神と出会い、洛水をめぐる秘密を語る話も見られる(『太平広記』311「蕭曠遇女神」)。

黄河の神・河伯(かはく)の配偶神。道教における黄河の神。広い意味で川の神全般を指すこともある。黄河の神である河伯は数多い川の神の中でも最も重要で、豊作や降雨を授ける力があるとされている。すでに殷の時代から河伯に対する祭祀が行われ、牛などが犠牲にささげられた。人間の女子が犠牲とされた時期もあり、巫女などが住民中の娘を花嫁として飾り立て、ベッドに寝かせて川に沈めたという。

 広く行き渡っている説では、冰夷(馮夷)(ひょうい)という男が渡河中に溺死し、天帝から河伯に任じられたという。道教では、冰夷は薬を飲んで水の仙人となり、河伯になったとしている。その姿について、かつて暴風雨の中に出現した河伯は水の車に乗り、二頭の龍に車を引かせ、螭(みずち)をそえ馬にしていたという伝説がある。

 また、河伯は人の頭に魚の体をしているともいわれ、明朝ころからは龍の一種と考えられるようになったといわれている。

この詩では、ぜっしの美女西施を詠い、越王句踐の旧跡について歌うものである。銭塘江 杭州市の南を流れる浙江省第一の河。杭州湾の形状に起因して毎年起こる「銭塘の秋濤(しゅうとう)」(海水の大逆流現象)で有名だが、これは銭塘江の潮神となった伍子胥の執念で起こっているという伝説がある。

 紀元前5世紀、呉(ご)が越(えつ)を破り、呉王夫差(ふうさ)は越王句践(こうせん)を捕虜にした。このとき呉王に仕えていた伍子胥(ごししょ)は何度となく越王を殺すように王に進言したが入れられず、結局句践は釈放された。その後も伍子胥は夫差に対して越を打つように進言したが、ついに腹を立てた夫差によって死を賜ることになった。伍子胥は息子を呼び、「わしの首を都城の南門に懸け、越軍が攻め寄せるのが見えるようにしてくれ。わしの遺体は鯰の皮に包んで銭塘江に投げ入れてくれ。わしは朝夕潮に乗って呉国が敗れるのを見てやりたいのだ」といった。 「銭塘の秋濤」が起こるようになったのはこのことがあってからだという。

 

唐の教坊の曲名。『花間集』には、《臨江仙》二十六首所収、ほとんど詠懐詩である。和凝の作は二首収められている。双調五十三字、前段二十六字四句三平韻で、後段二十七字四句三平韻7⑥⑦⑥/7⑥⑦⑦の詞形をとる。

臨江仙二首 其一

海棠香老春江晚  小樓霧縠
翠鬟初出繡簾  麝煙鸞珮蘋
碾玉釵搖鸂鶒戰  雪肌雲鬢將
含情遙指碧波  越王臺殿蓼花

●○○●○○●  ●○△●○△

●○○●●○△  ●○○●○△

●●○○○?●  ●○○●△○

○○○●●○○  ●△○●●○○

牛希濟(臨江仙七首 其一)双調五十八字、前段二十九字五句四平韻一仄韻、後段二十九字五句三平韻一仄韻で、⑦⑥⑦❹⑤/7⑥⑦❹⑤の詞形をとる。

峭碧參差十二  冷煙寒樹重

宮殿是仙  金鑪珠  香靄晝偏

一自楚王驚夢斷  人間無路相

至今雲雨帶愁  月斜江  征棹動晨

●●△△●●○  △○○●△△

○○○●●○○  ○○○●  ○●●△○

●●●△○△●  ○△○●△○  ●○○●●○○  ●○○●  ○●●○○

 

海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。

海棠花は好ましい香りが熟成されてまろやかになり、晩春の銭塘江の景色も変わろうとしている、小楼は仙境のように霧霞の薄い衣にまかれ、ぼんやりと薄暗くぼんやりしている。

○海棠 1 バラ科の落葉小高木。枝は紫色で垂れ下がり、葉は楕円形。4月ごろ、紅色の花が下向きに咲き、実は丸く、黄褐色に熟す。中国の原産で、庭木などにする。垂枝(すいし)海棠。花(はな)海棠。

○香老 老香と熟成香の違いは、熟成香は好ましい香りが熟成されてまろやかになることで、老香はそれがさらに進んで好ましくない香りで、マニアックになる、或はよい香りが消えてゆく。

江 下句八句目に「越王臺殿」とあり、会稽、紹興の歓楽街を示すもので、銭塘江のこと。

○霧縠【ムコク】. 霧のように、軽く薄いちぢみの絹。仙人(センニン)などの着物をいう。《文選司馬相如<子虛賦>》:於是鄭女曼 被阿緆, 揄紵縞, 雜纖羅, 垂霧縠。” 劉良注:霧縠, 其細如霧, 垂之為裳也。

/空濛【くうもう】小雨や霧のために、ぼんやりと薄暗いさま。・濛: 煙雨迷茫的樣子。如:「剛下過一場雨,山間一片濛的景色。」亦作「空濛」。武元衝『題嘉陵驛』「悠悠風旆繞山川,山驛空濛雨作煙。路半嘉陵頭已白,蜀門西更上靑天。」(武元衝が蜀に入る途上で詠った詩。)ゆつたりと落ち着いて風に靡く旗の行列が秦嶺山脈、大巴山の大山脈と、岷山の大山脈の間の地溝帯を嘉陵江の流れるそれらの山川を繞【めぐ】って進んでいる。山の中の宿場、嘉陵江を渡る手前側では綿谷、利州、渡し場では吉柏津、対岸に渡った益昌とつづくあたりをいう。 津に辿り着いたが、髪の毛は白くなってしまった。蜀の剣閣へは西の方に向かい、更に青天に上【のぼ】るような嶮しい登り道が続いている。

《桃葉歌》,其歌曰:“桃葉複桃葉,渡江不用楫;但渡無所苦,我自迎娶汝。

 

翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。

若くてみどりの黒髪のもとどりにした髪型で初めて出て宮中にあがると、刺繍の簾にかこまれた宮殿である。麝香はあたり中にただよい、鸞の佩び玉は風の中にあるように揺れる。

翠鬟 若いみどりの黒髪のもとどり、張泌『浣溪沙十首其四』「依約殘眉理舊黃,翠鬟擲一簪長,暖風晴日罷朝粧。閑折海棠看又撚,玉纖無力惹餘香,此情誰會倚斜陽。」

張泌《巻四27浣渓沙 十首 其四》『花間集』178全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6162

牛嶠『酒泉子一首』「記得去年,煙暖杏園花發。雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟上,落梅粧。」

牛嶠《巻四18酒泉子一首》『花間集』169全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6117

鸞珮 鸞鳳の玉の彫刻の身につけるもの。腰にさげる玉の装飾品。礼服(らいふく)に用いた玉の装飾品。組み糸に玉を通し,胸の下から沓(くつ)のところまで垂らし,歩くときに鳴るようにしたもの。おんもの。玉佩

 

碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。

磨かれた宝玉の花鈿に、簪から垂れる鸂鶒の金細工が爭っているように揺れる、真白な雪のような肌、両鬢にくも型の流行の髪型、まさにそれらが見事に融和している。

碾玉 うすのような形の磨かれた髪飾りの宝飾。

鸂鶒 えんおうのこと。兄弟の喩えにされる鳥。杜甫はよく使う。鸂鶒【けいせき】紫おしどり。謝霊運『鸂鶒賦』「覧水禽之萬族、信莫麗干鸂鶒。」(水禽之萬族を覧るに、信に干鸂鶒麗しきは莫し。)水鳥。いろいろに書く。鳥の名。常葉の大きなもので、紫色が多いので、紫鷲喬ともいう。
杜甫『春水生 二絶其一』
二月六夜春水生,門前小灘渾欲平。
鸕鸂鸂鶒莫漫喜。吾與汝曹俱眼明。

春水生 二絶其一 杜甫 成都(4)浣花渓の草堂(4 - 9)  杜甫 <414  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2015 杜甫詩1000-414-597/1500

杜甫『江頭五詠:鸂鶒』

故使籠寬織,須知動損毛。

看雲莫悵望,失水任呼號。

六翮曾經剪,孤飛卒未高【孤飛只未高】。

且無鷹隼慮,留滯莫辭勞。

(江頭の五詠:鸂鶒【けいせき】)

故【ことさら】に籠をして織を寛にせしむ、須【すべか】らく知るべし動けば毛を損するを。

雲を看て 猶お悵望す、水を失して呼号するに任す。

六翮【ろくかく】曾て剪らるるを経たり、孤飛 卒【つい】に未だ高からず。

且つ鷹隼【ようしゅん】の慮り無し、留滞 労を辞する莫れ。

 

含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

あのお方を思う気持ちは遥か先の東海の蒼海の東の仙界の三山に向かう。ここには越王が復讐をはたした朝廷があったところに夏を迎えた今でも、蓼の花が赤く咲いている。

○碧波東 東海の蒼海の東には仙界の三山がある。この詩の仙郷は、会稽の道教の本山の傍の歓楽街を示すものである。

○越王 春秋時代後期の越の王勾践(未詳 - 紀元前465年)は、范蠡の補佐を得て当時華南で強勢を誇っていた呉を滅ぼした。春秋五覇の一人に数えられることもある。句践とも表記される。越王允常の子で、楚の恵王の外祖父にあたる。この時、復讐のための策謀として献上した美女たちの中に、西施や鄭旦がいた。きれいな女たちはここに集められてきたこと、集まったこと、ここではその故事を連想させる。また、勾践は呉に敗れ屈辱の日々と悔しさを忘れず「会稽の恥」と部屋に苦い肝を吊るして毎日のようにそれを舐めて呉に対する復讐を誓った。前述の夫差と合わせて臥薪嘗胆という故事の元となった逸話である。越は着々と国力を蓄え、夫差が中原の会盟に出かけたときを狙って呉に攻め込んだ。呉の太子友は斬られ、夫差は慌てて呉へ引き返してきたが、これより4年後に呉は越に滅ぼされることになる。呉を滅ぼした勾践は、越の都を現在の江蘇省の連雲港に遷し、更に諸侯を会盟して中原の覇者となった。

蓼花 たでの花。タデ科 一年草または多年草。草丈20cm2m前後(種類によって異なる)。花期610月。花色 赤紫、ピンクなど。ここは女の盛りを過ぎた年増女を示すものであること。復讐を果たした勾践の妻を連想させる。

10和凝 (改)《巻六15小重山二首其二》『花間集』266全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6602

和凝  小重山二首 其二   

正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。

柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

(春たけなわのころは科挙試験の合格者発表がある、合格したら曲江の杏園の杏の花のもとで逢うことを約束していたが、合格者名簿に載っていたが、約束の場所には来なかった。毎年の春の出来事であり、また新しい春が来て、また、丹庭階を登ってゆくものがいると詠う。)

まさにここ都長安、大明宮は、春爛漫のころ、神仙宮殿には「八千人」、神々、巫女が花が咲く枝が集まった中に枝をかき分けはいって小枝を折り取る。花に加え、烏犀帯の正装、白紵の舞を踊るもの、音楽、舞踊、散楽と劇、それらが全て最高の時を迎える、天使に捧げる思いで出演し、及第の者は無礼講で繰り出していく、都の大通りには、町々から人々が出てきて手を振り、袖を振って歓迎している。柳色は濃くなり、妓優の柳の眉には愁いが広がっている。城中、管楽器と弦楽器の音がよく響き通りぬける。きっとあの妓優、宮女、娘たちは、約束の花のもとに行こうと探す。春の盛りに、毎年おこることで、日は流れ、長安の曲江の池の畔にはまた新しい春が訪れる、牡丹、杏花が咲き乱れ、一杯に広がる。新しい科挙合格者の掲示版が出され、その人はきっと名をあげ、一族の誉れとして、天子に謁見するための丹墀を歩んでいく人となる。

10和凝 (改)《巻六15小重山二首其二》『花間集』266全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6602

 

 
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10和凝 (改)《巻六14小重山二首其一》『花間集』265全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6597

和凝《小重山二首其一》

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。

煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。初心【うぶ】に見える涙顔の化粧を施して、曉花の朝露をささげて、麗らかな春の日は早く明けそして日ごとに長くなる、風が吹いてきて、花々の匂いを届けてくれて和ませてくれる。春の夕靄が漂うと青柳の長いゆれる枝を隠してしまう、お堀の水は春水で嵩をたかく、淥水一層青く澄んでいる、そして太掖池に流れ入り堤をびっしり春の草が生えている。一時ふった春雨がまた降り、花を散り落として春の景色を洗い流してしまうけれど、天使の夾城はるか遠くまで続き、季節が変わっても花の苑に向かう、そうして《竹枝子曲》の笙歌を吹奏するのである。

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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

小重山二首 其一

(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。

曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。

初心【うぶ】に見える涙顔の化粧を施して、曉花の朝露をささげて、麗らかな春の日は早く明けそして日ごとに長くなる、風が吹いてきて、花々の匂いを届けてくれて和ませてくれる。

煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。

春の夕靄が漂うと青柳の長いゆれる枝を隠してしまう、お堀の水は春水で嵩をたかく、淥水一層青く澄んでいる、そして太掖池に流れ入り堤をびっしり春の草が生えている

時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

一時ふった春雨がまた降り、花を散り落として春の景色を洗い流してしまうけれど、天使の夾城はるか遠くまで続き、季節が変わっても花の苑に向かう、そうして《竹枝子曲》の笙歌を吹奏するのである。

(小重山二首 其の一)

春神京に入り 萬木 芳し,禁林 鶯語滑かなり,蝶 飛狂す。

曉花 擎露を【ささ】げて啼粧【ていしょう】を妬く,紅日 永く,風 百花と和【とも】に香る。

煙 柳絲の長きを鏁【とざ】し,御溝【ぎょこう】碧水 澄み,池塘に轉ず。

時時 微雨 風光を洗う,天衢【てんく】遠く,到る處 笙篁【しょうこう】を引く。

 

小重山二首 其二

正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。

烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。

柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。

光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

 

唐長安城 都計画図00
 

『小重山二首 其一』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

小重山二首 其一

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。

曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。

煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。

時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

(下し文)
(小重山二首 其の一)

春神京に入り 萬木 芳し,禁林 鶯語滑かなり,蝶 飛狂す。

曉花 擎露を【ささ】げて啼粧【ていしょう】を妬く,紅日 永く,風 百花と和【とも】に香る。

煙 柳絲の長きを鏁【とざ】し,御溝【ぎょこう】碧水 澄み,池塘に轉ず。

時時 微雨 風光を洗う,天衢【てんく】遠く,到る處 笙篁【しょうこう】を引く。

(現代語訳)
(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。

初心【うぶ】に見える涙顔の化粧を施して、曉花の朝露をささげて、麗らかな春の日は早く明けそして日ごとに長くなる、風が吹いてきて、花々の匂いを届けてくれて和ませてくれる。

春の夕靄が漂うと青柳の長いゆれる枝を隠してしまう、お堀の水は春水で嵩をたかく、淥水一層青く澄んでいる、そして太掖池に流れ入り堤をびっしり春の草が生えている

一時ふった春雨がまた降り、花を散り落として春の景色を洗い流してしまうけれど、天使の夾城はるか遠くまで続き、季節が変わっても花の苑に向かう、そうして《竹枝子曲》の笙歌を吹奏するのである。



(訳注)

小重山二首 其一

(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

【解説】 都の春景色を讃えた詞。前段は、嗅覚、聴覚、視覚を動員して大明宮の春の景の中、天使と過ごす喜びの時を過ごすが、同時に他の多くの妃賓にとっては、一人で寂しく過ごすことを意味する。後段は、春景色の移り変わりは、それぞれ異なった御苑があり、それを結ぶ専用道路があって、順にこれを愛でる、一年中行楽にでかけることができる模様を描く。前段の 「曉花 擎露を【ささ】げて啼粧【ていしょう】を妬く」の句は、夜明けの花が、男と夜を共に過ごしたように露に濡れている。その花に嫉妬してしまうと、朝露に濡れて咲いているさまを述べ、天使の寵愛に会いそのうれしさ表現を強調したものである。この詩を単なる抒情詩としてとらえることと、この解説のような意味を理解しなくては、この詩の深みはわからない。当時の倫理観、生活様式、その中で詞はできていることを理解されたい。小重山は後宮の恋愛事情を詠ったものであること、酒宴の席で、高級官僚のお遊びとしてうたわれたものであること、中国でも日本でも、酒宴の席では、卑猥と表裏一体な出来事をいかにきれいに歌い上げるかというお遊びの歌なのである。教坊曲とはそうしたものである。小重山とは女性が寝牀に横に臥せ、そのシルエットが、小山であること、それが屏風の画とかなって連山となるということからいうのである。

 

和凝(898955)、字を成績と言い、鄆州の須昌(今の山東省東平の西北)の人。彼は幼い時から聡明で、早くから書物を学び、一読すれば常に大義に通じた。梁の義成軍節度使賀瓌に招かれて従事となったが、賀瓌が唐の荘宗との戦いに敗れると、彼一人が賀瓌に従った。賀瓌は和凝に対して、自分に従うのをやめて己の道を求めるように勧めたが、和凝は「男子たるもの、人の知遇を得ながら危難の際に恩に報いないのは、本意ではない」と言い、行動をともにし、追っ手を射倒して、賀瓌の命を救った。そこで、賀瓌は自分の娘を和凝に娶らせ、「和凝は将来重位に就くであろぅから、謹んで仕えるように」と子供らに諭した。そのために、和凝の名は一時に轟いた。彼は、梁、唐、晋、漢、周の五朝に仕え、多くの後進を導いたので、人々から広く慕われたと言う。和凝は若い時に好んで艶詞を作ったが、晋の宰相になると詞を回収して焼き捨てさせた。しかし、艶詞のために名を汚すことになり、契丹は晋に入朝すると、彼を曲子相公と呼んだと言う。和凝の詞は二十七首が伝わり、『花間集』 には二十首の詞が収められている。後周の顕徳二年(955)五十八歳で没した。

【構成】『花間集』には和凝の作が二首収められている。

小重山二首 其一は双調五十八字、前段三十宇六句四平韻、後段二十八字六句四平韻で、⑦5③⑦3⑤/⑤5③⑦3⑤の詞形をとる。

春入神京萬木,禁林鶯語滑,蝶飛。 曉花擎露妬啼,紅日永,風和百花

煙鏁柳絲,御溝澄碧水,轉池。   時時微雨洗風,天衢遠,到處引笙

○●○○●●○  △○○●● ●○△  ●○○●●○○ ○●●  △△●○○

○?●○△  ●○○●● ●○○    ○○○●●△△ ○○●  ●●●○○

原型となった韋荘の作構成は以下の通り。

双調五十八字、前段三十字六句四平韻、後段二十八字六句四平韻で、⑦5③⑦3⑤/⑤5③⑦3⑤の詞形をとる。

一閉昭陽春又、夜寒宮漏永、夢君恩。 臥思陳事暗消魂、羅衣濕、紅袂有啼

歌吹隔重閽、繞庭芳草綠、倚長門。   萬般惆悵向誰、凝情立、宮殿欲黃昏。

。 

。   

 

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。

○神京 神は天子を示す、天子のお住まいの都長安、大明宮。

○禁林 御苑の木立。図に見る様に大明宮は東側から北側広大な禁苑にかこまれているが、ここではこの中にある、梨園、梅園、葡萄園、蚕壇亭、望春亭と妃嬪、妓優の関連施設が点在していたことを言う。ここの春景色、妃嬪妓優らとの春の行楽をしさするものである。したがって、ここでは蝶は天子であり、後宮の妃嬪、妓優、宮女の花に飛び回ることを示している。
興慶宮の位置関係00
長安城図 作図00
 

9欧陽烱《巻六13鳳樓春一首》『花間集』264全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6592

欧陽烱  鳳樓春 一首   

鳳髻綠雲叢,深掩房攏。錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。因想玉郎何處去,對淑景誰同。

小樓中,春思無窮。倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。海棠零落,鶯語殘紅。

(寵愛は若いときだけのもので、また春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたってもただ寵愛を待つだけと閨怨を詠う。)

豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。

9欧陽烱《巻六13鳳樓春一首》『花間集』264全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6592

 

 
  2015年9月10日 の紀頌之5つのBlog  
  ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場  
  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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鳳樓春 一首

(寵愛は若いときだけのもので、また春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたってもただ寵愛を待つだけと閨怨を詠う。)

鳳髻綠雲叢,深掩房攏。

豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。

錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。

練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。

因想玉郎何處去,對淑景誰同。

誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。

小樓中,春思無窮。

小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。

倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。

手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。

斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。

やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。

海棠零落,鶯語殘紅。

やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。

 

 

『鳳樓春』 現代語訳と訳註

(本文)

鳳樓春

鳳髻綠雲叢,深掩房攏。

錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。

因想玉郎何處去,對淑景誰同。

小樓中,春思無窮。

倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。

斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。

海棠零落,鶯語殘紅。

 

(下し文)

(鳳樓春【ほうろうしゅん】

鳳髻【ほうけい】綠雲 叢【そう】とし,深く房攏を掩う。

錦書 通し,夢中 相い見 覺め來りて慵【ものう】き,面を勻い 臉に淚し 珠融く。

因りて想う 玉郎 何處にか去らん,淑景に對し誰か同じうすと。

小樓に中【あた】って,春思 窮り無し。

欄に倚り顒望【ぎょうぼう】し,闇牽するは愁緒【しゅうちょ】を,柳花 東風に飛び起つ。

日斜むけば簾を照し,羅の幌には香 冷めて 粉しても屏は空し。

海棠も零落し,鶯語も殘紅す。

 

(現代語訳)

(寵愛は若いときだけのもので、また春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたってもただ寵愛を待つだけと閨怨を詠う。)

豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。

練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。

誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。

小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。

手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。

やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。

やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。

 

(訳注)

鳳樓春一首

(春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたる閨怨を詠う。)

鳳樓春 宮中における妃賓の、寝殿の楼閣における恋愛模様を言う。

唐の教坊の曲名。『花間集』には欧陽烱の一首のみ所収。双調七十七字、前段三十七字七句六平韻、後段四十字九句五平韻で、⑤❹③⑦⑥7⑤/❸④❹4❻4⑦4④の詞形をとる。

鳳髻綠雲  深掩房 
錦書  夢中相見覺來 勻面淚臉珠  

因想玉郎何處去 對淑景誰  

小樓中 春思無 

 “/”

 倚欄顒 闇牽愁緒  柳花飛起東風 
斜日照簾  羅幌香冷粉屏 
海棠零落  鶯語殘紅 

  
  
   

  

  

  
  
  

 

鳳髻綠雲叢,深掩房攏。

豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。

○鳳髻綠雲叢 全体は雲型で後ろに背に向けて鳳の羽の形に結い上げた豊かな黒髪。宮妓の髪。

○房攏 房は宮女の部屋の前のたたき廊下の連子窓。攏は、獣を入れておく「おり、」。連子窓。

 

錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。

練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。

○錦書通 練り絹に書いてかれた妃嬪への手紙。前秦の竇滔の妻蘇氏が錦を織って廻文の詩二百余首を題して任地に行ったままで消息の分からない夫の滔におくって愛情を取り戻したという故事にならっている。手紙の美称。(夫は趙明誠) 

○慵 けだるさだけが残ってしまう。虚無感。

○勻 均等に整える。ここでは拭い払うこと。

○腺珠融 頬の涙の滴が (紅白粉を) くずす。涙で紅白粉が溶けることを言う。

 

因想玉郎何處去,對淑景誰同。

誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。

○玉郎 玉の様に輝かしい男。ここでは若くて輝いている、誰からも愛される高貴な男の意。

○淑景 春の美しい景色。

 

小樓中,春思無窮。

小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。

○春思 万物が子作りを始め、成長するのが春。冬の間にたくわえられて春に開花する、人の思いも思い続けていたものが春には遂げられるという五行思想をいう。

 

倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。

手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。

○顒望 じっと動かず遠くを眺める

○闇牽 闇に牽く。知らぬ間に誘い込まれる、あるいは一つの考えに引き込まれることを云う。

 

斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。

やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。

○羅幌香冷粉麻空 寝台を覆う薄絹の帳は香炉の火も消え、白く塗り飾った屏風の中には人影(夫の姿) のないことを言う。女性の悲しみを言ったもの。

 

海棠零落,鶯語殘紅。

やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。

○海棠 紫色の枝から数㎝の花柄を伸ばし、淡いピンク色の花を次つぎと咲かせ、花の美しさから美女を形容するときにも登場する、晩春から初夏にかけて咲く。女盛りをいう。

○零落 1 落ちぶれること。2 草木の枯れ落ちること。

○鶯語殘紅 ここは、海棠の花が咲き誇っている時に鶯が啼いていたのが記憶として残っていること、海棠花が零落しているのであるから夏が来ているのであるから、鶯は啼いてはいない。

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欧陽烱  江城子一首  

晚日金陵岸艸平,落霞明,水無情,六代繁華,暗逐逝波聲。空有姑蘇臺上月,如西子鏡照江城。

(六朝の都として栄えた金陵(南京・建康)を懐古し、世の変遷を詠う。)

太陽が傾き、日は斜めに射す「傾国」の歴史を見てきた六朝の都、金陵の岸辺、草原広がり、空は赤く燃え、水は何事ないように無情にながれる。そこには呉から続いた六代の繁華があり、その街は波音を追って去ってゆく。古い王朝跡の姑蘇台は、今はただ荒れ果て、そのうえに月がのぼると、大江も鏡のように静かで月影をおとし、長江のほとりの金城を照らしている。それはまるで西施がいた時のようである。

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花間集 江城子 七首

韋莊

 

巻三03

江城二首其一  恩重嬌多情易傷,漏更長,解鴛鴦。朱唇未動,先覺口脂香。緩揭繡衾抽皓腕,移鳳枕,枕潘郎。

巻三04

江城子二首其二  髻鬟狼籍黛眉長,出蘭房,別檀郎。角聲嗚咽,星斗漸微茫。露冷月殘人未起,留不住,淚千行。

牛嶠

 

巻四26

江城子首其一  鵁鶄飛起郡城東,碧江空,半灘風。越王宮殿,蘋葉藕花中。簾捲水樓魚浪起,千片雪,雨濛濛。

巻四27

江城子二首其二  極浦煙消水鳥飛,離筵分首時,送金巵。渡口楊花,狂雪任風吹。日暮天空波浪急,芳艸岸,雨如絲。

張泌

 

巻五01

江城二首其一  碧欄干外小中庭,雨初晴,曉鶯聲。飛絮落花,時節近清明。睡起捲簾無一事,勻面了,沒心情。

巻五02

江城子二首其二  浣花溪上見卿卿,臉波秋水明,黛眉輕。綠雲高綰,金族小蜻蜓。好是問他來得磨?和笑道:莫多情。

欧陽烱

 

巻六12

江城子一首  晚日金陵岸艸平,落霞明,水無情,六代繁華,暗逐逝波聲。空有姑蘇臺上月,如西子鏡照江城。

 

 

 

江城子一首

(六朝の都として栄えた金陵(南京・建康)を懐古し、世の変遷を詠う。)

晚日金陵岸艸平,落霞明,水無情,太陽が傾き、日は斜めに射す「傾国」の歴史を見てきた六朝の都、金陵の岸辺、草原広がり、空は赤く燃え、水は何事ないように無情にながれる。そこには呉から続いた六代の繁華があり、その街は波音を追って去ってゆく。

六代繁華,暗逐逝波聲。

空有姑蘇臺上月,如西子鏡照江城。

古い王朝跡の姑蘇台は、今はただ荒れ果て、そのうえに月がのぼると、大江も鏡のように静かで月影をおとし、長江のほとりの金城を照らしている。それはまるで西施がいた時のようである。

 

(江城子)

晚日 金陵 岸の艸 平らかに,落霞 明るく,水 無情なり,六代 繁華とし,暗に波聲を逐逝【ついせき】す。

空しく姑蘇臺上の月有り,西子の鏡の如く江城を照す。

 

 

『江城子』 現代語訳と訳註

(本文)

江城子

晚日金陵岸艸平,落霞明,水無情,六代繁華,暗逐逝波聲。

空有姑蘇臺上月,如西子鏡照江城。

 

(下し文)

(江城子)

晚日 金陵 岸の艸 平らかに,落霞 明るく,水 無情なり,六代 繁華とし,暗に波聲を逐逝【ついせき】す。

空しく姑蘇臺上の月有り,西子の鏡の如く江城を照す。

 

(現代語訳)

(六朝の都として栄えた金陵(南京・建康)を懐古し、世の変遷を詠う。)

太陽が傾き、日は斜めに射す「傾国」の歴史を見てきた六朝の都、金陵の岸辺、草原広がり、空は赤く燃え、水は何事ないように無情にながれる。そこには呉から続いた六代の繁華があり、その街は波音を追って去ってゆく。

古い王朝跡の姑蘇台は、今はただ荒れ果て、そのうえに月がのぼると、大江も鏡のように静かで月影をおとし、長江のほとりの金城を照らしている。それはまるで西施がいた時のようである。

 

(訳注)

江城子

(かつて六朝の都として栄えた金陵(南京・建康)を懐古し、世の変遷を詠う。)

【解説】 栄華を極めた六朝の都の女の街も繁華も、長江の流れは西から東へあたりまえにながれていることが無情であると、栄枯盛衰、消え去る世の無常を述べる。最後の二句は、今はただ姑蘇台の上に輝く西施(西子)の鏡のような月が、都跡を照らすばかりであることをいい、時代はさらに戦国時代の呉まで遡り、世の変遷に対する無常の観をより深めている。

 

『花間集』には「江城子」は七首所収、欧陽烱の作は一首収められている。単調三十五または三十六字、三十八字、八句五平韻の詞形をとる。

欧陽烱 江城一首は単調三十五字、八句五平韻 ⑦③③4⑤73③の詞形をとる。

晚日金陵岸艸  落霞明 水無

六代繁華 暗逐逝波

 空有姑蘇臺上月 如西子鏡照江

●●○○●●○  ●○○ ●○○

●●○△ ●●●○○

△●○○○●● △○●●●○○

韋荘の作は二首収められている。二首とも単調三十五字、八句五平韻で、 ⑦③③4⑤73③の詞形をとる。

恩重嬌多情易  漏更長 解鴛

朱唇未動 先覺口脂

緩揭繡衾抽皓腕 移鳳枕  枕潘 

   

 

   

韋荘の単調の詞からやがて、双七十字,前后格式相同,各五平韵と変化してゆく。

 

牛嶠、江城子二首 其一は単調三十五字、八句五平韻 ⑦③③4⑤73③の詞形をとる。

鵁鶄飛起郡城,碧江,半灘

越王宮殿,蘋葉藕花

簾捲水樓魚浪起,千片雪,雨濛

○○○●●○○  ●○△ ●△△

●△○● ○●●○△

○△●○○△● ○●●  ●△△

牛嶠、江城子二首 其二は単調三十七字、八句五平韻 ⑦⑤③4⑤73③の詞形をとる。

極浦煙消水鳥  離筵分首  送金

渡口楊花  狂雪任風

日暮天空波浪急  芳艸岸  雨如

●●○○●●○  △○△●○ ●○○

●●○○ △●△△△

●●○△○△● ○●●  ●△○

張泌の江城子が二首収められている。単調三十五字、八句五平韻で、 ⑦③③4⑤73③の詞形をとる。

碧欄干外小中、 雨初晴、 曉鶯聲。

飛絮落花、 時節近清明。

睡起捲簾無一事、 勻面了、 沒心情。

●○○●●△○  ●○○ ●○○

○●●○ ○●●○○

●●△○○●● ○●● ●○○

張必、江城子二首 其二は単調三十七字、八句五平韻 ⑦⑤③4⑤73③の詞形をとる。

浣花溪上見卿  臉波秋水明 黛眉

綠雲高綰 金族小蜻

好是問他來得磨 和笑道  莫多

●○○●●○○  △○○●○ ●○△

●○○● ○●●○△

●●●△△●△ △●●  ●○○

 

晚日金陵岸艸平,落霞明,水無情,六代繁華,暗逐逝波聲。

太陽が傾き、日は斜めに射す「傾国」の歴史を見てきた六朝の都、金陵の岸辺、草原広がり、空は赤く燃え、水は何事ないように無情にながれる。そこには呉から続いた六代の繁華があり、その街は波音を追って去ってゆく。

金陵 、江蘇省の省都。古くから長江流域・華南の中心地で、かつては三国・呉、東晋、南朝の宋・斉・梁・陳(以上の6朝を総称して六朝)、十国の南唐や明といった王朝や南京国民政府の首都であった。中国四大古都の一つ。南京の歴史は春秋時代に呉がこの地に城を築いたことに始まる。戦国時代に呉を征服した楚は金陵邑を設置。その後秦朝による統一事業が達成され、始皇帝がこの地に巡幸してきた際に、「この地に王者の気がある」と言われ、それに怒って地形を無理やり変えてこの地の気を絶とうとした。また名前も金から秣(まぐさ)の秣陵県と改称している。三国時代になると呉の孫権が229年に石頭城という要塞を築いて建業と称してこの地に都を置いた。西晋にて一旦、建業とされた後に司馬鄴(愍帝)を避諱して建康と改められ、東晋及びその後の四王朝(宋、斉、梁、陳)の都となった。呉を含めた六国が全て同じ地に都を置いたことから六朝時代の名がある。隋代には江寧県、唐代には金陵県、白下県、上元県と改称されている。隋唐代には新たに開削された大運河により、長江対岸の揚州が物資の集積地となり、この地域の中心地としての地位を奪われた恰好となり、往時の都としての繁栄は見られなくなった。唐崩壊後の五代十国時代には、南唐の都城である金陵府が置かれ、後に改名されて西都と称する。

落霞 夕焼け。霞は朝焼け雲または夕焼け雲。

水無情 長江の流れは人の世にはお構いなく日夜流れ続けること。また川の流れは時の流れを象徴し、時の推移の無常を言う。金陵が長江の南岸に位置するのでこのように表現した。

六代 いわゆる六朝のこと。金陵に都を置いた呉、東晋、宋、斉、梁、陳の六つの王朝を指す。

 

空有姑蘇臺上月,如西子鏡照江城。

古い王朝跡の姑蘇台は、今はただ荒れ果て、そのうえに月がのぼると、大江も鏡のように静かで月影をおとし、長江のほとりの金城を照らしている。それはまるで西施がいた時のようである。

姑蘇台 戦国時代、呉王の大差が西施のために築いた台館。姑蘇は蘇州の西方にある山。・姑蘇:姑蘇台。蘇州にある。また蘇州の街のこと。呉の首都。呉王・夫差が姑蘇城にいたが、越王・勾践に攻められ、降ろされたところ。

李白も多く残している。

・《巻二-06 烏棲曲》「姑蘇台上烏棲時。王宮里醉西施。

・《巻二一28蘇台覽古》 「旧苑荒台楊柳新、菱歌清唱不勝春。只今惟有西江月、曾照呉王宮裏人。」

・《巻二二30對酒》「棘生石虎殿。 鹿走姑蘇台。 自古帝王宅。」

・《巻二四56口號王美人半醉》「風動荷花水殿香。 姑蘇台上宴王。 西施醉舞嬌無力。 笑倚東窗白玉床。」

蘇臺覧古           

旧苑荒台楊柳新、菱歌清唱不勝春。
只今惟有西江月、曾照呉王宮裏人。

(旧苑  荒台 楊柳新たなり、菱歌の清唱  春に勝【た】えず。只  今は惟だ西江の月有り、曾て照らす  呉王 宮裏の人。

『浣溪沙八首其七』 薛昭蘊

傾國傾城恨有餘,幾多紅涙泣姑蘇,倚風凝睇雪肌膚。

呉主山河空落日,越王宮殿半平蕪,藕花菱蔓滿重湖。

9 9 浣溪紗八首 其七 (薛昭蘊)薛侍郎昭蘊ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-385-9-#9  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3472

西子 西施:本名は施夷光。中国では西子ともいう。紀元前5世紀、春秋時代末期の浙江省紹興市諸曁県(現在の諸曁市)生まれだと言われている。
 現代に広く伝わる西施と言う名前は、出身地である苧蘿村に施と言う姓の家族が東西二つの村に住んでいて、彼女は西側の村に住んでいたため、西村の施>>>西施と呼ばれるようになった。
 紀元前5世紀、越王勾践(こうせん)が、呉王夫差(ふさ)に、復讐のための策謀として献上した美女たちの中に、西施や鄭旦などがいた。貧しい薪売りの娘として産まれた施夷光は谷川で洗濯をしている姿を見出されてたといわれている。越の策略は見事にはまり、夫差は彼女らに夢中になり、呉国は弱体化し、ついに越に滅ぼされることになる。
呉が滅びた後の生涯は不明だが、勾践夫人が彼女の美貌を恐れ、夫も二の舞にならぬよう、また呉国の人民も彼女のことを妖術で国王をたぶらかし、国を滅亡に追い込んだ妖怪と思っていたことから、西施も生きたまま皮袋に入れられ長江に投げられた。また、美女献上の策案者であり世話役でもあった范蠡に付き従って越を出奔し、余生を暮らしたという説もある。
 (2)西施ものがたり  李白がよく取り上げた題材

・『古風五十九首 第十八 李白ではべつの視点から興味あるとらえ方をしている。李白は西施にかかわる多く詩を残している。

 

魚玄機『光・威・裒、姉妹三人』「文有貌終堪比,西子無言我更慚。」光威裒姉妹三人、小孤而始姸乃有是作。精醉儔難。謝家聯雪何以加之。有客自京師来者示予。因次其韻。-#7 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-125--#7  kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2172

○江城 川沿いの街。長江南岸沿いの金陵を言う。城は街。

9欧陽烱《巻六11賀明朝二首 其二》『花間集』262全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6582

欧陽烱  賀明朝二首 其二   

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。人前不解,巧傳心事。別來依舊,辜負春晝。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

9欧陽烱《巻六11賀明朝二首 其二》『花間集』262全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6582

 

 
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(改訂版Ver.2.1

賀明朝二首 其一

(乙女のころ寵愛を受け始めたし、「結同心」をして愛を確かめた。しかし。寵愛を失い再び愛を確かめることはなかった。妃嬪を詠う。)

憶昔花間初識面,紅袖半遮粧臉。

昔を思いだして、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った。その時、きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠していた。

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金線。

石榴色のスカートを軽く揺らして、帯を緩やかにしめた。ことさらに白いほっそりとした指をみせて示し、つぎに、密かにスカートの鳳風の金糸を「結同心」によじってつけた。

碧梧桐鏁深深院,誰料得,兩情何日教繾綣。

仲睦まじい鳳凰の住まいであるみどりの梧桐の葉の茂った奥の奥、深く閉ざされた楼閣の奥庭に、いったい誰に推し量ることができよう、二人の恋が実っていたはずなのにまたいつの日結ばれるのか。

羨春來雙鷰,飛到玉樓,朝暮相見。

羨ましいとおもうのは、春がくれば番の燕は子作るものだし、あの輝くような高楼館にすんでいるところへ飛んでゆくなら、朝に、夕べにたがいに会うことができるというものだ。

(賀明朝二首 其の一)

昔を憶う 花間に 初め面を識りしおり,紅袖 半ば粧臉【しょうけん】遮【さえぎ】る。

輕やかに石榴の裙帶を轉【めぐら】し,故に纖纖【せんせん】たる玉指を將て,【ひそ】かに雙鳳の金線を撚【よ】りしを

碧の梧桐 深深たる院を鏁【とざ】し,誰か料【はか】り得ん,兩情 何れの日にか繾綣【けんけん】たら教【しめ】ん。

春 雙鷰來たるを羨【うらや】む,玉樓に飛び到り,朝に暮に 相い見る。

 

賀明朝二首 其二

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

人前不解,巧傳心事。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

別來依舊,辜負春晝。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

(賀明朝二首 其の二)

憶う昔 花の間 たがいに見そめし後に,只だ 纖手に憑かれ,暗【だま】って紅豆を【なげう】つ

人前に解【と】かず,心事を巧傳するを。

別れ來り 舊に依り,春晝に辜負【こふ】す。

碧の羅衣の上 金繡を蹙【しゅく】し,對【つい】するを睹て 鴛鴦對【つい】し,空しく裛【たぎし】め 淚痕 透す。

韶顏を想えば 久しく非らず,終【つい】に是れ 伊れを為す,只だ恁瘦。

 

 

『賀明朝二首其一』現代語訳と訳註

(本文)

賀明朝二首 其二

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

人前不解,巧傳心事。

別來依舊,辜負春晝。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

 

(下し文)

(賀明朝二首 其の二)

憶う昔 花の間 たがいに見そめし後に,只だ 纖手に憑かれ,暗【だま】って紅豆を【なげう】つ

人前に解【と】かず,心事を巧傳するを。

別れ來り 舊に依り,春晝に辜負【こふ】す。

碧の羅衣の上 金繡を蹙【しゅく】し,對【つい】するを睹て 鴛鴦對【つい】し,空しく裛【たぎし】め 淚痕 透す。

韶顏を想えば 久しく非らず,終【つい】に是れ 伊れを為す,只だ恁瘦。

 

 

(現代語訳)

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

 

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

賀明朝二首 其二

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

唐の教坊の曲名。またの名を賀熙朝、双調朝聖朝、賀聖朝と言う。『花間集』には欧陽烱の二首のみ所収。賀明朝二首 其二は双調六十一字、前段三十一字七句五仄韻、後段三十字六句四仄韻で❼4❹4❹❹❹/❼5❺❺4❹の詞形をとる。

憶昔花間相見  只憑纖手 

●●○△△●●  △○○●  ●○○●

人前不解  巧傳心

○○△●  ●△○●

別來依  辜負春

●△△●  ○●○●

碧羅衣上蹙金  睹對對鴛鴦  空裛淚痕
●○△●●○●  ●●●○○  △●●○●

想韶顏非  終是為伊  只恁

●○○○●  ○●○○  △△○●

 

賀明朝二首 其一

唐の教坊の曲名。またの名を賀熙朝、双調朝聖朝、賀聖朝と言う。『花間集』には欧陽烱の二首のみ所収。双調六十一字、前段三十一字五句三仄韻、後段三十字六句四仄韻で❼❻66❻/❼3❼❺4❹の詞形をとる。

賀明朝二首其一

憶昔花間初識,紅袖半遮粧

●●○△○●●  ○●●○?△

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金

△●●○○●  ●△○○●●  ○●○●○●

碧梧桐鏁深深,誰料得,兩情何日教繾

●○○?△△△  ○△●  ●○△●△●● 

羨春來雙,飛到玉樓,朝暮相

○○△○●  ○●●○  ○●△●

 

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

憑纖手 憑はたのむこと。纖手は若い妃嬪のやさしくか細い手。 

 おしだまって。

紅豆 紅豆は女性自身を示し、小豆を投げて気を引くことを表現する。

 

人前不解,巧傳心事。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

巧傳心事 あなたと一緒に過ごしたいということを一番うまく表現するということ。

 

別來依舊,辜負春晝。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

依舊 どうしてもその時の事を思い出します

辜負春晝 「依舊」に対する意味で、“春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れて愛し合ったことです”ということ。この句と次の三句もこれにあたる

 

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

蹙金繡 蹙は金の刺繍がちぢまることで、セックスの描写で、思い浮かべていること。

睹對對鴛鴦 こちらでツガイの鴛鴦を見ると、また傍につがいをみる。*思い浮かべる性交を表現している。

 ふくろにする。たきしめる。心の片隅に思いを留める。

淚痕透 涙が乾かず流れつづくことをいう。

 

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

韶顏 音楽の優れた美しい妓女。韶:舜の楽。楽を奏でる宮女は若い子に限られる。宋時代以降、音楽の優れた美しい妓女をいう。

 おもう。このように

 (1) 盗む人家自行人の自転車を盗む.(2) (暇を)見つける空儿 kòngr 時間をつくる.━ []こっそり听盗み聞きする.跑了ずらかった.いい加減にする(とも書く) tōu'ān[]《書》目先の安逸。*「不倫する。よばい。」と。

9欧陽烱《巻六10賀明朝二首 其一》『花間集』261全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6577

欧陽烱  賀明朝二首 其一  

憶昔花間初識面,紅袖半遮粧臉。輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金線。

碧梧桐鏁深深院,誰料得,兩情何日教繾綣。羨春來雙鷰,飛到玉樓,朝暮相見。

(乙女のころ寵愛を受け始めたし、「結同心」をして愛を確かめた。しかし。寵愛を失い再び愛を確かめることはなかった。妃嬪を詠う。)

昔を思いだして、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った。その時、きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠していた。石榴色のスカートを軽く揺らして、帯を緩やかにしめた。ことさらに白いほっそりとした指をみせて示し、つぎに、密かにスカートの鳳風の金糸を「結同心」によじってつけた。仲睦まじい鳳凰の住まいであるみどりの梧桐の葉の茂った奥の奥、深く閉ざされた楼閣の奥庭に、いったい誰に推し量ることができよう、二人の恋が実っていたはずなのにまたいつの日結ばれるのか。羨ましいとおもうのは、春がくれば番の燕は子作るものだし、あの輝くような高楼館にすんでいるところへ飛んでゆくなら、朝に、夕べにたがいに会うことができるというものだ。

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(改訂版Ver.2.1

賀明朝二首 其一

憶昔花間初識面,紅袖半遮粧臉。

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金線。

碧梧桐鏁深深院,誰料得,兩情何日教繾綣。

羨春來雙鷰,飛到玉樓,朝暮相見。

(乙女のころ寵愛を受け始めたし、「結同心」をして愛を確かめた。しかし。寵愛を失い再び愛を確かめることはなかった。妃嬪を詠う。)

昔を思いだして、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った。その時、きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠していた。

石榴色のスカートを軽く揺らして、帯を緩やかにしめた。ことさらに白いほっそりとした指をみせて示し、つぎに、密かにスカートの鳳風の金糸を「結同心」によじってつけた。

仲睦まじい鳳凰の住まいであるみどりの梧桐の葉の茂った奥の奥、深く閉ざされた楼閣の奥庭に、いったい誰に推し量ることができよう、二人の恋が実っていたはずなのにまたいつの日結ばれるのか。

羨ましいとおもうのは、春がくれば番の燕は子作るものだし、あの輝くような高楼館にすんでいるところへ飛んでゆくなら、朝に、夕べにたがいに会うことができるというものだ。

(賀明朝二首 其の一)

昔を憶う 花間に 初め面を識りしおり,紅袖 半ば粧臉【しょうけん】遮【さえぎ】る。

輕やかに石榴の裙帶を轉【めぐら】し,故に纖纖【せんせん】たる玉指を將て,【ひそ】かに雙鳳の金線を撚【よ】りしを

碧の梧桐 深深たる院を鏁【とざ】し,誰か料【はか】り得ん,兩情 何れの日にか繾綣【けんけん】たら教【しめ】ん。

春 雙鷰來たるを羨【うらや】む,玉樓に飛び到り,朝に暮に 相い見る。

 

其二

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

人前不解,巧傳心事。

別來依舊,辜負春晝。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

 

 

(改訂版Ver.2.1

『賀明朝二首其一』現代語訳と訳註

(本文)

賀明朝二首 其一

憶昔花間初識面,紅袖半遮粧臉。

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金線。

碧梧桐鏁深深院,誰料得,兩情何日教繾綣。

羨春來雙鷰,飛到玉樓,朝暮相見。

 

(下し文)

(賀明朝二首 其の一)

昔を憶う 花間に 初め面を識りしおり,紅袖 半ば粧臉【しょうけん】遮【さえぎ】る。

輕やかに石榴の裙帶を轉【めぐら】し,故に纖纖【せんせん】たる玉指を將て,【ひそ】かに雙鳳の金線を撚【よ】りしを

碧の梧桐 深深たる院を鏁【とざ】し,誰か料【はか】り得ん,兩情 何れの日にか繾綣【けんけん】たら教【しめ】ん。

春 雙鷰來たるを羨【うらや】む,玉樓に飛び到り,朝に暮に 相い見る。

 

(現代語訳)

(乙女のころ寵愛を受け始めたし、「結同心」をして愛を確かめた。しかし。寵愛を失い再び愛を確かめることはなかった。妃嬪を詠う。)

昔を思いだして、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った。その時、きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠していた。

石榴色のスカートを軽く揺らして、帯を緩やかにしめた。ことさらに白いほっそりとした指をみせて示し、つぎに、密かにスカートの鳳風の金糸を「結同心」によじってつけた。

仲睦まじい鳳凰の住まいであるみどりの梧桐の葉の茂った奥の奥、深く閉ざされた楼閣の奥庭に、いったい誰に推し量ることができよう、二人の恋が実っていたはずなのにまたいつの日結ばれるのか。

羨ましいとおもうのは、春がくれば番の燕は子作るものだし、あの輝くような高楼館にすんでいるところへ飛んでゆくなら、朝に、夕べにたがいに会うことができるというものだ。

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

賀明朝二首 其一

(乙女のころ寵愛を受け始めたし、「結同心」をして愛を確かめた。しかし。寵愛を失い再び愛を確かめることはなかった。妃嬪を詠う。)

【解説】 前段は、行楽の日、宮女・女妓を見初め、情を交わした、後段は、現実的に高貴な人の女、彼女に会うすべのない苦衷を訴える。

唐の教坊の曲名。またの名を賀熙朝、双調朝聖朝、賀聖朝と言う。『花間集』には欧陽烱の二首のみ所収。双調六十一字、前段三十一字五句三仄韻、後段三十字六句四仄韻で❼❻66❻/❼3❼❺4❹の詞形をとる。

賀明朝二首其一

憶昔花間初識,紅袖半遮粧

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金

碧梧桐鏁深深,誰料得,兩情何日教繾

羨春來雙,飛到玉樓,朝暮相

●●○△○●●  ○●●○?△

△●●○○●  ●△○○●●  ○●○●○●

●○○?△△△  ○△●  ●○△●△●● 

○○△○●  ○●●○  ○●△●

 

憶昔花間初識面,紅袖半遮粧臉。

昔を思いだして、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った。その時、きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠していた。

○初識面 初めて知り合ったこと。

○紅袖 紅い袖、若い女妓をいう。

○半遮粧臉 きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠すこと。

 

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金線。

石榴色のスカートを軽く揺らして、帯を緩やかにしめた。ことさらに白いほっそりとした指をみせて示し、つぎに、密かにスカートの鳳風の金糸を「結同心」によじってつけた。

○石榴裙帶 石榴色のスカートの帯。

○故將纖纖玉指 わざと細く白い指で。故は故意に、わざと。将は〜で、〜でもって。

○双鳳金線 スカートに刺繍された番の鳳凰の金の糸をよじって「結同心」にしてつけた。撚 こっそりつける。・(1) 盗む人家自行人の自転車を盗む.(2) (暇を)見つける空、(3)なおざり、(4)人情が薄い。・撚:①ひねること。ねじること。 「腰の-が大事だ」

②普通と少しちがうように,工夫したり趣向をこらしたりすること。 ③「 捻り技 」に同じ。

④「 おひねり 」に同じ。⑤綛(かせ)を集めてねじり一単位としたもの。ねじり。

 

碧梧桐鏁深深院,誰料得,兩情何日教繾綣。

仲睦まじい鳳凰の住まいであるみどりの梧桐の葉の茂った奥の奥、深く閉ざされた楼閣の奥庭に、いったい誰に推し量ることができよう、二人の恋が実っていたはずなのにまたいつの日結ばれるのか。

○梧桐 鳳凰は、霊泉(醴泉〈れいせん〉、甘い泉の水)だけを飲み、60-120年に一度だけ実を結ぶという竹の実のみを食物とし、梧桐の木にしか止まらないという。『詩経』には「鳳凰鳴けり、彼の高き岡に。梧桐生ず、彼の朝陽に」とある。

○誰料得 誰も推し量ることはできない。反語。

○教繾綣 離れがたくさせる。二人が一つに結ばれるようになることを言う。教は使役を表す。

 

羨春來雙鷰,飛到玉樓,朝暮相見。

羨ましいとおもうのは、春がくれば番の燕は子作るものだし、あの輝くような高楼館にすんでいるところへ飛んでゆくなら、朝に、夕べにたがいに会うことができるというものだ。

9欧陽烱《巻六09獻衷心一首》『花間集』260全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6572

欧陽烱  獻衷心一首   見好花顏色,爭笑東風。雙臉上,晚粧同。閑小樓深閣,春景重重。三五夜,偏有恨,月明中。情未已,信曾通,滿衣猶自染檀紅。恨不如雙鷰,飛舞簾櫳。春欲暮,殘絮盡,柳條空。

(若い日々に、寵愛を一手に受けた、真心をすべてささげたのである。やがて寵愛を失い、どんなに恨んでみても、それでも、寵愛を受ける準備をしている妃嬪を詠う。)

若い花のようなはちきれんばかりの赤く染まった顔のころは好んで見る、そこに春風が吹けば、きそって笑い転げて、楽しいことばかり。二つの瞼の上にはきちんと花鈿を化粧し、夜の化粧をいつもと同じように寵愛を受ける準備は、毎日することを教えられる。そして、閨のある小楼はひっそりと静まり、奥まったところの寝殿の高閣があり、奥庭には春の景色がいっぱいであり、その上に春の行事と重なって華やかな暮らしのなかにも静かな離れの小さな楼閣のくらしがあった。仲秋の名月は、上る月を一緒に見たかったのに、月が真上にくるころには、、ひたすらに恨みに思ったものだ。あのお方を慕う情心は未だ終わりはしない。信頼しあう心は、以前から変わってはいない。今日も、どの着物を着ようかと寝牀に衣でいっぱい並べ立て、閨は檀の葉が紅く色づいたように染まってしまった。あのお方の前で飛び交い、舞いを舞うのもこの閨の簾にかこまれたところだけに限られてどこにもいけなくても、ツガイの燕のように寵愛がなくなったことを恨みに思う。また、春も過ぎようとしている、残った柳絮もことごとく飛んで行ってしまい、柳の枝でまた会う約束をしていてもそれは空しい思いに変わってしまう。

9欧陽烱《巻六09獻衷心一首》『花間集』260全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6572

 
  2015年9月6日 の紀頌之5つのBlog  
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韓愈88-#3 (改訂)巻一26 赴江陵途中寄贈王二十補闕、李十一拾遺李二十六員外翰林三學士 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1517> Ⅱ#3 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6569  
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  index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首 index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首 index-13 821年~822年 55歳 22首 index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首 韓愈 哲学・儒学「五原」 賦・散文・上奏文・碑文など  
  孟郊 張籍          
  ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"  
  Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog 766年-115杜甫 《巻1727秋興,八首之二》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55歲-115 <978> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6570  
  杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首 杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩)  杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首 杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首 杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首 杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首  
  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
  ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている  
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  ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集  
  Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoorBlog 9欧陽烱《巻六09獻衷心一首》『花間集』260全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6572  
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欧陽烱

巻六09獻衷心見好花顏色,爭笑東風。雙臉上,晚粧同。閑小樓深閣,春景重重。三五夜,偏有恨,月明中。情未已,信曾通,滿衣猶自染檀紅。恨不如雙鷰,飛舞簾櫳。春欲暮,殘絮盡,柳條空。

顧夐

巻七18獻衷心繡鴛鴦帳暖,畫孔雀屏欹。人悄悄,月明時,想昔年懽笑,恨今日分離。銀釭背,銅漏永,阻佳期。小樓煙細,虛閣簾垂。幾多心事,暗地思惟。被嬌娥牽役,魂夢如癡。金閨裡,山枕上,始應知。

 

 

(改訂版Ver.2.1- 

獻衷心

(若い日々に、寵愛を一手に受けた、真心をすべてささげたのである。やがて寵愛を失い、どんなに恨んでみても、それでも、寵愛を受ける準備をしている妃嬪を詠う。)
見好花顏色,爭笑東風。

若い花のようなはちきれんばかりの赤く染まった顔のころは好んで見る、そこに春風が吹けば、きそって笑い転げて、楽しいことばかり。

雙臉上,晚粧同。

二つの瞼の上にはきちんと花鈿を化粧し、夜の化粧をいつもと同じように寵愛を受ける準備は、毎日することを教えられる。

閑小樓深閣,春景重重。

そして、閨のある小楼はひっそりと静まり、奥まったところの寝殿の高閣があり、奥庭には春の景色がいっぱいであり、その上に春の行事と重なって華やかな暮らしのなかにも静かな離れの小さな楼閣のくらしがあった。

 

三五夜,偏有恨,月明中。

仲秋の名月は、上る月を一緒に見たかったのに、月が真上にくるころには、、ひたすらに恨みに思ったものだ。

情未已,信曾通,滿衣猶自染檀紅。

あのお方を慕う情心は未だ終わりはしない。信頼しあう心は、以前から変わってはいない。今日も、どの着物を着ようかと寝牀に衣でいっぱい並べ立て、閨は檀の葉が紅く色づいたように染まってしまった。

恨不如雙鷰,飛舞簾櫳。

あのお方の前で飛び交い、舞いを舞うのもこの閨の簾にかこまれたところだけに限られてどこにもいけなくても、ツガイの燕のように寵愛がなくなったことを恨みに思う。

春欲暮,殘絮盡,柳條空。

また、春も過ぎようとしている、残った柳絮もことごとく飛んで行ってしまい、柳の枝でまた会う約束をしていてもそれは空しい思いに変わってしまう。

 

獻衷心  顧夐

繡鴛鴦帳暖,畫孔雀屏欹。

人悄悄,月明時,想昔年懽笑,恨今日分離。

銀釭背,銅漏永,阻佳期。

小樓煙細,虛閣簾垂。

幾多心事,暗地思惟。

被嬌娥牽役,魂夢如癡。

金閨裡,山枕上,始應知。

5 3355 333 / 44 44 54 333(3531

(改訂版Ver.2.1- 

『獻衷心』 現代語訳と訳註

(本文)

獻衷心

見好花顏色,爭笑東風。

雙臉上,晚粧同。

閑小樓深閣,春景重重。

三五夜,偏有恨,月明中。

情未已,信曾通,滿衣猶自染檀紅。

恨不如雙鷰,飛舞簾櫳。

春欲暮,殘絮盡,柳條空。

 

 

(下し文)

献衷心【けんそうしん】

見好し 花顏の色を,東風に笑うを爭う。

雙臉の上に,晚粧 同じゅうす。

小樓を閑かにし閣を深くす,春景 重重たり。

三五の夜,偏えに恨有り,月は明るく中なり。

情 未だ已まず,信 曾通し,滿衣 猶お自ら檀紅に染る。

雙鷰の如からずを恨み,飛舞すは簾櫳のみ。

春も暮んと欲せば,殘絮 盡くし,柳條 空し。

 

(現代語訳)

(若い日々に、寵愛を一手に受けた、真心をすべてささげたのである。やがて寵愛を失い、どんなに恨んでみても、それでも、寵愛を受ける準備をしている妃嬪を詠う。)

若い花のようなはちきれんばかりの赤く染まった顔のころは好んで見る、そこに春風が吹けば、きそって笑い転げて、楽しいことばかり。

二つの瞼の上にはきちんと花鈿を化粧し、夜の化粧をいつもと同じように寵愛を受ける準備は、毎日することを教えられる。

そして、閨のある小楼はひっそりと静まり、奥まったところの寝殿の高閣があり、奥庭には春の景色がいっぱいであり、その上に春の行事と重なって華やかな暮らしのなかにも静かな離れの小さな楼閣のくらしがあった。

 

仲秋の名月は、上る月を一緒に見たかったのに、月が真上にくるころには、、ひたすらに恨みに思ったものだ。

あのお方を慕う情心は未だ終わりはしない。信頼しあう心は、以前から変わってはいない。今日も、どの着物を着ようかと寝牀に衣でいっぱい並べ立て、閨は檀の葉が紅く色づいたように染まってしまった。

あのお方の前で飛び交い、舞いを舞うのもこの閨の簾にかこまれたところだけに限られてどこにもいけなくても、ツガイの燕のように寵愛がなくなったことを恨みに思う。

また、春も過ぎようとしている、残った柳絮もことごとく飛んで行ってしまい、柳の枝でまた会う約束をしていてもそれは空しい思いに変わってしまう。

 

(訳注)(改訂版Ver.2.1-

獻衷心一首

(若い日々に、寵愛を一手に受けた、真心をすべてささげたのである。やがて寵愛を失い、どんなに恨んでみても、それでも、寵愛を受ける準備をしている妃嬪を詠う。)

○衷心 心の中。心の底。衷情。《蜀志、法正傳》 先主毎入、衷心凛凛。」とある。「真心をささげた女の話」というところか。

詩は物語のようで、若いころには、女のもとに足しげく来て一緒に過ごしていたものが、女が年を取ると〔この頃は二十代中盤を過ぎること〕見限られてしまったことを云う。おんなを檀の実に喩えて詠っている。

獻衷心

唐の教坊の曲名。『花間集』には二首所収。欧陽烱の作が一首、顧夐の作が収められている。六十四字、双調九八平韻三仄韻である。前半三十三字九四平韻一仄韻、後半三十一字九四平韻二仄韻、三字句が多く可愛らしさを印象づけるものである。

(5④ 3③ ④  / 3③⑦ ❺④ 3❸③)33 31

 

顧夐  獻衷心一首

六十四字、双調九八平韻三仄韻

見好花顏色,爭笑東

●●○○●  ○●○△

雙臉,晚粧

○△●  ●○○

閑小樓深閣,春景重

○●○△●  ○●△△

三五夜,偏有,月明中。

△●●  △●●  ●○△    (33

情未已,信曾,滿衣猶自染檀

○●●  △○○  ●△△●●○○

恨不如雙,飛舞簾

●△△○●  ○●○○

春欲暮,殘絮,柳條

○●●  ○●●  ●○△   (31

 

 

顧夐  獻衷心一首

六十字、双調七平韻四仄韻

繡鴛鴦帳暖  畫孔雀屏

●○○●●  ●●●△○

人悄悄  月明

○●●  ●○○

想昔年懽笑  恨今日分

●●○△●  ●○●△△

銀釭  銅漏永  阻佳

○○●  ○●●  ●○○  (35

小樓煙  虛閣簾

●○○●  ○●○○

幾多心  暗地思

△○○●  ●●△○

被嬌娥牽役  魂夢如

●△○△●  ○△△○

金閨  山枕上  始應

○○●  ○△●  ●△○    (34

10+6+10+935   8+8+9+934

 

見好花顏色,爭笑東風。

若い花のようなはちきれんばかりの赤く染まった顔のころは好んで見る、そこに春風が吹けば、きそって笑い転げて、楽しいことばかり。

○爭笑 李白『宮中行樂詞八首 其五』「繡香風暖。 紗窗曙色新。 宮花爭笑日。 池草暗生春。 綠樹聞歌鳥。 青樓見舞人。 昭陽桃李月。 羅綺自相親。」宮女たちが微笑み、花々が競って咲き誇る春の日。池のほとりの草も、いつのまにか、春のいのちをもやしはじめる。

宮中行樂詞八首五 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白146

宮花争笑日 「劉子新論」「春葩含日似笑,秋葉法露如泣。」(春の葩は日を含みで笑うが似く、秋の葉は露に泫おいて泣くが如し)とある。宮女たちが微笑み、花々が競って咲き誇る春の日。

雙臉上,晚粧同。

二つの瞼の上にはきちんと花鈿を化粧し、夜の化粧をいつもと同じように寵愛を受ける準備は、毎日することを教えられる。

○晚粧同 妃嬪は、寵愛を受ける準備は、毎日しなければいけない。

 

閑小樓深閣,春景重重。

そして、閨のある小楼はひっそりと静まり、奥まったところの寝殿の高閣があり、奥庭には春の景色がいっぱいであり、その上に春の行事と重なって華やかな暮らしのなかにも静かな離れの小さな楼閣のくらしがあった。

○閑小樓 閨のある小楼はひっそりと静まり、静かな離れの小さな楼閣のくらしがある。

○深閣 奥まったところの寝殿の高閣。

○春景重重 春の景色がいっぱいであり、その上に春の行事と重なって華やかな暮らしがることをいう。

 

三五夜,偏有恨,月明中。

仲秋の名月は、上る月を一緒に見たかったのに、月が真上にくるころには、、ひたすらに恨みに思ったものだ。

○三五夜 陰暦十五日の夜。十五夜。特に、八月十五日の仲秋の名月の夜。白居易《三五夜中新月色二千里外故人心》「三五夜中新月色、二千里外故人心。」(三五夜中【さんごやちゅう】  新月の色、二千里外【にせんりがい】  故人【こじん】の心。)

杜甫『月夜』と比較してみる 白居易『八月十五日夜禁中独直対月憶元九』 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 147 

○偏有恨 ひたすらに恨みに思う。

○月明中 名月はもう真上にきている。

 

情未已,信曾通,滿衣猶自染檀紅。

あのお方を慕う情心は未だ終わりはしない。信頼しあう心は、以前から変わってはいない。今日も、どの着物を着ようかと寝牀に衣でいっぱい並べ立て、閨は檀の葉が紅く色づいたように染まってしまった。

○檀 高貴な地位のものの寝牀をいう。

ニシキギ科の落葉低木。山野に生え、葉は楕円形で、対生。雌雄異株。晩春に黄緑色の小さな4弁花が咲いて、枝にびっしり実をつけ、秋になると淡紅色に熟して四つに割れた実から真っ赤な皮におおわれた種子がぶらさがり、葉が散ったあとも枝に残る。初夏、緑白色の小花が集まって咲き、果実はほぼ四角形で、熟すと四つに裂けて赤い種子が現れる。古くは材で弓を作った。やまにしきぎ。かわくまつづら。《季 花=夏 実=秋》ここは、女性の性器を表現しているということは、満足できず、中途半端で帰っていったことを示す。十分な満足というのは、夜を共にして夜明け前に帰ることを言う。

 

恨不如雙鷰,飛舞簾櫳。

あのお方の前で飛び交い、舞いを舞うのもこの閨の簾にかこまれたところだけに限られてどこにもいけなくても、ツガイの燕のように寵愛がなくなったことを恨みに思う。

○簾櫳 この頃の女性は自分だけで、どこかに出ることはできなかったのである。通い婚が基本であり、男が通ってくれなければ籠の鳥なのである。ここは、閨の四方にに架けられた、簾によってそこから出ることも、楽しいこともなくなったことを示す。

 

春欲暮,殘絮盡,柳條空。

また、春も過ぎようとしている、残った柳絮もことごとく飛んで行ってしまい、柳の枝でまた会う約束をしていてもそれは空しい思いに変わってしまう。

○殘絮 春の盛りに柳絮が飛び交うころになると、いつも柳絮が飛ぶ春には女のもとに来てくれていた。その柳絮もあとわずかしか残っていない春も終わろうとしている。そういった思いを残●●という。

○柳條 柳は男性を意味し、枝が揺れるのをセックスに喩える。柳は柳枝詩にいう別れる時のおまじないを象徴するもので、柳の枝を見て男を思い浮かべ、別れる時の約束を思い浮かべるという意味になる。

9欧陽烱《巻六08南郷(鄉)子八首 其八》『花間集』259全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6567

子八首其八

翡翠鵁鶄,白蘋香裏小沙汀。

島上陰陰秋雨色,蘆花撲,數隻漁舡何處宿。

(春から夏、秋にかけて、水路駅に向かう船は忙しく、此処が宿よと招いてくれるが。そんな呉の国でも、冬には、漁船が数席しか出ておらず、まして宿の女中がお迎えもしてくれないから、何処に宿があるのかわからないと詠っている。南国の水路駅の四季をうたったものである。:その八)

春うらら、翡翠鳥は飛び、鵁鶄は仲睦まじくおよぐ、夏のころ、白蘋は可憐で、かおりにかこまれた中、渚の波打ち際にたつ。悲愁のころ、島の上にも。物さびしく雲がかかり、秋の長雨が降り生気がなくなり暗いけしきがつづく。蘆の花穂に、冷たい雨が打ちつづく。そして、これが冬景色か、数隻の呉の漁船が浮かぶだけで、旅の者は、何処に宿があるのやら、さびしすぎてわからない。

9欧陽烱《巻六08南郷()子八首 其八》『花間集』259全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6567

 

 
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9欧陽烱《巻六07南鄉子八首 其七》『花間集』258全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6562

欧陽烱  南子八首其七  

袖斂鮫綃,採香深洞笑相邀。藤杖枝頭蘆酒滴,鋪葵席,豆花間晚日。

(傳中の鮫人が織った透け透けの絲絹の衣をまとった女妓は、南国特有の花に囲まれた中で、睦まじく蘆管酒を酌み交わして、何日も夜を徹して竜宮城のように過すのであると詠う:その七)

南国水路駅の女は。傳中の鮫人が織る所の絲絹で縫製した袖でかおをかくし、お香をたいて漂わせている静かな奥まったところにある閨に微笑を浮べて迎い入れてくれる。それからは、葵の花で区分けされた宴席に、藤の編み込みの敷物をひろげ、頭上には枝が屋根のように広げられている、蘆管酒を酌み交わす。ナツメグの花のようなうら若い女妓はその花の間にいてくれて、夕方から翌日まで一緒に食をとってくれる竜宮城のように過すのである。

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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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9欧陽烱《巻六06南鄉子八首 其六》『花間集』257全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6557

欧陽烱  南子八首其六  

路入南中,桄榔葉暗蓼花紅。兩岸人家微雨後,收紅豆,樹底纖纖擡素手。

(大江。運河を経て、南国の街にはいると雨がさっと降り、すぐに晴れ上がると、異なる樹木の景色のなか、農作業する若い女の白い腕とか細い手が美しいと詠う。)

水路、航路を過ぎ、運河を通って南国地方の街に入れば、黒つげの木樹は大きく育ち、葉影が十分になしていて、赤い花を咲かせた蓼の花がうつくしい。入り江の港の両岸には人家があつまり、小雨が少し降ったのちにはすぐに晴れあがり、するともう唐アズキを収穫している、「くろつぐ」の大樹のもとで若い女の華奢な白い手がもたげて収穫作業をしている。

9欧陽烱《巻六06子八首 其六》『花間集』257全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6557

 

 

 
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  杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首 杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩)  杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首 杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首 杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首 杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首  
  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
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9欧陽烱《巻六05南鄉子八首 其五》『花間集』256全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6552

欧陽烱  南子八首其五   

二八花鈿,胸前如雪臉如蓮。耳墜金鐶穿瑟瑟,霞衣窄,笑倚江頭招遠客。

(十六になった女妓が初めてのお化粧して、花鈿と耳飾り、南国の水路駅に向かう旅人に宿に招く姿を見ると故郷を思い出すと詠う、その五)

十六歳に似合う花鈿の化粧をして、胸のあたりに雪模様でかざって蓮の花のようなお顔だちである。細黄金の耳飾りは耳から落ちて、床のうえで瑟瑟とした音が鳴った、霞のような薄いころもの中に蕾のように体を包む。微笑み合い、寄り添い合う、大江のほとり立って、遠くから入って来る旅人を招き入れる。

9欧陽烱《巻六05子八首 其五》『花間集』256全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6552

 

 
 2015年9月2日の紀頌之5つのBlog 
 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
 Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
 
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299 《卷十六04魯郡堯祠送張十四遊河北》Index-21Ⅱ― 16-741年開元二十九年41歳 <299> Ⅰ李白詩1587 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6483 
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 ・李商隠詩 (1) 136首の75首・李商隠詩 (2) 135首の61首●韓愈index-1 ・孟郊、張籍と交遊・汴州乱41首●韓愈詩index-2[800年 33歳~804年 37歳]27首●韓愈詩index-3 805年 38歳・]陽山から江陵府 36首●韓愈詩index-4 806年 39歳 江陵府・権知国子博士 51首(1)25首 
 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
 孟郊張籍     
 ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。" 
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 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
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交通制度と旅

交通については、すでに整備されていた馳道を利用し、さらなる補修拡張を行った。そのため、長安を中心とした各地方につながる道路水路が整備されていった。道路には、30里(約17km)ごとに駅站(駅館、公営の宿)が置かれ、公文書を運ぶ政府の使者や地方へ赴任し、帰ってくる官僚が利用した。駅站の近くには、往々において民間の宿が存在した。宿の名称の最後には、『駅』、『館』、『店』とつくことが多かった。唐全土には1,639もの駅站が存在し、水駅が260、水陸駅が86か所設置されていた。駅站を利用できる政府関係者は、食糧、運送、宿泊が無料であった。また、道路の五里ごとに『里隔柱』という標識が置かれ、十里ごとに別の標識を立てられた。幹線道路沿いには多数の店舗が建ち並び、交通は大いに発達した。

当時の貴族や官僚は外出には車を使わず、馬に乗り、牛車に乗るのは女性が多かった。牛車はまた、運送に利用された。

隋代からの駅伝制度を発達させ、駅站は整備され、役人の宿泊や馬の確保に使われた。一等の駅は馬75頭が置かれていた。関津制度によって、水陸の要所に関所が置かれ、旅人や荷を検分して、商人から税を徴収した。また、商業のための往来するために、商人は「過所」という通行証明書を、中央では尚書省、地方では州で発行してもらい、所持する必要があった。紛失した場合、審査の上で再発行となった。過所に許された経路を通れば、遠距離でも行くことができたが、不正に通関しようとしたものは罰を受けた。また、安史の乱以降は、人の動きが活発化して、藩鎮の州や県で「公験」という通行証明書も発行された。唐代の関津制度は、賦役逃れや誘拐、外敵の潜入を防ぐために厳格であった。唐代後半には、軍事伝達が余りに頻繁となり、駅站が増大して、駅伝制度は崩れていった。

大運河の開通後、水路の重要性が大いに増した。水運や造船の発達により、大規模な輸送が可能になり、運河の度重なる改善もあわさって、大量の食料が運搬され、長安の食料不足が解消した。海運もまた、造船技術の向上により発達していった。

幹線道路沿いは、民家や商店が多く、民間の旅人でも食糧に不足はしなかった。民営の旅舎や逆旅と呼ばれる旅館も多数存在した。9世紀の唐代を旅行した円仁の『入唐求法巡礼行記』によると、円仁は長期間の旅行をほとんど危険もなく行っている。

宿屋寝具持参で自炊が原則であった。相部屋が多く、その時は、寝床だけを借りることになる。寝床は大きいのを牀、小さいのを榻といった。使用しない時は寝床は壁に立てていたが、宿では常時、設置していたところもあった。食店という食堂を兼ねた宿も存在したが、安宿は自炊が一般的で、飯だけはつける宿もあった。旅行は遠距離なものが多く、長期間に渡るため、馬車ロバラクダで荷を運ぶことが多かった。相部屋には炉があり、部屋で煮炊きを行い、外から食糧や酒も持参できた。宿屋の中に馬小屋があることもあった。宿は貸し切りもあり、小房という個室もある宿も存在した。

 

 

この南郷子八首は花間集の縮刷版のように詠われている。特に欧陽烱は、花間集の序文を書いていて、その序文を詞詩で表現したもののように感じられる。そこで、花間集序文を南郷子八首を見てゆく前に再掲したのである。

 

 

花間集序花間集序

作者:武徳郡節度判官歐陽炯 撰   

 

鏤玉雕瓊,擬化工而回巧。裁花剪葉,奪春豔以爭鮮。是以唱雲謠則金母詞清,挹霞醴則穆王心醉。名高白雪,聲聲而自合鸞歌。響遏青雲,字字而偏諧鳳律。楊柳大堤之句,樂府相傳。芙蓉曲渚之篇,豪家自制。莫不爭高門下,三千玳瑁之簪。競富樽前,數十珊瑚之樹。則有綺筵公子,繡幌佳人,遞葉葉之花箋,文抽麗錦。舉纖纖之玉指,拍按香檀。不無清之辭,用助嬌嬈之態。自南朝之宮體,扇北裏之倡風,何止言之不文,所謂秀而不實。有唐已降,率土之濱,家家之香徑春風,寧尋越豔。處處之紅樓夜月,自鎖常娥。在明皇朝則有李太白應制《清平樂》詞四首,近代溫飛卿複有《金筌集》。邇來作者,無愧前人。今衛尉少卿趙崇祚,以拾翠洲邊,自得羽毛之異。織綃泉底,獨殊機杼之功。廣會眾賓,時延佳論。因集近來詩客曲子詞五百首,分為十卷,以炯粗預知音,辱請命題,仍為序引。昔郢人有歌《陽春》者,號為唱,乃命之為《花間集》。庶(以陽春之甲將)使西園英哲,用資羽蓋之歡。南國嬋娟,休唱蓮舟之引。時大蜀廣政三年夏四月日序。

 

 

花 間 集

 

(1)

『花間集』詞人の一人である欧陽烱は、衛尉少卿の任にあった趙崇祚が大勢の文士を集めて討論をさせ、選んだ五百首の詞集を編纂し、題名を付けるよう請われ、序の形で、その経緯や『花間集』詞の特質や『花間集』詞が如何なる文学の流れを汲むものか、またそれがどんな環境のもとで歌われたかを明らかにした。

 

欧陽烱はまず冒頭で、『花間集』に収められた詞は、玉に彫刻を施しその美しきに一層の磨きをかけたようなものであり、天然の造化を模倣しながらも、それより造かに巧みであること、またそれは、あたかも春の花や葉を切り取って、春と鮮やかさを競い合ぅかのようであると断言する。

《花間集序 (1)》 欧陽烱『花間集』全詩訳注解説漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5177

 

(2)

その歌は、昔、国中を探してもわずか数人の者しか歌えなかった高雅な白雲謡の歌にも似て、それを仙女のような女性が歌えば、それを聞きつつ酒を傾ける男たちは陶然として酒に酔うと述べ、『花間集』の詞が歌姫の侍る宴席で歌われるものであったことを示唆する。「春の艶やかさを奪い」とは、『花間集』に詠われた季節に春が圧倒的に多いことによる。仙女のような歌姫が歌う『花間集』の詞は、その昔の一つ一つが自ずから鸞鳥の鳴き声に合致し、その響きは空を流れる雲をも留めるほどであり、その言葉の一つ一つは十二音階の音律にぴったりと合っていることを指摘する。

《花間集序 (2)》 欧陽烱『花間集』全詩訳注解説727--0- (2) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5182 

(3)

続いて欧陽烱は、『花間集』 の詞が楽府詩に連なるものであり、贅沢を競い合うどんな富豪の家を凌駕する趙家の(趙崇祚)の豪華な宴席では、貴公子が詞を色紙にしたためて美女に手渡すと、それを受け取った美女が拍子木を手に取って、それを歌えば、美女の美しきは嫌が上にも勝ると言い、ここでも『花間集』の詞が宴席のためのものであることを言う。

《花間集序 (3)》 欧陽烱『花間集』全詩訳注解説 0-728--() 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5187 

(4)

『花間集』の詞に類似する歌は、既に南朝の時代に作られているが、それは言葉が雅やかでないばかりか、実体を伴わぬ空疎なものであったこと、そして、唐の玄宗皇帝の時代になって初めて外面内面ともにそなわった清平楽調が作られ、近年に至って温庭第の詞集『金茎集』が現れたことを指摘し、詞が名実ともに新しい時代の文学となったことを言う。しかし、この評価は巻末の晃謙之の欧文とは相反するものがある。この後、欧陽桐は筆を続けて、先に触れた『花間集』命名の謂われについて語り筆を結ぶ。欧陽胴は 『花間集』 にきわめて高い評価を与えているが、これは自身が 『花間集』 詞人の一員であったこと、また、編集者の趙崇祚との人間関係に起因するものといえよう。

《花間集序 (4)》 欧陽烱『花間集』全詩訳注解説 0-729--() 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5192

 

(5)-1

唐が滅亡して、中原では五つの王朝が長江流域では十数もの地方政権が興亡を繰り返したが、四川盆地を拠とする前・後の蜀は豊かな経済力を基盤に安定した地域となっていた。前・後の蜀は君臣共に一時の安逸をむさぼり、享楽に耽ることで、ここに前・後の蜀の頽廃文化が形成された。それの中核を担ったのは、中原、江南から、文化人のみならず、妓優、楽工、各種職人が戦火を避けて、蜀の地に終結したことが大きな原因である。

(5)-2

編者の趙崇祚は、祖籍は開祖父の趙廷隠が後蜀の大祖・孟知祥に従って蜀に入り、親軍を統括すること十数年。趙崇祚は衛尉少卿となり、弟の崇韜は都知領殿直となって、ともに親軍の指揮に参与した。趙氏一門は要職を占め、その暮らしぶりは贅を尽くしたものであった。

『太平廣記』巻四〇九引孫光憲《北夢瑣言》「趙廷除起南宅北宅、千梁萬供、其諸奢麗、莫之與儔。後枕江瀆、池中有二島嶼、遂甃石循池、四岸皆種垂楊、或間雜木芙蓉、池中種藕。毎至秋夏、花開魚躍、柳陰之下、有士子執巻者、垂綸者、執如意者、執塵尾奢、譚詩論道者。」

邸宅は並ぶものがないほど豪奢で、庭の池に二つの島を造り、岸辺に楊柳を、池の端に水芙蓉を、池の中に蓮を植えていた。毎年、夏や秋になれば、花は咲き魚は躍り、柳の木陰で人々が思い思いに巻物を持ち、釣糸を垂れ、如意やら大

鹿の尾で作った払子やらを揮い、詩を語り、道を論じたりしていた。

 趙崇祚はこのすべての芸の優れたもの、風流あるものを集めたサロンで、「広く賓客に会い、時に談論風発する中で、近来の詩客の曲子詞五百首を集め、十巻に分けた」という。

《花間集序 (5)》 欧陽烱『花間集』全詩訳注解説 0-730--() 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5197

 

 

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9欧陽烱《巻六04南鄉子八首 其四》『花間集』255全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6547

欧陽烱  南子八首其四   

洞口誰家,木蘭舡繫木蘭花。紅袖女郎相引去,游南浦,笑倚春風相對語。[

(南国の水路駅の先に向かうと木蘭の花さく小路の先に土洞居は誰の家だろう、そこに寄り添った男女が入って行く。つぼみの先が必ず北を向く木蘭を見ると故郷を思い出すと詠う)

つぼみの先が必ず北を向く木蘭がさきみだれ、舟を繋いで進むと木蘭の花がずっと咲いていて迎い入れてくれる。この洞口は誰が住んでいる家なのか、ここ南國の港町で遊んだ時の事である、紅い木蘭の花の中に紅い袖の女を携えて男女が此処を去る。そして、微笑み合い、倚りそって、春かぜが抜け、互いに見交わして語り合う。

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87-#5 燕喜亭記 韓愈(韓退之) 804年貞元20年 37歳<1512> Ⅱ 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6544 
 ・李商隠詩 (1) 136首の75首・李商隠詩 (2) 135首の61首●韓愈index-1 ・孟郊、張籍と交遊・汴州乱41首●韓愈詩index-2[800年 33歳~804年 37歳]27首●韓愈詩index-3 805年 38歳・]陽山から江陵府 36首●韓愈詩index-4 806年 39歳 江陵府・権知国子博士 51首(1)25首 
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  • 玉臺新詠集 巻四 9.謝朓 巻4•9-1-6雜詩十二首其四詠邯鄲故才人嫁為厮養卒婦  訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11115
  • 玉臺新詠集 巻四 9.謝朓 巻4•9-1-4雜詩十二首其三夜聽妓二首之一 瓊閨釧響聞 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11099
  • 玉臺新詠集 巻四 9.謝朓 巻4•9-1-3雜詩十二首其二同王主簿怨情 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11091
  • 玉臺新詠集 巻四 9.謝朓 巻4•9-1-3雜詩十二首其二同王主簿怨情 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11091
  • 玉臺新詠集 巻四 9.謝朓 巻4•9-1-2雜詩十二首其一贈王主簿二首之一 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11083
  • 玉臺新詠集 巻四 8.王融_ 巻4•8-1-5雜詩五首其五巫山高 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11091
  • 玉臺新詠集 巻四 8.王融_ 巻4•8-1-5雜詩五首其五巫山高 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11091
  • 玉臺新詠集 巻四 8.王融_ 巻4•8-1-4雜詩五首其四詠幔 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11083
  • 玉臺新詠集 巻四 8.王融_ 巻4•8-1-3雜詩五首其三詠琵琶 訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11075
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