天仙子 其四 雲母を散らした屏風のかげに、あの人とのたのしいかたらいの夢がさめると、やっぱり相変わらず空しいものなのです。それはすだれを隔て、垣根を隔てて、ほととぎすの啼く声が、悲しくむせぶようにきこえてくるのです。

 

2013年8月30日  同じ日の紀頌之5つのブログ
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Ⅱ中唐詩・晩唐詩
 
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●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
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●●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
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天仙子 其四 ----111

(天仙子【てんせんし】 其の四)
夢覚雲屏依舊空、杜鵑聲咽隔簾墻。

雲母を散らした屏風のかげに、あの人とのたのしいかたらいの夢がさめると、やっぱり相変わらず空しいものなのです。それはすだれを隔て、垣根を隔てて、ほととぎすの啼く声が、悲しくむせぶようにきこえてくるのです。

玉郎薄幸去無蹤。

薄情なおとこのあの人は、どこへいったのか、ゆくえもわからないのです。

一日日、恨重重。

あの人の迎えを待っているその一日と重ねる日々は恨みを重ねていく一日なのです。

涙界蓮腮兩線紅。

なみだのあとが、お化粧のほほをつたい紅のふたすじのなみだとなってながれるのです。

 

(天仙子【てんせんし】 其の四)

夢覚むれば雲屏舊に依りて空しく、杜鵑【とけん】聲咽【むせ】びて 簾墻【れんしょう】を隔つ。

玉郎は薄幸にして去るも 蹤無し。

一日日、恨み重重。

涙は蓮腮【れんさい】に界たりて 両線 紅し。

 

 

『天仙子 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

ホトトギス天仙子 其四 ----111

夢覚雲屏依舊空、杜鵑聲咽隔簾墻。

玉郎薄幸去無蹤。

一日日、恨重重。

涙界蓮腮兩線紅。

 

 

(下し文)

(天仙子【てんせんし】 其の四)

夢覚むれば雲屏舊に依りて空しく、杜鵑【とけん】聲咽【むせ】びて 簾墻【れんしょう】を隔つ。

玉郎は薄幸にして去るも 蹤無し。

一日日、恨み重重。

涙は蓮腮【れんさい】に界たりて 両線 紅し。

 

 

(現代語訳)

雲母を散らした屏風のかげに、あの人とのたのしいかたらいの夢がさめると、やっぱり相変わらず空しいものなのです。それはすだれを隔て、垣根を隔てて、ほととぎすの啼く声が、悲しくむせぶようにきこえてくるのです。

薄情なおとこのあの人は、どこへいったのか、ゆくえもわからないのです。

あの人の迎えを待っているその一日と重ねる日々は恨みを重ねていく一日なのです。

なみだのあとが、お化粧のほほをつたい紅のふたすじのなみだとなってながれるのです。

 

 

(訳注)

bijo02天仙子 其四

・天仙子 単調三十四字、六句五平韻(詞譜二)。

当時の道教、仏教には男に棄てられたり、年齢を重ねて客が着かない女性の駆け込み場所となって、売春で余生を過ごした。そうした女性を男の視線から詠ったものである。李商隠『聖女祠』『重過聖女祠』にこの女性たちについて詠っている。

聖女詞 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 99

 

 

夢覚雲屏依舊空、杜鵑聲咽隔簾墻。

雲母を散らした屏風のかげに、あの人とのたのしいかたらいの夢がさめると、やっぱり相変わらず空しいものなのです。それはすだれを隔て、垣根を隔てて、ほととぎすの啼く声が、悲しくむせぶようにきこえてくるのです。

○雲屏 雲母を散らした屏風。

○依旧空 相変わらず空しい。

○杜醍 ホトトギス。

○隔簾墻 窓の外。簾は垂れ幕のかかった連子窓。なお、墻:かきね。

 

玉郎薄幸去無蹤。

薄情なおとこのあの人は、どこへいったのか、ゆくえもわからないのです。

○玉郎 美男。ここでは愛しい男の意。

○薄幸 薄情者。うわきもの。

 

一日日、恨重重。

あの人の迎えを待っているその一日と重ねる日々は恨みを重ねていく一日なのです。

 

涙界蓮腮兩線紅。

なみだのあとが、お化粧のほほをつたい紅のふたすじのなみだとなってながれるのです。

○涙界蓮腮兩線紅 涙が煩紅を溶かして蓮の花のような頬に紅い二本の筋が付いていることをいう。