荷葉杯 其一 韋荘  絵が画かれた薄絹の帳は空しさだけの閨なのです。大空に詞文を通わせる路はできることもなく、痛ましく悲しいのは引き裂かれた女と過ごした、あの閨の連子窓を見つめているのです。


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荷葉杯 其一

(秋、蓮をとる季節の女の心持を詠う)
鬢毛01絶代佳人難得傾国

またとなき絶世の美人というのは簡単に得られなく、得られたとして国を傾けるものとされます。

花下見無期

あの人は花のもとに会う約束日をしてくれないのです。

愁黛遠山眉不忍更思惟

鏡を見ると、眉間にしわを寄せるひと筋、ふた筋、愁いを帯びた黛は遠山の色で眉、思い更に思いはつのるけれどもう耐えることができない。


閒掩翠屏金鳳、残夢

待ち侘びて広げたままの屏風には金の番の鳳凰がいます、ここで夢が覚めたのです。

羅幕畫堂空。

絵が画かれた薄絹の帳は空しさだけの閨なのです。

碧天無路信難通、惆悵舊房櫳。

大空に詞文を通わせる路はできることもなく、痛ましく悲しいのは引き裂かれた女と過ごした、あの閨の連子窓を見つめているのです。

 

(荷葉杯 其の一)

絶代の佳人は得難く、傾国す。

花下に見るに期無し。

一雙の愁黛と遠山の眉にし、更に思惟するに忍びず。

 

閒かに翠屏の金鳳を掩へば、夢残る。

羅幕の畫堂も空し。

碧天には路無く信は通じ難し、惆悵たり舊房の櫳。
 

 美女004

 

 

『荷葉杯 其一』 現代語訳と訳註

(本文) 荷葉杯 其一

絶代佳人難得、傾国。

花下見無期

愁黛遠山眉不忍更思惟

 

閒掩翠屏金鳳、残夢。

羅幕畫堂空。

碧天無路信難通、惆悵舊房櫳。

 

 

(下し文)

(荷葉杯 其の一)

絶代の佳人は得難く、傾国す。

花下に見るに期無し。

一雙の愁黛と遠山の眉にし、更に思惟するに忍びず。

 

閒かに翠屏の金鳳を掩へば、夢残る。

羅幕の畫堂も空し。

碧天には路無く信は通じ難し、惆悵たり舊房の櫳。

 

(現代語訳)

(秋、蓮をとる季節の女の心持を詠う)
またとなき絶世の美人というのは簡単に得られなく、得られたとして国を傾けるものとされます。

あの人は花のもとに会う約束日をしてくれないのです。

鏡を見ると、眉間にしわを寄せるひと筋、ふた筋、愁いを帯びた黛は遠山の色で眉、思い更に思いはつのるけれどもう耐えることができない。

待ち侘びて広げたままの屏風には金の番の鳳凰がいます、ここで夢が覚めたのです。

絵が画かれた薄絹の帳は空しさだけの閨なのです。

大空に詞文を通わせる路はできることもなく、痛ましく悲しいのは引き裂かれた女と過ごした、あの閨の連子窓を見つめているのです。

 

 

(訳注)

荷葉杯 其一

(秋、蓮をとる季節の女の心持を詠う)

『花聞集』には韋莊の作が.二首収められている。

前段二十五字五句二仄韻三平韻、後段二十五字五句二仄韻三平韻で詞形をとる。荷葉杯というのは教坊曲で、秋、蓮をとる季節の乙女の心持を詠うものである。

 

 

絶代佳人難得、傾国。

またとなき絶世の美人というのは簡単に得られなく、得られたとして国を傾けるものとされます。

○傾国 絶世の美女。ここは、権力者が無理やり奪ってきて女にうつつをぬかした結果、国を傾けた。施政者の姿勢を云うもの。

 

花下見無期。

あの人は花のもとに会う約束日をしてくれないのです。

 

一雙愁黛遠山眉、不忍更思惟。

鏡を見ると、眉間にしわを寄せるひと筋、ふた筋、愁いを帯びた黛は遠山の色で眉、思い更に思いはつのるけれどもう耐えることができない。

○見無期 会う機会がない。期は時と場所を決めて会うこと。

○遠山眉 愁いを帯びた女性の美しい眉。遠山は遠近法で薄い青山である。

 

閒掩翠屏金鳳、残夢。

待ち侘びて広げたままの屏風には金の番の鳳凰がいます、ここで夢が覚めたのです。

○金鳳 犀風に金泥で描かれた鳳凰。つがいで描かれる。

○残夢 夢から覚める。残は損なわれる、さびれる。

 

羅幕畫堂空。

絵が画かれた薄絹の帳は空しさだけの閨なのです。

 

碧天無路信難通、惆悵舊房櫳。

大空に詞文を通わせる路はできることもなく、痛ましく悲しいのは引き裂かれた女と過ごした、あの閨の連子窓を見つめているのです。

○旧房櫳 かつて愛妾が住んでいた時の閨の連子窓。櫳は囲われた女を意味する語でもある。

 

 

【解説】

この詞は、ある説で韋莊が蜀主王建に奪われた愛妾を偲んで詠んだものとわれている。前段は、絶世の美女愛妾とは二度と会えない非痛な思いを述べているとされ、後段は、その愛妾の閏には昔のままに調度品が置かれていることを言う。もの係として、中国人らしいこじつけである。詞では通常、別れ去った男を女が遙かに偲ぶ形を、男の目から見るものが一般である。ここではどちらも芽というのではなく、きゃっかんてきにみて、男女、たがいを偲ぶものとおもう。韋莊のもとの愛妾は、後にこの詞を耳にして、自ら食を絶って命を終えたと伝えられている。しかし、韋莊の愛妾は、彼が蜀に入る前に既に亡くなっており、この詞を王建に奪われた愛妾を思っての作とするのは無理なこじつけにすぎないのである。詩の内容も全くこじつけそのものである。閨怨詩というのは机上の詩で現実感はなく、教坊曲であること、韋荘の女とはいえ通云っていた娼屋がそのままに部屋を置いておくわけもなくこじつけであるというしかない。

 nrika01