玉臺・巻四-20 雜詩六首其三 題書後寄行人〔鮑令睴〕

 

 

玉臺・巻四-20 雜詩六首其三 題書後寄行人〔鮑令睴〕 Ⅴ漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の玉臺新詠巻二ブログ 10664

(夫からの手紙を読み終えて後に文を記して旅先の夫に贈った詩である。)

あなたがこの家を出發されてからというもの、わたしは軒端に立ってあなたの方を臨むけれど、喜ばしいという情報、景色もないので顔をほころばせて笑うことなどない。

夜は冬支度の砧を打つ擣音も立てず、昼は高い門をとざしたままでにしている。

閨のとばりの中には螢の光が流れ、庭さきには紫の秋蘭が花さきだした。

そして、物みな枯れて季節のうつろいがわかり、大雁がやって来て旅にある人が寒いであろうと気がつく。

あなたは遠い土地に出かけたままその旅もこの冬の暮れで終わります。春の終わり頃にはお帰りを待っています。

 

 

 

 

玉臺新詠 巻四 (6鮑令暉 雜詩六首

 

 

 雜詩六首 

〔鮑令暉〕

18

巻四-18

其一

1.  擬青青河畔草

〔鮑令暉〕

19

巻四-19

其二

2.  擬客從遠方來

〔鮑令暉〕

20

巻四-20

其三

3.  題書後寄行人

〔鮑令暉〕

21

巻四-21

其四

4.  古意贈今人

〔鮑令暉〕

21

巻四-21

其五

5.1.  代葛沙門妻郭小玉詩二首(明月何皎皎)

〔鮑令暉〕

22

巻四-22

 

5.2.  代葛沙門妻郭小玉詩二首(君子將遙役)

〔鮑令暉〕

 

雜詩六首其一  擬青青河畔草

裊裊臨窗竹,藹藹垂門桐。灼灼青軒女,泠泠高台中。

明志逸秋霜,玉顏艷春紅。人生誰不別,恨君早從戎。

鳴弦慚夜月,紺黛羞春風。

 

雜詩六首其二  擬客從遠方來

客從遠方來。贈我漆鳴琴。木有相思文。弦有別離音。

終身執此調。寒不改心。願作陽春曲。宮商長相尋。

 

雜詩六首其三  題書後寄行人

自君之出矣。臨軒不解顏。砧杵夜不發。高門晝常關。

帳中流熠耀。庭前華紫蘭。物枯識節異。鴻來知客寒。

遊用暮冬盡。除春待君還。

 

雜詩六首其四  古意贈今人

無異服。衣氈代文練。月月望君歸。年年不解綖。

荊揚春早和。幽冀猶霜霰。

北寒妾已知。南心君不見。 誰為道辛苦。寄情雙飛燕。

形迫杼煎絲。顏落風催電。容華一朝盡。惟餘心不變。

 

雜詩六首其五 

代葛沙門妻郭小玉詩二首

明月何皎皎。垂照羅茵。若共相思夜。知同憂怨晨。

芳華豈矜貌。霜露不憐人。君非青雲逝。飄跡事咸秦。

妾持一生淚。經秋複度春。

 

君子將遙役。遺我雙題錦。臨當欲去時。複留相思枕。

題用常著心。枕以憶同寢。行行日已遠。轉覺心彌甚。


万里の長城 02
 

 

 

巻四-18《雜詩六首其一》 擬青青河畔草

 

 

玉臺新詠 字解集 訳注解説

 

 

鮑 令 暉   漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ

 

 

 

雜詩六首其一  擬青青河畔草

(従軍している夫に対して思婦の思いを述べた作)

裊裊臨窗竹,藹藹垂門桐。

窓にさしかかった竹はたおやかであるし、門に垂れた桐はおだやかに茂っている。

灼灼青軒女,泠泠高台中。

東の高楼の青色の軒端にはかがやくばかりの美しい女が居り、冷えびえとした高い台の中に住まっている。

明志逸秋霜,玉顏艷春紅。

彼女は秋の霜にもまさる明らかな志をいだき、その玉のような顔は春の紅い花よりもつややかである。

人生誰不別,恨君早從戎。

この世には誰しも別れのないものはないけれども恨めしくも、彼女の夫は早くから出征して今に帰らぬのである。

鳴弦慚夜月,紺黛羞春風。

独り舷をかきならしても夜の月に対してわが身をほじ、紺黛の眉ず衣を用いるのも春風にはずかしい気持ちで、化粧する心にもなれない。

 

(雜詩六首其一  青青たる河畔の草に擬す)

裊裊たり 窗に臨む竹,藹藹たり門に垂れる桐。

灼灼たり 青軒の女,泠泠たり 高台の中。

明志は秋霜を逸【す】ぎ,玉顏は 春紅のごとく艷かなり。

人生 誰か別れざらん,君が早く戎に從いしを恨む。

鳴弦 夜月に慚じ,紺黛 春風に羞ず。

 

雜詩六首其二  擬客從遠方來

(あの人を送り出して、ずいぶん歳月を過ごした。あの人の知人が遠方から訪ねて事を届けてくれた。心変わりをせず待っていると改めて決意する。)

客從遠方來。贈我漆鳴琴。

遠方から訪ねてこられた来客があり、あの人がわたしに送り届けてくれたのは、漆ぬりの琴であった。

木有相思文。弦有別離音。

琴の木地には相思の文様があるのであるが、弦をつま弾くと別離の響きがあるのを感じた。

終身執此調。寒不改心。

なかなか帰れないことを理解し、一生涯この調を守っていくことにしよう、そして、歳の暮れになっても心変わりを決してしないと思った。

願作陽春曲。宮商長相尋。

それから、また、陽春の曲を奏して宮調・商調互いに調和する如く、いつもながく求めあって離れぬようにしたいと思うのであった。

 

雜詩六首其の二  (客遠方より来るに擬す)

客 遠方より來り、我に 漆の鳴琴を贈る。

木には相思の文有り、絃に別離の音有り。

終身 此の調を執り、歳寒まで 心を改めず。

願はくば陽春の曲を作して、宮商 長く相尋ねん。

 

雜詩六首其三  題書後寄行人

(夫からの手紙を読み終えて後に文を記して旅先の夫に贈った詩である。)

自君之出矣。臨軒不解顏。

あなたがこの家を出發されてからというもの、わたしは軒端に立ってあなたの方を臨むけれど、喜ばしいという情報、景色もないので顔をほころばせて笑うことなどない。

砧杵夜不發。高門晝常關。

夜は冬支度の砧を打つ擣音も立てず、昼は高い門をとざしたままでにしている。

帳中流熠耀。庭前華紫蘭。

閨のとばりの中には螢の光が流れ、庭さきには紫の秋蘭が花さきだした。

物枯識節異。鴻來知客寒。

そして、物みな枯れて季節のうつろいがわかり、大雁がやって来て旅にある人が寒いであろうと気がつく。

遊用暮冬盡。除春待君還。

あなたは遠い土地に出かけたままその旅もこの冬の暮れで終わります。春の終わり頃にはお帰りを待っています。

 

(雜詩六首其の三 書後に題して行人に寄す)

君の出でしより、軒に臨みて顏を解かず。

砧杵 夜 げん發せず、高門 晝も常に関せり。

帳中に 熠耀 流れ、庭前に 紫蘭 華さく。

物枯れて節の異なるを識り、鴻 來りて客の寒からんことを知る。

遊びは 暮冬を用て盡き、除春に 君が還るを待たん。

春雪に草原に集まる動物002
 

《雜詩六首其二》擬客從遠方來現代語訳と訳註解説

(本文)

雜詩六首其三  題書後寄行人

自君之出矣。臨軒不解顏。

砧杵夜不發。高門晝常關。

帳中流熠耀。庭前華紫蘭。

物枯識節異。鴻來知客寒。

遊用暮冬盡。除春待君還。

 

(下し文)

(雜詩六首其の三 書後に題して行人に寄す)

君の出でしより、軒に臨みて顏を解かず。

砧杵 夜 げん發せず、高門 晝も常に関せり。

帳中に 熠耀 流れ、庭前に 紫蘭 華さく。

物枯れて節の異なるを識り、鴻 來りて客の寒からんことを知る。

遊びは 暮冬を用て盡き、除春に 君が還るを待たん。

 

(現代語訳)

(夫からの手紙を読み終えて後に文を記して旅先の夫に贈った詩である。)

あなたがこの家を出發されてからというもの、わたしは軒端に立ってあなたの方を臨むけれど、喜ばしいという情報、景色もないので顔をほころばせて笑うことなどない。

夜は冬支度の砧を打つ擣音も立てず、昼は高い門をとざしたままでにしている。

閨のとばりの中には螢の光が流れ、庭さきには紫の秋蘭が花さきだした。

そして、物みな枯れて季節のうつろいがわかり、大雁がやって来て旅にある人が寒いであろうと気がつく。

あなたは遠い土地に出かけたままその旅もこの冬の暮れで終わります。春の終わり頃にはお帰りを待っています。

 

(訳注)

雜詩六首其三  題書後寄行人

1.(夫からの手紙を読み終えて後に文を記して旅先の夫に贈った詩である。)

2(書後に題して行人に寄す)夫からの手紙を読み終えて後に文を記して旅先の夫に贈った詩である。

 

自君之出矣。臨軒不解顏。

あなたがこの家を出發されてからというもの、わたしは軒端に立ってあなたの方を臨むけれど、喜ばしいという情報、景色もないので顔をほころばせて笑うことなどない。

3. 臨軒 「軒」は、正面入り口の軒柱。家の手摺、「らんかん」と見る解もある。

 

砧杵夜不發。高門晝常關。

夜は冬支度の砧を打つ擣音も立てず、昼は高い門をとざしたままでにしている。

4. 砧 アイロンのない時代、洗濯した布を生乾きの状態で台にのせ、棒や槌でたたいて柔らかくしたり、皺をのばすための道具。また、この道具を用いた布打ちの作業を指す。古代から伝承された民具であり、古くは夜になるとあちこちの家で砧の音がした。

 

帳中流熠耀。庭前華紫蘭。

閨のとばりの中には螢の光が流れ、庭さきには紫の秋蘭が花さきだした。

5. 熠耀 螢火。

 

物枯識節異。鴻來知客寒。

そして、物みな枯れて季節のうつろいがわかり、大雁がやって来て旅にある人が寒いであろうと気がつく。

6. 物枯 一本「楊枯」に作る。『宋刻』本『芸文類衆』『文苑英華』は皆「物枯」に作る。但し「楊枯」に作る方対句としては可なりと思わる。

 

遊用暮冬盡。除春待君還。

あなたは遠い土地に出かけたままその旅もこの冬の暮れで終わります。春の終わり頃にはお帰りを待っています。

7. 除春 なんの楽しいことのない、取り除かれた様な春の季節、その春も終わりということ。