『定西番三首』(二) 温庭筠
Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。



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『定西番三首』(二) 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-28-4-#6  花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1728



定西番 一
漢使昔年離別,攀弱柳,折寒梅,上高台。
千裏玉關春雪,雁來人不來。
羌笛一聲愁絕,月徘徊。


定西番 二
海燕欲飛調羽,萱草綠,杏花紅,隔簾櫳。
雙鬓翠霞金縷,一枝春豔濃。
樓上月明三五,瑣窗中。


定西番 三
細雨曉莺春晚,人似玉,柳如眉,正相思。
羅幕翠簾初卷,鏡中花一枝。
腸斷寒門消息,雁來稀。



定西番 一
漢使昔年離別,攀弱柳,折寒梅,上高台。
漢の武帝が使者まで出して西王母を待ったがいったん別れたら二度と会えなかったという。わたしは若々しく柳のようにしなやかに挙げて過ごしし、折楊柳の変わりに寒梅を折って旅の健康を祈り、高台に上って見送るのです。
千裏玉關春雪,雁來人不來。
遙か千里先の玉門関に春が訪れても雪が残るという、私の所には雁が来ても、あの人は来てくれない。
羌笛一聲愁絕,月徘徊。

羌笛が一声響いてくるとその憂えを含んだ響きに気持ちも絶え絶えになる、今日もまた月の輝く庭を徘徊するのです。

定西番 一
漢使 昔年の離別,弱【わか】い柳を攀ぐ,寒梅を折り,高台に上る。
千裏玉關の春雪,雁來るも 人來らず。
羌笛一聲して 愁絕し,月に 徘徊す。


定西番 二
海燕欲飛調羽,萱草綠,杏花紅,隔簾櫳。
海ツバメは翅を整えてとぼうとしている。勿忘草は緑の葉を茂らせている。杏の花は赤く咲いている。宮女の部屋の格子窓の向こうの簾越しに見えてたのしむ。
雙鬓翠霞金縷,一枝春豔濃。
宮女の左右の鬢には翡翠の髪飾りに覆われ金の細糸で飾られている。
樓上月明三五,瑣窗中。
高楼の上に月影が照らし輝き花を愛でる人影が三々五々と歩いている。宮女は小さな窓から眺めている。


定西番 二
海燕 羽を調【ととの】えて飛ばんと欲するも,萱草 【かんそう】綠なり,杏花は紅たり,簾櫳を隔てしなり。
雙鬓【そうびん】翠霞の金縷,一枝春豔濃【えんのう】。
樓上 月明にして三五たり,瑣窗【そうそう】の中。
萱草002














『定西番』 二 現代語訳と訳註
(本文)
海燕欲飛調羽,萱草綠,杏花紅,隔簾櫳。
雙鬓翠霞金縷,一枝春豔濃。
樓上月明三五,瑣窗中。

(下し文)
定西番 二

海燕 羽を調【ととの】えて飛ばんと欲するも,萱草 【かんそう】綠なり,杏花は紅たり,簾櫳を隔てしなり。
雙鬓【そうびん】翠霞の金縷,一枝春豔濃【えんのう】。
樓上 月明にして三五たり,瑣窗【そうそう】の中。


(現代語訳)
海ツバメは翅を整えてとぼうとしている。勿忘草は緑の葉を茂らせている。杏の花は赤く咲いている。宮女の部屋の格子窓の向こうの簾越しに見えてたのしむ。
宮女の左右の鬢には翡翠の髪飾りに覆われ金の細糸で飾られている。
高楼の上に月影が照らし輝き花を愛でる人影が三々五々と歩いている。宮女は小さな窓から眺めている。


(訳注)
定西番
 二
教坊曲名。 雙調三十五字,前段四句一仄韻、兩平韻,後段四句兩仄韻、兩平韻
教坊とは、唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。五弦・琵琶・箜篌・箏を学んだ。また、宜春院や教坊の見習いを「雑婦女」といった。


海燕欲飛調羽,萱草綠,杏花紅,隔簾櫳。
海ツバメは翅を整えてとぼうとしている。勿忘草は緑の葉を茂らせている。杏の花は赤く咲いている。宮女の部屋の格子窓の向こうの簾越しに見えてたのしむ。
・萱草 「忘れ草」と詠まれているのは、ユリ科の萱草。藪萱草(ヤブカンゾウ)・野萱草(ノカンゾウ)など幾種類かある。夏、百合に似た橙色の花を咲かせる。一重の野萱草や浜萱草は涼やかで、見入るうちに本当に憂いも忘れてしまいそうだ。若葉は美味で食され、根は生薬となる。歌に詠まれたのは花でなくもっぱら草葉である。
「忘憂草」すなわち「憂いを忘れさせる草」と呼ばれたのは、食用とされる若葉に栄養分が多かった故か、あるいは根から採った生薬の効用か。それはともかく、万葉人たちは身につければ恋しさを忘れさせてくれる草として歌に詠んでいる。紐に付けるとは、いわば魂に結びつける擬態だろう。
・櫳 部屋の格子戸。



雙鬓翠霞金縷,一枝春豔濃。
宮女の左右の鬢には翡翠の髪飾りに覆われ金の細糸で飾られている。
・金縷 細々と連なる金の糸筋。かぼそい腕は春のなまめかしさを色濃くしている。
・豔 豔は艶。〔春秋左氏伝・文公十六年〕から「公子鮑、美にして豔なり」(美男で色男という意味)。艶・艷は 豔の俗字。



樓上月明三五,瑣窗中。
高楼の上に月影が照らし輝き花を愛でる人影が三々五々と歩いている。宮女は小さな窓から眺めている。
・瑣 小さい。細かい。取るに足りない。