樂府詩七首 其三有女篇 艶歌行 -#4〔傳玄〕
玉-巻二22 樂府詩七首 其三有女篇 艶歌行 -#4〔傳玄〕 Ⅴ漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の玉臺新詠巻二ブログ 8877
されば霊妙な感応が万世にも稀なめぐり合わせを与えて、日や月が時を得て相い望むようになるのである。そこで、この女も良縁を得て仲人が結納の帛をならべ、もたらした小羊や雁が表座敷の前で鳴くという盛んな儀式をすることになる。いよいよ婚礼の日ともなると、道路には百台の車輌がずらりとならび、彼女は鸞鳥か鳳凰が飛び立つように起ちあがる。世の常の男どもがそれを見て気をもみ、いたずらに躍りあがってくやしがっても、それはかなわぬ願い。彼等の希望は空しく絶たれて、参星と商星のように相会うことのない別々のものとなり終わるのである。
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樂府七首 |
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1.青青河邊草篇(留守居の妻の征夫を思う詩である。)
青青河邊草、悠悠萬里道。草生在春時、遠道還有期。春至草不生、期盡歎無聲。
感物懷思心、夢想發中情。夢君如鴛鴦、比翼雲間翔。既覺寂無見、曠如參與商。
夢君結同心、比翼遊北林。既覺寂無見、曠如商與參。河洛自用固、不如中岳安。
回流不及反、浮雲往自還。悲風動思心、悠悠誰知者。懸景無停居、忽如馳駟馬。
傾耳懷音響、轉目淚雙墮。生存無會期、要君黃泉下。
2.苦相篇 豫章行(醜女に生まれたら初めから相手されず、美女に生まれても、男が常に新しい愛人を好むものであり、いったん切れた縁は参と辰のように隔たれたままである。)
苦相身為女、卑陋難再陳。男兒當門戶、墮地自生神。雄心志四海、萬里望風塵。
女育無欣愛、不為家所珍。長大避深室、藏頭羞見人。垂淚適他鄉、忽如雨絕雲。
低頭和顏色、素齒結朱唇。跪拜無復數、婢妾如嚴賔。情合同雲漢、葵藿仰陽春。
心乖甚水火、百惡集其身。玉顏隨年變、丈夫多好新。昔為形與影、今為胡與秦。
胡秦時相見、一絕踰參辰。
3.有女篇 豔歌行(冨宅豪家に迎えられたたぐいまれなる美女が、贅を尽くした装いをするようになる、訪れた人から広がり、他人は皆うらやましがるというもの)
有女懷芬芳、提提步東箱。蛾眉分翠羽、明目發清揚。
丹脣翳皓齒、秀色若珪璋。巧笑露權靨、衆媚不可詳。
容儀希世出、無乃古毛嬙。頭安金步搖、耳繫明月璫。
珠環約素腕、翠爵垂鮮光。文袍綴藻黼、玉體映羅裳。
容華既以豔、志節擬秋霜。徽音貫青雲、聲響流四方。
玅哉英媛德、宜配侯與王。靈應萬世合、日月時相望。
媒氏陳束帛、羔雁鳴前堂。百兩盈中路、起若鸞鳳翔。
凡夫徒踴躍、望絕殊參商。
4.朝時篇 怨歌行 (若くして結婚した女が不幸にして夫と別れ、家居して年老い、遂に偕老を得ぬ境涯をはかなみ、それでもなお死して同穴を望むという女心のせつなさを歌ったものである。)
昭昭朝時日、皎皎晨明月。十五入君門、一別終華髮。同心忽異離、曠如胡與越。
胡越有會時、參辰遼且闊。形影無髣髴、音聲寂無達。纎絃感促柱、觸之哀聲發。
情思如循環、憂來不可遏。塗山有餘恨、詩人詠採葛。蜻蛚吟牀下、回風起幽闥。
春榮隨露落、芙蓉生木末。自傷命不遇、良辰永乖別。已尒可奈何、譬如紈素裂。
孤雌翔故巢、星流光景絕。魂神馳萬里、甘心要同穴。
5.明月篇(夫に新しい愛人ができたために、夫の愛を失う要の心持ちを述べた作である。)
皎皎明月光、灼灼朝日暉。昔為春繭絲、今為秋女衣。
丹脣列素齒、翠彩發蛾眉。嬌子多好言、歡合易為姿。
玉顏盛有時、秀色隨年衰。常恐新間舊、變故興細微。
浮萍無根本、非水將何依。憂喜更相接、樂極還自悲。
6.秋蘭篇(約束の秋になっても帰ってこない心配して待ちわびる気持ちを詠う。)
秋蘭蔭玉池、池水清且芳。芙蓉隨風發、中有雙鴛鴦。
雙魚自踴躍、兩鳥時迴翔。君期歷九秋、與妾同衣裳。
7.西長安行(西長安在住している夫から贈り物を届けてもらったが、しかしすでにその夫の心変わりを感じ取った女の心の中を述べ詠ったもの。)
所思兮何在、乃在西長安。
何用存問妾、香橙雙珠環。
何用重存問、羽爵翠琅玕。
今我兮聞君、更有兮異心。
香亦不何燒、環亦不可沉。
香燒日有歇、環沉日自深。
玉臺新詠 64 | 樂府詩七首 其三 有女篇 艶歌行 -#3 |
巻二22 | |
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3. 有女篇 豔歌行
(冨宅豪家に迎えられたたぐいまれなる美女が、贅を尽くした装いをするようになる、訪れた人から広がり、他人は皆うらやましがるというもの)
有女懷芬芳、提提步東箱。
ひとりの女が、えも言われぬ香りを身に着けて、東の離れのところを歩いている。
蛾眉分翠羽、明目發清揚。
蛾のような美しい眉は翠鳥の羽を分けたように細身の体形で、ぱっちりとした目で広やかな額はかがいている。
丹脣翳皓齒、秀色若珪璋。
紅い唇は真っ白な葉を覆い隠している。その優れて美しい容色はさながら玉のようで、微笑みに宝石のような歯が見える。
(有女篇、 豔歌行)
女有り 芬芳を懷く、提提として東箱に步む。
蛾眉 翠羽を分ち、明目 清揚に發す。
丹脣 皓齒を翳い、秀色 珪璋の若し。
#2
巧笑露權靨、衆媚不可詳。
にっこり笑うと靨が現れる、こんなさまざまの美しさはいちいちね部きれないほどである。
容儀希世出、無乃古毛嬙。
まことにこの女の美貌のよさは、よにもたぐいまれなほどで、むかしの毛嬙もなるほど度思われるほどと疑われるばかりである。
頭安金步搖、耳繫明月璫。
その装いは、頭に黄金づくりの簪を指し、耳には真珠のみみだまをつけて美しい。
珠環約素腕、翠爵垂鮮光。
白い腕には珠を飾って腕輪をはめている簪のクジャクの翅は鮮やかな緑の色を垂れている。
#2
巧笑 權靨に露われ、衆媚 詳かにす可からず。
容儀 世出希れなり、乃ち古えの毛嬙なる無からんや。
頭には金の步搖を安んじ、耳には明月の璫を繫ぐ。
珠環 素腕を約し、翠爵 鮮光を垂る。
#3
文袍綴藻黼、玉體映羅裳。
あや模様の綿入れの上衣には水草もようや斧形が綴られ、玉の肌はうす絹の裳裾に照り映えて美しい。
容華既以豔、志節擬秋霜。
容姿端麗、かくもあでやかなうえに、この女の志と節操は秋の真っ白な霜にも見まごうほど凛としているのである。
徽音貫青雲、聲響流四方。
箏徽を弾けばその音色は青空の雲を貫いて響き渡る澄みきった音は四方に流れ渡る。
玅哉英媛德、宜配侯與王。
これはまことに世にも優れた美女の徳というものである、この女こそは、王侯の奥方に配されるにふさわしい人というものである。
#3
文袍 藻黼を綴り、玉體 羅裳に映ず。
容華 既に以て豔、志節 秋霜に擬す。
徽音 青雲に貫し、聲響 四方に流る。
玅なるかな 英媛の德、宜しく侯と王とに配すべし。
#4
靈應萬世合、日月時相望。
されば霊妙な感応が万世にも稀なめぐり合わせを与えて、日や月が時を得て相い望むようになるのである。
媒氏陳束帛、羔雁鳴前堂。
そこで、この女も良縁を得て仲人が結納の帛をならべ、もたらした小羊や雁が表座敷の前で鳴くという盛んな儀式をすることになる。
百兩盈中路、起若鸞鳳翔。
いよいよ婚礼の日ともなると、道路には百台の車輌がずらりとならび、彼女は鸞鳥か鳳凰が飛び立つように起ちあがる。
凡夫徒踴躍、望絕殊參商。
世の常の男どもがそれを見て気をもみ、いたずらに躍りあがってくやしがっても、それはかなわぬ願い。彼等の希望は空しく絶たれて、参星と商星のように相会うことのない別々のものとなり終わるのである。
#4
霊應は萬世に合し、日月時に相望む。
媒氏束帛を陳ね、羔雁 前堂に鳴く。
百兩中路に盈つ、起つこと鸞鳳の翔けるが若し。
凡夫 徒らに踴躍するも、望みは絶ゆ参商殊なるに。
《有女篇 豔歌行》現代語訳と訳註解説
(本文)
#4
靈應萬世合、日月時相望。
媒氏陳束帛、羔雁鳴前堂。
百兩盈中路、起若鸞鳳翔。
凡夫徒踴躍、望絕殊參商。
(下し文)
#4
霊應は萬世に合し、日月時に相望む。
媒氏束帛を陳ね、羔雁 前堂に鳴く。
百兩中路に盈つ、起つこと鸞鳳の翔けるが若し。
凡夫 徒らに踴躍するも、望みは絶ゆ参商殊なるに。
(現代語訳)
されば霊妙な感応が万世にも稀なめぐり合わせを与えて、日や月が時を得て相い望むようになるのである。
そこで、この女も良縁を得て仲人が結納の帛をならべ、もたらした小羊や雁が表座敷の前で鳴くという盛んな儀式をすることになる。
いよいよ婚礼の日ともなると、道路には百台の車輌がずらりとならび、彼女は鸞鳥か鳳凰が飛び立つように起ちあがる。
世の常の男どもがそれを見て気をもみ、いたずらに躍りあがってくやしがっても、それはかなわぬ願い。彼等の希望は空しく絶たれて、参星と商星のように相会うことのない別々のものとなり終わるのである。
(訳注)
3.有女篇 豔歌行
(冨宅豪家に迎えられたたぐいまれなる美女が、贅を尽くした装いをするようになる、訪れた人から広がり、他人は皆うらやましがるというもの)
1. 艶歌行 艶歌」は艶っぽいうたの意味ではない。「艶」は相和歌の専門用語で、前奏を指し、「艶」をともなううたを「艶歌」と呼んだという。また、「艶」はもともと南方の楚の地方のうたに特徴的なものであり、「艶歌」すなわち楚のうたともいわれる。
この歌に属するもの、「艶歌何々行」と題してあるものは多く幾篇もある。「艶歌行」には無名氏の作が二首残っていて、ここでとりあげているのは、そのうちよく知られた第一首のほうである。第二首は山中の松の樹が伐られて宮殿の梁となるまでをうたったもので、第一首とは直接かかわらない。
あるいは、他家に寄寓中のある男が、その家の主婦から衣の綻(ほころび)を縫うてもらって嫌疑を受けたことを叙べた。性的倫理が比較的自由な時代ではあり、庶民の間では、不倫事例も多い時代の話である。
この詩は、故郷を離れて他県にある男が、破れた衣をある家の婦人に繕ってもらった。しかし、その家の夫に疑いのまなざしを向けられ、旅にあるわが身の悲しさを思う。名作とはいえないが、ちょっとした物語り仕立てになっているところが面白く、また最後の一句の感慨が印象に残る。玉臺新詠巻一に以下の詩がある。
古樂府詩六首其四 艶歌行
翩翩堂前燕、冬藏夏來見。兄弟兩三人、流蕩在他縣。
故人誰爲補、新衣誰當䘺。賴得賢主人、覽取爲吾綻。
夫壻從門來、斜倚西北眄。語卿且勿眄、水清石自見。
不見何纍纍、逺行不如歸。
玉-013-#1 古樂府詩六首其四艶歌行〈無名〉 kanbuniinkai紀頌之の玉臺新詠ブログ 7809
#4
靈應萬世合、日月時相望。
されば霊妙な感応が万世にも稀なめぐり合わせを与えて、日や月が時を得て相い望むようになるのである。
18. 日月時相望 『呉注』は『漢書』を引いて「五星日月之会」と注しているが、陰暦十五日の夜日月相望み向かう意によったものであろうか。
媒氏陳束帛、羔雁鳴前堂。
そこで、この女も良縁を得て仲人が結納の帛をならべ、もたらした小羊や雁が表座敷の前で鳴くという盛んな儀式をすることになる。
19. 束帛 兼ねた巻き帛。
20. 羔雁 小羊、雁。小羊も雁も束帛もみな婚姻の引出聘物。
百兩盈中路、起若鸞鳳翔。
いよいよ婚礼の日ともなると、道路には百台の車輌がずらりとならび、彼女は鸞鳥か鳳凰が飛び立つように起ちあがる。
凡夫徒踴躍、望絕殊參商。
世の常の男どもがそれを見て気をもみ、いたずらに躍りあがってくやしがっても、それはかなわぬ願い。彼等の希望は空しく絶たれて、参星と商星のように相会うことのない別々のものとなり終わるのである。
21. 踴躍 ①跳躍:~歡呼。②形容情緒熱烈,爭先恐后。
22. 參商 '参''商'共に二十八宿の一つで,同時には空に現われないことから、肉親や親しい者同士が会えない,あるいは、仲が悪い.