玉臺新詠集 巻四 9.謝朓 4•9-1-6雜詩十二首其四詠邯鄲故才人嫁為厮養卒婦  訳注解説 漢文委員会 紀頌之Blog11115

 

 

 

 9.謝朓

 

49-1-6雜詩十二首其四詠邯鄲故才人嫁為厮養卒婦

 

玉臺新詠集  謝朓詩 訳注解説

 

 

漢文委員会 紀頌之Blog11117

 

 

 

1

謝朓詩 雜詩十二詩 贈王主簿二首

雜詩十二首

贈王主簿二首其一

(以前寵愛を一手に受けていた女が、寵愛を失った今の思いを詠う)

日落窗中坐  紅妝好顏色

日の落ちかかる夕暮れ時、窗部屋の中に物憂げに坐っている。紅い装束をした美しい顔色の女である。

舞衣襞未縫  流黃覆不織

舞い衣はひだができて古めかしいが、新しいのはまだ縫えないでいる。機の上の生絹も織り半ばで上を覆いかぶせたままにしてある。

蜻蛉草際飛  遊蜂花上食

庭の草ぎわに衣装を鮮明にして整えている羽を持つカゲロウが飛び舞わり、蜂もあちこち飛び回ってから、花の上に蜜をあさっている。

一遇長相思  願寄連翩翼

それを見て女は、あなたをおもい、寵愛はいつまでもと誓った、だからもう一ど遇いたいと願っています、どうにかして、すぐにでもあの雌雄うち連れて飛ぶ鳥の翼にこの身を託したいものだと。

 

(王主簿に贈る。二首其の一)

日落ち 窗中に坐し、紅妝 顏色を好くす。

舞衣 襞【ひだ】たつも 未だ縫せず、流黃 覆うても織らず。

蜻蛉 草むらの際に飛び、蜂は遊び 花上に食す。

一たび遇わんこと “長相思”、  願わくば連翩たる翼に寄せん。

 

2

(二)

(洛陽城の片隅に、二人の美女の歌姫がいて、町のものも遠くからもその歌声を聞こうとあつまる。そうした春の日の情景を詠う)

清吹要碧玉  調弦命綠珠

清らかな吹奏のためにはあの美女の碧玉をむかえて命じるし、絃の調べには石崇の寵妾の縁珠がにあうので侍らせていいつけるのが一番いい。

輕歌急綺帶  含笑解羅襦

女の軽やかに歌う姿に心を動かして、その美しい帯にせまり、女が笑を含んでうすぎぬの袖なしをもぬぐ。

餘曲詎幾許  高駕且踟躕

最後の曲まで歌い残しの曲がどれほどあるのだろうか。それを最後まで聴こうとしているのだろう、車を止めぐずぐずとためらっている。

徘徊韶景暮  惟有洛城隅

そのように楽しみ過ごせば、時の過ぎるのも忘れているあなたを見て、わたしの方はやるせなさにその場を行ったり来たりしているうちに春の日も暮れてゆく。ただ、それはのどかなこの洛陽城の片隅の景色の中におこっただけのことなのである。

 

(二)

清吹 碧玉を要へ、調弦 綠珠に命ず。

輕歌 綺帶をに急し、含笑 羅襦を解く。

餘曲 詎んぞ幾許【いくばく】、高駕 且つ踟躕す。

徘徊 韶景の暮れるは、惟だ 洛城の隅に有り。

 

3.   同王主簿怨情

(男の愛を失った婦人の悲しい運命を詠う)

掖庭聘國  長門失懽

漢延の大奥、掖庭宮から遠く離れた砂漠の向こうの匈奴に迎えられたのは王昭君である、衛子夫が後宮に入ると、子もなく武帝の寵を失って長門宮は冷宮となり、楽しい宴会に侍ることもなかったのは陳皇后である。

相逢詠蘼蕪  辭寵悲團扇

また、離縁されて、もとの夫に逢いたくて詠ったのは“靡蕪の詩”であり、班倢妤が天子の愛を奪われ、斥けられたときのいいぐさは、秋の「うちわ」である。これらは皆男の愛を失った婦人の悲しい運命である。

花叢亂數蝶  風簾入雙燕

花さくくさむらに喋が二つ三つ乱れとび、風にゆられる簾の中には一対の燕が舞いこんでくる。

徒使春帶  坐惜紅顏變

それを眺めやるわたしは、棄てられた身の悲しさに痩せ細って、春の帯もいたずらに長すぎるありさま、そぞろに紅の顕もふけてゆくのが惜しまれる。

平生一顧重  夙昔千金賤

日ごろはわたしの一顧を重んじて、昔黄金千金のねうちも賎しめたほどであった。

故人心尚永  故心人不見

わが夫の心は今もなお昔にかわらぬ とは思うのだが、しかし昔ながらの心の人は見るよしもないのが今の世の常、それを思うて限りなくうらめしい。

 

3.           (王主簿の怨情に同じゅうす。)

披庭 絶国に幣され、長門 懽讌を失ふ。

相い蓬いては 蘼蕪を詠じ、寵を辭して 団扇を悲しむ。

花叢には 数蝶乱れ、風簾に 雙燕 入る。

徒らに春帯をしてからしめ、坐ろに紅粧の変ずるを惜しむ。

生平 一顧に 重く、宿昔に 千金 賎し。

故人の心は 尚お爾り、 故心の人は 見ず。

 

雜詩十二詩 其三 夜聴妓二首

4〔一〕

(洛陽の美妓たちの歌舞矯態を描いたものである。今夜の宴席の様子が、妓女の腕輪の触れ合う音と、その席に立ちこめている艶やかな雰囲気によって、詠われている。)

瓊閨釧響聞、瑤席芳塵滿。

うるわしい閏から 腕輪の触れあう響きが聞こえ にぎやかな座席には 芳わしい塵が満ちている。

要取洛陽人、共命江南管。

いまや洛陽の美妓を呼び寄せて、みんなで江南の笛を吹かせ合奏している。

情多舞態遲、意傾歌弄緩。

情が溢れて、なまめかしく舞の動きはゆったりと、客を意識してそちらにきもちを傾けていて、それに合わせて歌の調べも緩やかになる。

知君密相親、寸心傳玉椀。

それは あなたが密かに親しみを感じているのを 知って一寸の心のたけを一寸の玉椀で運んで伝えようとしている。

(一) 
(其の一 夜 妓を聴く)

瓊閏に 釧響を聞く 堵席に 芳塵 満つ。

洛陽の人を要へ取りて、共に 江南の管を命ず。

情多くして 舞態 遅く、意傾きて 歌弄 緩やかなり。

君の密かに相い親しむを知りて、寸心 玉椀に伝う。

 

5〔二〕

(超高級官僚の邸宅における春の宴の模様を述べたもの

上客光四座、佳麗直千金。

身分高い客人たちが満座と集まっている、舞台もかがやき、そこに歓樂する佳麗の美女は皆千金の価値ある光景である。

挂釵報纓絶、珥荅琴心。

客の中に冠の纓がちぎれたのを治そうとしているものがいる、美人はその人の纓に簪を使って、冠を正して報いたようで、客は琴心をもって、これに答えている。

娥眉已共笑、清香復入衿。

蛾眉のそろった美人たちは貴賓客と共に笑い歓談している、美女たちの清らかな香りは客のえりもとにまでただよってくる。

歓樂夜方靜、翠帳垂沉沉。
小學堂で演じられる舞の歌曲もおわり、夜はひっそりと静まりかえる、庭の奥の室の内には翠のとばりが深くたれこめて、夜は更に静かにふけわたる。

 

〔二〕

上客 四座を光らす、佳麗 直い 千金。

挂釵 纓の絶ゆるに報い、珥 琴心に荅う。

娥眉 已に 共に笑う、清香 復た 衿に入る。

歓樂 夜 方に靜なり、翠帳 垂れて沉沉たり。

 

#6

雜詩十二首其四(詠邯鄲故才人嫁為廝養卒婦)

(趙の後宮の妃嬪・才人であった女性の後宮を解放されて、その後のことを述べる)

生平宮閤裏、出入侍丹墀。

常日頃、宮中の奥深い閏閤の中ですごしているし、出るのは閏閤殿から天子の朱ぬりの土縁に面した部屋で、侍っているのである。

開笥方羅縠、窺鏡比蛾眉。

その部屋での、妃嬪たちはすることがなく、箪笥の引き出しを開いてうすぎぬの服地の美をくらべ合わせたり、鏡をのぞいては、朋輩と書き眉の美しさを比較しあったりするのである。

初別意未解、去久日生悲。

幼いとき後宮に入内したわたしが初めて宮中から別れた時、俗世間の生活にただ茫然として、理解することができなかったが、離れて久しくなるにつれ、日に日に悲しさが膨らんでゆくのです。

顦顇不自識、嬌羞餘故姿。

心配事がおおいいのか、病気をしたのが気づかぬうちにやつれたようだが、それでも妃嬪としての矜持と恥じらいの心、気高き妃嬪の姿はまだ残って居る。

夢中忽髣髴、猶言承讌私。

だから、夢の中ではたちまちもとの姿がおぼろに現れる、今でもなお宴席に侍って私恩をいただいているなどと言うこともある。

 

雜詩十二首其四(詠邯鄲故才人嫁為廝養卒婦)(邯鄲の故の才人が嫁して雑役の卒の婦と為れるを詠ず)

生平 宮閤の裏、出入 丹墀に侍す。

笥を開き 羅縠を方ずれば、鏡を窺って蛾眉を比す。

初め別れしより 意 未だ解けず、去ること久しく 日に悲しみを生ず。

顦顇 自ら識らず、嬌羞 故姿を餘す。

夢中 忽ち 髣髴として、猶お 言う 讌私を承わると。

 

雜詩十二首其四秋夜

秋夜促織鳴  南鄰擣衣急

思君隔九重  夜夜空佇立

北窗輕幔垂  西月光入

何知白露下  坐視前堦濕

誰能長分居  秋盡冬復及

 

 姮娥 0021

 

 

 

現代譯 訳注解説

(本文)

6.雜詩十二首其四(詠邯鄲故才人嫁為廝養卒婦)

生平宮閤裏、出入侍丹墀。

開笥方羅縠、窺鏡比蛾眉。

初別意未解、去久日生悲。

顦顇不自識、嬌羞餘故姿。

夢中忽髣髴、猶言承讌私。

 

(下し文)

6(邯鄲の故の才人が嫁して雑役の卒の婦と為れるを詠ず)

生平 宮閤の裏、出入 丹墀に侍す。

笥を開き 羅縠を方ずれば、鏡を窺って蛾眉を比す。

初め別れしより 意 未だ解けず、去ること久しく 日に悲しみを生ず。

顦顇 自ら識らず、嬌羞 故姿を餘す。

夢中 忽ち 髣髴として、猶お 言う 讌私を承わると。

(現代語訳)

(趙の後宮の妃嬪・才人であった女性の後宮を解放されて、その後のことを述べる)

#6

常日頃、宮中の奥深い閏閤の中ですごしているし、出るのは閏閤殿から天子の朱ぬりの土縁に面した部屋で、侍っているのである。

その部屋での、妃嬪たちはすることがなく、箪笥の引き出しを開いてうすぎぬの服地の美をくらべ合わせたり、鏡をのぞいては、朋輩と書き眉の美しさを比較しあったりするのである。

幼いとき後宮に入内したわたしが初めて宮中から別れた時、俗世間の生活にただ茫然として、理解することができなかったが、離れて久しくなるにつれ、日に日に悲しさが膨らんでゆくのです。

心配事がおおいいのか、病気をしたのが気づかぬうちにやつれたようだが、それでも妃嬪としての矜持と恥じらいの心、気高き妃嬪の姿はまだ残って居る。

だから、夢の中ではたちまちもとの姿がおぼろに現れる、今でもなお宴席に侍って私恩をいただいているなどと言うこともある。

 

 

(訳注解説・字解)

雜詩十二首

現存する詩は200首余り、その内容は代表作とされる山水詩のほか、花鳥風月や器物を詠じた詠物詩、友人・同僚との唱和・離別の詩、楽府詩などが大半を占める。

とりわけ叙景に優れ、謝霊運の山水詩を引き継ぎつつ、美を洞察する感受性は、他の六朝(りくちょう)詩人に類をみない。友人の沈約(しんやく)は謝の五言詩を「二百年来この詩なし」とたたえた。謝も沈約も竟陵王蕭子良(きょうりょうおうしょうしりょう)の文学サロンに出入りした八友の一人であるが、謝の詩は、唐詩の風を先駆けて切り開いており、唐の詩人李白(りはく)や杜甫(とほ)の評価も高い。尚書吏部郎に抜擢(ばってき)されてまもなく、王朝末期にありがちな皇帝廃立の陰謀に巻き込まれ、36歳で獄死した。『謝宣城集』5巻がある。

 

雜詩十二首其四(詠邯鄲故才人嫁為廝養卒婦)

(趙の後宮の妃嬪・才人であった女性の後宮を解放されて、その後のことを述べる)

邯鄲の以前天子の妃嬪で後宮に仕えていた才人という位にあったものが雑役の兵卒に嫁してその妻となったことを詠じた詩である。「邯鄲」は趙の都、「才人」は正四品の女官、「廝養」は軍中で薪をとったり、炊飯を行ったりする者をいう。
才人  古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬢、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。

唐初の武徳年間(618 - 626年)に、唐は隋の制度を参照して完璧で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬢(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。上記のそれぞれの女性は官品をもち、合計で122人の多きに達した。皇后だけが正妻であり、その他は名義上はみな「妃嬪」-皇帝の妾とされた。

 

生平宮閤裏、出入侍丹墀

常日頃、宮中の奥深い閏閤の中ですごしているし、出るのは閏閤殿から天子の朱ぬりの土縁に面した部屋で、侍っているのである。

生平 ふだん。いつも。つね日ごろ。副詞的にも用いる。

宮閤裏 「宮閤」は後宮の正門を言う俗名で、後宮に奉公することを言うものであろう。15歳で試験を受け、入内し、3年満期を繰り返し、2125歳で対処し、結婚する。可愛がられれば、一人の妃嬪に終生仕えることもあるが、出自によっては、よい家系に傅くこともあったようだ。 彼女たちは身を九重(天子の宮殿)に置き、はなはだ高貴であるように見えるが、じつはただの皇帝家の家婢に過ぎず、衣食の心配がなくたいへん幸福のように見えるが、じつは人間性を最も残酷に破壊された人々であった。 宮廷においては、少数の地位の高い后妃の他は、万単位で数えられる普通の宮人であり、唐代では「宮女」「宮蛾」「宮婢」などとも呼ばれていた。彼女たちは長安にあった三大皇宮(太極宮、大明宮、興慶宮)と東都洛陽にあった大内(天子の宮殿)と上陽の両宮殿、及び各地の離宮、別館、諸親王府皇帝陵にそれぞれ配属されていた。

丹墀 宮殿の階上の庭、天子の宮殿。

 

開笥方羅縠、窺鏡比蛾眉。

その部屋での、妃嬪たちはすることがなく、箪笥の引き出しを開いてうすぎぬの服地の美をくらべ合わせたり、鏡をのぞいては、朋輩と書き眉の美しさを比較しあったりするのである。

 ここは、箪笥と考える。

羅穀 うすものの服地、「穀」はしわを織り出したきぬ、「ちりめん」の類。

窺鏡 鏡の中を覗き込む。寵愛のない妃嬪たちは、みんなで集まって日がな一日、遊んだり、雑談して過ごした。

 

初別意未解、去久日生悲。

幼いとき後宮に入内したわたしが初めて宮中から別れた時、俗世間の生活にただ茫然として、理解することができなかったが、離れて久しくなるにつれ、日に日に悲しさが膨らんでゆくのです。

 

顦顇不自識、嬌羞餘故姿。

心配事がおおいいのか、病気をしたのが気づかぬうちにやつれたようだが、それでも妃嬪としての矜持と恥じらいの心、気高き妃嬪の姿はまだ残って居る。

顦顇 憔悴ということ。心配や疲労・病気のためにやせ衰えること。

 

夢中忽髣髴、猶言承讌私

だから、夢の中ではたちまちもとの姿がおぼろに現れる、今でもなお宴席に侍って私恩をいただいているなどと言うこともある。

髣髴 おぼろにそれらしく見えること。

承讌私 宴席で私恩をうける意。

 

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