あのころは寝牀のまわりに翡翠の飾りのついた屏風をそばにたたせ、銀の燭台をその前に立てて、漏刻が知らせてくれるぎりぎりの時間まで、素晴らしい夜をこれ以上の幸せは無いものと、ゆっくりと過ごせたものだ。

 
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8-420《思越人一首》張泌Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-603-8-(420)  四巻漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4562

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『思越人』四首

 

 

作者



初句7字

 

 

張舍人泌

巻四

思越人一首

鷰雙飛,鶯百囀

 

 

孫少監光憲

巻八

思越人二首其一

古臺平,芳艸遠

 

 

巻八

思越人二首其一

渚蓮枯,宮樹老,

 

 

鹿太保虔扆

巻九

思越人一首

翠屏欹,銀燭背

 

 

 

 

 

 

 

 

思越人

(好ましいあの客と過ごした思い出にひたる毎日を詠う。)

翠屏欹,銀燭背,漏殘清夜迢迢。

あのころは寝牀のまわりに翡翠の飾りのついた屏風をそばにたたせ、銀の燭台をその前に立てて、漏刻が知らせてくれるぎりぎりの時間まで、素晴らしい夜をこれ以上の幸せは無いものと、ゆっくりと過ごせたものだ。

雙帶繡窠盤錦薦,淚浸花暗香銷。

二つの帯を並べ、鳳凰の刺繍のかけ布団、錦のからまりあったベッド敷きシーツ、その二は、涙がしみこみ、花のように輝いていた女は暗く沈みこみ、お香も消えて久しい。

珊瑚枕膩鴉鬟亂,玉纖慵整雲散。

あの人との思い出は、珊瑚の髪飾り、枕に染みついた皮脂、女の結った髪は乱れたままだ。白くて細く綺麗な指や、細身の体には何にもする気にならないしぐさばかりであり、嘗ての妖艶さは雲が散ったようにどこにも見えない。

若是適來新夢見,離腸爭不千斷

もしあの人がここへ来てくれるなら、新しい夢を見ることが出来、離れている下半身はズタズタに斬り断たれることなどなくまじりあうことになるだろう。

 

(思越人)

翠屏は欹だて,銀燭は背にす,漏殘の清夜 迢迢たり。

雙帶 繡窠 盤錦薦し,淚浸し 花暗く 香銷す。

珊瑚 枕膩 鴉鬟【あかん】亂して,玉纖 慵整し 雲散す。

若し是れ 適來すれば 新らたに夢め見,離腸すれども 千斷することなく爭す。

 

 

『思越人』 現代語訳と訳註

(本文)

思越人

翠屏欹,銀燭背,漏殘清夜迢迢。

雙帶繡窠盤錦薦,淚浸花暗香銷。

珊瑚枕膩鴉鬟亂,玉纖慵整雲散。

若是適來新夢見,離腸爭不千斷。

 

 

(下し文)

(思越人)

翠屏は欹だて,銀燭は背にす,漏殘の清夜 迢迢たり。

雙帶 繡窠 盤錦薦し,淚浸し 花暗く 香銷す。

珊瑚 枕膩 鴉鬟【あかん】亂して,玉纖 慵整し 雲散す。

若し是れ 適來すれば 新らたに夢め見,離腸すれども 千斷することなく爭す。

 

(現代語訳)

(好ましいあの客と過ごした思い出にひたる毎日を詠う。)

あのころは寝牀のまわりに翡翠の飾りのついた屏風をそばにたたせ、銀の燭台をその前に立てて、漏刻が知らせてくれるぎりぎりの時間まで、素晴らしい夜をこれ以上の幸せは無いものと、ゆっくりと過ごせたものだ。

二つの帯を並べ、鳳凰の刺繍のかけ布団、錦のからまりあったベッド敷きシーツ、その二は、涙がしみこみ、花のように輝いていた女は暗く沈みこみ、お香も消えて久しい。

あの人との思い出は、珊瑚の髪飾り、枕に染みついた皮脂、女の結った髪は乱れたままだ。白くて細く綺麗な指や、細身の体には何にもする気にならないしぐさばかりであり、嘗ての妖艶さは雲が散ったようにどこにも見えない。

もしあの人がここへ来てくれるなら、新しい夢を見ることが出来、離れている下半身はズタズタに斬り断たれることなどなくまじりあうことになるだろう。

 

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(訳注)

思越人

(好ましいあの客と過ごした思い出にひたる毎日を詠う。)

『花間集』には四首所収。張泌の作は一首収められている。双調五十一字、前段二十五字五句二平韻、後段二十六字四句四仄韻で、33⑥7⑥/❼❻❼❻の詞形をとる。なお、『花間集』の思越人は鷓鴣天、思佳客、醉梅花の異名があるが、時代がもう少しあとになるもので無関係である。

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翠屏欹,銀燭背,漏殘清夜迢迢。

あのころは寝牀のまわりに翡翠の飾りのついた屏風をそばにたたせ、銀の燭台をその前に立てて、漏刻が知らせてくれるぎりぎりの時間まで、素晴らしい夜をこれ以上の幸せは無いものと、ゆっくりと過ごせたものだ。

翠屏 翡翠の飾りのついた屏風。寝牀のまわりに立てる。

迢迢 1 はるかに遠いさま。2 他より高いさま。また、すぐれているさま。

 

雙帶 繡窠 盤錦薦,淚浸 花暗 香銷。

二つの帯を並べ、鳳凰の刺繍のかけ布団、錦のからまりあったベッド敷きシーツ、その二は、涙がしみこみ、花のように輝いていた女は暗く沈みこみ、お香も消えて久しい。

繡窠 二人で一つになった刺繍で飾った布団。窠:巣,ねぐら,做窠巣をつくる.

 からまりあう

 (1) 推薦する,推挙する.(2) 草.(3) むしろ,ござ、草荐ベッドに敷くござ.

 

珊瑚 枕膩 鴉鬟亂,玉纖 慵整 雲散。

あの人との思い出は、珊瑚の髪飾り、枕に染みついた皮脂、女の結った髪は乱れたままだ。白くて細く綺麗な指や、細身の体には何にもする気にならないしぐさばかりであり、嘗ての妖艶さは雲が散ったようにどこにも見えない。

枕膩 枕の赤、油汚れ。

鴉鬟【あかん】①黒い髪の毛。 ②髪の結い方の一つ。あげまき。また、その髪に結った少年・少女。 ③召使の女。

玉纖 指が白くて細く綺麗な様子。

 ものうい。けだるい。夢や目標がない様子。

 

若是 適來 新夢見,離腸 爭不千斷。

もしあの人がここへ来てくれるなら、新しい夢を見ることが出来、離れている下半身はズタズタに斬り断たれることなどなくまじりあうことになるだろう。
紅莓苔子002