隔漢江寄子安 魚玄機

山西の旅から長安へもどった魚玄磯のもとへ、約束より遅れはしたが、李億も歸ってきた。そして、何も言わないまま湘南の岳州へむかった。事実上の別れをしたのだ。魚玄機は数通の手紙のやり取りでそのことを理解したのだ。
ともかく、李億は長安から馬で秦嶺を越えて、漢江へ出て、それからはずっと舟旅。やがてその河が長江へ合流するところ、卾州、今日のいわゆる武漢三鎮の地に舟はついた。

2013年3月20日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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Ⅲ杜甫詩1000詩集寒食 杜甫 <430>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2095 杜甫詩1000-430-613/1500
●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
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Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性隔漢江寄子安 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-110-45-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2097
 
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李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首
 

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卷804_38 【隔漢江寄子安】魚玄機
山西の旅から長安へもどった魚玄磯のもとへ、約束より遅れはしたが、やがて李億も歸ってきた。そして湘南の岳州へむかった。長安から馬で秦嶺を越えて、漢江へ出て、それからはずっと舟旅。やがてその河が長江へ合流するところ、卾州、今日のいわゆる武漢三鎮の地に舟はついた。


隔漢江寄子安
江南江北愁望,相思相憶空吟。
江南でしょうか、江北でこうか気になってなりません。あなたは私を思い私はあなた思って、むなしく詩をよんでいます。
鴛鴦暖臥沙浦,鸂鶒閑飛橘林。
おしどりが船着き場の白砂の上に、日なたほっこしているだろうし、橘の林では、時おり、兄弟鳥の鸂鶒が、いっしょに飛んでいるのが、見えているでしょう。
煙裏歌聲隱隱,渡頭月色沈沈。
夕暮れのもやが、河の水面にたちこめて、そのもやのむこう、あなたのおいでになっている町のあたりから、歌姫の歌輩が、かすかに聞こえているのでしょう。渡し場のあたりには、次第に夜がふけて、今、月が静かに照っています。さびしい景色です。
含情咫尺千裏,況聽家家遠砧。

結局思わせぶりの心では、心でつながって間近なはずがまるで千里も遠くへいらっはなれてしまったのでしょう。それどころか、ここ長安ではあちこちの家で打っているきぬたの音が、遠くからつたわってきます。

(漢江を隔てて、子安に寄す)
江南江北愁ひ望む、相思相憶空しく吟ず。
鴛鴦は沙浦に 暖臥し、鸂鶒は 橘林に 閑飛す。
煙裏 歌聾 隱隱、渡頭 月色 沈沈。
情を含んでは 爬尺も千里、
況んや 家家の遠砧を 聽くをや。


『隔漢江寄子安』 現代語訳と訳註
寒梅901(本文)
江南江北愁望,相思相憶空吟。
鴛鴦暖臥沙浦,鸂鶒閑飛橘林。
煙裏歌聲隱隱,渡頭月色沈沈。
含情咫尺千裏,況聽家家遠砧。


(下し文)
(漢江を隔てて、子安に寄す)
江南江北愁ひ望む、相思相憶空しく吟ず。
鴛鴦は沙浦に 暖臥し、鸂鶒は 橘林に 閑飛す。
煙裏 歌聾 隱隱、渡頭 月色 沈沈。
情を含んでは 爬尺も千里、
況んや 家家の遠砧を 聽くをや。


(現代語訳)
江南でしょうか、江北でこうか気になってなりません。あなたは私を思い私はあなた思って、むなしく詩をよんでいます。
おしどりが船着き場の白砂の上に、日なたほっこしているだろうし、橘の林では、時おり、兄弟鳥の鸂鶒が、いっしょに飛んでいるのが、見えているでしょう。
夕暮れのもやが、河の水面にたちこめて、そのもやのむこう、あなたのおいでになっている町のあたりから、歌姫の歌輩が、かすかに聞こえているのでしょう。渡し場のあたりには、次第に夜がふけて、今、月が静かに照っています。さびしい景色です。
結局思わせぶりの心では、心でつながって間近なはずがまるで千里も遠くへいらっはなれてしまったのでしょう。それどころか、ここ長安ではあちこちの家で打っているきぬたの音が、遠くからつたわってきます。


4岳陽樓詩人003 (訳注)
隔漢江寄子安
遠く漢江の向こうにいる子安寄せる。
・漢江 漢水のこと。陝西省の南部に発し、河北省の洪ロで、長江にそそぐ大きな河。
・子安 李億のあざな。
・長安に居て漢江にいる夫に寄せたもの。この詩を魚玄機が鄂州まで行って詩たものという無茶な論(漢詩大系15、P147)があるが、漢江の江口に居てので待っていて思い込みの解釈の典型であろう


江南江北愁望,相思相憶空吟。
江南でしょうか、江北でこうか気になってなりません。あなたは私を思い私はあなた思って、むなしく詩をよんでいます。
・江南江北 長江を境に南側か、北側の流域、長江の中流域から下流域のかなり広範囲を示す。
・相憶 李億を思うこと。


鴛鴦暖臥沙浦,鸂鶒閑飛橘林。
おしどりが船着き場の白砂の上に、日なたほっこしているだろうし、橘の林では、時おり、兄弟鳥の鸂鶒が、いっしょに飛んでいるのが、見えているでしょう。
・鴛鴦 おしどり。
・沙浦 河水の船泊りになっているところで、砂地のあるところ。港の女に手を出しているのではないかという意味。
・暖臥(だんが) ひなたぼっこしている。
・鸂鶒 【けいせき】おしどり。兄弟の喩えにされる鳥。杜甫はよく使う。鸂鶒【けいせき】紫おしどり。謝霊運『鸂鶒賦』「覧水禽之萬族、信莫麗干鸂鶒。」(水禽之萬族を覧るに、信に干鸂鶒麗しきは莫し。)水鳥。いろいろに書く。鳥の名。常葉の大きなもので、紫色が多いので、紫鷲喬ともいう。
杜甫『春水生 二絶其一』
二月六夜春水生,門前小灘渾欲平。
鸕鸂鸂鶒莫漫喜。吾與汝曹俱眼明。春水生 二絶其一 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 9)  杜甫 <414>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2015 杜甫詩1000-414-597/1500


煙裏歌聲隱隱,渡頭月色沈沈。
夕暮れのもやが、河の水面にたちこめて、そのもやのむこう、あなたのおいでになっている町のあたりから、歌姫の歌輩が、かすかに聞こえているのでしょう。渡し場のあたりには、次第に夜がふけて、今、月が静かに照っています。さびしい景色です。
・煙裏 ゆうもやのうち。
・波頭 わたしばのあたり。
・沈沈 夜がふけて、ものしずかなさま。杜博の詩に、「月寒く天清く、夜沈々」という句がある。


含情咫尺千裏,況聽家家遠砧。
結局思わせぶりの心では、心でつながって間近なはずがまるで千里も遠くへいらっはなれてしまったのでしょう。それどころか、ここ長安ではあちこちの家で打っているきぬたの音が、遠くからつたわってきます。
・含情 風情のあること。感情を抑えて胸中に収めておく。思うことをそれとなく咀ブルで見分けること。男の思わせぶりな態度ということ。
・咫尺 咫は、周代の制度で八寸。爬尺で、ごく短い距離をいう。「目と鼻のさき」ということばがよく当たる。
・遠砧 遠くで打っているきぬたの音。きぬたは、洗濯した布をきねで打って、縫う用意をする。女の仕事。