韋荘《菩薩蠻 五》洛陽の街のなかには、のどかな春のけしきにかわって、ほんとうに好ましいものになっているだろう。その春の景色に背いて、洛陽の才子であるわたしは、よその郷で年をとろうとしている。

 

2013年8月8日  同じ日の紀頌之5つのブログ
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李商隠詩 
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菩薩蠻 五 韋荘  Ⅹ唐五代詞・宋詩Gs-251-5-#5   漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2637

 

 

花間集

菩薩蠻

洛陽城裏春光好,洛陽才子他鄕老。

洛陽の街のなかには、のどかな春のけしきにかわって、ほんとうに好ましいものになっているだろう。
その春の景色に背いて、洛陽の才子であるわたしは、よその郷で年をとろうとしている。
柳暗魏王堤。  此時心轉迷。

城郭の南にある柳のしげった魏王堤をおもい出す。だから、わたしのこころはますます洛陽のかなたへさまようばかりなのだ。 

桃花春水綠,  水上鴛鴦浴。

洛水の水は雪解けの澄み切ったきれいな増水に、うつくしい桃の花がちってながれてゆき、水のうえにはおしどりが仲むつまじく浴をしている。

凝恨對殘暉,  憶君君不知。

こののどかな洛陽の春の西日の当たる景色をおもいうかべて、うらめしく思う。洛陽にいるあの人のことを憶いだすわたしの切ない心をあの人は知っていてはくれないだろう。

 

(菩薩蠻 五)

洛陽城裏 春光 好く,洛陽の才子 他鄕老ゆ。

柳は暗【ふか】し 魏王の堤。此の時 心 轉【うた】た迷ふ。

 

桃花 春水 綠にして,水上に 鴛鴦 浴す。

恨を凝らして 殘暉に對し,君を憶えど 君は知らず。

 

 

『菩薩蠻 五』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻

洛陽城裏春光好,洛陽才子他鄕老。

柳暗魏王堤。  此時心轉迷。

 

桃花春水綠,  水上鴛鴦浴。

凝恨對殘暉,  憶君君不知。 

 

(下し文)

(菩薩蠻 五)

洛陽城裏 春光 好く,洛陽の才子 他鄕老ゆ。

柳は暗【ふか】し 魏王の堤。此の時 心 轉【うた】た迷ふ。

 

桃花 春水 綠にして,水上に 鴛鴦 浴す。

恨を凝らして 殘暉に對し,君を憶えど 君は知らず。 

 

(現代語訳)

洛陽の街のなかには、のどかな春のけしきにかわって、ほんとうに好ましいものになっているだろう。その春の景色に背いて、洛陽の才子であるわたしは、よその郷で年をとろうとしている。

城郭の南にある柳のしげった魏王堤をおもい出す。だから、わたしのこころはますます洛陽のかなたへさまようばかりなのだ。

洛水の水は雪解けの澄み切ったきれいな増水に、うつくしい桃の花がちってながれてゆき、水のうえにはおしどりが仲むつまじく浴をしている。

こののどかな洛陽の春の西日の当たる景色をおもいうかべて、うらめしく思う。洛陽にいるあの人のことを憶いだすわたしの切ない心をあの人は知っていてはくれないだろう。

 

 

(訳注)

菩薩蠻

詞牌の一。詞の形式名。双調。四十四字。換韻

花間集巻第二所収。

 

洛陽城裏春光好,洛陽才子他鄕老。

洛陽の街のなかには、のどかな春のけしきにかわって、ほんとうに好ましいものになっているだろう。その春の景色に背いて、洛陽の才子であるわたしは、よその郷で年をとろうとしている。

・洛陽:唐の都。河南省にある。洛水の北にあることからついた。(陽:河の北岸。山陽、山陰についても同じ。)

・春光:春の日和。春の景色。

・洛陽才子:前漢の賈誼のこと。作者の韋荘自身。彼は江南を漫遊している。旅先で春を迎えたが、洛陽の春の風情や女性が懐かしく思い出される。異郷の地から洛陽の女性を思うこと。・才子:才能の優れた男子。才徳の優れた男子。

 

 

柳暗魏王堤。  此時心轉迷。

城郭の南にある柳のしげった魏王堤をおもい出す。だから、わたしのこころはますます洛陽のかなたへさまようばかりなのだ。

・柳暗:柳の葉が茂るさま。

・魏王堤:地名。洛陽の南にある名勝。洛水の水が溢れて池が出来、堤を築いて洛水と隔てた、貞觀年間に魏王泰に賜ったのでこの名が付いた。白居易の『魏王堤』「花寒懶發鳥慵啼,信馬閒行到日西。何處未春先有思,柳條無力魏王堤。」からきたか。

・心轉迷:心が一層迷う。心が変わり、迷う。 ・轉:(古白話)かえって、一層。

漢魏隋唐の洛陽城 

 








 

桃花春水綠,  水上鴛鴦浴。

洛水の水は雪解けの澄み切ったきれいな増水に、うつくしい桃の花がちってながれてゆき、水のうえにはおしどりが仲むつまじく浴をしている。

・鴛鴦:(つがいの)オシドリ。雌雄のつがいでいることから夫婦仲のよいことに使う。自分の境遇を強調するために使っている。 ・鴛:雄のおしどり ・鴦:雌のおしどり

・浴:水浴びをする。鴛鴦は水鳥。

 

凝恨對殘暉,  憶君君不知。

こののどかな洛陽の春の西日の当たる景色をおもいうかべて、うらめしく思う。洛陽にいるあの人のことを憶いだすわたしの切ない心をあの人は知っていてはくれないだろう。

・凝恨:うらめしさをこめて。恨みを凝集させて。 ・恨:うらみ、うらむ、の外に、うらめしい、情けない、の意味もある。感情の強さを表す。ここは、「長恨歌」の「恨」と同様で、後者の意。

・殘暉:夕日の光。残照。残陽。斜陽。夕焼け。
海棠花05