以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
13-340《更漏子一首》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-523-13-(340) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4162
更漏子一首
(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。
(更漏子一首)
舊には歡娛,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。
濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。
簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。
歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

『更漏子一首』 現代語訳と訳註
(本文)
更漏子
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
(下し文)
(更漏子一首)
舊には歡娛,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。
濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。
簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。
歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。
(現代語訳)
(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。
又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。
ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。
(訳注)
更漏子
『花間集』には顧夐の作が一首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。逢瀬は時間を気にして過ごしたが、今は眠れず夜を過ごすというのが大方のストーリーである。
〇この詩は最終句にまとめられているように、(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。
〇歡娛 よろこび楽しむこと。 「美人西施を洒掃(せいそう)の妾(しよう)たらしめ,一日の歓娯に備ふべし
〇悵望 心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。
〇擁鼻 かなしくて涙と鼻水がこぼれたのを拭く。
〇含嚬 悔しさをかみしめ、口をゆがめる
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
〇この三句、聯は春が過ぎ夏が過ぎて逝く季節の変わりを述べる。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。
〇簾半捲 簾の陰に隠れて遠方を眺める。見ている姿を見られたくないという女心をいう。
〇屏斜掩 屏風は逢瀬の際ベッドのそばにたててこべやのようにして使用する。ここは男が来ないから使うことがなく壁に立てかけておくことをいう。
〇岫【くき】1 山の洞穴。2 山の峰。
〇參差① 長短の等しくないさま。そろわないさま。② 入りまじるさま。入り組むさま。
〇迷眼 めをこらすことがなく、おちつかないこと。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。
























































