(劉郎のように家に帰らなくなった男が、漁師の歌う舟歌を聞きながら、次の港の女のもとにむかう)黃の鵲が啼けばあの娘に会えるというけれど、叫んでいるからすぐ会えるというものの、白鷗はもう岸辺で眠ってしまったのだろう、こんな劉郎のように我が家は遠く、廣く、疎ましくなってしまったことは誰が似てしまったのだろうか

 
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14-400

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花間集には、教坊曲『漁歌子』は八首所収されている。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『漁歌子』八首

 

 

作者



初句7字

 

 

(顧太尉

巻七

漁歌子一首

曉風清,幽沼綠,

 

 

孫少監光憲

巻八

漁歌子二首其一

草芊芊,波漾漾,

 

 

巻八

漁歌子二首其二

泛流螢,明又滅,

 

 

魏太尉承班

巻九

漁歌子一首

柳如眉,雲似髮。

 

 

李秀才珣

巻十

漁歌子四首其一

草芊芊,花簇簇,

 

 

巻十

漁歌子四首其二

荻花秋,瀟湘夜,

 

 

巻十

漁歌子四首其三

柳垂絲,花滿樹,

 

 

巻十

漁歌子四首其四

九疑山,三湘水,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漁歌子二首其一

(劉郎のように家に帰らなくなった男が、漁師の歌う舟歌を聞きながら、次の港の女のもとにむかう)

草芊芊,波漾漾,湖邊艸色連波漲。       

草草はのびて芊芊と茂ってきた、浪は岸辺を溢れんばかりに漾漾と打ち寄せる。湖の岸辺には草は伸びて若草色は連綿と続き、水面は波立って漲っている。

沿蓼岸,泊楓汀,天際玉輪初上。          

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけてゆく、湊には船が停泊して水内際に色づいた楓の木が水面に映す、やがて水平線から満月が昇り始める。

扣舷歌,聯極望,槳聲伊軋知何向。       

月が昇るのを待って漁師が「舷歌」歌いだす、歌が終われば続いて詠いだし、遠く望んで詠うのである。船の水きり音や櫂のきしむ音が歌に和せて舟は何処の港に向かっていくのか歌で知るのだ。

黃鵲叫,白鷗眠,誰似儂家疏曠。          

黃の鵲が啼けばあの娘に会えるというけれど、叫んでいるからすぐ会えるというものの、白鷗はもう岸辺で眠ってしまったのだろう、こんな劉郎のように我が家は遠く、廣く、疎ましくなってしまったことは誰が似てしまったのだろうか

(漁歌子二首其の一)

草 芊芊,波 漾漾,湖邊 艸色 連波漲る。   

蓼岸【りょうがん】に沿い,楓汀に泊る,天の際 玉輪 初めて上る。    

舷歌に扣き,聯とし極まりて望む,槳聲 伊に軋き 何に向うかを知る。 

黃鵲は叫び,白鷗は眠る,誰ぞ似る 儂家 疏曠するを。

             

漁歌子二首其二

泛流螢,明又滅,夜涼水冷東灣闊。             

風浩浩,笛寥寥,萬頃金波澄澈。   

杜若洲,香郁烈,一聲宿鴈霜時節。             

經霅水,過松江,盡屬濃家日月。   

roudai112
 

 

『漁歌子二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

漁歌子二首其一

草芊芊,波漾漾,湖邊艸色連波漲。             

沿蓼岸,泊楓汀,天際玉輪初上。   

扣舷歌,聯極望,槳聲伊軋知何向。             

黃鵲叫,白鷗眠,誰似儂家疏曠。   

 

(下し文)

(漁歌子二首其の一)

草 芊芊,波 漾漾,湖邊 艸色 連波漲る。          

蓼岸【りょうがん】に沿い,楓汀に泊る,天の際 玉輪 初めて上る。             

舷歌に扣き,聯とし極まりて望む,槳聲 伊に軋き 何に向うかを知る。          

黃鵲は叫び,白鷗は眠る,誰ぞ似る 儂家 疏曠するを。      

 

(現代語訳)

(劉郎のように家に帰らなくなった男が、漁師の歌う舟歌を聞きながら、次の港の女のもとにむかう)

草草はのびて芊芊と茂ってきた、浪は岸辺を溢れんばかりに漾漾と打ち寄せる。湖の岸辺には草は伸びて若草色は連綿と続き、水面は波立って漲っている。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけてゆく、湊には船が停泊して水内際に色づいた楓の木が水面に映す、やがて水平線から満月が昇り始める。

月が昇るのを待って漁師が「舷歌」歌いだす、歌が終われば続いて詠いだし、遠く望んで詠うのである。船の水きり音や櫂のきしむ音が歌に和せて舟は何処の港に向かっていくのか歌で知るのだ。

黃の鵲が啼けばあの娘に会えるというけれど、叫んでいるからすぐ会えるというものの、白鷗はもう岸辺で眠ってしまったのだろう、こんな劉郎のように我が家は遠く、廣く、疎ましくなってしまったことは誰が似てしまったのだろうか

 

(訳注)

漁歌子二首其一

花間集には、教坊曲『漁歌子』は八首所収されている。双調五十字、前後二十五字六句四仄韻、3❸❼❸❻/3❸❼❸❻の詞形をとる。若いころの放蕩を改め、風流、興を感じる隠士の生活を詠うものを基本とする。

 

草芊芊,波漾漾,湖邊艸色連波漲。

草草はのびて芊芊と茂ってきた、浪は岸辺を溢れんばかりに漾漾と打ち寄せる。湖の岸辺には草は伸びて若草色は連綿と続き、水面は波立って漲っている。

○芊 芊(芊眠)《書》草木の茂るさま.

○漾漾 漾とは。意味や日本語訳。[]こぼれる,溢れる酒漾出来酒が溢れる.上漾出笑容笑顔がこぼれる.水がゆらゆら揺れる,たゆとう漾同前

 

沿蓼岸,泊楓汀,天際玉輪初上。 

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけてゆく、湊には船が停泊して、水内際に色づいた楓の木が水面に映す、やがて水平線から満月が昇り始める。

○夜泊楓江 「月落烏啼霜滿天,江楓漁父對愁眠。 姑蘇城外寒山寺,夜半鍾聲到客船。」

○汀 海・湖などの,波が打ち寄せる所。波うちぎわ。みぎわ。

○玉輪【ぎょくりん】月の異称。

○蓼岸 岸辺には蓼がしげる。風に揺れることをイメージさせる。

孫光憲『浣溪沙九首其一』

蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

(秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

 

扣舷歌,聯極望,槳聲伊軋知何向。     

月が昇るのを待って漁師が「舷歌」歌いだす、歌が終われば続いて詠いだし、遠く望んで詠うのである。船の水きり音や櫂のきしむ音が歌に和せて舟は何処の港に向かっていくのか歌で知るのだ。

○扣える【ひかえる・控える】 1㋐用事や順番に備えて、すぐ近くの場所にいて待つ。待機する。㋑目立たないようにしてそばにいる。㋒空間的・時間的に迫っている。近くに位置する。また、近い将来に予定される。

2・㋐度を越さないように、分量・度数などを少なめにおさえる。節制する。㋑自制や配慮をして、それをやめておく。見合わせる。㋒空間的・時間的にすぐ近くにある。近い所に持つ。あまり時を置かないで予定している。㋓忘れないように、また、念のため書きとめておく。㋔衣服などを、おさえつかんで、行かせないようにする。引きとめる。㋕引く。引っぱる。

○舷歌 漁父が船端を叩きながらうたった舟歌。

韓愈『湘中』

猿愁魚踊水翻波、自古流傳是汨羅。

蘋藻満盤無塵奠、空聞漁父叩舷歌

(湘中) 

猿愁え魚踊って水波を翻【ひるがえ】し、古【いにし】え自【よ】り流伝す走れ汨羅【べきら】たりと。

頻藻【ひんそう】盤に満つるも奠【そな】うる処無く、空しく聞く漁父の舷【ふなばた】を叩いて歌うを

猿は悲しげな鳴き声をあげ、魚ははねて、川の水は波をわきたたせている。昔からの言い伝えによれば、ここが旧羅なのだという。

水草は皿いっぱいに盛ったが、さてどこにそなえて屈原の霊を祭ったものだろう。屈原に対して漁父が船端を叩きながらうたった舟歌がいまはむなしく聞こえてくる。

○槳聲 船の水きり音。

 

黃鵲叫,白鷗眠,誰似儂家疏曠。 

黃の鵲が啼けばあの娘に会えるというけれど、叫んでいるからすぐ会えるというものの、白鷗はもう岸辺で眠ってしまったのだろう、こんな劉郎のように我が家は遠く、廣く、疎ましくなってしまったことは誰が似てしまったのだろうか

1 水路を分けて通す。「疏水・疏通」2 関係が分け離れる。うとくなる。「疏遠」3 粗末な。「疏食(そし)4 事柄の筋を分けていちいち説明する。
隋堤01