(後宮の妃嬪と雖も、庭に咲く花のように儚い人生を過ごすことになると詠う)後宮の妃嬪は越産の新しくて軽いうす絹の茜色で鮮やかな小袖からほのかに香りが届く、うでには、らせん状に巻いた金の腕飾りが小袖の下に透けて見えて華やかな気分をつたえる。

 
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19-500《後庭花三首,其三》十巻 毛熙震唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-683-19-(500)  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4962

 

 

(後宮の妃嬪は、嫁いできたときにこれ以上ないほどの扱いを受けるが、それも、綺麗な真珠に傷がついたら棄てられるように、寵愛を失ってしまうと詠う。)

後庭花三首       其一

           鶯啼鷰語芳菲節,瑞庭花發。

           昔時懽宴歌聲揭,管絃清越。

           自從陵谷追遊歇,畫梁塵

           傷心一片如珪月,閑鏁宮闕。

              鶯が春の訪れを告げ、梁の上の燕は子育ての語らいをする春の盛りはの草花の香りの季節である。庭の端々にまで花が咲いている。

少し前はそんなことの上に、宴に歌声が合わせ、笛や、琴の演奏は清らかに抑揚し、宴も盛んに楽しんだものだ。

そして自分から丘に遊び、谷を越えて寸暇を惜しんで遊んだのであり、綺麗に画かれた梁の上に乗る塵までも艶めかしいものであった。

それがどうだ、玉のような月に一片の傷がついてしまってからは、後宮への門も潜り戸も全部閉じられて誰の行き来もないのである。(その時に子が出来なければ、妃嬪の役割は終わる。)

 

(後庭花三首 其の一)

鶯啼き鷰語る 芳菲の節,瑞庭 花發く。

昔時 宴を懽しみ 歌聲揭げ,管絃 清越す。

自ら陵谷遊を追い歇むにより,畫梁の塵はなり

一片に傷心す 珪月の如し,宮闕を閑鏁【へいじょう】す。

 

(後宮で繰り広げられる宴に多くの妓優たちの踊り、歌は響き渡る、目に留まった妓優はその日から夢のような暮らしが始まる。)

後庭花三首       其二

           輕盈舞妓含芳豔,競粧新臉。

           步搖珠翠脩蛾斂,膩鬟雲染。

           歌聲慢發開檀點,繡衫斜掩。

           時將纖手勻紅臉,笑拈金靨。

軽やかに舞い踊る歌妓たちは宴の中心に溢れるほど一杯になっていて、その艶めかしさと芳しい香りは歌妓たちから風に乗って溢れている。

ゆっくりと揺れ動く歌妓たちは、真珠と翡翠に飾られ、繭も美しい若い娘たちである。油で固めて結われた黒髪は雲型である。

歌声の歌妓たちは、炎の中に点々と声を発し、眼に泊まった歌妓の刺繍で飾られた上衣は、閨の壁に掛けられた。

その時、まさにか細い指、手も紅く染まった頬も顔も抱かれたのである。笑いに包まれ微笑には金に値するえくぼが可愛い。

(後庭花三首 其の二)

風は輕やかな、芳豔を含んで舞妓を盈つ,粧を競うて臉を新たにす。

步搖 珠翠 蛾斂を脩め,膩鬟 雲染す。

歌聲 慢ろに發つ 檀點を開き,繡衫 斜に掩う。

時將に纖手 紅臉を勻しゅうす,笑 金靨を拈す。

             

(後宮の妃嬪と雖も、庭に咲く花のように儚い人生を過ごすことになると詠う)

後庭花三首       其三

           越羅小袖新香蒨,薄籠金釧。

           倚欄無語搖輕扇,半遮勻面。

           春殘日暖鶯嬌懶,滿庭花片。

           爭不教人長相見,畫堂深院。

後宮の妃嬪は越産の新しくて軽いうす絹の茜色で鮮やかな小袖からほのかに香りが届く、うでには、らせん状に巻いた金の腕飾りが小袖の下に透けて見えて華やかな気分をつたえる。

その妃嬪は今日も高楼の欄干にもたれて、話すこともなく軽く扇を手に揺らし、ただボーとしている。お化粧を整えた顔を半ば扇で隠すようにして美しい。

春の日は、長くなってゆき、長閑に過ぎてゆき、日々あたたかくなってゆく、鶯も美しく鳴くけれど、いつも聞いていると、何処か物憂げに聞こえてくる。花が一杯に咲いていた、この宮殿の庭にも、花弁が散り、敷いている。

あのお方に合うことが出来なくなって随分経過しているが、どうして、逢おうとしてくれないのだろうか、後宮の奥深い静かな奥座敷の中にはで精一杯生きて行く。

(後庭花三首其の三)

越羅の小袖 新らたに香蒨せり,金釧を薄籠す。

欄に倚れど語ること無く輕く扇を搖し,半ば勻面を遮る。

春殘り 日暖く鶯嬌 懶き,花片 庭に滿つ。

爭せしめず 人長らく相い見するを,畫堂 院を深くす。

 

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『後庭花』五首

 

 

孫少監光憲

巻八

後庭花二首其一

景陽鐘動宮鶯囀,

 

 

 

巻八

後庭花二首其二

石城依舊空江國,

 

 

毛秘書熙震

巻十

後庭花三首其一

鶯啼鷰語芳菲節,

 

 

 

巻十

後庭花三首其二

輕盈舞妓含芳豔,

 

 

 

巻十

後庭花三首其三

越羅小袖新香蒨,

 

 

 

 

 

 

 

 

touRAKUYOjou1000

 唐時代の後宮の姥捨て山であった、洛陽の上陽宮。
 

『後庭花三首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

後庭花三首           其三

越羅小袖新香蒨,薄籠金釧。

倚欄無語搖輕扇,半遮勻面。

春殘日暖鶯嬌懶,滿庭花片。

爭不教人長相見,畫堂深院。

 

 

(下し文)

(後庭花三首其の三)

越羅の小袖 新らたに香蒨せり,金釧を薄籠す。

欄に倚れど語ること無く輕く扇を搖し,半ば勻面を遮る。

春殘り 日暖く鶯嬌 懶き,花片 庭に滿つ。

爭せしめず 人長らく相い見するを,畫堂 院を深くす。

 

 

(現代語訳)

(後宮の妃嬪と雖も、庭に咲く花のように儚い人生を過ごすことになると詠う)

後宮の妃嬪は越産の新しくて軽いうす絹の茜色で鮮やかな小袖からほのかに香りが届く、うでには、らせん状に巻いた金の腕飾りが小袖の下に透けて見えて華やかな気分をつたえる。

その妃嬪は今日も高楼の欄干にもたれて、話すこともなく軽く扇を手に揺らし、ただボーとしている。お化粧を整えた顔を半ば扇で隠すようにして美しい。

春の日は、長くなってゆき、長閑に過ぎてゆき、日々あたたかくなってゆく、鶯も美しく鳴くけれど、いつも聞いていると、何処か物憂げに聞こえてくる。花が一杯に咲いていた、この宮殿の庭にも、花弁が散り、敷いている。

あのお方に合うことが出来なくなって随分経過しているが、どうして、逢おうとしてくれないのだろうか、後宮の奥深い静かな奥座敷の中にはで精一杯生きて行く。

 大毛蓼003

(訳注)

後庭花三首     其三

(後宮の妃嬪と雖も、庭に咲く花のように儚い人生を過ごすことになると詠う)

後宮の妃嬪はえらばれることが第一で、その後の人生は、その当初寵愛を受けた時に懐妊するかしないかで、人生は劇的に変わる。

『後庭花』とあるのは、後宮の庭に咲く花、杜甫は「先帝の侍女八千人」、白居易は「後宮の佳麗三千人」といっている。この時代は女性が人とされていないので、男も士族以上で人数として把握された。宮女は礼をもって迎い入れられたもの、貴族、富貴の者など家柄を重んじて選抜されたもの、一部の物を除いて、献上されたもの、罪人の家【藉跋・藉没】の女性、宮廷の官奴婢にされたものをいうのである。「後宮」は政治を営む場とは異なる、天子の私的生活の場であるが、妃嬪は常に新しく選ばれるもので、天子の在位が長ければ、すまじい数の妃嬪が後宮に存在することになる。

花間集に教坊曲『後庭花』は五首収められているが、毛熙震の詞は三首である。双調四十字、前段二十字、四仄韻、後段二十字、四仄韻で、❼❹❼❹❼❹❼❹の詞形をとる。孫光憲と毛熙震とで独自の詞形を作ったもの。

 

越羅小袖新香  薄籠金
倚欄無語搖輕  半遮勻
春殘日暖鶯嬌懶  滿庭花
爭不教人長相  畫堂深

●○●●○○●  ●△○●

△○○●○△△  ●○○●

○○●●○△●  ●○○●

○△△○△△●  ●○△△

 

越羅小袖新香蒨,薄籠金釧。

後宮の妃嬪は越産の新しくて軽いうす絹の茜色で鮮やかな小袖からほのかに香りが届く、うでには、らせん状に巻いた金の腕飾りが小袖の下に透けて見えて華やかな気分をつたえる。

越羅小袖新香蒨 越産のうす絹の小袖が新しくて茜色で鮮やかなさまである。

越羅 浙江省湘江地方の羅の小袖。

 茜草。草の盛んに繁るさま。あざやかなさま。

薄籠金釧 うっすらと小袖の中にらせん状の金の腕飾りが透けて見える艶めかしさ、はなやかさをいう。

薄籠 うっすらと小袖の中に腕飾りが透けて見える艶めかしさ、はなやかさをいう。をいう。

金釧 金釧という装身品。らせん状に巻いた腕飾り(ブレスレット)

 

倚欄無語搖輕扇,半遮勻面。

その妃嬪は今日も高楼の欄干にもたれて、話すこともなく軽く扇を手に揺らし、ただボーとしている。お化粧を整えた顔を半ば扇で隠すようにして美しい。

 欄干(らんかん)。てすり。

勻面 化粧で整えた顔。

 

春殘日暖鶯嬌懶,滿庭花片。

春の日は、長くなってゆき、長閑に過ぎてゆき、日々あたたかくなってゆく、鶯も美しく鳴くけれど、いつもきいていると、何処か物憂げに聞こえてくる。花が一杯に咲いていた、この宮殿の庭にも、花弁が散り、敷いている。

鶯嬌懶 鶯の美しく鳴くけれど、何処か物憂げに聞こえてくる。早春から盛春を過ぎようとしている時間の経過を教える。

 

爭不教人長相見,畫堂深院。

あのお方に合うことが出来なくなって随分経過しているが、どうして、逢おうとしてくれないのだろうか、後宮の奥深い静かな奥座敷の中にはで精一杯生きて行く。

爭不教 何不使と同じ。どうして~してくれないのか。
唐長安城図