玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

花間集 巻七

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

(原文) 花間集 巻七 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5992

(原文) 花間集 巻七 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5992


 
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14-353《河傳四首(4)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-536-14-(353) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4227

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。孫光憲の詞は、王維の詩に通ずるものがある。

        
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14-353《河傳四首(4)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-536-14-(353)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4227

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

其四

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

風颭,波斂。

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

身已歸,心不歸。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

紅梅00
 

 

『河傳四首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

(下し文)

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

 

(現代語訳)

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

 

合歓の花
 

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其四

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

 

 

風颭,波斂。

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

斂【れん】1 引きしめ集める。取り入れる。「苛斂(かれん)・聚斂(しゅうれん)2 引きしまる。「収斂」3 死体を棺に収める。

采蓮003
 

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

閃閃【せんせん】1 ひらひらと動くさま。2 きらきらと輝くさま。

 

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

木蓮科の漢名である「木蘭」の 音読み「もくらん」が 「もくれん」に変化。 漢名の「木蓮」は、 花が「蓮(はす)」に 似ている木、から。

吳娃越豔 呉の美女。越王勾践が、呉王夫差に、復讐のための策謀として献上した美女たちの中に、西施や鄭旦などがいた。貧しい薪売りの娘として産まれた施夷光は谷川で洗濯をしている姿を見出されたといわれている。

 

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

大堤 李白53『大堤曲』

漢水臨襄陽。花開大堤暖。

佳期大堤下。淚向南云滿。

春風無復情。吹我夢魂散。

不見眼中人。天長音信斷。

漢江の水は、襄陽のまちに沿って流れゆく。町はずれの大堤の色町は、花が満開、なにかと暖かくする。

この大堤の下で逢うことを約束したのに来てくれない、南の空の雲をみると、涙がすぐにもこみあげてくる。

春風も、わたしにはつれなく吹いて、慕情の夢を冷ましてしまう。

恋しいあの人の面影は、もう見えない。遠い空のかなた、あの人の便りも途絶えてしまった。

大堤曲 『楽府詩集』#48「清商曲辞、西曲歌」。襄陽歌から派生したものとされる。 ・襄陽 湖北省、漢江にのぞむ町。 

・大堤 嚢陽の南郊外にあり、行楽の土地。遊女が住んでいた。・漢水 襄陽の街を北西から、南東に廻るように流れている。大堤からすると南は下流の方角になり、江南からの人ということになる。あるいは、李白が色町の女性と別れた時に作ったのかもしれない。 ・佳期 男女の逢う約束。あいびきの時。・南雲 晋の陸機の「親(肉親)を憶う賦」に「南雲を指して、まごころを寄せ、帰風を望みて誠をいたす」とあり、故郷の肉親を思うと解釈されることが多いが、恋人を思う気持ちを詠っている。

 大堤で逢う約束を破られ、故郷の空へ向かって涙する女性というなら、最終句にもっていかないと理解できない。「いとしい人からの便りも途絶えた」を最終句にしているのは李白の心情だからと考えるほうが、自然体の纏まりがいい。

 

身已歸,心不歸。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

身已歸心不歸 体は故郷に帰ったとしても心はこの街に残してゆく。

 

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

鸂鶒(オシドリに似た水鳥)

14-352《河傳四首(3)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-535-14-(352) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4222

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

        
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14-352

《河傳四首(3)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-535-14-(352)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4222

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

 茶苑

 

 

『河傳四首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

 其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

(下し文)

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

 

(現代語訳)

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

 kairo10682

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其三

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

【解説】 晩春の孤閏の恨みを詠う。後段の冷たい灰となった香は、女主人公の心そのものであり、

梁の巣に帰って来た燕は番で女主人公の孤独感を一層際立たせる働きをしている。そこには、燕は

帰って来たのに、あの人の帰らぬまま春は過ぎようとしている、という気持ちが込められている。

 

 

花落,煙薄,謝家池閣。

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

○謝家 美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。

 

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

○翠蛾 ここでは翠蛾に同じ。女性の美しい眉を言う。顧夐「酔公子二首其二」○斂袖翠蛾攢 泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直すことをいう。あきらめの境地をいう。

『醉公子二首』其二「岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。家在綠楊邊,往來多少年。馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。」13-338《醉公子二首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

 

沾襟,無人知此心。

こぼす涙に襟をば濡らす。この心知る人はなし。

 

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

○梁燕帰紅杏 燕は梁の巣に紅い杏の花咲く時節に帰って来た。

 

晚來天,空悄然。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

○晩来天 宵闇迫る時分。

 

孤眠,枕檀雲髻偏。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

〇枕檀 香木で作った枕。

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この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

        
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14-351《河傳四首(2)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-534-14-(351)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4217

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首
其一

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。
(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

襞花牋,豔思牽。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

花間集02
 

『河傳四首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

 

(下し文)

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

 

(現代語訳)

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

 

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

 

其二

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

 

 

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

〇拖 1(重いものを)ずるずる引っ張る,引きずる,引く機関車は15両の貨車を引っ張っている.

〇縷 1 細々と連なる糸筋。「一縷」2 細く、途切れずに続くさま。こまごまとしたさま。

〇濛濛 1 霧・煙・ほこりなどが立ちこめるさま。2 心がぼんやりとしているさま。

 柳絮。

 

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

鳳皇 六朝時代から鳳凰の絵を描いている飾り船で風流に遊ぶのが江南では流行した。鳳凰は伝説上の霊鳥。鳳が雄,凰が雌。鳳皇とも書く。餌は竹の実で,梧桐の木にしか止まらぬとされる。殷墟卜辞に,風神として鳳の字が用いられ,天帝の使者だともされている。その字体から見て,孔雀のような鳥が鳳凰の原像となったのであろう。この殷の鳳凰と同じ特徴的な冠羽を持つ鳥が,殷末から西周期の青銅器の文様に見え,おそらくこれは,鳥形をとって祭祀の場に降臨する祖霊の観念と結びついていたのであろう。《書経》に,舜帝が天下を安定させると,音楽につれて祖霊とともに鳳凰がやってきたとあるのは,祖霊と祥瑞との二つの性格をあわせみせている。

〇楚女 戦国時代、楚國の女。高唐賦にいう雨に化身した巫山の巫女を示す。ここでは楚地方の美女、妓女をいう

〇皷:鼓【コ】 中空の筒に皮を張ったもの。意味: つづみ、太鼓、鼓を打つ、叩く、鳴らす、震わす、励ます、はかり、という意味がある。 

この詩と同じ雰囲気を持っている詩は韋荘の『菩薩蠻 二』と同じ畫船による舟遊びを風流に詠う。

韋莊『菩薩蠻 二』

人人盡説江南好,遊人只合江南老。

春水碧於天,  畫船聽雨眠。

爐邊人似月,  皓腕凝雙雪。

未老莫還鄕,  還鄕須斷腸。

だれもかれも、江南はいいところだといいます。よそのくにへ遊びに出た人は、江南へいって年をとるまでくらすのが一ばんよいとおもっているのです。 

春は、雪解けの増水したながれは空の青さと一体化する。舟遊びの美しく彩られた船にのって、雨をききながら寄り添って眠ります。

酒爐のほとりには、お月さまを彷彿させる美人が居ます。その人の真白な腕から想像して、まるで雪がかたまったようなうつくしい体をしているのです。

一旦こういうところへ来たならば、年をとりたくはないし、まして故郷へ帰ることなど思いはしないのです。故郷などへ帰ったならば、この性的欲求不満を解決することが出来はしないことがわかるのです。

 

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

〇龍爭虎戰 五代史平話˙梁史˙卷上: 龍爭虎戰幾春秋,五代梁唐晉漢周。 亦作 龍爭虎鬥 。形容鬥爭或競賽很激烈。同“龍爭虎鬥”。『例子』.

〇桃葉 風流の達人の冠、王獻之の愛妾のために作った『桃葉復桃葉二首』「桃葉復桃葉,渡江不用楫。 但渡無所苦,我自迎接汝。」の金陵の桃葉渡は今に至るも艶称される。桃葉渡は又の名を南浦渡という,中国江蘇省南京市古地名。桃葉渡は是れ“十里の秦淮河にあり古渡し口のじょうりゅうにある。六朝の時代以降“金陵四十八景”の一つとして名勝となっている。

 

襞花牋,豔思牽。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

襞 プリーツスカート。1 衣服や布地などにつけた細長い折り目。2 衣服のひだのように見えるもの。精神的なものについてもいう。「山の―」「心の―に触れる」3 キノコの傘の裏側にあるしわ。菌褶(きんしゅう

〇花牋 薛濤䇳に詩をしたためる。

 

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

 

春秋戦国勢力図
 

14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212

河傳四首(1)》孫光憲≫ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。


        
 2014年5月17日の紀頌之5つのブログ 
 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
 毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻 
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14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 海棠花021

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

杏の花0055
 

 

『河傳四首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

 

 

(下し文)

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

 

(現代語訳)

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

 

 花間集

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其一

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

 

太平天子,等閑 遊戲,疏河 千里。

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

〇疏河千里 川の流れは千里先まで続く。川の流れは東にながれる。川の流れは弾く方に流れてゆき千里先まで流れて行く、そうしたことは常識なのだ。

 

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

〇淥波春水 増水して川の水嵩は上がっているが、雪解け水なので浸みきっていることをいう。

〇長淮 中国四大河川の長江と淮河で、長江から運河を経て淮河に入る大河の廣い隆起をいう。

 

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

〇三千女 後宮には宮女は三千人以上いた。

〇爭雲雨 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

 

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

 

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

14-349《浣溪紗九首(9)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-532-14-(349) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4207

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

        
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14-349

《浣溪紗九首(9)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-532-14-(349)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4207

 

花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。    
 

浣溪沙九首           其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

浣溪沙九首       其九

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

     烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

     將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

花蕊夫人006
 

 

『浣溪沙九首 其九』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其九

烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

 

 

(現代語訳)

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)

酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。

女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

紅莓苔子002
 

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

其九

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)

【解説】妓女は、男が門を叩けばそれだけで誰が来たかとすぐに分かり、また男に会っては袖でちょっと顔を隠し、男から可愛がられれば少々初心な態度をとり差ずかしそうに俯いて壁に書かれた詩を尋ねる。彼女のこのような仕草は、男を引きつけるための爛れた作戦ではなく、孫光憲が作詞して壁に書いた詩の意味が全く分からなかった。この時のお客は孫光憲であり、女は尊敬の気持ちで理解しようとした、ということで妓女遊びも楽しい。

 

烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。

○烏帽 烏紗帽。隋、唐時代には身分の高い者がかぶったが、後には貴賎に関係なく用いられ、さらには閑居の際にかぶるようになった。

○魚 魚袋。唐代には五品官以上の官僚が身に付けた魚の形をした飾り。品級の違いによって金製、銀製、銅製があった。○倫歩 足音を忍ばせて歩く。○仙居 仙女の館。ここでは妓楼を指す。あるいは女道士のいる道観の可能性もある。当時の通観の尼は多くが春を禦いでいた。

 

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

○掩赦 顔を覆いかくすようにして眼を流し目にしてみて、羞ずかしそうにする。

○且生疎 少男の方を見ないでもじもじする。初心な仕草。
合歓の花
 

14-348《浣溪紗九首(8)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-531-14-(348) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4202

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

        
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14-348《浣溪紗九首(8)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-531-14-(348)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4202


花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。    
 

浣溪沙九首           其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

紅梅00

『浣溪沙九首 其八』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其八

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

 (現代語訳)

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

浣溪沙九首 其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

 

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

○輕打銀箏墜鷰泥 梁に作られた燕の巣の泥が、琴を奏でる急に弾いたその響きで銀で飾った琴の上に落ちる。

○断糸 千切れた蜘蛛の糸。

○胃 引っ掛かる。

○花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

○午塔 南真正面の土壌。午は真南の方位を表す。

 

 

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

○粉籍 白い粉を吹いた笋の皮。

○紅苞 花のつぼみ。ここでは花の意。苞(ほう):植物用語の一つで、花や花序の基部にあって、つぼみを包んでいた葉のことをいう。苞葉ともいう。また個々の苞を苞片という。 多くの場合、普通の葉より小さくて緑色をしたものである。しかし、花弁(「花びら」のこと)や萼に見えるような植物もある。

○旧桃践 後段第一、二句は対句になっており、この意味はないが、強いていえば「旧」 の字は第一句の 「新」と対にするために使ったもので特に深い「馴染みの」。
海棠花021
 

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(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。


        
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14-347《浣溪紗九首(7)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-530-14-(347)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4197

 


花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。            

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

                           

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

 

『浣溪沙九首 其七』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其七

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。

 

 

(現代語訳)

(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

浣溪沙九首 其七

(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

【解説】 女の閨に様子を奇麗に表現し、歳を重ねるにしたがって、男は帰ってこない。異常なくらい女遊びをする男、周りから女たらしだからと注意されていた。そんなことはないと思っていたのにいつしかそれを思い知らされた。女性の恨みを過ぎれば諦めるということなのだ。風に揺れて舞う簾の鳳凰の刺繍は、女性のあきらめを予感させるものとなっている。孫光憲の詞はいやらしさが微塵もない。

 

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

○風遞殘香出繡簾 香炉の残香が風に運ばれて簾から流れ出る。

○團窠金鳳 円形の金糸で刺繍した鳳凰。円形は団欒の意を含む。窠 瓜を輪切りにした形に似た文様または紋所。一説に、蜂の巣の形ともいう。の紋。木瓜(もっこう)

○襜襜 揺れるさま。襜:前隠し、「《爾雅·釋器》衣蔽前、謂之襜(衣の前を覆う、これを襜(セン)という)」とあり、 和訓には、 「まえかけ、ひとえもの、ととのふ」等があるという(篆文詳注日本大玉篇)。

○落花微雨恨相兼 落花と微雨とがともに恨みを誘う。散る花は女の年を重ねることこれからの行く末を憂うことであり、雨に煙るのは女の満たされない気持ちの愁いをいう。宋玉「高唐の賦」に言う、雨に化身して男のもとに洗われるというもので、それが「微」霞むのであるから、靄に思いを消されるという愁いになる。

 

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

○去来 行く。去の字だけに意味がある偏義詞。

○狂太甚 全く常軌を逸している。ここでは男が女遊びに夢中なことを指す。狂:まわりのこと気にせず一つのことに懸命になる様子をいう。太甚【たいじん】ひどすぎる,あまりにもひどい.物事の程度のはなはだしいさま。

○空推 見え透いた言い訳をする。

○宿酒 昨夜飲んだ酒。

○睡無猒 飽くことなく眠る、眠りを貴る。

○争教人不別猜嫌 遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。争教は人から教えられたことと争うこと。人はここに登場する女性。別はわかれ。猫嫌は疑う、清疑心を抱くようなこと、嫌われようとするのかということ。

14-346《浣溪紗九首(6)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-529-14-(346) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4192

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

        
 2014年5月13日の紀頌之5つのブログ 
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