酒泉子四首温庭筠


酒泉子 (一)
羅帶惹香,猶系別時紅豆。
淚痕新,金縷舊,斷離腸。
一雙嬌燕語雕梁,還是去年時節。
綠陰濃,芳草歇,柳花狂。


酒泉子 (二)
花映柳條,閑嚮綠萍池上。
憑欄杆,窺細浪,兩蕭蕭。
近來音信兩疏索,洞房空寂寞。
掩銀屏,垂翠箔(一作幕),度春宵。


酒泉子 (三)
日映紗窗,金鴨小屏山碧。
故鄉春,煙霭隔,背蘭釭。
宿妝惆怅倚高閣,千裏雲影薄。
草初齊,花又落,燕雙雙。


酒泉子 (四)
楚女不歸,樓枕小河春水。
月孤明,風又起,杏花稀。
玉钗斜簪雲鬟重,裙上金縷鳳。
八行書,千裏夢,雁南飛。


酒泉子 (一)
羅帶 香に惹かれ,猶お別れ時に紅豆に系かる。
淚痕 新たにし,金縷 舊く,離れ腸を斷つ。
一雙 燕を嬌して雕梁を語り,是に去る年 時節を還える。
綠陰 濃く,芳草 歇むは,柳花の狂なり。


酒泉子 (二)
花 柳條を映し,閑にして嚮うは 綠萍 池の上り。
欄杆を憑し,細浪を窺すは,兩 蕭蕭たり。
近來 音信 兩 疏索にす,洞房 空しく寂寞たり。
銀屏を掩い,翠箔を垂して,春宵を度る。


酒泉子 (三)
日 紗窗に映し,金鴨 小屏 山の碧。
故鄉の春,煙霭の隔,蘭釭を背す。
宿妝 惆怅して高閣に倚るは,千裏 雲影薄し。
草 初めて齊し,花又落つるは,燕 雙雙たり。


酒泉子 (四)
楚女 歸らず,樓枕 小河の春水。
月 孤り明るくし,風又起きるは,杏花 稀れなり。
玉钗 斜簪 雲鬟 重り,裙上 金縷の鳳。
八行の書,千裏の夢,雁 南飛す。



『酒泉子』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-21-3-#  花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1700


酒泉子 (一)
羅帶惹香,猶系別時紅豆。
薄絹の肌着に帯に香が漂うと惹かれる、ふたりの別れの時は苦しくて悲しくて小豆のような涙が数珠のように繋がって流れ落ちる。
淚痕新,金縷舊,斷離腸。
そして、涙があふれおちる、その涙の後を新しくする涙が又落ちる、あの男にもらった金の刺繍のうす絹は古くなる。思い焦がれ離れてしまったまま、この体を持て余し下腹を斬る痛みを感じる。
一雙嬌燕語雕梁,還是去年時節。
一ツガイのつばめが艶めかしく鷲の彫刻の梁の上で語り合っている。これで今年も去って行き又その時節が来ると帰っていく。
綠陰濃,芳草歇,柳花狂。
みどりの木陰はその色を濃くし、若草の香りもしなくなってくる頃、季節外れの柳の花は狂い咲く。

酒泉子 (一)
羅帶 香に惹かれ,猶お別れ時に紅豆に系かる。
淚痕 新たにし,金縷 舊く,離れ腸を斷つ。
一雙 燕を嬌して雕梁を語り,是に去る年 時節を還える。
綠陰 濃く,芳草 歇むは,柳花の狂なり。


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『酒泉子』(一) 現代語訳と訳註
(本文)
酒泉子 (一)
羅帶惹香,猶系別時紅豆。
淚痕新,金縷舊,斷離腸。
一雙嬌燕語雕梁,還是去年時節。
綠陰濃,芳草歇,柳花狂。


(下し文) 酒泉子 (一)
羅帶 香に惹かれ,猶お別れ時に紅豆に系かる。
淚痕 新たにし,金縷 舊く,離れ腸を斷つ。
一雙 燕を嬌して雕梁を語り,是に去る年 時節を還える。
綠陰 濃く,芳草 歇むは,柳花の狂なり。


(現代語訳)
薄絹の肌着に帯に香が漂うと惹かれる、ふたりの別れの時は苦しくて悲しくて小豆のような涙が数珠のように繋がって流れ落ちる。
そして、涙があふれおちる、その涙の後を新しくする涙が又落ちる、あの男にもらった金の刺繍のうす絹は古くなる。思い焦がれ離れてしまったまま、この体を持て余し下腹を斬る痛みを感じる。
一ツガイのつばめが艶めかしく鷲の彫刻の梁の上で語り合っている。これで今年も去って行き又その時節が来ると帰っていく。
みどりの木陰はその色を濃くし、若草の香りもしなくなってくる頃、季節外れの柳の花は狂い咲く。


(訳注)
酒泉子
 (一)
・酒泉子 唐教坊曲名。雙調四十字、前段五句両平韻
両仄韻、後段五句三仄韻一平韻(詞譜三)。
唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。
『酒泉子』は宮廷で歌われたこの教坊曲である。


羅帶惹香,猶系別時紅豆。
薄絹の肌着に帯に香が漂うと惹かれる、ふたりの別れの時は苦しくて悲しくて小豆のような涙が数珠のように繋がって流れ落ちる。
・この二句はふたりの別れの時の模様である
・紅豆 あずき。血の涙。小豆のような涙が数珠のように繋がる。


淚痕新,金縷舊,斷離腸。
そして、涙があふれおちる、その涙の後を新しくする涙が又落ちる、あの男にもらった金の刺繍のうす絹は古くなる。思い焦がれ離れてしまったまま、この体を持て余し下腹を斬る痛みを感じる。
断腸 男女のいとなみのなさからくる苦しみ、痛みを云う。


一雙嬌燕語雕梁,還是去年時節。
一ツガイのつばめが艶めかしく鷲の彫刻の梁の上で語り合っている。これで今年も去って行き又その時節が来ると帰っていく。
嬌燕 燕の艶めかしくする姿は、当然他の男女のことを謂う。
雕梁 奥座敷の飾り彫りの梁をいうが、寝床から上を向いていることを意識させる語句である。


綠陰濃,芳草歇,柳花狂。
みどりの木陰はその色を濃くし、若草の香りもしなくなってくる頃、季節外れの柳の花は狂い咲く。
・この聯は時節、歳月の移り変わりを云う。