韋荘應天長 一青々と茂った槐の木陰でウグイスが春が来たことを告げてくれる。あの人を待つ奥深い庭は静かで人気がなく、春の昼下がりボーッと過す。何気なく美しく縫い取りをしたカーテンを下ろす、カーテンの縫い取り模様の金の鳳が動く。寂しげな女性の部屋の縫い取りのある屏風のそばの香炉から煙が一筋たっている。


2013年8月13日  同じ日の紀頌之5つのブログ
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應天長 一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-256-5-#10   漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2662

 

 

應天長  韋莊

(應天長)

綠槐陰裏黄鶯語。深院無人春晝午。

青々と茂った槐の木陰でウグイスが春が来たことを告げてくれる。あの人を待つ奥深い庭は静かで人気がなく、春の昼下がりボーッと過す。

畫簾垂、金鳳舞。寂莫綉屏香一。

何気なく美しく縫い取りをしたカーテンを下ろす、カーテンの縫い取り模様の金の鳳が動く。寂しげな女性の部屋の縫い取りのある屏風のそばの香炉から煙が一筋たっている。

 

碧天雲,無定處。空有夢魂來去。

青空にある雲。寄る辺がない。恋しいあのひとはどこにいるのやら。わたしの所へは、ただむなしく夢の中にいる魂だけがやってくるだけ。

夜夜綠窗風雨。 斷腸君信否。

夜毎、待ち侘びる女の部屋の窓辺には嵐が吹き荒びつづける。この深い嘆きをあのひとは信じてくれるだろうか。

 

(應天長)

綠槐 陰裏 黄鶯 語り。深院 人無く 春の 晝午【さが】り。

畫簾 垂らせば、金鳳 舞ひ。寂莫たる 綉屏に  香 一【すぢ】。

 

碧天の 雲, 定める處 無し。 空しく 夢魂の 來去 有るのみ。

夜夜 綠窗に 風雨ありて。 斷腸せるを 君 信ずや否や。

鶯00 

 










『應天長』 現代語訳と訳註

(本文)

綠槐陰裏黄鶯語。深院無人春晝午。

畫簾垂、金鳳舞。寂莫綉屏香一。

 

碧天雲,無定處。空有夢魂來去。

夜夜綠窗風雨。 斷腸君信否。

 

 

(下し文)

(應天長)

綠槐 陰裏 黄鶯 語り。深院 人無く 春の 晝午【さが】り。

畫簾 垂らせば、金鳳 舞ひ。寂莫たる 綉屏に  香 一【すぢ】。

 

碧天の 雲, 定める處 無し。 空しく 夢魂の 來去 有るのみ。

夜夜 綠窗に 風雨ありて。 斷腸せるを 君 信ずや否や。

 

 

(現代語訳)

(應天長)

青々と茂った槐の木陰でウグイスが春が来たことを告げてくれる。あの人を待つ奥深い庭は静かで人気がなく、春の昼下がりボーッと過す。

何気なく美しく縫い取りをしたカーテンを下ろす、カーテンの縫い取り模様の金の鳳が動く。寂しげな女性の部屋の縫い取りのある屏風のそばの香炉から煙が一筋たっている。

青空にある雲。寄る辺がない。恋しいあのひとはどこにいるのやら。わたしの所へは、ただむなしく夢の中にいる魂だけがやってくるだけ。

夜毎、待ち侘びる女の部屋の窓辺には嵐が吹き荒びつづける。この深い嘆きをあのひとは信じてくれるだろうか。

 

 

(訳注)

應天長  韋莊

・應天長:詞牌の一。詞の形式名。双調。五十字。仄韻一韻到底。花間集巻第二所収。

 

綠槐陰裏黄鶯語。深院無人春晝午。

青々と茂った槐の木陰でウグイスが春が来たことを告げてくれる。あの人を待つ奥深い庭は静かで人気がなく、春の昼下がりボーッと過す。

・綠槐陰裏:青々と茂ったエンジュの木陰で。 ・槐 開花は7月で、枝先の円錐花序に白色の蝶形花を多数開き、蜂などの重要な蜜源植物となっている。豆果の莢は、種子と種子の間が著しくくびれる。 花・蕾にはルチンを多く含有する。蕾を乾燥させたものは、槐花(かいか)という生薬で止血作用がある。・裏:なかで。

・黄鶯:ウグイス。コウライウグイス。

・語:ここでは、さえずる。詩詞では、花や鳥が声を出すときは「花語」「鳥語」という。

・深院:奥深い庭。深院は詞人に好かれていて、歐陽脩(馮延巳)、李淸照などに「庭院深深深幾許」と、よく使われる。塀に囲まれた奥深いにわ。中国の庭は塀で細かく区切られ、奥深くなっている。 ・院:中庭。

・無人:(静かで)人気がない。

・春晝午:春の昼下がり。

 

畫簾垂、金鳳舞。寂莫綉屏香一。

何気なく美しく縫い取りをしたカーテンを下ろす、カーテンの縫い取り模様の金の鳳が動く。寂しげな女性の部屋の縫い取りのある屏風のそばの香炉から煙が一筋たっている。

・畫簾:美しく縫い取りをしたカーテン。カーテンは簾帳幔幃幄帷…とまだまだ多くある。これは、つける場所や形、材料から決まるといえるが、詩詞では、平仄と語調で決まることも多いだろう。 ・畫:飾りをした。画堂、画角…と多い。

・金鳳:金の鳳。ここでは、カーテン地の縫い取り模様を指す。

・寂莫:さびしい。

・綉屏:縫い取りのある屏風。また、女性の部屋の屏風。

・香:香炉。香木。

・一:(香が)ひとすじ。 ・:灯心。焼く。「線香一本」というときの「本」にあたる量詞。

 

 

 

碧天雲,無定處。空有夢魂來去。

青空にある雲。寄る辺がない。恋しいあのひとはどこにいるのやら。わたしの所へは、ただむなしく夢の中にいる魂だけがやってくるだけ。

・碧天雲:青空にある雲。この女性の恋人のことを暗示している。後に続く「無定處」からそういえる。

・無定處:寄る辺がない。一ところで留まらないで、あちらこちらに移りゆく。この女性の恋人の行動でもある。

・空有:ただむなしく…のみあるだけだ。

・夢魂:夢の中にいる魂。夢を見ている魂。婉約詞ではよく使われる語。

・來去:やってくる。動きを表す。

 

 

夜夜綠窗風雨。 斷腸君信否。

夜毎、待ち侘びる女の部屋の窓辺には嵐が吹き荒びつづける。この深い嘆きをあのひとは信じてくれるだろうか。

・夜夜:よごと。

・綠窗:女性の部屋の窓。

・風雨:あらし。ここでは、帰ってくるのを待っている女性の心の中を吹きすさぶ嵐のこと。

・斷腸:非常な嘆きをいう。

・君:人に対する尊称。ここでは恋しい人のこと。

・信否:信じるだろうか。 ・否:主として文末に付き、疑問文にする働きがある。

 yamadori00