孫光憲 酒泉子三首其一
空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。
香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。
(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)
砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。
そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。
西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。
美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。
12孫光憲《巻八17酒泉子三首其一》『花間集』369全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7117
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韋莊 |
巻三24酒泉子月落星沉,樓上美人春睡。綠雲傾,金枕膩,畫屏深。子規啼破相思夢,曙色東方纔動。柳煙輕,花露重,思難任。 |
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牛嶠 |
巻四22酒泉子記得去年,煙暖杏園。花正發,雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟,落梅粧。 |
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張泌 |
巻四42酒泉子二首其一春雨打䆫,驚夢覺來天氣曉。畫堂深,紅焰小,背蘭缸。酒香噴鼻懶開缸,惆悵更無人共醉。舊巢中,新鷰子,語雙雙。 |
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張泌 |
巻四43酒泉子二首其二紫陌青門,三十六宮春色。御溝輦路暗相通,杏園風。咸陽沽酒寶釵空,笑指未央歸去。插花走馬落殘紅,月明中。 |
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毛文錫 |
巻五07酒泉子綠樹春深,鷰語鶯啼聲斷續。蕙風飄蕩入芳叢,惹殘紅。柳絲無力裊煙空,金盞不辭須滿酌。海棠花下思朦朧,醉香風。 |
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牛希濟 |
巻五43酒泉子枕轉簟涼,清曉遠鐘殘夢。月光斜、簾影動,舊鑪香。夢中說盡相思事,纖手勻雙淚。去年書,今日意,斷離腸。 |
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顧夐 |
巻七09酒泉子七首其一楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。 |
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顧夐 |
巻七10酒泉子七首其二羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。登臨䆫,花滿樹,信沉沉。 |
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顧夐 |
巻七11酒泉子七首其三小檻日斜,風度綠䆫人悄悄。翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。別來情緒轉難判,韶顏看卻老。依稀粉上有啼痕,暗銷魂。 |
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顧夐 |
巻七12酒泉子七首其四黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。小鴛鴦,金翡翠,稱人心。錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。隔年書,千點淚,恨難任。 |
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顧夐 |
巻七13酒泉子七首其五掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。 |
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顧夐 |
巻七14酒泉子七首其六水碧風清,入檻細香紅藕膩。謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。帳深枕膩炷沉煙,負當年。 |
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顧夐 |
巻七15酒泉子七首其七黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。殘花微雨隔青樓,思悠悠。芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。畫羅襦,香粉污,不勝愁。 |
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孫光憲 |
巻八17酒泉子三首其一空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。 |
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孫光憲 |
巻八18酒泉子三首其二曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲絕,鬱離襟。展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。 |
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孫光憲 |
巻八19酒泉子三首其三斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。 |
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毛熙震 |
《巻十09巻十酒泉子二首其一》 閑臥繡幃,慵想萬般情寵。錦檀偏,翹股重,翠雲欹。暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。 |
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毛熙震 |
《巻十10酒泉子二首其二》 鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。 |
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李珣 |
《巻十38酒泉子四首其一》 寂寞青樓,風觸繡簾珠翠撼。月朦朧,花暗澹,鏁春愁。尋思往事依稀夢,淚臉露桃紅色重。鬢欹蟬。釵墜鳳,思悠悠。 |
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李珣 |
《巻十39酒泉子四首其二》 雨清花零,紅散香凋池兩岸。別情遙,春歌斷,掩銀屏。孤帆早晚離三楚,閑理鈿箏愁幾許?曲中情,絃上語,不堪聽。 |
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李珣 |
《巻十40酒泉子四首其三》 秋雨聯綿,聲散敗荷叢裏。那堪深夜枕前聽,酒初醒。牽愁惹思更無停,燭暗香凝天欲曉。細和煙,冷和雨,透簾中。 |
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李珣 |
《巻十41酒泉子四首其四》 秋月嬋娟,皎潔碧紗䆫外。照花穿竹冷沉沉,印池心。凝露滴,砌蛩吟,驚覺謝娘殘夢。夜深斜傍枕前來,影徘徊。 |
酒泉子三首其一
(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)
空磧無邊,萬里陽關道路。
砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。
馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。
そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。
香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。
西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。
綺羅心,魂夢隔,上高樓。
美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。
(酒泉子三首 其の一)
空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。
馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。
香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。
綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。
酒泉子三首其二
曲檻小樓,正是鶯花二月。
思無憀,愁欲絕,鬱離襟。
展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。
淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。
酒泉子三首其三
斂態䆫前,裊裊雀釵拋頸。
鷰成雙,鸞對影,耦新知。
玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。
翠連娟,紅縹渺,早粧時。
『酒泉子三首其一』 現代語訳と訳註
(本文)
酒泉子三首其一
空磧無邊,萬里陽關道路。
馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。
香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。
綺羅心,魂夢隔,上高樓。
(下し文)
(酒泉子三首 其の一)
空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。
馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。
香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。
綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。
(現代語訳)
(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)
砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。
そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。
西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。
美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。
(訳注)
酒泉子三首其一
(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)
【解説】孫光憲の詩は客観視して詠じられたものが多い。ここでも宴席から、行ったことのない西域、玉門関の更に西の陽関を想像し従軍兵士の思いを詠う。妻が出征した夫を思う雰囲気を感じさせて事態感を出している。教坊曲は吟じたり、それを聞いているものは全く実感のない人たちを前提にして作られるものであるから、いかに万人受けするかということが重要である。そうした意味でも孫光憲は客観的な目線を送っている。
『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句一仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、4❻③3③/❼❺3❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④❼3❸③/⑦733③の詞形をとる。
酒泉子三首其一
空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。
香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。
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空磧無邊,萬里陽關道路。
砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。
1. 空磧 空漠とした石ころ砂漠。
2. 陽關 関門の名。今の甘粛省敦燈の西南。玉関の南にあったので陽閑と言った。陽関(ようかん):盛唐の詩人・王 維の詩で知られる陽関。
王維『送元二使安西』
渭城朝雨潤輕塵、 客舎青青柳色新。
勧君更盡一杯酒、 西出陽關無故人。
(元二の安西に使するを送る)
渭城の朝雨 軽塵を潤し、客舎青青柳色新たなり。
君に勧む更に盡くせ一杯の酒、西のかた陽關を出ずれば故人無からん。
陽関の烽火台
陽関は甘粛省敦煌市の西南70キロにあり、古代シルクロードの関所である。前漢に関所がおかれ玉門関の南(陽)にあったこと
からこの名がある。玉門関と並んで西域交通の門戸であった。前漢時代は陽関都尉の治所であり、魏晋時代は陽関県が置かれた。
唐代には寿昌県がおかれた。宋・元代以後は西方との陸路交通がだんだんと衰退し、関所も廃棄された。
馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。
そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。
3. 粛粛 馬の斯き声の形容。
4. 隴雲愁 西への道は天に続く、天日への道であること。そこに続く道は杜甫の「兵車行」に述べられており、隴西から過酷な峠を抜ける様子も「前出塞九首」「後出塞五首」に述べられており、隴山に懸かる雲はそのすべてを見ている。
香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。
西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。
5. 香貂舊制戎衣窄 貂の革製の昔誰かが作ったもので出征する際に持たされた軍服は体に少々きつくても必要なものだ。香貂は貂が極寒の冬には形が古かろうが、大きさがあって居なくても寒さをしのぐうえで威力を発揮して素晴らしいというほどの意味、美称。
綺羅心,魂夢隔,上高樓。
美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。
6. 綺羅心 美しい綺羅の衣を着た女の心。
7. 魂夢隔 ここは夢魂が空磧、萬里、陽關、道路、隴雲に隔てられてとても届くはずがないというものである。
○この三句を故郷にいる妻の言葉としている解釈もあるが、間違い。この三句は男目線の言葉であり、孫光憲のものの見方である。



















