玉-011 玉臺新詠集序⑾§3-3〈徐陵〉 Ⅴ漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の玉臺新詠ブログ 7629
こうして、これまで生まれた幾多の名作を、前代の名文に、当今の佳作を選定し編纂した。そしてそれらは、すべて麒麟閣に分蔵したし、儒林伝にいう、鴻都門より、分散して蔵弄されたのである。しかし、それらの篇章を収拾整理して一本にまとめないと、一般に、閲読する方法もない。そこで、燈油をともして夜分までも鈔写しつづけ、筆管をとって暁晨に浄書したのである。その結果、多くの艶歌を選録して共にまとめて十巻とした。乃ちこれは、詩経の雅頌の正声をはずかしめるものでもなく、風人温柔敦厚の本旨を乱るものでもない。乱れたとしても、わずかに黄河にそそぐ水の濁水の涇水と清流の渭水が合流するように、編纂されたという、ニ水の清濁のへだてがある程度にすぎぬというものである。
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徐陵 | ||
| (11)§3-3 |
⑼§3-1
旣而椒宮宛轉、柘觀隂岑。
かくて椒房の殿角さえもまろやかにまがり、柘館の管陰は高大深邃なものである。
絳鶴晨嚴、銅蠡晝靜。
早朝、宮門の紅鶴は厳重に鎖され、白昼になっても、門上の銅環は音もなく静かである。
三星未夕、不事懷衾、
未だ三星の輝く薄暮になるというのに、布団を抱いて御寝に侍する準備もないのである。
五日猶賖、誰能理曲。
五日の輪番の期はまだ遠いから、誰が清曲のおさらいをするものがあろうか。
優逰少託、寂寞多閒。
ただ、安閑と日を度り、情を寄せる所もなく、寂寞として職事もないから閑暇な時が多い。
厭長樂之疎鍾、勞中宮之緩箭。
時を知らせる長楽宮の疎鐘の音も聴くにいとわしく、内寝の水時計の目盛りの箭も見るのが億劫である。
⑽§3-2
纎腰無力、怯南陽之擣衣、
妖艶な細腰は美しいが力なく、南陽の張魯は女児の搗衣を学ぶを悟らなばならない。
生長深宮、笑扶風之織錦。
深宮の中に生長して、扶風(陝西省)の蘇意が織錦の詩を笑う。
雖復投壺玉女、爲歡盡於百嬌、
たとい玉女の投壷の妙技も、これを見物するのは育矢を往返することに終わるのみである。
爭博齊姫、心賞窮於六箸。
斉姫の双陸の手錬も、感心するのは六箸の操作だけに止まるであろう。
無怡神於暇景、唯屬意於新詩。
真に心をこめるのは、暇日に恰ばすものはないから、工夫を新詩に凝らすというものである。
庶得代彼、臯蘇蠲玆愁疾。
したがって、これこそ皐蘇のかわりに、彼女たちの愁悶を除去することが出来ようというものである。
⑾§3-3
但徃世名篇、當今巧製、
こうして、これまで生まれた幾多の名作を、前代の名文に、当今の佳作を選定し編纂した。
分諸麟閣、散在鴻都。
そしてそれらは、すべて麒麟閣に分蔵したし、儒林伝にいう、鴻都門より、分散して蔵弄されたのである。
不籍篇章、無由披覽。
しかし、それらの篇章を収拾整理して一本にまとめないと、一般に、閲読する方法もない。
於是然脂暝寫、弄筆晨書、
そこで、燈油をともして夜分までも鈔写しつづけ、筆管をとって暁晨に浄書したのである。
選錄艶歌、凡爲十卷。
その結果、多くの艶歌を選録して共にまとめて十巻とした。
曽無叅於雅頌、亦靡濫於風人。
乃ちこれは、詩経の雅頌の正声をはずかしめるものでもなく、風人温柔敦厚の本旨を乱るものでもない。
涇渭之間、若斯而已。
乱れたとしても、わずかに黄河にそそぐ水の濁水の涇水と清流の渭水が合流するように、編纂されたという、ニ水の清濁のへだてがある程度にすぎぬというものである。
⑼§3-1
旣にして椒宮宛 轉し、柘觀 隂岑たり。
絳鶴 晨に嚴し、銅蠡 晝 靜かなり。
三星 未だ夕ならざれば、衾を懷【いだ】く事をせず、
五日 猶お賖【はる】かなれば、誰か能く曲を理めん。
優逰 託すること少く、寂寞 閒なること多し。
長樂の疎鍾に厭き、中宮の緩箭に勞る。
⑽§3-2
纎腰 力 無くして、南陽の擣衣を怯る、
深宮に生長して、扶風の織錦を笑う。
雖【たと】い復た 投壺の玉女も、歡を爲すは 百嬌に盡く、
爭博の齊姫も、心に賞するは、六箸に窮まらん。
神を暇景に怡ばす無く、唯だ 意を新詩に屬す。
庶わくは 彼の臯蘇に代り 玆しく 愁疾を蠲【のぞ】くを得ん。
⑾§3-3
但 徃世の名篇、當に今の巧製、
諸【これ】を麟閣に分ち、散じて鴻都に在り。
篇章を籍にせざれば、披覽にする由し無し。
是に於て脂を然して暝寫し、筆を弄して晨に書す、
艶歌を選錄し、凡そ十卷と爲す。
曽ち 雅頌に叅【はず】る無く、亦た風人に於て濫【みだ】るる靡【な】し。
涇渭の間、斯の若き 已【のみ】。
《玉臺新詠集序》現代語訳と訳註解説
(本文)
⑾§3-3
但徃世名篇、當今巧製、
分諸麟閣、散在鴻都。
不籍篇章、無由披覽。
於是然脂暝寫、弄筆晨書、
選錄艶歌、凡爲十卷。
曽無叅於雅頌、亦靡濫於風人。
涇渭之間、若斯而已。
(下し文)
⑾§3-3
但 徃世の名篇、當に今の巧製、
諸【これ】を麟閣に分ち、散じて鴻都に在り。
篇章を籍にせざれば、披覽にする由し無し。
是に於て脂を然して暝寫し、筆を弄して晨に書す、
艶歌を選錄し、凡そ十卷と爲す。
曽ち 雅頌に叅【はず】る無く、亦た風人に於て濫【みだ】るる靡【な】し。
涇渭の間、斯の若き 已【のみ】。
(現代語訳)
こうして、これまで生まれた幾多の名作を、前代の名文に、当今の佳作を選定し編纂した。
そしてそれらは、すべて麒麟閣に分蔵したし、儒林伝にいう、鴻都門より、分散して蔵弄されたのである。
しかし、それらの篇章を収拾整理して一本にまとめないと、一般に、閲読する方法もない。
そこで、燈油をともして夜分までも鈔写しつづけ、筆管をとって暁晨に浄書したのである。
その結果、多くの艶歌を選録して共にまとめて十巻とした。
乃ちこれは、詩経の雅頌の正声をはずかしめるものでもなく、風人温柔敦厚の本旨を乱るものでもない。
乱れたとしても、わずかに黄河にそそぐ水の濁水の涇水と清流の渭水が合流するように、編纂されたという、ニ水の清濁のへだてがある程度にすぎぬというものである。
(訳注)
⑾§3-3
但徃世名篇、當今巧製、
こうして、これまで生まれた幾多の名作を、前代の名文に、当今の佳作を選定し編纂した。
分諸麟閣、散在鴻都。
そしてそれらは、すべて麒麟閣に分蔵したし、儒林伝にいう、鴻都門より、分散して蔵弄されたのである。
51.分諸麟閣 「麟閣」は麒麟関で、漢の殿名。未央官の左にあり粛何が建てたといわれ、秘書を蔵した所。「分」は分蔵すること。
52. 散在鴻都 「鴻都」は漢代、宮門の名。其の内に学を置き、書を蔵した。『漢書』「儒林伝」に、「辟雍殖・東観・蘭台・石室・宣明・鴻都の諸蔵の典第・文章より競うて共に剖散す。」とある。「剖散」は分散して蔵弄すること。
不籍篇章、無由披覽。
しかし、それらの篇章を収拾整理して一本にまとめないと、一般に、閲読する方法もない。
53. 不籍篇章、無由披覽 篇章を収拾して一本としないと一般の人は閲読する方法がない。
於是然脂暝寫、弄筆晨書、
そこで、燈油をともして夜分までも鈔写しつづけ、筆管をとって暁晨に浄書したのである。
54. 燃脂瞑写 「「瞑」はくらいこと、夜をいう。夜燈油をもやしながら写したという意。昼夜を分かたず浄書したということ。
55. 弄筆晨書 筆をとって朝早くから書いた。
選錄艶歌、凡爲十卷。
その結果、多くの艶歌を選録して共にまとめて十巻とした。
56. 選錄艶歌 「艶歌」はあだめいた歌。六朝の文化でもある。
曽無叅於雅頌、亦靡濫於風人。
乃ちこれは、詩経の雅頌の正声をはずかしめるものでもなく、風人温柔敦厚の本旨を乱るものでもない。
57. 曽無叅於雅頌 「曾」は「乃」と同じ。「叅」ははずかしめること。ここでは見劣りすること。「雅頒」は『詩経』の雅と頌。
58. 亦靡濫於風人 「靡」は「無」と同じ。「濫」は乱ること。「風人」は「詩人」に同じ。『後漢書』「桓栄伝」に「風人の興歌する所以」とあり、『魏志』「陳思王植伝」に、「是を以て殖々穆々、風人之を詠ず」とある。錘露昇氏が「国風の作者を指す」という意味でも深くなる。
涇渭之間、若斯而已。
乱れたとしても、わずかに黄河にそそぐ水の濁水の涇水と清流の渭水が合流するように、編纂されたという、ニ水の清濁のへだてがある程度にすぎぬというものである。
59. 涇渭之間、若斯而己 陝西省の涇水と渭水の清濁分かるるをいう。その流域が黄土である涇水が濁り、流域が岩石で安定している渭水は澗水が清流であるが、『詩経』「榔夙谷風篇」に、「控は洞を以て濁る」とあるので、清の乾隆の時、駅西巡撫奉承恩に実地調査をさせた所、『詩経』にある通り、実際は浬水が清く洞水が濁っていたという。