韋荘 《菩薩蠻 一》  そのあとには「早くあなたの家にお帰りなさい」と勧め、「緑の窓のほとりに花のようにきれいな人が待っていることでしょう」を添えて云うのである。

 

 

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菩薩蠻 一 韋荘  Ⅹ
唐五代詞・宋詩花間集Gs-247-5-#1   漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2617

           

花間集 菩薩蛮  唐・蜀 韋莊

 

 

菩薩蠻 一

紅樓別夜堪惆悵。 香燈半捲流蘇帳。

赤く美しい富貴の女の家の高殿での別れの夜というに、たまらない恨み嘆ことにたえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜたふさで飾られたとばりを半ばかかげているのは心残りの表れなのだ。

殘月出門時。   美人和涙辭。

有明の月このいえをさるときがきたようだ。美しい女性と涙ながらの別れを告げねばならない。

 

琵琶金翠羽。   絃上黄鶯語。

その美人は翡翠のかざられたばちで琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは鶯の春を告げる言葉のように私を引き留める。

勸我早歸家。   綠窗人似花。

そして、そのあとには「早くあなたの家にお帰りなさい」と勧め、「緑の窓のほとりに花のようにきれいな人が待っていることでしょう」を添えて云うのである。

 

 

菩薩蛮

紅樓の別れの夜 惆悵に堪へんや。香燈に半ば捲く 流蘇の帳【とばり】を。

殘月 門を出でし時、美人 涙と和【とも】に辭す。

 

琵琶 金翠の羽。絃上 黄鶯 語るに:

我に勸む 早【つと】に 家に歸れと。綠窗に 人 花の似【ごと】し。

 

 

『菩薩蛮』 現代語訳と訳註

(本文)

百舌鳥02菩薩蠻 一

紅樓別夜堪惆悵。 香燈半捲流蘇帳。

殘月出門時。   美人和涙辭。

 

琵琶金翠羽。   絃上黄鶯語。

勸我早歸家。   綠窗人似花。

 

 

(下し文)

(菩薩蛮)

紅樓の別れの夜 惆悵に堪へんや。香燈に半ば捲く 流蘇の帳【とばり】を。

殘月 門を出でし時、美人 涙と和【とも】に辭す。

 

琵琶 金翠の羽。絃上 黄鶯 語るに:

我に勸む 早【つと】に 家に歸れと。綠窗に 人 花の似【ごと】し。

 

 

(現代語訳)

赤く美しい富貴の女の家の高殿での別れの夜というに、たまらない恨み嘆ことにたえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜたふさで飾られたとばりを半ばかかげているのは心残りの表れなのだ。

有明の月このいえをさるときがきたようだ。美しい女性と涙ながらの別れを告げねばならない。

その美人は翡翠のかざられたばちで琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは鶯の春を告げる言葉のように私を引き留める。

そして、そのあとには「早くあなたの家にお帰りなさい」と勧め、「緑の窓のほとりに花のようにきれいな人が待っていることでしょう」を添えて云うのである。

 

 

(訳注)

菩薩蠻 一

詞牌の一。詞の形式名。双調 四十四字。換韻。 

 この詞は花間集 韋荘の菩薩蛮其一である。上片で恋人との切ない別れの情景が、下片では、女性を懐憶している。

・韋莊:韋荘。唐末、蜀の詞人。

 

紅樓別夜堪惆悵。 香燈半捲流蘇帳。

赤く美しい富貴の女の家の高殿での別れの夜というに、たまらない恨み嘆ことにたえることができない。閨に香しい灯火のかげに五色の糸を混ぜたふさで飾られたとばりを半ばかかげているのは心残りの表れなのだ。

・紅樓:赤く色を塗った、美しい高殿。お金持ちの家の女性の住む建物。青楼と同じ意にとれば、品が落ちてくるが、どちらが相応しいか。如何。いずれにしても、この男女が密会した場所である。

・別夜:別れの夜。男と女が別れた、その夜。

・堪:(現代語)たえがたい。たえられようか。この中心の語義は、古語と同じ「たえる」だが、ここでは違う。「紅樓の別夜 惆悵に堪へたり」(別れの辛さを克服できた)というのではなくて、少し字が多くなるが、「紅樓の別夜 (なんぞ)惆悵に堪へたらんや」とでもして、別れの耐え難さを表しているところ。

・惆悵:恨み嘆く。

・香燈:香しい灯火。香は、女性の居場所を暗示させる語。

・半捲:半ば巻く。大きく巻き上げていないところに、女性の微妙な気持ちが現れている。

・流蘇:五色の糸を混ぜたふさで、幕や旗などの飾りに使う。流蘇帳は、ふさの飾りが付いた幕。華麗で艶めかしいベッド等の家具を連想させる働きがある。初唐・上官儀の『八詠應制二首』之一に「啓重帷,重帷照文杏。翡翠藻輕花,流蘇媚浮影。瑤笙燕始歸,金堂露初晞。風隨少女至,虹共美人歸。」とある。

・帳:とばり。たれぎぬ。カーテン。ここは床帳(ベッドカーテン)か。(中国では、ベッドをカーテンで囲む習慣がある。あてにはできないが、「大明宮詞」でも武則天はカーテン付きのベッドに寝ていたが…。いつ頃からか、また調べておきます。)

 

 

殘月出門時。   美人和涙辭。

有明の月このいえをさるときがきたようだ。美しい女性と涙ながらの別れを告げねばならない。

・殘月:有明の月。夜が明けてもまだ空にある月。この頃は、夜が明けるまでに帰らないといけなかった。名残月は20日頃の月をいう。

・出門:その人の元を立ち去るとき。

・美人:詞では歌妓(歌姫)を指すこと多い。普通に、美人といえば、やはり美しい女性を指すが、男性をいう場合や、心が立派な君子や君主など、いろいろな場合がある。ここは、涙と共に別れの言葉を言った訳であるから、やはり女性のことか。

・和涙:涙とともに。涙を含んで。

・辭:別れの挨拶の辞を言う。もしも美人を作者の男性ととると、辞去する、になる。ここは前者が相応しい。

 

 

琵琶金翠羽。   絃上黄鶯語。

その美人は翡翠のかざられたばちで琵琶を奏でてくれる。その絃の調べは鶯の春を告げる言葉のように私を引き留める。

・琵琶:弦楽器の一。右端の女性が奏でているような楽器。

・金翠羽:金の翡翠(翠は雌のカワセミ)の羽の飾り模様。琵琶の表面か、ばちに画かれ・いる。羽がややこしいのは韻を踏むためでもあろう。

・絃上:絃を弦とする本も多い。弦で。演奏して。弦楽器を奏でることをいう。

・黄鶯:うぐいす。詞ではよく出てくる。ここでは、琵琶から流れ来る音楽の形容。

・語:言葉。黄鶯語の外にも解語花(女性のこと)等、という風に語を使う。琵琶から流れ来るメロディが、まるで弾く人の意を体して、語りかけてくるような感じを謂っている。

 

勸我早歸家。   綠窗人似花。

そして、そのあとには「早くあなたの家にお帰りなさい」と勧め、「緑の窓のほとりに花のようにきれいな人が待っていることでしょう」を添えて云うのである。

・勸我:琵琶から流れ来るメロデイは、わたしに対して「はやくもどってきなさいね」と語りかけているようだ、ということ。

・早歸家:早く戻れ。早の意味は、早期に。「近日中に帰ってこい」の意味であって、「もういい時間になったので、いそいで速く家に帰らないと」ではない。早、夙などと、速、快、疾などとでは、日本語では、どれも「はやい」と読むものの、意味が全く違う。

・綠窗:緑のうすぎぬのカーテンをした窓で、女性の部屋の窓をいう。

・似:…の ようである。ごとし。如・似ともに「ごとし」と読み、意味も近いが、平仄で使い分ける。

朱槿花・佛桑華