牛嶠《感恩多二首 二》近頃ではあの人への思いが揺れ動き、いよいよ深まるばかり、あの人と過ごしたあの鴛鴦の掛け布団をおもうのです。これまで何度もあの人に手紙を送り、空を飛ぶ雁に託したものです。何の返事もないので、涙はしとどに襟を濡らしているのです。

 

 

2013年10月17日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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『花間集』継続中

 
感恩多二首 二 牛嶠【ぎゅうきょう】  Ⅹ

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感恩多二首

其一

(来ないぬ男を待ちわびる女の心情を詠う。)

兩條紅粉淚,多少香閨意。

まだうら若い赤い頬、おしろいにふた筋の涕が流れる。香の残りが濃く、薄く匂うこの閨には思いは残ったままなのです。

強攀桃李枝,斂愁眉。

無理やりに心をひきたて桃やスモモの花の枝を折り取り、自ら愁いを慰めるのです。ただ眉をひそめて愁いているだけなのです。

陌上鶯啼蝶舞,柳花飛。

男が通ってくるはずの大通りに春を告げる鶯が啼き、蝶は花に飛び舞い交うのです。そして、柳絮が飛んでいて、柳絮と男のうわさも一緒に飛んでくるのです。

柳花飛,願得郎心,憶家還早歸。

浮気者のあのひとの心に「わたしの家のことを思い、またすぐに帰ろうとしてくれる」と、そんな気持ちになってほしいのです。

 

感恩多 二首の一

兩條の紅粉の淚,多少 香閨【こうけい】の意。

強いて桃李の枝を攀【よ】じ,愁眉を斂【お】さむ。

陌上 鶯啼き蝶舞い,柳花飛び、柳花飛ぶ。

願わくば郎の心「家を憶いて還た早に歸らん。」を得ん。

 

其二

其の二(帰って来ないばかりか、連絡もない男を待ちわびる女の心情を詠う。)

自從南浦別,愁見丁香結。

南の入り江の津で舟を送り、別れをつげてからは、丁字の花の結ぶのを見ても心は悲しくうれうのです。

近來情轉深,憶鴛衾。

近頃ではあの人への思いが揺れ動き、いよいよ深まるばかり、あの人と過ごしたあの鴛鴦の掛け布団をおもうのです。 

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

これまで何度もあの人に手紙を送り、空を飛ぶ雁に託したものです。何の返事もないので、涙はしとどに襟を濡らしているのです。

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

涙はあふれ襟を濡らしてます。月にねがい天に祈って、わたしの思いを「君」に知ってほしいと願うのです。

 

感恩多 二首の二

南浦にて別れて自從【より】,丁香の結ぶを愁い見る。

近來 情 轉【うた】た深く,鴛衾【えんきん】を憶う。

幾度 將に書を煙鴈【えんがん】に托せる,淚 襟に盈ち,淚 襟に盈つ。

月に禮し 天に求む,願わくば 君が我が心を知れと。

嘉陵江111111
 

 

『感恩多二首』 現代語訳と訳註


(
本文)

牛嶠『感恩多二首』其二

自從南浦別,愁見丁香結。

近來情轉深,憶鴛衾。

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

 

 

(下し文)

感恩多 二首の二

南浦にて別れて自從【より】,丁香の結ぶを愁い見る。

近來 情 轉【うた】た深く,鴛衾【えんきん】を憶う。

幾度 將に書を煙鴈【えんがん】に托せる,淚 襟に盈ち,淚 襟に盈つ。

月に禮し 天に求む,願わくば 君が我が心を知れと。

 

 

(現代語訳)

其の二(帰って来ないばかりか、連絡もない男を待ちわびる女の心情を詠う。)

南の入り江の津で舟を送り、別れをつげてからは、丁字の花の結ぶのを見ても心は悲しくうれうのです。

近頃ではあの人への思いが揺れ動き、いよいよ深まるばかり、あの人と過ごしたあの鴛鴦の掛け布団をおもうのです。 

これまで何度もあの人に手紙を送り、空を飛ぶ雁に託したものです。何の返事もないので、涙はしとどに襟を濡らしているのです。

涙はあふれ襟を濡らしてます。月にねがい天に祈って、わたしの思いを「君」に知ってほしいと願うのです。

 

 

(訳注)

感恩多 二首之一

唐の教坊の曲名。『花間集』には牛嶠の二首のみ所収。㈱ほ、双調三十九字、前段十八字四旬二灰韻二平韻、後段二十一字五句三平韻で、❺❺⑤③/6③③4

 

其二

(帰って来ないばかりか、連絡もない男を待ちわびる女の心情を詠う。)

男と南の入り江で別れたとある、春の東から初夏の南と時間の経過を感じさせる。その時間経過は、女の蕾を女盛りを過ぎようとする時間経過も感じさせる。そして、その後の女の情を詠う。後段、これまで何度も手紙を出して釆たが、効果はなく、ただ涙に明け暮れる日々、どうか神様、あの人がこの私の思いを知ってくれますようにと、月や天に祈るほかはない苦しみを訴える。

 

 

自從南浦別,愁見丁香結。

南の入り江の津で舟を送り、別れをつげてからは、丁字の花の結ぶのを見ても心は悲しくうれうのです。

〇自從 〜から。

○南浦 南の入り江の津。船で行く男を見送る別離の場を象徴する。

『荷葉杯』其三 

楚女欲歸南浦,朝雨,濕愁紅。

小船搖漾入花裏,波起,隔西風。

・南浦 長江下流域の江南の港、浙江省、会稽、紹興をいう。

春から初夏への経過を感じさせ、女盛りを過ぎようとする時間経過も感じさせる。下句の「西風」で完全に別れてしまったことを感じさせるものである。

荷葉盃 三首 其三 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-306-5-#60  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3077

○丁香結 チョウジの花が開花の崎でも花びらが閉じたようになっていること。愁いに心が結ばれて解けぬ比喩。香の字を用いているのほ、チョウジの花を乾燥させたものが薬剤や香辛料として用いられたことによるもの

 

 

近來情轉深,憶鴛衾。

近頃ではあの人への思いが揺れ動き、いよいよ深まるばかり、あの人と過ごしたあの鴛鴦の掛け布団をおもうのです。 

○憶鴛衾 オシドリ模様の掛け布団を偲ぶ。かつて男と同衾した時のことを追想した語である。

 

 

幾度將書托煙鴈,淚盈襟。

これまで何度もあの人に手紙を送り、空を飛ぶ雁に託したものです。何の返事もないので、涙はしとどに襟を濡らしているのです。

○幾度將書托煙鴈 何度も手紙を送ったが、手紙にはなしのつぶてであったこと。将は〜を。雁は手紙を運ぶ使者。これと同じものは温庭筠にもある

温庭筠『酒泉子 (四)』

楚女不歸,樓枕小河春水。

月孤明,風又起,杏花稀。

斜簪雲鬟重,裙上金縷鳳。

八行書,千裏夢,雁南飛。

 

 

淚盈襟,禮月求天,願君知我心。

涙はあふれ襟を濡らしてます。月にねがい天に祈って、わたしの思いを「君」に知ってほしいと願うのです。
鸕鶿001