張泌《浣渓沙 十首 其八》小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。簾腰に庭の杏もここの女も春を過して枯れ落ちている。花の香り、お香もすでに斷垂れ薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。
浣渓沙 十首 其八 張泌【ちょうひつ】 ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-346-7-#8 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3277
浣渓沙 十首 其八
(年を取ってきて女は奥まった部屋に入れられたままで誰も訪れない。簾越しにあんずの花も枯れているのが見え侘しい思いの女妓の気持ちを詠う。)
偏戴花冠白玉簪,睡容新起意沉吟,翠鈿金縷鎮眉心。
髷は傾き、花の冠をつけ、輝く宝飾の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっとつぶやいている。翡翠や鈿飾、金の細い絲のかざり、それなのに眉をひそめ、沈んだ心のままである。
小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧鏁愁深。
小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。簾腰に庭の杏もここの女も春を過して枯れ落ちている。花の香り、お香もすでに斷垂れ薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。
浣渓沙 十首 其の八
偏戴 花冠 白玉の簪,睡容 新起 意沉吟,翠鈿 金縷 鎮眉心。
小檻 日斜 風悄悄たり,簾を隔てて零落 杏花の陰,斷香 輕碧 鏁愁深し。
『浣渓沙 十首』 現代語訳と訳註
(本文)
浣渓沙 十首 其八
偏戴花冠白玉簪,睡容新起意沉吟,翠鈿金縷鎮眉心。
小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧鏁愁深。
(下し文)
浣渓沙 十首 其の八
偏戴 花冠 白玉の簪,睡容 新起 意沉吟,翠鈿 金縷 鎮眉心。
小檻 日斜 風悄悄たり,簾を隔てて零落 杏花の陰,斷香 輕碧 鏁愁深し。
(現代語訳)
(年を取ってきて女は奥まった部屋に入れられたままで誰も訪れない。簾越しにあんずの花も枯れているのが見え侘しい思いの女妓の気持ちを詠う。)
髷は傾き、花の冠をつけ、輝く宝飾の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっとつぶやいている。翡翠や鈿飾、金の細い絲のかざり、それなのに眉をひそめ、沈んだ心のままである。
小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。簾腰に庭の杏もここの女も春を過して枯れ落ちている。花の香り、お香もすでに斷垂れ薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。
(訳注)
浣渓沙 十首 其八
(年を取ってきて女は奥まった部屋に入れられたままで誰も訪れない。簾越しにあんずの花も枯れているのが見え侘しい思いの女妓の気持ちを詠う。)
偏戴花冠白玉簪,睡容新起意沉吟,翠鈿金縷鎮眉心。
髷は傾き、花の冠をつけ、輝く宝飾の簪が揺れ,よこになってねむり、そして、新たに起きあがり、思いをそっとつぶやいている。翡翠や鈿飾、金の細い絲のかざり、それなのに眉をひそめ、沈んだ心のままである。
・偏戴花冠白玉簪 女の閨での現在のようすをいう。髷は傾き、花の冠をつけ、輝く宝飾の簪が揺れる。
・睡容新起意沉吟 この句はいまの女の心の動きを詠う。・沉吟 思い迷う,決めかねてぶつぶつ呟(つぶ/や)く.・睡容 ねすがた。
・翠鈿金縷鎮眉心 ・翠:翡翠のかざり。・鈿:古代婦女の顔面の上に飾物をつけること。
温庭筠『菩薩蠻 九』
牡丹花謝莺聲歇,綠楊滿院中庭月。
相憶夢難成,背窗燈半明。
翠鈿金壓臉,寂寞香閨掩。
人遠淚闌幹,燕飛春又殘。
『菩薩蠻 九』温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-9-9-#9 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1652
・縷 金の糸。また、金色の糸。
小檻日斜風悄悄,隔簾零落杏花陰,斷香輕碧鏁愁深。
小さな檻のようなこの閨に、斜になった日のひかりがさし、風はショウショウと静かでもの寂しくふいている。簾腰に庭の杏もここの女も春を過して枯れ落ちている。花の香り、お香もすでに斷垂れ薄く明るい緑色に染まり、部屋の鍵は締まっていて、愁いは深くなるだけなのだ。
・檻 猛獣や罪人が逃げないように入れておく、鉄格子などを使った頑丈な囲い、または室。
・悄悄 1 元気がなく、うちしおれているさま。悄然。「―として引き返す」 2 静かでもの寂しいさま。 すご‐すご【悄悄】: [副]気落ちして元気がないさま。また、元気なくその場をたち去るさま
・杏花 ピンク色の花。 桜とよく似ている。 開花は桜より少しだけ早いようだ。 幹の部分は桜と同じく 横向きの線が入る。閨怨詩では女性自身に喩えられる。
・鏁 ①. [0] 戸・箱の蓋(ふた)などにつけて,自由に開閉できないようにする金具。 「 -をさす」 「 -をおろす」. ②. [1] 錠剤。