窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

        
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14-342《浣溪紗九首(2)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-525-14-(342)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4172

 

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

             

浣溪沙九首           其三

             

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

             

             

             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

花間集02
 

 

 

『浣溪沙九首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其二

桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

             

 

(下し文)

浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

 

(現代語訳)

(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 珠櫻001


 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。花間集の他の作品は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『浣溪紗』五十六首

 

 

作者名/

初句

 

 

韋荘(韋相莊)巻二

 

浣溪沙 其一

清曉粧成寒食天

 

 

 

 

浣渓沙 其二 (欲上鞦韆四體傭) 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-265-5-#19  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2872

欲上鞦韆四體慵

 

 

 

 

浣渓沙 其三 (惆悵夢餘山月斜) 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-266-5-#20  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2877

惆悵夢餘山月斜

 

 

 

 

浣渓沙 其四 (緑樹藏鶯鴬正啼) 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-267-5-#21  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2882

綠樹藏鶯鶯正啼

 

 

 

 

浣渓沙 其五 (夜夜相思更漏殘) 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-268-5-#22  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2887

夜夜相思更漏殘

 

 

薛昭蘊(薛侍郎昭蘊)巻三

 

浣溪紗八首 其一

紅蓼渡頭秋正雨

 

 

 

 

浣溪紗八首 其二

鈿匣菱花錦帶垂

 

 

 

 

浣溪紗八首 其三

粉上依稀有淚痕

 

 

 

 

浣溪紗八首 其四 

握手河橋柳似金

 

 

 

 

浣溪紗八首 其五

簾下三間出寺牆

 

 

 

 

浣溪紗八首 其六

江館清秋纜客舡

 

 

 

 

浣溪紗八首 其七

傾國傾城恨有餘

 

 

 

 

浣溪紗八首 其八

越女淘金春水上

 

 

張泌(張舍人泌)

 

浣渓沙 十首 其一

花滿驛亭香露細

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其二

早是出門長帶月

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其三

雲雨自從分散後

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其四

依約殘眉理舊黃

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其五

微雨小庭春寂寞

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其六 

天上人間何處去

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其七

人不見時還暫語

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其八 

小檻日斜風悄悄

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其九 

消息未通何計是

 

 

 

 

浣渓沙 十首 其十 

飲散黃昏人草草

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

浣紗溪一首

春水輕波浸綠苔

 

 

欧陽烱(歐陽舍人烱)

 

浣渓沙 三首 其一

落絮殘鶯半日天

 

 

 

 

浣渓沙 三首 其二

天碧羅衣拂地垂

 

 

 

 

浣渓沙 三首 其三

相見休言有淚珠

 

 

(顧太尉

 

13-304《浣溪紗八首,其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-487-13-(304) 花間集 巻第六漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ

春色迷人恨正

 

 

 

 

13-305《浣溪紗八首,其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-488-13-(305) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3987

紅藕香寒翠渚平

 

 

 

 

13-306《浣溪紗八首,其三》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-489-13-(306) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3992

荷芰風輕簾幕香

 

 

 

 

13-307《浣溪紗八首,其四》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-490-13-(307) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3997

惆悵經年別謝娘

 

 

 

 

13-308《浣溪紗八首,其五》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-491-13-(308) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4002

庭菊飄黃玉露濃

 

 

 

 

13-309《浣溪紗八首,其六》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-492-13-(309) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4007

雲澹風高葉亂飛

 

 

 

 

13-310《浣溪紗八首,其七》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-493-13-(310) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4012

鴈響遙天玉漏清

 

 

 

 

13-311《浣溪紗八首,其八》顧太尉顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-494-13-(311) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4017

露白蟾明又到秋

 

 

孫光憲(孫少監光憲)

 

浣溪紗九首其一

蓼岸風多橘柚香

 

 

 

 

浣溪紗九首其二

桃杏風香簾幕閑

 

 

 

 

浣溪紗九首其三

花漸凋疎不耐風

 

 

 

 

浣溪紗九首其四

攬鏡無言淚欲流

 

 

 

 

浣溪紗九首其五

半踏長裾宛約行

 

 

 

 

浣溪紗九首其六

蘭沐初休曲檻前

 

 

 

 

浣溪紗九首其七

風遞殘香出繡簾

 

 

 

 

浣溪紗九首其八

輕打銀箏墜鷰泥

 

 

 

 

浣溪紗九首其九

烏帽斜欹倒佩魚

 

 

閻選(閻處士選)

 

浣溪紗一首

寂寞流蘇冷繡茵

 

 

毛熙震(毛秘書熙震)

 

浣溪紗七首其一

春暮黃鶯下砌前

 

 

 

 

浣溪紗七首其二

花榭香紅煙景迷

 

 

 

 

浣溪紗七首其三

晚起紅房醉欲銷

 

 

 

 

浣溪紗七首其四

一隻橫釵墜髻叢

 

 

 

 

浣溪紗七首其五

雲薄羅裙綬帶長

 

 

 

 

浣溪紗七首其六

碧玉冠輕裊鷰釵

 

 

 

 

浣溪紗七首其七

半醉凝情臥繡茵

 

 

李絢(李秀才珣)

 

浣溪紗四首其一

入夏偏宜澹薄粧

 

 

 

 

浣溪紗四首其二

晚出閑庭看海棠

 

 

 

 

浣溪紗四首其三

訪舊傷離欲斷魂

 

 

 

 

浣溪紗四首其四

紅藕花香到檻頻

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其二

(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う) 

 

桃杏 風香 簾幕閑,謝家 門 約花關,畫梁 幽語 鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

・桃杏風香 桃・杏・香は春の代名詞。

・簾幕閑,閨にかかる簾、幃、幔幕の中は静かなものだ。

・謝家門 謝家 美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。謝家聯雪 晋の謝道韞の雪のことをよんだ才の故事をいう。小女で詩才あることを褒める場合にこの故事をひく。「還有一年冬天,天空中雪花紛紛揚揚,謝家子弟正圍坐在火爐旁談詩論文。雪越下越大,謝安笑了笑問在座的侄兒侄女們:“白雪紛紛何所似(大雪紛紛而下像什麼樣子)?”

謝朗答道:“撒鹽空中差可擬(像是空中撒下的一把白花花的鹽)。”謝朗是謝安的二哥謝據的兒子,謝安聽了侄兒的回答後,沒置可否,只是默不作聲。

謝道韞隨即答道:“未若柳絮因風起(滿天飛舞的雪花就像春天隨風起舞的柳絮)。”聽了謝道韞的回答,謝安一面鼓掌,一面口中對謝道韞的才華贊賞不已。此後,人們稱有文學才能的女子為“詠絮之才”。」

魚玄機 卷804_46『和人次韻』

喧喧朱紫雜人寰,獨自清吟日色間。

何事玉郎搜藻思,忽將瓊韻扣柴關。

白花發詠慚稱謝,僻巷深居謬學顏。

不用多情欲相見,松蘿高處是前山。

和人次韻 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-118-53-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2137

約花關 花が咲いていてもそのまま枯らせてしまうという意。約はしめくくる。

・畫梁 いろどられた梁の上。愛妾の棲む花街の高楼の庇の下でツバメが巣作りをするところ。

・幽語 その前までは燕が啼いて囀っていたが今はひっそりとして啼くものがいない。この語は女が年を取ってきて誰も寄り付かなくなったということを意味する。

・鷰初還 春からいたツバメが帰って行っていなくなったこと。

 

繡閣 數行 題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

・繡閣 窓にうす絹のししゅうのはいっていて、壁や柱が鮮やか色で輝く高閣

・數行 しばしば出かける。

・題了壁 この語は、前聯に謝家という語があり、その注文に示したように詩の上手い女妓をいうもので、ここは詩を壁に書いたということ。

・曉屏 明け方まで眠れず、そらがしらみはじめるとへやのなかにあるびょうぶがそとのうすあかりでわかる、そして、屏風に朝日のあかりが当たり始める様子をいう。

・一枕 眠れていないので、またうとうととすること。

・酒醒山 やっと眠ろうとするけれど、今度は酔いが醒めて眼が冴える様子をいう。

・卻疑 自分のすることに疑いを持つこと。

・身是 自分自身の身の諸仕方がよくわからない様子をいう。

・夢魂間。夢とうつつを行ったり来たりすること。