牛嶠 菩薩蠻七首其七
玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。
柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。
須作一生拚,盡君今日歡。
菩薩蠻七首その七:(夏の夜、高貴なものの閨で、寝る間を惜しんで愛し合い、うとうととしている間に短い夜は過ぎて、朝の支度の音が聴こえてきたり、熱帯夜であったのであろう、宮女たちが簾の外に打ち水をする、起きてしまうとどうしようと思ってみると、わが君は、眼を開けた微笑みながら驚いて、もっとこのままでいたいといってくると詠う。)寝牀の上では、日が昇前の柳の木かげに霞深く漂い広がっている、うなじの鬢低く垂れ、金の蝉飾りの簪が抜け落ちる。参朝の時が来るというのに、離れがたく「わが身がどうなろうともう構わない、今日はあなた様の今日の歓びを尽くしてください。」と。
牛嶠《巻四17菩薩蠻七首 其七》『花間集』168全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6112
(改訂版Ver.2.1)
菩薩蠻七首 其一
(寵愛を受ける時は短く、ツバメが来て、しばらくヒナがうるさくし始める頃にはすでに寵愛を失う。そのごは、毎日、寵愛を受けていた時と同じようにただ、待ち続ける毎日が繰り返される。まるでどこか北の遠くの遼陽に送り出した人を待つ寡婦と同じようになってしまうと詠う)
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
香炉の火が暖かく、香付の舞衣裳のスカートには金泥の鳳模様がきれいである、赤青の塗りの梁の上の燕が鳴き交わすと名残りの夢は破られてしまう。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
宮殿門の外は春もさかり、池端からの並木の柳絮の花が舞い飛ぶのが終わると約束の春は過ぎてしまう、愛しいひとはそれでも未だに帰って来ない。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
妃嬪の憂いは、涙で頬紅と白粉がくずれてはなおしても崩れてしまう。眉は春山の翠のようにかいて整えたので涙で何もかも崩れてしまう。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
待つのが定めというものの、ここの錦屏風の閨の内の、春の日の長い昼間に、怠惰になって何もする気になれない、ほんとに愛しの人は遼陽の様な遠方にでも行ったのかと感じられ、ほんとうは何処にいいているか。
(菩薩蠻七首 其の一)
舞裙 香 暖かく 金泥の鳳,畫梁【がりょう】語る鷰 殘夢を驚く。
門外 柳花 飛,玉郎 猶お未だ歸らず。
愁は紅粉の淚を勻【あまね】し,眉は春山の翠を剪る。
何處か 是れ遼陽なる,錦屏 春晝 長し。
(改訂版Ver.2.1)
菩薩蠻七首其二
菩薩蠻七首その二(別離し、この春、そのまま行楽に出かけられるのを見送るものの、これから違った生活をするどうにかして前向きに生きてゆくを詠う。)
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
柳絮が飛びが飛び交うところになり、晩春にうつっていくから鶯の啼き声さえ、どうやら急ぎ始めたようだ。暮れなずむ街、すっかり春の景色に満ち溢れ日には香をたきこめた御車の列が行楽の地に向かう。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
金の鳳凰の刺繍の小窓のすだれを開いて見送ってから、清らかな目になにだの波をたたえて、恨む気持ちを和ませてやってくる。
今宵求夢想,難到青樓上。
今宵からは夢の中であのお方のことを思い浮かべるだけだ。青樓の高殿のあたりに行くこともかなわない。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
ここの場所だけは愁いを催すことはなく次第に前向きな気持ちになってゆくようだ、思うことは、「誰かが鴛鴦の布団に並んで頭を並べてくれるということ」と。
(菩薩蠻七首 其の二)
柳花 飛ぶ處 鶯聲急なり,暗き街 春色 香車立つ。
金鳳 小簾開き,臉波 和みて恨み來る。
今宵 夢想を求め,青樓の上に到れ難し。
贏得【えいとく】 一場愁い,鴛衾【おうきん】 誰ぞ頭を並べん。
(改訂版Ver.2.1)
菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
奇麗に輝く簪が風に揺れ、見上げれば立春の旗が大きくなびいている、杏の花がいっぱいの木の枝が交差していて、春になっても寵愛を失ったまま、庭には一杯に咲く日にも、香炉の煙に涙が止まらない。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
高樓に上がって「あなたさま」と甘えてみる。でも窓辺に時折り吹く風は冷たいと思っていたら雨がふり、やがて晴れに変わり気持ちも新たになる。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
閨に戻って夕刻から薰爐に火を容れてあたたかくなって、翡翠のはねをかざった掛け布団のなかにはいった、刺繍のとばりのなかに、鴛鴦のようにふたりが眠っている。
それが寵愛を失った今、何処にいるのかは互いにわかってはいるけれどどうにもしようがない、他の妃嬪を羨むことで、初めての形のまゆずみをほどこす。
(菩薩蠻七首 其の三)
玉釵 風動き春幡急なり,交枝 紅杏 籠煙り泣く。
樓上 望み卿卿,䆫寒 新らたに雨晴る。
薰爐 蒙翠被り,繡帳 鴛鴦の睡。
何處にか 相い知る有る,他を羨む初めて眉を畫く。
(改訂版Ver.2.1)
菩薩蠻七首 其四
菩薩蠻七首その四:(巫山の地に立って昔の「巫山の雲雨」を思われる、しかし、今ここには、山月、山花、燈燭の影、それもこれもなにごともなくときはながれていると詠う。)
畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。
奇麗に書かれた屏風が幾重に重ねられた向こうには巫陽の翡翠の扇やかけ布団が残されている。楚山の神女巫陽を愛した楚王の気持ちは雲が流れていく雲と同じように想いを届ける。
朝暮幾般心,向他情漫深。
特にそれが「朝雲暮雨」ということを、いくどとなく朝が来れば想い、夕方になると思いをかき立てられる。しかし、ここにいて、ほかの人の情に接するたびに何とはなしにさらに深く思われてくる。
風流今古隔,虛作瞿塘客。
巫陽、襄王の美風の名残りは、昔のこととなってしまって今はなにもない。だから、いまはここに立って、空しく瞿塘峡を下って云った楚王の事を思ってこの詩を作る。
山月照山花,夢迴燈影斜。
そして、山影より月がのぼって、山やそこのさく花も照らしている。このやまにまつわる夢はいろいろと廻り回り、燈火も付けたままでなにごともなく影を斜めにしている。
(菩薩蠻七首 其の四)
畫屏 重疊 巫陽の翠,楚神 尚お行雲の意有り。
朝暮 幾か般心す,他に向う 情 漫深す。
風流 今古と隔り,虛作すは瞿塘の客を。
山月 山花を照し,夢は迴る 燈影斜なり。
(改訂版Ver.2.1)
菩薩蠻七首 其五
(春の行楽に街で最も美しいといわれる、高貴な人の娘が門前から出かけようとすると街中の人が一目見ようと集まってくる。そこに白馬に乗った貴公子が、金の鞭をわざと落として気をひこうとしたという詩)
風簾鷰舞鶯啼柳,粧臺約鬢低纖手。
風が簾を通り抜け、つばめが舞い飛び交い、鶯が啼いて柳がしげってきて、春光明媚である、美しい人は、化粧台に向かい、髪を整えかぼそい手を低くしてでかけようとする。
釵重髻盤珊,一枝紅牡丹。
特別な簪は重く下がり、髻に挿すとゆらゆら揺れている。この美しい人は、どこにいても一枝の紅い牡丹が咲いているかのような存在である。
門前行樂客,白馬嘶春色。
美しい人が出て來るからとその門前には春の野へ行楽に向かう男女がひとめみようとあつまってくる。貴公子が騎乗した白馬が嘶いて、春景色は満開である。
故故墜金鞭,迴頭應眼穿。
貴公子は、馬上から人目を引くため故意に、金で飾られた鞭を堕してみて、美しい人は頭を廻して目を丸くしている。
(菩薩蠻七首 其の五)
風簾 鷰舞い鶯柳に啼く,粧臺 鬢を約し纖手を低れる。
釵重く髻 盤珊たり,一枝の紅牡丹。
門前 行樂の客,白馬 春色に嘶く。
故故にして 金鞭を墜とし,頭を迴して應に眼穿つ。
(改訂版Ver.2.1)
菩薩蠻七首 其六
綠雲鬢上飛金雀,愁眉斂翠春煙薄。
雲型の黒髪の上に髪飾りの金細工の雀が飛んでるように飾られている。初めは何もわからず愁いおびた眉にもなったが、翡翠の羽のかけ布団にはいって、春霞は薄く漂う毎日を過ごす。
香閣掩芙蓉,畫屏山幾重。
香のただよう高閣殿には芙蓉の美女たちがあふれるほどいて、そこにはきれいな絵の屏風があり、山がいくえにも重り、つらなっている。
䆫寒天欲曙,猶結同心苣。
秋も深まり窓も凍りつく寒空に、よながなのに、もう朝になろうとする。それでもなお、「同心結」萵苣の組み合わせが織り込まれているかけ布団の中で結ばれる。
啼粉污羅衣,問郎何日歸。
今日も涙で化粧は落ち、閨に着る上着も落ちた涙で汚れている。それでも、寵愛を受けるための準備は続ける。「同心結」の約束があるというものの、聞いてみたいという「(わたしのところへ)いつ帰って來るのですか」と。
(菩薩蠻七首 其の六)
綠雲 鬢上 金雀飛び,愁眉 斂翠 春煙薄し。
香閣 芙蓉に掩れ,畫屏 山幾重なり。
䆫寒 天欲曙,猶お心苣を同じうするを結ぶ。
啼き粉れ 羅衣を污し,郎に問う 何れの日にか歸らん。
菩薩蠻七首 其七
玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
美しい宮殿の高楼には、寝牀にひんやりとの竹筵の簟がしかれ、鴛鴦の錦がかけられる、白粉は汗に溶けても香しきもので山形状の枕に流れおちる。
簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。
夏の夜は短く、簾の外では、早くも打ち水用の水を汲む暁櫨のおとが響きわたる、まだ一緒にいたいから、こまったものと眉をひそめ、笑み浮かべつつ顔を見合わせて驚いた顔をする。
柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。
寝牀の上では、日が昇前の柳の木かげに霞深く漂い広がっている、うなじの鬢低く垂れ、金の蝉飾りの簪が抜け落ちる。
須作一生拚,盡君今日歡。
参朝の時が来るというのに、離れがたく「わが身がどうなろうともう構わない、今日はあなた様の今日の歓びを尽くしてください。」と。
(菩薩蠻七首 其の七)
玉樓の冰簟【ひょうてん】鴛鴦の錦,粉は香しき汗に融け 山枕に流る。
簾外 轆轤【ろくろ】の聲,眉を斂め 笑いを含みて驚く。
柳陰 煙【もや】漠漠たり,低き鬢 蟬釵【ぜんさ】落つ。
須【すべから】く一生 拚【す】つるを作すべし,君の今日の歡びを盡くせ。
(改訂版Ver.2.1)
『菩薩蠻七首其七』 現代語訳と訳註
(本文)
菩薩蠻七首其七
玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。
柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。
須作一生拚,盡君今日歡。
(下し文)
(菩薩蠻七首其の七)
玉樓の冰簟【ひょうてん】鴛鴦の錦,粉は香しき汗に融け 山枕に流る。
簾外 轆轤【ろくろ】の聲,眉を斂め 笑いを含みて驚く。
柳陰 煙【もや】漠漠たり,低き鬢 蟬釵【ぜんさ】落つ。
須【すべから】く一生 拚【す】つるを作すべし,君の今日の歡びを盡くせ。
(現代語訳)
菩薩蠻七首その七:(夏の夜、高貴なものの閨で、寝る間を惜しんで愛し合い、うとうととしている間に短い夜は過ぎて、朝の支度の音が聴こえてきたり、熱帯夜であったのであろう、宮女たちが簾の外に打ち水をする、起きてしまうとどうしようと思ってみると、わが君は、眼を開けた微笑みながら驚いて、もっとこのままでいたいといってくると詠う。)
美しい宮殿の高楼には、寝牀にひんやりとの竹筵の簟がしかれ、鴛鴦の錦がかけられる、白粉は汗に溶けても香しきもので山形状の枕に流れおちる。
夏の夜は短く、簾の外では、早くも打ち水用の水を汲む暁櫨のおとが響きわたる、まだ一緒にいたいから、こまったものと眉をひそめ、笑み浮かべつつ顔を見合わせて驚いた顔をする。
寝牀の上では、日が昇前の柳の木かげに霞深く漂い広がっている、うなじの鬢低く垂れ、金の蝉飾りの簪が抜け落ちる。
参朝の時が来るというのに、離れがたく「わが身がどうなろうともう構わない、今日はあなた様の今日の歓びを尽くしてください。」と。
(訳注)
菩薩蠻七首其七
(男と一夜をともにした女の姿態と歓情とを詠う。)その七
男と一夜をともにした女の姿態と歓情とを詠う。前段は、寝台の様子と、愛に燃える女性の姿態、そして、外で水を汲む釣瓶の概観の音で目を覚まし、朝の訪れを悲しみながらも、傍らに男のいることを確かめ、男に向かって微笑むさまを描く。最後の女の言葉は、かなり直接的であり官能的である。
唐教坊の曲名。『花間集』41首、温庭筠14首、韋荘5首、牛嶠7首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。
菩薩蠻七首 其一
舞裙香暖金泥鳳,畫梁語鷰驚殘夢。
門外柳花飛,玉郎猶未歸。
愁勻紅粉淚,眉剪春山翠。
何處是遼陽,錦屏春晝長。
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○●●○○ ●○△●○
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△●●○○ ●△○●△菩薩蠻七首 其二
柳花飛處鶯聲急,暗街春色香車立。
金鳳小簾開,臉波和恨來。
今宵求夢想,難到青樓上。
贏得一場愁,鴛衾誰並頭。
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菩薩蠻七首 其三
玉釵風動春幡急,交枝紅杏籠煙泣。
樓上望卿卿,䆫寒新雨晴。
薰爐蒙翠被,繡帳鴛鴦睡。
何處有相知,羨他初畫眉。
●○△●○○● ○○○●△○●
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△○○●● ●●○○●
△●●△○ ○△○●○
菩薩蠻七首 其四
畫屏重疊巫陽翠,楚神尚有行雲意。
朝暮幾般心,向他情漫深。
風流今古隔,虛作瞿塘客。
山月照山花,夢迴燈影斜。
●△△●○○● ●○△●△○●
○●△○○ ●△○●△
△○○●● ○●△○●
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菩薩蠻七首 其五
風簾鷰舞鶯啼柳,粧臺約鬢低纖手。
釵重髻盤珊,一枝紅牡丹。
門前行樂客,白馬嘶春色。
故故墜金鞭,迴頭應眼穿。
△○●●○○● ?○●●○○●
○△●○○ ●○○●○
○○△●● ●●○○●
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菩薩蠻七首其六
綠雲鬢上飛金雀,愁眉斂翠春煙薄。
香閣掩芙蓉,畫屏山幾重。
䆫寒天欲曙,猶結同心苣。
啼粉污羅衣,問郎何日歸。
●○●●○○● ○○●●○○●
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菩薩蠻七首 其七
玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。
柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。
須作一生拚,盡君今日歡。
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玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。
美しい宮殿の高楼には、寝牀にひんやりとの竹筵の簟がしかれ、鴛鴦の錦がかけられる、白粉は汗に溶けても香しきもので山形状の枕に流れおちる。
○氷簟 ひんやりとした竹筵。簟は竹の皮を蒔くはいで編んだ夏用の敷物。氷の上で寝るほどの涼しい簟で編んだしきもの。高級品で庶民の手にするものではない。
鄭羣贈簟 #1 Ⅱ韓退之(韓愈)詩307 紀頌之の漢詩ブログ998
李商隠『可歎』
幸會東城宴末廻、年華憂共水相催。
梁家宅裏秦宮入、趙后樓中赤鳳來。
冰簟且眠金鏤枕、瓊筵不酔玉交杯。
宓妃愁坐芝田館、用盡陳王八斗才。
可歎 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-96
温庭筠『瑤瑟怨』
冰簟銀床夢不成,碧天如水夜雲輕。
雁聲遠過瀟湘去,十二樓中月自明。
○駕駕錦 オシドリ模様の錦の掛布。
○山枕 枕のこと。山形をした枕で、真ん中が窪み、両端が山の形で高い凹形の枕をいう。温庭筠の更漏子詞に「山枕蹴、錦余寒」、顧鼻の甘州子詞に山枕上、長是怯農鐘」とある。閨情詩の場合の山は女性がベットで横たわることをいい、屏風の山の画とかさなりあうことをれんそうさせ、枕に横たわる裸体の女性を思い浮かべて読んでみると状況がよくわかる。この語を花間集の中で以下のように使用している。
花間集「山枕」の語について | |||
溫庭筠 | 巻一14 | 菩薩蠻十四首其十四 | 山枕隱穠粧,綠檀金鳳凰。 |
溫庭筠 | 巻一17 | 更漏子六首其三 | 山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。 |
牛嶠 | 巻四10 | 應天長二首其二 | 玉釵橫,山枕膩,寶帳鴛鴦春睡美。 |
牛嶠 | 巻四21 | 菩薩蠻七首其七 | 玉樓冰簟鴛鴦錦,粉融香汗流山枕。 |
顧夐 | 巻六43 | 甘州子五首其一 | 山枕上,私語口脂香。 |
顧夐 | 巻六44 | 甘州子五首其二 | 山枕上,幾點淚痕新。 |
顧夐 | 巻六45 | 甘州子五首其三 | 山枕上,長是怯晨鐘。 |
顧夐 | 巻六46 | 甘州子五首其四 | 山枕上,翠鈿鎮眉心。 |
顧夐 | 巻六47 | 甘州子五首其五 | 山枕上,燈背臉波橫。 |
顧夐 | 巻七13 | 酒泉子七首其五 | 雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。 |
顧夐 | 巻七18 | 獻衷心 | 金閨裡,山枕上,始應知。 |
温庭筠『菩薩蠻十三』
竹風輕動庭除冷,珠簾月上玲瓏影。
山枕隱濃妝,綠檀金鳳凰。
兩蛾愁黛淺,故國吳宮遠。
春恨正關情,畫樓殘點聲。
『菩薩蠻十三』温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-13-13-#13 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1668
簾外轆轤聲,斂眉含笑驚。
夏の夜は短く、簾の外では、早くも打ち水用の水を汲む暁櫨のおとが響きわたる、まだ一緒にいたいから、こまったものと眉をひそめ、笑み浮かべつつ顔を見合わせて驚いた顔をする。
○轆轤 釣瓶井戸の壇櫨。滑車。情事の際の声を云う。「斂眉含笑驚」もエクスタシーを表現するもの。
○斂眉 眉をひそめて怪訝な顔をする。
含笑驚 笑いを含んだ顔つきをして驚いているという顔つきの表現。
柳陰煙漠漠,低鬢蟬釵落。
寝牀の上では、日が昇前の柳の木かげに霞深く漂い広がっている、うなじの鬢低く垂れ、金の蝉飾りの簪が抜け落ちる。
○蟬釵 蝉の飾りの付いた簪。
温庭筠『菩薩蠻 五』
杏花含露團香雪,綠楊陌上多離別。
燈在月朧明,覺來聞曉鶯。
玉鈎褰翠幕,妝淺舊眉薄。
春夢正關情,鏡中蟬鬓輕。
『菩薩蠻 五』温庭筠 ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-5-5-#5 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1636
須作一生拚,盡君今日歡。
参朝の時が来るというのに、離れがたく「わが身がどうなろうともう構わない、今日はあなた様の今日の歓びを尽くしてください。」と。
〇一生拚 一生を捨てる。ここでは我が身がどうなっても構わないことを言う。情事のエクスタシーでいう言葉として理解する。
○盡君今日歡 逐語訳すれば、あなたの今日の歓びを尽くしなさい。今日は私を思う存分に愛して下さいということ。こういう表現は、酒を酌み交わす語句として使われるが、実際の生活の中では、閨の言葉として使われていたのであろう。






























