顔延之 秋胡詩【字解集】

 

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玉臺新詠集 顔延之《秋胡詩》【字解集】

 

 

 

 

 

椅梧傾高鳳、寒谷待鳴律。影響豈不懷、自達毎相匹。

1

婉彼幽閑女、作嬪君子室。峻節貫秋霜、明艶侔朝日。

嘉運我從、欣願自此畢。

燕居未及歡良人顧有違巾千里外結綬登

2

畿戒徒在昧旦左右來相依驅車出郊郭行路正

倭遲存爲久離沒爲長不

嗟余怨行役三陟窮晨暮嚴駕越風寒觧鞍犯霜

3

露原隰多悲凉廻飈卷高樹離獸起荒蹊驚鳥縱

橫去悲哉宦子榮此山川

迢遥行人遠婉轉年運徂良時爲此日月方

4

除孰知寒暑積僶俛見榮枯暮臨空房凉風

坐隅寢興日巳寒白露生庭蕪

勤役從歸願反路遵山河昔辭秋未素今也

5

華蚕月歡時暇桑野多經過佳人從所務窈窕援

高柯傾城誰不顧弭節停中阿

年徃誠思勞事遠闊音形雖爲五載相與昧

6

生捨車遵往路鳧藻馳目成南金豈不重聊自意

所輕義心多苦調密比金玉聲

高節難久淹朅來空復辭遲遲前途盡依依造門

7

基上堂拜嘉慶入室問何之日暮行採歸物色桑

楡時美人望昏至慙嘆前相持

有懷誰能己聊用申苦難離居殊年

8

關春來無時豫秋至應早寒明發動愁心閨中起

長歎慘悽方晏落日

高張生絶絃聲急由調起自昔枉光塵結言固終

9

如始何久爲百行愆諸已君子失時義誰與

沒齒愧彼行路詩甘之長川汜

 

 

顔延之 秋胡詩【字解集】

秋胡詩 

1. (秋胡子とその妻の潔婦との説話を叙べたもの)

2. 秋胡子とその妻の潔婦との説話を叙べたもので『文選』巻二十一に収められている。この話の本事は前出博ブログ、秋胡詩原文〔顏延之〕・列女傳に本づき記してあるから参照されたい。

この詩は§1~§9 から成り、各セクション十句、節毎に韻を換えた長篇で、

ものである。今一節ずつ分析して注解を試みる。

顔延之の作としては彫琢のために真情を失うに至らず、佳作と称すべきものである。

 

§1

椅梧傾高鳳,寒谷待鳴律。
空高く飛ぶ鳳凰の方へと桐の木は枝を傾けて止りに来るのを待っている、寒くつめたい谷は鄒衍が律菅を吹き鳴らしてくれるのを待っている。
3. ・椅梧 椅も梧の類。

4. ・傾高鳳 高く飛ぶ鳳のやすむのを待って枝を傾ける。鳳は桐に息むと伝える。青桐には仲の良いつがいの鳳凰が住む。 

5. ・寒谷待鳴律 燕の寒谷には穀物を生ぜぬか、鄒衍(周代の学者)の吹く音律に応じて黍を生じた。劉向別録沈徳潜の注に「椅梧鳳烏の來儀(あいさつに来る)を佇め、寒谷吹律を待って煦まるとは、夫婦の相匹すること、影皆の相思ふが如きを言ふなり」と。

 

影響豈不懷?自遠每相匹。
それと同じく男女の場合も、形に影が従い声に琴が応ずるごとく、互いに思いあうもので、遠くはなれたところにいても、どこにいても夫婦であるのが常である。

 

婉彼幽閑女,作君子室。
うるわしき彼のしとやかな女「潔婦」は、徳のある人の家、秋胡の家にとついで妻となった。
6. ・幽閑 奥ゆかしく淑やかな。窃充。

7. ・ 妻となる。

 

峻節貫秋霜,明豔侔朝日。
高くすぐれた、厳しい節操のあるかの女は秋霜を貫き凌ぐほどのものであり、辺りを照らすそのあでやかさは朝日の光が輝くようなのと同じである。
8. ・明艶 光明艶美。 

 

嘉運既我從,欣願自此畢。
良い運の巡り合わせは自分に従いついている。すでに嫁にした上は、これからによろこばしい願いが満足に遂げられることと妻はおもったのだ。(その一)
9.
 ・嘉運 めでたい運。

 

§2

燕居未及好,良人顧有違。
夫婦が和らいで暮らし、また仲睦まじくなるまでになっていないのに、夫はそれとは違って遠くへ別れることになった。
10.. ・燕居 和らいでおる。家でのんびりすること。 『論語、述而』「子之燕居。申申如也。夭夭如也。」(子の燕居するや、申申如たり。夭夭如たり。)・好 仲良くする。

11.  ・良人 夫。


巾千裏外,結登王畿。
平民の頭巾を脱いで官僚の冠をつけ、千里の彼方に仕官して、官印の綬を腰に結んで王の治められる都、陳である「王畿」に上るのであった。
12. ・脱巾 頭巾をぬいで衣冠をつけて仕官する。布衣すなわち平民のかぶる、づきんのこと

13. ・綬 印綬、官印のひも。

14. ・王畿 みやこ。王の直接治める地域。王城の郭外になる五百里四方の地。ここは「陳は、王者の起こるところなれば、陳をいう」(詩緯に見える)。


戒徒在昧旦,左右來相依。
しもべの者を戒めて朝まだきに出発の準備を整える。そうして、左右の従者も夫の傍に来て寄り添う。
15. ・昧旦 まだ暗い朝。朝まだき。


驅車出郊郭,行路正威遲。
やがて車を駆って城外の野に出ると、行く路はまさに遙か先までうねうねと続いている。
16 ・威遲 道が遠く続くうねりさま。遠海に同じ。


存爲久離別,沒爲長不歸。
これから後、生存しても久しい別離となり、死ねば永遠に帰ってこられない、哀しいことである。


 

(§3) 
嗟余怨行役,三陟窮晨暮。
ああわれ秋胡は役目のための旅を悲しみながら、詩経の巻耳や陟岵の篇にしばしは険阻な山路をのぼると歌ってある、ように、朝から夜おそくまで旅を続ける。
17. 行役・三陟 骨身を惜しまず朝も夕も行役する。『詩経国風:魏風・陟岵篇』「陟彼岵兮・・・行役夙夜・・・」詩経の周南篇・巻耳、魏風・陟岵篇に外交の旅に出た夫が故郷にいる妻の身になって自分のことをこんな風に思ってくれているというもので、旅の苦しみ疲れをいう。『詩経、周南篇・巻耳』 「陟彼崔嵬」「陟彼高岡、我馬玄黃。」「陟彼砠矣、我馬瘏矣。」

18. 窮晨暮 朝早くから夜おそくまで。


嚴駕越風寒,解鞍犯霜露。
車を厳重に整えて、風の寒い山を越え、鞍を解き馬を休めて、霜露を蒙って野宿する。
19 嚴駕 馬車の装備を戒しめ、用心する。

20. 解鞍 鞍を解いて休む。

21. 犯鋸露 霜露を蒙って野宿する。


原隰多悲涼,回卷高樹。
低い湿地の草原には悲しみやさびしさがみちて、つむじ風は高い木を吹き巻いている。
22. 原隰 湿地の草原。

23. 悲涼 哀しみ、愁い。

24. 回 吹き巻くつむじ風。


離獸起荒蹊,驚鳥縱橫去。
群れを離れたけものが草深い小道に飛び出し、物に驚いた鳥が散乱して去って行く。


悲哉遊宦子,勞此山川路。
悲しいことだ、役目のために他国に旅する私は、この山川の路に苦労しているのである。

25. 遊宦子 他国に仕官する人。宦は仕官。


『詩経国風:魏風・陟岵篇』
陟彼岵兮 瞻望父兮 父曰嗟予子 行役夙夜無已 上慎旃哉 猶來無止 陟彼屺兮 瞻望母兮 母曰嗟予季 行役夙夜無寐 上慎旃哉 猶來無棄 陟彼岡兮 瞻望兄兮 兄曰嗟予弟 行役夙夜必偕 上慎旃哉 猶來無死


『詩経、周南篇・巻耳』
采采卷耳、不盈頃筐。嗟我懷人、寘彼周行。   
陟彼崔嵬、我馬虺隤。我姑酌彼金罍、維以不永懷。
陟彼高岡、我馬玄黃。我姑酌彼兕觥、維以不永傷。
陟彼砠矣、我馬瘏矣。我僕痡矣、云何吁矣。
卷耳を采り采る、頃筐に盈たず。
嗟(ああ)我 人を懷ひて、彼の周行に寘(お)く。
彼の崔嵬に陟(のぼ)れば、我が馬虺隤(かいたい)たり。
我姑(しば)らく彼の金罍に酌み、維れを以て永く懷はざらん。
彼の高岡に陟れば、我が馬玄黃たり
我姑らく彼の兕觥(じこう)に酌み、維れを以て不永く傷まざらん
彼の砠に陟れば、我が馬は瘏(や)む
我が僕は痡む、云何(いかん)せん 吁(ああ)


秋胡詩(3)  
嗟余怨行役,三陟窮晨暮。
嚴駕越風寒,解鞍犯霜露。
原隰多悲涼,回
卷高樹。
離獸起荒蹊,驚鳥縱橫去。
悲哉遊宦子,勞此山川路。
嗟【ああ】余【われ】は行役【こうえき】を怨む,三び陟【のぼ】りて晨暮【しんぼ】を窮む。
駕【が】を嚴【いま】しめて風寒【ふうかん】を越え,鞍【くら】を解いて霜露【そうろ】を犯す。
原隰【げんしゅう】に悲涼【ひりょう】多く,回
【かいひょう】は高樹【こうじゅ】を卷く。
離獸【りじゅう】は荒蹊【こうけい】に起り,驚鳥【きょうちょう】は縦横に去る。
悲しい哉、遊宦【ゆうかん】の子、此の山川【さんせん】の路に勞【つか】る。

 

§4  
超遙行人遠,宛轉年運徂。
はるかにも旅ゆく人、夫、秋湖は遠ざかり、めぐりめぐって年はうつりゆく。
26. 超遙 遙かに遠い。

27. 行人 旅人。

28. 宛転 次々に変化すること。顔の形の美しいさま。白居易『長恨歌』。「六軍不發無奈何、宛轉蛾眉馬前死。」やたら寝返りを打つさま。めぐりまわる変化すること。『荘子、天下』「椎拍輐斷、與物宛轉。」

29. 年運 年のめぐり。


良時爲此別,日月方向除。
あの新婚の良い時に別れてから月日はちょうど年が改たまろうとしている。
30. 良時 新婚のよい時。

31. 向除 歳末、年が尽き去ろうとする。


孰知寒暑積,僶俛見榮枯!
誰も知らないうちに、寒いときがあり、暑さがやってきて歳を重ねている、それはつとめて速かに花を咲かせ、そして枯れてゆくのを見るのである。
32. 僶俛 つとめて速いこと。光陰矢のごとし。


暮臨空房,涼風起坐隅。
こうして月日が過ぎ、はからずも年の暮れに夫のいないさびしい部屋に入って見る、寒い風が坐席のかたわらから吹きおこる。(そばには夫の温か味があったのに)
33. 空房 主人のいない室。


寢興日已寒,白露生庭蕪。
寝て起ききて日一日と日を重ね、としをかさねて、もう既に寒い季節になっている、私の操である白露の玉は庭の真ん中で輝くほどであったがしげみの陰に置くころとなった。
34. 白露 草木などにおく露が白く見えることからいう。茶の一種。二十四節季の一つ、陰暦七月半ば過ぎ。秋の夜露は月に輝く貞操を示す。

35. 庭蕪 蕪:あれ草、廡:庭の軒先。庭の真ん中で輝くほどであったが今はしげみの陰に置くということ。

 

(第五首)

勤役從歸願,反路遵山河。
役所勤めのうちにも帰省の願いが聞き入れられ、帰り道は山や河に沿って帰って行く。
36. ・勤役 役所のつとめ。

37. ・従帰願 帰郷の願どおりになる。 

38. ・反路遵山河 帰りの路は山川に沿って続く。 


昔辭秋未素,今也載華。
昔、いとま乞いをしたときは秋もまだ深くない落葉のない時期であったが、今は歳も新たに春の花が咲いている。
39. ・ 木の葉が落ちること。 

40. ・載華 草木がもう花が咲いている。載は「すなはち」。


蠶月觀時暇,桑野多經過。
春の蚕を飼う月にちょうどよい休暇をもらったのだ、帰り道は先々さかりの桑畑を通った。
41. ・蠶月 養蚕の月。養蚕をいう。

42. ・歓時暇 ちょうどよい晦に当たった休暇か餓ぶ。 


佳人從所務,窈窕援高柯。
そこには美しい女が務めの桑摘みをしていた、見目麗しい様子で高い枝をひきよせて桑の葉を摘んでいた。
43. ・佳人 美人。秋湖の妻。この時は自分の妻とは思っていない。

44. ・従所務「所」は文選に「此」に作る。

45. ・窈窕 たおやか。美人の形容。 

46. ・援高柯 高い桑の枝を引き寄せて葉を摘む。


傾城誰不顧,弭節停中阿。
世にもまれなその美人は一たび顧みれば人の城を傾けるといわれる魅力あるその美貌を、誰が振り向かないということがあるだろうか。秋湖も車の速度をとめて路の曲がり角に立ちどまって見とれてしまったのである。
47. ・傾城 漢の李延年が妹を歌った佳人歌に。「北方に佳人有り、絶世にして独立す。一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾く。寧んぞ傾と城傾国とを知らざらん。佳人は再び得難し」と。美人。

48. ・弭節 車の速度を止める。 

49. ・中阿 出路の曲がりかど。阿は山の中腹。

 

 

§6

年往誠思勞,事遠闊音形。
年はすぎ往き、誠意や思慕の心は疲れてしまい維持しなかった、それに路は遠く隔たって声も姿も久しく見聞きしていない。
50. .闊音形 声も姿も見聞きせず久しくなった。

51.  闊 遠く、うとい。通ぜぬこと。


雖爲五載別,相與昧平生。
五年もの別れをしていたのだけれども、お互いに平生の様子をなにもわからなかったものだ。
52. ・相與 ここは「たがいに」ではない。

53. ・昧平生 平素のようすがよくわからない。 

54. ・平生 ここは、その昔、かつて。


舍車遵往路,藻馳目成。
秋湖は車をおりて今来た道にしたがって戻った、秋湖は鴨が水草を得て喜んで踊り進むようにして、桑畑に美人に目くばせして「今夜の情交」の約束をしようとした。

55. ・遵往路 すぎて来た路に引きかえす。

56. ・藻馳目成 はかも。かもが水藻を得て喜び躍るように、進んで美女と目くばせして情交を約束する。目成は目で約束する。楚辞九歌に「堂兮美人,忽独与余兮目成」堂にちて美人あるに,忽ち独だ与に余と目成す。

57. ・ 呂延済は「秋胡が共の妻を望み匹肋(怠むこと、殆鳥の水草を俳で、猷び尿りて言むがごとし)という。

58. ・目成 自分の思いを成しとぐべく目くばせすること。ここは「いどむ」ため。


南金豈不重?聊自意所輕。
秋湖が贈ろうとした南国産の金はどうして重い値打ちがないであろうか、しかし、秋湖の妻はとにかく自分の心でそれを軽いつまらないものと思ったのである。
59. ・南金 詩経 魯頌 泮水篇に「元龜象齒,大賂南金。」(元亀象俳、大南金を賂(おく)る」。南方の荊州・揚州に産する黄金。

60. ・聊自穿所輯 とにかく自分では心に輕んじた。 秋湖の妻の思い:


義心多苦調,密比金玉聲。
彼女は貞節を重しとするためにお金を拒んだのである。その節義の心は秋湖にとって多くの苦い響きの言葉で語られたが、その声は全く金玉の美しく清い音にも似ていていた。
61. ・義心 義とは、夫蛸の道をさす。

62. ・多苦調 聞く者の心に苦しい響きの言葉が多い。

63. ・ ひそかに、ひそめる。

64. ・金玉声 ここは秋胡自身の聲。毛詩の小雅、白駒篇に「爾の音を金玉にして、遐心有る毋かれ」という。音は声。金玉にすとは、愛惜(おしむ)。出すことを、おしむ。

 

 

§7

高節難久淹,朅來空複辭。
高くすぐれた操をまもる婦人のもとに久しく留まることは難しいことである、秋湖は行きつもどりつしながらもむなしくまた別れをつげて去ったのだ。
67. ・高節 潔婦の高いみさお。 

68. ・追来 去來に同じ。行きつもどりつする。去り難くして去る。去りなむ、いざ。


遲遲前途盡,依依造門基。
秋湖の足どりは遅れがちながらも行く道を尽くしてしまう、後に心を引かれながらも家の門の土台に行き着いた。
69. ・依依 後に心がひかれるさま。

70. ・門基 わが家の門の土台。


上堂拜嘉慶,入室問何之。
秋胡は奥座敷に上がって母に拝して健康を歓び祝った、夫婦の奥室に入って、妻がどこに行ったのかを問う。
71. ・拝嘉慶 母を拝して、その款嫌のよいことを喜ぶ。 

72. ・問伺之 妾がどこに行ったかを問う。


日暮行采歸,物色桑時。
母は答えた、妻女は夕暮れ頃には帰って來るでしょう。それはいろんな物の色がわからなくなる、桑や楡の木立に日の入る黄昏時になるころでしょう。
73. ・行帰来 そろそろ帰って来るであろう。母の答え。 

74. ・桑楡 日が家の西側の桑や楡のこずえに落ち
かかる頃。目暮れ前。後漢書馮異伝に「之を東隅に失ひて、之を桑楡に取む」とあり、注に「桑楡は晩なり」とある。


美人望昏至,慚歎前相持。
美人は日の黄昏を望みながら家に到着する、さきに夫と途中で相応酬して、夫の心の不義なのを知ったことをはじめて恥じ入り、そして嘆くのである。
75. ・頂作庖 目暮れになるのを望み見ながら。 

76. ・前拒拉 さきに夫と途中で相応酬して、夫の心の不義なのを知ったこと。
・沈徳潜曰く「此の章は、其の母、人をして其の婦を呼ばしむ、至れば乃ち向の採桑の者なるを言ふなり」と。

 

 

(8)  

有懷誰能已?聊用申苦難。
心に思うことがあるのを苦難であっても誰がやめることができよう。それ故、妻は少しばかり苦しい胸の内を述べてみる。


離居殊年載,一別阻河關。
あの日別れてから離れて住んで年は移りゆく、一たび別れてのちは黄河の関所を隔て消息も絶えてしまった。
77. ・殊年載 年が変わる。 

78. ・阻河関 黄河の関所を隔て行くこともできない。


春來無時豫,秋至恒早寒。
私は春が来でも時節のたのしみもなく、秋になるといつも早く寒くなるであろう夫の赴任地の事を思った。
79. ・無時豫 時節に楽しむこともない。豫は逸楽。 


明發動愁心,閨中起長歎。
そして夜通し明け方まで憂い、心配し眠れない時を過ごし、夜は初夜を引きずって、ねやで立ち上がり長いためいぎをついていたものだった。
80.
 ・明発 早朝、夜が明けて光が発する時。夜は初夜を引きずっているということ。 
 

慘淒方晏,日落遊子顔。
心がいたみ悲しみの中でこの年も暮れてゆくのでした。夫の貴君が夕日の落ちる時にはますます旅人のやつれ顔をしておられる姿を思っていたのです。
81. ・慘淒 心がいたみ悲しむ。 

82. ・ 暮れる。 

83. ・遊子顔 夫の旅にやっれた顔を思い浮かべる。

 

 

§9

高張生弦,聲急由調起。
琴瑟も高い調子に張ると絶ち切れる絃が生じるように、みさおを高く立て通すためには命を絶つこともある。音声のきびしく悲しいのは曲のしらべが高まるように恨みか深いから、言葉も痛切になるのです。
84. 高張生紬絃 生は致す意。節操を立てるため、命を致す(自殺)を期することにたとえた。 琴の絃を声高く張れば絶ち切れる絃も生じる。みさお強く立て通せば生命か絶つこともある。筋を通すには命を懸けるの喩え。

85. 声急由調趙 恨みか深いのて、辞も痛切になることにたとえた。声急由調起 音声のぜまって悲しげなことは曲調が高まるのによる。妻の苦言は恨みの深いためであるという意味を、音曲の理にたとえた。この「秋湖詩」は歌い語りの詩であるから、両句は音曲上のことでいう。 


自昔枉光塵,結言固終始。
昔、貴君がわざわざ来られて私を妻に迎えられてから、終始、固く変わるまいと失婦の約束をしたのです。
86. 枉光塵 わざわざお迎えを頂いて婚礼をした。光塵は人の車の迹に起こる塵の美称。光は輝く意味で美称。光塵 秋胡の光と塵をさす。

87. 結言 佩び帯を結んで約束をする。楚辞、離騒「吾令豐隆乘雲兮,求虙妃之所在解佩纕以結言兮」佩纕を解いて以て言を結ぶ。」


如何久爲別,百行諐諸己。
しかしこのように、久しく別れているうちに、あなたはすべての行勤に貴君自身が徳義を破ったのをどうしからよいというのですか。
88. 百行 あらゆる行ない。

89. 諐諸己 あやまつ、失。秋湖自身徳義を破ったことをいう。


君子失明義,誰與偕沒齒!
孔子家語「淫乱は男女より生ず。男女、別なければ、夫婦、義か失う。」といわれる通り、貴君が、明らかた道義にそむくことをされるなら、誰がともに一生を終えることができようか。
90. 失明義 孔子家語「淫乱は男女より生ず。男女、別なければ、夫婦、義か失ふ。」


愧彼行露詩,甘之長川汜。
とても一緒に暮らせるものではありません。『詩経、召南』石露篇に貞節の婚人には無礼を加えることができないことを歌っているが、私はその詩に恥じると思うのです。それゆえ甘んじて大川の岸に行って身を投げて死のうと思うのです。
91.
 傀彼行露詩 愧とは、はずかしく思うこと。「貞女は、霜露を犯して礼に違ふことをせず、而るに我は生を貪りて義を棄つるをなさば、彼の貞女に劣る。故に愧づることあり」という注がある。
 『詩経、召南』石露篇に「厭浥行露、豈不夙夜、謂行多露。」(厭浥たる行の露、豈夙夜せざらんや、謂ふ行に露の多しと。)詩の序に「彊暴の男も、貞女 を侵凌すること能ばず」という。○甘 満足して。みずから願って。○ 爾雅に、「決れて復た河に入る水」というのは、再び本流に合流する所の支流のこと。ここは「水涯」(入水自殺)をいう。○長川汜 大川の岸。汜は岸。