玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

2015年12月

12孫光憲《巻八22更漏子二首其一》『花間集』374全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7142

孫光憲  更漏子二首其一

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

12孫光憲《巻八22更漏子二首其一》『花間集』374全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7142

 

 
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花間集 教坊曲『更漏子』十六首

溫庭筠

巻一15更漏子六首其一柳絲長,春雨細,花外漏聲迢遞。驚塞鴈,起城烏,畫屏金鷓鴣。香霧薄,透簾幕,惆悵謝家池閣。紅燭背,繡簾垂,夢長君不知。

溫庭筠

巻一16更漏子六首其二星斗稀,鐘鼓歇,簾外曉鶯殘月。蘭露重,柳風斜,滿庭堆落花。虛閣上,倚蘭望,還似去年惆悵。春欲暮,思無窮,舊歡如夢中。

溫庭筠

巻一17更漏子六首其三金雀釵,紅粉面,花裡暫如相見。知我意,感君憐,此情須問天。香作穗,䗶成淚,還似兩人心意。山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。

溫庭筠

巻一18更漏子六首其四相見稀,相憶久,眉淺淡烟如柳。垂翠幕,結同心,待郎燻繡衾。城上月,白如雪,蟬髩美人愁絕。宮樹暗,鵲橋橫,玉籤初報明。

溫庭筠

巻一19更漏子六首其五背江樓,臨海月,城上角聲嗚咽。堤柳動,島煙昬,兩行征鴈分。西陵路,歸帆渡,正是芳菲欲度。銀燭盡,玉繩低,一聲村落雞。

溫庭筠

巻一20更漏子六首其六玉鑪香,紅蠟淚,偏照畫堂秋思。眉黛薄,髩雲殘,夜長衾枕寒。梧桐樹,三更雨,不道離情正苦。一葉葉,一聲聲,空階滴到明。

韋莊

巻三23更漏子鐘皷寒,樓閣暝,月照古桐金井。深院閉,小庭空,落花香露紅。煙柳重,春霧薄,燈背水䆫高閣。閑倚戶,暗沾衣,待郎郎不歸。

牛嶠

巻四11更漏子三首其一 星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。挑錦字,記情事,惟願兩心相似。收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

牛嶠

巻四12更漏子三首其二 春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。驚夢斷,錦屏深,兩鄉明月心。閨艸碧,望歸客,還是不知消息。辜負我,悔憐君,告天天不聞。

牛嶠

巻四13更漏子三首其三南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

毛文錫

巻五12 更漏子一首 春夜闌,春恨切,花外子規啼月。人不見,夢難憑,紅紗一點燈。偏怨別,是芳節,庭中丁香千結。宵霧散,曉霞輝,梁間雙鷰飛。

顧夐

巻七37 更漏子一首  舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

孫光憲

巻八22更漏子二首其一 聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

孫光憲

巻八23更漏子二首其二 今夜期,來日別,相對秖堪愁絕。隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。

毛熙震

巻九43更漏子二首其一  秋色清,河影澹,深戶燭寒光暗。綃幌碧,錦衾紅,博山香炷融。更漏咽,蛩鳴切,滿院霜華如雪。新月上,薄雲收,映簾懸玉鉤。

毛熙震

巻九44更漏子二首其二  煙月寒,秋夜靜,漏轉金壺初永。羅幕下,繡屏空,燈花結碎紅。人悄悄,愁無了,思夢不成難曉。長憶得,與郎期,竊香私語時。

 

 

更漏子二首其一

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。

扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。

誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。

雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

 

(更漏子二首 其の一)

寒更を聽けば,遠く鴈を聞く,半夜 蕭娘 深き院。

繡戶に扃し,珠簾を下る,滿庭 玉蟾噴く。

人語 靜かにして,香閨 冷く,紅幕 半ば垂れて清影あり。

雲雨 態し,蕙蘭の心,此情 江海 深くす。

 

更漏子二首其二

今夜期,來日別,相對秖堪愁絕。

隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。

銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。

聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。

pla029
 

 

『更漏子二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子二首其一

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。

扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。

雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

 

(下し文)

(更漏子二首 其の一)

寒更を聽けば,遠く鴈を聞く,半夜 蕭娘 深き院。

繡戶に扃し,珠簾を下る,滿庭 玉蟾噴く。

人語 靜かにして,香閨 冷く,紅幕 半ば垂れて清影あり。

雲雨 態し,蕙蘭の心,此情 江海 深くす。

 

(現代語訳)

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。

中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。

誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。

二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

朱槿花・佛桑華00
 

(訳注)

更漏子二首其一

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

 

1.    更漏 漏壺であり、計時器をいう。 古代、滴漏計時に用いたもの, 夜間、漏刻に憑り更を傳える, 故に稱す。 唐の李肇が《唐國史補》卷中に漏刻を説明している。「 惠遠以山中不知更漏,乃取銅葉製器,狀如蓮花,置盆水之上,底孔漏水,半之則沈,每晝夜十二沈, 為行道之節, 雖冬夏短長, 雲陰月黑, 亦無差也。」

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、336335/336335の詞形をとる。

更漏子二首其一

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

△○△  △●● ●●○○△△ ○●● ●○○  ●○△●○

○●●  ○○△ ○●●○○●  ○●● ●○○  ●○○●△

 

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。

2. 寒更 夜更けの薄ら寒い様を言いう。五更: 1 一夜を初更(甲夜)・二更(乙夜(いつや))・三更(丙夜)・四更(丁夜)・五更(戊夜(ぼや))に五等分した称。2 五更の第五。およそ現在の午前3時から午前5時、または午前4時から午前6時ころにあたる。寅(とら)の刻。戊夜。

3. 蕭娘 歌妓の名前。「唐娘」「謝娘」など六朝時代の女妓の一般呼称。民妓、家妓、美女や妓女、あるいは愛妾をいう。

沈満願『戯蕭娘』

明珠翠羽帳、金薄綠綃帷。

因風時蹔擧、想像見芳姿

凊晨插歩揺、向晩解羅衣。

託意風流子、佳情詎肯私。

(蕭娘を戯むる)

明珠【めいしゅ】翠羽【すいう】の帳【とばり】、金薄【きんぱく】綠綃【りょくしょう】の帷【い】。

風に因りて時に暫く擧がる、想像して芳姿を見る。

凊晨【せいしん】に歩揺を插【さしはさ】み、晩に向いて羅衣【らい】を解く。

意を託すは風流の子、佳情 詎【なん】ぞ肯えて私にせん。

戯蕭娘 范靖婦沈満願 宋詩<120>玉台新詠集巻四 女性詩 557 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1488

・謝家 民妓、家妓、美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。

 

扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。

4. 扃 (1) (外からの)かんぬき.(2) 門(を閉ざす).1 草が生い茂って道や入り口を閉ざすこと。「立ちとまり霧のまがきの過ぎうくは―にさはりしもせじ」〈源・若紫〉2 簡素な住まい。わび住まい。

5. 珠簾 1 玉で飾ったすだれ。また、すだれの美称。たまだれ。2 ヒガンバナ科の多年草。地下の鱗茎(りんけい)から細長い葉が群がって出る。夏、高さ約30センチの茎を出し、クロッカスに似た白い花をつける。

6. 噴 激しくふく。

7. 玉蟾 【ぎょくせん】《月の中に三つ足の蟾(ヒキガエル)がいるという伝説から》月の異称。

 

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。

誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。

 

雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

8. 雲雨 男女の交情をいう。楚の襄王が巫山で夢に神女と契ったことをいう。神女は朝は巫山の雲となり夕べには雨になるという故事からきている。漂いやがて消えてゆくガスのような雲なので、探しようがない。

宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

淸平樂(一) 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-260-5-#14  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2682

9. 蕙蘭 広東省を主な原産地とするシンビジウム属の一部で、 わが国にやってきて100年以上になるため帰化植物と同じく作りやすい蘭である。 花は品種によって2月から4月ごろ開花して、中国蘭特有のよい香りが漂う。

12孫光憲《巻八21清平樂二首其二》『花間集』373全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7137

孫光憲  清平樂二首其二

等閑無語,春恨如何去?終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。

盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

(あの春の日に寵愛を受けていたのが終わって詩なった、花が咲き、柳の緑が濃くなっても、もう何もありはしない。朝、馬だけの輦が行き、馬だけの輦が帰ってきたというと詠う。)

今日もやることもやりたくなくて押し黙ったまま時を過ごす、待ち望んだ春なのに、春も盛りというのに、この春の恨みをどうすれば消せるのか。あのとき、春だからと引き留めてもやっぱりそそくさと強引に出て行かれ、ちょうあいをうしなった、花が咲けど暗い気持ち、柳が色を濃くしても、何処に行かれるのか、判りはしない。一日中、眺め尽くして見るのも嫌になり、やるせない思いもどこかにやるよりないのだ、窓を斜めにくぎってさしこむ夕日は今夜の「明」と「暗」を示唆するものである。眠れず一人過ごす長い夜が恨めしい、黄昏時のこの屋の朱塗りの門に日は落ちる、見慣れた刺繍の飾った鞍を置く驄馬だけが空しく帰ってくる。

12孫光憲《巻八21清平樂二首其二》『花間集』373全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7137

 

 

 
  2015年12月28日 の紀頌之5つのBlog  
  ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場  
  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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李白372 巻五 24-《秋思》(春陽如昨日) 372728年開元十六年28歲 <李白372> Ⅰ李白詩1717 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7133  
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  Ⅱ中唐詩・晩唐詩
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韓愈125《 巻三03 上兵部李侍郎書》 #2§2-1 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1630> Ⅱ#2§2-1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7134  
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花間集 教坊曲『清平樂』九首

 

溫庭筠

巻二01清平樂二首其一上陽春晚,宮女愁蛾淺。新歲清平思同輦,爭那長安路遠。鳳帳鴛被徒燻,寂寞花鏁千門。競把黃金買賦,為妾將上明君。

溫庭筠

巻二02清平樂二首其二洛陽愁絕,楊柳花飄雪。終日行人爭攀折,橋下流水嗚咽。上馬爭勸離觴,南浦鶯聲斷腸。愁殺平原年少,迴首揮淚千行。

韋莊

巻二46清平樂四首其一春愁南陌,故國音書隔。細雨霏霏棃花白,鷰拂畫簾金額。盡日相望王孫,塵滿衣上淚痕。誰向橋邊吹笛,駐馬西望銷魂。

韋莊

巻二47清平樂四首其二野花芳草,寂寞關山道。柳吐金絲鶯語早,惆悵香閨暗老。羅帶悔結同心,獨凭朱欄思深。夢覺半床斜月,小䆫風觸鳴琴。

韋莊

巻二48清平樂四首其三何處游女,蜀國多雲雨。雲解有情花解語,窣地繡羅金縷。粧成不整金鈿,含羞待月鞦韆。住在綠槐陰裡,門臨春水橋邊。

韋莊

巻二49清平樂四首其四鶯啼殘月,繡閣香燈滅。門外馬嘶郎欲別,正是落花時節。粧成不畫蛾眉,含愁獨倚金扉。雲路香塵莫掃,掃即郎去歸遲。

孫光憲

巻八20清平樂二首其一愁腸欲斷,正是青春半。連理分枝鸞失伴,又是一場離散。掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。憑使東風吹夢,與郎終日東西。

孫光憲

巻八21清平樂二首其二等閑無語,春恨如何去?終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

毛熙震

《巻九47清平樂》  春光欲暮,寂寞閑庭戶。粉蝶雙雙穿檻舞,簾捲晚天疎雨。含愁獨倚閨幃,玉鑪煙斷香微。正是銷魂時節,東風滿樹花飛。

 

 

清平樂二首其一

(初めて寵愛を受けた、牡丹の花が咲いた春がまた来たが、愁いの思いは晴れることがない。それでも、妃嬪として寵愛を受ける準備だけをすることだけはしないといけない。だから、春の風に乗って、あのお方のもとに飛んで一緒にいたいと詠う。)

愁腸欲斷,正是青春半。

愁いに思う気持ちが続いて、どうしてもこれを断ち切りたいと思っていたが、沈香亭に牡丹の咲く春が訪れ、今春の盛り妃嬪もその若さを誇っている。

連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

連理の梧桐が茂り、おおきな幹のえだに、鸞鳥が伴侶を失って止まっている。後宮では、寵愛を失えば、これらのことは普通にある一場面のことで、妃嬪にとっては常に別れを覚悟しなければいけないのである。

掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。

寵愛を失えば化粧を直す気にもなれず、鏡を覆いかくすことが増え、言葉を交わすこともなくなり、心は暗く眉も下がってしかめ顔になるものだ、それでも、芳しい春の草がシュッシュッと伸びるようなうら若き女であるから、何時も準備をしておくことが矜持であると生きてゆく。

憑使東風吹夢,與郎終日東西。

この春の風に吹けば、この気持ちをあのおかたのもとに夢のように飛んでゆくことができれば、あのおかたと一緒になって一日中、東へ西へ、春から秋へと一年中、過ごすことが出来るとおもうのである。

(清平樂二首其の一)

愁腸 斷たんと欲す,正に是れ青春 半ばなり。

連理は枝を分ち 鸞は伴を失う,又た是れ 一場の離散なり。

鏡を掩い 語ること無く 眉は低る,思は芳艸に隨い凄凄たり。

東風は夢を吹くに憑使【つかし】めば,郎と終日 東西せん。

 

清平樂二首其二

(あの春の日に寵愛を受けていたのが終わって詩なった、花が咲き、柳の緑が濃くなっても、もう何もありはしない。朝、馬だけの輦が行き、馬だけの輦が帰ってきたというと詠う。)
等閑無語,春恨如何去?

今日もやることもやりたくなくて押し黙ったまま時を過ごす、待ち望んだ春なのに、春も盛りというのに、この春の恨みをどうすれば消せるのか。
終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。

あのとき、春だからと引き留めてもやっぱりそそくさと強引に出て行かれ、ちょうあいをうしなった、花が咲けど暗い気持ち、柳が色を濃くしても、何処に行かれるのか、判りはしない。
盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。

一日中、眺め尽くして見るのも嫌になり、やるせない思いもどこかにやるよりないのだ、窓を斜めにくぎってさしこむ夕日は今夜の「明」と「暗」を示唆するものである。
長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

眠れず一人過ごす長い夜が恨めしい、黄昏時のこの屋の朱塗りの門に日は落ちる、見慣れた刺繍の飾った鞍を置く驄馬だけが空しく帰ってくる。

 

(清平樂二首其の二)

等閑に語ること 無く、春恨 如何にして去らん?

終に是れ 疎狂し 留【と】めて 住【とど】まらず、花は暗く 柳は濃く 何処ぞ。

尽日 目は断じ 魂は飛びて、晩窓 斜めに残暉を界【くぎ】る。

長く恨むは 朱門の薄暮に、繍鞍 驄馬 空しく帰るを。

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『清平樂二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

清平樂二首其二

等閑無語,春恨如何去?

終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。

盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。

長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

 

(下し文)

(清平樂二首其の二)

等閑に語ること 無く、春恨 如何にして去らん?

終に是れ 疎狂し 留【と】めて 住【とど】まらず、花は暗く 柳は濃く 何処ぞ。

尽日 目は断じ 魂は飛びて、晩窓 斜めに残暉を界【くぎ】る。

長く恨むは 朱門の薄暮に、繍鞍 驄馬 空しく帰るを。

 

(現代語訳)

(あの春の日に寵愛を受けていたのが終わって詩なった、花が咲き、柳の緑が濃くなっても、もう何もありはしない。朝、馬だけの輦が行き、馬だけの輦が帰ってきたというと詠う。)

今日もやることもやりたくなくて押し黙ったまま時を過ごす、待ち望んだ春なのに、春も盛りというのに、この春の恨みをどうすれば消せるのか。

あのとき、春だからと引き留めてもやっぱりそそくさと強引に出て行かれ、ちょうあいをうしなった、花が咲けど暗い気持ち、柳が色を濃くしても、何処に行かれるのか、判りはしない。

一日中、眺め尽くして見るのも嫌になり、やるせない思いもどこかにやるよりないのだ、窓を斜めにくぎってさしこむ夕日は今夜の「明」と「暗」を示唆するものである。

眠れず一人過ごす長い夜が恨めしい、黄昏時のこの屋の朱塗りの門に日は落ちる、見慣れた刺繍の飾った鞍を置く驄馬だけが空しく帰ってくる。

 

(訳注)

清平樂二首其二

(あの春の日に寵愛を受けていたのが終わって詩なった、花が咲き、柳の緑が濃くなっても、もう何もありはしない。朝、馬だけの輦が行き、馬だけの輦が帰ってきたというと詠う。)

 

1 清平調について

楽府の一つ。唐の玄宗が楊貴妃と沈香亭で牡丹をながめて楽しんだとき、李白が勅を受けて作ったもの。楽府には、清調・平調・瑟調があったが、李白が、清調と平調を合わせて清平調三章を作った。

清平調とは、欒律の名で、

通典に「『清商三調』,而其初,則是僅有『清商』曲之稱.我們如今就來談漢朝起初的『清商』曲的古琴的訂弦法.而唐朝杜佑《通典》:『平調、清調、瑟調,皆周房中曲之遺聲,漢世謂之三調。』則似漢代己有清商三調的稱呼了.」

(『清商三調』,而其初,則是僅有『清商』曲之稱.我們如今就來談漢朝起初的『清商』曲的古琴的訂弦法.而唐朝杜佑《通典》:平調、清調、瑟調は皆周の房中曲の遺聲、漢世、これを三調といい、すべて相和調という。則似漢代己有清商三調的稱呼了.」とある。

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十二字四句四仄韻、後段二十四字四句三平韻で、❹❺❼❻/⑦⑥7⑥の詞形をとる。

清平樂二首其一

愁腸欲斷,正是青春半。

連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。

憑使東風吹夢,與郎終日東西。

○○●●  △●○○●

○●△○○●●  ●●●○△●

●●○●○○  △○○●○○

○●○△△△  △○○●○○

双調四十六字、前段二十二字四句四仄韻、後段二十四字四句三平韻で、❹❺7❻/⑦⑥7⑥の詞形をとる。清平樂二首其二

等閑無語,春恨如何去?

終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。

盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。

長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

●○○●  ○●△△●

○●△△△△●  ○●●○△●

●●●●○○  ●?○●○○

△●○○●●  ●○○●△○

 

等閑無語,春恨如何去?

今日もやることもやりたくなくて押し黙ったまま時を過ごす、待ち望んだ春なのに、春も盛りというのに、この春の恨みをどうすれば消せるのか。

12. 等閑 なすべきことをないがしろにする。

 

終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。

あのとき、春だからと引き留めてもやっぱりそそくさと強引に出て行かれ、ちょうあいをうしなった、花が咲けど暗い気持ち、柳が色を濃くしても、何処に行かれるのか、判りはしない。

13. 終是 結局のところ。

14. 疎狂 そそっかしく、ひどく常識にはずれていること。 ここは朝廷の高官であるから夕刻までに帰って来るけれどそそくさと家を又出てゆくこと。

15. 花暗柳濃 後宮には何人かの妃嬪がいることを示す。・花暗:花が咲いている庭の奥まったところ。・柳濃:柳並木の鬱蒼と茂ったあたり。

16. 留不住 引き留めることができない。

 

盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。

一日中、眺め尽くして見るのも嫌になり、やるせない思いもどこかにやるよりないのだ、窓を斜めにくぎってさしこむ夕日は今夜の「明」と「暗」を示唆するものである。

17 斜界殘暉 夕日の光が明暗を分ける様子をいう。ここではいったん帰ってきてからのそのまま家にいて夜を一緒に過ごす「明」なのか、すぐに他の女のもとに行ってしまう「暗」なのか、ということをイメージさせる。

 

長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

眠れず一人過ごす長い夜が恨めしい、黄昏時のこの屋の朱塗りの門に日は落ちる、見慣れた刺繍の飾った鞍を置く驄馬だけが空しく帰ってくる。

18. 長恨 夕方出て行った男に秋の夜長を一晩中どうして過したらよいのかという恨み心を抱く。この時代の女性に嫉妬心を現代の女性と比較すると極めて薄いものである。一夫多妻制であることが現代の倫理観とまったく異なるのであって、女性は性の道具、女卑、の前提のもとに恨むことさえしてはいけないのである。男性の方も罪の意識はないというのが基本である。したがってここでは男目線の詩であるから、どういう状態であっても女性が自分のことだけを愛してくれているという前提のもとに、この夜ひとりで過ごす女性の心情を「長恨」という語で表現するのである。この「長」を“つねに”と読ませるのは間違い。

19.. 朱門 朱雀門。南の門。身分の高い顕官の邸の正門を通るのはこの屋の主人。① 朱塗りの門。 ②《門を朱塗りにしたところから》富貴の人の家。家屋は南を正門とし、高貴の人はその邸の門を朱色に塗った。杜甫『自京赴奉先縣詠懷五百字』「朱門酒肉臭、路有凍死骨。」このように赤い御門の富貴の者には酒や肉が贅を尽くしてあまったものが腐敗臭をだしているが、そのそばの路傍には凍えて死んでいる人の骨が横たわっているのである。

薛濤『燕離巢』「出入朱門未忍拋,主人常愛語交交。銜泥穢污珊瑚枕,不得梁間更壘巢。」(朱門に出入して 未だ拋【なげう】つに忍びず、主人 常に愛す 語 交交なるを。泥を銜んで 珊瑚の枕を 穢汚す、梁間 更に巣を壘するを 得ず。)

十離詩十首 燕離巢 薛濤 唐五代詞・宋詩 薛濤-184-56-#44  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2467

20. 繡鞍驄馬空歸 立派な鞍を置いた青白毛の馬だけが空しく帰って来る。ここでは主人のお供として出かけた馬番だけが馬を連れて帰って来たことを意味する。

21. 驄馬 青白色の馬。「時俗造次那得致,雲霧晦冥方降精。」此の種類の馬は世俗の人がほしいからとしてあわただしく得ようとしてできるものか、このような馬は、雲や霧がとざして真っ暗という様な時はじめて天が精気を降してこの馬を下界へ送りくださるものである。

驄馬行  杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 102

12孫光憲《巻八20清平樂二首其一》『花間集』372全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7132

孫光憲  清平樂二首其一

愁腸欲斷,正是青春半。連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

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(初めて寵愛を受けた、牡丹の花が咲いた春がまた来たが、愁いの思いは晴れることがない。それでも、妃嬪として寵愛を受ける準備だけをすることだけはしないといけない。だから、春の風に乗って、あのお方のもとに飛んで一緒にいたいと詠う。)

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12孫光憲《巻八20清平樂二首其一》『花間集』372全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7132

 

 

 
  2015年12月27日 の紀頌之5つのBlog  
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  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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743年(53)李白371 巻五 26-《秋思》(燕支黃葉落,) 371Index-23Ⅲ― 2-743年天寶二年43歳 94首-(53) <李白371> Ⅰ李白詩1716 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7128  
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  孟郊 張籍          
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  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
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  Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoorBlog 12孫光憲《巻八20清平樂二首其一》『花間集』372全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7132  
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  毛文錫31首 花間集5巻 牛希濟11首 花間集5巻 欧陽烱17首 花間集5・6巻 和凝20首 花間集6巻 顧夐56首 花間集6・7巻 孫光憲47首 花間集7・8巻  
  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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花間集 教坊曲『清平樂』九首

 

溫庭筠

巻二01清平樂二首其一上陽春晚,宮女愁蛾淺。新歲清平思同輦,爭那長安路遠。鳳帳鴛被徒燻,寂寞花鏁千門。競把黃金買賦,為妾將上明君。

溫庭筠

巻二02清平樂二首其二洛陽愁絕,楊柳花飄雪。終日行人爭攀折,橋下流水嗚咽。上馬爭勸離觴,南浦鶯聲斷腸。愁殺平原年少,迴首揮淚千行。

韋莊

巻二46清平樂四首其一春愁南陌,故國音書隔。細雨霏霏棃花白,鷰拂畫簾金額。盡日相望王孫,塵滿衣上淚痕。誰向橋邊吹笛,駐馬西望銷魂。

韋莊

巻二47清平樂四首其二野花芳草,寂寞關山道。柳吐金絲鶯語早,惆悵香閨暗老。羅帶悔結同心,獨凭朱欄思深。夢覺半床斜月,小䆫風觸鳴琴。

韋莊

巻二48清平樂四首其三何處游女,蜀國多雲雨。雲解有情花解語,窣地繡羅金縷。粧成不整金鈿,含羞待月鞦韆。住在綠槐陰裡,門臨春水橋邊。

韋莊

巻二49清平樂四首其四鶯啼殘月,繡閣香燈滅。門外馬嘶郎欲別,正是落花時節。粧成不畫蛾眉,含愁獨倚金扉。雲路香塵莫掃,掃即郎去歸遲。

孫光憲

巻八20清平樂二首其一愁腸欲斷,正是青春半。連理分枝鸞失伴,又是一場離散。掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。憑使東風吹夢,與郎終日東西。

孫光憲

巻八21清平樂二首其二等閑無語,春恨如何去?終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

毛熙震

《巻九47清平樂》  春光欲暮,寂寞閑庭戶。粉蝶雙雙穿檻舞,簾捲晚天疎雨。含愁獨倚閨幃,玉鑪煙斷香微。正是銷魂時節,東風滿樹花飛。

 

 

清平樂二首其一

(初めて寵愛を受けた、牡丹の花が咲いた春がまた来たが、愁いの思いは晴れることがない。それでも、妃嬪として寵愛を受ける準備だけをすることだけはしないといけない。だから、春の風に乗って、あのお方のもとに飛んで一緒にいたいと詠う。)

愁腸欲斷,正是青春半。

愁いに思う気持ちが続いて、どうしてもこれを断ち切りたいと思っていたが、沈香亭に牡丹の咲く春が訪れ、今春の盛り妃嬪もその若さを誇っている。

連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

連理の梧桐が茂り、おおきな幹のえだに、鸞鳥が伴侶を失って止まっている。後宮では、寵愛を失えば、これらのことは普通にある一場面のことで、妃嬪にとっては常に別れを覚悟しなければいけないのである。

掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。

寵愛を失えば化粧を直す気にもなれず、鏡を覆いかくすことが増え、言葉を交わすこともなくなり、心は暗く眉も下がってしかめ顔になるものだ、それでも、芳しい春の草がシュッシュッと伸びるようなうら若き女であるから、何時も準備をしておくことが矜持であると生きてゆく。

憑使東風吹夢,與郎終日東西。

この春の風に吹けば、この気持ちをあのおかたのもとに夢のように飛んでゆくことができれば、あのおかたと一緒になって一日中、東へ西へ、春から秋へと一年中、過ごすことが出来るとおもうのである。

(清平樂二首其の一)

愁腸 斷たんと欲す,正に是れ青春 半ばなり。

連理は枝を分ち 鸞は伴を失う,又た是れ 一場の離散なり。

鏡を掩い 語ること無く 眉は低る,思は芳艸に隨い凄凄たり。

東風は夢を吹くに憑使【つかし】めば,郎と終日 東西せん。

 

清平樂二首其二

等閑無語,春恨如何去?

終是疎狂留不住,花暗柳濃何處。

盡日目斷魂飛,晚䆫斜界殘暉。

長恨朱門薄暮,繡鞍驄馬空歸。

 

miyajima594
 

『清平樂二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

清平樂二首其一

愁腸欲斷,正是青春半。

連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。

憑使東風吹夢,與郎終日東西。

 

(下し文)

(清平樂二首其の一)

愁腸 斷たんと欲す,正に是れ青春 半ばなり。

連理は枝を分ち 鸞は伴を失う,又た是れ 一場の離散なり。

鏡を掩い 語ること無く 眉は低る,思は芳艸に隨い凄凄たり。

東風は夢を吹くに憑使【つかし】めば,郎と終日 東西せん。

 

(現代語訳)

(初めて寵愛を受けた、牡丹の花が咲いた春がまた来たが、愁いの思いは晴れることがない。それでも、妃嬪として寵愛を受ける準備だけをすることだけはしないといけない。だから、春の風に乗って、あのお方のもとに飛んで一緒にいたいと詠う。)

愁いに思う気持ちが続いて、どうしてもこれを断ち切りたいと思っていたが、沈香亭に牡丹の咲く春が訪れ、今春の盛り妃嬪もその若さを誇っている。

連理の梧桐が茂り、おおきな幹のえだに、鸞鳥が伴侶を失って止まっている。後宮では、寵愛を失えば、これらのことは普通にある一場面のことで、妃嬪にとっては常に別れを覚悟しなければいけないのである。

寵愛を失えば化粧を直す気にもなれず、鏡を覆いかくすことが増え、言葉を交わすこともなくなり、心は暗く眉も下がってしかめ顔になるものだ、それでも、芳しい春の草がシュッシュッと伸びるようなうら若き女であるから、何時も準備をしておくことが矜持であると生きてゆく。

この春の風に吹けば、この気持ちをあのおかたのもとに夢のように飛んでゆくことができれば、あのおかたと一緒になって一日中、東へ西へ、春から秋へと一年中、過ごすことが出来るとおもうのである。

 

 芍薬001

(訳注)

清平樂二首其一

(初めて寵愛を受けた、牡丹の花が咲いた春がまた来たが、愁いの思いは晴れることがない。それでも、妃嬪として寵愛を受ける準備だけをすることだけはしないといけない。だから、春の風に乗って、あのお方のもとに飛んで一緒にいたいと詠う。)

 

1.    清平調について

楽府の一つ。唐の玄宗が楊貴妃と沈香亭で牡丹をながめて楽しんだとき、李白が勅を受けて作ったもの。楽府には、清調・平調・瑟調があったが、李白が、清調と平調を合わせて清平調三章を作った。

清平調とは、欒律の名で、

通典に「『清商三調』,而其初,則是僅有『清商』曲之稱.我們如今就來談漢朝起初的『清商』曲的古琴的訂弦法.而唐朝杜佑《通典》:『平調、清調、瑟調,皆周房中曲之遺聲,漢世謂之三調。』則似漢代己有清商三調的稱呼了.」

(『清商三調』,而其初,則是僅有『清商』曲之稱.我們如今就來談漢朝起初的『清商』曲的古琴的訂弦法.而唐朝杜佑《通典》:平調、清調、瑟調は皆周の房中曲の遺聲、漢世、これを三調といい、すべて相和調という。則似漢代己有清商三調的稱呼了.」とある。

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十二字四句四仄韻、後段二十四字四句三平韻で、❹❺❼❻/⑦⑥7⑥の詞形をとる。

清平樂二首其一

愁腸欲斷,正是青春半。

連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。

憑使東風吹夢,與郎終日東西。

○○●●  △●○○●

○●△○○●●  ●●●○△●

●●○●○○  △○○●○○

○●○△△△  △○○●○○

 

愁腸欲斷,正是青春半。

愁いに思う気持ちが続いて、どうしてもこれを断ち切りたいと思っていたが、沈香亭に牡丹の咲く春が訪れ、今春の盛り妃嬪もその若さを誇っている。

2. 愁腸 愁え悲しむ心。哀愁に満ちた心。傅玄 《雲歌》「白雲翩翩翔天庭,流景彷彿非君形。 白雲飄飄捨我高翔, 青雲徘徊為我愁腸。」(白雲 翩翩として天庭に翔ける,流景 彷彿として君の形に非らず。)

3. 欲断 今にも〜心が折れそうだ。~のことを断絶したい。女は閨にこもっているものというのがこの時代の当たり前のこと。男がここでは詩題からも高貴な男が春を迎えたのに帰ってこない。毎日思い続けていることで、これをやめなければいけないと思っていることをいう。顧夐『臨江仙三首 其二』「幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。」13-336《臨江仙三首 其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-519-13-(336) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4142 

4. 青春半 旧暦二月を指、春の半ば、と女自身はまだ若いことをいう。五行思想で春の色は青に配当されるので春を青春と言う。また旧暦では一月、二月、三月が春で、春の半ばは二月に当たる。

 

連理分枝鸞失伴,又是一場離散。

連理の梧桐が茂り、おおきな幹のえだに、鸞鳥が伴侶を失って止まっている。後宮では、寵愛を失えば、これらのことは普通にある一場面のことで、妃嬪にとっては常に別れを覚悟しなければいけないのである。

5. 連理 株を異にする樹の枝幹がつながって一体化したもの。もともと吉祥の兆しであったが、後には睦まじい男女、夫妻の比喩として用いられるようになった。

6. 鸞失伴 鸞鳥が伴侶を失うこと、寵愛を失う。後宮にはいわゆる「内職」という制度があり、『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。

 

掩鏡無語眉低,思隨芳艸凄凄。

寵愛を失えば化粧を直す気にもなれず、鏡を覆いかくすことが増え、言葉を交わすこともなくなり、心は暗く眉も下がってしかめ顔になるものだ、それでも、芳しい春の草がシュッシュッと伸びるようなうら若き女であるから、何時も準備をしておくことが矜持であると生きてゆく。

7. 芳艸凄凄 かんばしい香りの草が茂っているさま。 旅立った男が旅先で春草(女)に心奪われて帰って来ないことをいう。花間集では「芳草」を美人に喩えるのは常套手段。溫庭筠『菩薩蛮 其七』の「玉樓明月長相憶,柳絲裊娜春無力。門外草萋萋,送君聞馬嘶。畫羅金翡翠,香燭銷成淚。花落子規啼,綠窗殘夢迷。」

『菩薩蠻 七』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-7-1-#7 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1644

『酒泉子』四首(一)温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-21-3-#1 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1700

孫光憲『後庭花二首其二』 「石城依舊空江國,故宮春色。七尺青絲芳草綠,絕世難得。玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。只是教人添怨憶,悵望無極。」

14-364《後庭花二首其二》孫光憲(24)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-547-14-(364) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4282

凄凄】とは。意味や解説。[形動タリ]1 寒く冷たいさま。寒々とものさびしいさま。また、涼しいさま。「―たる微陽のまへ、遠路に臨んで眼(まなこ)をきはむ」〈平家・五〉2 雨雲のわくさま。蕭の用語解説 - [音]ショウ(セウ)(呉)(漢)1 草の名。ヨモギの一種。「蕭艾(しょうがい)」2 ものさびしい。「蕭蕭・蕭条・蕭然」蕭条】とは。意味や解説。[ト・タル][文][形動タリ]ひっそりともの寂しいさま。

 

憑使東風吹夢,與郎終日東西。

この春の風に吹けば、この気持ちをあのおかたのもとに夢のように飛んでゆくことができれば、あのおかたと一緒になって一日中、東へ西へ、春から秋へと一年中、過ごすことが出来るとおもうのである。

8. 憑使 頼る、よすがにすることができれば。憑 【ヒョウ・つく】1 よりかかる。頼みにする。よりどころ。2 霊がのり移る。つく。

9. 東風吹夢 【胡蝶の夢】(こちょうのゆめ) [荘子斉物論](荘子が夢で胡蝶になって楽しみ、自分と蝶との区別を忘れ たという故事から)現実と夢の区別がつかないこと。

10. 與郎終日東西 一日中、あなたが東に行けば一緒に東に行き、西に行けば一緒に西に行き、東は春、西は秋、すなわち、一年中。

11. 郎  劉郎、阮郎  別れ去る愛しい男。仙桃を味わった浦島太郎のような人物である劉晨=劉郎である夢心地の状態にある男、何年も訪れてくれなくなっているのでこのようにいう。12年もたっていることと、全く景色が変わって、ここにいる女を含めみんなが全く変わっていたというものだ。 劉禹錫『再遊玄都觀』「百畝庭中半是苔,桃花淨盡菜花開。種桃道士今何歸,前度劉郞今又來。」○阮郎 別れ去って久しく帰らぬ愛しい男。後漢の劉展、阮肇は天台山に薬草を採りに入り、道に迷って仙女に出合い、しばらくともに暮らした。しかし家のことが思い起こされ、帰ってみると、既に数世が過ぎ、見知った人は誰もいなかった。そこで再び山に尋ね入ったが、仙女を探し当てられなかったと言う。以来、阮郎、劉部は、別れ去る男や別れ去って久しく帰らぬ愛しい男を指すようになった。・檀郎/安仁/潘郎 晋の潘岳のあざな。彼は美男子であり、詩人であったが、妻の死にあい「悼亡」の詩三首を作った。後世、妻の死をなげいた模擬作が多く作られた。潘岳の幼名が檀奴だったので、「檀郎」は夫や恋い慕う男を意味する。・潘岳:安仁。滎陽(けいよう)中牟(河南省)の人。陸機と並ぶ美文の文学の大家で,錦を敷きのべたような絢爛(けんらん)たる趣をたたえられた。ことに人の死を悼む哀傷の詩文を得意とし,亡妻への尽きぬ思いをうたった〈悼亡詩(とうぼうし)〉3首はよく知られる。絶世の美男として,また権門の間を巧みに泳ぎまわる軽薄才子として,とかく話題にこと欠かなかった。八王の乱の渦中で悲劇的な刑死を遂げた。

 

『甘州子五首其三』 「曾如劉阮訪仙蹤,深洞客,此時逢。綺筵散後繡衾同,款曲見韶容。山枕上,長是怯晨鐘。」

13-12《甘州子五首其三》顧太尉敻(顧夐【こけい】)55首 Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-465-13-(12) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3872

和凝『天仙子二首』其二「洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。天仙子二首 其二  和學士凝(和凝【わぎょう】)二十首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」情けの強い男を「潘郎」といい、劉郞、阮郎、檀郎、安仁など色町の女が男をそう呼んだ。

劉禹錫『再遊玄都觀』

百畝庭中半是苔,桃花淨盡菜花開。

種桃道士今何歸,前度劉郞今又來。

再遊玄都觀 本文 劉禹錫 薛濤関連 唐五代詞・宋詩 薛濤-239--#95 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2742

白居易『贈薛濤』

蛾眉山勢接雲霓,欲逐劉郎北路迷。

若似剡中容易到,春風猶隔武陵溪。

贈薛濤 白居易 全唐詩 巻462  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-131--#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2202

牛嶠『女冠子 其三』

星冠霞帔,住在蘂珠宮裏。佩叮噹。

明翠搖蟬翼,纖珪理宿粧。

醮壇春艸綠,藥院杏花香。

青鳥傳心事,寄劉郎。

女冠子四首 其三 牛嶠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-316-5-#57-(7)  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3127

牛嶠『夢江南二首 其二』

紅繡被,兩兩間鴛鴦。

不是鳥中偏愛爾,為緣交頸睡南塘,全勝薄情郎。

夢江南二首 其一 牛嶠【ぎゅうきょう】 ⅩⅫ唐五代詞、「花間集」 Gs-319-6-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3142 

温庭筠 『思帝郷』

花花、満枝紅似霞。

羅袖画簾腸断、阜香車。

廻面共入閑語、戦箆金鳳斜。

唯有阮郎春尽、不帰家。

思帝郷 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-303-5-#57  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3062

牛嶠『夢江南二首其二』

紅繡被,兩兩間鴛鴦。

不是鳥中偏愛爾,為緣交頸睡南塘,全勝薄情郎。

江南二首 其一 牛嶠【ぎゅうきょう】 ⅩⅫ唐五代詞、「花間集」 Gs-319-6-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3142

12孫光憲《巻八19酒泉子三首其三》『花間集』371全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7127

酒泉子三首其三

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

12孫光憲《巻八19酒泉子三首其三》『花間集』371全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7127

 

 
  2015年12月26日 の紀頌之5つのBlog  
  ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場  
  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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743年(52)李白 巻五 25-《春思》(燕草如碧絲,) Index-23Ⅲ― 2-743年天寶二年43歳 94首-(51) <李白> Ⅰ李白詩1710 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7098  
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  Ⅱ中唐詩・晩唐詩
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韓愈124《 遺17潭州泊船呈諸公【案:見《遺集》。】》 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1628> Ⅱ 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7124  
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  index-5 806年39歳 50首の(2)25首 index-6[807年~809年 42歳]20首 index-7[810年~811年 44歳] 34首 index-8 [812年~814年47歳]46首 index-9[815年~816年 49歳] 57首 index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首  
  index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首 index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首 index-13 821年~822年 55歳 22首 index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首 韓愈 哲学・儒学「五原」 賦・散文・上奏文・碑文など  
  孟郊 張籍          
  ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"  
  Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog 767年-10-#2杜甫 《19-15 行官張望補稻畦水歸》#2 杜甫詩index-15-767年大暦2年56歲-10-#2 <1089> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7125   
  杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首 杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩)  杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首 杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首 杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首 杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首  
  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
  ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている  
  Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集 Fc2Blog  
               
  ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集  
  Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoorBlog 12孫光憲《巻八19酒泉子三首其三》『花間集』371全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7127  
  ●薛濤の全詩 ●花間集(1巻 ●花間集(2巻 ●花間集(3巻 ●花間集(4巻 ●花間集(5巻  
  ●魚玄機全詩 ●花間集(6巻 ●花間集(7巻 ●花間集(8巻 ●花間集(9巻 ●花間集10巻  
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  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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韋莊

巻三24酒泉子月落星沉,樓上美人春睡。綠雲傾,金枕膩,畫屏深。子規啼破相思夢,曙色東方纔動。柳煙輕,花露重,思難任。

牛嶠

巻四22酒泉子記得去年,煙暖杏園。花正發,雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟,落梅粧。

張泌

巻四42酒泉子二首其一春雨打䆫,驚夢覺來天氣曉。畫堂深,紅焰小,背蘭缸。酒香噴鼻懶開缸,惆悵更無人共醉。舊巢中,新鷰子,語雙雙。

張泌

巻四43酒泉子二首其二紫陌青門,三十六宮春色。御溝輦路暗相通,杏園風。咸陽沽酒寶釵空,笑指未央歸去。插花走馬落殘紅,月明中。

毛文錫

巻五07酒泉子綠樹春深,鷰語鶯啼聲斷續。蕙風飄蕩入芳叢,惹殘紅。柳絲無力裊煙空,金盞不辭須滿酌。海棠花下思朦朧,醉香風。

牛希濟

巻五43酒泉子枕轉簟涼,清曉遠鐘殘夢。月光斜、簾影動,舊鑪香。夢中說盡相思事,纖手勻雙淚。去年書,今日意,斷離腸。

顧夐

巻七09酒泉子七首其一楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

顧夐

巻七10酒泉子七首其二羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。登臨䆫,花滿樹,信沉沉。

顧夐

巻七11酒泉子七首其三小檻日斜,風度綠䆫人悄悄。翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。別來情緒轉難判,韶顏看卻老。依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

顧夐

巻七12酒泉子七首其四黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。小鴛鴦,金翡翠,稱人心。錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。隔年書,千點淚,恨難任。

顧夐

巻七13酒泉子七首其五掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

顧夐

巻七14酒泉子七首其六水碧風清,入檻細香紅藕膩。謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。帳深枕膩炷沉煙,負當年。

顧夐

巻七15酒泉子七首其七黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。殘花微雨隔青樓,思悠悠。芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。畫羅襦,香粉污,不勝愁。

孫光憲

巻八17酒泉子三首其一空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

孫光憲

巻八18酒泉子三首其二曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲絕,鬱離襟。展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

孫光憲

巻八19酒泉子三首其三斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

毛熙震

《巻十09巻十酒泉子二首其一》  閑臥繡幃,慵想萬般情寵。錦檀偏,翹股重,翠雲欹。暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。

毛熙震

《巻十10酒泉子二首其二》  鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。

李珣

《巻十38酒泉子四首其一》  寂寞青樓,風觸繡簾珠翠撼。月朦朧,花暗澹,鏁春愁。尋思往事依稀夢,淚臉露桃紅色重。鬢欹蟬。釵墜鳳,思悠悠。

李珣

《巻十39酒泉子四首其二》  雨清花零,紅散香凋池兩岸。別情遙,春歌斷,掩銀屏。孤帆早晚離三楚,閑理鈿箏愁幾許?曲中情,絃上語,不堪聽。

李珣

《巻十40酒泉子四首其三》  秋雨聯綿,聲散敗荷叢裏。那堪深夜枕前聽,酒初醒。牽愁惹思更無停,燭暗香凝天欲曉。細和煙,冷和雨,透簾中。

李珣

《巻十41酒泉子四首其四》  秋月嬋娟,皎潔碧紗䆫外。照花穿竹冷沉沉,印池心。凝露滴,砌蛩吟,驚覺謝娘殘夢。夜深斜傍枕前來,影徘徊。

 

 

酒泉子三首其一

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

空磧無邊,萬里陽關道路。

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

綺羅心,魂夢隔,上高樓。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

(酒泉子三首 其の一)

空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。

馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。

香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。

綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。

 

酒泉子三首其二

(又春になり、久方ぶりに高楼にあがって眺めると春の盛りであった。気分がよくなり閨に戻って屏風を広げると古代の舜帝を追って旅をした瀟水と湘水の、二神の絵が出てくると前にもまして心がふさがれる)

曲檻小樓,正是鶯花二月。

閨から出て渡り廊下の欄干に沿って小さめの楼閣に来て見ると、まさに盛春真っただ中の鶯は囀り花は満開の二月の景色に変わっている。

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

晴れやかに気持ちになって何にもおもいでボーとしている。これで愁いに思ったりすることから立ち直ることが出来るだろう。憂欝の底とは縁が切れる。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

閨に帰って、雰囲気を変えようと屏風を広げて見ると瀟水と湘水の、水の神の絵に空しく対峙することになる。絵ははるか千里万里を越えて行くものである。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

女はこの部屋から出ることはないが絵のように千里万里行くことが出来たらと思うと涙はあふれ、紅色の頬をおおいつくし、緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せている、また怨みに思う気持ちは深く沈んでゆく。

(酒泉子三首 其の二)

曲檻 小樓,正に是れ鶯花二月なり。

思うは無憀にして,愁い絕んと欲す,鬱 襟を離る。

展屏 空しく對す 瀟湘の水に,眼前に 千萬里。

淚 紅に掩い,眉 翠に斂まり,恨 沉沉たり。

 

酒泉子三首其三

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

(酒泉子三首其の三)

態を斂めて䆫前にあり,裊裊として雀釵 頸を拋す。

鷰 雙を成し,鸞 影に對し,耦 新たに知る。

玉纖 澹拂し眉山 小さくし,鏡中 嗔 共に照す。

翠 娟に連り,紅 渺に縹す,早に粧 時にす。

 

凌波曲舞002
 

『酒泉子三首其三』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子三首其三

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

 

(下し文)

(酒泉子三首其の三)

態を斂めて䆫前にあり,裊裊として雀釵 頸を拋す。

鷰 雙を成し,鸞 影に對し,耦 新たに知る。

玉纖 澹拂し眉山 小さくし,鏡中 嗔 共に照す。

翠 娟に連り,紅 渺に縹す,早に粧 時にす。

 

(現代語訳)

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。

それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。

繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。

眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

DCF00209
 

(訳注)

酒泉子三首其三

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

 

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句一仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、4❻③3③/❼❺3❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其一

空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

△●○○  ●●○○●● ●○○  ○●● ●○○

○○●●○△● ○○○●●  ●○○ ○△●  ●○○

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句二仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻二平韻で、④❻3❸③/❼❺③❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其二

曲檻小樓,正是鶯花二月。

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

●●●○  △●○○●●

△○○  ○●● ●△○

●△△●○○● ●○○●●

●●○ ○●●  ●○○

双調四十字、前段十九字五句二仄韻一平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、④⑥3❸③/❼533③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦7③❸③の詞形をとる。

酒泉子三首其三

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

●●?○  ??●○○△

●○○  ○●● ●○○

●○△●○○● ●△○△●

●○○ ○●●  ●?○

 

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。

18 裊裊【嫋嫋じょうじょう】①. なよなよとして風情のあるさま。しなやかなさま。たおやかなさま。②. 音や声が細く長く続くさま。

19 拋 (1) 投げる,ほうる抛球球を投げる.(2) 捨て去る,置き去りにする抛下妻子儿女妻子を捨て去る.投げ売りする.抛光 つや出しをする,研磨する.

 

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。

20 纖 1 ほそい。こまかい。「繊維・繊細・繊繊・繊毛」2 繊維。

21 耦 二人が並んで耕す.耦合:カップリング,結合.

 

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。

22 澹拂 風や波によってゆったりと動き、払うように動く。

23 嗔 怒る 嗔怪 怒って責める.

 

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

24 娟 美しい,麗しい娟秀麗しい.娟媚姿が素晴らしい.

25 縹渺 1 広くはてしないさま。「―たる雪の広野を隔てて」〈鏡花・註文帳〉2 かすかではっきりとしないさま。

 

 

 

 

 

 

孫光憲 《酒泉子三首》 【字解】

 

 

 

1. 空磧 空漠とした石ころ砂漠。

2. 陽關 関門の名。今の甘粛省敦燈の西南。玉関の南にあったので陽閑と言った。陽関(ようかん):盛唐の詩人・王 維の詩で知られる陽関。

王維『送元二使安西』

 渭城朝雨潤輕塵、 客舎青青柳色新。

 勧君更盡一杯酒、 西出陽關無故人。

(元二の安西に使するを送る)

渭城の朝雨 軽塵を潤し、客舎青青柳色新たなり。

君に勧む更に盡くせ一杯の酒、西のかた陽關を出ずれば故人無からん。

 陽関の烽火台

 陽関は甘粛省敦煌市の西南70キロにあり、古代シルクロードの関所である。前漢に関所がおかれ玉門関の南(陽)にあったこと からこの名がある。玉門関と並んで西域交通の門戸であった。前漢時代は陽関都尉の治所であり、魏晋時代は陽関県が置かれた。

唐代には寿昌県がおかれた。宋・元代以後は西方との陸路交通がだんだんと衰退し、関所も廃棄された。

3. 粛粛 馬の斯き声の形容。

4. 隴雲愁 西への道は天に続く、天日への道であること。そこに続く道は杜甫の「兵車行」に述べられており、隴西から過酷な峠を抜ける様子も「前出塞九首」「後出塞五首」に述べられており、隴山に懸かる雲はそのすべてを見ている。

兵車行  杜甫

5. 香貂舊制戎衣窄 貂の革製の昔誰かが作ったもので出征する際に持たされた軍服は体に少々きつくても必要なものだ。香貂は貂が極寒の冬には形が古かろうが、大きさがあって居なくても寒さをしのぐうえで威力を発揮して素晴らしいというほどの意味、美称。

6. 綺羅心 美しい綺羅の衣を着た女の心。

7. 魂夢隔 ここは夢魂が空磧、萬里、陽關、道路、隴雲に隔てられてとても届くはずがないというものである。

○この三句を故郷にいる妻の言葉としている解釈もあるが、間違い。この三句は男目線の言葉であり、孫光憲のものの見方である。

前出塞九首 其一 杜甫

前出塞九首 其二 杜甫

前出塞九首 其三 杜甫

前出塞九首 其四 杜甫

前出塞九首 其五 杜甫 44

前出塞九首 其六 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 45

前出塞九首 其七 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 46

前出塞九首 其八 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 47

前出塞九首 其九 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 48

後出塞五首 其一 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 95

後出塞五首 其二 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 96

後出塞五首 其三 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 97

後出塞五首 其四 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 98

後出塞五首 其五 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 99

 

8. 曲檻 閨は奥まったところにあるのでそこから樓閣までにある欄干のある廊下。

9. 小樓 多くくない楼閣。

10. 鶯花 鶯は囀り花は満開である。

11. 二月 盛春真っただ中の二月の景色に変わっている。閨にいると暦は二月であっても季節感がないので、この言い方になる。

12. 無憀 ・何もしないでボーっとする。顧夐『河傳三首 其三』「棹舉,舟去,波光渺渺,不知何處,岸花汀草共依依,雨微,鷓鴣相逐飛。天涯離恨江聲咽,啼猿切,此意向誰說。倚蘭橈,無憀。魂消,小爐香欲焦。」13-9《 河傳三首 其三 》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

・心が晴れやかにならない。悲しんだり、恨んだりすることはない。牛希濟『臨江仙七首 其三』「渭闕宮城秦樹凋,玉樓獨上無憀。含情不語自吹簫,調情和恨,天路逐風飄。何事乘龍入忽降,似知深意相招。三清攜手路非遙,世間屏障,彩筆劃嬌饒。」10 -7 臨江仙七首其三 牛學士希濟(牛希濟)ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-404-10-#7  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3567

13. 瀟湘水 娥皇と女英の二人の女神からなる洞庭湖から湘江、瀟水にかけての地域の絵が描かれている。

14. 眼前千萬里 当時の女性は基本的に閨から出ることはないので、絵を見て千里万里を行くことが出来たら、あの人を探して歩けるだろうというほどの意味になる。

15. 紅 頬の琴、転じて化粧をした顔。

16. 眉斂翠 緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せることをいう。

17. 沉沉 ](1) (水中に)沈む,水没する.【反】浮(2) (抽象的事物について)抑える,鎮める.沉不住气怒りを抑えられない.(3) 《方》休む,休息する.━ [形](1) (重量が)重い,目方のある.(2) 程度が大きい,甚だしい.

薛昭蘊『浣溪紗八首 其四』

握手河橋柳似金,蜂鬚輕惹百花心,蕙風蘭思寄清琴。

意滿便同春水滿,情深還似酒盃深,楚煙湘月兩沉沉。

手を握りあったのは河橋のたもとの柳が金のように芽吹き繁る下でした。蜂はその鬚でもって、輕やかに百花の芯に惹かれ、飛び回るのです。花のかおりが風に乗って吹いて来て、そのなかの蘭のはなに思いよせると、いつのまにか清がしい琴の音に寄ってしまうのです。

あの人への思いは胸いっぱいであり、ちょうど今、川いっぱいの春の増水とおなじのようなのです,あのひとのおもい、やさしさはとても深く、だから、また、酒盃をいっぱいに何度も注いでくれることのようでした,楚の巫女と皇帝の化身である靄、カスミが漂い、舜の後を追って湘水に身を投げた娥皇と女英が月に化身している,そのふたつの思いは、やがて沉沉とおさまっていくものです。

9 6 浣溪紗八首 其四 (薛昭蘊)薛侍郎昭蘊ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-382-9-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3457

18 裊裊【嫋嫋じょうじょう】①. なよなよとして風情のあるさま。しなやかなさま。たおやかなさま。②. 音や声が細く長く続くさま。

19 拋 (1) 投げる,ほうる抛球球を投げる.(2) 捨て去る,置き去りにする抛下妻子儿女妻子を捨て去る.投げ売りする.抛光 つや出しをする,研磨する.

20 纖 1 ほそい。こまかい。「繊維・繊細・繊繊・繊毛」2 繊維。

21 耦 二人が並んで耕す.耦合:カップリング,結合.

22 澹拂 風や波によってゆったりと動き、払うように動く。

23 嗔 怒る 嗔怪 怒って責める.

24 娟 美しい,麗しい娟秀麗しい.娟媚姿が素晴らしい.

25 縹渺 1 広くはてしないさま。「―たる雪の広野を隔てて」〈鏡花・註文帳〉2 かすかではっきりとしないさま。

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孫光憲  酒泉子三首其二

曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

(又春になり、久方ぶりに高楼にあがって眺めると春の盛りであった。気分がよくなり閨に戻って屏風を広げると古代の舜帝を追って旅をした瀟水と湘水の、二神の絵が出てくると前にもまして心がふさがれる)

閨から出て渡り廊下の欄干に沿って小さめの楼閣に来て見ると、まさに盛春真っただ中の鶯は囀り花は満開の二月の景色に変わっている。晴れやかに気持ちになって何にもおもいでボーとしている。これで愁いに思ったりすることから立ち直ることが出来るだろう。憂欝の底とは縁が切れる。閨に帰って、雰囲気を変えようと屏風を広げて見ると瀟水と湘水の、水の神の絵に空しく対峙することになる。絵ははるか千里万里を越えて行くものである。女はこの部屋から出ることはないが絵のように千里万里行くことが出来たらと思うと涙はあふれ、紅色の頬をおおいつくし、緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せている、また怨みに思う気持ちは深く沈んでゆく。

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  2015年12月25日 の紀頌之5つのBlog  
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  ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"  
  Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog 767年-10-#1杜甫 《19-15 行官張望補稻畦水歸》#1 杜甫詩index-15-767年大暦2年56歲-10-#1 <1088> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7120  
  杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首 杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩)  杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首 杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首 杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首 杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首  
  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
  ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている  
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  ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集  
  Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoorBlog 12孫光憲《巻八18酒泉子三首其二》『花間集』370全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7122  
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  毛文錫31首 花間集5巻 牛希濟11首 花間集5巻 欧陽烱17首 花間集5・6巻 和凝20首 花間集6巻 顧夐56首 花間集6・7巻 孫光憲47首 花間集7・8巻  
  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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韋莊

巻三24酒泉子月落星沉,樓上美人春睡。綠雲傾,金枕膩,畫屏深。子規啼破相思夢,曙色東方纔動。柳煙輕,花露重,思難任。

牛嶠

巻四22酒泉子記得去年,煙暖杏園。花正發,雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟,落梅粧。

張泌

巻四42酒泉子二首其一春雨打䆫,驚夢覺來天氣曉。畫堂深,紅焰小,背蘭缸。酒香噴鼻懶開缸,惆悵更無人共醉。舊巢中,新鷰子,語雙雙。

張泌

巻四43酒泉子二首其二紫陌青門,三十六宮春色。御溝輦路暗相通,杏園風。咸陽沽酒寶釵空,笑指未央歸去。插花走馬落殘紅,月明中。

毛文錫

巻五07酒泉子綠樹春深,鷰語鶯啼聲斷續。蕙風飄蕩入芳叢,惹殘紅。柳絲無力裊煙空,金盞不辭須滿酌。海棠花下思朦朧,醉香風。

牛希濟

巻五43酒泉子枕轉簟涼,清曉遠鐘殘夢。月光斜、簾影動,舊鑪香。夢中說盡相思事,纖手勻雙淚。去年書,今日意,斷離腸。

顧夐

巻七09酒泉子七首其一楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

顧夐

巻七10酒泉子七首其二羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。登臨䆫,花滿樹,信沉沉。

顧夐

巻七11酒泉子七首其三小檻日斜,風度綠䆫人悄悄。翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。別來情緒轉難判,韶顏看卻老。依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

顧夐

巻七12酒泉子七首其四黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。小鴛鴦,金翡翠,稱人心。錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。隔年書,千點淚,恨難任。

顧夐

巻七13酒泉子七首其五掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

顧夐

巻七14酒泉子七首其六水碧風清,入檻細香紅藕膩。謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。帳深枕膩炷沉煙,負當年。

顧夐

巻七15酒泉子七首其七黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。殘花微雨隔青樓,思悠悠。芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。畫羅襦,香粉污,不勝愁。

孫光憲

巻八17酒泉子三首其一空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

孫光憲

巻八18酒泉子三首其二曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲絕,鬱離襟。展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

孫光憲

巻八19酒泉子三首其三斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

毛熙震

《巻十09巻十酒泉子二首其一》  閑臥繡幃,慵想萬般情寵。錦檀偏,翹股重,翠雲欹。暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。

毛熙震

《巻十10酒泉子二首其二》  鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。

李珣

《巻十38酒泉子四首其一》  寂寞青樓,風觸繡簾珠翠撼。月朦朧,花暗澹,鏁春愁。尋思往事依稀夢,淚臉露桃紅色重。鬢欹蟬。釵墜鳳,思悠悠。

李珣

《巻十39酒泉子四首其二》  雨清花零,紅散香凋池兩岸。別情遙,春歌斷,掩銀屏。孤帆早晚離三楚,閑理鈿箏愁幾許?曲中情,絃上語,不堪聽。

李珣

《巻十40酒泉子四首其三》  秋雨聯綿,聲散敗荷叢裏。那堪深夜枕前聽,酒初醒。牽愁惹思更無停,燭暗香凝天欲曉。細和煙,冷和雨,透簾中。

李珣

《巻十41酒泉子四首其四》  秋月嬋娟,皎潔碧紗䆫外。照花穿竹冷沉沉,印池心。凝露滴,砌蛩吟,驚覺謝娘殘夢。夜深斜傍枕前來,影徘徊。

 

 

酒泉子三首其一

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

空磧無邊,萬里陽關道路。

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

綺羅心,魂夢隔,上高樓。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

(酒泉子三首 其の一)

空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。

馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。

香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。

綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。

 

酒泉子三首其二

(又春になり、久方ぶりに高楼にあがって眺めると春の盛りであった。気分がよくなり閨に戻って屏風を広げると古代の舜帝を追って旅をした瀟水と湘水の、二神の絵が出てくると前にもまして心がふさがれる)

曲檻小樓,正是鶯花二月。

閨から出て渡り廊下の欄干に沿って小さめの楼閣に来て見ると、まさに盛春真っただ中の鶯は囀り花は満開の二月の景色に変わっている。

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

晴れやかに気持ちになって何にもおもいでボーとしている。これで愁いに思ったりすることから立ち直ることが出来るだろう。憂欝の底とは縁が切れる。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

閨に帰って、雰囲気を変えようと屏風を広げて見ると瀟水と湘水の、水の神の絵に空しく対峙することになる。絵ははるか千里万里を越えて行くものである。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

女はこの部屋から出ることはないが絵のように千里万里行くことが出来たらと思うと涙はあふれ、紅色の頬をおおいつくし、緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せている、また怨みに思う気持ちは深く沈んでゆく。

(酒泉子三首 其の二)

曲檻 小樓,正に是れ鶯花二月なり。

思うは無憀にして,愁い絕んと欲す,鬱 襟を離る。

展屏 空しく對す 瀟湘の水に,眼前に 千萬里。

淚 紅に掩い,眉 翠に斂まり,恨 沉沉たり。

 

酒泉子三首其三

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

DCF00212
 

 

『酒泉子三首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子三首其二

曲檻小樓,正是鶯花二月。

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

 

(下し文)

(酒泉子三首 其の二)

曲檻 小樓,正に是れ鶯花二月なり。

思うは無憀にして,愁い絕んと欲す,鬱 襟を離る。

展屏 空しく對す 瀟湘の水に,眼前に 千萬里。

淚 紅に掩い,眉 翠に斂まり,恨 沉沉たり。

 

(現代語訳)

(又春になり、久方ぶりに高楼にあがって眺めると春の盛りであった。気分がよくなり閨に戻って屏風を広げると古代の舜帝を追って旅をした瀟水と湘水の、二神の絵が出てくると前にもまして心がふさがれる)

閨から出て渡り廊下の欄干に沿って小さめの楼閣に来て見ると、まさに盛春真っただ中の鶯は囀り花は満開の二月の景色に変わっている。

晴れやかに気持ちになって何にもおもいでボーとしている。これで愁いに思ったりすることから立ち直ることが出来るだろう。憂欝の底とは縁が切れる。

閨に帰って、雰囲気を変えようと屏風を広げて見ると瀟水と湘水の、水の神の絵に空しく対峙することになる。絵ははるか千里万里を越えて行くものである。

女はこの部屋から出ることはないが絵のように千里万里行くことが出来たらと思うと涙はあふれ、紅色の頬をおおいつくし、緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せている、また怨みに思う気持ちは深く沈んでゆく。

十三夜月
 

(訳注)

酒泉子三首其二(又春になり、久方ぶりに高楼にあがって眺めると春の盛りであった。気分がよくなり閨に戻って屏風を広げると古代の舜帝を追って旅をした瀟水と湘水の、二神の絵が出てくると前にもまして心がふさがれる)

 

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句一仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、4❻③3③/❼❺3❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其一

空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

△●○○  ●●○○●● ●○○  ○●● ●○○

○○●●○△● ○○○●●  ●○○ ○△●  ●○○

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句二仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻二平韻で、④❻3❸③/❼❺③❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其二

曲檻小樓,正是鶯花二月。

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

●●●○  △●○○●●

△○○  ○●● ●△○

●△△●○○● ●○○●●

●●○ ○●●  ●○○

 

曲檻小樓,正是鶯花二月。

閨から出て渡り廊下の欄干に沿って小さめの楼閣に来て見ると、まさに盛春真っただ中の鶯は囀り花は満開の二月の景色に変わっている。

8. 曲檻 閨は奥まったところにあるのでそこから樓閣までにある欄干のある廊下。

9. 小樓 多くくない楼閣。

10. 鶯花 鶯は囀り花は満開である。

11. 二月 盛春真っただ中の二月の景色に変わっている。閨にいると暦は二月であっても季節感がないので、この言い方になる。

 

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

晴れやかに気持ちになって何にもおもいでボーとしている。これで愁いに思ったりすることから立ち直ることが出来るだろう。憂欝の底とは縁が切れる。

12. 無憀 ・何もしないでボーっとする。顧夐『河傳三首 其三』「棹舉,舟去,波光渺渺,不知何處,岸花汀草共依依,雨微,鷓鴣相逐飛。天涯離恨江聲咽,啼猿切,此意向誰說。倚蘭橈,無憀。魂消,小爐香欲焦。」13-9《 河傳三首 其三 》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

・心が晴れやかにならない。悲しんだり、恨んだりすることはない。牛希濟『臨江仙七首 其三』「渭闕宮城秦樹凋,玉樓獨上無憀。含情不語自吹簫,調情和恨,天路逐風飄。何事乘龍入忽降,似知深意相招。三清攜手路非遙,世間屏障,彩筆劃嬌饒。」10 -7 臨江仙七首其三 牛學士希濟(牛希濟)ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-404-10-#7  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3567

 

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

閨に帰って、雰囲気を変えようと屏風を広げて見ると瀟水と湘水の水神の絵に空しく対峙することになる。絵ははるか千里万里を越えて行くものである。

13. 瀟湘水 娥皇と女英の二人の女神からなる洞庭湖から湘江、瀟水にかけての地域の絵が描かれている。

14. 眼前千萬里 当時の女性は基本的に閨から出ることはないので、絵を見て千里万里を行くことが出来たら、あの人を探して歩けるだろうというほどの意味になる。

 

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

女はこの部屋から出ることはないが絵のように千里万里行くことが出来たらと思うと涙はあふれ、紅色の頬をおおいつくし、緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せている、また怨みに思う気持ちは深く沈んでゆく。

15. 紅 頬の琴、転じて化粧をした顔。

16. 眉斂翠 緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せることをいう。

17. 沉沉 ](1) (水中に)沈む,水没する.【反】浮(2) (抽象的事物について)抑える,鎮める.沉不住气怒りを抑えられない.(3) 《方》休む,休息する.━ [形](1) (重量が)重い,目方のある.(2) 程度が大きい,甚だしい.

薛昭蘊『浣溪紗八首 其四』

握手河橋柳似金,蜂鬚輕惹百花心,蕙風蘭思寄清琴。

意滿便同春水滿,情深還似酒盃深,楚煙湘月兩沉沉。

手を握りあったのは河橋のたもとの柳が金のように芽吹き繁る下でした。蜂はその鬚でもって、輕やかに百花の芯に惹かれ、飛び回るのです。花のかおりが風に乗って吹いて来て、そのなかの蘭のはなに思いよせると、いつのまにか清がしい琴の音に寄ってしまうのです。

あの人への思いは胸いっぱいであり、ちょうど今、川いっぱいの春の増水とおなじのようなのです,あのひとのおもい、やさしさはとても深く、だから、また、酒盃をいっぱいに何度も注いでくれることのようでした,楚の巫女と皇帝の化身である靄、カスミが漂い、舜の後を追って湘水に身を投げた娥皇と女英が月に化身している,そのふたつの思いは、やがて沉沉とおさまっていくものです。

9 6 浣溪紗八首 其四 (薛昭蘊)薛侍郎昭蘊ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-382-9-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3457

12孫光憲《巻八17酒泉子三首其一》『花間集』369全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7117

孫光憲  酒泉子三首其一

空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

12孫光憲《巻八17酒泉子三首其一》『花間集』369全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7117

 

 

 
  2015年12月24日 の紀頌之5つのBlog  
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  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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  Ⅱ中唐詩・晩唐詩
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  孟郊 張籍          
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  Ⅲ杜甫詩全1500首   LiveDoorBlog 767年-9-#3杜甫 《19-09 .槐葉冷淘》#3 杜甫詩index-15-767年大暦2年56歲-9-#3 <1087> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7115  
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  ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている  
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韋莊

巻三24酒泉子月落星沉,樓上美人春睡。綠雲傾,金枕膩,畫屏深。子規啼破相思夢,曙色東方纔動。柳煙輕,花露重,思難任。

牛嶠

巻四22酒泉子記得去年,煙暖杏園。花正發,雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟,落梅粧。

張泌

巻四42酒泉子二首其一春雨打䆫,驚夢覺來天氣曉。畫堂深,紅焰小,背蘭缸。酒香噴鼻懶開缸,惆悵更無人共醉。舊巢中,新鷰子,語雙雙。

張泌

巻四43酒泉子二首其二紫陌青門,三十六宮春色。御溝輦路暗相通,杏園風。咸陽沽酒寶釵空,笑指未央歸去。插花走馬落殘紅,月明中。

毛文錫

巻五07酒泉子綠樹春深,鷰語鶯啼聲斷續。蕙風飄蕩入芳叢,惹殘紅。柳絲無力裊煙空,金盞不辭須滿酌。海棠花下思朦朧,醉香風。

牛希濟

巻五43酒泉子枕轉簟涼,清曉遠鐘殘夢。月光斜、簾影動,舊鑪香。夢中說盡相思事,纖手勻雙淚。去年書,今日意,斷離腸。

顧夐

巻七09酒泉子七首其一楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

顧夐

巻七10酒泉子七首其二羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。登臨䆫,花滿樹,信沉沉。

顧夐

巻七11酒泉子七首其三小檻日斜,風度綠䆫人悄悄。翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。別來情緒轉難判,韶顏看卻老。依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

顧夐

巻七12酒泉子七首其四黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。小鴛鴦,金翡翠,稱人心。錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。隔年書,千點淚,恨難任。

顧夐

巻七13酒泉子七首其五掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

顧夐

巻七14酒泉子七首其六水碧風清,入檻細香紅藕膩。謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。帳深枕膩炷沉煙,負當年。

顧夐

巻七15酒泉子七首其七黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。殘花微雨隔青樓,思悠悠。芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。畫羅襦,香粉污,不勝愁。

孫光憲

巻八17酒泉子三首其一空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

孫光憲

巻八18酒泉子三首其二曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲絕,鬱離襟。展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

孫光憲

巻八19酒泉子三首其三斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

毛熙震

《巻十09巻十酒泉子二首其一》  閑臥繡幃,慵想萬般情寵。錦檀偏,翹股重,翠雲欹。暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。

毛熙震

《巻十10酒泉子二首其二》  鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。

李珣

《巻十38酒泉子四首其一》  寂寞青樓,風觸繡簾珠翠撼。月朦朧,花暗澹,鏁春愁。尋思往事依稀夢,淚臉露桃紅色重。鬢欹蟬。釵墜鳳,思悠悠。

李珣

《巻十39酒泉子四首其二》  雨清花零,紅散香凋池兩岸。別情遙,春歌斷,掩銀屏。孤帆早晚離三楚,閑理鈿箏愁幾許?曲中情,絃上語,不堪聽。

李珣

《巻十40酒泉子四首其三》  秋雨聯綿,聲散敗荷叢裏。那堪深夜枕前聽,酒初醒。牽愁惹思更無停,燭暗香凝天欲曉。細和煙,冷和雨,透簾中。

李珣

《巻十41酒泉子四首其四》  秋月嬋娟,皎潔碧紗䆫外。照花穿竹冷沉沉,印池心。凝露滴,砌蛩吟,驚覺謝娘殘夢。夜深斜傍枕前來,影徘徊。

 

 

酒泉子三首其一

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

空磧無邊,萬里陽關道路。

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

綺羅心,魂夢隔,上高樓。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

(酒泉子三首 其の一)

空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。

馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。

香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。

綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。

 

酒泉子三首其二

曲檻小樓,正是鶯花二月。

思無憀,愁欲絕,鬱離襟。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

 

酒泉子三首其三

斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

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『酒泉子三首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子三首其一

空磧無邊,萬里陽關道路。

馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。

綺羅心,魂夢隔,上高樓。

 

(下し文)

(酒泉子三首 其の一)

空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。

馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。

香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。

綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。

 

(現代語訳)

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

 

(訳注)

酒泉子三首其一

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

【解説】孫光憲の詩は客観視して詠じられたものが多い。ここでも宴席から、行ったことのない西域、玉門関の更に西の陽関を想像し従軍兵士の思いを詠う。妻が出征した夫を思う雰囲気を感じさせて事態感を出している。教坊曲は吟じたり、それを聞いているものは全く実感のない人たちを前提にして作られるものであるから、いかに万人受けするかということが重要である。そうした意味でも孫光憲は客観的な目線を送っている。

 

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句一仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、4❻③3③/❼❺3❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其一

空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

△●○○  ●●○○●● ●○○  ○●● ●○○

○○●●○△● ○○○●●  ●○○ ○△●  ●○○

 

空磧無邊,萬里陽關道路。

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

1. 空磧 空漠とした石ころ砂漠。

2. 陽關 関門の名。今の甘粛省敦燈の西南。玉関の南にあったので陽閑と言った。陽関(ようかん):盛唐の詩人・王 維の詩で知られる陽関。

王維『送元二使安西』

 渭城朝雨潤輕塵、 客舎青青柳色新。

 勧君更盡一杯酒、 西出陽關無故人。

(元二の安西に使するを送る)

渭城の朝雨 軽塵を潤し、客舎青青柳色新たなり。

君に勧む更に盡くせ一杯の酒、西のかた陽關を出ずれば故人無からん。

 陽関の烽火台

 陽関は甘粛省敦煌市の西南70キロにあり、古代シルクロードの関所である。前漢に関所がおかれ玉門関の南(陽)にあったこと からこの名がある。玉門関と並んで西域交通の門戸であった。前漢時代は陽関都尉の治所であり、魏晋時代は陽関県が置かれた。

唐代には寿昌県がおかれた。宋・元代以後は西方との陸路交通がだんだんと衰退し、関所も廃棄された。

 

馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

3. 粛粛 馬の斯き声の形容。

4. 隴雲愁 西への道は天に続く、天日への道であること。そこに続く道は杜甫の「兵車行」に述べられており、隴西から過酷な峠を抜ける様子も「前出塞九首」「後出塞五首」に述べられており、隴山に懸かる雲はそのすべてを見ている。

兵車行  杜甫

 

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

5. 香貂舊制戎衣窄 貂の革製の昔誰かが作ったもので出征する際に持たされた軍服は体に少々きつくても必要なものだ。香貂は貂が極寒の冬には形が古かろうが、大きさがあって居なくても寒さをしのぐうえで威力を発揮して素晴らしいというほどの意味、美称。

 

綺羅心,魂夢隔,上高樓。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

6. 綺羅心 美しい綺羅の衣を着た女の心。

7. 魂夢隔 ここは夢魂が空磧、萬里、陽關、道路、隴雲に隔てられてとても届くはずがないというものである。

○この三句を故郷にいる妻の言葉としている解釈もあるが、間違い。この三句は男目線の言葉であり、孫光憲のものの見方である。

前出塞九首 其一 杜甫

前出塞九首 其二 杜甫

前出塞九首 其三 杜甫

前出塞九首 其四 杜甫

前出塞九首 其五 杜甫 44

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後出塞五首 其五 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 99

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12孫光憲《巻八16臨江仙二首其二》『花間集』368全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7112

孫光憲     巻八16臨江仙二首其二 暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

(妃嬪になり寵愛を受けていても、何時かは失うものである。高唐賦にいう楚雲もやがて分かれるものと詠う)

夕暮の降る雨はさびしそうにさらさらと降って気持ちがなえる、寝殿の門をあけることはない、閨の燭台に火をともして、その前に静かに座って動かず、「初更」の鐘が鳴る。耀く簪を付けたままで高く結った髪型が低くつぶれていて、両鬢の雲型も横方向に崩れかけていてもなおそうとはしない。とばり、幔幕も、垂らしかけのままでととのえず、屏風と戸張には燭光の影を映して明るい。寵愛を受けず、そのための準備もしないのでは、妃嬪の座を棄てることになる、思い直して、頭を低くして古い秦の瑟琴を一心に奏でる。燕が二羽並んでいて、こころのかよわない鸞が並んで足跡をのこしていく、男女の情というものには勝てないのだろう。そんな愁いも夜が明けると旅立って行くこことで消える。まさに、あんなに愛し合っていても「高唐賦」にいう雲に化身して川を下ってゆき別れるのである。

12孫光憲《巻八16臨江仙二首其二》『花間集』368全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7112

 

 
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張泌

巻四38臨江仙煙收湘渚秋江靜,蕉花露泣愁紅。五雲雙鶴去無蹤,幾迴魂斷,凝望向長空。翠竹暗留珠淚怨,閑調寶瑟波中,花鬟月鬢綠雲重。古祠深殿,香冷雨和風。

毛文錫

巻五35臨江仙暮蟬聲盡落斜陽,銀蟾影掛瀟湘。黃陵廟側水茫茫。楚山紅樹,煙雨隔高唐。岸泊漁燈風颭碎,白蘋遠散濃香。靈娥皷琴韻清商,朱絃淒切,雲散碧天長。

牛希濟

巻五36臨江仙七首其一峭碧參差十二峯,冷煙寒樹重重。瑤姬宮殿是仙蹤,金鑪珠帳,香靄晝偏濃。一自楚王驚夢斷,人間無路相逢。至今雲雨帶愁容,月斜江上,征棹動晨鐘。

牛希濟

巻五37臨江仙七首其二謝家仙觀寄雲岑,岩蘿拂地成陰。洞房不閉白雲深,當時丹竈,一粒化黃金。石壁霞衣猶半挂,松風長似鳴琴。時間唳鶴起前林,十洲高會,何處許相尋?

牛希濟

巻五38臨江仙七首其三渭闕宮城秦樹凋,玉樓獨上無憀。含情不語自吹簫,調情和恨,天路逐風飄。何事乘龍入忽降,似知深意相招。三清攜手路非遙,世間屏障,彩筆劃嬌饒。

牛希濟

巻五39臨江仙七首其四江繞黃陵春廟閑,嬌鶯獨語關關。滿庭重疊綠苔斑,陰雲無事,四散自歸山。簫鼓聲稀香燼冷,月娥斂盡彎環。風流皆道勝人間,須知狂客,判死為紅顏。

牛希濟

巻五40臨江仙七首其五素洛春光瀲灩平,千重媚臉初生。淩波羅襪勢輕輕,煙籠日照,珠翠半分明。風引寶衣疑欲舞,鸞迴鳳翥堪驚。也知心許無恐成,陳王辭賦,千載有聲名。

牛希濟

巻五41臨江仙七首其六柳帶搖風漢水濱,平蕪兩岸爭勻。鴛鴦對浴浪痕新。弄珠遊女,微笑自含春。輕步暗移蟬鬢動,羅裙風惹輕塵。水精宮殿豈無因?空勞纖手,解珮贈情人。

牛希濟

巻五42臨江仙七首其七洞庭波浪颭晴天,君山一點凝煙。此中真境屬神仙,玉樓珠殿,相映月輪邊。萬里平湖秋色冷,星辰垂影參然。橘林霜重更紅鮮,羅浮山下,有路暗相連。

和凝

巻六16臨江仙二首其一海棠香老春江晚,小樓霧縠涳濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

和凝

巻六17臨江仙二首其二披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

顧夐

巻七32臨江仙三首其一碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。象床珍簟,山障掩,玉琴橫。暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。博山鑪暖澹煙輕。蟬吟人靜,殘日傍,小䆫明。

顧夐

巻七33臨江仙三首其二幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

顧夐

巻七34臨江仙三首其三月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

孫光憲

巻八15臨江仙二首其一霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

孫光憲

巻八16臨江仙二首其二暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

鹿虔扆

《巻九14臨江仙二首 其一》  金鏁重門荒苑靜,綺䆫愁對秋空。翠華一去寂無蹤,玉樓歌吹,聲斷已隨風。煙月不知人事改,夜闌還照深宮。藕花相向野塘中,暗傷亡國,清露泣香紅。

鹿虔扆

《巻九15臨江仙二首 其二》  無賴曉鶯驚夢斷,起來殘醉初醒。映䆫絲柳裊煙青,翠簾慵卷,約砌杏花零。一自玉郎遊冶去,蓮凋月慘儀形。暮天微雨灑閑庭,手挼裙帶,無語倚雲屏。

閻選

《巻九22臨江仙二首其一》  雨停荷芰逗濃香,岸邊蟬噪垂楊。物華空有舊池塘,不逢仙子,何處夢襄王。珍簟對欹鴛枕冷,此來塵暗淒涼。欲憑危檻恨偏長,藕花珠綴,猶似汗凝粧。

閻選

《巻九23臨江仙二首其二》  十二高峯天外寒,竹梢輕拂仙壇。寶衣行雨在雲端,畫簾深殿,香霧冷風殘。欲問楚王何處去?翠屏猶掩金鸞。猿啼明月照空灘,孤舟行客,驚夢亦艱難。

尹鶚

《巻九28臨江仙二首其一》  一番荷芰生池沼,檻前風送馨香。昔年於此伴蕭娘,相偎佇立,牽惹敘衷腸。時逞笑容無限態,還如菡萏爭芳。別來虛遣思悠颺,慵窺往事,金鏁小蘭房。

尹鶚

《巻九29臨江仙二首其二》  深秋寒夜銀河靜,月明深院中庭。西䆫幽夢等閑成,逡巡覺後,特地恨難平。紅燭半條殘焰短,依稀暗背銀屏。枕前何事最傷情,梧桐葉上,點點露珠零。

毛熙震

《巻九41臨江仙二首其一》  南齊天子寵嬋娟,六宮羅綺三千。潘妃嬌豔獨芳妍,椒房蘭洞,雲雨降神仙。縱態迷歡心不足,風流可惜當年。纖腰婉約步金蓮,妖君傾國,猶自至今傳。

毛熙震

《巻九42臨江仙二首其二》  幽閨欲曙聞鶯囀,紅䆫月影微明。好風頻謝落花聲,隔幃殘燭,猶照綺屏箏。繡被錦茵眠玉暖,炷香斜裊煙輕。澹蛾羞斂不勝情,暗思閑夢,何處逐雲行。

李珣

《巻十24臨江仙二首其一》  簾卷池心小閣虛,暫涼閑步徐徐。芰荷經雨半凋疎,拂堤垂柳,蟬噪夕陽餘。不語低鬟幽思遠,玉釵斜墜雙魚。幾迴偷看寄來書,離情別恨,相隔欲何如。

李珣

《巻十25臨江仙二首其二》  鶯報簾前暖日紅,玉鑪殘麝猶濃。起來閨思尚疎慵,別愁春夢,誰解此情悰。強整嬌姿臨寶鏡,小池一朵芙蓉。舊歡無處再尋蹤,更堪迴顧,屏畫九疑峯。

 

 

臨江仙二首其一

(選抜されて後宮に入り、選抜されて妃賓に、そして鳳凰のようにむつまじく過ごしたが、寵愛は長くは続かない、何時しか少し年を重ねると見捨てられてしまう妃嬪を詠う。)

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。

醴泉である井戸、鳳凰は梧桐にだけとまる愛の巣であったものを、秋が来て霜に打たれて葉が枯れ落ち幹だけになっている、それと同じように、閨には翡翠の帳や彫りの手すりにもこの秋、初めて寒さを感じさせるものである。

薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

少し年を重ねたとはいえ、薄化粧や眉は花の冠によく似あってとても美しい。誰も来ない閨では思いを内に含んで言葉など発することなく、物憂げにいつまでも手すりにもたれて倚りかかっておこしをまつ。

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。

あのお方は輦車で今どこかにはるかなところに行かれてしまった、別れは悲しみであったが、思い出も、思いでの物、様々なものが恨みにかわってしまう。

不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

心は揺れ動き、思いは募るばかりで、堪えることが出来ない。鏡の箱を開けることもなく長く覆いをかけたままにしている。他のことへの意欲などないし、番で初めて鳳凰なのに独りで居る鸞はいったいなにを思えばよいのだろうか。

 

臨江仙二首其二

暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。

玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。

終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。

鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

 

 

(臨江仙二首其の一)

霜 井梧を拍ち 幹葉 堕ち、翠幃 雕檻 初めて寒し。

薄鈆 残黛 花冠に称う、情を含みて 語ること 無く、延佇して 欄干に倚る。

杳杳として 征輪 何処にか去れる、離愁 別恨 千般なり。

堪えず 心緒の正に多端なるに、鏡奩 長に掩い、孤鸞に対する意無し。

 

臨江仙二首其二

暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。

玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。

終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。

鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

(妃嬪になり寵愛を受けていても、何時かは失うものである。高唐賦にいう楚雲もやがて分かれるものと詠う)

夕暮の降る雨はさびしそうにさらさらと降って気持ちがなえる、寝殿の門をあけることはない、閨の燭台に火をともして、その前に静かに座って動かず、「初更」の鐘が鳴る。

耀く簪を付けたままで高く結った髪型が低くつぶれていて、両鬢の雲型も横方向に崩れかけていてもなおそうとはしない。とばり、幔幕も、垂らしかけのままでととのえず、屏風と戸張には燭光の影を映して明るい。

寵愛を受けず、そのための準備もしないのでは、妃嬪の座を棄てることになる、思い直して、頭を低くして古い秦の瑟琴を一心に奏でる。

燕が二羽並んでいて、こころのかよわない鸞が並んで足跡をのこしていく、男女の情というものには勝てないのだろう。そんな愁いも夜が明けると旅立って行くこことで消える。まさに、あんなに愛し合っていても「高唐賦」にいう雲に化身して川を下ってゆき別れるのである。

(臨江仙二首 其の二)

暮雨 淒淒として 深く院閉し,燈前 初更に凝坐す。

玉釵 低く壓し 鬢雲橫にし,羅幕を半ば垂らし,燭光明らかに相いに映す。

終に是れに 心有り 漢の珮を投じ,頭を低くして 但し 秦箏を理す。

鷰雙び 鸞耦して 情勝てず,只だ愁い 明けて發し,將に 楚雲行くを逐う。

 

 

『臨江仙二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

臨江仙二首其二

暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。

玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。

終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。

鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

 

(下し文)

(臨江仙二首 其の二)

暮雨 淒淒として 深く院閉し,燈前 初更に凝坐す。

玉釵 低く壓し 鬢雲橫にし,羅幕を半ば垂らし,燭光明らかに相いに映す。

終に是れに 心有り 漢の珮を投じ,頭を低くして 但し 秦箏を理す。

鷰雙び 鸞耦して 情勝てず,只だ愁い 明けて發し,將に 楚雲行くを逐う。

 

(現代語訳)

(妃嬪になり寵愛を受けていても、何時かは失うものである。高唐賦にいう楚雲もやがて分かれるものと詠う)

夕暮の降る雨はさびしそうにさらさらと降って気持ちがなえる、寝殿の門をあけることはない、閨の燭台に火をともして、その前に静かに座って動かず、「初更」の鐘が鳴る。

耀く簪を付けたままで高く結った髪型が低くつぶれていて、両鬢の雲型も横方向に崩れかけていてもなおそうとはしない。とばり、幔幕も、垂らしかけのままでととのえず、屏風と戸張には燭光の影を映して明るい。

寵愛を受けず、そのための準備もしないのでは、妃嬪の座を棄てることになる、思い直して、頭を低くして古い秦の瑟琴を一心に奏でる。

燕が二羽並んでいて、こころのかよわない鸞が並んで足跡をのこしていく、男女の情というものには勝てないのだろう。そんな愁いも夜が明けると旅立って行くこことで消える。まさに、あんなに愛し合っていても「高唐賦」にいう雲に化身して川を下ってゆき別れるのである。

 

(訳注)

臨江仙二首其二

(妃嬪になり寵愛を受けていても、何時かは失うものである。高唐賦にいう楚雲もやがて分かれるものと詠う)

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調五十八字、前後段同形、各五句二十九字三平韻二仄韻で、❼⑥⑦❹⑤/❼⑥⑦❹⑤の詞形をとる。張泌、毛文錫、牛希濟、和凝、顧敻、孫光憲、鹿虔扆、閻選、毛熙震、李珣の臨江仙の解説参照。

臨江仙二首其一

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。

薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。

不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

○●●○●●△  ●○○●○○

●○○●△○△  ○○○● △●△○○

●●○○△●● △○●●○○

△○○●△○○ ●○△●  ○●●○○

其二 双調五十八字、前後段同形、各五句二十九字三平韻二仄韻で、❼⑥⑦❹⑤/❼⑥⑦❹⑤の詞形をとる。張泌、毛文錫、牛希濟、和凝、顧敻、孫光憲、鹿虔扆、閻選、毛熙震、李珣の臨江仙の解説参照。

臨江仙二首其二

暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。

玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。

終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。

鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

●●○○△△●  ○○△●○△

●○○●●○△  ●○○● △●●△○

○●●○○●● ○○△●○○

●○○●△△○ △○○●  △●●○△

 

暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。

夕暮の降る雨はさびしそうにさらさらと降って気持ちがなえる、寝殿の門をあけることはない、閨の燭台に火をともして、その前に静かに座って動かず、「初更」の鐘が鳴る。

12 暮雨 朝雲暮雨。男女の契り・情交のこと。「朝雲」は朝の雲、「暮雨」は夕暮れに降る雨の意。「暮雨朝雲 ぼうちょううん 」ともいう。

13 淒淒 (1) 寒い,冷え冷えする.(2) もの寂しい,うらさびれた.《―(悽)》 qī⊗悲しい,胸ふさがる.凄惨。痛ましい,悲惨な.凄楚

14 深院閉 高い塀で囲まれた大きな屋敷、寝殿のとびらをしめたままにする。.

15 凝坐 1.静坐。 2.引申为静止,固定不变。

16 初更 日が暮れて、翌朝夜が明けるまでを五回の時を告げる、その初回をいう。この時はまだ来てくれるかもしれないという意味に使う語である。

 

玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。

耀く簪を付けたままで高く結った髪型が低くつぶれていて、両鬢の雲型も横方向に崩れかけていてもなおそうとはしない。とばり、幔幕も、垂らしかけのままでととのえず、屏風と戸張には燭光の影を映して明るい。

17 玉釵・低壓鬢雲橫 この二句は妃嬪自身の様子で、特に髪型が崩れても直そうとする気持ちにもならない。

18 半垂羅幕,相映燭光明 この二句は妃嬪の部屋の様子。

 

終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。

寵愛を受けず、そのための準備もしないのでは、妃嬪の座を棄てることになる、思い直して、頭を低くして古い秦の瑟琴を一心に奏でる。

8 投漢珮 相傳周代鄭交甫於漢皋臺下遇見兩位女子,女子身上均佩帶二珠。回頭看時,二位女子也不見蹤影。妃嬪の位を示す帯玉。あの漢の佩び玉を投げ捨ててしまって忘れようとする心になろうとしていることをいう。

10 理秦箏 寺院歌謡として行われた楽箏伴奏の歌曲が多く、ここでは三峡、巫山の巫女が奏るものである。秦箏- 箏は,戦国時代(前403‐前221)に秦の将軍蒙恬(もうてん)が作ったという説があるが信ずるに足りない。しかし,秦で広く行われていたことから秦箏とも呼ばれ,中国大陸西部に興った秦と箏との関係は密接である。

 

鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

燕が二羽並んでいて、こころのかよわない鸞が並んで足跡をのこしていく、男女の情というものには勝てないのだろう。そんな愁いも夜が明けると旅立って行くこことで消える。まさに、あんなに愛し合っていても「高唐賦」にいう雲に化身して川を下ってゆき別れるのである。

11 鷰雙 ツバメが二つ並ぶ。ツバメは子作りのために巣を作り、やってくる。

12 鸞耦 鳳凰はつがいで居るもの。・耦 二人が並んで耕す.ここは、三峡を越えて行く前に留まる夔州・歸州・宜昌などの港の街の妓娼について詠ったもの。

13 明發 夜が明けたら出発すること。・明発 早朝、夜が明けて光が発する時。夜は初夜を引きずっているということ。 謝霊運『初發石首城』「游當羅浮行,息必廬霍期。越海淩三山,遊湘曆九嶷。欽聖若旦暮,懷賢亦淒其。皎皎明發心,不為歲寒欺。」

14 楚雲 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

水檻遣心二首其二 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 13)  杜甫 <418>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2035 杜甫詩1000-418-601/1500

 

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

李商隠 7 無題(颯颯東風細雨來)

細雨(帷飄白玉堂)  李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-76

細雨(瀟洒傍廻汀)  李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-78

白貯舞005
 

 

 

 

 

 

 

孫光憲 『臨江仙二首』 【字解】

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1 【臨江仙解説】遠く旅に出て帰らぬ男を思う女の情を詠う。前段は、斎条とした秋の寒さの到来と、美しさの変わらぬ女性の姿、そして、思いに沈むさまを述べる。後段、「離愁別恨千般なり」や「心緒の正に多端」の語は、「男の身に何かあったのではないか」「旅先で新しい女ができたのではないか」「もしこのままあの人が帰らなかったならば私はどうなるのか」と、あれこれ悪い事を想像せずにはいられぬ女心を綴ったものである。一夫多妻制のこの時代、通い婚が基本であり、女のもとに男が通うということぢ、天子から下々まで、女に大小の差こそあっても一つの部屋、閨、家があり気が向けば立ち寄る。女は他に行かせないように頑張る。その一生懸命さを表現する、鏡、霜、井、梧、葉墮、翠、幃、雕檻、初寒、薄鈆、殘黛、花冠,含情、無語,延佇、倚欄干、何處去,離、愁、別、恨、千般、不堪、心緒、正多端,鏡奩、長掩,對孤鸞、と。初めは仲睦まじくしている時の小道具は一転して一人さびしい小道具となるのである。孫光憲の詩はそうした年増女の辛さを表現する語句のみで構成されているのである。

2 梧幹葉 梧桐は仲睦まじく暮らしていたことの象徴。鳳凰は、霊泉(醴泉〈れいせん〉、甘い泉の水だけを飲み、60-120年に一度だけ実を結ぶという竹の実のみを食物とし、梧桐の木にしか止まらないという。『詩経』に「鳳凰鳴けり、彼の高き岡に。梧桐生ず、彼の朝陽に」『詩経』大雅巻阿とあり、「鳳凰は梧桐にあらざれば栖まず、竹実にあらざれば食わず」という。『詩経』『春秋左氏伝』『論語』などでは「聖天子の出現を待ってこの世に現れる」といわれる瑞獣(瑞鳥)のひとつとされる。『礼記』では麒麟・霊亀・応竜とともに「四霊」と総称されている。

3 薄鈆殘黛稱花冠 薄れた白粉や眉は花の冠によく似あう。化粧はくずれてしまっているが、女の美しさは少しも変わっていないことを言う。・薄鈆:薄れた白粉。・残黛:色越せた眉。・称:ぴったりとよく似あう。

4 延佇 いつまでも手すりにもたれて倚りかかっていること。

5 杳杳 ほのかなさま。くらいさま。また,はるかなさま。空間または時間においてとても遠い、遠いこと。

6 離愁 別れの悲しみ。

7 千般 種々。さまざま。いろいろ。

8 心緒 思いのはし。心の動き。

9 多端 1 複雑で多方面にわたっていること。また、そのさま。「多岐―」2 事件や仕事が多くて忙しいこと。また、そのさま。多忙。多事。

10 鏡奩 鏡を収めておく箱。

11 孤鸞 自分の姿しか映っていない鏡。鸞は鸞鏡。鏡のこと。○鏡中鸞 金属製の鏡の背面に彫られた鸞の模様が「双鳳文鏡」であり、離ればなれのつがいの鸞がお互いを求め合う姿を彫刻しているものが多い。「鸞鏡」は、愛し合う(時にはなれねばならない)男女の思いを映し出す鏡をしめす。鸞は理想郷に棲む想像上の鳥。羽の色は赤色に五色を交え声は五音に合うという。白楽天「太行路」に鏡中鸞を引き合いにし男女について詠っている。無題 (含情春晼晩) 李商隠 16 では李商隠が旅先の南京周辺の家妓であろう女性の部屋にひそかに入り交わったということを詠っている。

孫光憲『浣溪沙九首其四』

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

溫庭筠『菩薩蠻 六』

寶函钿雀金鸂鵣,沈香閣上吳山碧。

楊柳又如絲,驛橋春雨時。

畫樓音信斷,芳草江南岸。

鸞鏡與花枝,此情誰得知。

寶函【ほうかん】鈿雀【てんじゃく】金の鸂鵣【けいちょく】,沈香【ちんこう】の閣上 吳山の碧【みどり】。

楊柳 又 絲の如し,驛橋 春雨【はるさめ】の時なり。

畫樓から音信 斷つ,芳草 江南の岸のあり。

鸞鏡と花枝とあり,此の情は誰か知るを得る。

あの人をまちわびている女妓が、目をさまし、うつくしい匣枕、鈿雀のかんざしと、金のおしどりにかざられたかんざしがそばにおちている。起き出すのも物憂い女妓は、朝のお化粧をして沈香のただよう樓閣のうえにのぼって、呉山のみどりの彼方をながめやる。
健康と無事を祈って折った青柳は又芽をふいて、糸のようにほそい枝を風になびかせている。驛亭にしっとりと春雨がふって、あの日ここであの人と別れを告げた。あれからどれほど月日がたったのか。
美しい高楼あの人を待ち侘びているけれど音信はとぎれたままなのだ。かんばしい春の草が江南の岸にはまたさきだした。
このさびしいこころは、鸞鳥を背に彫んだ鏡と花が咲き誇る枝だけがいつもみている。この心情はだれが察っしてくれるのだろうか。

『菩薩蠻 六』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-6-6 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1640

・寶函鈿雀金鸂鵣 宝函はうつくしい匣の意であるが、枕函(まくら)とか、化粧箱をさす。鈿雀は花鈿(かんざし)雀釵のたぐいであろう。金鸂鵣、これも金のおしどりのかんざしである。枕のほとりに叙のおちているけしき。夫が居たら考えられない景色というところであろう。の注参照。ここではさらに鏡に映る己の孤独な影を重ねる。

12 暮雨 朝雲暮雨。男女の契り・情交のこと。「朝雲」は朝の雲、「暮雨」は夕暮れに降る雨の意。「暮雨朝雲 ぼうちょううん 」ともいう。

13 淒淒 (1) 寒い,冷え冷えする.(2) もの寂しい,うらさびれた.《―(悽)》 qī⊗悲しい,胸ふさがる.凄惨。痛ましい,悲惨な.凄楚

14 深院閉 高い塀で囲まれた大きな屋敷、寝殿のとびらをしめたままにする。.

15 凝坐 1.静坐。 2.引申为静止,固定不变。

16 初更 日が暮れて、翌朝夜が明けるまでを五回の時を告げる、その初回をいう。この時はまだ来てくれるかもしれないという意味に使う語である。

17 玉釵・低壓鬢雲橫 この二句は妃嬪自身の様子で、特に髪型が崩れても直そうとする気持ちにもならない。

18 半垂羅幕,相映燭光明 この二句は妃嬪の部屋の様子。

8 投漢珮 相傳周代鄭交甫於漢皋臺下遇見兩位女子,女子身上均佩帶二珠。回頭看時,二位女子也不見蹤影。妃嬪の位を示す帯玉。あの漢の佩び玉を投げ捨ててしまって忘れようとする心になろうとしていることをいう。

10 理秦箏 寺院歌謡として行われた楽箏伴奏の歌曲が多く、ここでは三峡、巫山の巫女が奏るものである。秦箏- 箏は,戦国時代(前403‐前221)に秦の将軍蒙恬(もうてん)が作ったという説があるが信ずるに足りない。しかし,秦で広く行われていたことから秦箏とも呼ばれ,中国大陸西部に興った秦と箏との関係は密接である。

11 鷰雙 ツバメが二つ並ぶ。ツバメは子作りのために巣を作り、やってくる。

12 鸞耦 鳳凰はつがいで居るもの。・耦 二人が並んで耕す.ここは、三峡を越えて行く前に留まる夔州・歸州・宜昌などの港の街の妓娼について詠ったもの。

白鬚草01

13 明發 夜が明けたら出発すること。・明発 早朝、夜が明けて光が発する時。夜は初夜を引きずっているということ。 謝霊運『初發石首城』「游當羅浮行,息必廬霍期。越海淩三山,遊湘曆九嶷。欽聖若旦暮,懷賢亦淒其。皎皎明發心,不為歲寒欺。」

14 楚雲 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

水檻遣心二首其二 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 13)  杜甫 <418>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2035 杜甫詩1000-418-601/1500

 

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

李商隠 7 無題(颯颯東風細雨來)

細雨(帷飄白玉堂)  李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-76

細雨(瀟洒傍廻汀)  李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-78

12孫光憲《巻八15臨江仙二首其一》『花間集』367全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7107

孫光憲  臨江仙二首其一

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

(選抜されて後宮に入り、選抜されて妃賓に、そして鳳凰のようにむつまじく過ごしたが、寵愛は長くは続かない、何時しか少し年を重ねると見捨てられてしまう妃嬪を詠う。)

醴泉である井戸、鳳凰は梧桐にだけとまる愛の巣であったものを、秋が来て霜に打たれて葉が枯れ落ち幹だけになっている、それと同じように、閨には翡翠の帳や彫りの手すりにもこの秋、初めて寒さを感じさせるものである。

少し年を重ねたとはいえ、薄化粧や眉は花の冠によく似あってとても美しい。誰も来ない閨では思いを内に含んで言葉など発することなく、物憂げにいつまでも手すりにもたれて倚りかかっておこしをまつ。

あのお方は輦車で今どこかにはるかなところに行かれてしまった、別れは悲しみであったが、思い出も、思いでの物、様々なものが恨みにかわってしまう。

心は揺れ動き、思いは募るばかりで、堪えることが出来ない。鏡の箱を開けることもなく長く覆いをかけたままにしている。他のことへの意欲などないし、番で初めて鳳凰なのに独りで居る鸞はいったいなにを思えばよいのだろうか。

12孫光憲《巻八15臨江仙二首其一》『花間集』367全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7107

 

 

 
  2015年12月22日 の紀頌之5つのBlog  
  ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場  
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張泌

巻四38臨江仙煙收湘渚秋江靜,蕉花露泣愁紅。五雲雙鶴去無蹤,幾迴魂斷,凝望向長空。翠竹暗留珠淚怨,閑調寶瑟波中,花鬟月鬢綠雲重。古祠深殿,香冷雨和風。

毛文錫

巻五35臨江仙暮蟬聲盡落斜陽,銀蟾影掛瀟湘。黃陵廟側水茫茫。楚山紅樹,煙雨隔高唐。岸泊漁燈風颭碎,白蘋遠散濃香。靈娥皷琴韻清商,朱絃淒切,雲散碧天長。

牛希濟

巻五36臨江仙七首其一峭碧參差十二峯,冷煙寒樹重重。瑤姬宮殿是仙蹤,金鑪珠帳,香靄晝偏濃。一自楚王驚夢斷,人間無路相逢。至今雲雨帶愁容,月斜江上,征棹動晨鐘。

牛希濟

巻五37臨江仙七首其二謝家仙觀寄雲岑,岩蘿拂地成陰。洞房不閉白雲深,當時丹竈,一粒化黃金。石壁霞衣猶半挂,松風長似鳴琴。時間唳鶴起前林,十洲高會,何處許相尋?

牛希濟

巻五38臨江仙七首其三渭闕宮城秦樹凋,玉樓獨上無憀。含情不語自吹簫,調情和恨,天路逐風飄。何事乘龍入忽降,似知深意相招。三清攜手路非遙,世間屏障,彩筆劃嬌饒。

牛希濟

巻五39臨江仙七首其四江繞黃陵春廟閑,嬌鶯獨語關關。滿庭重疊綠苔斑,陰雲無事,四散自歸山。簫鼓聲稀香燼冷,月娥斂盡彎環。風流皆道勝人間,須知狂客,判死為紅顏。

牛希濟

巻五40臨江仙七首其五素洛春光瀲灩平,千重媚臉初生。淩波羅襪勢輕輕,煙籠日照,珠翠半分明。風引寶衣疑欲舞,鸞迴鳳翥堪驚。也知心許無恐成,陳王辭賦,千載有聲名。

牛希濟

巻五41臨江仙七首其六柳帶搖風漢水濱,平蕪兩岸爭勻。鴛鴦對浴浪痕新。弄珠遊女,微笑自含春。輕步暗移蟬鬢動,羅裙風惹輕塵。水精宮殿豈無因?空勞纖手,解珮贈情人。

牛希濟

巻五42臨江仙七首其七洞庭波浪颭晴天,君山一點凝煙。此中真境屬神仙,玉樓珠殿,相映月輪邊。萬里平湖秋色冷,星辰垂影參然。橘林霜重更紅鮮,羅浮山下,有路暗相連。

和凝

巻六16臨江仙二首其一海棠香老春江晚,小樓霧縠涳濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

和凝

巻六17臨江仙二首其二披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

顧夐

巻七32臨江仙三首其一碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。象床珍簟,山障掩,玉琴橫。暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。博山鑪暖澹煙輕。蟬吟人靜,殘日傍,小䆫明。

顧夐

巻七33臨江仙三首其二幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

顧夐

巻七34臨江仙三首其三月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

孫光憲

巻八15臨江仙二首其一霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

孫光憲

巻八16臨江仙二首其二暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

鹿虔扆

《巻九14臨江仙二首 其一》  金鏁重門荒苑靜,綺䆫愁對秋空。翠華一去寂無蹤,玉樓歌吹,聲斷已隨風。煙月不知人事改,夜闌還照深宮。藕花相向野塘中,暗傷亡國,清露泣香紅。

鹿虔扆

《巻九15臨江仙二首 其二》  無賴曉鶯驚夢斷,起來殘醉初醒。映䆫絲柳裊煙青,翠簾慵卷,約砌杏花零。一自玉郎遊冶去,蓮凋月慘儀形。暮天微雨灑閑庭,手挼裙帶,無語倚雲屏。

閻選

《巻九22臨江仙二首其一》  雨停荷芰逗濃香,岸邊蟬噪垂楊。物華空有舊池塘,不逢仙子,何處夢襄王。珍簟對欹鴛枕冷,此來塵暗淒涼。欲憑危檻恨偏長,藕花珠綴,猶似汗凝粧。

閻選

《巻九23臨江仙二首其二》  十二高峯天外寒,竹梢輕拂仙壇。寶衣行雨在雲端,畫簾深殿,香霧冷風殘。欲問楚王何處去?翠屏猶掩金鸞。猿啼明月照空灘,孤舟行客,驚夢亦艱難。

尹鶚

《巻九28臨江仙二首其一》  一番荷芰生池沼,檻前風送馨香。昔年於此伴蕭娘,相偎佇立,牽惹敘衷腸。時逞笑容無限態,還如菡萏爭芳。別來虛遣思悠颺,慵窺往事,金鏁小蘭房。

尹鶚

《巻九29臨江仙二首其二》  深秋寒夜銀河靜,月明深院中庭。西䆫幽夢等閑成,逡巡覺後,特地恨難平。紅燭半條殘焰短,依稀暗背銀屏。枕前何事最傷情,梧桐葉上,點點露珠零。

毛熙震

《巻九41臨江仙二首其一》  南齊天子寵嬋娟,六宮羅綺三千。潘妃嬌豔獨芳妍,椒房蘭洞,雲雨降神仙。縱態迷歡心不足,風流可惜當年。纖腰婉約步金蓮,妖君傾國,猶自至今傳。

毛熙震

《巻九42臨江仙二首其二》  幽閨欲曙聞鶯囀,紅䆫月影微明。好風頻謝落花聲,隔幃殘燭,猶照綺屏箏。繡被錦茵眠玉暖,炷香斜裊煙輕。澹蛾羞斂不勝情,暗思閑夢,何處逐雲行。

李珣

《巻十24臨江仙二首其一》  簾卷池心小閣虛,暫涼閑步徐徐。芰荷經雨半凋疎,拂堤垂柳,蟬噪夕陽餘。不語低鬟幽思遠,玉釵斜墜雙魚。幾迴偷看寄來書,離情別恨,相隔欲何如。

李珣

《巻十25臨江仙二首其二》  鶯報簾前暖日紅,玉鑪殘麝猶濃。起來閨思尚疎慵,別愁春夢,誰解此情悰。強整嬌姿臨寶鏡,小池一朵芙蓉。舊歡無處再尋蹤,更堪迴顧,屏畫九疑峯。

 

 

臨江仙二首其一

(選抜されて後宮に入り、選抜されて妃賓に、そして鳳凰のようにむつまじく過ごしたが、寵愛は長くは続かない、何時しか少し年を重ねると見捨てられてしまう妃嬪を詠う。)

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。

醴泉である井戸、鳳凰は梧桐にだけとまる愛の巣であったものを、秋が来て霜に打たれて葉が枯れ落ち幹だけになっている、それと同じように、閨には翡翠の帳や彫りの手すりにもこの秋、初めて寒さを感じさせるものである。

薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

少し年を重ねたとはいえ、薄化粧や眉は花の冠によく似あってとても美しい。誰も来ない閨では思いを内に含んで言葉など発することなく、物憂げにいつまでも手すりにもたれて倚りかかっておこしをまつ。

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。

あのお方は輦車で今どこかにはるかなところに行かれてしまった、別れは悲しみであったが、思い出も、思いでの物、様々なものが恨みにかわってしまう。

不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

心は揺れ動き、思いは募るばかりで、堪えることが出来ない。鏡の箱を開けることもなく長く覆いをかけたままにしている。他のことへの意欲などないし、番で初めて鳳凰なのに独りで居る鸞はいったいなにを思えばよいのだろうか。

 

臨江仙二首其二

暮雨淒淒深院閉,燈前凝坐初更。

玉釵低壓鬢雲橫,半垂羅幕,相映燭光明。

終是有心投漢珮,低頭但理秦箏。

鷰雙鸞耦不勝情,只愁明發,將逐楚雲行。

 

 

(臨江仙二首其の一)

霜 井梧を拍ち 幹葉 堕ち、翠幃 雕檻 初めて寒し。

薄鈆 残黛 花冠に称う、情を含みて 語ること 無く、延佇して 欄干に倚る。

杳杳として 征輪 何処にか去れる、離愁 別恨 千般なり。

堪えず 心緒の正に多端なるに、鏡奩 長に掩い、孤鸞に対する意無し。

 

隋堤01
 

『臨江仙二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

臨江仙二首其一

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。

薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。

不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

 

 

(下し文)

(臨江仙二首其の一)

霜 井梧を拍ち 幹葉 堕ち、翠幃 雕檻 初めて寒し。

薄鈆 残黛 花冠に称う、情を含みて 語ること 無く、延佇して 欄干に倚る。

杳杳として 征輪 何処にか去れる、離愁 別恨 千般なり。

堪えず 心緒の正に多端なるに、鏡奩 長に掩い、孤鸞に対する意無し。

 

 

(現代語訳)

(選抜されて後宮に入り、選抜されて妃賓に、そして鳳凰のようにむつまじく過ごしたが、寵愛は長くは続かない、何時しか少し年を重ねると見捨てられてしまう妃嬪を詠う。)

醴泉である井戸、鳳凰は梧桐にだけとまる愛の巣であったものを、秋が来て霜に打たれて葉が枯れ落ち幹だけになっている、それと同じように、閨には翡翠の帳や彫りの手すりにもこの秋、初めて寒さを感じさせるものである。

少し年を重ねたとはいえ、薄化粧や眉は花の冠によく似あってとても美しい。誰も来ない閨では思いを内に含んで言葉など発することなく、物憂げにいつまでも手すりにもたれて倚りかかっておこしをまつ。

あのお方は輦車で今どこかにはるかなところに行かれてしまった、別れは悲しみであったが、思い出も、思いでの物、様々なものが恨みにかわってしまう。

心は揺れ動き、思いは募るばかりで、堪えることが出来ない。鏡の箱を開けることもなく長く覆いをかけたままにしている。他のことへの意欲などないし、番で初めて鳳凰なのに独りで居る鸞はいったいなにを思えばよいのだろうか。

長安城図 作図00
 

(訳注)

臨江仙二首其一

(選抜されて後宮に入り、選抜されて妃賓に、そして鳳凰のようにむつまじく過ごしたが、寵愛は長くは続かない、何時しか少し年を重ねると見捨てられてしまう妃嬪を詠う。)

1 【臨江仙解説】遠く旅に出て帰らぬ男を思う女の情を詠う。前段は、斎条とした秋の寒さの到来と、美しさの変わらぬ女性の姿、そして、思いに沈むさまを述べる。後段、「離愁別恨千般なり」や「心緒の正に多端」の語は、「男の身に何かあったのではないか」「旅先で新しい女ができたのではないか」「もしこのままあの人が帰らなかったならば私はどうなるのか」と、あれこれ悪い事を想像せずにはいられぬ女心を綴ったものである。一夫多妻制のこの時代、通い婚が基本であり、女のもとに男が通うということぢ、天子から下々まで、女に大小の差こそあっても一つの部屋、閨、家があり気が向けば立ち寄る。女は他に行かせないように頑張る。その一生懸命さを表現する、鏡、霜、井、梧、葉墮、翠、幃、雕檻、初寒、薄鈆、殘黛、花冠,含情、無語,延佇、倚欄干、何處去,離、愁、別、恨、千般、不堪、心緒、正多端,鏡奩、長掩,對孤鸞、と。初めは仲睦まじくしている時の小道具は一転して一人さびしい小道具となるのである。孫光憲の詩はそうした年増女の辛さを表現する語句のみで構成されているのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調五十八字、前後段同形、各五句二十九字三平韻二仄韻で、❼⑥⑦❹⑤/❼⑥⑦❹⑤の詞形をとる。張泌、毛文錫、牛希濟、和凝、顧敻、孫光憲、鹿虔扆、閻選、毛熙震、李珣の臨江仙の解説参照。

臨江仙二首其一

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。

薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。

不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

○●●○●●△  ●○○●○○

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△○○●△○○ ●○△●  ○●●○○

 

霜拍井梧幹葉墮,翠幃雕檻初寒。

醴泉である井戸、鳳凰は梧桐にだけとまる愛の巣であったものを、秋が来て霜に打たれて葉が枯れ落ち幹だけになっている、それと同じように、閨には翡翠の帳や彫りの手すりにもこの秋、初めて寒さを感じさせるものである。

2 梧幹葉 梧桐は仲睦まじく暮らしていたことの象徴。鳳凰は、霊泉(醴泉〈れいせん〉、甘い泉の水だけを飲み、60-120年に一度だけ実を結ぶという竹の実のみを食物とし、梧桐の木にしか止まらないという。『詩経』に「鳳凰鳴けり、彼の高き岡に。梧桐生ず、彼の朝陽に」『詩経』大雅巻阿とあり、「鳳凰は梧桐にあらざれば栖まず、竹実にあらざれば食わず」という。『詩経』『春秋左氏伝』『論語』などでは「聖天子の出現を待ってこの世に現れる」といわれる瑞獣(瑞鳥)のひとつとされる。『礼記』では麒麟・霊亀・応竜とともに「四霊」と総称されている。

 

薄鈆殘黛稱花冠,含情無語,延佇倚欄干。

少し年を重ねたとはいえ、薄化粧や眉は花の冠によく似あってとても美しい。誰も来ない閨では思いを内に含んで言葉など発することなく、物憂げにいつまでも手すりにもたれて倚りかかっておこしをまつ。

3 薄鈆殘黛稱花冠 薄れた白粉や眉は花の冠によく似あう。化粧はくずれてしまっているが、女の美しさは少しも変わっていないことを言う。・薄鈆:薄れた白粉。・残黛:色越せた眉。・称:ぴったりとよく似あう。

4 延佇 いつまでも手すりにもたれて倚りかかっていること。

 

杳杳征輪何處去,離愁別恨千般。

あのお方は輦車で今どこかにはるかなところに行かれてしまった、別れは悲しみであったが、思い出も、思いでの物、様々なものが恨みにかわってしまう。

5 杳杳 ほのかなさま。くらいさま。また,はるかなさま。空間または時間においてとても遠い、遠いこと。

6 離愁 別れの悲しみ。

7 千般 種々。さまざま。いろいろ。

 

不堪心緒正多端,鏡奩長掩,無意對孤鸞。

心は揺れ動き、思いは募るばかりで、堪えることが出来ない。鏡の箱を開けることもなく長く覆いをかけたままにしている。他のことへの意欲などないし、番で初めて鳳凰なのに独りで居る鸞はいったいなにを思えばよいのだろうか。

8 心緒 思いのはし。心の動き。

9 多端 1 複雑で多方面にわたっていること。また、そのさま。「多岐―」2 事件や仕事が多くて忙しいこと。また、そのさま。多忙。多事。

10 鏡奩 鏡を収めておく箱。

11 孤鸞 自分の姿しか映っていない鏡。鸞は鸞鏡。鏡のこと。○鏡中鸞 金属製の鏡の背面に彫られた鸞の模様が「双鳳文鏡」であり、離ればなれのつがいの鸞がお互いを求め合う姿を彫刻しているものが多い。「鸞鏡」は、愛し合う(時にはなれねばならない)男女の思いを映し出す鏡をしめす。鸞は理想郷に棲む想像上の鳥。羽の色は赤色に五色を交え声は五音に合うという。白楽天「太行路」に鏡中鸞を引き合いにし男女について詠っている。無題 (含情春晼晩) 李商隠 16 では李商隠が旅先の南京周辺の家妓であろう女性の部屋にひそかに入り交わったということを詠っている。

孫光憲『浣溪沙九首其四』

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

溫庭筠『菩薩蠻 六』

寶函钿雀金鸂鵣,沈香閣上吳山碧。

楊柳又如絲,驛橋春雨時。

畫樓音信斷,芳草江南岸。

鸞鏡與花枝,此情誰得知。

寶函【ほうかん】鈿雀【てんじゃく】金の鸂鵣【けいちょく】,沈香【ちんこう】の閣上 吳山の碧【みどり】。

楊柳 又 絲の如し,驛橋 春雨【はるさめ】の時なり。

畫樓から音信 斷つ,芳草 江南の岸のあり。

鸞鏡と花枝とあり,此の情は誰か知るを得る。

あの人をまちわびている女妓が、目をさまし、うつくしい匣枕、鈿雀のかんざしと、金のおしどりにかざられたかんざしがそばにおちている。起き出すのも物憂い女妓は、朝のお化粧をして沈香のただよう樓閣のうえにのぼって、呉山のみどりの彼方をながめやる。
健康と無事を祈って折った青柳は又芽をふいて、糸のようにほそい枝を風になびかせている。驛亭にしっとりと春雨がふって、あの日ここであの人と別れを告げた。あれからどれほど月日がたったのか。
美しい高楼あの人を待ち侘びているけれど音信はとぎれたままなのだ。かんばしい春の草が江南の岸にはまたさきだした。
このさびしいこころは、鸞鳥を背に彫んだ鏡と花が咲き誇る枝だけがいつもみている。この心情はだれが察っしてくれるのだろうか。

『菩薩蠻 六』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-6-6 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1640

・寶函鈿雀金鸂鵣 宝函はうつくしい匣の意であるが、枕函(まくら)とか、化粧箱をさす。鈿雀は花鈿(かんざし)雀釵のたぐいであろう。金鸂鵣、これも金のおしどりのかんざしである。枕のほとりに叙のおちているけしき。夫が居たら考えられない景色というところであろう。の注参照。ここではさらに鏡に映る己の孤独な影を重ねる。

12孫光憲《巻八14生查子三首其三》『花間集』366全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7102

孫光憲 『生查子三首』其三

金井墮高梧,玉殿籠斜月。永巷寂無人,斂態愁堪絕。

玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。翠輦不歸來,幽恨將誰說。

(高貴な人の愛妾、第二夫人であっても、歳を重ねると誰も寄り付かず、閨はまるで牢獄のようであり、この悔しさをだれに言うこともできないと詠う。)

飾りのある井戸に西日が当たり金色に輝いている、井戸の近くの高い梧桐の枝が井戸に蔽いかぶさって落ちてくる。しばらくするとその向こうの煌びやかな高殿に、上り始めた朧月がかかっている。

その宮女の部屋には訪れる人もなくまるで漢の戚夫人の「永巷歌」を思わせる寂寞が漂う。しばらくの間、顔を崩してしわを寄せているがこんな愁いに満ちた生活に堪えることが出来ないのだろう。

飾られた香炉には香を焚くこともなく冷たいままで、少し焚いてもすぐ燃え尽きてしまう、こんなことを繰り返していたり、あの方への思いを新たにしたり、またあきらめたりしている。

翡翠で飾られた御車はここに帰って来ることはもうない、一人さびしく恨む気持ちは誰に訴えたらよいのだろう。

12孫光憲《巻八14生查子三首其三》『花間集』366全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7102

 

 

 

 
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  ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている  
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孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている。

 

孫光憲  花間集 六十一首

花間集 巻第七 (十三首)

花間集 巻第八 (四十八首)

 

花間集 教坊曲『生查子』七首

張泌

巻四44生查子相見稀,喜見相見,相見還相遠。檀畫荔枝紅,金蔓蜻蜓軟。魚鴈疎,芳信斷,花落庭陰晚。可憐玉肌膚,消瘦成慵懶。

牛希濟

巻五44生查子春山煙欲收,天澹稀星小。殘月臉邊明,別淚臨清曉。語已多,情未了,迴首猶重道:記得綠羅裙,處處憐芳草。。

孫光憲

巻八12生查子三首其一寂寞掩朱門,正是天將暮。暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。待得沒人時,隈倚論私語。

孫光憲

巻八13生查子三首其二暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。芳草惹煙青,落絮隨風白。誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

孫光憲

巻八14生查子三首其三金井墮高梧,玉殿籠斜月。永巷寂無人,斂態愁堪絕。玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。翠輦不歸來,幽恨將誰說。

魏承班

巻九10生查子二首 其一》  煙雨晚晴天,零落花無語。難話此時心,梁鷰雙來去。琴韻對薰風,有恨和情撫。腸斷斷絃頻,淚滴黃金縷。

魏承班

巻九11生查子二首 其二》  寂寞畫堂空,深夜垂羅幕。燈暗錦屏欹,月冷珠簾薄。愁恨夢應成,何處貪歡樂。看看又春來,還是長蕭索。

 

 

孫光憲 『生查子三首』其一

(身分の高い顕官の妻に不幸があって邸宅に通夜葬儀に参列した時の様子を詠う。)

寂寞掩朱門,正是天將暮。

こんなにもひっそりとして寂しい雰囲気が正門を蔽っている。それはまさに、ここに、天はその人生の暮れ掛かるのを示されている。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

部屋には見事な刺繍の上かけがかけられ、鳳凰の馭者が死者の心を牽いて天にゆく、見ればここにはすべての物に鴛鴦の刺繍、鴛鴦の絲が配されている。

待得沒人時,隈倚論私語。

人というものはどんな高貴な人であっても「死ぬ時がくる」というのを待つだけなのである。もっともそんな不遜なジャレゴトは隅っこでいう独り言である。

 

寂寞 朱門を掩い,正に是れ 天將て暮れる。

暗澹として 小庭の中,滴滴として 梧桐の雨。

繡 夫を工みし,心緒を牽き,盡く鴛鴦の縷を配す。

人を沒する時を得んことを待ち,隈倚して私語を論ずる。

 

『生查子三首』其二

(春ののどかな日に、貴公子が砂塵をあげて行楽に向かう。家柄よろしく馬も車も乗っている人もきれいな姿であるけれど、やっていることとは隔たりが逢ういけ好かないやつらだと詠う)

暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。

春の日が温かく包む行楽日和に、大宛国の名馬がオモガイに飾りの房を揺らして都大通りをすすめば、柳が垂れて揺れるのと馬の飾りの房が調子を合わせて揺れる。

芳草惹煙青,落絮隨風白。

郊外のかんばしい若草に何処からかお香を焚いていて青い煙が漂い、その香に惹かれて進む。そこに柳絮の白い綿が飛んで、辺りは雪のように真っ白に風に舞う。

誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。

何処の高貴な家柄の人であろうか、銀鞍の馬に立派な車にのって行楽に向かうとその後にお香の香りと車が起す砂塵が舞う。まるで絵に描かれた仙人が車に乗って雲の上に昇り消えていくかのようである。

狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

その車には狂おしいほど細くていい男が鞭を振って行ってしまったが、奇麗な形で音を立てて去って行くのは一緒だが姿かたちと雷のような騒音とは恐ろしくかけ離れている。

 

(『生查子三首』其の二)

暖かな日 花驄を策し,鞚を嚲れ 陌に楊を垂れ。

芳草 煙青に惹れ,絮を落つ 風白に隨う。

誰が家 繡轂 香塵を動かし,隱映す 神仙の客を。

狂殺す 玉鞭の郎,咫尺 音容を隔つなり。

『生查子三首』其三

(高貴な人の愛妾、第二夫人であっても、歳を重ねると誰も寄り付かず、閨はまるで牢獄のようであり、この悔しさをだれに言うこともできないと詠う。)

金井墮高梧,玉殿籠斜月。

飾りのある井戸に西日が当たり金色に輝いている、井戸の近くの高い梧桐の枝が井戸に蔽いかぶさって落ちてくる。しばらくするとその向こうの煌びやかな高殿に、上り始めた朧月がかかっている。

永巷寂無人,斂態愁堪絕。

その宮女の部屋には訪れる人もなくまるで漢の戚夫人の「永巷歌」を思わせる寂寞が漂う。しばらくの間、顔を崩してしわを寄せているがこんな愁いに満ちた生活に堪えることが出来ないのだろう。

玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。

飾られた香炉には香を焚くこともなく冷たいままで、少し焚いてもすぐ燃え尽きてしまう、こんなことを繰り返していたり、あの方への思いを新たにしたり、またあきらめたりしている。

翠輦不歸來,幽恨將誰說。

翡翠で飾られた御車はここに帰って来ることはもうない、一人さびしく恨む気持ちは誰に訴えたらよいのだろう。

(『生查子三首』其の三)

金井 高梧を墮つ,玉殿 籠にす月を斜にす。

永巷 寂して人無く,斂態 愁いて堪絕す。

玉爐 寒く,香 燼滅し,還た君の恩歇に似る。

翠輦 歸り來らず,幽恨 將に 誰か說う。

 

紅梅002
 

『生查子三首』其三 現代語訳と訳註

(本文)

孫光憲 『生查子三首』其三

金井墮高梧,玉殿籠斜月。

永巷寂無人,斂態愁堪絕。

玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。

翠輦不歸來,幽恨將誰說。

 

(下し文)『生查子三首』其三

金井 高梧を墮つ,玉殿 籠にす月を斜にす。

永巷 寂して人無く,斂態 愁いて堪絕す。

玉爐 寒く,香 燼滅し,還た君の恩歇に似る。

翠輦 歸り來らず,幽恨 將に 誰か說う。

 

(現代語訳)

(高貴な人の愛妾、第二夫人であっても、歳を重ねると誰も寄り付かず、閨はまるで牢獄のようであり、この悔しさをだれに言うこともできないと詠う。)

飾りのある井戸に西日が当たり金色に輝いている、井戸の近くの高い梧桐の枝が井戸に蔽いかぶさって落ちてくる。しばらくするとその向こうの煌びやかな高殿に、上り始めた朧月がかかっている。

その宮女の部屋には訪れる人もなくまるで漢の戚夫人の「永巷歌」を思わせる寂寞が漂う。しばらくの間、顔を崩してしわを寄せているがこんな愁いに満ちた生活に堪えることが出来ないのだろう。

飾られた香炉には香を焚くこともなく冷たいままで、少し焚いてもすぐ燃え尽きてしまう、こんなことを繰り返していたり、あの方への思いを新たにしたり、またあきらめたりしている。

翡翠で飾られた御車はここに帰って来ることはもうない、一人さびしく恨む気持ちは誰に訴えたらよいのだろう。

 

(訳注) 

生查子三首其三

(高貴な人の愛妾、第二夫人であっても、歳を重ねると誰も寄り付かず、閨はまるで牢獄のようであり、この悔しさをだれに言うこともできないと詠う。)

 

花間集には孫光憲の『生查子三首』ある。双調四十一字、前段二十字、四句二仄韻で、後段二十一字、五句二平韻二仄韻5❺5❺/③3❺⑤❺の詞形をとる。

寂寞掩朱門,正是天將暮。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

待得沒人時,隈倚論私語。

●●●○○  △●○△●

●△●○△  ●●○○●

●○○  △○● ●●○○●

●●●○○ △△△○●

其二双調四十二字、前段二十字、四句二仄韻で、前段二十二字、四句二仄韻で、5❺5❺/7❺5❺の詞形をとる。

生查子三首 其二

暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。

芳草惹煙青,落絮隨風白。

誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。

狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

●●●○○  ●●○○●

○●●○○  ●●○△●

○○●●●○○  ●●○○●

△●●○○  ●●○○●

花間集には孫光憲の『生查子三首』ある。双調四十一字、前段二十字、四句二仄韻で、後段二十一字、五句二仄韻5❺5❺/33❺5❺の詞形をとる。

孫光憲 『生查子三首』其三

金井墮高梧,玉殿籠斜月。

永巷寂無人,斂態愁堪絕。

玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。

翠輦不歸來,幽恨將誰說。

○●△○○  ●●△○●

●●●○○  ●●○○●

●○○  ○●● ○●○○●

●●△○△ ○●△○●

宮島(10)
 

金井墮高梧,玉殿籠斜月。

飾りのある井戸に西日が当たり金色に輝いている、井戸の近くの高い梧桐の枝が井戸に蔽いかぶさって落ちてくる。しばらくするとその向こうの煌びやかな高殿に、上り始めた朧月がかかっている。

9 金井 飾りのある井戸に西日が当たり金色に輝いているという意味。西日は黄昏、人生の絶頂期を過ぎた寂寞感を演出する。

10 籠斜月 籠はおぼろ月夜で日が沈んで昇り始めたことをいう。

 

永巷寂無人,斂態愁堪絕。

その宮女の部屋には訪れる人もなくまるで漢の戚夫人の「永巷歌」を思わせる寂寞が漂う。しばらくの間、顔を崩してしわを寄せているがこんな愁いに満ちた生活に堪えることが出来ないのだろう。

11 永巷 永巷(罪を犯した女官を入れる牢獄)に幽閉されること。ここは、宮女が一室を与えられ、そこで寂しく一生を終えるのでこの表現を用いた。紀元前195年に劉邦が死去して盈(恵帝)が即位すると、皇太后となった呂雉による前帝戚夫人母子への報復が始まる。まず、戚夫人を捕らえて永巷(えいこう:罪を犯した女官を入れる牢獄)に監禁し、一日中豆を搗かせる刑罰を与えた。戚夫人が自らの境遇を嘆き悲しみ、詠んだ歌が「永巷歌」として『漢書』に収められている。そして呂太后は、長安に入朝した如意を毒殺した。その前後、戚夫人も殺害された。

12 斂態 ほんの少しの間・しばらくの間、顔を崩してしわを寄せること。斂:1 引きしめ集める。取り入れる。「苛斂(かれん)・聚斂(しゅうれん)」2 引きしまる。「収斂」3 死体を棺に収める。「斂葬」

 

玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。

飾られた香炉には香を焚くこともなく冷たいままで、少し焚いてもすぐ燃え尽きてしまう、こんなことを繰り返していたり、あの方への思いを新たにしたり、またあきらめたりしている。

13 恩歇 寵愛に対する報恩をやめる。

 

翠輦不歸來,幽恨將誰說。

翡翠で飾られた御車はここに帰って来ることはもうない、一人さびしく恨む気持ちは誰に訴えたらよいのだろう。

 

 

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孫光憲  『生查子三首』其二

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  2015年12月20日 の紀頌之5つのBlog  
  ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場  
  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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韓愈119-#4《 巻九16喜雪獻裴尚書》 #4 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1622> Ⅱ#4 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7094  
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孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている。

 

孫光憲  花間集 六十一首

花間集 巻第七 (十三首)

花間集 巻第八 (四十八首)

 

花間集 教坊曲『生查子』七首

張泌

巻四44生查子相見稀,喜見相見,相見還相遠。檀畫荔枝紅,金蔓蜻蜓軟。魚鴈疎,芳信斷,花落庭陰晚。可憐玉肌膚,消瘦成慵懶。

牛希濟

巻五44生查子春山煙欲收,天澹稀星小。殘月臉邊明,別淚臨清曉。語已多,情未了,迴首猶重道:記得綠羅裙,處處憐芳草。。

孫光憲

巻八12生查子三首其一寂寞掩朱門,正是天將暮。暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。待得沒人時,隈倚論私語。

孫光憲

巻八13生查子三首其二暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。芳草惹煙青,落絮隨風白。誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

孫光憲

巻八14生查子三首其三金井墮高梧,玉殿籠斜月。永巷寂無人,斂態愁堪絕。玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。翠輦不歸來,幽恨將誰說。

魏承班

巻九10生查子二首 其一》  煙雨晚晴天,零落花無語。難話此時心,梁鷰雙來去。琴韻對薰風,有恨和情撫。腸斷斷絃頻,淚滴黃金縷。

魏承班

巻九11生查子二首 其二》  寂寞畫堂空,深夜垂羅幕。燈暗錦屏欹,月冷珠簾薄。愁恨夢應成,何處貪歡樂。看看又春來,還是長蕭索。

 隋堤002

 

孫光憲 『生查子三首』其一

(身分の高い顕官の妻に不幸があって邸宅に通夜葬儀に参列した時の様子を詠う。)

寂寞掩朱門,正是天將暮。

こんなにもひっそりとして寂しい雰囲気が正門を蔽っている。それはまさに、ここに、天はその人生の暮れ掛かるのを示されている。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

部屋には見事な刺繍の上かけがかけられ、鳳凰の馭者が死者の心を牽いて天にゆく、見ればここにはすべての物に鴛鴦の刺繍、鴛鴦の絲が配されている。

待得沒人時,隈倚論私語。

人というものはどんな高貴な人であっても「死ぬ時がくる」というのを待つだけなのである。もっともそんな不遜なジャレゴトは隅っこでいう独り言である。

 

寂寞 朱門を掩い,正に是れ 天將て暮れる。

暗澹として 小庭の中,滴滴として 梧桐の雨。

繡 夫を工みし,心緒を牽き,盡く鴛鴦の縷を配す。

人を沒する時を得んことを待ち,隈倚して私語を論ずる。

 

『生查子三首』其二

(春ののどかな日に、貴公子が砂塵をあげて行楽に向かう。家柄よろしく馬も車も乗っている人もきれいな姿であるけれど、やっていることとは隔たりが逢ういけ好かないやつらだと詠う)

暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。

春の日が温かく包む行楽日和に、大宛国の名馬がオモガイに飾りの房を揺らして都大通りをすすめば、柳が垂れて揺れるのと馬の飾りの房が調子を合わせて揺れる。

芳草惹煙青,落絮隨風白。

郊外のかんばしい若草に何処からかお香を焚いていて青い煙が漂い、その香に惹かれて進む。そこに柳絮の白い綿が飛んで、辺りは雪のように真っ白に風に舞う。

誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。

何処の高貴な家柄の人であろうか、銀鞍の馬に立派な車にのって行楽に向かうとその後にお香の香りと車が起す砂塵が舞う。まるで絵に描かれた仙人が車に乗って雲の上に昇り消えていくかのようである。

狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

その車には狂おしいほど細くていい男が鞭を振って行ってしまったが、奇麗な形で音を立てて去って行くのは一緒だが姿かたちと雷のような騒音とは恐ろしくかけ離れている。

 

(『生查子三首』其の二)

暖かな日 花驄を策し,鞚を嚲れ 陌に楊を垂れ。

芳草 煙青に惹れ,絮を落つ 風白に隨う。

誰が家 繡轂 香塵を動かし,隱映す 神仙の客を。

狂殺す 玉鞭の郎,咫尺 音容を隔つなり。

 

興慶宮002
 

『生查子三首』其二 現代語訳と訳註

(本文)

孫光憲 『生查子三首』其二

暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。

芳草惹煙青,落絮隨風白。

誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。

狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

 

(下し文)

(『生查子三首』其の二)

暖かな日 花驄を策し,鞚を嚲れ 陌に楊を垂れ。

芳草 煙青に惹れ,絮を落つ 風白に隨う。

誰が家 繡轂 香塵を動かし,隱映す 神仙の客を。

狂殺す 玉鞭の郎,咫尺 音容を隔つなり。

 

(現代語訳)

(春ののどかな日に、貴公子が砂塵をあげて行楽に向かう。家柄よろしく馬も車も乗っている人もきれいな姿であるけれど、やっていることとは隔たりが逢ういけ好かないやつらだと詠う)

春の日が温かく包む行楽日和に、大宛国の名馬がオモガイに飾りの房を揺らして都大通りをすすめば、柳が垂れて揺れるのと馬の飾りの房が調子を合わせて揺れる。

郊外のかんばしい若草に何処からかお香を焚いていて青い煙が漂い、その香に惹かれて進む。そこに柳絮の白い綿が飛んで、辺りは雪のように真っ白に風に舞う。

何処の高貴な家柄の人であろうか、銀鞍の馬に立派な車にのって行楽に向かうとその後にお香の香りと車が起す砂塵が舞う。まるで絵に描かれた仙人が車に乗って雲の上に昇り消えていくかのようである。

その車には狂おしいほど細くていい男が鞭を振って行ってしまったが、奇麗な形で音を立てて去って行くのは一緒だが姿かたちと雷のような騒音とは恐ろしくかけ離れている。

 

(訳注)

生查子三首其二

(春ののどかな日に、貴公子が砂塵をあげて行楽に向かう。家柄よろしく馬も車も乗っている人もきれいな姿であるけれど、やっていることとは隔たりが逢ういけ好かないやつらだと詠う)

 

花間集には孫光憲の『生查子三首』ある。双調四十一字、前段二十字、四句二仄韻で、後段二十一字、五句二平韻二仄韻5❺5❺/③3❺⑤❺の詞形をとる。

寂寞掩朱門,正是天將暮。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

待得沒人時,隈倚論私語。

●●●○○  △●○△●

●△●○△  ●●○○●

●○○  △○● ●●○○●

●●●○○ △△△○●

其二双調四十二字、前段二十字、四句二仄韻で、前段二十二字、四句二仄韻で、5❺5❺/7❺5❺の詞形をとる。

生查子三首 其二

暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。

芳草惹煙青,落絮隨風白。

誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。

狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

●●●○○  ●●○○●

○●●○○  ●●○△●

○○●●●○○  ●●○○●

△●●○○  ●●○○●

 

 

暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。

春の日が温かく包む行楽日和に、大宛国の名馬がオモガイに飾りの房を揺らして都大通りをすすめば、柳が垂れて揺れるのと馬の飾りの房が調子を合わせて揺れる。

4 花驄 大宛の種である花紋様ある驄馬

5 嚲鞚 嚲:垂れている飾りがゆれて叩く。鞚:おもがい1 轡(くつわ)の部分の名。手綱(たづな)の両端を結びつける轡の引き手。みずき。2 手綱の両端。

 

芳草惹煙青,落絮隨風白。

郊外のかんばしい若草に何処からかお香を焚いていて青い煙が漂い、その香に惹かれて進む。そこに柳絮の白い綿が飛んで、辺りは雪のように真っ白に風に舞う。

 

誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。

何処の高貴な家柄の人であろうか、銀鞍の馬に立派な車にのって行楽に向かうとその後にお香の香りと車が起す砂塵が舞う。まるで絵に描かれた仙人が車に乗って雲の上に昇り消えていくかのようである。

6 繡轂 裝飾華美的車輛。貴人たちが銀鞍の馬や立派な車にのって来て

 

狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

その車には狂おしいほど細くていい男が鞭を振って行ってしまったが、奇麗な形で音を立てて去って行くのは一緒だが姿かたちと雷のような騒音とは恐ろしくかけ離れている。

7 狂殺 狂おしく細い。一目で好きになってしまう。

8 玉鞭郎 飾りが施された鞭を持った貴公子の男。

 

 

孫光憲 『生查子三首』【字解】

 

 

1 寂寞 1 ひっそりとして寂しいさま。じゃくまく。2 心が満たされずにもの寂しいさま。じゃくまく。

2 朱門 身分の高い顕官の邸。① 朱塗りの門。 ②《門を朱塗りにしたところから》富貴の人の家。家屋は南を正門とし、高貴の人はその邸の門を朱色に塗った。郭璞の「遊仙詩」に、「朱門何ぞ栄とするに足らん」 の句がある。

薛濤『燕離巢』「出入朱門未忍拋,主人常愛語交交。銜泥穢污珊瑚枕,不得梁間更壘巢。」(燕、巣を離る)朱門に出入して 未だ拋【なげう】つに忍びず、主人 常に愛す 語 交交なるを。泥を銜んで 珊瑚の枕を 穢汚す、梁間 更に巣を壘するを 得ず。

十離詩十首 燕離巢 薛濤 唐五代詞・宋詩 薛濤-184-56-#44  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2467

 

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。

3 梧桐 梧桐の葉に棲む鳳凰のつがい。鳳凰は梧桐の木に棲むとされる。『詩経』大雅・巻阿に「鳳凰鳴けり、彼の高岡に。梧桐生ぜり、彼の朝陽に」。その鄭玄の箋に「鳳凰の性は、梧桐に非ざれは棲まず。竹の実に非ざれは食わず」。

・梧桐:こどう 立秋の日に初めて葉を落とす。大きな葉を一閒一枚落としてゆく青桐は凋落を象徴するもの。特に井戸の辺の梧桐は砧聲と共に秋の詩には欠かせない。李煜「采桑子其二」李煜「烏夜啼」温庭筠「更漏子」李白「贈舎人弟台卿江南之」李賀「十二月楽詞」などおおくある。玄宗と楊貴妃を喩える場合もある。

顧夐『虞美人六首』其四「碧梧桐映紗䆫晚,花謝鶯聲懶。小屏屈曲掩青山,翠幃香粉玉爐寒,兩蛾攢。顛狂少年輕離別,辜負春時節。畫羅紅袂有啼痕,魂消無語倚閨門,欲黃昬。」(其の四)碧の梧桐 紗䆫の晚を映し,花 鶯聲の懶を謝す。小屏 屈曲 青山を掩い,翠幃 香粉 玉爐の寒,兩つながらの蛾を攢める。狂を顛じて少年 離別を輕くし,辜 春の時節に負【そむ】く。羅に畫く紅の袂 啼痕有り,魂消 語無く閨門に倚り,黃昬ならんと欲す。

11顧夐 (改)《巻六37虞美人六首其四》『花間集』288全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6712

4 花驄 大宛の種である花紋様ある驄馬

5 嚲鞚 嚲:垂れている飾りがゆれて叩く。鞚:おもがい1 轡(くつわ)の部分の名。手綱(たづな)の両端を結びつける轡の引き手。みずき。2 手綱の両端。

6 繡轂 裝飾華美的車輛。貴人たちが銀鞍の馬や立派な車にのって来て

7 狂殺 狂おしく細い。一目で好きになってしまう。

8 玉鞭郎 飾りが施された鞭を持った貴公子の男。

12孫光憲《巻八12生查子三首其一》『花間集』364全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7092

孫光憲 『生查子三首』其一

寂寞掩朱門,正是天將暮。暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。待得沒人時,隈倚論私語。

(身分の高い顕官の妻に不幸があって邸宅に通夜葬儀に参列した時の様子を詠う。)

こんなにもひっそりとして寂しい雰囲気が正門を蔽っている。それはまさに、ここに、天はその人生の暮れ掛かるのを示されている。中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。部屋には見事な刺繍の上かけがかけられ、鳳凰の馭者が死者の心を牽いて天にゆく、見ればここにはすべての物に鴛鴦の刺繍、鴛鴦の絲が配されている。人というものはどんな高貴な人であっても「死ぬ時がくる」というのを待つだけなのである。もっともそんな不遜なジャレゴトは隅っこでいう独り言である。

12孫光憲《巻八12生查子三首其一》『花間集』364全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7092

 

 

 
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  Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoorBlog 12孫光憲《巻八12生查子三首其一》『花間集』364全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7092  
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孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている。

 

孫光憲  花間集 六十一首

花間集 巻第七 (十三首)

花間集 巻第八 (四十八首)

 

花間集 教坊曲『生查子』七首

張泌

巻四44生查子相見稀,喜見相見,相見還相遠。檀畫荔枝紅,金蔓蜻蜓軟。魚鴈疎,芳信斷,花落庭陰晚。可憐玉肌膚,消瘦成慵懶。

牛希濟

巻五44生查子春山煙欲收,天澹稀星小。殘月臉邊明,別淚臨清曉。語已多,情未了,迴首猶重道:記得綠羅裙,處處憐芳草。。

孫光憲

巻八12生查子三首其一寂寞掩朱門,正是天將暮。暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。待得沒人時,隈倚論私語。

孫光憲

巻八13生查子三首其二暖日策花驄,嚲鞚垂楊陌。芳草惹煙青,落絮隨風白。誰家繡轂動香塵,隱映神仙客。狂殺玉鞭郎,咫尺音容隔。

孫光憲

巻八14生查子三首其三金井墮高梧,玉殿籠斜月。永巷寂無人,斂態愁堪絕。玉爐寒,香燼滅,還似君恩歇。翠輦不歸來,幽恨將誰說。

魏承班

巻九10生查子二首 其一》  煙雨晚晴天,零落花無語。難話此時心,梁鷰雙來去。琴韻對薰風,有恨和情撫。腸斷斷絃頻,淚滴黃金縷。

魏承班

巻九11生查子二首 其二》  寂寞畫堂空,深夜垂羅幕。燈暗錦屏欹,月冷珠簾薄。愁恨夢應成,何處貪歡樂。看看又春來,還是長蕭索。

 

 

孫光憲 『生查子三首』其一

(身分の高い顕官の妻に不幸があって邸宅に通夜葬儀に参列した時の様子を詠う。)

寂寞掩朱門,正是天將暮。

こんなにもひっそりとして寂しい雰囲気が正門を蔽っている。それはまさに、ここに、天はその人生の暮れ掛かるのを示されている。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

部屋には見事な刺繍の上かけがかけられ、鳳凰の馭者が死者の心を牽いて天にゆく、見ればここにはすべての物に鴛鴦の刺繍、鴛鴦の絲が配されている。

待得沒人時,隈倚論私語。

人というものはどんな高貴な人であっても「死ぬ時がくる」というのを待つだけなのである。もっともそんな不遜なジャレゴトは隅っこでいう独り言である。

 

寂寞 朱門を掩い,正に是れ 天將て暮れる。

暗澹として 小庭の中,滴滴として 梧桐の雨。

繡 夫を工みし,心緒を牽き,盡く鴛鴦の縷を配す。

人を沒する時を得んことを待ち,隈倚して私語を論ずる。

DCF00112
 

 

『生查子三首』其一 現代語訳と訳註

(本文)

生查子三首其一

寂寞掩朱門,正是天將暮。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

待得沒人時,隈倚論私語。

 

(下し文)

寂寞 朱門を掩い,正に是れ 天將て暮れる。

暗澹として 小庭の中,滴滴として 梧桐の雨。

繡 夫を工みし,心緒を牽き,盡く鴛鴦の縷を配す。

人を沒する時を得んことを待ち,隈倚して私語を論ずる。

 

(現代語訳)

生查子三首其一(身分の高い顕官の妻に不幸があって邸宅に通夜葬儀に参列した時の様子を詠う。)

こんなにもひっそりとして寂しい雰囲気が正門を蔽っている。それはまさに、ここに、天はその人生の暮れ掛かるのを示されている。

中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。

部屋には見事な刺繍の上かけがかけられ、鳳凰の馭者が死者の心を牽いて天にゆく、見ればここにはすべての物に鴛鴦の刺繍、鴛鴦の絲が配されている。

人というものはどんな高貴な人であっても「死ぬ時がくる」というのを待つだけなのである。もっともそんな不遜なジャレゴトは隅っこでいう独り言である。

瓊花02
 

(訳注)

生查子三首其一

(身分の高い顕官の妻に不幸があって邸宅に通夜葬儀に参列した時の様子を詠う。)その一

前段はその邸宅の正門のひっそり感を、中庭に入ると梧桐の葉に雨が落ちる音で悲しさを表現している。一夫多妻制の時代であるが、この詩の雰囲気では正妻の死ではなく、愛妾の死であろう。後段は死んだ愛妾の使用したものには鳳凰の刺繍や鴛鴦の絵の紐がかけられていて天に持っていけるようにしてある。でも、誰もが何時かは死ぬものだから、ということで終るが、その裏には、夫が何時になっても帰らず、

其一

花間集には孫光憲の『生查子三首』ある。双調四十一字、前段二十字、四句二仄韻で、後段二十一字、五句二平韻二仄韻5❺5❺/③3❺⑤❺の詞形をとる。

寂寞掩朱門,正是天將暮。

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

待得沒人時,隈倚論私語。

●●●○○  △●○△●

●△●○△  ●●○○●

●○○  △○● ●●○○●

●●●○○ △△△○●

 

寂寞掩朱門,正是天將暮。

こんなにもひっそりとして寂しい雰囲気が正門を蔽っている。それはまさに、ここに、天はその人生の暮れ掛かるのを示されている。

1 寂寞 1 ひっそりとして寂しいさま。じゃくまく。2 心が満たされずにもの寂しいさま。じゃくまく。

2 朱門 身分の高い顕官の邸。① 朱塗りの門。 ②《門を朱塗りにしたところから》富貴の人の家。家屋は南を正門とし、高貴の人はその邸の門を朱色に塗った。郭璞の「遊仙詩」に、「朱門何ぞ栄とするに足らん」 の句がある。

薛濤『燕離巢』「出入朱門未忍拋,主人常愛語交交。銜泥穢污珊瑚枕,不得梁間更壘巢。」(燕、巣を離る)朱門に出入して 未だ拋【なげう】つに忍びず、主人 常に愛す 語 交交なるを。泥を銜んで 珊瑚の枕を 穢汚す、梁間 更に巣を壘するを 得ず。

十離詩十首 燕離巢 薛濤 唐五代詞・宋詩 薛濤-184-56-#44  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2467

 

暗澹小庭中,滴滴梧桐雨。

中に入ってゆくと黄昏から薄暗闇になってゆく中庭を通ってゆくと、おりしもひたひたと雨が落ち、鳳凰鳥が仲睦まじく棲んだ梧桐の葉っぱに落ちる音が悲しい。

3 梧桐 梧桐の葉に棲む鳳凰のつがい。鳳凰は梧桐の木に棲むとされる。『詩経』大雅・巻阿に「鳳凰鳴けり、彼の高岡に。梧桐生ぜり、彼の朝陽に」。その鄭玄の箋に「鳳凰の性は、梧桐に非ざれは棲まず。竹の実に非ざれは食わず」。

・梧桐:こどう 立秋の日に初めて葉を落とす。大きな葉を一閒一枚落としてゆく青桐は凋落を象徴するもの。特に井戸の辺の梧桐は砧聲と共に秋の詩には欠かせない。李煜「采桑子其二」李煜「烏夜啼」温庭筠「更漏子」李白「贈舎人弟台卿江南之」李賀「十二月楽詞」などおおくある。玄宗と楊貴妃を喩える場合もある。

顧夐『虞美人六首』其四「碧梧桐映紗䆫晚,花謝鶯聲懶。小屏屈曲掩青山,翠幃香粉玉爐寒,兩蛾攢。顛狂少年輕離別,辜負春時節。畫羅紅袂有啼痕,魂消無語倚閨門,欲黃昬。」(其の四)碧の梧桐 紗䆫の晚を映し,花 鶯聲の懶を謝す。小屏 屈曲 青山を掩い,翠幃 香粉 玉爐の寒,兩つながらの蛾を攢める。狂を顛じて少年 離別を輕くし,辜 春の時節に負【そむ】く。羅に畫く紅の袂 啼痕有り,魂消 語無く閨門に倚り,黃昬ならんと欲す。

11顧夐 (改)《巻六37虞美人六首其四》『花間集』288全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6712

 

繡工夫,牽心緒,配盡鴛鴦縷。

部屋には見事な刺繍の上かけがかけられ、鳳凰の馭者が死者の心を牽いて天にゆく、見ればここにはすべての物に鴛鴦の刺繍、鴛鴦の絲が配されている。

 

待得沒人時,隈倚論私語。

人というものはどんな高貴な人であっても「死ぬ時がくる」というのを待つだけなのである。もっともそんな不遜なジャレゴトは隅っこでいう独り言である。

12孫光憲《巻八11後庭花二首其二》『花間集』363全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7087

孫光憲  後庭花二首其二

石城依舊空江國,故宮春色。七尺青絲芳草綠,絕世難得。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。只是教人添怨憶,悵望無極。

(歓楽街の若い美人たちも、宮女たちも絶世の美女、陳の張貴妃もやがては散り去って、誰も覚えていない。悲しい女の定めを詠う。)

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

12孫光憲《巻八11後庭花二首其二》『花間集』363全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7087

 

 
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孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている。

 

花間集 教坊曲『後庭花』五首

孫光憲

巻八10後庭花二首其一景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

孫光憲

巻八11後庭花二首其二石城依舊空江國,故宮春色。七尺青絲芳草綠,絕世難得。玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。只是教人添怨憶,悵望無極。

毛熙震

《巻十06後庭花三首其一》  鶯啼鷰語芳菲節,瑞庭花發。昔時懽宴歌聲揭,管絃清越。自從陵谷追遊歇,畫梁塵黦。傷心一片如珪月,閑鏁宮闕。

毛熙震

《巻十07後庭花三首其二》  輕盈舞妓含芳豔,競粧新臉。步搖珠翠脩蛾斂,膩鬟雲染。歌聲慢發開檀點,繡衫斜掩。時將纖手勻紅臉,笑拈金靨。

毛熙震

《巻十08後庭花三首其三》  越羅小袖新香蒨,薄籠金釧。倚欄無語搖輕扇,半遮勻面。春殘日暖鶯嬌懶,滿庭花片。爭不教人長相見,畫堂深院。

 

 

後庭花二首其一

(後宮には、妃嬪がたくさんいて、その妃嬪1人に宮女100人付く、丁度それは瓊花をいう。天子は今宵もまた新しい宴会をもよおす。)

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

陳の景陽宮殿には後主が妃嬪とかくれて捕縛された井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴り、鶯がなきはじめても、酒宴をやめることなく、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶やすことがない。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

後宮の庭で、風が吹き上げ軽く頬を撫でてゆく、小さな錠の瓊花の香りが漂う、それは、香り良い葉を鋏みできった時のように香りである。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

夕刻になれば、高楼の上に昇り、玉の簾を巻き上げて、見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさんしきつめるかのようで、香りもとどく。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

妃嬪たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれる。

(後庭花二首其の一)

景陽 鐘動す 宮の鶯囀,露 涼す 金殿。

輕飇 吹起 瓊花の綻,玉葉は翦の如し。

晚 來し 高閣に上れば,珠簾 卷き,見墜すば 香千片。

蛾を脩め 臉を慢して 雕輦に陪し,後庭 新らたに宴す。

 

 

後庭花二首其二

(歓楽街の若い美人たちも、宮女たちも絶世の美女、陳の張貴妃もやがては散り去って、誰も覚えていない。悲しい女の定めを詠う。)

石城依舊空江國,故宮春色。

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。

七尺青絲芳草綠,絕世難得。

それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。

只是教人添怨憶,悵望無極。

こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

石城 舊に依りて  空しき江國, 故宮は  春色。

七尺の靑絲  芳草 碧なり, 絶世  得難し。

玉英 凋【しぼ】み落ちて 盡き, 更に 何人か 識らん。

 野棠 織るが如く, 只だ是れ 人をして 怨憶を 添へ敎【し】む, 悵望 極り無し。

 

木蘭03
 

『後庭花二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

後庭花二首其二

石城依舊空江國,故宮春色。

七尺青絲芳草綠,絕世難得。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

只是教人添怨憶,悵望無極。

 

(下し文)

石城 舊に依りて  空しき江國, 故宮は  春色。

七尺の靑絲  芳草 碧なり, 絶世  得難し。

玉英 凋【しぼ】み落ちて 盡き, 更に 何人か 識らん。

 野棠 織るが如く, 只だ是れ 人をして 怨憶を 添へ敎【し】む, 悵望 極り無し。

 

(現代語訳)

後庭花二首其二(歓楽街の若い美人たちも、宮女たちも絶世の美女、陳の張貴妃もやがては散り去って、誰も覚えていない。悲しい女の定めを詠う。)

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。

それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。

美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。

こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

海棠花1050
 

(訳注)

後庭花二首其二

(歓楽街の若い美人たちも、宮女たちも絶世の美女、陳の張貴妃もやがては散り去って、誰も覚えていない。悲しい女の定めを詠う。)

『後庭花』とあるのは、後宮の庭に咲く花、杜甫は「先帝の侍女八千人」、白居易は「後宮の佳麗三千人」といっている。この時代は女性が人とされていないので、男も士族以上で人数として把握された。宮女は礼をもって迎い入れられたもの、貴族、富貴の者など家柄を重んじて選抜されたもの、一部の物を除いて、献上されたもの、罪人の家【藉跋・藉没】の女性、宮廷の官奴婢にされたものをいうのである。「後宮」は政治を営む場とは異なる、天子の私的生活の場。陳の後主(陳叔宝)が歓楽に溺れて国を亡ぼしたことに基づいてこの詩を読む。

 

花間集に教坊曲『後庭花』は五首収められているが、孫光憲は二首である。双調四十六字、前段二十二字、三仄韻、後段二十五字、四仄韻で、❼❹7❹/5❸❺❼❹の詞形をとる。孫光憲と毛熙震とで独自の詞形を作ったもの。

後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

●○○●○○●  ●△○●

△?△●○○●  ●●△●

●△○●●  ○○△ ●●○○●

○△●△○○● ●○○●

後庭花二首其二 双調四十六字、前段二十二字、三仄韻、後段二十五字、四仄韻で、❼❹7❹/5❸❺❼❹の詞形をとる。

石城依舊空江國,故宮春色。

七尺青絲芳草綠,絕世難得。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

只是教人添怨憶,悵望無極。

●○△●△○●  ●○○●

●●○○○●●  ●△△●

●○○●●  △△○● ●○△●

△●△○○△● ●△○●

 

石城依舊空江國, 故宮春色。

金陵の石頭城は六朝の王朝は滅んだものの、むなしく城郭だけは残っている長江下流域、江南の要衝の都市である。ここに立てば、昔の宮殿はすっかり春の景色である。

12. 石城:石頭城。越は楚に滅ぼされ,この付近も楚の領域に入ったが,楚の威王のとき,この地に王気がみられるとして,これを鎮めるために金を埋め,今の清涼山付近に城を築いたことから,金陵と称したといわれる。これは秦淮河が長江に流入する地点をみおろす要害の地で,のちに孫権が石頭城を築く。 秦は金陵邑を秣陵県(ばつりようけん)とし,漢代に入ると周辺には丹陽,江乗,胡孰(こじゆく)などの諸県が設けられ丹陽郡に属した。石頭城は、秦淮河の畔にある古都の城郭。唐以前に六代の王朝が置かれた。古来、多くの詩人が石頭城を詠う。

劉禹錫『石頭城』「山圍故國週遭在,潮打空城寂寞回。淮水東邊舊時月,夜深還過女牆來。」、

韋莊『金陵圖』「江雨霏霏江草齊,六朝如夢鳥空啼。無情最是臺城柳,依舊烟籠十里堤。」、

欧陽炯『江城子』「晩日金陵岸草平,落霞明,水無情。六代繁華,暗逐逝波聲,空有姑蘇臺上月,如西子鏡,照江城。」、11 -16 江城子一首 歐陽舍人炯十七首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-426-11-#16  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3677

13 依舊 昔通りである。昔のままである。 

14 空江國 六朝の江南の古城は残っているが、王朝は皆滅亡し、城郭だけが変わらずに残っていることを「空」と表した。

15 故宮 昔の宮殿。 

16 春色 春の景色。

 

七尺靑絲芳草碧, 絶世難得。

それは、二メートルもある長く青い絹糸は陳の張貴妃の黒髪のようであり、香りのよい春の草は、萌黄色にそまる。歓楽街に美女たちはいるけれど、張貴妃という絶世の傾国美女は得難いものだ。

17 七尺靑絲 南朝・陳の張貴妃の黒髪のような美しくて長い柳の枝。・七尺:唐の大尺で、1尺は約29.4センチメートル、小尺は約24.6センチメートル。七尺では大尺で:約2.05メートル、小尺で:約1.72メートル。 

18 芳草 香りのよい春の草。 

19 碧 緑色をしている。綠とするのもある。

20 絶世 世に並ぶものがなく、すぐれていること。ここでは、前の「石城依舊」から、絶世の傾国、美女を指す、張貴妃のこと。 

21 難得 得難い。

 

玉英凋落盡, 更何人識。

美しい花びら、若い盛りの美人というものはやがて散り、尽き果ててしまうものである。その上更に、散ってしまったものを誰が覚えていようか。

22 玉英 ここは、美しい花びら、南京の歓楽街の美人を示している。 

23 凋落 しぼみ落ちること。 

24 盡 つきる。

25 更 その上。さらに。 

26 識 おぼえている。しる。ここは、前者の義。

 

野棠如織, 只是敎人添怨憶, 悵望無極。

こりんごの花と葉、それに実というものはしげれば織物のように美しいものである。ただ、人にとっては「陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた」とかなしい思いを思い出させるものである。美人たちみんな、盛りを過ぎれば悲しく、うらめしいことが果てしがないのである。

27 野棠 棠梨。こりんご。やまなし。ここではその花も指す。 

28 如織 野棠の花と葉の色の釣り合いが恰も織物の如くに美しいことをいう。

29 只是 ただこれ。(美しい野棠の花も)ただ人に(かなしい思いを思い出させる)だけだ。 

30 敎人 人をして…せしむ。人に…させる。人に(かなしい思いを思い出)させる。敎:使役の(助)動詞で、古語では、平声。 

31 添 そえる。一層(かなしい思いをするだけだ)。 

32 怨憶 うらめしい思い出。陳後主陳叔寶と張貴妃の故事等、六朝の哀史を指す。

33 悵望 うらめしげに見遣る。 

34 無極 極まり無い。果てしない。

 

凌波曲舞002
 

  

 

 

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12孫光憲《巻八10後庭花二首其一》『花間集』362全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7082

改訂版 孫光憲  後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

(後宮には、妃嬪がたくさんいて、その妃嬪1人に宮女100人付く、丁度それは瓊花をいう。天子は今宵もまた新しい宴会をもよおす。)

陳の景陽宮殿には後主が妃嬪とかくれて捕縛された井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴り、鶯がなきはじめても、酒宴をやめることなく、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶やすことがない。

後宮の庭で、風が吹き上げ軽く頬を撫でてゆく、小さな錠の瓊花の香りが漂う、それは、香り良い葉を鋏みできった時のように香りである。

夕刻になれば、高楼の上に昇り、玉の簾を巻き上げて、見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさんしきつめるかのようで、香りもとどく。

妃嬪たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれる。

12孫光憲《巻八10後庭花二首其一》『花間集』362全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7082

 

 

 
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孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている。

 

花間集 教坊曲『後庭花』五首

孫光憲

巻八10後庭花二首其一景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

孫光憲

巻八11後庭花二首其二石城依舊空江國,故宮春色。七尺青絲芳草綠,絕世難得。玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。只是教人添怨憶,悵望無極。

毛熙震

《巻十06後庭花三首其一》  鶯啼鷰語芳菲節,瑞庭花發。昔時懽宴歌聲揭,管絃清越。自從陵谷追遊歇,畫梁塵黦。傷心一片如珪月,閑鏁宮闕。

毛熙震

《巻十07後庭花三首其二》  輕盈舞妓含芳豔,競粧新臉。步搖珠翠脩蛾斂,膩鬟雲染。歌聲慢發開檀點,繡衫斜掩。時將纖手勻紅臉,笑拈金靨。

毛熙震

《巻十08後庭花三首其三》  越羅小袖新香蒨,薄籠金釧。倚欄無語搖輕扇,半遮勻面。春殘日暖鶯嬌懶,滿庭花片。爭不教人長相見,畫堂深院。

 

 

後庭花二首其一

(後宮には、妃嬪がたくさんいて、その妃嬪1人に宮女100人付く、丁度それは瓊花をいう。天子は今宵もまた新しい宴会をもよおす。)

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

陳の景陽宮殿には後主が妃嬪とかくれて捕縛された井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴り、鶯がなきはじめても、酒宴をやめることなく、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶やすことがない。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

後宮の庭で、風が吹き上げ軽く頬を撫でてゆく、小さな錠の瓊花の香りが漂う、それは、香り良い葉を鋏みできった時のように香りである。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

夕刻になれば、高楼の上に昇り、玉の簾を巻き上げて、見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさんしきつめるかのようで、香りもとどく。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

妃嬪たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれる。

(後庭花二首其の一)

景陽 鐘動す 宮の鶯囀,露 涼す 金殿。

輕飇 吹起 瓊花の綻,玉葉は翦の如し。

晚 來し 高閣に上れば,珠簾 卷き,見墜すば 香千片。

蛾を脩め 臉を慢して 雕輦に陪し,後庭 新らたに宴す。

 

後庭花二首其二

石城依舊空江國,故宮春色。

七尺青絲芳草綠,絕世難得。

玉英凋落盡,更何人識,野棠如織。

只是教人添怨憶,悵望無極。

 

白芷00
 

『後庭花二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

 

(下し文)

(後庭花二首其の一)

景陽 鐘動す 宮の鶯囀,露 涼す 金殿。

輕飇 吹起 瓊花の綻,玉葉は翦の如し。

晚 來し 高閣に上れば,珠簾 卷き,見墜すば 香千片。

蛾を脩め 臉を慢して 雕輦に陪し,後庭 新らたに宴す。

 

(現代語訳)

(後宮には、妃嬪がたくさんいて、その妃嬪1人に宮女100人付く、丁度それは瓊花をいう。天子は今宵もまた新しい宴会をもよおす。)

陳の景陽宮殿には後主が妃嬪とかくれて捕縛された井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴り、鶯がなきはじめても、酒宴をやめることなく、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶やすことがない。

後宮の庭で、風が吹き上げ軽く頬を撫でてゆく、小さな錠の瓊花の香りが漂う、それは、香り良い葉を鋏みできった時のように香りである。

夕刻になれば、高楼の上に昇り、玉の簾を巻き上げて、見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさんしきつめるかのようで、香りもとどく。

妃嬪たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれる。

 

(訳注)

後庭花二首其一

(後宮には、妃嬪がたくさんいて、その妃嬪1人に宮女100人付く、丁度それは瓊花をいう。天子は今宵もまた新しい宴会をもよおす。)

1.  『後庭花』とあるのは、後宮の庭に咲く花、杜甫は「先帝の侍女八千人」、白居易は「後宮の佳麗三千人」といっている。この時代は女性が人とされていないので、男も士族以上で人数として把握された。宮女は礼をもって迎い入れられたもの、貴族、富貴の者など家柄を重んじて選抜されたもの、一部の物を除いて、献上されたもの、罪人の家【藉跋・藉没】の女性、宮廷の官奴婢にされたものをいうのである。「後宮」は政治を営む場とは異なる、天子の私的生活の場。陳の後主(陳叔宝)が歓楽に溺れて国を亡ぼしたことに基づいてこの詩を読む。

1-2   妃嬪たちは皇帝の妻妾であり、錦衣を着て山海の珍味を食し、ひとたび呼ばわれば百人の下婦が答える、最も高貴にして最も権勢の高い人々であった。しかし、その運命は逆にまた最も不安定であり、いつでも天国から地獄に堕ち、甚だしい場合には「女禍」の罪名を負わされ犠牲の羊にされた。國は滅ぼされると、「籍没」といって家族(母、娘、妻、妾、子孫を含む)と奴稗は、みな後宮に入れて官奴婦にすることになっていた。つまり「技芸に巧みな者は後宮に入れる」(『唐六典』巻六、刑部都官)と定めていた。そして、無能な者は司農寺(銭穀のことを司る官庁)等の官庁に配属して官奴稗とし、後宮に入れられた者の一部分は官女とした。将軍の妻、娘、碑妾等は、みな夫や父、あるいは主人が諌殺され、後宮の婦にされた。

1-3 後宮と貞壮観 また、上流階級の男女が春に遊ぶさまを詠んだものである。彼女たちは公然とあるいは単独で男たちと知り合い交際し、甚だしくは同席して談笑したり、一緒に酒を飲んだり、あるいは手紙のやりとりや詩詞の贈答をしたりして、貞節を疑われることも意に介さなかった。六朝文化、唐、宋、を過ぎるあたりまで、比較的自由な恋愛感情であった。

 

花間集に教坊曲『後庭花』は五首収められているが、孫光憲は二首である。双調四十六字、前段二十二字、三仄韻、後段二十五字、四仄韻で、❼❹7❹/5❸❺❼❹の詞形をとる。孫光憲と毛熙震とで独自の詞形を作ったもの。

後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

●○○●○○●  ●△○●

△?△●○○●  ●●△●

●△○●●  ○○△ ●●○○●

○△●△○○● ●○○●

1-4 陳の後主《玉樹後庭花》であるが、詞というより字数を合わせて美辞麗句を並べた楽府ではあるが、後世、後宮の頽廃、悪政治、を題材にした詩題の下になったもの。

麗宇芳林對高閣、新粧豔質本傾城。

映戸凝嬌乍不進、出帷含態笑相迎。

妖姬臉似花含露、玉樹流光照後庭。

麗宇 芳林 高閣に対し、新粧 艶質 本より傾城。

戸に映るも嬌を凝らし 乍(たちま)ち進まず、帷を出でて態を含み 笑いて相い迎う。

妖姫 臉は花の露を含むに似たり、玉樹 光を流して後庭を照らす。

壮麗な宮殿、香しい林は高殿と向かい合っており、化粧を終えたばかりの艶やかさはまことに絶色の美女である。

絹張りの戸に映った影でしなをつくってみて、つと立ち止まり、それから帷をでて媚びを含んで笑いながら出迎える。

妖艶な妃嬪女たちの顔は花が露を含んでいるのにも似て、月の光は美しい木立を通して裏庭を照らしている。

1-5特に楽府を多く作り、その内容は艶麗で技巧的な詩風を特徴とする「宮体詩」が大多数を占める。後主の代表作であり、壮麗な後宮と宮女のあでやかな美しさを詠じた「玉樹後庭花」は、後世において亡国の詩とされ、六朝文学批判の槍玉に挙げられるほか、南朝滅亡を主題とする詩にしばしば詠われている。

陳後宮 李商隠:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 53

 

 

景陽鐘動宮鶯囀,露涼金殿。

陳の景陽宮殿には後主が妃嬪とかくれて捕縛された井戸のある庭があり、夜明けを告げる鐘が鳴り、鶯がなきはじめても、酒宴をやめることなく、夏が過ぎ秋が過ぎても金で飾った宮殿には華燭の宴が絶やすことがない。

2.  景陽 江蘇省江寧県の北、陳の宮殿の名。その宮殿、陳の後主が皇后と妃嬪と一緒にかくれた井戸の名。隋の軍隊が国都建虚(南京)に侵入した夜もなお訪宴に耽っていた陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた。

景陽井 李商隠 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 48

3.  鐘動・鶯囀 「猿鳴鐘動不知曙」(猿鳴き 鐘動いて 曙を知らず)

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4. 金殿  金で飾った宮殿。また、非常に美しい御殿。

 

輕飇吹起瓊花綻,玉葉如翦。

後宮の庭で、風が吹き上げ軽く頬を撫でてゆく、小さな錠の瓊花の香りが漂う、それは、香り良い葉を鋏みできった時のように香りである。

5. 輕飇 軽く頬を撫でてゆく風。飇:つむじかぜ。涼飇】. 涼しい風。

6. 瓊花 江蘇省、揚州市が原産で、隋から唐の時代、「玉蘂」とも呼ばれ、その芳香のある黄白色の花が愛でられた。ただ不稔であったために、「聚八仙」という台木に接ぎ木して増やしていたが、元軍の進入とともに絶え、その後は残った台木の「聚八仙」が「瓊花」と呼ばれるようになったという。晩春に白色の両性花とまわりに8個の真っ白な装飾花を咲かせる。

7. 翦 =剪。切りそろえる。断ち切る。

 

晚來高閣上,珠簾卷,見墜香千片。

夕刻になれば、高楼の上に昇り、玉の簾を巻き上げて、見下ろせば先ほど庭先で見た瓊花の花びらがたくさんしきつめるかのようで、香りもとどく。

8. 見墜香千片 庭に妃嬪の周りにおつきの宮女が侍るので見下ろせは瓊花のように見える。

 

脩蛾慢臉陪雕輦,後庭新宴。

妃嬪たちは化粧をきれいにし、ゆったりと落ち着いた顔つきで、天子の彫刻の輦に付き従っている、亦今夜もここの後宮の庭では新しい宴がひらかれる。

9. 脩蛾 化粧をきちんと施すこと。蛾は眉をかくこと。

10 慢臉 ゆったりと落ち着いた顔つき。

11. 新宴 後宮では春先に、宮女の面談選定が行われる。そして選ばれた宮女からさらに妃嬪候補者が選定され、酒宴の補助のような形で花を添える形になる。天子に見初められる前に、宦官、上級宮女に妃嬪たちの選別を通過する必要がある。

 菜の花001

 

孫光憲 後庭花二首 【字解】

 

1.-1『後庭花』とあるのは、後宮の庭に咲く花、杜甫は「先帝の侍女八千人」、白居易は「後宮の佳麗三千人」といっている。この時代は女性が人とされていないので、男も士族以上で人数として把握された。宮女は礼をもって迎い入れられたもの、貴族、富貴の者など家柄を重んじて選抜されたもの、一部の物を除いて、献上されたもの、罪人の家【藉跋・藉没】の女性、宮廷の官奴婢にされたものをいうのである。「後宮」は政治を営む場とは異なる、天子の私的生活の場。陳の後主(陳叔宝)が歓楽に溺れて国を亡ぼしたことに基づいてこの詩を読む。

1-2 妃嬪たちは皇帝の妻妾であり、錦衣を着て山海の珍味を食し、ひとたび呼ばわれば百人の下婦が答える、最も高貴にして最も権勢の高い人々であった。しかし、その運命は逆にまた最も不安定であり、いつでも天国から地獄に堕ち、甚だしい場合には「女禍」の罪名を負わされ犠牲の羊にされた。國は滅ぼされると、「籍没」といって家族(母、娘、妻、妾、子孫を含む)と奴稗は、みな後宮に入れて官奴婦にすることになっていた。つまり「技芸に巧みな者は後宮に入れる」(『唐六典』巻六、刑部都官)と定めていた。そして、無能な者は司農寺(銭穀のことを司る官庁)等の官庁に配属して官奴稗とし、後宮に入れられた者の一部分は官女とした。将軍の妻、娘、碑妾等は、みな夫や父、あるいは主人が諌殺され、後宮の婦にされた。

1-3 後宮と貞壮観 また、上流階級の男女が春に遊ぶさまを詠んだものである。彼女たちは公然とあるいは単独で男たちと知り合い交際し、甚だしくは同席して談笑したり、一緒に酒を飲んだり、あるいは手紙のやりとりや詩詞の贈答をしたりして、貞節を疑われることも意に介さなかった。六朝文化、唐、宋、を過ぎるあたりまで、比較的自由な恋愛感情であった。

1-4 陳の後主《玉樹後庭花》であるが、詞というより字数を合わせて美辞麗句を並べた楽府ではあるが、後世、後宮の頽廃、悪政治、を題材にした詩題の下になったもの。

麗宇芳林對高閣、新粧豔質本傾城。

映戸凝嬌乍不進、出帷含態笑相迎。

妖姬臉似花含露、玉樹流光照後庭。

麗宇 芳林 高閣に対し、新粧 艶質 本より傾城。

戸に映るも嬌を凝らし 乍(たちま)ち進まず、帷を出でて態を含み 笑いて相い迎う。

妖姫 臉は花の露を含むに似たり、玉樹 光を流して後庭を照らす。

壮麗な宮殿、香しい林は高殿と向かい合っており、化粧を終えたばかりの艶やかさはまことに絶色の美女である。

絹張りの戸に映った影でしなをつくってみて、つと立ち止まり、それから帷をでて媚びを含んで笑いながら出迎える。

妖艶な妃嬪女たちの顔は花が露を含んでいるのにも似て、月の光は美しい木立を通して裏庭を照らしている。

1-5特に楽府を多く作り、その内容は艶麗で技巧的な詩風を特徴とする「宮体詩」が大多数を占める。後主の代表作であり、壮麗な後宮と宮女のあでやかな美しさを詠じた「玉樹後庭花」は、後世において亡国の詩とされ、六朝文学批判の槍玉に挙げられるほか、南朝滅亡を主題とする詩にしばしば詠われている。

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2. 景陽 江蘇省江寧県の北、陳の宮殿の名。その宮殿、陳の後主が皇后と妃嬪と一緒にかくれた井戸の名。隋の軍隊が国都建虚(南京)に侵入した夜もなお訪宴に耽っていた陳の後主は、逃げおくれて愛妃張麗華・孔貴人とともにこの井戸に隠れた。

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3. 鐘動・鶯囀 「猿鳴鐘動不知曙」(猿鳴き 鐘動いて 曙を知らず)

謁衡獄廟遂宿獄寺題門樓 韓退之(韓愈)詩<51-#4>Ⅱ中唐詩347 紀頌之の漢詩ブログ1120

4. 金殿  金で飾った宮殿。また、非常に美しい御殿。

5. 輕飇 軽く頬を撫でてゆく風。飇:つむじかぜ。涼飇】. 涼しい風。

6. 瓊花 江蘇省、揚州市が原産で、隋から唐の時代、「玉蘂」とも呼ばれ、その芳香のある黄白色の花が愛でられた。ただ不稔であったために、「聚八仙」という台木に接ぎ木して増やしていたが、元軍の進入とともに絶え、その後は残った台木の「聚八仙」が「瓊花」と呼ばれるようになったという。晩春に白色の両性花とまわりに8個の真っ白な装飾花を咲かせる。

7. 翦 =剪。切りそろえる。断ち切る。

8. 見墜香千片 庭に妃嬪の周りにおつきの宮女が侍るので見下ろせは瓊花のように見える。

9. 脩蛾 化粧をきちんと施すこと。蛾は眉をかくこと。

10 慢臉 ゆったりと落ち着いた顔つき。

11. 新宴 後宮では春先に、宮女の面談選定が行われる。そして選ばれた宮女からさらに妃嬪候補者が選定され、酒宴の補助のような形で花を添える形になる。天子に見初められる前に、宦官、上級宮女に妃嬪たちの選別を通過する必要がある。

 

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12孫光憲《巻八09虞美人二首其二》『花間集』361全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7077

孫光憲  虞美人二首    其二

好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

(約束の春の日はすぎて、何時しか夏になるが寵愛を受けることはないそれでも、空しさと寂しさに囲まれるが、寵愛を受ける準備だけは、毎日欠かさずしている)心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、春景色に囲まれているのに、春心が報われなくて暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。彩が鮮やかな御殿の横を流れる小川の流れ、春というのに空虚な雰囲気はたがいに覆われる、香炉に一筋の煙がゆれて、そしてほそながく漂ってのこっている。慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持、こころをどこにおいていいのか、と、かわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら、それでもやはり思い続けてゆくと決め、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、以前の約束日はとっくに過ぎてしまったけれど、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

12孫光憲《巻八09虞美人二首其二》『花間集』361全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7077

 

 
  2015年12月16日 の紀頌之5つのBlog  
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  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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虞美人二首 其一

(虞美人のように孤立化してしまった妃賓について、訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす)

      紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。

      紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春の花がいっぱいというのに長雨は梨の花を濡らして、薄暗くひっそりとしている。(花も天も私を見棄てるのか)

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

今日は、刺繍入りのシーツを取り換え、お化粧し、何度もし直し、新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回している。待ちつかれてうとうとし、もう、あのおかたを迎えようとするはりつめた気持ちも消えてきた。

      天涯一去無消息,終日長相憶。

心は、どこか遠くの果てに一度行ってしまったのだろうか、音沙汰は全くない。日がな一日、それも毎日、ずーっとあのお方のことを思い続けていくだけ。

      交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うけど、そんな気持ちをいつまで続けていくのか、もうおわりにしたい。おいつめられて、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにはもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

             

虞美人二首 其二

(約束の春の日はすぎて、何時しか夏になるが寵愛を受けることはないそれでも、空しさと寂しさに囲まれるが、寵愛を受ける準備だけは、毎日欠かさずしている)

      好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。

      翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、春景色に囲まれているのに、春心が報われなくて暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。

      畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

彩が鮮やかな御殿の横を流れる小川の流れ、春というのに空虚な雰囲気はたがいに覆われる、香炉に一筋の煙がゆれて、そしてほそながく漂ってのこっている。

      交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持、こころをどこにおいていいのか、と、かわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら、それでもやはり思い続けてゆくと決め、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、以前の約束日はとっくに過ぎてしまったけれど、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

(虞美人二首其の二)

好風 微かに掲げ 簾旌を起こし、金巽 鸞 相い倚る。

翠簷 愁い聴く 乳禽の声、此の時 春態 暗に情に関わり、独り平らかなり難し。

画堂 流水 空しく相いに翳【おお】い、一穂 香 搖曳す。

交【こ】の人 相思を寄する処無く、落花 芳草 前期を過ぎて、人の知ること没し。

 

 

『虞美人二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

虞美人二首           其二

好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

 

 

(下し文)

(虞美人二首其の二)

好風 微かに掲げ 簾旌を起こし、金巽 鸞 相い倚る。

翠簷 愁い聴く 乳禽の声、此の時 春態 暗に情に関わり、独り平らかなり難し。

画堂 流水 空しく相いに翳【おお】い、一穂 香 搖曳す。

交【こ】の人 相思を寄する処無く、落花 芳草 前期を過ぎて、人の知ること没し。

 

(現代語訳)

(約束の春の日はすぎて、何時しか夏になるが寵愛を受けることはないそれでも、空しさと寂しさに囲まれるが、寵愛を受ける準備だけは、毎日欠かさずしている)

心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。

翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、春景色に囲まれているのに、春心が報われなくて暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。

彩が鮮やかな御殿の横を流れる小川の流れ、春というのに空虚な雰囲気はたがいに覆われる、香炉に一筋の煙がゆれて、そしてほそながく漂ってのこっている。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持、こころをどこにおいていいのか、と、かわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら、それでもやはり思い続けてゆくと決め、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、以前の約束日はとっくに過ぎてしまったけれど、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

 

(訳注)

虞美人二首其二

(約束の春の日はすぎて、何時しか夏になるが寵愛を受けることはないそれでも、空しさと寂しさに囲まれるが、寵愛を受ける準備だけは、毎日欠かさずしている)

【解説】 寵愛を失った妃賓、登場の「虞美人」は、春というもの、四面幔幕で覆われ行楽を楽しむはずであったもの。それが、四面楚歌ならぬ四面静寂であるということなのだ。魅力がなくなったと自ら思うことはない、結果として、寵愛を失ったのである。春は万物が成長するとき、また、“春情を抑えることが出来ない”というのを前提にしないとここに登場する「虞美人」の辛さがわからない。

1 虞美人 項羽の愛姫で虞姫ともいう。5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか・安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。虞美人草の名は,彼女の鮮血が化して草花になったという伝から来ている。

秦末 虞美人『虞美人歌』

漢兵已略地,四方楚歌聲。

大王意氣盡,賤妾何聊生。

(虞美人の歌)

漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。

大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

虞美人歌  秦末・虞美 詩<118>古代 女性詩 555 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1482

項羽が、垓下で敗れたときに慷慨悲歌したときの詩

項羽『垓下歌』

力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。

騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!

であるが、それに対して虞美人が歌い舞った。

項羽と劉邦は戦いと和睦を繰り返しながら、垓下で雌雄を決する一戦を迎える。この時、項羽の少数の軍勢を大軍で取り囲んだ劉邦は、味方の兵士たちに項羽の祖国楚の歌を歌わせる。この歌を聞いた項羽は味方の兵が寝返ったのだと誤解して絶望する。その絶望の中で歌ったとされるのが、「垓下歌」である。

2. 美人 古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618-626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。

      

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調五十八字、前後段五句二十九字二仄韻三平韻で、❼❺⑦⑦③/❼❺⑦⑦③の詞形をとる。

虞美人二首           其一

紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

天涯一去無消息,終日長相憶。

交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

○?●●○○●  ●△○○●

●○○●●○○  ●○○●△○○ ●○○

○○●●○○● ○●△△●

○○△●△○△ △○●●●△○ ●○○

虞美人二首           其二

好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

●△○●○○●  ○●○△△ 

●○○△●○○  ●○○●●○○ ●△○

●○○●△△△ ●●○○●

○○○●●△△ ●○○●△○○  ●○○

 

好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

心地よいそよ風がそっと簾を巻き上げ、吹き流しのように揺れる。金糸の刺繍の番の鸞は互いに寄り添う。

12. 簾旌 簾が幔幕や吹き流しのように持ち上げられる様子であることをいう。旌は吹き流しの様な旗。

13. 金翼鸞 簾に金糸で刺繍された鸞。

 

翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

翠の軒端の燕の巢に愁わし鳴く雛鳥の声がきこえてくる、こんな時、春景色に囲まれているのに、春心が報われなくて暗い気持ちになってしまう、女一人、平穏な気持ちでいることは難しい。

14. 翠篇 翠色の庇。

15. 春態 春の姿、様態。

 

畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

彩が鮮やかな御殿の横を流れる小川の流れ、春というのに空虚な雰囲気はたがいに覆われる、香炉に一筋の煙がゆれて、そしてほそながく漂ってのこっている。

16.  流水 御殿の欲を流れる運河、池とつながっていて、その子、人の動きが全く感じられない。流れ去る時を暗示している。

17. 翳 掩う。

 

交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持、こころをどこにおいていいのか、と、かわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら、それでもやはり思い続けてゆくと決め、春の花は散り、若草はおい茂る時節になってしまっても、以前の約束日はとっくに過ぎてしまったけれど、この辛い気持ちはだれにもわからないのだ。 

18. 交人無処寄相思 慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持、こころをどこにおいていいのか、と、かわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら、それでもやはり思い続けてゆく。交はこもごも、ともに、かわるがわる。

19. 前期 以前に交わした逢瀬の約束の期日。

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孫光憲  虞美人二首  【字解】

 

1 虞美人 項羽の愛姫で虞姫ともいう。5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか・安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。虞美人草の名は,彼女の鮮血が化して草花になったという伝から来ている。

秦末 虞美人『虞美人歌』

漢兵已略地,四方楚歌聲。

大王意氣盡,賤妾何聊生。

(虞美人の歌)

漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。

大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

虞美人歌  秦末・虞美 詩<118>古代 女性詩 555 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1482

項羽が、垓下で敗れたときに慷慨悲歌したときの詩

項羽『垓下歌』

力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。

騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!

であるが、それに対して虞美人が歌い舞った。

項羽と劉邦は戦いと和睦を繰り返しながら、垓下で雌雄を決する一戦を迎える。この時、項羽の少数の軍勢を大軍で取り囲んだ劉邦は、味方の兵士たちに項羽の祖国楚の歌を歌わせる。この歌を聞いた項羽は味方の兵が寝返ったのだと誤解して絶望する。その絶望の中で歌ったとされるのが、「垓下歌」である。

2. 美人 古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618-626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。

3 紅䆫寂寂無人語 紅い燈火が影をおとす窓のある妃嬪の閨には誰もよらず語ることはない。

4 暗澹 どんよりとした雲行きの中で降り出した雨で、白い梨の花は咲いているが薄暗くはえることはないようすをいう。この二句は、春景色、いっぱいに咲く花は妃嬪の見方と思っていたのに、空は暗く雨を落とし、妃嬪美人の思いを裏切るという。

5. 繡羅紋地 閨の刺しゅう入りのシーツを取り換える。

6. 粉新描 お化粧をし直し新しく眉を書きなおした。

7 博山香炷 香炉の一種で,豆(とう)形の火皿に先端のとがった山形の蓋をもつ。承盤をともなうものも多く,これは海中に浮かぶ神山(蓬莱山)にたとえたとみられ,神仙道との関係がうかがわれる。戦国末期にあらわれ,漢代に盛行し,青銅製品には金象嵌をほどこした華麗なものがある。江南では東晋,南朝代に青磁製のものがみられる。南北朝代には仏教徒も用い,仏像の台座正面や供養者の持物にあらわされた。隋・唐代には山形の蓋が蓮華をかたどった緑釉陶もつくられた。いずれにしても、高価なもので、それ相応の人物からの贈り物と考えられる。

8. 旋抽條 一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回すること。

9. 相憶 相思ということはお互いに思うというのではなく相手を思う、一方的に思うということ。

10. 交人相憶 慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら。交はこもごも、ともに、かわるがわる。

11. 悵觸 惆悵に接触ということで、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいとうれうことにもうたえられない。

12. 簾旌 簾が幔幕や吹き流しのように持ち上げられる様子であることをいう。旌は吹き流しの様な旗。

13. 金翼鸞 簾に金糸で刺繍された鸞。

14. 翠篇 翠色の庇。

15. 春態 春の姿、様態。

16.  流水 御殿の欲を流れる運河、池とつながっていて、その子、人の動きが全く感じられない。流れ去る時を暗示している。

17. 翳 掩う。

18. 交人無処寄相思 慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持、こころをどこにおいていいのか、と、かわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら、それでもやはり思い続けてゆく。交はこもごも、ともに、かわるがわる。

19. 前期 以前に交わした逢瀬の約束の期日。
花鈿02
 

改訂版12孫光憲《巻八08虞美人二首其一》『花間集』360全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7072

孫光憲  虞美人二首       其一

紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

天涯一去無消息,終日長相憶。交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

(虞美人のように孤立化してしまった妃賓について、訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす)

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春の花がいっぱいというのに長雨は梨の花を濡らして、薄暗くひっそりとしている。(花も天も私を見棄てるのか)

今日は、刺繍入りのシーツを取り換え、お化粧し、何度もし直し、新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回している。待ちつかれてうとうとし、もう、あのおかたを迎えようとするはりつめた気持ちも消えてきた。

心は、どこか遠くの果てに一度行ってしまったのだろうか、音沙汰は全くない。日がな一日、それも毎日、ずーっとあのお方のことを思い続けていくだけ。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うけど、そんな気持ちをいつまで続けていくのか、もうおわりにしたい。おいつめられて、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにはもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

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花間集 教坊曲『虞美人』十四首

毛文錫

巻五05虞美人二首其一鴛鴦對浴銀塘暖,水面蒲梢短。垂楊低拂麴塵波,蛟絲結網露珠多,滴圓荷。遙思桃葉吳江碧,便是天河隔。錦鱗紅鬣影沉沉,相思空有夢相尋,意難任。

毛文錫

巻五06虞美人二首其二寶檀金縷鴛鴦枕,綬帶盤宮錦。夕陽低映小䆫明,南園綠樹語鶯鶯,夢難成。玉鑪香暖頻添炷,滿地飄輕絮。珠簾不卷度沉煙,庭前閑立畫鞦韆,豔陽天。

顧夐

巻六34虞美人六首其一曉鶯啼破相思夢,簾看金泥鳳。宿粧猶在酒初醒,翠翹慵整倚雲屏,轉娉婷。香檀細畫侵桃臉,羅袂輕輕斂。佳期堪恨再難尋,綠蕪滿院柳成陰,負春心。

顧夐

巻六35虞美人六首其二觸簾風送景陽鐘,鴛被繡花重。曉幃初卷冷煙濃,翠勻粉黛好儀容,思嬌慵。起來無語理朝粧,寶匣鏡凝光。綠荷相倚滿池塘,露清枕簟藕花香,恨悠揚。

顧夐

巻六36虞美人六首其三翠屏閑掩垂珠箔,絲雨籠池閣。露粘紅藕咽清香,謝娘嬌極不成狂,罷朝粧。小金鸂鶒沉煙細,膩枕堆雲髻。淺眉微斂炷檀輕,舊懽時有夢魂驚,悔多情。

顧夐

巻六37虞美人六首其四碧梧桐映紗䆫晚,花謝鶯聲懶。小屏屈曲掩青山,翠幃香粉玉爐寒,兩蛾攢。顛狂少年輕離別,辜負春時節。畫羅紅袂有啼痕,魂消無語倚閨門,欲黃昬。

顧夐

巻六38虞美人六首深閨春色勞思想,恨共春蕪長。黃鸝嬌囀泥芳妍,杏枝如畫倚輕煙,鏁䆫前。凭欄愁立雙蛾細,柳影斜搖砌。玉郎還是不還家,教人魂夢逐楊花,繞天涯。

顧夐

巻六39虞美人六首其六少年豔質勝瓊英,早晚別三清。蓮冠穩篸鈿篦橫,飄飄羅袖碧雲輕,畫難成。遲遲少轉腰身裊,翠靨眉心小。醮壇風急杏花香。此時恨不駕鸞皇,訪劉郎。

孫光憲

巻八08虞美人二首其一紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。天涯一去無消息,終日長相憶。交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

孫光憲

巻八09虞美人二首其二好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

鹿虔扆

《巻九19虞美人》  卷荷香澹浮煙渚,綠嫩擎新雨。璅䆫疎透曉風清,象床珍簟冷光輕,水紋平。九疑黛色屏斜掩,枕上眉心斂。不堪相望病將成,鈿昬檀粉淚縱橫,不勝情。

閻選

《巻九20虞美人二首其一》  粉融紅膩蓮房綻,臉動雙波慢。小魚銜玉鬢釵橫,石榴裙染象紗輕,轉娉婷。偷期錦浪荷深處,一夢雲兼雨。臂留檀印齒痕香,深秋不寐漏初長,盡思量。

閻選

《巻九21虞美人二首其二》  楚腰蠐領團香玉,鬢疊深深綠。月蛾星眼笑微嚬,柳妖桃豔不勝春,晚粧勻。水紋簟映青紗帳,霧罩秋波上。一枝嬌臥醉芙蓉,良宵不得與君同,恨忡忡。

 

 

虞美人二首 其一

(虞美人のように孤立化してしまった妃賓について、訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす)

      紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。

      紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春の花がいっぱいというのに長雨は梨の花を濡らして、薄暗くひっそりとしている。(花も天も私を見棄てるのか)

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

今日は、刺繍入りのシーツを取り換え、お化粧し、何度もし直し、新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回している。待ちつかれてうとうとし、もう、あのおかたを迎えようとするはりつめた気持ちも消えてきた。

      天涯一去無消息,終日長相憶。

心は、どこか遠くの果てに一度行ってしまったのだろうか、音沙汰は全くない。日がな一日、それも毎日、ずーっとあのお方のことを思い続けていくだけ。

      交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うけど、そんな気持ちをいつまで続けていくのか、もうおわりにしたい。おいつめられて、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにはもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

             

虞美人二首           其二

              好風微揭簾旌起,金翼鸞相倚。

              翠簷愁聽乳禽聲,此時春態暗關情,獨難平。

              畫堂流水空相翳,一穗香搖曳。

              交人無處寄相思,落花芳艸過前期,沒人知。

pla045
 

 

 

『虞美人二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

虞美人二首           其一

紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

天涯一去無消息,終日長相憶。

交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

 

(下し文)

(虞美人二首       其の一)

紅䆫 寂寂とし 人語ること無し,暗澹 梨花の雨。

繡羅 紋地 粉 新らた描き,博山 香炷 抽條旋る,睡魂 銷す。

天涯 一び去り 消息無く,終日 長く相いに憶う。

交人 相いに憶う 幾時 休まん? 悵觸 別離の愁に堪えざらん,淚 還た流る。

 

 

(現代語訳)

(虞美人のように孤立化してしまった妃賓について、訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす)

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春の花がいっぱいというのに長雨は梨の花を濡らして、薄暗くひっそりとしている。(花も天も私を見棄てるのか)

今日は、刺繍入りのシーツを取り換え、お化粧し、何度もし直し、新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回している。待ちつかれてうとうとし、もう、あのおかたを迎えようとするはりつめた気持ちも消えてきた。

心は、どこか遠くの果てに一度行ってしまったのだろうか、音沙汰は全くない。日がな一日、それも毎日、ずーっとあのお方のことを思い続けていくだけ。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うけど、そんな気持ちをいつまで続けていくのか、もうおわりにしたい。おいつめられて、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにはもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

019
 

(訳注)

虞美人二首其一 

(虞美人のように孤立化してしまった妃賓について、訪れる人もなく寂しい毎日を過ごす)

ここに言う虞美人は少し年を重ねた虞美人のような美人の妃賓。たれも自分のもとには訪れる人がなく四面静寂であることで生きることに憑かれたことを詠う。

1 虞美人 項羽の愛姫で虞姫ともいう。5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか・安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。虞美人草の名は,彼女の鮮血が化して草花になったという伝から来ている。

秦末 虞美人『虞美人歌』

漢兵已略地,四方楚歌聲。

大王意氣盡,賤妾何聊生。

(虞美人の歌)

漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。

大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

虞美人歌  秦末・虞美 詩<118>古代 女性詩 555 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1482

項羽が、垓下で敗れたときに慷慨悲歌したときの詩

項羽『垓下歌』

力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。

騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!

であるが、それに対して虞美人が歌い舞った。

項羽と劉邦は戦いと和睦を繰り返しながら、垓下で雌雄を決する一戦を迎える。この時、項羽の少数の軍勢を大軍で取り囲んだ劉邦は、味方の兵士たちに項羽の祖国楚の歌を歌わせる。この歌を聞いた項羽は味方の兵が寝返ったのだと誤解して絶望する。その絶望の中で歌ったとされるのが、「垓下歌」である。

2. 美人 古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618-626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調五十八字、前後段五句二十九字二仄韻三平韻で、❼❺⑦⑦③/❼❺⑦⑦③の詞形をとる。

虞美人二首           其一

紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

天涯一去無消息,終日長相憶。

交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

○?●●○○●  ●△○○●

●○○●●○○  ●○○●△○○ ●○○

○○●●○○● ○●△△●

○○△●△○△ △○●●●△○ ●○○

 

紅䆫寂寂無人語,暗澹梨花雨。

紅い燈火が影をおとす窓のある閨には誰もよらず語ることはない。春の花がいっぱいというのに長雨は梨の花を濡らして、薄暗くひっそりとしている。(花も天も私を見棄てるのか)

3 紅䆫寂寂無人語 紅い燈火が影をおとす窓のある妃嬪の閨には誰もよらず語ることはない。

4 暗澹 どんよりとした雲行きの中で降り出した雨で、白い梨の花は咲いているが薄暗くはえることはないようすをいう。この二句は、春景色、いっぱいに咲く花は妃嬪の見方と思っていたのに、空は暗く雨を落とし、妃嬪美人の思いを裏切るという。

 

繡羅紋地粉新描,博山香炷旋抽條,睡魂銷。

今日は、刺繍入りのシーツを取り換え、お化粧し、何度もし直し、新しく眉を書いた。りっぱな博山の香炉からは一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回している。待ちつかれてうとうとし、もう、あのおかたを迎えようとするはりつめた気持ちも消えてきた。

5. 繡羅紋地 閨の刺しゅう入りのシーツを取り換える。

6. 粉新描 お化粧をし直し新しく眉を書きなおした。

7 博山香炷 香炉の一種で,豆(とう)形の火皿に先端のとがった山形の蓋をもつ。承盤をともなうものも多く,これは海中に浮かぶ神山(蓬莱山)にたとえたとみられ,神仙道との関係がうかがわれる。戦国末期にあらわれ,漢代に盛行し,青銅製品には金象嵌をほどこした華麗なものがある。江南では東晋,南朝代に青磁製のものがみられる。南北朝代には仏教徒も用い,仏像の台座正面や供養者の持物にあらわされた。隋・唐代には山形の蓋が蓮華をかたどった緑釉陶もつくられた。いずれにしても、高価なもので、それ相応の人物からの贈り物と考えられる。

8. 旋抽條 一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回すること。

 

天涯一去無消息,終日長相憶。

心は、どこか遠くの果てに一度行ってしまったのだろうか、音沙汰は全くない。日がな一日、それも毎日、ずーっとあのお方のことを思い続けていくだけ。

9. 相憶 相思ということはお互いに思うというのではなく相手を思う、一方的に思うということ。

 

交人相憶幾時休?不堪悵觸別離愁,淚還流。

慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うけど、そんな気持ちをいつまで続けていくのか、もうおわりにしたい。おいつめられて、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいと愁うことにはもう堪えられない。涙はまた流れて行く。

10. 交人相憶 慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら。交はこもごも、ともに、かわるがわる。

11. 悵觸 惆悵に接触ということで、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいとうれうことにもうたえられない。

 

 

 

 

 

 

孫光憲  虞美人二首  【字解】

 

1 虞美人 項羽の愛姫で虞姫ともいう。5年にわたる楚・漢抗争のすえ,前202年に項羽は劉邦の漢軍によって垓下(がいか・安徽省霊璧県)に囲まれた(垓下の戦)。夜,四面から聞こえてくる楚の歌に,項羽は郷里の楚も漢におちたことを悟り(四面楚歌),虞美人をかたわらに決別の酒宴をひらいた。項羽は悲憤慷慨し,涙して辞世の詩をうたうと,彼女も唱和し,みな泣き伏したという。虞美人草の名は,彼女の鮮血が化して草花になったという伝から来ている。

秦末 虞美人『虞美人歌』

漢兵已略地,四方楚歌聲。

大王意氣盡,賤妾何聊生。

(虞美人の歌)

漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。

大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

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項羽が、垓下で敗れたときに慷慨悲歌したときの詩

項羽『垓下歌』

力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。

騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!

であるが、それに対して虞美人が歌い舞った。

項羽と劉邦は戦いと和睦を繰り返しながら、垓下で雌雄を決する一戦を迎える。この時、項羽の少数の軍勢を大軍で取り囲んだ劉邦は、味方の兵士たちに項羽の祖国楚の歌を歌わせる。この歌を聞いた項羽は味方の兵が寝返ったのだと誤解して絶望する。その絶望の中で歌ったとされるのが、「垓下歌」である。

2. 美人 古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618-626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。

3 紅䆫寂寂無人語 紅い燈火が影をおとす窓のある妃嬪の閨には誰もよらず語ることはない。

4 暗澹 どんよりとした雲行きの中で降り出した雨で、白い梨の花は咲いているが薄暗くはえることはないようすをいう。この二句は、春景色、いっぱいに咲く花は妃嬪の見方と思っていたのに、空は暗く雨を落とし、妃嬪美人の思いを裏切るという。

5. 繡羅紋地 閨の刺しゅう入りのシーツを取り換える。

6. 粉新描 お化粧をし直し新しく眉を書きなおした。

7 博山香炷 香炉の一種で,豆(とう)形の火皿に先端のとがった山形の蓋をもつ。承盤をともなうものも多く,これは海中に浮かぶ神山(蓬莱山)にたとえたとみられ,神仙道との関係がうかがわれる。戦国末期にあらわれ,漢代に盛行し,青銅製品には金象嵌をほどこした華麗なものがある。江南では東晋,南朝代に青磁製のものがみられる。南北朝代には仏教徒も用い,仏像の台座正面や供養者の持物にあらわされた。隋・唐代には山形の蓋が蓮華をかたどった緑釉陶もつくられた。いずれにしても、高価なもので、それ相応の人物からの贈り物と考えられる。

8. 旋抽條 一条の香煙が立ち上り揺れながら旋回すること。

9. 相憶 相思ということはお互いに思うというのではなく相手を思う、一方的に思うということ。 

10. 交人相憶 慕い、思い焦がれる気持ちともうどうなってもいいという気持のかわるがわるが繰り返して思うことを言い、そんな気持ちをいつまで続けていくのやら。交はこもごも、ともに、かわるがわる。

11. 悵觸 惆悵に接触ということで、恨み嘆くこと、わかれてしまいたいとうれうことにもうたえられない。 

12孫光憲《巻八07河瀆神二首其二》『花間集』359全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7067

孫光憲  河瀆神二首       其二

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

(春になり瀟湘八景の娥皇と女英の祠や廟に着てみると、そのころの空とおなじ空が広がり、舟もふたりをのせて出発する。また鴛鴦の様に一緒に過ごしていることだろうと詠う。)

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前に春の景色でいっぱいになる。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけ、その色のむこうには、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空がある。その空には、いつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて北の空に行き去る。

娥皇なのか、女英なのか、独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごし、その最後の朝を迎えた娥皇と女英のような気持ちでいると決意した、思いを貫くためである。

船に乗って行ってしまったあの娥皇なのか、女英なのか行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がって過ごしていることだろう。

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  ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"  
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 孫少監光憲四十七首

菩薩蠻五首

河瀆神二首

虞美人二首

後庭花二首

生查子三首

臨江仙二首

酒泉子三首

清平樂二首

更漏子二首

女冠子二首

風流子三首

定西番二首

河滿子一首

玉蝴蝶一首

八拍蠻一首

竹枝一首

思帝鄉一首

上行盃二首

謁金門一首

思越人二首

陽柳枝四首

望梅花一首

漁歌子二首

 

 

 

河瀆神二首 其一

(汾河を遠くに見る御陵にも秋がおとずれるのと長い夜が来るその景色をうたう)

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

「翠蛾」はひとたび去る時には帰って来るとは言わなかった、この陵廟の門はひっそりとして西日が照り輝く。

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

廟苑を囲む四方の壁の向こうには深い木々の森が鬱蒼としてかべやはしらにえがかれたものがふるくうすよごれている見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたのだろう。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

陵廟の館樓はしんしんと更けてゆき清らかな夜が訪れる。妃嬪の閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

河瀆神二首           其一

汾水 碧 依依たり,黃雲 落葉 初めて飛ぶ。

翠蛾 一び去りて 歸るを言わず,廟門 空しく斜暉を掩う。

四壁 森を陰して古畫を排し,依舊 羽駕に 瓊輪す。

小殿 沉沉として清夜なり,銀燈 飄落して 香灺す。

 

 

河瀆神二首 其二

(春になり瀟湘八景の娥皇と女英の祠や廟に着てみると、そのころの空とおなじ空が広がり、舟もふたりをのせて出発する。また鴛鴦の様に一緒に過ごしていることだろうと詠う。)

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前に春の景色でいっぱいになる。

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけ、その色のむこうには、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空がある。その空には、いつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて北の空に行き去る。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

娥皇なのか、女英なのか、独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごし、その最後の朝を迎えた娥皇と女英のような気持ちでいると決意した、思いを貫くためである。

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

船に乗って行ってしまったあの娥皇なのか、女英なのか行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がって過ごしていることだろう。

 

(河瀆神二首       其の二)

江上 草 芊芊たり,春晚 湘妃 廟前たり。

一方 柳色 楚の南天,數行 斜鴈 聯翩す。

獨り朱欄に倚るも 情 極らず,魂斷つ 終に朝 相憶するを。

兩槳 消息を知らず,汀を遠くして 時に鸂鶒起す。

             

宮島(5)
 

『河瀆神二首』 現代語訳と訳註

(本文)

河瀆神二首           其二

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

 

(下し文)

(河瀆神二首       其の二)

江上 草 芊芊たり,春晚 湘妃 廟前たり。

一方 柳色 楚の南天,數行 斜鴈 聯翩す。

獨り朱欄に倚るも 情 極らず,魂斷つ 終に朝 相憶するを。

兩槳 消息を知らず,汀を遠くして 時に鸂鶒起す。

 

(現代語訳)

(春になり瀟湘八景の娥皇と女英の祠や廟に着てみると、そのころの空とおなじ空が広がり、舟もふたりをのせて出発する。また鴛鴦の様に一緒に過ごしていることだろうと詠う。)

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前に春の景色でいっぱいになる。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけ、その色のむこうには、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空がある。その空には、いつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて北の空に行き去る。

娥皇なのか、女英なのか、独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごし、その最後の朝を迎えた娥皇と女英のような気持ちでいると決意した、思いを貫くためである。

船に乗って行ってしまったあの娥皇なのか、女英なのか行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がって過ごしていることだろう。

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(訳注)

河瀆神二首其二

(春になり瀟湘八景の娥皇と女英の祠や廟に着てみると、そのころの空とおなじ空が広がり、舟もふたりをのせて出発する。またえんおうのように一緒に過ごしていることだろうと詠う。)

韓愈 『黄陵廟碑』には湘妃のことが面白く述べられている。

《黄陵廟碑 -(1)》韓愈(韓退之) Ⅱ唐宋八大家文読本 巻五 <1036>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4164韓愈詩-393-1

402-10 《黄陵廟碑 -(10)四段の2》韓愈(韓退之) Ⅱ唐宋八大家読本 巻五 <1063>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4299韓愈詩-402-10

 

『花間集』には張泌の作が一首収められている。双調四十九字、前段二十四字四句四平韻、後段五字四句四灰韻で、⑤⑥⑦⑥/❼❻❻❻の詞形をとる。

 

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

湘江のほとりには草草が勢いよくのびてきて繁っている。春が終わろうとしているころに湘江の川の神は「湘妃」「湘君」の祠の前に春の景色でいっぱいになる。

9 芊芊 草木がぼうぼうと伸び茂るさま。

10 湘妃 湘江の川の神は「湘妃」「湘君」といい、娥皇と女英の二人の女神からなる。娥皇・女英の二人の娘姉妹を舜の妃としたこと。娥皇と女英は舜帝の妃であったが、舜が没すると悲しんで川に身を投じ、以後川の神となった。斑竹の表面にある斑紋は、娥皇と女英の涙が落ちた跡が残って斑になったという言い伝えがあり、湘江竹、湘竹、涙竹などの別名がある。

11 廟前 廟や祠そのものに、あるいは人の集まる港に近く、ところに女妓が集められていたその様子を「草」「湘妃」と表現している。男が船に乗って出かけて行ったのである。

 

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

その廟の片側には柳が鬱蒼として葉をつけ、その色のむこうには、楚の国の晴れ渡った昼下がりの南の空がある。その空には、いつしか雁が数行の列をなして、ここの空を斜めに連なりはばたいて北の空に行き去る。

12 柳色楚南天 柳の色は夏空の色である、季節が夏に変わったことをいう。

13 數行斜鴈 列をなして空を斜めに横切る。

 

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

娥皇なのか、女英なのか、独り、紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。しかし、眠れぬ夜を過ごし、その最後の朝を迎えた娥皇と女英のような気持ちでいると決意した、思いを貫くためである。

14 朱欄情不極 紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。

15 魂斷終朝 舜帝が逝った後、帝の後を追おうと決め、その最後の朝を迎えた娥皇と女英のような気持ちでいることをいう。

 

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

船に乗って行ってしまったあの娥皇なのか、女英なのか行く先は全く分からない。遠くを眺めれば水際の砂浜には時おり、鴛鴦が起き上がって過ごしていることだろう。

16 兩槳 かじとかいなど舟を漕ぎ勧める道具。ここではそうした船に乗って行ってしまったあの娥皇と女英ということ。

17 鸂鶒 おしどり。今までも鴛鴦のように過ごしたし、遠いところでまた過ごしたい。

『江頭五詠:鸂鶒』 

故使籠寬織,須知動損毛。

看雲莫悵望,失水任呼號。

六翮曾經剪,孤飛卒未高。

且無鷹隼慮,留滯莫辭勞。 

(江頭の五詠:鸂鶒【けいせき】)

故【ことさら】に籠をして織を寛にせしむ、須【すべか】らく知るべし動けば毛を損するを。

雲を看て 猶お悵望す、水を失して呼号するに任す。

六翮【ろくかく】曾て剪らるるを経たり、孤飛 卒【つい】に未だ高からず。

且つ鷹隼【ようしゅん】の慮り無し、留滞 労を辞する莫れ。

鴛鴦を飼うのにわざわざ寵の目をあらく織らせた、なぜならば目を密にすればその中で動くとき鳥が毛を傷めるとおもうからだ。

籠から雲を見ては恨めしく眺めることだろうし、水から離れてしまうから悲しんで泣き叫ぶことだろうが、叫ぶがままにさせておく。

六枚の立ち羽は前に剪られてしまったから、ひとりで飛ぶ力が無くなっているので、高く飛べないのだ。

だけど、それで鷹や隼におそわれる心配がない、それを取り柄にすれば、ゆっくりこのかごのなかにとどまって苦労することを云うことなどなくなるといものだ。

江頭五詠:鸂鶒 蜀中転々 杜甫 <521>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2800 杜甫詩1000-521-754/1500

 

 

 

 

孫光憲 河瀆神二首 【字解】

 

 

(1)  汾水 山西省を南北に流れる大きな川で、渭河に次ぐ黄河第二の支流。 山西省北部の忻州市寧武県の管涔山に発する。黄土高原の谷間を流れる支流を集めて南西方向へ流れ、次いで南東方向へ、さらに北東方向へと大きく曲がりながら太原市で盆地に出る。晋中市から臨汾市へと、山西省中部の盆地を北東から南西の方向へ貫き、侯馬で西へ折れ、運城市河津で黄河左岸に合流する。春秋戦国時代以来の歴史的都市の多くが汾河流域にあり、黄河文明や中国の歴代王朝の多くを生んだ山西省の母なる川でもある。黃雲 秋の日が落ち掛け夕焼になる前の黄色のうろこ雲。 

(2)  翠娥  1.青黒い三日月形の眉(マユ)。美人の美しい眉のこと。2転じて、美人のこと。ここは、陵廟付きの妃賓。

(3)  廟門 陵廟の門。

(4)  四壁 この廟苑を囲む四方の壁、

(5)  陰森排古畫 この壁を蔽いかぶさるように木の枝が鬱蒼としていて、木の樹脂が飛んで以前は鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなる。

(6)  瓊輪羽駕 鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことをいう。

(7) 飄落 ふんわりと落ちること。

(8) 香灺 燃え残りの臣が油の香りを発すること。

9 芊芊 草木がぼうぼうと伸び茂るさま。

10 湘妃 湘江の川の神は「湘妃」「湘君」といい、娥皇と女英の二人の女神からなる。娥皇・女英の二人の娘姉妹を舜の妃としたこと。娥皇と女英は舜帝の妃であったが、舜が没すると悲しんで川に身を投じ、以後川の神となった。斑竹の表面にある斑紋は、娥皇と女英の涙が落ちた跡が残って斑になったという言い伝えがあり、湘江竹、湘竹、涙竹などの別名がある。

11 廟前 廟や祠そのものに、あるいは人の集まる港に近く、ところに女妓が集められていたその様子を「草」「湘妃」と表現している。男が船に乗って出かけて行ったのである。

12 柳色楚南天 柳の色は夏空の色である、季節が夏に変わったことをいう。

13 數行斜鴈 列をなして空を斜めに横切る。

14 朱欄情不極 紅い欄干によりかかり、空を見上げて雁を追いかけてみているが心は落ち着いていない。

15 魂斷終朝 舜帝が逝った後、帝の後を追おうと決め、その最後の朝を迎えた娥皇と女英のような気持ちでいることをいう。

16 兩槳 かじとかいなど舟を漕ぎ勧める道具。ここではそうした船に乗って行ってしまったあの娥皇と女英ということ。

17 鸂鶒 おしどり。今までも鴛鴦のように過ごしたし、遠いところでまた過ごしたい。

『江頭五詠:鸂鶒』 

故使籠寬織,須知動損毛。

看雲莫悵望,失水任呼號。

六翮曾經剪,孤飛卒未高。

且無鷹隼慮,留滯莫辭勞。 

(江頭の五詠:鸂鶒【けいせき】)

故【ことさら】に籠をして織を寛にせしむ、須【すべか】らく知るべし動けば毛を損するを。

雲を看て 猶お悵望す、水を失して呼号するに任す。

六翮【ろくかく】曾て剪らるるを経たり、孤飛 卒【つい】に未だ高からず。

且つ鷹隼【ようしゅん】の慮り無し、留滞 労を辞する莫れ。

鴛鴦を飼うのにわざわざ寵の目をあらく織らせた、なぜならば目を密にすればその中で動くとき鳥が毛を傷めるとおもうからだ。

籠から雲を見ては恨めしく眺めることだろうし、水から離れてしまうから悲しんで泣き叫ぶことだろうが、叫ぶがままにさせておく。

六枚の立ち羽は前に剪られてしまったから、ひとりで飛ぶ力が無くなっているので、高く飛べないのだ。

だけど、それで鷹や隼におそわれる心配がない、それを取り柄にすれば、ゆっくりこのかごのなかにとどまって苦労することを云うことなどなくなるといものだ。

江頭五詠:鸂鶒 蜀中転々 杜甫 <521>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2800 杜甫詩1000-521-754/1500

12孫光憲《巻八06河瀆神二首其一》『花間集』358全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7062

孫光憲  河瀆神二首 其一

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

(汾河を遠くに見る御陵にも秋がおとずれるのと長い夜が来るその景色をうたう)

汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。「翠蛾」はひとたび去る時には帰って来るとは言わなかった、この陵廟の門はひっそりとして西日が照り輝く。廟苑を囲む四方の壁の向こうには深い木々の森が鬱蒼としてかべやはしらにえがかれたものがふるくうすよごれている見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたのだろう。陵廟の館樓はしんしんと更けてゆき清らかな夜が訪れる。妃嬪の閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

12孫光憲《巻八06河瀆神二首其一》『花間集』358全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7062

 

 

 
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 孫少監光憲四十七首

菩薩蠻五首

河瀆神二首

虞美人二首

後庭花二首

生查子三首

臨江仙二首

酒泉子三首

清平樂二首

更漏子二首

女冠子二首

風流子三首

定西番二首

河滿子一首

玉蝴蝶一首

八拍蠻一首

竹枝一首

思帝鄉一首

上行盃二首

謁金門一首

思越人二首

陽柳枝四首

望梅花一首

漁歌子二首

 

 

溫庭筠

《巻一45》 河瀆神三首其一河上望叢祠,廟前春雨來時。楚山無限鳥飛遲,蘭棹空傷別離。何處杜鵑啼不歇,豔紅開盡如血。蟬鬢美人愁絕,百花芳草佳節。

溫庭筠

巻一46河瀆神三首其二孤廟對寒潮,西陵風雨蕭蕭。謝娘惆悵倚欄橈,淚流玉筋千條。暮天愁聽思歸落,早梅香滿山郭。迴首兩情蕭索,離魂何處飄泊。

溫庭筠

巻一47河瀆神三首其三銅皷賽神來,滿庭幡蓋徘徊。水村江浦過風雷,楚山如畫煙開。離別櫓聲空蕭索,玉容惆悵粧薄。青麥鷰飛落落,捲簾愁對珠閣。

張泌

巻五03河瀆神古樹噪寒鴉,滿庭楓葉蘆花。晝燈當午隔輕紗,畫閣珠簾影斜。門外往來祈賽客,翩翩帆落天涯。迴首隔江煙火,渡頭三兩人家。

孫光憲

巻八06河瀆神二首其一汾水碧依依,黃雲落葉初飛。翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

孫光憲

巻八07河瀆神二首其二江上草芊芊,春晚湘妃廟前。一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

 

河瀆神二首       其一

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

(汾河を遠くに見る御陵にも秋がおとずれるのと長い夜が来るその景色をうたう)

汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

「翠蛾」はひとたび去る時には帰って来るとは言わなかった、この陵廟の門はひっそりとして西日が照り輝く。

廟苑を囲む四方の壁の向こうには深い木々の森が鬱蒼としてかべやはしらにえがかれたものがふるくうすよごれている見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたのだろう。

陵廟の館樓はしんしんと更けてゆき清らかな夜が訪れる。妃嬪の閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

河瀆神二首           其一

汾水 碧 依依たり,黃雲 落葉 初めて飛ぶ。

翠蛾 一び去りて 歸るを言わず,廟門 空しく斜暉を掩う。

四壁 森を陰して古畫を排し,依舊 羽駕に 瓊輪す。

小殿 沉沉として清夜なり,銀燈 飄落して 香灺す。

             

河瀆神二首           其二

江上草芊芊,春晚湘妃廟前。

一方柳色楚南天,數行斜鴈聯翩。

獨倚朱欄情不極,魂斷終朝相憶。

兩槳不知消息,遠汀時起鸂鶒。

Nature1-011
 

 

『河瀆神二首』 現代語訳と訳註

(本文)

河瀆神二首           其一

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

 

(下し文)

河瀆神二首           其一

汾水 碧 依依たり,黃雲 落葉 初めて飛ぶ。

翠蛾 一び去りて 歸るを言わず,廟門 空しく斜暉を掩う。

四壁 森を陰して古畫を排し,依舊 羽駕に 瓊輪す。

小殿 沉沉として清夜なり,銀燈 飄落して 香灺す。

 

(現代語訳)

(汾河を遠くに見る御陵にも秋がおとずれるのと長い夜が来るその景色をうたう)

汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

「翠蛾」はひとたび去る時には帰って来るとは言わなかった、この陵廟の門はひっそりとして西日が照り輝く。

廟苑を囲む四方の壁の向こうには深い木々の森が鬱蒼としてかべやはしらにえがかれたものがふるくうすよごれている見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたのだろう。

陵廟の館樓はしんしんと更けてゆき清らかな夜が訪れる。妃嬪の閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

Flower1-004
 

(訳注)

河瀆神二首     其一

(汾河を遠くに見る御陵にも秋がおとずれるのと長い夜が来るその景色をうたう)

古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618-626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。上記のそれぞれの女性は官品をもち、合計で122人の多きに達した。皇后だけが正妻であり、その他は名義上はみな「妃嬪」-皇帝の妾とされた。後宮に配置されるだけでなく、各離宮、御陵に妃嬪たちは配属された。

河瀆神 一首

『花間集』には張泌の作が一首収められている。双調四十九字、前段二十四字四句四平韻、後段五字四句四灰韻で、⑤⑥⑦⑥/❼❻❻❻の詞形をとる。

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

○●●△△  ○○●●○○

●△●●△○○  ●○△●○○

●●○○○●●  △●○○●●

●●○○○●  ○○○●○●

             

汾水碧依依,黃雲落葉初飛。

汾水の流れは緑に澄んだ水で遙か先まで流れている。傾きかけた日に黄色に映る雲をみて初めて秋を知り、初めて落ち葉が散って来たのを見る。

1.   汾水 山西省を南北に流れる大きな川で、渭河に次ぐ黄河第二の支流。 山西省北部の忻州市寧武県の管涔山に発する。黄土高原の谷間を流れる支流を集めて南西方向へ流れ、次いで南東方向へ、さらに北東方向へと大きく曲がりながら太原市で盆地に出る。晋中市から臨汾市へと、山西省中部の盆地を北東から南西の方向へ貫き、侯馬で西へ折れ、運城市河津で黄河左岸に合流する。春秋戦国時代以来の歴史的都市の多くが汾河流域にあり、黄河文明や中国の歴代王朝の多くを生んだ山西省の母なる川でもある。

2.   黃雲 秋の日が落ち掛け夕焼になる前の黄色のうろこ雲。

 

翠蛾一去不言歸,廟門空掩斜暉。

「翠蛾」はひとたび去る時には帰って来るとは言わなかった、この陵廟の門はひっそりとして西日が照り輝く。

3.   翠娥  ①青黒い三日月形の眉(マユ)。美人の美しい眉のこと。 ②転じて、美人のこと。ここは、陵廟付きの妃賓。

廟門 陵廟の門。

 

四壁陰森排古畫,依舊瓊輪羽駕。

廟苑を囲むの四方の壁の向こうには深い木々の森が鬱蒼としてかべやはしらにえがかれたものがふるくうすよごれている見えなくなるほどになっている、きっと昔は鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたのだろう。

4.   四壁 この廟苑を囲む四方の壁、

5.   陰森排古畫 この壁を蔽いかぶさるように木の枝が鬱蒼としていて、木の樹脂が飛んで以前は鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなる。

6.   瓊輪羽駕 鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことをいう。

 

小殿沉沉清夜,銀燈飄落香灺。

陵廟の館樓はしんしんと更けてゆき清らかな夜が訪れる。妃嬪の閨の銀の燭台の燈火は灯芯がおちて燃え残りが油の香りがする。

7.   飄落 ふんわりと落ちること。

8.  香灺 燃え残りの臣が油の香りを発すること。

 

 

孫光憲 河瀆神二首 【字解】

 

 

(1)  汾水 山西省を南北に流れる大きな川で、渭河に次ぐ黄河第二の支流。 山西省北部の忻州市寧武県の管涔山に発する。黄土高原の谷間を流れる支流を集めて南西方向へ流れ、次いで南東方向へ、さらに北東方向へと大きく曲がりながら太原市で盆地に出る。晋中市から臨汾市へと、山西省中部の盆地を北東から南西の方向へ貫き、侯馬で西へ折れ、運城市河津で黄河左岸に合流する。春秋戦国時代以来の歴史的都市の多くが汾河流域にあり、黄河文明や中国の歴代王朝の多くを生んだ山西省の母なる川でもある。黃雲 秋の日が落ち掛け夕焼になる前の黄色のうろこ雲。 

(2)  翠娥  1.青黒い三日月形の眉(マユ)。美人の美しい眉のこと。2転じて、美人のこと。ここは、陵廟付きの妃賓。

(3)  廟門 陵廟の門。

(4)  四壁 この廟苑を囲む四方の壁、

(5)  陰森排古畫 この壁を蔽いかぶさるように木の枝が鬱蒼としていて、木の樹脂が飛んで以前は鮮やかに描かれていた絵が薄汚れて見えなくなる。

(6)  瓊輪羽駕 鳳凰鳥の馭者に牽かれ天に環をかけて飛び走る絵が描かれていたことをいう。

(7) 飄落 ふんわりと落ちること。

(8) 香灺 燃え残りの臣が油の香りを発すること。

12孫光憲《巻八05菩薩蠻五首其五 木綿》『花間集』357全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7057

孫光憲  菩薩蠻          其五

木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。        銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

客帆風正急,茜袖隈牆立。極浦幾迴頭,煙波無限愁。

(北へ帰る船に良い人をひそかに見送る美人が愁いにあふれ涙を流している。同じ船に乗るが、無事な船旅を願って旅立つ)

晩春になって、木綿の花が咲き照らされ映え、花いっぱいの中に祠が小さく見える。野鳥が裏の土塀を越えて春の朝日が昇る中で鳴きだした。銅鑼と太鼓に合わせて南の異民族の歌を謡い始めた、嶺南山脈を越えるとそこの住民の人は土着のいろんな神が多くおり、船出を祈る。旅人の船帆に、風がまさに急に強く吹いてくると、旅は中断されるので急いで旅立つ。南の美人は土塀の陰からそっと覗いて茜の袖を振って送っている。入り江の一番奥まった所の湊を何度も何度も振り返って見返した。朝靄に煙る中、少し波立つ、もうこれ以上の愁を感じることはない。

12孫光憲《巻八05菩薩蠻五首其五 木綿》『花間集』357全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7057

 

 
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菩薩蠻 五首其一

(妃嬪も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。

      寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。

      碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。

      即此是高唐,掩屏秋夢長。

すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻 其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

      門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

      薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

      握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

菩薩蠻 其三

(寵愛を受けているときと同じように、春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんでもらおうと、そうじもさせずにまっている。今は独りで春が過ぎようとしている)

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

寝殿の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているが、人に掃除はさせない。焚くお香は時折この中庭に漂い満ちていて春の風も終わって、夏の風に変わろうとしている。

      春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに暗い気持ちになってどうしようもない。このまま寵愛を失ったままでは、この後宮での生涯は何処いくやら、どうしたらいいのやら、だれに尋ねたらいいのか。

      曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けの楼閣の閨には六曲の屏風と團扇を飾っていて、眉も瀟湘八景の絵の山々も遠く影を薄くする。

      爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちになることなどあろうか、又寵愛を近いうちにあるだろう、もうしばらくするとあるのかと考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか。

(菩薩蠻          其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

 

菩薩蠻 其四

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

      青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

      一隻木蘭舡,波平遠浸天。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

      扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

      紅日欲沉西,煙中遙解觽。

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

(菩薩蠻          其の四)

青巖 碧洞 朝雨を經り,隔花 相喚して南溪 去り。

一隻 木蘭の舡,波平らかにして 遠く天に浸む。

扣舡 翡翠驚き,嫩玉 香臂に擡す。

紅日 西に沉まんと欲し,煙中 遙か觽を解く。

             

菩薩蠻  其五

           木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

           銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

           客帆風正急,茜袖隈牆立。

           極浦幾迴頭,煙波無限愁。

(北へ帰る船に良い人をひそかに見送る美人が愁いにあふれ涙を流している。同じ船に乗るが、無事な船旅を願って旅立つ)

晩春になって、木綿の花が咲き照らされ映え、花いっぱいの中に祠が小さく見える。野鳥が裏の土塀を越えて春の朝日が昇る中で鳴きだした。

銅鑼と太鼓に合わせて南の異民族の歌を謡い始めた、嶺南山脈を越えるとそこの住民の人は土着のいろんな神が多くおり、船出を祈る。

旅人の船帆に、風がまさに急に強く吹いてくると、旅は中断されるので急いで旅立つ。南の美人は土塀の陰からそっと覗いて茜の袖を振って送っている。

入り江の一番奥まった所の湊を何度も何度も振り返って見返した。朝靄に煙る中、少し波立つ、もうこれ以上の愁を感じることはない。

(菩薩蠻          其の五)

木綿の花映し 叢祠 小し,禽越え 裏に聲えし 春 曉に光く。

銅皷 蠻歌を與え,南人 賽多を祈る。

客帆に 風は 正に急なり,茜袖 隈に 牆 立つ。

浦に極まり 幾びか頭を迴らさん,煙波 愁い限り無し。

 


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12孫光憲《巻八04菩薩蠻五首其四 青巖》『花間集』356全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7052

孫光憲  菩薩蠻          其四

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。一隻木蘭舡,波平遠浸天。

扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。紅日欲沉西,煙中遙解觽。

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

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  杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首 杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩)  杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首 杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首 杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首 杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首  
  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
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  ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集  
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  毛文錫31首 花間集5巻 牛希濟11首 花間集5巻 欧陽烱17首 花間集5・6巻 和凝20首 花間集6巻 顧夐56首 花間集6・7巻 孫光憲47首 花間集7・8巻  
  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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菩薩蠻 五首其一

(妃嬪も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。

      寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。

      碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。

      即此是高唐,掩屏秋夢長。

すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻 其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

      門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

      薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

      握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

菩薩蠻 其三

(寵愛を受けているときと同じように、春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんでもらおうと、そうじもさせずにまっている。今は独りで春が過ぎようとしている)

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

寝殿の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているが、人に掃除はさせない。焚くお香は時折この中庭に漂い満ちていて春の風も終わって、夏の風に変わろうとしている。

      春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに暗い気持ちになってどうしようもない。このまま寵愛を失ったままでは、この後宮での生涯は何処いくやら、どうしたらいいのやら、だれに尋ねたらいいのか。

      曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けの楼閣の閨には六曲の屏風と團扇を飾っていて、眉も瀟湘八景の絵の山々も遠く影を薄くする。

      爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちになることなどあろうか、又寵愛を近いうちにあるだろう、もうしばらくするとあるのかと考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか。

(菩薩蠻          其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

 

菩薩蠻  其四

           青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

           一隻木蘭舡,波平遠浸天。

           扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

           紅日欲沉西,煙中遙解觽。

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

(菩薩蠻          其の四)

青巖 碧洞 朝雨を經り,隔花 相喚して南溪 去り。

一隻 木蘭の舡,波平らかにして 遠く天に浸む。

扣舡 翡翠驚き,嫩玉 香臂に擡す。

紅日 西に沉まんと欲し,煙中 遙か觽を解く。

             

菩薩蠻    其五

              木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

              銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

              客帆風正急,茜袖隈牆立。

              極浦幾迴頭,煙波無限愁。

 

 

『菩薩蠻  其四』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其四

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

一隻木蘭舡,波平遠浸天。

扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

紅日欲沉西,煙中遙解觽。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の四)

青巖 碧洞 朝雨を經り,隔花 相喚して南溪 去り。

一隻 木蘭の舡,波平らかにして 遠く天に浸む。

扣舡 翡翠驚き,嫩玉 香臂に擡す。

紅日 西に沉まんと欲し,煙中 遙か觽を解く。

 

(現代語訳)

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。巫女の化身の朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると流れの先、遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

 

(訳注)

菩薩蠻其四

(成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色と美人に見とれた様子を詠う。)

 

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其一

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

即此是高唐,掩屏秋夢長。

●△△●△○●  ○○●●○○●

○●△○○  ○○●●○

●○△??  ○●○○●

●●●○○  ●△○△△

双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

握手送人歸,半拖金縷衣。

○△○●○○●  ○○△●○?●

○●●○○  ●○○●○

●○△●●  △●○△●

●●●○○  ●△○●△

双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其三

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

春晚信沉沉,天涯何處尋。

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

爭那別離心,近來尤不禁。

●○○●○○●  △○●●○△●

○●△○○  ○○△●○

●○△●△  ○△○○●

○△●△○  ●△○△△

双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其四

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

一隻木蘭舡,波平遠浸天。

扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

紅日欲沉西,煙中遙解觽。

○○●△△○●  ●○△●○○●

●●●○○  ○○●△○

●○○●●  ●●○○●

○●●○○  ○△○●?

 

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

舟が急流に差し掛かると苔が張り付いた大きな岩があり、今度は木々の被われた洞窟を過ぎる。朝から降っていた雨が止んだ。川岸には花が離れ合って互いの綺麗さを競っている。峨嵋山を過ぎて長江の流れは進み、南渓を通過していく。

25. 南溪 四川省西部地図 DE―1 成都から乗り合わせの舟に乗って長江を下る。重慶に立ち寄るまでの舟の中から見えた南渓の景色。

 

一隻木蘭舡,波平遠浸天。

一槽の木蘭の中型船は進んでゆく、川幅は広がり、波は穏やかに平坦な流れに変わると遠くの先の方では天にしみ込んでいくようだ。

26. 木蘭舡 木蘭の中型船。

 

扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

船端をたたいて詠い始めると翡翠鳥は驚いて翅をばたつかせると、舟の上の美しく若い妓女は香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

27. 扣舡 船端をたたいて船頭が舟歌を歌い始めること。王維輞川集二十首『欒家瀨』では水しぶきの音でシラサギが飛んでゆく、とある。

28. 嫩玉 美しく若い妓女。

29. 擡香臂 香りの良い肩と腕を少し高くするように動かして翡翠のまねをして可愛いい振りをする

 

紅日欲沉西,煙中遙解觽。

夕日は紅く西の山影に沈んでゆき、夕靄に煙る中を遙か先に向い謎解きのように探りながら船は進んでゆく。

30. 觽  くじり。つのぎり。紐の結び目を角でほどいたことから すなわち 掘り下げる。えくじり. 「探る 」の意味

 

 四川省西部地区略図

 

 

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12孫光憲《巻八03菩薩蠻五首其三 小庭》『花間集』355全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7047

孫光憲  菩薩蠻              其三

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。春晚信沉沉,天涯何處尋。

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。爭那別離心,近來尤不禁。

(寵愛を受けているときと同じように、春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんでもらおうと、そうじもさせずにまっている。今は独りで春が過ぎようとしている)

寝殿の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているが、人に掃除はさせない。焚くお香は時折この中庭に漂い満ちていて春の風も終わって、夏の風に変わろうとしている。

春も終ろうとするのに暗い気持ちになってどうしようもない。このまま寵愛を失ったままでは、この後宮での生涯は何処いくやら、どうしたらいいのやら、だれに尋ねたらいいのか。

朝焼けの楼閣の閨には六曲の屏風と團扇を飾っていて、眉も瀟湘八景の絵の山々も遠く影を薄くする。

心の中で攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちになることなどあろうか、又寵愛を近いうちにあるだろう、もうしばらくするとあるのかと考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか。

12孫光憲《巻八03菩薩蠻五首其三 小庭》『花間集』355全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7047

 

 
  2015年12月10日 の紀頌之5つのBlog  
  ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場  
  Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
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韓愈112《 巻九08湘中酬張十一功曹》 韓愈(韓退之) 805年貞元21年 38歳<1608> Ⅱ 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7024韓愈詩-韓愈112  
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  孟郊 張籍          
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  杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首 杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首 杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首 杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首 杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首 杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首  
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  ●薛濤の全詩 ●花間集(1巻 ●花間集(2巻 ●花間集(3巻 ●花間集(4巻 ●花間集(5巻  
  ●魚玄機全詩 ●花間集(6巻 ●花間集(7巻 ●花間集(8巻 ●花間集(9巻 ●花間集10巻  
  温庭筠66首 花間集1・2巻 皇甫松11首 花間集二巻 韋莊47首 花間集二巻 薛昭蘊19首 花間集三巻 牛嶠31首 花間集三・四巻 張泌27首 花間集四巻  
  毛文錫31首 花間集5巻 牛希濟11首 花間集5巻 欧陽烱17首 花間集5・6巻 和凝20首 花間集6巻 顧夐56首 花間集6・7巻 孫光憲47首 花間集7・8巻  
  魏承班15首 花間集8・9巻 鹿虔扆6首 花間集9巻 閻選8首 花間集9巻 尹鶚6首 花間集9巻 毛熙震29首 花間集9・10巻 李珣39首 花間集10巻  
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菩薩蠻 五首其一

(妃嬪も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。

      寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。

      碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。

      即此是高唐,掩屏秋夢長。

すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻 其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

      門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

      薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

      握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

菩薩蠻 其三

(寵愛を受けているときと同じように、春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんでもらおうと、そうじもさせずにまっている。今は独りで春が過ぎようとしている)

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

寝殿の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているが、人に掃除はさせない。焚くお香は時折この中庭に漂い満ちていて春の風も終わって、夏の風に変わろうとしている。

      春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに暗い気持ちになってどうしようもない。このまま寵愛を失ったままでは、この後宮での生涯は何処いくやら、どうしたらいいのやら、だれに尋ねたらいいのか。

      曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けの楼閣の閨には六曲の屏風と團扇を飾っていて、眉も瀟湘八景の絵の山々も遠く影を薄くする。

      爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちになることなどあろうか、又寵愛を近いうちにあるだろう、もうしばらくするとあるのかと考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか。

(菩薩蠻          其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

             

菩薩蠻    其四

青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

              一隻木蘭舡,波平遠浸天。

              扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

              紅日欲沉西,煙中遙解觽。

             

菩薩蠻    其五

              木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

              銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

              客帆風正急,茜袖隈牆立。

              極浦幾迴頭,煙波無限愁。

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『菩薩蠻  其三』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其三

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

春晚信沉沉,天涯何處尋。

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

爭那別離心,近來尤不禁。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の三)

小庭 花落ち 人 掃く無し,疎香 滿地 東風 老ゆ。

春晚 信 沉沉,天涯 何處にか尋ねん。

曉堂 屏 六扇あり,眉 共に 湘山 遠し。

爭 那ぞ別離の心あらん,近來 尤も禁じえず。

 

 

(現代語訳)

(寵愛を受けているときと同じように、春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんでもらおうと、そうじもさせずにまっている。今は独りで春が過ぎようとしている)

寝殿の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているが、人に掃除はさせない。焚くお香は時折この中庭に漂い満ちていて春の風も終わって、夏の風に変わろうとしている。

春も終ろうとするのに暗い気持ちになってどうしようもない。このまま寵愛を失ったままでは、この後宮での生涯は何処いくやら、どうしたらいいのやら、だれに尋ねたらいいのか。

朝焼けの楼閣の閨には六曲の屏風と團扇を飾っていて、眉も瀟湘八景の絵の山々も遠く影を薄くする。

心の中で攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちになることなどあろうか、又寵愛を近いうちにあるだろう、もうしばらくするとあるのかと考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか。

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(訳注)

菩薩蠻其三

(寵愛を受けているときと同じように、春の盛りに散った花ビラを風流に楽しんでもらおうと、そうじもさせずにまっている。今は独りで春が過ぎようとしている)

 

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其一

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

即此是高唐,掩屏秋夢長。

●△△●△○●  ○○●●○○●

○●△○○  ○○●●○

●○△??  ○●○○●

●●●○○  ●△○△△

双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

握手送人歸,半拖金縷衣。

○△○●○○●  ○○△●○?●

○●●○○  ●○○●○

●○△●●  △●○△●

●●●○○  ●△○●△

双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其三

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

春晚信沉沉,天涯何處尋。

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

爭那別離心,近來尤不禁。

●○○●○○●  △○●●○△●

○●△○○  ○○△●○

●○△●△  ○△○○●

○△●△○  ●△○△△

 

小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

寝殿の中庭には咲き誇って花もみんな散り落ちているが、人に掃除はさせない。焚くお香は時折この中庭に漂い満ちていて春の風も終わって、夏の風に変わろうとしている。

18. 小庭花落無人掃 この句は、孟浩然『春暁』王維の『田園楽』と同じような景色が連想される。孟浩然『春暁』 と王維『田園楽』 kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞ブログ 1941 (02/17)

19. 東風老 春の風も終わって、夏の風に変わる

 

春晚信沉沉,天涯何處尋。

春も終ろうとするのに暗い気持ちになってどうしようもない。このまま寵愛を失ったままでは、この後宮での生涯は何処いくやら、どうしたらいいのやら、だれに尋ねたらいいのか。

20. 信 真。信じる心。

21. 沉沉 太陽は まるで灰がかぶさっているかのように,ぼうっと暗い.

 

曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

朝焼けの楼閣の閨には六曲の屏風と團扇を飾っていて、眉も瀟湘八景の絵の山々も遠く影を薄くする。

22. 曉堂 朝焼けに御殿の閨に、夜も眠らずもやもやと過ごしたことを「曉」の語で表現している。暁の梁となったら日が昇ってくると閨の梁から明るくなるのを確認するということで、朝まで好きな男と一緒に過ごした意味になる。

23.  眉共湘山遠 眉は峨眉山とかの山で表現するが、愁いに涙、眉が薄くなる。それは屏風に描かれた、瀟湘八景の山々が遠く薄く描かれているのと同じということ。ここは、遠くの山は遠近法で薄く描く、眉も湘水の山も遠く薄くということ。湘水の女神は《楚辞》九歌篇に歌われる2人の女神をいい。湖南省にある湘水の神とされ,また洞庭湖の水神でもあって,湖中の君山にその祠廟がある。《山海経(せんがいきよう)》に洞庭の山に住む天帝の2人の娘のことが見え,漢の《列女伝》では,この2人は尭帝の娘で舜の妃である娥皇と女英であって,舜が蒼梧で死ぬと2人は湘水に身を投げてその神になったのだとされている。湘君と湘夫人はこの2女神に比定されるが,一説には湘君は男神,湘夫人は女神で,2人は夫婦なのだともされる。

 

爭那別離心,近來尤不禁。

心の中で攻めたり、許したり、もうあきらめるかと落ち着かずにいる、でも別れる気持ちになることなどあろうか、又寵愛を近いうちにあるだろう、もうしばらくするとあるのかと考えてばかりこんな想いはいけないというのだろうか。

24. 爭 心の中で連絡のないあの人攻めたり、許したり、もうあきらめるかと葛藤する。

 

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12孫光憲《巻八02菩薩蠻五首其二 花冠》『花間集』354全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7042

孫光憲  菩薩蠻              其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。握手送人歸,半拖金縷衣。

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

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菩薩蠻 五首其一

(妃嬪も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。

      寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。

      碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。

      即此是高唐,掩屏秋夢長。

すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻 其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

      門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

      薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

      握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

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曉鶯001

『菩薩蠻  其二』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

握手送人歸,半拖金縷衣。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

(現代語訳)

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

 

(訳注)

菩薩蠻     其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

【解説】 後朝の別れを詠う。朝化粧を整える暇もなく、昨夜の化粧のまま、金刺着物を羽織らせて見送るけれど、少しでも長く寵愛を受けたいと一緒にいたいがために時間を惜しむのは、寵愛を一手に受けて、子を授かりたいというのが最大の幸せであるということであるから。。

 

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其一

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

即此是高唐,掩屏秋夢長。

●△△●△○●  ○○●●○○●

○●△○○  ○○●●○

●○△??  ○●○○●

●●●○○  ●△○△△

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

握手送人歸,半拖金縷衣。

○△○●○○●  ○○△●○?●

○●●○○  ●○○●○

●○△●●  △●○△●

●●●○○  ●△○●△

 

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

12. 花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

13. 翼 ここでは羽を羽ばたかせること。「鶏鳴狗盗」とあるように鶏が鳴くと関所を開けて通行させる、夜が明けると朝賀が始まる、鳥がはばたく音で飛いうことで急いで帰り支度をすることをいう。女は帰したくないと思っているのに鳥のはばたきに邪魔をされる。すると「東方澹白連䆫色」東の窓が白じんで来ることで、別れを予感する女の焦りを表現する。

 

門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

14. 早鶯聲 早春ではあるが、朝まだ期に鶯が鳴いて春を告げる。鶏が鳴き、すると、鶯が鳴きが啼きはじめる。鶯聲は早春を意味する。これから盛春になろうというのに別れなければいけないのか、という意味になる。

15. 残月 名残月。(20日前後から下弦月までの月をいう)夜明けの空に懸かる月。その日以降の別れを予見する月を意味する。

 

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

16. 依旧鉛華在 昨夜の化粧がそのままに残っていること。依旧は、もとのまま、以前どおり。旧は仲睦まじくしていたころのこと。鈆華は白粉。

 

握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

17. 半拖金縷衣 拖:(1) 引く,引きずる用绳子拖縄で引っ張る.把孩子拖进屋子供を引きずって部屋に入れる.(2) 体の後に垂らす。身后拖着一条大辫子背中に長いお下げの髪を垂らしている.(3) 引き延ばす。拖日子日を延ばす.

海棠花101
 

 

 

 

 

 

 

 

孫光憲 菩薩蠻五首  【字解】

 

1.   月華 月光。

2.   水籠もり/水隠り 《「みこもり」とも》1 水中に隠れること。2 心に秘めていること。

3.   香砌 香はお香の香りが残る範囲の砌。閨の軒下の石畳、みぎり。妃嬪の樓殿、愛妾の家。

4.   金環 門扉の表面に付けられた金鋪(ノッカーの敷金)にふくませる金輪(ノッカー)。

5.   砕撼 ここでは門扉を閉じたままにしていて風に揺れて金鎧が揺れて細かな音を立てること。砕は誰も来ず静かな中で音が砕ける。撼は門扉が風に揺れる。

6.   門初閉 開いていた門戸をはじめて閉じること

7.   寒影墮高簷 作者、女性がどの位置にいてその目線はどこにあるかによってこの解釈は異なる。御殿の門が見えるところで、あるから平地、砌に立っている。したがって、月が高く庇の影が庭の地面に影を落としている。月があまりに明るいから、すべてが冷たくみえる。だから、すだれをおろそうと思ったということである。別に、高い庇の寒々とした影が地に落ちる。なお別の解釈として、寒々とした月の光が高い庇に射している、また、月光でできた寒々とした物影が高い庇の上に落ちている、と解する説もある。

8.   碧煙 ここでは薫く香の煙は情交を連想させる。

9.   裊裊 /嫋嫋 ①なよなよとして風情のあるさま。しなやかなさま。たおやかなさま。②音や声が細く長く続くさま。③風がそよそよと吹くさま。

10. 紅戰燈花笑 灯火の紅い炎が細かに揺れて灯芯がぱちぱちとする。この二句は、男女のまじりあいを連想させる。

11. 高唐 宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。高唐の夢/巫山の夢:男女の交わり、情交のたとえ。

【2】    花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

【3】   翼 ここでは羽を羽ばたかせること。「鶏鳴狗盗」とあるように鶏が鳴くと関所を開けて通行させる、夜が明けると朝賀が始まる、鳥がはばたく音で飛いうことで急いで帰り支度をすることをいう。女は帰したくないと思っているのに鳥のはばたきに邪魔をされる。すると「東方澹白連䆫色」東の窓が白じんで来ることで、別れを予感する女の焦りを表現する。

【4】    早鶯聲 早春ではあるが、朝まだ期に鶯が鳴いて春を告げる。鶏が鳴き、すると、鶯が鳴きが啼きはじめる。鶯聲は早春を意味する。これから盛春になろうというのに別れなければいけないのか、という意味になる。

【5】    残月 名残月。(20日前後から下弦月までの月をいう)夜明けの空に懸かる月。その日以降の別れを予見する月を意味する。

【6】    依旧鉛華在 昨夜の化粧がそのままに残っていること。依旧は、もとのまま、以前どおり。旧は仲睦まじくしていたころのこと。鈆華は白粉。

【7】    半拖金縷衣 拖:(1) 引く,引きずる用绳子拖縄で引っ張る.把孩子拖进屋子供を引きずって部屋に入れる.(2) 体の後に垂らす。身后拖着一条大辫子背中に長いお下げの髪を垂らしている.(3) 引き延ばす。拖日子日を延ばす.

12孫光憲《巻八01菩薩蠻五首其一 月華》『花間集』353全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7037

孫光憲  菩薩蠻           五首其一

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。        寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。         即此是高唐,掩屏秋夢長。

(女も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

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花間集卷第八 四十九首

 

 

 

 

 

 孫少監光憲四十七首

 

 

菩薩蠻五首

河瀆神二首

虞美人二首

 

 

後庭花二首

生查子三首

臨江仙二首

 

 

酒泉子三首

清平樂二首

更漏子二首

 

 

女冠子二首

風流子三首

定西番二首

 

 

河滿子一首

玉蝴蝶一首

八拍蠻一首

 

 

竹枝一首

思帝鄉一首

上行盃二首

 

 

謁金門一首

思越人二首

陽柳枝四首

 

 

望梅花一首

漁歌子二首

 

 

 

 

 

 

 

 

 魏太尉承班二首

 

 

菩薩蠻二首

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

              孫光憲

             

菩薩蠻 五首其一

(妃嬪も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。

      寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。

      碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。

      即此是高唐,掩屏秋夢長。

すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

             

菩薩蠻    五首其二

              花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連䆫色。

              門外早鶯聲,背樓殘月明。

              薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

              握手送人歸,半拖金縷衣。

             

菩薩蠻    五首其三

              小庭花落無人掃,疎香滿地東風老。

              春晚信沉沉,天涯何處尋。

              曉堂屏六扇,眉共湘山遠。

              爭那別離心,近來尤不禁。

             

菩薩蠻    五首其四

              青巖碧洞經朝雨,隔花相喚南溪去。

              一隻木蘭舡,波平遠浸天。

              扣舡驚翡翠,嫩玉擡香臂。

              紅日欲沉西,煙中遙解觽。

             

菩薩蠻    五首其五

              木綿花映叢祠小,越禽聲裏春光曉。

              銅皷與蠻歌,南人祈賽多。

              客帆風正急,茜袖隈牆立。

              極浦幾迴頭,煙波無限愁。

DCF00118
 

 

『菩薩蠻  其一』 現代語訳と訳註

(本文) 菩薩蠻            其一

              月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

              寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

              碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

              即此是高唐,掩屏秋夢長。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

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12孫光憲《巻七50河傳四首其四風》『花間集』352全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7032

孫光憲  河傳四首 其四 

風颭,波斂。團荷閃閃,珠傾露點。木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。身已歸,心不歸。斜暉,遠汀鸂鶒飛。

(古くからある採蓮曲をうたう呉越の娘たちも、襄陽大堤曲をうたう女たちも男と一緒に暮らせば、そのままずっといっしょにいたいとおもう、離れがたく思うのは当然のことだ。)

晩春のそよ風が水面を震わせ、浪も寄せてくる。丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の國で美女は越の国で艶めかしさをはってしたというけれど、やっぱり、この地方の女性は蓮根の花のような頬はあかく顔を照らしている。襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ないだから、日差しが傾く頃になると、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

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  2015年12月7日 の紀頌之5つのBlog  
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  index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首 index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首 index-13 821年~822年 55歳 22首 index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首 韓愈 哲学・儒学「五原」 賦・散文・上奏文・碑文など  
  孟郊 張籍          
  ●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"  
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  毛文錫31首 花間集5巻 牛希濟11首 花間集5巻 欧陽烱17首 花間集5・6巻 和凝20首 花間集6巻 顧夐56首 花間集6・7巻 孫光憲47首 花間集7・8巻  
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河傳四首其一

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

 

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が腳し,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

河傳四首 其二

(春の盛りに江南の画舟の遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、戦国には美女で争い、六朝では川を挟んで呼び合った、詞箋を作ったのも官妓だった、これによって次の世にも伝えられてゆくことであろう。)

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれをつつむ様に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り画船は楚の国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

襞花牋,豔思牽。

ひだひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためて、魅力のある気持ちで引き付ける。

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女たちは官妓であり、世の人は共にこの詩を伝えてきたし、これからも伝えられていくだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

河傳四首 其三

(少し前の春は、行楽、酒宴と、この離宮で華やかな日を過ごした、豪華な家にも、春も終るように寵愛は失われるとさびしいひびを過ごすよりない)

花落,煙薄,謝家池閣。

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」は豪邸の池のほとりの故事のような離宮の楼閣にすごす。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

寂寞とした中に春も深まり、色艶雙絶の美女は心配事が少しあるのか眉をひそめ、思いを小声で一人語をつぶやく。

沾襟,無人知此心。

涙は襟を濡らすけれど、この心のうちを知る人はだれもいない。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて灰だけが、もう近頃ずっと焚かれたこともなく冷ややかなままで、簾を下ろしたままで日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

晚來天,空悄然。

行楽も酒宴もなく、春も終わる夕刻になるというのに、空虚、うち萎れてしまう。

孤眠,枕檀雲髻偏。

それからは独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(河傳四首其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

河傳四首 其四

(古くからある採蓮曲をうたう呉越の娘たちも、襄陽大堤曲をうたう女たちも男と一緒に暮らせば、そのままずっといっしょにいたいとおもう、離れがたく思うのは当然のことだ。)

風颭,波斂。

晩春のそよ風が水面を震わせ、浪も寄せてくる。

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の國で美女は越の国で艶めかしさをはってしたというけれど、やっぱり、この地方の女性は蓮根の花のような頬はあかく顔を照らしている。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

だから、日差しが傾く頃になると、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか吳は娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

 

 

『河傳四首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

(下し文)

(河傳四首其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか吳は娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

 

(現代語訳)

(古くからある採蓮曲をうたう呉越の娘たちも、襄陽大堤曲をうたう女たちも男と一緒に暮らせば、そのままずっといっしょにいたいとおもう、離れがたく思うのは当然のことだ。)

晩春のそよ風が水面を震わせ、浪も寄せてくる。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の國で美女は越の国で艶めかしさをはってしたというけれど、やっぱり、この地方の女性は蓮根の花のような頬はあかく顔を照らしている。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

だから、日差しが傾く頃になると、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

 

 

(訳注)

河傳四首其四

(古くからある採蓮曲をうたう呉越の娘たちも、襄陽大堤曲をうたう女たちも男と一緒に暮らせば、そのままずっといっしょにいたいとおもう、離れがたく思うのは当然のことだ。)

採蓮歌の季節を思い詠う。この歌は蓮の花を採り、そして後には蓮の実や菱のみを採る、若い女性が歌を唄いながら摘み取ってゆく、それを若い男たちが土手で眺めるという光景が浮かばれる。後宮では、どの大きな池の蓮を宮女たちが採蓮歌を歌って,踊るのである。それを見ながら、呉越戦争の西施をおっもい、襄陽の大堤曲

 

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。河傳四首 其一は双調五十一字、前段二十六字七句二平韻五仄韻、後段二十六字六句四平韻五仄韻で、②❷❹❹③❻❺/❼❸❺③③②⑤の詞形をとる。

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

 “ / ”

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

●○  ○● ●○○△  △○○●

●△○  △△●○○● △○△△●

△○●●△○● ○○●  △●△○●

●△△  ○●○ △△  ○○●●△

河傳四首其二。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❷❷❹❹❼❷❺/❼❸❺③③②⑤の詞形をとる。

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

 “ / ”  

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。成篇,官娥相與傳。

●△  ○● ?○△△  △△●●

●○○●●●  ●● ○○○●●

○○●●△△● ○○●  ○●○○●

●○○  ●△△ ○○  ○○△△△

河傳四首 其三。双調五十一字、前段三十三字八句二平韻五仄韻、後段二十八字七句四平韻三仄韻で、❷❷❹❹❼②⑤/❼❸❺③③②⑤の詞形をとる。

河傳四首 其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

 “ / ”  

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

○●  ○● ●○○●

●●○△ ●△△●●○△

△○ ○○○●○

●○○●○○△ ○△●  ○●○○●

●△○  △●○

○○  △○○●△

双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❹4❹❸❻❺/❼3❺❸❸❷❺の詞形をとる。

河傳四首其四

風颭,波斂。團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。

 “ / ”  

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。斜暉,遠汀鸂鶒飛。

△●  ○● ○△●●  ○○●●

●○○●  △●○○●● ●○○●△

●△△●○○● ○○●  ●●○△●

○●○  ○△○ ○○  ●△○?○

 

風颭,波斂。

晩春のそよ風が水面を震わせ、浪も寄せてくる。

⑴   颭 風が(ものを)ふるわせる. 

⑵   斂【れん】1 引きしめ集める。取り入れる。「苛斂(かれん)・聚斂(しゅうれん)」2 引きしまる。「収斂」3 死体を棺に収める。


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12孫光憲《巻七49河傳四首其三花》『花間集』351全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7027

孫光憲  河傳四首 其三

花落,煙薄,謝家池閣。寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。晚來天,空悄然。孤眠,枕檀雲髻偏。

(少し前の春は、行楽、酒宴と、この離宮で華やかな日を過ごした、豪華な家にも、春も終るように寵愛は失われるとさびしいひびを過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」は豪邸の池のほとりの故事のような離宮の楼閣にすごす。寂寞とした中に春も深まり、色艶雙絶の美女は心配事が少しあるのか眉をひそめ、思いを小声で一人語をつぶやく。涙は襟を濡らすけれど、この心のうちを知る人はだれもいない。奇麗な宝飾の香炉には火も消えて灰だけが、もう近頃ずっと焚かれたこともなく冷ややかなままで、簾を下ろしたままで日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。行楽も酒宴もなく、春も終わる夕刻になるというのに、空虚、うち萎れてしまう。それからは独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

12孫光憲《巻七49河傳四首其三花》『花間集』351全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7027

 

 
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河傳四首其一

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

 

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が腳し,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

河傳四首 其二

(春の盛りに江南の画舟の遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、戦国には美女で争い、六朝では川を挟んで呼び合った、詞箋を作ったのも官妓だった、これによって次の世にも伝えられてゆくことであろう。)

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれをつつむ様に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り画船は楚の国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

襞花牋,豔思牽。

ひだひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためて、魅力のある気持ちで引き付ける。

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女たちは官妓であり、世の人は共にこの詩を伝えてきたし、これからも伝えられていくだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

河傳四首 其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(少し前の春は、行楽、酒宴と、この離宮で華やかな日を過ごした、豪華な家にも、春も終るように寵愛は失われるとさびしいひびを過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」は豪邸の池のほとりの故事のような離宮の楼閣にすごす。

寂寞とした中に春も深まり、色艶雙絶の美女は心配事が少しあるのか眉をひそめ、思いを小声で一人語をつぶやく。

涙は襟を濡らすけれど、この心のうちを知る人はだれもいない。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて灰だけが、もう近頃ずっと焚かれたこともなく冷ややかなままで、簾を下ろしたままで日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

行楽も酒宴もなく、春も終わる夕刻になるというのに、空虚、うち萎れてしまう。

それからは独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(河傳四首其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

河傳四首 其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

興慶宮002

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12孫光憲《巻七48河傳四首其二柳》『花間集』350全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7022

孫光憲  河傳四首 其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の画舟の遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、戦国には美女で争い、六朝では川を挟んで呼び合った、詞箋を作ったのも官妓だった、これによって次の世にも伝えられてゆくことであろう。)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれをつつむ様に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。鳳凰の絵が描かれた飾り画船は楚の国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。ひだひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためて、魅力のある気持ちで引き付ける。その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女たちは官妓であり、世の人は共にこの詩を伝えてきたし、これからも伝えられていくだろう。

12孫光憲《巻七48河傳四首其二柳》『花間集』350全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7022

 

 

 

花間集  河傳 十八首

溫庭筠

《巻二09河傳三首其一》江畔,相喚。曉妝仙,仙景箇女採蓮。請君莫向那岸邊,少年,好花新滿舡。紅袖搖曳逐風暖,垂玉腕,腸向柳絲斷。浦南歸,浦北歸,莫知,晚來人已稀。

溫庭筠

《巻二10河傳三首其二》湖上,閑望。雨蕭蕭,煙浦花橋路遙。謝娘翠娥愁不消,終朝,夢魂迷晚潮。蕩子天涯歸棹遠,春已晚,鶯語空腸斷。若耶溪,溪水西,柳堤,不聞郎馬嘶。

溫庭筠

《巻二11河傳三首其三》同伴,相喚。杏花稀,夢裡每愁依違。仙客一去鷰已飛,不歸,淚痕空滿衣。天際雲鳥引晴遠,春已晚,煙靄渡南苑。雪梅香,柳帶長,小娘,轉令人意傷。

韋莊

《巻三05河傳三首其一》何處,煙雨,隋堤春暮。柳色葱蘢,畫橈金縷,翠旗高颭香風,水光融。青娥殿腳春粧媚,輕雲裡,綽約司花妓。江都宮闕,清淮月映迷樓,古今愁。

韋莊

《巻三06河傳三首其二》春晚,風暖,錦城花滿。狂殺遊人,玉鞭金勒,尋勝馳驟輕塵,惜良晨。翠娥爭勸臨邛酒,纖纖手,拂面垂絲柳。歸時煙裏,鐘皷正是黃昏,暗銷魂。

韋莊

《巻三07河傳三首其三》錦浦,春女,繡衣金縷。霧薄雲輕,花深柳暗,時節正是清明,雨初晴。玉鞭魂斷煙霞路,鶯鶯語,一望巫山雨。香塵隱映,遙見翠檻紅樓,黛眉愁。

張泌

《巻四40河傳二首其一》渺莽雲水,惆悵暮帆,去程迢遞。夕陽芳艸,千里萬里,鴈聲無限起。夢魂悄斷煙波裡,心如醉。相見何處是,錦屏香冷無睡,被頭多少淚。

張泌

《巻四41河傳二首其二》紅杏,交枝相映,密密濛濛。一庭濃豔倚東風,香融,透簾櫳。斜陽似共春光語,蝶爭舞,更引流鶯妬。魂銷千片玉樽前,神仙,瑤池醉暮天。

顧夐

《巻六40河傳三首其一》鷰颺,晴景。小䆫屏暖,鴛鴦交頸。菱花掩卻翠鬟欹,慵整。海棠簾外影。繡幃香斷金鸂鶒,無消息,心事空相憶。東風,春正濃。愁紅,淚痕衣上重。

顧夐

《巻六41河傳三首其二》曲檻,春晚。碧流紋細,綠楊絲軟,露花,鮮杏,枝繁鶯囀,野蕪似剪。直是人間到天上,堪遊賞,醉眼疑屏障,對池塘,惜韶光,斷腸為花須盡狂。

顧夐

《巻六42河傳三首其三》棹舉,舟去,波光渺渺,不知何處,岸花汀草共依依,雨微,鷓鴣相逐飛。天涯離恨江聲咽,啼猿切,此意向誰說。倚蘭橈,無憀。魂消,小爐香欲焦。

孫光憲

《巻七47河傳四首其一》太平天子,等閑遊戲,疏河千里。柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

孫光憲

《巻七48河傳四首其二》柳拖金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。襞花牋,豔思牽。成篇,官娥相與傳。

孫光憲

《巻七49河傳四首其三》花落,煙薄,謝家池閣。寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。沾襟,無人知此心。玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

孫光憲

《巻七50河傳四首其四》風颭,波斂。團荷閃閃,珠傾露點。木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。身已歸,心不歸。斜暉,遠汀鸂鶒飛。

閻選

《巻九27河傳 一首》  秋雨,秋雨,無晝無夜,滴滴霏霏。暗燈涼簟怨分離,妖姬,不勝悲。西風稍急喧䆫竹,停又續,膩臉懸雙玉。幾迴邀約鴈來時,違期,鴈歸,人不歸。

李珣

《巻十49河傳二首其一》  去去,何處?迢迢巴楚,山水相連。朝雲暮雨,依舊十二峯前,猿聲到客舡。愁腸豈異丁香結?因離別,故國音書絕。想佳人花下,對明月春風,恨應同。

李珣

《巻十50河傳二首其二》  春暮,微雨。送君南浦,愁斂雙蛾。落花深處,啼鳥似逐離歌,粉檀珠淚和。臨流更把同心結,情哽咽,後會何時節?不堪迴首,相望已隔汀洲,艣聲幽。

 

 

河傳四首其一

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

 

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が腳し,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

河傳四首 其二

(春の盛りに江南の画舟の遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、戦国には美女で争い、六朝では川を挟んで呼び合った、詞箋を作ったのも官妓だった、これによって次の世にも伝えられてゆくことであろう。)

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれをつつむ様に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り画船は楚の国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

襞花牋,豔思牽。

ひだひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためて、魅力のある気持ちで引き付ける。

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女たちは官妓であり、世の人は共にこの詩を伝えてきたし、これからも伝えられていくだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

宮島(10)
 

 

『河傳四首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

 

(下し文)

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

 

(現代語訳)

(春の盛りに江南の画舟の遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、戦国には美女で争い、六朝では川を挟んで呼び合った、詞箋を作ったのも官妓だった、これによって次の世にも伝えられてゆくことであろう。)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれをつつむ様に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り画船は楚の国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ひだひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためて、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女たちは官妓であり、世の人は共にこの詩を伝えてきたし、これからも伝えられていくだろう。

隋堤002
 

(訳注)

河傳四首其二

(春の盛りに江南の画舟の遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、戦国には美女で争い、六朝では川を挟んで呼び合った、詞箋を作ったのも官妓だった、これによって次の世にも伝えられてゆくことであろう。)

 

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。河傳四首 其一は双調五十一字、前段二十六字七句二平韻五仄韻、後段二十六字六句四平韻五仄韻で、②❷❹❹③❻❺/❼❸❺③③②⑤の詞形をとる。

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

 “ / ”

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

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河傳四首其二。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❷❷❹❹❼❷❺/❼❸❺③③②⑤の詞形をとる。

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

 “ / ”  

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。成篇,官娥相與傳。

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12孫光憲《巻七47河傳四首其一太》『花間集』349全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7017

孫光憲  河傳四首其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

12孫光憲《巻七47河傳四首其一太》『花間集』349全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7017


 
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花間集  河傳 十八首

溫庭筠

《巻二09河傳三首其一》江畔,相喚。曉妝仙,仙景箇女採蓮。請君莫向那岸邊,少年,好花新滿舡。紅袖搖曳逐風暖,垂玉腕,腸向柳絲斷。浦南歸,浦北歸,莫知,晚來人已稀。

溫庭筠

《巻二10河傳三首其二》湖上,閑望。雨蕭蕭,煙浦花橋路遙。謝娘翠娥愁不消,終朝,夢魂迷晚潮。蕩子天涯歸棹遠,春已晚,鶯語空腸斷。若耶溪,溪水西,柳堤,不聞郎馬嘶。

溫庭筠

《巻二11河傳三首其三》同伴,相喚。杏花稀,夢裡每愁依違。仙客一去鷰已飛,不歸,淚痕空滿衣。天際雲鳥引晴遠,春已晚,煙靄渡南苑。雪梅香,柳帶長,小娘,轉令人意傷。

韋莊

《巻三05河傳三首其一》何處,煙雨,隋堤春暮。柳色葱蘢,畫橈金縷,翠旗高颭香風,水光融。青娥殿腳春粧媚,輕雲裡,綽約司花妓。江都宮闕,清淮月映迷樓,古今愁。

韋莊

《巻三06河傳三首其二》春晚,風暖,錦城花滿。狂殺遊人,玉鞭金勒,尋勝馳驟輕塵,惜良晨。翠娥爭勸臨邛酒,纖纖手,拂面垂絲柳。歸時煙裏,鐘皷正是黃昏,暗銷魂。

韋莊

《巻三07河傳三首其三》錦浦,春女,繡衣金縷。霧薄雲輕,花深柳暗,時節正是清明,雨初晴。玉鞭魂斷煙霞路,鶯鶯語,一望巫山雨。香塵隱映,遙見翠檻紅樓,黛眉愁。

張泌

《巻四40河傳二首其一》渺莽雲水,惆悵暮帆,去程迢遞。夕陽芳艸,千里萬里,鴈聲無限起。夢魂悄斷煙波裡,心如醉。相見何處是,錦屏香冷無睡,被頭多少淚。

張泌

《巻四41河傳二首其二》紅杏,交枝相映,密密濛濛。一庭濃豔倚東風,香融,透簾櫳。斜陽似共春光語,蝶爭舞,更引流鶯妬。魂銷千片玉樽前,神仙,瑤池醉暮天。

顧夐

《巻六40河傳三首其一》鷰颺,晴景。小䆫屏暖,鴛鴦交頸。菱花掩卻翠鬟欹,慵整。海棠簾外影。繡幃香斷金鸂鶒,無消息,心事空相憶。東風,春正濃。愁紅,淚痕衣上重。

顧夐

《巻六41河傳三首其二》曲檻,春晚。碧流紋細,綠楊絲軟,露花,鮮杏,枝繁鶯囀,野蕪似剪。直是人間到天上,堪遊賞,醉眼疑屏障,對池塘,惜韶光,斷腸為花須盡狂。

顧夐

《巻六42河傳三首其三》棹舉,舟去,波光渺渺,不知何處,岸花汀草共依依,雨微,鷓鴣相逐飛。天涯離恨江聲咽,啼猿切,此意向誰說。倚蘭橈,無憀。魂消,小爐香欲焦。

孫光憲

《巻七47河傳四首其一》太平天子,等閑遊戲,疏河千里。柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

孫光憲

《巻七48河傳四首其二》柳拖金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。襞花牋,豔思牽。成篇,官娥相與傳。

孫光憲

《巻七49河傳四首其三》花落,煙薄,謝家池閣。寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。沾襟,無人知此心。玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

孫光憲

《巻七50河傳四首其四》風颭,波斂。團荷閃閃,珠傾露點。木蘭舟上,何處吳娃越豔,藕花紅照臉。大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。身已歸,心不歸。斜暉,遠汀鸂鶒飛。

閻選

《巻九27河傳 一首》  秋雨,秋雨,無晝無夜,滴滴霏霏。暗燈涼簟怨分離,妖姬,不勝悲。西風稍急喧䆫竹,停又續,膩臉懸雙玉。幾迴邀約鴈來時,違期,鴈歸,人不歸。

李珣

《巻十49河傳二首其一》  去去,何處?迢迢巴楚,山水相連。朝雲暮雨,依舊十二峯前,猿聲到客舡。愁腸豈異丁香結?因離別,故國音書絕。想佳人花下,對明月春風,恨應同。

李珣

《巻十50河傳二首其二》  春暮,微雨。送君南浦,愁斂雙蛾。落花深處,啼鳥似逐離歌,粉檀珠淚和。臨流更把同心結,情哽咽,後會何時節?不堪迴首,相望已隔汀洲,艣聲幽。

 

 

河傳四首其一

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

 

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が腳し,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

海棠花101
 

 

『河傳四首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

 

(下し文)

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が腳し,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

(現代語訳)

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。

柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。

春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

 木蓮0005

(訳注)

河傳四首其一

(天子次第で太平がある、寵愛を施すのも、施政に愛撫の心で行うのも、大河が流れていくことと同じであり、行楽、舟遊びを夜を徹して行うのも、天子の年中行事なのである。)

 

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。河傳四首 其一は双調五十一字、前段二十六字七句二平韻五仄韻、後段二十六字六句四平韻五仄韻で、②❷❹❹③❻❺/❼❸❺③③②⑤の詞形をとる。

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

 “ / ”

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

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太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下が太平であるのは、天子が、長閑に過ごし、厳かに遊び戯れ、そんなことは黄河が千里先まで流れて行くようなものだ。

⑴   太平・天子 太平という世は天子次第である。天子の施政は大河のようにすることである。

⑵   等閑 物事を軽くみて、いいかげんに扱うこと。なおざり。

⑶   疏河千里 天の地から流れて来る大河、黄河の流れは千里先まで続く。川の流れは東にながれる。川の流れは低い方に流れてゆき千里先まで流れて行く、そうしたことは常識なのだ。

⑷   疏河:天の地から流れて来る大河。湖沼や河川を水源として灌漑,給水,舟運のために,あるいは排水のために,新たに土地を切り開いて通水させることおよびその人工水路、大きな河川をいう。

 

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳は枝を糸のように垂らし、淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れているころには、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

⑸    淥波春水 増水して川の水嵩は上がっているが、雪解け水なので浸みきっていることをいう。

⑹    長淮 中国四大河川の長江と淮河で、長江から運河を経て淮河に入る大河の廣い隆起をいう。

 

如花殿腳三千女,爭雲雨,何處留人住?

この花の御殿には三千人の宮女が仕えている。「朝雲暮雨」の寵愛を得ようと妃賓のあらそいがある、寵愛は誰なのか、どの御殿なのか、天子はどこにとどまっているのか。

⑺   三千女 杜甫はかつて《観公孫大娘弟子舞剣器行井序》「先帝の侍女八千人」(「公孫大娘が弟子の剣器を舞うを観る行」)と詠い、白居易もまた《長恨歌》」「後宮の佳麗三千人」と言った。これらは決して詩人の誇張ではなく、唐代の宮廷女性は、実際はこの数字をはるかに越えていた。唐の太宗の時、李百薬は上奏して「無用の宮人は、ややもすれば数万に達する」(『全唐文』巻一四二、李百薬「宮人を放つを請うの封事」)といった。『新唐書』の「官者伝」上に、「開元、天宝中、宮嬪はおおよそ四万に至る」と記されている。後者は唐代の宮廷女性の人数に関する最高の具体的な数字であり、まさに盛唐の風流天子玄宗皇帝時代のものである。宋代の人洪邁は、この時期は漢代以来、帝王の妃妾の数が最も多かった時代であるといっている(『容斎五筆』巻三「開元宮嬪」)。うまい具合に、この時期の女性の総人口は先に紹介した数字 - およそ二千六百余万であるから、四万余人とすれば、じつに全女性人口の六百分の一を占める。つまり、女性六百人ごとに一人が宮廷に入ったことになる。唐末になり、国土は荒れ、国勢は衰えたが、いぜんとして「六宮(後宮)の貴・賤の女性は一万人を減らない」(『資治通鑑』巻二七三、後唐の荘宗同光三年)という状態だった。この驚くべき数字の陰で、どのくらい多くの「曠夫怨女」(男やもめと未婚の老女)を造り出したことか計り知れない。唐末の詩人曹鄴が慨嘆して「天子 美女を好み、夫婦 双を成さず」(「捕漁謡」)と詠ったのも怪しむに足りない。

⑻   爭雲雨 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

 

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

 

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

春から夏には、錦の帆柱に帆に風を受けて、舟遊びが、花霞のただようその際には紅い花が咲き、花の宴は夜まで続き、かがり火は空を染めていて、天子の魂は迷ってしまって誰を寵愛するのか、そうした中で、天子は天下国家の安寧のために心を掛けられるのである。

⑼   錦帆風 宮中における舟遊びで錦の帆を張った船

⑽   煙際紅 夕靄のただようその際には紅い牡丹の花が咲く。

⑾   燒空 かがり火に赤く染まった空。

⑿   大業中 大きな仕事をすること。天子の後宮での生活は、一般の者とはかけ離れたものであること、仙郷、天空の生活をしてこそ太平である呂氏、そうした中で、天下国家の大業がなされるとされた、つつましい生活は御法度であった。

 

 

三千女 の補足

宮廷は小社会であり、宮人の中にも身分の高下貴賎があり、また様々な等級があった。后妃たちに「内官」 の制度があったように、宮人たちには「宮官」 の制度があった。宮官と内官を比較してみると、品階の上で差があったばかりでなく、いくらかの本質的な区別があったようだ。つまり、内官は官と称したが身分上は妃嬪の身分に属すべきもの、つまり皇帝の妾でもあったが、宮官にそうした身分はなく、ただ宮中の各種の事務を司る職員にすぎなかった。当然、これはあくまで身分上のことに過ぎず、彼女たちと皇帝の実際の関係に何ら影響しないことは、ちょうど主人と家碑の関係と同じである。

 

宮官は宮人の最上層にある人々であり、後宮のさまざまな部局に属する職員であった。唐朝の後宮には六局(尚宮局、尚儀局、尚服局、尚食局、尚寝局、尚功局)があり、宮中のすべての事務を管理していた。六局の各首席女官の尚宮、尚儀、尚服、尚食、尚寝、尚功が六部の尚書(長官)になった。六局の下に二十四司を統括し、各司の女官はそれぞれ別に司記、司言、司簿、司闈、司籍、司楽、司賓、司賛、司宝、司衣、司飾、司使、司膳、司醞、司薬、司饎、司設、司輿、司苑、司灯、司制、司珍、司森、司計に分けられていた。またその他に二十四典、二十四掌、及び宮正、阿監、形史、女史など各級の女官もあった。これらの女官には品級・給与が与えられており、彼女たちは礼儀、人事、法規、財務、衣食住行(行は旅行、出張等の手配)などの宮廷事務を担当した(『旧唐書』職官志三)。

 

宮官は事務官であったから、必ずしも容貌とか、皇帝のお気に召すかどうかにこだわる必要はなく、良家の出身で才徳兼備の女性を選びさえすればよかった。著名な才女であった宋若昭は、徳宗によって宮中に召され宮官の首席尚宮に任命された。裳光延の母庫秋氏は婦徳の名が高く、武則天に召されて女官御正に封じられた(『新唐書』蓑行倹伝)。

六局の宮官の他に、宮中には内文学館があり、宮人の中の文学の教養ある者を選んで学士とし、妃嬪宮人に教養、読み書き、算術などを教育する仕事を担当させた。宋若昭は六宮の文学士をも兼ね、皇子、妃嬢、公主、鮒馬(公主の婿)などを教育したので、「宮師」とよばれた。宮人の廉女真は隷書をよくし、宮中の学士に任じられたこともあった(『全唐詩』巻五一九、李遠「廉女真の葬を観る」)。

唐末、李菌が一人の元宮人にあったところ、彼女は自らかつて「侍書家」であったと云った(孫光憲『北夢項言』巻九)。おそらく書に優れていたのでこの職に任命された宮人であったと思われる。

これら宮官の中のある者は晶級が高く、権勢があり、宮中で尊ばれたばかりか、はては外延の官僚さえも彼女たちに取り入って功名を図ろうとした。こうしたことにより、一部の宮人は外朝の政治に関与することもできたが、しかし、彼女たちの身分は所詮皇帝の家婦にすぎなかった。ある皇子の守り役が太宗(李世民)の弟野王に、「尚宮(宮官の長)の晶秩の高い者には、お会いになった際に拝礼をなさるべきです」と諭したところ、野王は「これはわが二番目の兄(李世民)の家稗ではないか。

何で拝する必要があるか?」と言った(『旧唐書』高祖二十二子伝)。この言葉は一語で宮官身分の何たるかを喝破している。

 

 

孫光憲 河傳四首【字解】

其の一

【1】 太平・天子 

【2】 等閑 物事を軽くみて、いいかげんに扱うこと。なおざり。

【3】 疏河千里 天の地から流れて来る大河、黄河の流れは千里先まで続く。川の流れは東にながれる。川の流れは低い方に流れてゆき千里先まで流れて行く、そうしたことは常識なのだ。

【4】 疏河:天の地から流れて来る大河。湖沼や河川を水源として灌漑,給水,舟運のために,あるいは排水のために,新たに土地を切り開いて通水させることおよびその人工水路、大きな河川をいう。

【5】     淥波春水 増水して川の水嵩は上がっているが、雪解け水なので浸みきっていることをいう。

【6】     長淮 中国四大河川の長江と淮河で、長江から運河を経て淮河に入る大河の廣い隆起をいう。

【7】    三千女 杜甫はかつて《観公孫大娘弟子舞剣器行井序》「先帝の侍女八千人」(「公孫大娘が弟子の剣器を舞うを観る行」)と詠い、白居易もまた《長恨歌》」「後宮の佳麗三千人」と言った。これらは決して詩人の誇張ではなく、唐代の宮廷女性は、実際はこの数字をはるかに越えていた。唐の太宗の時、李百薬は上奏して「無用の宮人は、ややもすれば数万に達する」(『全唐文』巻一四二、李百薬「宮人を放つを請うの封事」)といった。『新唐書』の「官者伝」上に、「開元、天宝中、宮嬪はおおよそ四万に至る」と記されている。後者は唐代の宮廷女性の人数に関する最高の具体的な数字であり、まさに盛唐の風流天子玄宗皇帝時代のものである。宋代の人洪邁は、この時期は漢代以来、帝王の妃妾の数が最も多かった時代であるといっている(『容斎五筆』巻三「開元宮嬪」)。うまい具合に、この時期の女性の総人口は先に紹介した数字 - およそ二千六百余万であるから、四万余人とすれば、じつに全女性人口の六百分の一を占める。つまり、女性六百人ごとに一人が宮廷に入ったことになる。唐末になり、国土は荒れ、国勢は衰えたが、いぜんとして「六宮(後宮)の貴・賤の女性は一万人を減らない」(『資治通鑑』巻二七三、後唐の荘宗同光三年)という状態だった。この驚くべき数字の陰で、どのくらい多くの「曠夫怨女」(男やもめと未婚の老女)を造り出したことか計り知れない。唐末の詩人曹鄴が慨嘆して「天子 美女を好み、夫婦 双を成さず」(「捕漁謡」)と詠ったのも怪しむに足りない。

【8】    爭雲雨 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

【9】    錦帆風 宮中における舟遊びで錦の帆を張った船

【10】  煙際紅 夕靄のただようその際には紅い牡丹の花が咲く。

【11】  燒空 かがり火に赤く染まった空。

【12】  大業中 大きな仕事をすること。天子の後宮での生活は、一般の者とはかけ離れたものであること、仙郷、天空の生活をしてこそ太平である呂氏、そうした中で、天下国家の大業がなされるとされた、つつましい生活は御法度であった。

12孫光憲《巻七46浣溪沙九首其九》『花間集』348全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7012

孫光憲  浣溪沙九首 其九

烏帽斜欹倒佩魚,靜街偷步訪仙居,隔牆應認打門初。

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

(以前からあこがれていた巫女を初めて訪ねた、壁に題した詩を気に入ってくれたらしい、巫女は恥ずかしそうにその詞の意味を聞いてきたと詠う)

山簡のように酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちに、訪れをわかってくれて応対してくれる。来客に会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてきて、ひとに可愛いいとおもわせるが、全く男の方を見ないでもじもじして、次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねてきた。

12孫光憲《巻七46浣溪沙九首其九》『花間集』348全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7012

 

 
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浣溪沙九首 其九

(以前からあこがれていた巫女を初めて訪ねた、壁に題した詩を気に入ってくれたらしい、巫女は恥ずかしそうにその詞の意味を聞いてきたと詠う)

      烏帽斜欹倒佩魚,靜街偷步訪仙居,隔牆應認打門初。

山簡のように酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちに、訪れをわかってくれて応対してくれる。

      將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

来客に会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてきて、ひとに可愛いいとおもわせるが、全く男の方を見ないでもじもじして、次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねてきた。

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を偷【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

 

 

『浣溪沙九首 其九』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其九

烏帽斜欹倒佩魚,靜街偷步訪仙居,隔牆應認打門初。

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を偷【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

 

(現代語訳)

(以前からあこがれていた巫女を初めて訪ねた、壁に題した詩を気に入ってくれたらしい、巫女は恥ずかしそうにその詞の意味を聞いてきたと詠う)

山簡のように酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちに、訪れをわかってくれて応対してくれる。

来客に会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてきて、ひとに可愛いいとおもわせるが、全く男の方を見ないでもじもじして、次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねてきた。

 

(訳注)

浣溪沙九首其九

(以前からあこがれていた巫女を初めて訪ねた、壁に題した詩を気に入ってくれたらしい、巫女は恥ずかしそうにその詞の意味を聞いてきたと詠う)

【解説】その寺観の壁に詩を題した。その詞を気に入った彼の女は、あってくれることになった、門を叩けばそれだけで誰が来たかとすぐに分かり、また男に会っては袖でちょっと顔を隠し、男から可愛がられれば少々初心な態度をとり差ずかしそうに俯いて壁に書かれた詩を尋ねる。

 

浣溪沙九首『浣溪沙』とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕閑,謝家門戶約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

浣溪沙九首 其四双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

●●○○●●○  △○●●●○○ ●○△●●○○

○●?○△△● ●○△△●△○  ●△○●●△○

浣溪沙九首 其五は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

●●△○△●△  ●○△●●△○ ●○○●●○△

●●○○○●● △○△△●△○  ●○○●△○○

浣溪沙九首 其六は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

○●○△●●○  ●△○●●○○ ●○○●●○○

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浣溪沙九首 其七 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

△●○○●●○  ○○○●●△△ ●○○●●△△

△●●△△●● △○●●●○△  ○△○△●○○

浣溪沙九首 其八 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

△●○○●●△  ●○○●●○○ ○△○●●○○

●●●○○●● ○○●●●○○  △○○●●△○

浣溪沙九首 其九 は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

烏帽斜欹倒佩魚,靜街偷步訪仙居,隔牆應認打門初。

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

○●○○●△○  ●○○●●○○ ●○△●●○○

△●●○○●● ●○○●△△△  ○○○●●○○

 

烏帽斜欹倒佩魚,靜街偷步訪仙居,隔牆應認打門初。

山簡のように酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちに、訪れをわかってくれて応対してくれる。

【1】    烏帽 烏紗帽。隋、唐時代には身分の高い者がかぶったが、後には貴賎に関係なく用いられ、さらには閑居の際にかぶるようになった。

【2】    佩魚 魚袋。唐代には五品官以上の官僚が身に付けた魚の形をした飾り。品級の違いによって金製、銀製、銅製があった。

【3】    斜欹倒 西晋の山簡が荊州の知事として湖北省の荊州の地方長官として嚢陽にいたとき、常に酔っぱらっては高陽の池にあそび(野酒)、酩酊したあげく、白い帽子をさかさに被り、馬にのって歩いた。それが評判となり、そのことをうたった歌までできた。山簡は泥酔しているのではなく、この時、談義はしているのである。竹林の七賢人の山濤の子であり、山簡はそのような儒教的・既成の倫理観を捨て, 外聞を気にせず, 己に正直にして自由にふるまった。

【4】    倫歩 足音を忍ばせて歩く。

【5】    仙居 仙女の館。ここでは妓楼を指す。あるいは女道士のいる道観の可能性もある。当時の通観の尼は多くが春を禦いでいた。李商隠《重過聖女詞》「白石巌扉碧辞滋、上清淪謫得歸遅。一春夢雨常飄瓦、盡日靈風不満旗。萼緑華來無定所、杜蘭香去未移時。玉郎会此通仙籍、憶向天階問紫芝。」

恋愛詩人・李商隠 6 重過聖女詞

聖女詞 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 99

 

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

来客に会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてきて、ひとに可愛いいとおもわせるが、全く男の方を見ないでもじもじして、次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねてきた。

【6】    掩赦 顔を覆いかくすようにして眼を流し目にしてみて、羞ずかしそうにする。

【7】    且生疎 少男の方を見ないでもじもじする。初心な仕草。

【8】    壁邊書 壁に書かれた詩を尋ねる。彼女のこのような仕草は、男を引きつけるための爛れた作戦ではなく、孫光憲が作詞して壁に書いた詩の意味が全く分からなかった。

 

 

 

 

 

 

①    1~9

②    10~25

③    26~33

④    34~40

⑤    41~46

⑥    47~55

⑦    56~65

⑧    66~73

⑨    74~81  

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12孫光憲《巻七45浣溪沙九首其八》『花間集』347全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7007

孫光憲  浣溪沙九首       其八

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

(年を重ねた妃嬪に変わって若い妃嬪に寵愛は移っていくもの、この御殿の妃嬪は独り閏ですごす。晩春の日の妃嬪の無聊を詠う。)

軽く弾く、弾いたその音に驚いたのか、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづくものだし、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、それが世の移ろいというもの、こんな春景色が残る中で、一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

12孫光憲《巻七45浣溪沙九首其八》『花間集』347全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7007


 
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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯说他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]。《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門戶約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門戶 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

             

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

      攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

      楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

              浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

             

浣溪沙九首 其五

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

      半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

      早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

浣溪沙九首 其六

(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)

      蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

      翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。

             

浣溪沙九首 其七

      (寵愛を失ったとしても、あきらめれば生きてゆけない。今日も部屋に風を入れて、香をたき、どんな時でも、準備だけは欠かさない。)

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてきて、縫い取り刺繍の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞って、そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

      何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処かに行ったかと思うと来てくれる、全く常軌を逸してあまりにひどいことばかりで、見え透いたことを言う「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく酒宴の席で寝込んでいた」と、そんな人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに猜疑心を抱かせ、嫌いになる、それでも、別れることはない。

              (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。

 

浣溪沙九首 其八

(年を重ねた妃嬪に変わって若い妃嬪に寵愛は移っていくもの、この御殿の妃嬪は独り閏ですごす。晩春の日の妃嬪の無聊を詠う。)

      輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

      軽く弾く、弾いたその音に驚いたのか、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづくものだし、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、それが世の移ろいというもの、こんな春景色が残る中で、一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

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12孫光憲《巻七44浣溪沙九首其七》『花間集』346全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7002

孫光憲  浣溪沙九首 其七

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

(寵愛を失ったとしても、あきらめれば生きてゆけない。今日も部屋に風を入れて、香をたき、どんな時でも、準備だけは欠かさない。)

薫く香の残香が風に運ばれてきて、縫い取り刺繍の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞って、そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。何処かに行ったかと思うと来てくれる、全く常軌を逸してあまりにひどいことばかりで、見え透いたことを言う「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく酒宴の席で寝込んでいた」と、そんな人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに猜疑心を抱かせ、嫌いになる、それでも、別れることはない。

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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯说他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]。《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲(900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門戶約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門戶 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

moon4733
 

             

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

      攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

      楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

              浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

             

浣溪沙九首 其五

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

      半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

      早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

浣溪沙九首 其六

(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)

      蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

      翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。

             

浣溪沙九首 其七

      (寵愛を失ったとしても、あきらめれば生きてゆけない。今日も部屋に風を入れて、香をたき、どんな時でも、準備だけは欠かさない。)

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてきて、縫い取り刺繍の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞って、そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

      何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

何処かに行ったかと思うと来てくれる、全く常軌を逸してあまりにひどいことばかりで、見え透いたことを言う「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく酒宴の席で寝込んでいた」と、そんな人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに猜疑心を抱かせ、嫌いになる、それでも、別れることはない。

              (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。

 

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

                           

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街偷步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

海棠花101
 

 

『浣溪沙九首 其七』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其七

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。

 

 

(現代語訳)

(寵愛を失ったとしても、あきらめれば生きてゆけない。今日も部屋に風を入れて、香をたき、どんな時でも、準備だけは欠かさない。)

薫く香の残香が風に運ばれてきて、縫い取り刺繍の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞って、そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

何処かに行ったかと思うと来てくれる、全く常軌を逸してあまりにひどいことばかりで、見え透いたことを言う「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく酒宴の席で寝込んでいた」と、そんな人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに猜疑心を抱かせ、嫌いになる、それでも、別れることはない。

 

(訳注)

浣溪沙九首其七

(寵愛を失ったとしても、あきらめれば生きてゆけない。今日も部屋に風を入れて、香をたき、どんな時でも、準備だけは欠かさない。)

【解説】 閨に様子を奇麗に表現し、妃嬪は大勢いるから異常なくらい女性と接している、周りからいろいろおしえられたり、注意されても、寵愛を受けることしか考えないし、寵愛を失っても、何時も準備をするだけだ。恨みを過ぎれば諦めるということ。風に揺れて舞う簾の鳳凰の刺繍、閨をきちんと整える。あきらめれば終わりなのだ、どんなになっても準備だけは欠かさない。

 

浣溪沙九首『浣溪沙』とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕閑,謝家門戶約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

浣溪沙九首 其四双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

●●○○●●○  △○●●●○○ ●○△●●○○

○●?○△△● ●○△△●△○  ●△○●●△○

浣溪沙九首 其五は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

●●△○△●△  ●○△●●△○ ●○○●●○△

●●○○○●● △○△△●△○  ●○○●△○○

浣溪沙九首 其六は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

○●○△●●○  ●△○●●○○ ●○○●●○○

●●●△○●● ●○△●●○○  ●○○●△△○

浣溪沙九首 其七 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

△●○○●●○  ○○○●●△△ ●○○●●△△

△●●△△●● △○●●●○△  ○△○△●○○

 

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてきて、縫い取り刺繍の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞って、そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

【1】    風遞殘香出繡簾 香炉の残香が風に運ばれて簾から流れ出る。

【2】    團窠金鳳 円形の金糸で刺繍した鳳凰。円形は団欒の意を含む。窠 瓜を輪切りにした形に似た文様または紋所。一説に、蜂の巣の形ともいう。の紋。木瓜(もっこう)。

【3】    襜襜 揺れるさま。襜:前隠し、「《爾雅·釋器》衣蔽前、謂之襜(衣の前を覆う、これを襜(セン)という)」とあり、 和訓には、 「まえかけ、ひとえもの、ととのふ」等があるという(篆文詳注日本大玉篇)。

【4】    落花微雨恨相兼 落花と微雨とがともに恨みを誘う。散る花は女の年を重ねることこれからの行く末を憂うことであり、雨に煙るのは女の満たされない気持ちの愁いをいう。宋玉「高唐の賦」に言う、雨に化身して男のもとに洗われるというもので、それが「微」霞むのであるから、靄に思いを消されるという愁いになる。

 

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処かに行ったかと思うと来てくれる、全く常軌を逸してあまりにひどいことばかりで、見え透いたことを言う「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく酒宴の席で寝込んでいた」と、そんな人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに猜疑心を抱かせ、嫌いになる、それでも、別れることはない。

【5】    去来 行く。去の字だけに意味がある偏義詞。

【6】    狂太甚 全く常軌を逸している。ここでは男が女遊びに夢中なことを指す。狂:まわりのこと気にせず一つのことに懸命になる様子をいう。太甚【たいじん】ひどすぎる,あまりにもひどい.物事の程度のはなはだしいさま。

【7】    空推 見え透いた言い訳をする。

【8】    宿酒 昨夜飲んだ酒。

【9】    睡無猒 飽くことなく眠る、眠りを貴る。

【10】  争教人不別猜嫌 遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。争教は人から教えられたことと争うこと。人はここに登場する女性。別はわかれ。猫嫌は疑う、清疑心を抱くようなこと、嫌われようとするのかということ。

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