孫光憲 更漏子二首其一
聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。
人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。
(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)
真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。
12孫光憲《巻八22更漏子二首其一》『花間集』374全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7142
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花間集 教坊曲『更漏子』十六首 |
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溫庭筠 |
巻一15更漏子六首其一柳絲長,春雨細,花外漏聲迢遞。驚塞鴈,起城烏,畫屏金鷓鴣。香霧薄,透簾幕,惆悵謝家池閣。紅燭背,繡簾垂,夢長君不知。 |
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溫庭筠 |
巻一16更漏子六首其二星斗稀,鐘鼓歇,簾外曉鶯殘月。蘭露重,柳風斜,滿庭堆落花。虛閣上,倚蘭望,還似去年惆悵。春欲暮,思無窮,舊歡如夢中。 |
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溫庭筠 |
巻一17更漏子六首其三金雀釵,紅粉面,花裡暫如相見。知我意,感君憐,此情須問天。香作穗,䗶成淚,還似兩人心意。山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。 |
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溫庭筠 |
巻一18更漏子六首其四相見稀,相憶久,眉淺淡烟如柳。垂翠幕,結同心,待郎燻繡衾。城上月,白如雪,蟬髩美人愁絕。宮樹暗,鵲橋橫,玉籤初報明。 |
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溫庭筠 |
巻一19更漏子六首其五背江樓,臨海月,城上角聲嗚咽。堤柳動,島煙昬,兩行征鴈分。西陵路,歸帆渡,正是芳菲欲度。銀燭盡,玉繩低,一聲村落雞。 |
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溫庭筠 |
巻一20更漏子六首其六玉鑪香,紅蠟淚,偏照畫堂秋思。眉黛薄,髩雲殘,夜長衾枕寒。梧桐樹,三更雨,不道離情正苦。一葉葉,一聲聲,空階滴到明。 |
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韋莊 |
巻三23更漏子鐘皷寒,樓閣暝,月照古桐金井。深院閉,小庭空,落花香露紅。煙柳重,春霧薄,燈背水䆫高閣。閑倚戶,暗沾衣,待郎郎不歸。 |
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牛嶠 |
巻四11更漏子三首其一 星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。挑錦字,記情事,惟願兩心相似。收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。 |
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牛嶠 |
巻四12更漏子三首其二 春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。驚夢斷,錦屏深,兩鄉明月心。閨艸碧,望歸客,還是不知消息。辜負我,悔憐君,告天天不聞。 |
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牛嶠 |
巻四13更漏子三首其三南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。 |
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毛文錫 |
巻五12 更漏子一首 春夜闌,春恨切,花外子規啼月。人不見,夢難憑,紅紗一點燈。偏怨別,是芳節,庭中丁香千結。宵霧散,曉霞輝,梁間雙鷰飛。 |
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顧夐 |
巻七37 更漏子一首 舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。 |
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孫光憲 |
巻八22更漏子二首其一 聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。 |
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孫光憲 |
巻八23更漏子二首其二 今夜期,來日別,相對秖堪愁絕。隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。 |
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毛熙震 |
巻九43更漏子二首其一
秋色清,河影澹,深戶燭寒光暗。綃幌碧,錦衾紅,博山香炷融。更漏咽,蛩鳴切,滿院霜華如雪。新月上,薄雲收,映簾懸玉鉤。 |
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毛熙震 |
巻九44更漏子二首其二
煙月寒,秋夜靜,漏轉金壺初永。羅幕下,繡屏空,燈花結碎紅。人悄悄,愁無了,思夢不成難曉。長憶得,與郎期,竊香私語時。 |
更漏子二首其一
(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)
聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。
真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。
扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。
中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。
人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。
誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。
雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。
二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。
(更漏子二首 其の一)
寒更を聽けば,遠く鴈を聞く,半夜 蕭娘 深き院。
繡戶に扃し,珠簾を下る,滿庭 玉蟾噴く。
人語 靜かにして,香閨 冷く,紅幕 半ば垂れて清影あり。
雲雨 態し,蕙蘭の心,此情 江海 深くす。
更漏子二首其二
今夜期,來日別,相對秖堪愁絕。
隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。
銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。
聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。
『更漏子二首其一』 現代語訳と訳註
(本文)
更漏子二首其一
聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。
扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。
人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。
雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。
(下し文)
(更漏子二首 其の一)
寒更を聽けば,遠く鴈を聞く,半夜 蕭娘 深き院。
繡戶に扃し,珠簾を下る,滿庭 玉蟾噴く。
人語 靜かにして,香閨 冷く,紅幕 半ば垂れて清影あり。
雲雨 態し,蕙蘭の心,此情 江海 深くす。
(現代語訳)
(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)
真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。
中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。
誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。
二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。
(訳注)
更漏子二首其一
(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)
1.
更漏 漏壺であり、計時器をいう。 古代、滴漏計時に用いたもの,
夜間、漏刻に憑り更を傳える,
故に稱す。
唐の李肇が《唐國史補》卷中に漏刻を説明している。「
惠遠以山中不知更漏,乃取銅葉製器,狀如蓮花,置盆水之上,底孔漏水,半之則沈,每晝夜十二沈,
為行道之節,
雖冬夏短長,
雲陰月黑,
亦無差也。」
『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、336335/336335の詞形をとる。
更漏子二首其一
聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。
人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。
△○△
△●● ●●○○△△ ○●● ●○○ ●○△●○
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○○△ ○●●○○●
○●● ●○○
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聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。
真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。
2. 寒更 夜更けの薄ら寒い様を言いう。五更:
1 一夜を初更(甲夜)・二更(乙夜(いつや))・三更(丙夜)・四更(丁夜)・五更(戊夜(ぼや))に五等分した称。2 五更の第五。およそ現在の午前3時から午前5時、または午前4時から午前6時ころにあたる。寅(とら)の刻。戊夜。
3. 蕭娘 歌妓の名前。「唐娘」「謝娘」など六朝時代の女妓の一般呼称。民妓、家妓、美女や妓女、あるいは愛妾をいう。
沈満願『戯蕭娘』
明珠翠羽帳、金薄綠綃帷。
因風時蹔擧、想像見芳姿
凊晨插歩揺、向晩解羅衣。
託意風流子、佳情詎肯私。
(蕭娘を戯むる)
明珠【めいしゅ】翠羽【すいう】の帳【とばり】、金薄【きんぱく】綠綃【りょくしょう】の帷【い】。
風に因りて時に暫く擧がる、想像して芳姿を見る。
凊晨【せいしん】に歩揺を插【さしはさ】み、晩に向いて羅衣【らい】を解く。
意を託すは風流の子、佳情 詎【なん】ぞ肯えて私にせん。
戯蕭娘 范靖婦沈満願 宋詩<120>玉台新詠集巻四 女性詩 557 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1488
・謝家 民妓、家妓、美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。
扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。
中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。
4. 扃 (1) (外からの)かんぬき.(2) 門(を閉ざす).1 草が生い茂って道や入り口を閉ざすこと。「立ちとまり霧のまがきの過ぎうくは―にさはりしもせじ」〈源・若紫〉2 簡素な住まい。わび住まい。
5. 珠簾 1 玉で飾ったすだれ。また、すだれの美称。たまだれ。2 ヒガンバナ科の多年草。地下の鱗茎(りんけい)から細長い葉が群がって出る。夏、高さ約30センチの茎を出し、クロッカスに似た白い花をつける。
6. 噴 激しくふく。
7. 玉蟾 【ぎょくせん】《月の中に三つ足の蟾(ヒキガエル)がいるという伝説から》月の異称。
人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。
誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。
雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。
二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。
8. 雲雨 男女の交情をいう。楚の襄王が巫山で夢に神女と契ったことをいう。神女は朝は巫山の雲となり夕べには雨になるという故事からきている。漂いやがて消えてゆくガスのような雲なので、探しようがない。
宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。
杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。
李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。
淸平樂(一) 韋荘 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-260-5-#14 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2682
9. 蕙蘭 広東省を主な原産地とするシンビジウム属の一部で、 わが国にやってきて100年以上になるため帰化植物と同じく作りやすい蘭である。 花は品種によって2月から4月ごろ開花して、中国蘭特有のよい香りが漂う。

























































