(改訂版)-78-2皇甫松12《巻2-28 採蓮子二首其二》 ただわけもなく船に乗って離れてしまった、採蓮子は、貴公子と舟で一夜を過ごした後は蓮の実を売るかのように棄てられてしまう。(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、それをはるか離れている人に見られたけれど、半日、恥ずかしい思いをすればいいだけだ。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
『花間集』全詩訳注解説(改訂版)-78-2皇甫松12《巻2-28 採蓮子二首其二》皇甫松12首巻二28-〈78〉漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5592
(改訂版)-77-2皇甫松11《巻2-27 採蓮子二首其一》
採蓮子二首 其一
(酒宴で、秋の風物詩の採蓮に出た娘を想定して女たちと男との楽しいやり取りを詠う)
菡萏香蓮十頃陂(舉棹),小姑貪戲採蓮遲(年少)。
未だ蕾の蓮の花、開いてもいないのに香はただよう十頃もある広い池陂の葉影には(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、娘たちはじゃれ合って採蓮の作業が進まない。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
晚來弄水船頭濕(舉棹),更脫紅裙裹鴨兒(年少)。
日が落ちてきたけど水は揺れて波だって、舟の舳先まで水浸し。(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、そのうえ、紅いスカートをぬぎすてて、もうかわいいアヒルの子だよ、(ああ、若いもの今を楽しめ。)
(採蓮子二首 其の一)
菡萏の蓮は香る 十頃の陂【つつみ】(棹を舉げよ)、小姑 戲れるを貪【むさぼ】り 蓮を採ること遲し (年少なり)。
晩來れども 水に弄じて 船頭 濕れる (棹を舉げよ),更に 紅裙を脱ぎ 鴨兒【おうじ】を裹【つつ】む (年少なり)。
(旧版)
採蓮子二首 其二
舡動湖光灔灔秋(舉棹),貪看年少信舡流(年少)。
無端隔水拋蓮子(舉棹),遙被人知半日羞(年少)。
(秋になって夜の採蓮に出た乙女たちの恋しい男を思いやることを詠う)その二
舟が動いて月の光がきらきらと影を落とす秋の夜(ああ、だったらここで棹を挙げよ)。乙女らは丘の上で見ている青年をじっと見つめるものだから船が流されるがままになっているのです。(ああ、そうだよ若いもの。)
ただわけもなく船を岸に向けると、乙女は蓮の実を好きな青年に向けて投げるのです。(ああ、だったらここで棹を挙げよ)。それをはるか離れている人に見られたので、半日も恥ずかしい思いをした。(ああ、そうだよ若いもの。)
採蓮子二首 其の二
船は 湖光を動かし 灔灔たる 秋 (棹を舉げよ)。
年少を貪り看て 船の流るるに 信【まか】す (年少なり)。
端 無くも水を隔てて 蓮子を抛【なげう】てば (棹を舉げよ),遙か人に知られて 半日羞づ (年少なり)。
(改訂版)-78-2皇甫松12《巻2-28 採蓮子二首其二》
採蓮子二首 其二
(酒宴で、秋の風物詩の採蓮に出た娘を想定して女たちと男との楽しいやり取りを詠う)その二
舡動湖光灔灔秋(舉棹),貪看年少信舡流(年少)。
舟が動けば湖面の波に月の光がきらきらとゆれ、艶やかな波が続いて、艶やかな秋の夜が更ける(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、貴公子がみるのもまた増えて舟は合流し、時に流され、船も流されるがままになっている。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
無端隔水拋蓮子(舉棹),遙被人知半日羞(年少)。
ただわけもなく船に乗って離れてしまった、採蓮子は、貴公子と舟で一夜を過ごした後は蓮の実を売るかのように棄てられてしまう。(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、それをはるか離れている人に見られたけれど、半日、恥ずかしい思いをすればいいだけだ。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
(採蓮子二首 其二)
舡動すれば湖光して 灔灔の秋なり(棹を舉げよ)、貪看すれば年少くして 舡 流るるに信【まか】す。 (年少なり)。
端 無くも水を隔てれば 蓮子を抛【なげう】つ、(棹を舉げよ)、遙か人に知られども 半日 羞ずだけ。(年少なり)。
(改訂版)-78-2皇甫松12《巻2-28 採蓮子二首其二》
『採蓮子二首 其二』現代語訳と訳註
(本文)
其二
舡動湖光灔灔秋(舉棹),貪看年少信舡流(年少)。
無端隔水拋蓮子(舉棹),遙被人知半日羞(年少)。
(下し文)
採蓮子 其の二
船は 湖光を動かし 灔灔たる 秋 (棹を舉げよ)。
年少を貪り看て 船の流るるに 信【まか】す (年少なり)。
端 無くも水を隔てて 蓮子を抛【なげう】てば (棹を舉げよ),遙か人に知られて 半日羞づ (年少なり)。
(現代語訳)
(酒宴で、秋の風物詩の採蓮に出た娘を想定して女たちと男との楽しいやり取りを詠う)その二
舟が動けば湖面の波に月の光がきらきらとゆれ、艶やかな波が続いて、艶やかな秋の夜が更ける(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、貴公子がみるのもまた増えて舟は合流し、時に流され、船も流されるがままになっている。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
ただわけもなく船に乗って離れてしまった、採蓮子は、貴公子と舟で一夜を過ごした後は蓮の実を売るかのように棄てられてしまう。(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、それをはるか離れている人に見られたけれど、半日、恥ずかしい思いをすればいいだけだ。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
(訳注)
(改訂版)-78-2皇甫松12《巻2-28 採蓮子二首其二》
採蓮子二首 其二
(酒宴で、秋の風物詩の採蓮に出た娘を想定して女たちと男との楽しいやり取りを詠う)その二
採蓮を見に来る貴公子たちは、丘の上から声をかけ、夕暮れには船を出して女たちを誘い、思い思いに一夜を過ごす。翌朝女は棄てられる。しかし、今日も採蓮していると同じように、声をかけて來るから、まあ、半日恥ずかしい、いやな思いをするだけで、又今日一日、楽しめばよいということである。
唐から北宋に掛けて、もっと言えば六朝期から、唐宋にかけて最も性的倫理が自由な時代であったということで詞の解釈をすることである。同時期の日本でいえば、万葉の時代から、平安時代が比較的自由な性倫理であった。
唐の教坊の曲名。「教坊記』は采蓮子と記す。お座敷、宴会の席で詠うもので、意味合い的には男同士で飲みながら、下ネタの意味を込めて、娼妓に歌わせ、踊らせるものである。
『花間集』には皇甫松の二首のみ所収。
単調二十八字、四句・平韻で、各句末に二字の囃子詞が付く。この囃子詞を含めると三十六字になり、⑦❷、⑦❷。7❷、⑦❷。の詞形をとる。韻式は「AAA」。( )内は囃子詞。
菡萏香蓮十頃陂 (舉棹) 小姑貪戲採蓮遲(年少)
晚來弄水船頭濕 (舉棹) 更脫紅裙裹鴨兒(年少)
●●○△●△△ (●●) ●○○△●△○(○●)
●△●●○○● (●●) △●○○●●○(○●)
其二
舡動湖光灔灔秋 (舉棹) 貪看年少信舡流(年少)
無端隔水拋蓮子 (舉棹) 遙被人知半日羞(年少)
○●○△??○ (●●) ○△○●△○○(○●)
○○●●○△● (●●) ○●○○●●○(○●)
皇甫松(生卒年不詳)、復姓で皇甫が姓、松が名。一名、嵩とも言う。字を子奇と言い、自ら檀欒子と号した。睦安(今の浙江省淳安)の人。工部侍郎皇甫湜の子、宰相牛僧濡の外甥で、晩唐の詞人。花間集では「皇甫先輩松」とある。唐代では、進士を先輩と呼ぶので、進士で、出仕しないで終わったのだろう。隠士は形跡を残さないほど隠士としての価値が高い。『酔郷日月』 『大隠賦』などの著書のあったことが知られており、これらの書名からも、隠逸的傾向の強かった人物であったことが分かる。『花間集』 には十二首の詞が収められている。
舡動湖光灔灔秋(舉棹),貪看年少信舡流(年少)。
舟が動けば湖面の波に月の光がきらきらとゆれ、艶やかな波が続いて、艶やかな秋の夜が更ける(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、貴公子がみるのもまた増えて舟は合流し、時に流され、船も流されるがままになっている。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
・船動湖光:船が湖面を波打たせたので、水面が動いて日の光がきらきらと反射しているさまをいう。
・灔灔:水の揺れ動くさま。(月光等が水に映って)美しく光るさま。
貪看:蓮の実を採っている少女が、岸辺にいる若者をうっとりとみつめていること。
・信船流:舟が流されるがまま。
無端隔水拋蓮子(舉棹),遙被人知半日羞(年少)。
ただわけもなく船に乗って離れてしまった、採蓮子は、貴公子と舟で一夜を過ごした後は蓮の実を売るかのように棄てられてしまう。(ああ、だったらここで棹を挙げよ)、それをはるか離れている人に見られたけれど、半日、恥ずかしい思いをすればいいだけだ。(ああ、若いもの今を楽しめ。)
・無端:訳もなく。故無く。
・隔水:水を隔てて。舟から岸をめがけて。
・抛:放り投げる。
・蓮子:蓮の実。食用にする。蓮池の側でよく売っている。ここでは、採蓮の女子、貴公子と舟で一夜を過ごした後は蓮の実を売るかのように棄てられてしまう。
・遙被人知:遙か離れている所の人に見られてしまい。
・半日:長時間。長い間。現代語での「半天」(はんにち)と同じで、「半日(はんにち)」の意とともに、「相当長時間」の意味がある。夕方から夜の間の半日。
・羞:はじらう。
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| 《花間集》 皇甫松 十二首 | | |||||
| ID | V-#-No-作者-ID-《巻-詞》 | 初句七字 | 備考 | | ||
| 1 | 晴野鷺鷥飛一隻 | | | |||
| 2 | 躑躅花開紅照水 | | | |||
| 3 | 灘頭細草接疎林 | | | |||
| 4 | 蠻歌豆蔻北人愁 | | | |||
| 5 | 春入行宮映翠微 | | | |||
| 6 | 爛熳春歸水國時 | | | |||
| 7 | 酌一巵,須教玉 | | | |||
| 8 | 摘得新,枝枝葉 | | | |||
| 9 | 蘭燼落,屏上暗 | | | |||
| 10 | 夢江南二首其二 | 樓上寢,殘月下 | | | ||
| 11 | 採蓮子二首其一 | 菡萏香蓮十頃陂 | | | ||
| 12 | 採蓮子二首其二 | 舡動湖光灔灔秋 | | | ||
| 皇甫松(生卒年不詳)、復姓で皇甫が姓、松が名。一名、嵩とも言う。字を子奇と言い、自ら檀欒子と号した。睦安(今の浙江省淳安)の人。工部侍郎皇甫湜の子、宰相牛僧濡の外甥で、晩唐の詞人。花間集では「皇甫先輩松」とある。唐代では、進士を先輩と呼ぶので、進士で、出仕しないで終わったのだろう。隠士は形跡を残さないほど隠士としての価値が高い。『酔郷日月』 『大隠賦』などの著書のあったことが知られており、これらの書名からも、隠逸的傾向の強かった人物であったことが分かる。『花間集』 には十二首の詞が収められている。 | | |||||
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