韋荘《小重山 天子の寵愛を失って昭陽殿に蟄居されて以来、春が過ぎまた春が過ぎ、秋の寒々とした独り寝で、時を知らせる音を聞く長き夜、帝の情け夢に見る。

 

2013年9月16日  同じ日の紀頌之5つのブログ
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小重山(小重山)

一閉昭陽春又春,夜寒宮漏永,夢君恩。

天子の寵愛を失って昭陽殿に蟄居されて以来、春が過ぎまた春が過ぎ、秋の寒々とした独り寝で、時を知らせる音を聞く長き夜、帝の情け夢に見る。

臥思陳事暗消魂,羅衣濕,紅袂有啼痕。

床台に横になり栄華の日々を思い偲んでいると、それでもなおという魂は消え失せてしまう。流す涙に薄絹の衣濡れ、紅の裳裾には涙の跡が消え残る。

 

歌吹隔重閽,繞庭芳草綠,倚長門。

宮中の重なる門に隔てられ、彼方より洩れ聞こえる楽の音や歌の声だけ、庭一面に春の芳しい草青くのび、長門に独り身を寄す。

萬般惆悵向誰論?凝情立,宮殿欲黃昏。

種々の愁い悲しむことを語るべき人もいない、思いふけるだけでただ佇めば、宮廷にもう黄昏が迫る。

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(小重山【しょうちょうざん】)

一たび昭陽に閉ざされ 春 又た春,夜 寒く 宮漏 永くして,君の恩 夢む。

臥して陳事を思い 暗に魂 消ゆ,羅衣 濕し,紅袂【こうべい】啼痕 有り。

 

歌吹 重閽を隔て,庭を繞れば 芳草 綠なり,長門に倚る。

萬般の惆悵 誰に向いて論ぜん?情を凝らして立てば,宮殿 黃昏ならんと欲す。

 

 

『小重山』 現代語訳と訳註

(本文)

小重山

一閉昭陽春又春,夜寒宮漏永,夢君恩。

臥思陳事暗消魂,羅衣濕,紅袂有啼痕。

 

歌吹隔重閽,繞庭芳草綠,倚長門。

萬般惆悵向誰論?凝情立,宮殿欲黃昏。

 

 

(下し文)

(小重山【しょうちょうざん】)

一たび昭陽に閉ざされ 春 又た春,夜 寒く 宮漏 永くして,君の恩 夢む。

臥して陳事を思い 暗に魂 消ゆ,羅衣 濕し,紅袂【こうべい】啼痕 有り。

 

歌吹 重閽を隔て,庭を繞れば 芳草 綠なり,長門に倚る。

萬般の惆悵 誰に向いて論ぜん?情を凝らして立てば,宮殿 黃昏ならんと欲す。

 

 

(現代語訳)

(小重山)

天子の寵愛を失って昭陽殿に蟄居されて以来、春が過ぎまた春が過ぎ、秋の寒々とした独り寝で、時を知らせる音を聞く長き夜、帝の情け夢に見る。

床台に横になり栄華の日々を思い偲んでいると、それでもなおという魂は消え失せてしまう。流す涙に薄絹の衣濡れ、紅の裳裾には涙の跡が消え残る。

宮中の重なる門に隔てられ、彼方より洩れ聞こえる楽の音や歌の声だけ、庭一面に春の芳しい草青くのび、長門に独り身を寄す。

種々の愁い悲しむことを語るべき人もいない、思いふけるだけでただ佇めば、宮廷にもう黄昏が迫る。

 

 

(訳注)

小重山

天子の寵愛を失った宮妓が宮廷の片隅の昭陽殿に蟄居され、春を過すのを重ねて嘆く様子を詠ったもの。特に後段は、重なる門の中の宮殿から聞こえて来る音楽、歌声と、春草はびこる庭のさま、夕暮れ等を通して、言い尽くせぬ胸中の悲しい思いを訴える。

『花間集』には六首所収されているが、韋荘の作は一首収められている。双調五十八字、前段三十字六句四平韻、後段二十八字六句四平韻で、⑦5③⑦3⑤/⑤5③⑦3⑤の詞形をとる。

 

 

一閉昭陽春又春,夜寒宮漏永,夢君恩。

天子の寵愛を失って昭陽殿に蟄居されて以来、春が過ぎまた春が過ぎ、秋の寒々とした独り寝で、時を知らせる音を聞く長き夜、帝の情け夢に見る。

○昭陽 漢の宮殿の名。

○宮漏永 夜が長いこと。宮漏は宮中の水時計。

○君恩 天子の恩寵。

 

臥思陳事暗消魂,羅衣濕,紅袂有啼痕。

床台に横になり栄華の日々を思い偲んでいると、それでもなおという魂は消え失せてしまう。流す涙に薄絹の衣濡れ、紅の裳裾には涙の跡が消え残る。

 

歌吹隔重閽,繞庭芳草綠,倚長門。

宮中の重なる門に隔てられ、彼方より洩れ聞こえる楽の音や歌の声だけ、庭一面に春の芳しい草青くのび、長門に独り身を寄す。

○重閽 幾重にも重なる門。ここでは幽閉された官女の居場所が昭陽殿の奥深くであることを言う。

○長門 前漢の武帝の時の宮殿の名。武帝の寵愛を久った陳皇后は長門宮に留め置かれた。ここでは、天子の寵愛を失った宮女が幽閉された居所を漢の長門宵になぞらえる。

 

萬般惆悵向誰論?凝情立,宮殿欲黃昏。

種々の愁い悲しむことを語るべき人もいない、思いふけるだけでただ佇めば、宮廷にもう黄昏が迫る。

○万般惆悵 さまざまな悲しみ。

○凝情 思いに耽る。

○欲黄昏 もう少しで夕暮れになる。欲は今にも~しそうだ、の意。
花蕊夫人006