玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

2015年11月

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

12孫光憲《巻七43浣溪沙九首其六》『花間集』345全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6997

孫光憲  浣溪沙九首 其六

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

12孫光憲《巻七43浣溪沙九首其六》『花間集』345全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6997

 

 
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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

紅梅002
 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

             

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

      攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

      楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

              浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

             

浣溪沙九首 其五

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

      半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

      早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

浣溪沙九首       其六

(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)
           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。

紅梅003
             

 

『浣溪沙九首 其六』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其六

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

 

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。

 

(現代語訳)

(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

 

(訳注)

浣溪沙九首 其六

(春の日長に、上半身をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

【解説】春の日に、沐浴をし、蘭香を浸した湯水で髪を洗い、お湯から上がり、上半身をあらわにして髪を暖風遲日のなかで乾かす。綺麗、繊細で、魅力的な妃嬪を詠う。

正妻でもそれ以外でも通い婚である。休みの日に若い女の家に行って見かけた光景である。孫光憲の詩はエロ差は全くなく描き方をしていて、女性を蔑視、卑下していないのが特徴である。

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

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浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐,畫簾垂地晚堂,墮階縈蘚舞愁

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰,蕙心無處與人

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

浣溪沙九首 其四双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

攬鏡無言淚欲,凝情半日懶梳,一庭疎雨濕春

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌,淚沾魂斷軫離

●●○○●●○  △○●●●○○ ●○△●●○○

○●?○△△● ●○△△●△○  ●△○●●△○

浣溪沙九首 其五は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

半踏長裾宛約,晚簾疎處見分,此時堪恨昧平

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃,杳無消息若為

●●△○△●△  ●○△●●△○ ●○○●●○△

●●○○○●● △○△△●△○  ●○○●△○○

浣溪沙九首 其六は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蘭沐初休曲檻,暖風遲日洗頭,濕雲新斂未梳

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香,此時模樣不禁

○●○△●●○  ●△○●●○○ ●○○●●○○

●●●△○●● ●○△●●○○  ●○○●△△○

 

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

蘭沐 蘭香を浸した水で髪を洗う。 

洗頭天 髪を洗うのに良い陽気で、洗髪した後しばらく長い髪のままでそのままいることをいう。

湿雲 濡れ髪。雲は雲撃。豊かな女性の黒髪。

新斂 あらたに束ねたばかりをいう。新は〜したばかり、の意。

梳蟬 蝉の羽のように肌の透けて見える垂れた美しい髪の毛。ここでは髪の意であり、蝉の簪を意味する。

 

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

半將 髪を洗い濡れているため、襟首のラインが下がっていて胸が少し見えるという表現。

粉臆 白い白粉を付けたようにきれいな胸。臆は胸臆。

欲墜香肩 髪の毛を上に束ねた簪がぬけかかって蘭香のかおる肩に落ちそうだ。欲は今にも〜しそうだ、の意。

不禁憐 愛おしいと覚えずにはいられない。この場合の憐は可憐なさまという意味。

12孫光憲《巻七42浣溪沙九首其五》『花間集』344全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6992

孫光憲  浣溪沙九首 其五  

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

12孫光憲《巻七42浣溪沙九首其五》『花間集』344全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6992

 

 
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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

紅梅002
             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

             

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

      攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

      楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

              浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

 

             

浣溪沙九首 其五

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

      半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

      早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

             

浣溪沙九首           其六

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

浣溪沙九首           其七

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

芍薬003
 

『浣溪沙九首 其五』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其五

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

 

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 

(現代語訳)

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

 

(訳注)

浣溪沙九首 其五

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

【解説】 前段、選抜され、後宮に入り、自他ともに魅力ある女性とされてきた細身の素晴らしい妃嬪も、ずっと御殿に待ち続けているだけ、後段、蝋燭が薄くなるまで、踊っても、琴の調べを聞いて、時間の許す限り練習を重ねる。しかし、それに今から先、どうなったのか知る由もない。

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐,畫簾垂地晚堂,墮階縈蘚舞愁

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰,蕙心無處與人

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

浣溪沙九首 其四双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

攬鏡無言淚欲,凝情半日懶梳,一庭疎雨濕春

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌,淚沾魂斷軫離

●●○○●●○  △○●●●○○ ●○△●●○○

○●?○△△● ●○△△●△○  ●△○●●△○

浣溪沙九首 其五は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

半踏長裾宛約,晚簾疎處見分,此時堪恨昧平

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃,杳無消息若為

●●△○△●△  ●○△●●△○ ●○○●●○△

●●○○○●● △○△△●△○  ●○○●△○○

 

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

○半踏 一歩を半歩にして小股に歩むこと。

○宛約 婉約/艶約 繊細でたおやかなさま。細腰の妓女が色っぽく動く様子をいう。宛:[訓]あてる あて ずつ あたかも〈エン〉1 曲がる。くねる。「宛転」2 あたかも。まるで。「宛然」.約:[訓]つづめる つづまやか  ひもで結ぶ。締めくくる。「制約・括約筋」 ひもで結び目を作り、取り決めの目印とする。広く、約束のこと。3ひかえめなこと。

○昧平生 日頃は見ることがないことを言う。箱入り娘のように人目につかないように生活している。

 

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

○残燭影 消えかかる灯火の光に映し出された影。蝋燭の火が薄くなるまで一緒にいたことをいう。

○聞著 ただ聞いている、の意。著は動作の進行や継続を表す接尾辞。

〇品絃声 弦の調べの音。ここでは琴の音を指す。詩を取り交わすとか次の逢瀬を約束するとか何にもない様子をいう。シャイな様子をいうのであろう。

○若為 どうしよう、どうしようもない。

12孫光憲《巻七41浣溪沙九首其四》『花間集』343全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6987

孫光憲  浣溪沙九首 其四

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

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12孫光憲《巻七41浣溪沙九首其四》『花間集』343全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6987

 

 
  2015年11月28日 の紀頌之5つのBlog  
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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

             

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

      攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

      楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

              浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

             

隋堤01
 

『浣溪沙九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其四

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

 

(下し文)

浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

 

(現代語訳)

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

 

(訳注)

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐,畫簾垂地晚堂,墮階縈蘚舞愁

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰,蕙心無處與人

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

浣溪沙九首 其四双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

攬鏡無言淚欲,凝情半日懶梳,一庭疎雨濕春

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌,淚沾魂斷軫離

●●○○●●○  △○●●●○○ ●○△●●○○

○●?○△△● ●○△△●△○  ●△○●●△○

 

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

攬[ラン]取り集めて持つ。手中に収める。「収攬・総攬」

この三句は春が来ても訪ねてくれる人がいない何にもする気がない様子を詠う。

懶梳頭 物憂げで、櫛で頭を梳くこともしない。

 

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

・楊柳秖知 男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知る、別れるさいの折楊柳を連想させる。

・傷怨別 やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思うこと。

・杏花 春の盛りの杏の花の咲くころ。科挙の及第の後の、貴族の邸宅の庭の牡丹の花を開放する、無礼講を連想させる。

・應信 手紙で答えてくれること。

・損嬌羞 恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。

・軫離憂 愁いに思い、それを忘れようとするが又愁い悲しみが襲ってくる。・軫:憂える。悲しむ。「軫悼(しんとう)・軫念」。まわる。

12孫光憲《巻七40浣溪沙九首其三》『花間集』342全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6982

孫光憲  浣溪沙九首其三

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

12孫光憲《巻七40浣溪沙九首其三》『花間集』342全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6982

 

 
  2015年11月27日 の紀頌之5つのBlog  
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  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
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  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

『浣溪沙九首其三』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首其三

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

 

(現代語訳)

浣溪沙九首 其三(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

紅梅002
 

(訳注)

浣溪沙九首其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐,畫簾垂地晚堂,墮階縈蘚舞愁

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰,蕙心無處與人

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

漸 1 長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま。やっとのことで。2 苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか。3 物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん。

墮階 階に散去った花びらが落ちているさま。寵愛を失って、官位をさげられること。

縈蘚 苔が絡みつく。まといつく,絡む.気にかかる. (周りを)巡る,まつわる。逢瀬の様子を、花弁や、苔が絡みつくことで表現する。

 

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

膩粉 滑らかなおしろい。なめらかなおしろい。べにやおしろい。化粧のこと。化粧によるきめの細かい皮膚。

金靨子 金の付けぼくろ。靨:〔笑(え)窪(くぼ)の意〕 笑うと,頰にできる小さなくぼみ。 ほくろ。仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。

殘香猶暖 香炉は、お香をたくことと暖房の役割が主で、ここでは、残り火でまだ温かいことを言う。逢瀬が終わって間もないことを言う。

繡薰籠 

蕙心 美人の麗しい心。

12孫光憲《巻七39浣溪沙九首其二》『花間集』341全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6977

孫光憲  浣溪沙九首其二 

桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

12孫光憲《巻七39浣溪沙九首其二》『花間集』341全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6977

 

 
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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

 

『浣溪沙九首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其二

桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

             

 

(下し文)

浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

 

(現代語訳)

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

 

海棠花101
 

(訳注)

浣溪沙九首其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

 

桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

桃杏風香 桃・杏・香は春の代名詞。早春に咲く桃の花、青春から晩春に咲く杏の花、どちらも香りを風に乗せて届けてくれる。

簾幕閑 宮殿、邸宅の外窓にかかる簾、幃、幔幕の中は静かなものだ。

謝家門 謝家 美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。謝家聯雪 晋の謝道韞の雪のことをよんだ才の故事をいう。小女で詩才あることを褒める場合にこの故事をひく。「還有一年冬天,天空中雪花紛紛揚揚,謝家子弟正圍坐在火爐旁談詩論文。雪越下越大,謝安笑了笑問在座的侄兒侄女們:“白雪紛紛何所似(大雪紛紛而下像什麼樣子)?”

謝朗答道:“撒鹽空中差可擬(像是空中撒下的一把白花花的鹽)。”謝朗是謝安的二哥謝據的兒子,謝安聽了侄兒的回答後,沒置可否,只是默不作聲。

謝道韞隨即答道:“未若柳絮因風起(滿天飛舞的雪花就像春天隨風起舞的柳絮)。”聽了謝道韞的回答,謝安一面鼓掌,一面口中對謝道韞的才華贊賞不已。此後,人們稱有文學才能的女子為“詠絮之才”。」

魚玄機 卷804_46『和人次韻』

喧喧朱紫雜人寰,獨自清吟日色間。

何事玉郎搜藻思,忽將瓊韻扣柴關。

白花發詠慚稱謝,僻巷深居謬學顏。

不用多情欲相見,松蘿高處是前山。

和人次韻 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-118-53-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2137

約花關 花が咲いていてもそのまま枯らせてしまうという意。約はしめくくる。

・畫梁 いろどられた梁の上。愛妾の棲む花街の高楼の庇の下でツバメが巣作りをするところ。

・幽語 その前までは燕の雛が啼いて囀っていたが、今はひっそりとして啼くものがいない。雛が成長して巣立ちをしたことを意味する。

・鷰初還 春からいたツバメが帰って行っていなくなったことを初めて知る。

 

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

・繡閣 窓にうす絹のししゅうのはいっていて、壁や柱が鮮やか色で輝く高閣

・數行 しばしば出かける。

・題了壁 この語は、前聯に謝家という語があり、その注文に示したように詩の上手い女妓をいうもので、ここは詩を壁に書いたということ。

・曉屏 朝日が急に直接射しこんでくるのを遮るための屏風、そして、屏風に朝日のあかりが当たり始める。

・一枕 一人寝の枕から(酔いが残ったままで目覚め、)またうとうととすること。

・酒醒山 酔いが醒めてトイレに行く、ここでは山は厠の隠語。

・卻疑 自分のすることに疑いを持つこと。

・身是 自分自身の身の処仕方がよくわからない様子をいう。

・夢魂間。夢とうつつを行ったり来たりすること。

12孫光憲《巻七38浣溪沙九首其一》『花間集』340全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6972

孫光憲  浣溪沙九首其一

蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

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韋莊

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

韋莊

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

韋莊

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

韋莊

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

韋莊

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

薛昭蘊

《巻二3浣溪紗五首其二欲》 上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾幕月明風。此夜有情誰不極,隔牆棃雪又玲瓏,玉容憔悴惹微紅。其三惆悵夢餘山月斜,孤燈照壁背紅紗,小樓高閣謝

薛昭蘊

《巻二31浣溪紗五首其三》 惆悵夢餘山月斜,孤燈照壁背紅紗,小樓高閣謝娘家。暗想玉容何所似,一枝春雪凍梅花,滿身香霧簇朝霞。其四綠樹藏鶯鶯正啼,柳絲斜拂白銅堤,弄珠江上

薛昭蘊

《巻二32浣溪紗五首其四》 綠樹藏鶯鶯正啼,柳絲斜拂白銅堤,弄珠江上草萋萋。日暮飲歸何處客,繡鞍驄馬一聲嘶,滿身蘭麝醉如泥。其五夜夜相思更漏殘,傷心明月凭欄干,想君思我

薛昭蘊

《巻二33浣溪紗五首其五》 夜夜相思更漏殘,傷心明月凭欄干,想君思我錦衾寒。咫尺畫堂深似海,憶來唯把舊書看,幾時攜手入長安。其一紅樓別夜堪惆悵,香燈半捲流蘇帳。

薛昭蘊

《巻三27浣溪沙八首其一》 紅蓼渡頭秋正雨,印沙鷗跡自成行,整鬟飄袖野風香。不語含嚬深浦裏,幾迴愁煞棹舡郎,鷰歸帆盡水茫茫。

薛昭蘊

《巻三28浣溪沙八首其二》 鈿匣菱花錦帶垂,靜臨蘭檻卸頭時,約鬟低珥等歸期。茂茂艸青湘渚闊,夢餘空有漏依依,二年終日損芳菲。

薛昭蘊

《巻三29浣溪沙八首其三》 粉上依稀有淚痕,郡庭花落欲黃昏,遠情深恨與誰論。記得去年寒食日,延秋門外卓金輪,日斜人散暗消魂。

薛昭蘊

《巻三30浣溪沙八首其四》 握手河橋柳似金,蜂鬚輕惹百花心,蕙風蘭思寄清琴。意滿便同春水滿,情深還似酒盃深,楚煙湘月兩沉沉。

張泌

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

張泌

《巻二3浣溪紗五首其二欲》 上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾幕月明風。此夜有情誰不極,隔牆棃雪又玲瓏,玉容憔悴惹微紅。其三惆悵夢餘山月斜,孤燈照壁背紅紗,小樓高閣謝

張泌

《巻二31浣溪紗五首其三》 惆悵夢餘山月斜,孤燈照壁背紅紗,小樓高閣謝娘家。暗想玉容何所似,一枝春雪凍梅花,滿身香霧簇朝霞。其四綠樹藏鶯鶯正啼,柳絲斜拂白銅堤,弄珠江上

張泌

《巻二32浣溪紗五首其四》 綠樹藏鶯鶯正啼,柳絲斜拂白銅堤,弄珠江上草萋萋。日暮飲歸何處客,繡鞍驄馬一聲嘶,滿身蘭麝醉如泥。其五夜夜相思更漏殘,傷心明月凭欄干,想君思我

張泌

《巻二33浣溪紗五首其五》 夜夜相思更漏殘,傷心明月凭欄干,想君思我錦衾寒。咫尺畫堂深似海,憶來唯把舊書看,幾時攜手入長安。其一紅樓別夜堪惆悵,香燈半捲流蘇帳。

張泌

《巻三27浣溪沙八首其一》 紅蓼渡頭秋正雨,印沙鷗跡自成行,整鬟飄袖野風香。不語含嚬深浦裏,幾迴愁煞棹舡郎,鷰歸帆盡水茫茫。

張泌

《巻三28浣溪沙八首其二》 鈿匣菱花錦帶垂,靜臨蘭檻卸頭時,約鬟低珥等歸期。茂茂艸青湘渚闊,夢餘空有漏依依,二年終日損芳菲。

張泌

《巻三29浣溪沙八首其三》 粉上依稀有淚痕,郡庭花落欲黃昏,遠情深恨與誰論。記得去年寒食日,延秋門外卓金輪,日斜人散暗消魂。

張泌

《巻三30浣溪沙八首其四》 握手河橋柳似金,蜂鬚輕惹百花心,蕙風蘭思寄清琴。意滿便同春水滿,情深還似酒盃深,楚煙湘月兩沉沉。

張泌

《巻三31浣溪沙八首其五》 簾下三間出寺牆,滿街垂楊綠陰長,嫩紅輕翠間濃粧。瞥地見時猶可可,卻來閑處暗思量,如今情事隔仙

毛文錫

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

欧陽烱

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

欧陽烱

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

欧陽烱

《巻二29浣溪紗五首其一》 清曉粧成寒食天,柳毬斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。指點牡丹初綻,日高猶自凭朱欄,含嚬不語恨春殘。其二欲上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾

顧夐

《巻二3浣溪紗五首其二欲》 上鞦韆四體慵,擬教人送又心忪。畫堂簾幕月明風。此夜有情誰不極,隔牆棃雪又玲瓏,玉容憔悴惹微紅。其三惆悵夢餘山月斜,孤燈照壁背紅紗,小樓高閣謝

顧夐

《巻二31浣溪紗五首其三》 惆悵夢餘山月斜,孤燈照壁背紅紗,小樓高閣謝娘家。暗想玉容何所似,一枝春雪凍梅花,滿身香霧簇朝霞。其四綠樹藏鶯鶯正啼,柳絲斜拂白銅堤,弄珠江上

顧夐

《巻二32浣溪紗五首其四》 綠樹藏鶯鶯正啼,柳絲斜拂白銅堤,弄珠江上草萋萋。日暮飲歸何處客,繡鞍驄馬一聲嘶,滿身蘭麝醉如泥。其五夜夜相思更漏殘,傷心明月凭欄干,想君思我

顧夐

《巻二33浣溪紗五首其五》 夜夜相思更漏殘,傷心明月凭欄干,想君思我錦衾寒。咫尺畫堂深似海,憶來唯把舊書看,幾時攜手入長安。其一紅樓別夜堪惆悵,香燈半捲流蘇帳。

顧夐

《巻三27浣溪沙八首其一》 紅蓼渡頭秋正雨,印沙鷗跡自成行,整鬟飄袖野風香。不語含嚬深浦裏,幾迴愁煞棹舡郎,鷰歸帆盡水茫茫。

顧夐

《巻三28浣溪沙八首其二》 鈿匣菱花錦帶垂,靜臨蘭檻卸頭時,約鬟低珥等歸期。茂茂艸青湘渚闊,夢餘空有漏依依,二年終日損芳菲。

顧夐

《巻三29浣溪沙八首其三》 粉上依稀有淚痕,郡庭花落欲黃昏,遠情深恨與誰論。記得去年寒食日,延秋門外卓金輪,日斜人散暗消魂。

顧夐

《巻三30浣溪沙八首其四》 握手河橋柳似金,蜂鬚輕惹百花心,蕙風蘭思寄清琴。意滿便同春水滿,情深還似酒盃深,楚煙湘月兩沉沉。

孫光憲

《巻三31浣溪沙八首其五》 簾下三間出寺牆,滿街垂楊綠陰長,嫩紅輕翠間濃粧。瞥地見時猶可可,卻來閑處暗思量,如今情事隔仙

孫光憲

《巻三32浣溪沙八首其六》 江館清秋纜客舡,故人相送夜開筵,麝煙蘭焰簇花鈿。正是斷魂迷楚雨,不堪離恨咽湘絃,月高霜白水連天。

孫光憲

《巻三33浣溪沙八首其七》 傾國傾城恨有餘,幾多紅淚泣姑蘇,倚風凝睇雪肌膚。主山河空落日,越王宮殿半平蕪,藕花菱蔓滿重湖

孫光憲

《巻三34浣溪沙八首其八》 越女淘金春水上,步搖雲鬢珮鳴璫,渚風江草又清香。不為遠山凝翠黛,只應含恨向斜陽,碧桃花謝憶劉郎。

孫光憲

《巻四28浣溪沙十首其一》 鈿轂香車過柳堤,樺煙分處馬頻嘶,為他沉醉不成泥。花滿驛亭香露細,杜鵑聲斷玉蟾低,含情無語倚樓西。

孫光憲

《巻四29浣溪沙十首其二》 馬上凝情憶舊遊,照花淹竹小溪流,鈿箏羅幕玉搔頭。早是出門長帶月,可堪分袂又經秋,晚風斜日不勝愁。

孫光憲

《巻四30浣溪沙十首其三》 獨立寒堦望月華,露濃香泛小庭花,繡屏愁背一燈斜。雲雨自從分散後,人間無路到仙家,但憑魂夢訪天涯。

孫光憲

《巻四31浣溪沙十首其四》 依約殘眉理舊黃,翠鬟擲一簪長,暖風晴日罷朝粧。閑折海棠看又撚,玉纖無力惹餘香,此情誰會倚斜陽

孫光憲

《巻四32浣溪沙十首其五》 翡翠屏開繡幄紅,謝娥無力曉粧慵,錦帷鴛被宿香濃。微雨小庭春寂寞,鷰飛鶯語隔簾櫳,杏花凝恨倚東風。

閻選

《巻九24浣溪沙》  寂寞流蘇冷繡茵,倚屏山枕惹香塵,小庭花露泣濃香。劉阮信非仙洞客,常娥終是月中人,此生無路訪東鄰。八拍蠻二首

毛熙震

《巻九34浣溪沙七首其一》  春暮黃鶯下砌前,水精簾影露珠懸,綺霞低映晚晴天。弱柳萬條垂翠帶,殘紅滿地碎香鈿,蕙風飄蕩散輕煙。

毛熙震

《巻九35浣溪沙七首其二》  花榭香紅煙景迷,滿庭芳艸綠萋萋,金鋪閑掩繡簾低。紫鷰一雙嬌語碎,翠屏十二晚峯齊,夢魂銷散醉空閨。

毛熙震

《巻九36浣溪沙七首其三》  晚起紅房醉欲銷,綠鬟雲散裊金翹,雪香花語不勝嬌。好是向人柔弱處,玉纖時急繡裙腰,春心牽惹轉無憀。

毛熙震

《巻九37浣溪沙七首其四》  一隻橫釵墜髻叢,靜眠珍簟起來慵,繡羅紅嫩抹酥胸。羞斂細蛾魂暗斷,困迷無語思猶濃,小屏香靄碧山重。

毛熙震

《巻九38浣溪沙七首其五》  雲薄羅裙綬帶長,滿身新裛瑞龍香,翠鈿斜映豔梅粧。佯不覷人空婉約,笑和嬌語太倡狂,忍教牽恨暗形相。

毛熙震

《巻九39浣溪沙七首其六》  碧玉冠輕裊鷰釵,捧心無語步香堦,緩移弓底繡羅鞋。暗想歡何計好,豈堪期約有時乖,日高深院正忘懷。

毛熙震

《巻九40浣溪沙七首其七》  半醉凝情臥繡茵,睡容無力卸羅裙,玉籠鸚鵡猒聽聞。慵整落釵金翡翠,象梳欹鬢月生雲,錦屏綃幌麝煙薰。

李珣

《巻十14浣溪沙四首其一》  入夏偏宜澹薄粧,越羅衣褪鬱金黃,翠鈿檀注助容光。相見無言還有恨,幾迴判卻又思量,月香徑夢悠颺

李珣

《巻十15浣溪沙四首其二》  晚出閑庭看海棠,風流學得家粧,小釵橫戴一枝芳。鏤玉梳斜雲鬢膩,縷金衣透雪肌香,暗思何事立殘陽。

李珣

《巻十16浣溪沙四首其三》  訪舊傷離欲斷魂,無因重見玉樓人,六街微雨鏤香塵。早為不逢巫峽夢,那堪虛度錦江春,遇花傾酒莫辭頻。

李珣

《巻十17浣溪沙四首其四》  紅藕花香到檻頻,可堪閑憶似花人,舊歡如夢音塵。翠疊畫屏山隱隱,冷鋪紋簟水潾潾,斷魂何處一蟬新。

 

 

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11顧夐 (改)《巻七37更漏子舊歡娛,》『花間集』339全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6967

顧夐  更漏子一首

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。

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743年(26)李白346 巻四07-《怨歌行【長安見內人出嫁,友人令余代為之。】》(十五入漢宮,) 346Index-23Ⅲ― 2-743年天寶二年43歳 94首-(26)  Ⅰ李白詩1683 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6963  
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韓愈103-#3《 巻五28 射訓狐》 #3 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1596> Ⅱ#3 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6964  
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  index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首 index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首 index-13 821年~822年 55歳 22首 index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首 韓愈 哲学・儒学「五原」 賦・散文・上奏文・碑文など  
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溫庭筠

《巻一15更漏子六首其一》 柳絲長,春雨細,花外漏聲迢遞。驚塞鴈,起城烏,畫屏金鷓鴣。香霧薄,透簾幕,惆悵謝家池閣。紅燭背,繡簾垂,夢長君不知。

溫庭筠

《巻一16更漏子六首其二》 星斗稀,鐘鼓歇,簾外曉鶯殘月。蘭露重,柳風斜,滿庭堆落花。虛閣上,倚蘭望,還似去年惆悵。春欲暮,思無窮,舊歡如夢中。

溫庭筠

《巻一17更漏子六首其三》 金雀釵,紅粉面,花裡暫如相見。知我意,感君憐,此情須問天。香作穗,成淚,還似兩人心意。山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。

溫庭筠

《巻一18更漏子六首其四》 相見稀,相憶久,眉淺淡烟如柳。垂翠幕,結同心,待郎燻繡衾。城上月,白如雪,蟬髩美人愁。宮樹暗,鵲橋橫,玉籤初報明。

溫庭筠

《巻一19更漏子六首其五》 背江樓,臨海月,城上角聲嗚咽。堤柳動,島煙昬,兩行征鴈分。西陵路,歸帆渡,正是芳菲欲度。銀燭盡,玉繩低,一聲村落雞。

溫庭筠

《巻一20更漏子六首其六》 玉鑪香,紅蠟淚,偏照畫堂秋思。眉黛薄,髩雲殘,夜長衾枕寒。梧桐樹,三更雨,不道離情正苦。一葉葉,一聲聲,空階滴到明。

韋莊

《巻三23更漏子 一首  》 鐘皷寒,樓閣暝,月照古桐金井。深院閉,小庭空,落花香露紅。煙柳重,春霧薄,燈背水高閣。閑倚,暗沾衣,待郎郎不歸。

牛嶠

《巻四11更漏子三首其一》 星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。挑錦字,記情事,惟願兩心相似。收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

牛嶠

《巻四12更漏子三首其二》 春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。驚夢斷,錦屏深,兩明月心。閨艸碧,望歸客,還是不知消息。辜負我,悔憐君,告天天不聞。

牛嶠

《巻四13更漏子三首其三》 南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

毛文錫

《巻五12 更漏子 一首》  春夜闌,春恨切,花外子規啼月。人不見,夢難憑,紅紗一點燈。偏怨別,是芳節,庭中丁香千結。宵霧散,曉霞輝,梁間雙鷰飛。

顧夐

《巻七37 更漏子  一首》 舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

孫光憲

《巻八22更漏子二首其一》 聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡,下珠簾,滿庭噴玉蟾。人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

孫光憲

《巻八23更漏子二首其二》 今夜期,來日別,相對秖堪愁。隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。

毛熙震

《巻九43更漏子二首其一》  秋色清,河影澹,深燭寒光暗。綃幌碧,錦衾紅,博山香炷融。更漏咽,蛩鳴切,滿院霜華如雪。新月上,薄雲收,映簾懸玉鉤。

毛熙震

《巻九44更漏子二首其二》  煙月寒,秋夜靜,漏轉金壺初永。羅幕下,繡屏空,燈花結碎紅。人悄悄,愁無了,思夢不成難曉。長憶得,與郎期,竊香私語時。

 

 

更漏子一首

(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。

 

(更漏子一首)

舊には歡,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。

濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。

簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。

歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

 

 大毛蓼003

『更漏子一首』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

 

 

(下し文)

(更漏子一首)

舊には歡,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。

濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。

簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。

歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

 

 

(現代語訳)

(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。

この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。

 

 

(訳注)

更漏子

(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

〇更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。逢瀬は時間を気にして過ごしたが、今は眠れず夜を過ごすというのが大方のストーリーである。

更漏 ①古代用滴漏方法計時的器具,即漏壺:以更漏計時器 ②夜晚:夜残更漏|更漏夜間憑漏刻傳更, 故稱。

 

『花間集』には顧夐の作が一首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。

更漏子

舊歡,新悵,擁鼻含嚬樓

濃柳翠,晚霞,江鷗接翼

簾半捲,屏斜,遠岫參差迷

歌滿耳,酒盈,前非不要

●○△  ○●△ ●●○○○●

○●● ●○○  ○○●●○

○●△  △○● ●●△△○●

○●● ●○○  ○○△△△

 

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

 よろこび楽しむこと。 「美人西施を洒掃(せいそう)の妾(しよう)たらしめ,一日の歓娯に備ふべし

悵望 心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。

擁鼻 かなしくて涙と鼻水がこぼれたのを拭く。

含嚬 悔しさをかみしめ、口をゆがめる

 

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

〇この三句、聯は春が過ぎ、夏が過ぎてゆく季節の変わりを述べる。

 

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。

簾半捲 簾の陰に隠れて遠方を眺める。見ている姿を見られたくないという女心をいう。

屏斜掩 屏風は逢瀬の際ベッドのそばにたてて小部屋のようにして使用する。ここは男が来ないから使うことがなく壁に立てかけておくことをいう。

【くき】1 山の洞穴。2 山の峰。

參差 長短の等しくないさま。そろわないさま。② 入りまじるさま。入り組むさま。

迷眼 めをこらすことがなく、おちつかないこと。

 

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。

11顧夐 (改)《巻七36醉公子二首其二》『花間集』338全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6962

顧夐  醉公子二首 其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

(去年・それ以前、選抜で入った宮女たち、年に一度の無礼講、何度か遊ばれて棄てられることを経験している女もいれば、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。離宮宮女の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

11顧夐 (改)《巻七36醉公子二首其二》『花間集』338全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6962

 

 
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薛昭蘊

《巻三42 醉公子》 慢綰青絲髮,光砑綾襪。床上小燻籠,韶州新退紅。叵耐無端處,捻得從頭汚。惱得眼慵開,問人閑事來。

顧夐

《巻七35 醉公子二首其一》 漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。枕倚小山屏,金鋪向晚扃。睡起橫波慢,獨望情何限。衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

顧夐

《巻七36 醉公子二首其二》 岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。家在綠楊邊,往來多少年。馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

尹鶚

《巻九32 醉公子》  暮煙籠蘚砌,戟門猶未閉。盡日醉尋春,歸來月滿身。離鞍隈袂,墜巾花亂綴。何處惱佳人,檀痕衣上新

 

 

 

醉公子二首 其一

(何年も秋にくると待ち侘びて、同じ秋を過したのだろうか、妃嬪も年を重ねて、あきらめて生きている)

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

秋雲がうっすらと、ぼんやりとして遠くはるかなところにではじめた、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる。

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

屏風を立てまくらをあてて妃嬪は横たわる、夕暮れになれば門に鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

睡起橫波慢,獨望情何限。

転寝の眠りから覚めて、物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあのお方を思うことはこんなにもかぎりがない。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

柳もまた枯れ始め、もう数度、蝉の声を聞いてきた。寵愛を失い、思いも消えた、去年の秋も同じようなものであった。

 

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。

 

 

醉公子二首 其二

(去年・それ以前、選抜で入った宮女たち、年に一度の無礼講、何度か遊ばれて棄てられることを経験している女もいれば、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

家在綠楊邊,往來多少年。

離宮宮女の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

 

(其の二)

岸柳 金線垂れ,雨晴れ 鶯 百囀す。

家 綠楊の邊に在り,往來 少年多し。

馬嘶 芳草 遠く,高樓 簾 半ば捲く。

袖を斂【まと】め 翠蛾 攢【ひそ】む,相いに逢うは 爾許【かくのごと】く難し。

 

 

『醉公子二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

醉公子二首其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

 

(下し文)

(醉公子二首其の二)

岸柳 金線垂れ,雨晴れ 鶯 百囀す。

家 綠楊の邊に在り,往來 少年多し。

馬嘶 芳草 遠く,高樓 簾 半ば捲く。

袖を斂【まと】め 翠蛾 攢【ひそ】む,相いに逢うは 爾許【かくのごと】く難し。

 

(現代語訳)

(去年・それ以前、選抜で入った宮女たち、年に一度の無礼講、何度か遊ばれて棄てられることを経験している女もいれば、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

離宮宮女の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

 

 (訳注)

醉公子二首 其二

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

【解説】 

柳の色彩を言った前段第一句の「金線」と第三句の「緑楊」今年芽吹いたばかりの枝、「緑楊」が去年から生える枝というのがこの詩の斬新なところである。

 

『花間集』には四首所収。顧夐の作は二首収められている。双調四十字、前後段二十字四句二仄韻二平韻で、❺❺⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

醉公子二首 其一

漠漠秋雲,紅耦香侵。枕倚小山,金鋪向晚

睡起橫波,獨望情何。衰柳數聲,魂銷似去

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『花間集』には四首所収。顧夐の作は二首収められている。双調四十字、前後段二十字四句二仄韻二平韻で、❺❺⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

醉公子二首其二

岸柳垂金,雨晴鶯百。家在綠楊,往來多少

馬嘶芳草,高樓簾半。斂袖翠蛾,相逢爾許

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岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

○金線 柳の黄色い芽吹き。今春選抜で宮中に初めてデビューした宮女をいう。

 

家在綠楊邊,往來多少年。

離宮宮女の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

〇家在綠楊邊 美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある。

〇往來多少年 李白・杜甫・王維に少年行がある。富貴・貴族の二男坊たち。金に飽かせて徒党を組んで遊び回る。

唐詩で「少年」といえば、王維 少年行
新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。
相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。
李白 17少年行
少年行      
五陵年少金市東、銀鞍白馬度春風。
落花踏尽遊何処、笑入胡姫酒肆中。
杜甫 少年行

馬上誰家白面郎、臨階下馬坐人牀。
不通姓氏麤豪甚、指點銀瓶索酒嘗。
 
王昌齢『少年行』
走馬遠相尋,西樓下夕陰。結交期一劍,留