玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

花間集 巻七

(原文) 花間集 巻七 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5992

(原文) 花間集 巻七 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-5992


 
 2015年5月13日の紀頌之5つのBlog 
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14-353《河傳四首(4)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-536-14-(353) 花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4227

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。孫光憲の詞は、王維の詩に通ずるものがある。

        
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14-353《河傳四首(4)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-536-14-(353)  花間集 巻第八 (四十八首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4227

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

其四

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

風颭,波斂。

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

身已歸,心不歸。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

紅梅00
 

 

『河傳四首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

(下し文)

(其の四)

風 颭【そよ】ぎ,波 斂す。

團荷 閃閃【せんせん】とし,珠 傾き 露 點ず。

木蘭の舟上,何處にか娃し越は豔し,藕花 紅いに臉を照らす。

大堤 狂殺 襄陽の客,煙波 隔てて,渺渺として湖光 白らむ。

身 已に歸り,心 歸らず。

暉を斜して,遠汀 鸂鶒飛ぶ。

 

(現代語訳)

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

 

合歓の花
 

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其四

(採蓮の若い娘も、長江下流域の娘たち、襄陽大堤の女もいづれは男と一緒に暮らしたいと思っている。)

 

 

風颭,波斂。

晩春のそよ風が寄せ、浪も寄せてくる。

斂【れん】1 引きしめ集める。取り入れる。「苛斂(かれん)・聚斂(しゅうれん)2 引きしまる。「収斂」3 死体を棺に収める。

采蓮003
 

團荷閃閃,珠傾露點。

丸い蓮の葉はせんせんと揺れると、葉に乗った水の玉は露と一緒になって転々と転ぶ。

閃閃【せんせん】1 ひらひらと動くさま。2 きらきらと輝くさま。

 

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

木蘭の花の様な美女は船の上で、何処に向おうというのか、呉の美女は越の国で艶めかしくする。蓮根の花のような頬はあかく顔を照らす。

木蓮科の漢名である「木蘭」の 音読み「もくらん」が 「もくれん」に変化。 漢名の「木蓮」は、 花が「蓮(はす)」に 似ている木、から。

吳娃越豔 呉の美女。越王勾践が、呉王夫差に、復讐のための策謀として献上した美女たちの中に、西施や鄭旦などがいた。貧しい薪売りの娘として産まれた施夷光は谷川で洗濯をしている姿を見出されたといわれている。

 

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

襄陽の歓楽街の大堤には襄陽の街を訪れた旅人を歓楽にくるわせてしまうという。朝靄は漢水の波を隔てて広がり、水面には日差しがキラキラとして眩しい。

大堤 李白53『大堤曲』

漢水臨襄陽。花開大堤暖。

佳期大堤下。淚向南云滿。

春風無復情。吹我夢魂散。

不見眼中人。天長音信斷。

漢江の水は、襄陽のまちに沿って流れゆく。町はずれの大堤の色町は、花が満開、なにかと暖かくする。

この大堤の下で逢うことを約束したのに来てくれない、南の空の雲をみると、涙がすぐにもこみあげてくる。

春風も、わたしにはつれなく吹いて、慕情の夢を冷ましてしまう。

恋しいあの人の面影は、もう見えない。遠い空のかなた、あの人の便りも途絶えてしまった。

大堤曲 『楽府詩集』#48「清商曲辞、西曲歌」。襄陽歌から派生したものとされる。 ・襄陽 湖北省、漢江にのぞむ町。 

・大堤 嚢陽の南郊外にあり、行楽の土地。遊女が住んでいた。・漢水 襄陽の街を北西から、南東に廻るように流れている。大堤からすると南は下流の方角になり、江南からの人ということになる。あるいは、李白が色町の女性と別れた時に作ったのかもしれない。 ・佳期 男女の逢う約束。あいびきの時。・南雲 晋の陸機の「親(肉親)を憶う賦」に「南雲を指して、まごころを寄せ、帰風を望みて誠をいたす」とあり、故郷の肉親を思うと解釈されることが多いが、恋人を思う気持ちを詠っている。

 大堤で逢う約束を破られ、故郷の空へ向かって涙する女性というなら、最終句にもっていかないと理解できない。「いとしい人からの便りも途絶えた」を最終句にしているのは李白の心情だからと考えるほうが、自然体の纏まりがいい。

 

身已歸,心不歸。

ここの女は歳をとれば故郷に還されるが、大抵は好きな男と離れがたく心は帰ることが出来ない

身已歸心不歸 体は故郷に帰ったとしても心はこの街に残してゆく。

 

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

日差しが傾くと、遠く港のみぎわにはつがいの鸂鶒が飛び立っていく。

鸂鶒(オシドリに似た水鳥)

14-352《河傳四首(3)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-535-14-(352) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4222

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

        
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14-352

《河傳四首(3)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-535-14-(352)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4222

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

 茶苑

 

 

『河傳四首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

 其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

(下し文)

(其の三)

花落ち,煙薄れ,謝家の池閣。

寂寞として春深し,翠蛾 輕く斂め 意 沉吟す。

襟を沾し,人 此の心を知る無し。

玉鑪 香 斷え 霜灰 冷ややかにして,簾 影を鋪く,梁鷰 紅杏に歸る。

晚來の天には,空しく悄然とす。

孤り眠り,枕檀 雲髻 偏る。

 

 

(現代語訳)

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

 kairo10682

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其三

(愛妾の棲む豪華な家にも春も終るように年を重ねた女には諦めて過ごすよりない)

【解説】 晩春の孤閏の恨みを詠う。後段の冷たい灰となった香は、女主人公の心そのものであり、

梁の巣に帰って来た燕は番で女主人公の孤独感を一層際立たせる働きをしている。そこには、燕は

帰って来たのに、あの人の帰らぬまま春は過ぎようとしている、という気持ちが込められている。

 

 

花落,煙薄,謝家池閣。

咲き誇った花は散り、夕靄が淡くひろがる、「謝秋娘」も少し年を重ねて家の豪邸の池のほとりの楼閣にすごしている、

○謝家 美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。

 

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

春も深まってきて物寂しさがひろがり。泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して思いに沈んでいる。

○翠蛾 ここでは翠蛾に同じ。女性の美しい眉を言う。顧夐「酔公子二首其二」○斂袖翠蛾攢 泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直すことをいう。あきらめの境地をいう。

『醉公子二首』其二「岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。家在綠楊邊,往來多少年。馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。」13-338《醉公子二首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

 

沾襟,無人知此心。

こぼす涙に襟をば濡らす。この心知る人はなし。

 

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

奇麗な宝飾の香炉には火も消えて白き灰が近頃焚かれたこともなく冷ややかなままである、簾に日影を映し、紅い杏の花の咲くなか梁の上にはまた燕が帰って来る。

○梁燕帰紅杏 燕は梁の巣に紅い杏の花咲く時節に帰って来た。

 

晚來天,空悄然。

たそがれが宵闇迫り頃に変わると、空しさのあまりにうち萎れてしまう。

○晩来天 宵闇迫る時分。

 

孤眠,枕檀雲髻偏。

それからはあきらめるしかなく独り寝るだけで、香木の枕に横になると雲型の髷は片側に傾いて、もう直すこともないのだ。

〇枕檀 香木で作った枕。

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この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

        
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14-351《河傳四首(2)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-534-14-(351)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4217

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 

 

河傳四首
其一

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。
(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

襞花牋,豔思牽。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

 

花間集02
 

『河傳四首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

 

(下し文)

(河傳四首其の二)

柳の拖,金の縷,煙 籠霧に着き,濛濛として絮を落す。

鳳皇 舟上の楚女,舞をに妙して,雷喧 波上の皷。

龍爭 虎戰 中土を分ち,人 主無し,桃葉 江南渡る。

襞花の牋,豔思 牽く。

篇成し,官娥 相いに與傳す。

 

 

(現代語訳)

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

 

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

 

其二

(春の盛りに江南の舟遊びで官妓の美女は歌も踊りもその上詩を作るのもうまい、次の世にも伝えられる詩を交わそう)

 

 

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

柳の枝が土手を引き摺り、その枝は金色の紐を垂らす、夕靄はこの街を囲むように出てきて霧がそれを注素用に出てくる、そこにもうもうと柳絮が落ちて飛び交う。

〇拖 1(重いものを)ずるずる引っ張る,引きずる,引く機関車は15両の貨車を引っ張っている.

〇縷 1 細々と連なる糸筋。「一縷」2 細く、途切れずに続くさま。こまごまとしたさま。

〇濛濛 1 霧・煙・ほこりなどが立ちこめるさま。2 心がぼんやりとしているさま。

 柳絮。

 

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

鳳凰の絵が描かれた飾り船はその国の美女を載せている、美女は華麗に舞う、それに合わせた様に波の上に音を立て、鼓の音は雷のように轟く。

鳳皇 六朝時代から鳳凰の絵を描いている飾り船で風流に遊ぶのが江南では流行した。鳳凰は伝説上の霊鳥。鳳が雄,凰が雌。鳳皇とも書く。餌は竹の実で,梧桐の木にしか止まらぬとされる。殷墟卜辞に,風神として鳳の字が用いられ,天帝の使者だともされている。その字体から見て,孔雀のような鳥が鳳凰の原像となったのであろう。この殷の鳳凰と同じ特徴的な冠羽を持つ鳥が,殷末から西周期の青銅器の文様に見え,おそらくこれは,鳥形をとって祭祀の場に降臨する祖霊の観念と結びついていたのであろう。《書経》に,舜帝が天下を安定させると,音楽につれて祖霊とともに鳳凰がやってきたとあるのは,祖霊と祥瑞との二つの性格をあわせみせている。

〇楚女 戦国時代、楚國の女。高唐賦にいう雨に化身した巫山の巫女を示す。ここでは楚地方の美女、妓女をいう

〇皷:鼓【コ】 中空の筒に皮を張ったもの。意味: つづみ、太鼓、鼓を打つ、叩く、鳴らす、震わす、励ます、はかり、という意味がある。 

この詩と同じ雰囲気を持っている詩は韋荘の『菩薩蠻 二』と同じ畫船による舟遊びを風流に詠う。

韋莊『菩薩蠻 二』

人人盡説江南好,遊人只合江南老。

春水碧於天,  畫船聽雨眠。

爐邊人似月,  皓腕凝雙雪。

未老莫還鄕,  還鄕須斷腸。

だれもかれも、江南はいいところだといいます。よそのくにへ遊びに出た人は、江南へいって年をとるまでくらすのが一ばんよいとおもっているのです。 

春は、雪解けの増水したながれは空の青さと一体化する。舟遊びの美しく彩られた船にのって、雨をききながら寄り添って眠ります。

酒爐のほとりには、お月さまを彷彿させる美人が居ます。その人の真白な腕から想像して、まるで雪がかたまったようなうつくしい体をしているのです。

一旦こういうところへ来たならば、年をとりたくはないし、まして故郷へ帰ることなど思いはしないのです。故郷などへ帰ったならば、この性的欲求不満を解決することが出来はしないことがわかるのです。

 

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

この光景は戦国時代の故事を筝曲に言うように「龍が爭い、虎が闘って天下を分ける」ようこの美女をわが手にしようとあらそう、しかしここには美女の主となる者はいない。それは王獻之の愛妾「桃葉」の詩のようにここ江南では、「桃葉よ桃葉、兎に角渡って来い」と美女にとに角この川を渡って来てくれればいいと言っている。

〇龍爭虎戰 五代史平話˙梁史˙卷上: 龍爭虎戰幾春秋,五代梁唐晉漢周。 亦作 龍爭虎鬥 。形容鬥爭或競賽很激烈。同“龍爭虎鬥”。『例子』.

〇桃葉 風流の達人の冠、王獻之の愛妾のために作った『桃葉復桃葉二首』「桃葉復桃葉,渡江不用楫。 但渡無所苦,我自迎接汝。」の金陵の桃葉渡は今に至るも艶称される。桃葉渡は又の名を南浦渡という,中国江蘇省南京市古地名。桃葉渡は是れ“十里の秦淮河にあり古渡し口のじょうりゅうにある。六朝の時代以降“金陵四十八景”の一つとして名勝となっている。

 

襞花牋,豔思牽。

ヒダひだのスカートをゆらせて薛濤䇳にしたためる、魅力のある気持ちで引き付ける。

襞 プリーツスカート。1 衣服や布地などにつけた細長い折り目。2 衣服のひだのように見えるもの。精神的なものについてもいう。「山の―」「心の―に触れる」3 キノコの傘の裏側にあるしわ。菌褶(きんしゅう

〇花牋 薛濤䇳に詩をしたためる。

 

成篇,官娥相與傳。

その光景を目にすれば詩篇はできるものだし、この美女は官妓でありこの私と共にこの詩をつたえていくことになるだろう。

 

春秋戦国勢力図
 

14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212

河傳四首(1)》孫光憲≫ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。


        
 2014年5月17日の紀頌之5つのブログ 
 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
 毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻 
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14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

花間集 教坊曲『河傳』十八首

溫助教庭筠

巻二

『河傳』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-49-2-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1812

曉妝仙,仙景箇

花間集

巻二

河傳三首其二

雨蕭蕭,煙浦花

 

巻二

河傳三首其三

杏花稀,夢裡每

韋相莊

巻二

105 河傳 其一 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-286-5-#40  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2977

何處,煙雨,隋堤

 

巻二

106 河傳三首 其二 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-287-5-#41  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2982

春晚,風暖,錦城

 

巻二

107 河傳三首 其三 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-288-5-#42  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2987

錦浦,春女,繡衣

張舍人泌

巻五

河傳 二首之一 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-350-7-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3297

渺莽雲水,惆悵暮

 

巻五

河傳 二首之二 張泌【ちょうひつ】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-351-7-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3302

紅杏,交枝相映,

顧太尉

巻七

13-7 河傳三首 其一 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-459-13-(7) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3842

鷰颺,晴景。小

 

巻七

13-8 河傳三首 其二 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

曲檻,春晚。

 

巻七

13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

棹舉,舟去,波光

孫少監光憲

巻七

河傳四首其一

太平天子,等閑遊

 

巻七

河傳四首其二

柳拖金縷,着煙籠

 

巻七

河傳四首其三

花落,煙薄,謝家

 

巻七

河傳四首其四

風颭,波斂。

閻處士選

巻九

河傳一首

秋雨,秋雨,

李秀才珣

巻十

河傳二首其一

朝雲暮雨,依舊

 

巻十

河傳二首其二

落花深處,啼鳥

 海棠花021

 

河傳四首

其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

其二

柳拖,金縷,着煙籠霧,濛濛落絮。

鳳皇舟上楚女,妙舞,雷喧波上皷。

龍爭虎戰分中土,人無主,桃葉江南渡。

襞花牋,豔思牽。

成篇,官娥相與傳。

 

其三

花落,煙薄,謝家池閣。

寂寞春深,翠蛾輕斂意沉吟。

沾襟,無人知此心。

玉鑪香斷霜灰冷,簾鋪影,梁鷰歸紅杏。

晚來天,空悄然。

孤眠,枕檀雲髻偏。

 

其四

風颭,波斂。

團荷閃閃,珠傾露點。

木蘭舟上,何處娃越豔,藕花紅照臉。

大堤狂殺襄陽客,煙波隔,渺渺湖光白。

身已歸,心不歸。

斜暉,遠汀鸂鶒飛。

杏の花0055
 

 

『河傳四首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳四首 其一

太平,天子,等閑遊戲,疏河千里。

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起。

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

 

 

(下し文)

(河傳四首 其の一)

太平の天子,等閑し遊戲す,疏河すは千里なり。

柳 絲の如し,隈倚 淥波の春水,長淮 風 起らず。

花の如き殿には三千の女が,雲雨を爭い,何處にか人を留めて住わん?

錦帆の風,煙際の紅,燒空ありて,魂迷し 大業に中【あた】る。

 

 

(現代語訳)

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

 

 花間集

(訳注)

河傳四首

『花間集』 には孫光憲の作が四首収められている。双調五十一字、前段二十六字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❻❺❸❸❷❺の詞形をとる。

其一

(おおきな川には港があり、湊には大きな歓楽街がある。春になり沢山の女がいるところにたくさんの男があつまる)

 

太平天子,等閑 遊戲,疏河 千里。

天下は太平でいると天命を受け天下を治める人は、長閑の中にのどかに過ごし、遊び戯れる。そんなことは川の流れのようで千里先まで流れて行くようなものだ。

〇疏河千里 川の流れは千里先まで続く。川の流れは東にながれる。川の流れは弾く方に流れてゆき千里先まで流れて行く、そうしたことは常識なのだ。

 

柳如絲,隈倚淥波春水,長淮風不起

柳の枝が垂れるのは糸のようであり、川の流れの淵には春の雪解けで増水が緑の澄み切って流れている、長江や淮河の大河には大風が起こることはない。

〇淥波春水 増水して川の水嵩は上がっているが、雪解け水なので浸みきっていることをいう。

〇長淮 中国四大河川の長江と淮河で、長江から運河を経て淮河に入る大河の廣い隆起をいう。

 

如花殿三千女,爭雲雨,何處留人住?

ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。

〇三千女 後宮には宮女は三千人以上いた。

〇爭雲雨 雲が男で女が雨で絡み合うというほどの意味だが、宋玉の「高唐の賦」宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

 

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

 

錦帆風,煙際紅,燒空,魂迷大業中。

錦の帆柱に帆に風を受けて舟は進み、夕靄のただようその際には紅い花が咲いている。空は夕焼けに染まっていて、帰って来る船にもあの人はいない。あの人の魂は迷ってしまって帰ってこないけど旅の途中で大きな仕事をしている最中なのでしょう。

14-349《浣溪紗九首(9)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-532-14-(349) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4207

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

        
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14-349

《浣溪紗九首(9)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-532-14-(349)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4207

 

花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。    
 

浣溪沙九首           其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

浣溪沙九首       其九

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

     烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

     將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

花蕊夫人006
 

 

『浣溪沙九首 其九』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其九

烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の九)

烏帽 斜めに欹【そばだ】て倒にした魚を佩びる,靜かな街を【ひそか】に步み 仙居を訪れる,牆を隔てて應に門を打ち初めるを認むべし。

將に客を見んとする時 微かに斂【ひきし】めるを掩う,人 憐れみを得る處 且つ疎を先んず,頭を低れ  壁邊の書を羞問す。

 

 

(現代語訳)

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)

酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。

女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

紅莓苔子002
 

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

其九

(妓楼に遊んだ男が妓女について詠った)

【解説】妓女は、男が門を叩けばそれだけで誰が来たかとすぐに分かり、また男に会っては袖でちょっと顔を隠し、男から可愛がられれば少々初心な態度をとり差ずかしそうに俯いて壁に書かれた詩を尋ねる。彼女のこのような仕草は、男を引きつけるための爛れた作戦ではなく、孫光憲が作詞して壁に書いた詩の意味が全く分からなかった。この時のお客は孫光憲であり、女は尊敬の気持ちで理解しようとした、ということで妓女遊びも楽しい。

 

烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

酔っぱらった男は烏紗の帽子を斜めにかぶり、金魚袋を逆さに下げて、静かな街を足音ひそめて仙女の館を訪ねる。土塀の奥の門を叩いたら、内側より直ちにお客の訪れ知ってくれて応対してくれる。

○烏帽 烏紗帽。隋、唐時代には身分の高い者がかぶったが、後には貴賎に関係なく用いられ、さらには閑居の際にかぶるようになった。

○魚 魚袋。唐代には五品官以上の官僚が身に付けた魚の形をした飾り。品級の違いによって金製、銀製、銅製があった。○倫歩 足音を忍ばせて歩く。○仙居 仙女の館。ここでは妓楼を指す。あるいは女道士のいる道観の可能性もある。当時の通観の尼は多くが春を禦いでいた。

 

將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

女が客にいよいよ会う時になると袖でわずかに顔隠し、流し目をしてくる。可愛がられると、全く男の方を見ないでもじもじしている。次に、頭を低く下げて恥ずかしそうに「壁に書かれた詩はどんな意味なの」と尋ねたのだ。

○掩赦 顔を覆いかくすようにして眼を流し目にしてみて、羞ずかしそうにする。

○且生疎 少男の方を見ないでもじもじする。初心な仕草。
合歓の花
 

14-348《浣溪紗九首(8)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-531-14-(348) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4202

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

        
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14-348《浣溪紗九首(8)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-531-14-(348)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4202


花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。    
 

浣溪沙九首           其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

              (浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

紅梅00

『浣溪沙九首 其八』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其八

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の八)

輕く銀箏【ぎんそう】を打ち鷰泥 墜つ,斷絲 高く畫樓の西に罥【か】かり,花冠 閑【のど】かに午牆【ごしょう】に上り啼く。

粉籜【ふんたく】半ば開き 新竹の逕【けい】,紅苞【こうほう】盡く落ち 舊の桃の蹊【けい】,終日 深閨を閉ざすに 堪えず。

 

 (現代語訳)

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

浣溪沙九首 其八

(年を重ねた女が独り閏ですごす。晩春の日の女の無聊を詠う。)

 

輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

誰に聞かせるわけでもなく弾いていたら,弾いた音に驚いて、燕の泥が銀で飾った琴にぽとりと落ちた、長い蜘蛛の絲は風にあおられ高殿の西窓に掛かり、雄鶏が正面の土塀にとまって鳴いた。

○輕打銀箏墜鷰泥 梁に作られた燕の巣の泥が、琴を奏でる急に弾いたその響きで銀で飾った琴の上に落ちる。

○断糸 千切れた蜘蛛の糸。

○胃 引っ掛かる。

○花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

○午塔 南真正面の土壌。午は真南の方位を表す。

 

 

粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

竹の子の粉を吹いた皮から半ば顔を出した晩春の小路沿いに若竹がつづき、紅い花が散り尽くしてしまったこれまで見なれてきた桃の小道がつづく、こんな春景色が残る中で、どうして一日中、奥まった閏に寵もっているのは堪えられないことだ。

○粉籍 白い粉を吹いた笋の皮。

○紅苞 花のつぼみ。ここでは花の意。苞(ほう):植物用語の一つで、花や花序の基部にあって、つぼみを包んでいた葉のことをいう。苞葉ともいう。また個々の苞を苞片という。 多くの場合、普通の葉より小さくて緑色をしたものである。しかし、花弁(「花びら」のこと)や萼に見えるような植物もある。

○旧桃践 後段第一、二句は対句になっており、この意味はないが、強いていえば「旧」 の字は第一句の 「新」と対にするために使ったもので特に深い「馴染みの」。
海棠花021
 

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(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。


        
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14-347《浣溪紗九首(7)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-530-14-(347)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4197

 


花間集

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 杏の花0055

             

浣溪沙九首       其六

(春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

角の手すりの前で髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみた、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元からなかばさげているけど白い胸を半ば遮ることになっている、長い宝飾の簪が白粉の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができたとどうじに、なんて可愛らしいことと思わずにはいられないのだ。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。
 

浣溪沙九首       其七

              (遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

           風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

           何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

               (浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。            

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

                           

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

 

『浣溪沙九首 其七』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其七

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其七)

風 殘香を 繡簾より出ずるを遞り,團窠 金鳳 襜襜【たんたん】として舞う,落花 微雨 恨み相い兼ぬ。

何處にか去り來る 狂なる太甚,空推するは 宿酒もて睡り猒くこと無きを,教えに爭い人は別れず 猜嫌するを。

 

 

(現代語訳)

(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

 

浣溪沙九首 其七

(遊びに夢中な放蕩男を愛していることの心の葛藤を詠う)

【解説】 女の閨に様子を奇麗に表現し、歳を重ねるにしたがって、男は帰ってこない。異常なくらい女遊びをする男、周りから女たらしだからと注意されていた。そんなことはないと思っていたのにいつしかそれを思い知らされた。女性の恨みを過ぎれば諦めるということなのだ。風に揺れて舞う簾の鳳凰の刺繍は、女性のあきらめを予感させるものとなっている。孫光憲の詞はいやらしさが微塵もない。

 

風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

薫く香の残香が風に運ばれてくる、縫い取り詩集の簾から流れ出てゆくと、円い金刺繍の鳳凰が簾の前にゆらゆらと舞う。そぼ降る雨に煙るとともに散る花は愁いを誘う。

○風遞殘香出繡簾 香炉の残香が風に運ばれて簾から流れ出る。

○團窠金鳳 円形の金糸で刺繍した鳳凰。円形は団欒の意を含む。窠 瓜を輪切りにした形に似た文様または紋所。一説に、蜂の巣の形ともいう。の紋。木瓜(もっこう)

○襜襜 揺れるさま。襜:前隠し、「《爾雅·釋器》衣蔽前、謂之襜(衣の前を覆う、これを襜(セン)という)」とあり、 和訓には、 「まえかけ、ひとえもの、ととのふ」等があるという(篆文詳注日本大玉篇)。

○落花微雨恨相兼 落花と微雨とがともに恨みを誘う。散る花は女の年を重ねることこれからの行く末を憂うことであり、雨に煙るのは女の満たされない気持ちの愁いをいう。宋玉「高唐の賦」に言う、雨に化身して男のもとに洗われるというもので、それが「微」霞むのであるから、靄に思いを消されるという愁いになる。

 

何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

何処に行ってしまったのか遊びに夢中な男、「夕べはすっかり酔いつぶれて正体なく寝込んでいた」と、遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。

○去来 行く。去の字だけに意味がある偏義詞。

○狂太甚 全く常軌を逸している。ここでは男が女遊びに夢中なことを指す。狂:まわりのこと気にせず一つのことに懸命になる様子をいう。太甚【たいじん】ひどすぎる,あまりにもひどい.物事の程度のはなはだしいさま。

○空推 見え透いた言い訳をする。

○宿酒 昨夜飲んだ酒。

○睡無猒 飽くことなく眠る、眠りを貴る。

○争教人不別猜嫌 遊び人だと教えられ、それと戦ってきた、それなのに私に猜疑心を抱かせたり、嫌われるようなことをするのでしょうか、別れることになるのはやっぱりいやな事です。争教は人から教えられたことと争うこと。人はここに登場する女性。別はわかれ。猫嫌は疑う、清疑心を抱くようなこと、嫌われようとするのかということ。

14-346《浣溪紗九首(6)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-529-14-(346) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4192

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河傳四首(1)》孫光憲≫ここの花の御殿のようなところには後宮のように三千人の宮女がいる。宋玉の「高唐の賦」に言う巫女は雨に化身し、男は雲に化身して絡み合う。あの人は何処に行ったのか、今はどこに住んでいるのだろう。


14-350《河傳四首(1)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-533-14-(350)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4212


孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

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14-345《浣溪紗九首(5)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-528-14-(345)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4187

 

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。     

杏の花0055
             

浣溪沙九首           其五

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)
              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。
              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。              

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

              (浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

             

浣溪沙九首           其六

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

花間集
 

『浣溪沙九首 其五』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其五

半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

 

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

 

(現代語訳)

(細身の素晴らしい妓女とひと時を過ごした。一目ぼれしたもののシャイでそれ以上何もできない、それから後も何にも知らない)

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

浣溪沙九首 其五

 

【解説】 前段、自分の所に来てくれる細身の素晴らしい妓女を、簾越しに見かけた時から、一緒に過ごすも、最初からなれなれしくはできないことをじれったく思い、後段、蝋燭が薄くなるまで、踊るのを見て、事の調べを聞いて、時間の許す限り過ごした。し賈至、それから後に行くこともなく、その女妓がどうなったのか知る由もない。

この詞は、あこがれの妓女ではあるが高嶺の花であったのだろう。しかし、女性に対してシャイな性格をあらわす、また、その場所と場面を奇麗に表現しようとするこれが孫光憲である。女にうつつを抜かすとか溺れることはなかったような表現で詠んだもの。

 

 

半踏 長裾 宛約行,晚簾 疎處 見分明,此時 堪恨 昧平生。

細腰の女妓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。このとき恨めしいいとおもったのは、日頃からここに来るわけではないのでもっと親しくなれないことだ。

○半踏 一歩を半歩にして小股に歩むこと。

○宛約 婉約/艶約 繊細でたおやかなさま。細腰の妓女が色っぽく動く様子をいう。宛:[訓]あてる あて ずつ あたかも〈エン〉1 曲がる。くねる。「宛転」2 あたかも。まるで。「宛然」.約:[訓]つづめる つづまやか   ひもで結ぶ。締めくくる。「制約・括約筋」 ひもで結び目を作り、取り決めの目印とする。広く、約束のこと。3ひかえめなこと。

○昧平生 日頃からの見知りのないことを言う。なじみの客でないことをいう。

 

早是 銷魂 殘燭影,更愁 聞著 品絃聲,杳無 消息 若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上はその妓女のことは知らない、こんなシャイな自分の思いはどうすればよいのだろう。

○残燭影 消えかかる灯火の光に映し出された影。蝋燭の火が薄くなるまで一緒にいたことをいう。

○聞著 ただ聞いている、の意。著は動作の進行や継続を表す接尾辞。

〇品絃声 弦の調べの音。ここでは琴の音を指す。詩を取り交わすとか次の逢瀬を約束するとか何にもない様子をいう。シャイな様子をいうのであろう。

○若為 どうしよう、どうしようもない。

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浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。
             

浣溪沙九首           其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

(浣溪沙九首 其の四)

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。             

             

浣溪沙九首           其五

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

楊貴妃清華池002

 

『浣溪沙九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其四

攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

 

(下し文)

浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

 

(現代語訳)

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

花間集02
 

(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

浣溪沙九首 其四

(日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていくのも可惜過している。悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねて訪れるものがいない女を詠う。)

 

攬鏡 無言 淚欲流,凝情 半日 懶梳頭,一庭 疎雨 濕春愁。

鏡を手にとって言葉もなくもう涙をこらえられなくてこぼれて来そうである、いまはあの人への気持ちを持ち続けていることができる日がある間は、何もする気にならず髪の毛にくしを当てることもしていない。ここの中庭には時折雨が降り春というのに愁いに気持ちも湿っている。

攬[ラン]取り集めて持つ。手中に収める。「収攬・総攬」

この三句は春が来ても訪ねてくれる人がいない何にもする気がない様子を詠う。

懶梳頭 物憂げで、櫛で頭を梳くこともしない。

 

楊柳 秖知 傷怨別,杏花 應信 損嬌羞,淚沾 魂斷 軫離憂。

男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ、やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思う、春の盛りの杏の花の咲くころ、手紙で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた患いと悲しみがやってくる。

・楊柳秖知 男柳と女柳の枝はたれているのはただ見て季節を知るだけ

・傷怨別 やっぱりあの別れは傷ついて恨みに思うこと。

・杏花 春の盛りの杏の花の咲くころ。

・應信 手紙で答えてくれること。

・損嬌羞 恥を忍んで愛嬌をだしていたのにそれは違っていた。

・軫離憂 愁いに思い、それを忘れようとするが又愁い悲しみが襲ってくる。・軫:憂える。悲しむ。「軫悼(しんとう)・軫念」。まわる。
杏の花001
 

14-343《浣溪紗九首(3)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-526-14-(343) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4177

浣溪紗九首(3)》孫光憲≫化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。


        
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14-343《浣溪紗九首(3)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-526-14-(343)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4177




浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。            


浣溪沙九首
           其三        

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。


             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。




浣溪沙九首   其三』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首   其三

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。


(下し文)

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁紅に舞う。

膩粉 半粘 金靨子,殘香 猶お暖く繡薰籠,蕙心 處に無く 人と同じうす。



(現代語訳)

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けボクロも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠の香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。


(訳注)

浣溪沙九首

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

(若くて溌剌とした女も年を重ねてしまい他の女が辿ったおんなじ運命と同じ道をたどってしまうことになった)其三


花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいに枯れて摩あらになってきて風が吹いて来て来てもう花を残しておくことが出来ない。閨には誰も来ないのできれいな簾は下におろしたまま夕方の奥座敷は誰もいなくて空しさが広がる。ここであれだけ華やかで、鮮やかで、繁栄していたのに今は見る影もなく頬を赤く染めるも愁いに満ちて一人で踊っている。

漸1 長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま。やっとのことで。2 苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか。3 物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん。


膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

化粧は染み出た肌の油で崩れ、金の付けぼくろも半ばとれそうだ。閨に香の香りは残っているがまだ刺繍の台に乗った網籠のの香炉にはあたたかさがのこっている。美人の麗しい心はもうここにはなくて歳をとってしまえば行く末はおんなじようになってしまう。

金靨子 金の付けぼくろ。靨:〔笑(え)窪(くぼ)の意〕 笑うと,頰にできる小さなくぼみ。 ほくろ。仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。

蕙心 美人の麗しい心。

金燈花01


 


 


 


 


 


 


 


 


 紅莓苔子002


 


 


 


 


 花間集02


 


 


















14-342《浣溪紗九首(2)》孫光憲(孫少監光憲)Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-525-14-(342) 花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4172

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

        
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14-342《浣溪紗九首(2)》孫光憲(孫少監光憲)唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-525-14-(342)  花間集 巻第七 (十三首)漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4172

 

 

浣溪沙九首       其一

 (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

    蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

    目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二
(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)


    桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

    繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 

              浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

             

浣溪沙九首           其三

             

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

             

             

             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

花間集02
 

 

 

『浣溪沙九首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首           其二

桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

             

 

(下し文)

浣溪沙九首           其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數ば行く 題 壁に了し,曉屏 一枕 酒 山に醒め,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

 

 

(現代語訳)

(又春が来ても、秋になっても、若いころ詩を作り、もてはやされた女も今やだれも寄り付かない、夜も眠れずこれから先どうしてよいやら精神的に追い込まれた女を詠う)

桃と杏の花が咲く中を風が抜けて香りを運んでくる、簾と幔幕はおろしたままで静かなものだ。愛妾の家には門の扉は閉められたままで、花は満開に咲いているのにそのまま締めくくっている。秋にもすぎ、いろどられた梁の上の燕はもう帰ったのだろう鳴き声などなく静かになった。

窓に刺繍を張った樓閣にしばしば通い、そこの壁にこの詩を題して書き記したし、明方に屏風を動かしてやっと横になって眠ろうとするがもうお酒の酔いが醒めて眠れない。こんなことを毎日している。夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活を、この身をどうしたらよいのか、

 珠櫻001


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(秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

        
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花間集第七 五十首

 

顧太尉三十七首

 

孫少監光憲十三首

 ・浣溪紗九首 

 ・河傳四首

 

花間集卷第八 四十九首

 

孫少監光憲四十七首

菩薩蠻五首 河瀆神二首 虞美人二首(虞每人二首)

後庭花二首 生子三首 臨江仙二首

酒泉子三首 清平樂二首 更漏子二首

女冠子二首 風流子三首 定西番二首

河滿子一首 玉蝴蝶一首 八拍蠻一首

竹枝一首 思帝一首 上行盃二首

謁金門一首 思越人二首 陽柳枝四首

望梅花一首 漁歌子二首

 

魏太尉承班二首

 

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

浣溪沙九首       其一

          

           蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

           目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

             

              (秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首           其二

             

              桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

              繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

             

             

             

浣溪沙九首           其三

             

              花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

              膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

             

             

             

浣溪沙九首           其四

             

              攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

              楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

             

             

             

浣溪沙九首           其五

             

              半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

              早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

             

             

             

浣溪沙九首           其六

             

              蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

              翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

             

             

             

浣溪沙九首           其七

             

              風遞殘香出繡簾,團窠金鳳舞襜襜,落花微雨恨相兼。

              何處去來狂太甚,空推宿酒睡無猒,爭教人不別猜嫌。

             

             

             

浣溪沙九首           其八

             

              輕打銀箏墜鷰泥,斷絲高罥畫樓西,花冠閑上午牆啼。

              粉籜半開新竹逕,紅苞盡落舊桃蹊,不堪終日閉深閨。

             

             

             

浣溪沙九首           其九

             

              烏帽斜欹倒佩魚,靜街步訪仙居,隔牆應認打門初。

              將見客時微掩斂,得人憐處且先疎,低頭羞問壁邊書。

 

海棠花022

『浣溪沙九首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首其一

蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】せば 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

 

 

(現代語訳)

(秋には帰るといって旅立った人を何度も秋を迎えたが帰ってこない。雁が見えなくなるように、川が流れ去るように忘れていくことになるのか、もう死んでしまったのなら、瀟湘の女神にもあこがれる)

岸辺には蓼がしげる中を風がぬけると橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとりから一望すると楚の秋の空ははるかとおくまでつづく、一片の帆影を浮かべて霞む果てには風雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

女の眼は遠く飛び行く雁を消えて飛び去るまで追いかける、遠い先の帰ってこない男への思いは長江の流れとともに忘れ去ってしまう、蘭の花は紅色濃く、波は碧く瀟湘の慕情を偲ばせる。

豆蔻 なつめぐ01
 

 

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以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

        
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13-340《更漏子一首》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-523-13-(340)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4162

 

 

更漏子一首

(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。

 

(更漏子一首)

舊には歡,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。

濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。

簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。

歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

 終南山04

 

『更漏子一首』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

 

(下し文)

(更漏子一首)

舊には歡,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。

濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。

簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。

歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。

 

(現代語訳)

(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。

ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。

 

(訳注)

更漏子

『花間集』には顧夐の作が一首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。逢瀬は時間を気にして過ごしたが、今は眠れず夜を過ごすというのが大方のストーリーである。

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『更漏子』十六首

 

 

溫助教庭筠

『更漏子 一』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-15-2-#1 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1676

 

 

 

『更漏子 二』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-16-2-#2 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1680

 

 

 

『更漏子 三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-17-2-#3 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1684

 

 

 

『更漏子 四』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-18-2-#4 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1688

 

 

 

『更漏子 五』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-19-2-#5 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1692

 

 

 

『更漏子 六』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-20-2-#6 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1696

 

 

韋相莊

更漏子一首 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-282-5-#36  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2957

 

 

牛嶠(牛給事嶠)

更漏子三首 其一 牛嶠【ぎゅうきょう】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-325-6-#12  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3172

 

 

 

更漏子三首 其二 牛嶠【ぎゅうきょう】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-326-6-#13  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3177

 

 

 

更漏子三首 其三 牛嶠【ぎゅうきょう】  ⅩⅫ唐五代詞・ 「花間集」 Gs-327-6-#14  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3182

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

更漏子 毛文錫【もうぶんせき】  ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-367-8-#3  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3382

 

 

(顧太尉

更漏子一首

 

 

孫少監光憲

更漏子二首

 

 

 

 

 

 

毛秘書熙震

更漏子二首

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇この詩は最終句にまとめられているように、(以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)

 

舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。

以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。

〇歡 よろこび楽しむこと。 「美人西施を洒掃(せいそう)の妾(しよう)たらしめ,一日の歓娯に備ふべし

悵望 心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。

擁鼻 かなしくて涙と鼻水がこぼれたのを拭く。

含嚬 悔しさをかみしめ、口をゆがめる

 

濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。

又春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂うてくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。

〇この三句、聯は春が過ぎ夏が過ぎて逝く季節の変わりを述べる。

 

簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。

もしかしてきてくれるかと半分簾をかかげてみたり、壁の廟日を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせるだけだ。

〇簾半捲 簾の陰に隠れて遠方を眺める。見ている姿を見られたくないという女心をいう。

〇屏斜掩 屏風は逢瀬の際ベッドのそばにたててこべやのようにして使用する。ここは男が来ないから使うことがなく壁に立てかけておくことをいう。

〇岫【くき】1 山の洞穴。2 山の峰。

〇參差① 長短の等しくないさま。そろわないさま。② 入りまじるさま。入り組むさま。

〇迷眼 めをこらすことがなく、おちつかないこと。

 

歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

ここの館には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれるけれど、以前にはこんな春でも何にもいらないと思っていたのに。
終南山01
 

13-339《醉公子二首 其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-522-13-(339) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4157

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、

        
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13-339《醉公子二首 其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-522-13-(339)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4157

 

 

醉公子二首 其一

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

睡起橫波慢,獨望情何限。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。

 

其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

 

(其の二)

岸柳 金線垂れ,雨晴れ 鶯 百囀す。

家 綠楊の邊に在り,往來 少年多し。

馬嘶 芳草 遠く,高樓 簾 半ば捲く。

袖を斂【まと】め 翠蛾 攢【ひそ】む,相いに逢うは 爾許【かくのごと】く難し。

 

 

『醉公子二首』 現代語訳と訳註

(本文)

其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

 

(下し文)

(其の二)

岸柳 金線垂れ,雨晴れ 鶯 百囀す。

家 綠楊の邊に在り,往來 少年多し。

馬嘶 芳草 遠く,高樓 簾 半ば捲く。

袖を斂【まと】め 翠蛾 攢【ひそ】む,相いに逢うは 爾許【かくのごと】く難し。

 

 

(現代語訳)

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

 

 

 (訳注)

醉公子二首

『花間集』には四首所収。顧夐の作は二首収められている。双調四十字、前後段二十字四句二仄韻二平韻で、❺❺⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『醉公子』四首

 

 

薛侍郎昭蘊

醉公子一首

 

 

(顧太尉

醉公子二首其一

 

 

 

醉公子二首其二

 

 

閻處士選

醉公子一首

 

 

 

 

 

 

其二

(去年・それ以前のデビューしている女妓は何度か遊ばれて棄てられることを経験している、初めてデビューした女妓は、初めて経験して悲しむものであると詠う。)

【解説】 

柳の色彩を言った前段第一句の「金線」と第三句の「緑楊」今年芽吹いたばかりの枝、「緑楊」が去年から生える枝というのがこの詩の斬新なところである。

 

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

岸辺の柳は黄金の糸垂れるころ、春の長雨の後、晴れてくると鶯はあちこちで啼いている。

○金線 柳の黄色い芽吹き。今春初めてデビューした女妓をいう。

 

家在綠楊邊,往來多少年。

美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある、そこには多くの貴公子たちが出入りする。

〇家在綠楊邊 美人の住まいは川縁の緑の柳の木のもとにある。

〇往來多少年 李白・杜甫・王維に少年行がある。富貴・貴族の二男坊たち。金に飽かせて徒党を組んで遊び回る。

唐詩で「少年」といえば、王維 少年行
新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。
相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。
李白 17少年行
少年行      
五陵年少金市東、銀鞍白馬度春風。
落花踏尽遊何処、笑入胡姫酒肆中。
杜甫 少年行

馬上誰家白面郎、臨階下馬坐人牀。
不通姓氏麤豪甚、指點銀瓶索酒嘗。
 
王昌齢『少年行』
走馬遠相尋,西樓下夕陰。結交期一劍,留意贈千金。高閣歌聲遠,重門柳色深。夜闌須盡飲,莫負百年心。
いなせな若者や壮士を詠う。

溫庭筠『贈少年』

江海相逢客恨多,秋風葉下洞庭波。

酒酣夜別淮陰市,月照高樓一曲歌。

贈少年 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-56-9-# 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1840

 

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

逢うはわかれをともない、貴公子の馬は嘶いてどこか若草の彼方へと遠ざかってゆく、高殿では簾を半ば巻き上げ、さってゆく後すがたを追って涙するのがみえる。

○馬噺芳草遠 遊び人の貴公子が若草茂る道を馬に跨り遥か遠ざかって行く。彼らは去ったまま帰ってくることはない。後段末句の「相逢爾許難」を生み出す要因になっている。馬で去るのか、舟で去るか、貴公子の行為の常套手段の語である。

 

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

涙でぬれた袖をたくし上げ、きえた眉を翠の蛾に書いたけれど、あれだけ待って逢瀬を過してもこんなに心は痛んでしまうほど難しいものなのだ。

○斂袖翠蛾攢 泣きぬれた袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直すことをいう。あきらめの境地をいう。

○爾許 このように。

13-338《醉公子二首 其一》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。


        
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13-338《醉公子二首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-521-13-(338)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4152

 

 

醉公子二首 其一

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

睡起橫波慢,獨望情何限。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。 

其二

岸柳垂金線,雨晴鶯百囀。

家在綠楊邊,往來多少年。

馬嘶芳草遠,高樓簾半捲。

斂袖翠蛾攢,相逢爾許難。

采蓮003
 

 

 醉公子二首』 現代語訳と訳註

(本文) 醉公子二首 其一

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

睡起橫波慢,獨望情何限。

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

 

(下し文)

(醉公子二首 其の一)

漠漠として秋雲 澹たり,紅耦 香 檻に侵る。

枕 小山屏に倚り,金鋪 晚扃に向う。

睡起 橫波慢,獨り望む 情 何ず限らん。

衰柳 數ば蟬聲し,魂銷 去年に似る。

 

(現代語訳)

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

pla880014
 

 

(訳注)

醉公子二首

『花間集』には四首所収。顧夐の作は二首収められている。双調四十字、前後段二十字四句二仄韻二平韻で、❺❺⑤⑤/❺❺⑤⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『醉公子』四首

 

 

薛侍郎昭蘊

醉公子一首

 

 

(顧太尉

醉公子二首其一

 

 

 

醉公子二首其二

 

 

閻處士選

醉公子一首

 

 

 

 

 

其一

(秋に帰ると待ち侘びて、もう何年も同じ秋を過したのだろうか、愛妾も年を重ねて、あきらめるしかなくなってしまった)

 

漠漠秋雲澹,紅耦香侵檻。

秋雲がうっすらとぼんやりとして遠くはるかなところまで続く、池の紅い蓮根の花が咲き、花の香りは池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる

〇漠漠 ぼんやりとして遠くはるかな様子をいう。

〇紅耦 赤い蓮の花。女妓の頬紅を連想させる語である。

〇侵檻 池のふちの欄干の所まで蓮の香りが漂ってくる。

 

枕倚小山屏,金鋪向晚扃。

日が高くてもまくらにより、女妓はよこたわるだけであるが、夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

〇小山屏 女妓がよこたわる。

〇金鋪向晚扃 夕暮れになれば門の鍵をかけて一人さびしく閨にはいる。

 

 

睡起橫波慢,獨望情何限。

転寝の眠りから覚めて、日ごろ物憂いで目だけを動かすだけで、一人遙か空を臨み見る、未だにあの人を思うことはこんなにもかぎりがないほどなのだ。

〇橫波慢 日ごろ物憂いで目だけを動かすだけである。

〇何限 こんなにもかぎりがないほどだ。無限と同じ。

 

衰柳數聲蟬,魂銷似去年。

柳も枯れ始め、もう数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。あの人のことを思う心が消えてきたが、考えてみると去年の秋と同じようなものであった。

〇衰柳數聲蟬 これまで、柳も枯れ、数々の蝉の声を聞いてきたことだろう。

〇魂銷 男のことを思う気持ちが消えてきた

〇似去年 去年の秋と同じようなものであること。
花蕊夫人006

13-337《臨江仙三首 其三》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-520-13-(337) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4147

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。


        
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13-337《臨江仙三首 其三》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-520-13-(337)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4147

 

 

臨江仙三首

其一

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

博山鑪暖澹煙輕。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

 

其二

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。(臨江仙三首 其の二)

幽閨 小檻 春光の晚,柳濃 花淡 鶯稀れなり。

舊歡 思想 尚お依依たり,翠嚬 紅斂,終日 芳菲を損う。

何事ぞ 狂夫 音信斷ちたるは,梁鷰 猶の歸る不如たるは。

畫意 深處 麝煙 微にし,屏虛 枕冷,風 細雨霏霏たり。

 

其三

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

閨に続くきざはしの奥の砌には、枝につけた咲く花の二つ三つとあり、夜露にしっとりと濡れています。恨みに満ちた顔は泣き崩れてしまいました。あの人がわたしを思う心は断絶し、わたしは自分の身繕いをすることもしたくないのです。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

あの人を迎えるための香炉には香を焚くこともなく高台の上の鴨の飾りも冷え切ったままです。前におあいした時の約束日に来ないというわたしの心が踏みにじられたことに堪えなければいけないのです。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

刺繍の入った襦袢を着たり、雲型や見蜜らの髪型を整えることもしたくなくなり、何度も何度も辛い悲しい思いをすることか、こんなふうに思い続けていくことが人生、生きていくことと云うことなのでしょう。

 

(其の三)

月色 簾を穿ち 風 竹に入る,屏を倚り 雙つの黛 時に愁う。

砌の花 兩つ三つの枝に露を含み,如啼 臉に恨み,魂斷ちて 容儀を損う。

香燼 暗く銷し 金鴨冷かなり,前期を辜負するを堪える可し。

繡襦 鬢鬟の欹 整わず,幾多 惆悵たり,情緒 天涯に在る。


 

 

『臨江仙三首 其三』 現代語訳と訳註

(本文) 其三

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

 

(下し文)

(其の三)

月色 簾を穿ち 風 竹に入る,屏を倚り 雙つの黛 時に愁う。

砌の花 兩つ三つの枝に露を含み,如啼 臉に恨み,魂斷ちて 容儀を損う。

香燼 暗く銷し 金鴨冷かなり,前期を辜負するを堪える可し。

繡襦 鬢鬟の欹 整わず,幾多 惆悵たり,情緒 天涯に在る。

 

(現代語訳)

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)

夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。

閨に続くきざはしの奥の砌には、枝につけた咲く花の二つ三つとあり、夜露にしっとりと濡れています。恨みに満ちた顔は泣き崩れてしまいました。あの人がわたしを思う心は断絶し、わたしは自分の身繕いをすることもしたくないのです。

あの人を迎えるための香炉には香を焚くこともなく高台の上の鴨の飾りも冷え切ったままです。前におあいした時の約束日に来ないというわたしの心が踏みにじられたことに堪えなければいけないのです。

刺繍の入った襦袢を着たり、雲型や見蜜らの髪型を整えることもしたくなくなり、何度も何度も辛い悲しい思いをすることか、こんなふうに思い続けていくことが人生、生きていくことと云うことなのでしょう。

 十三夜月

 

(訳注)

臨江仙三首 其二

唐の教坊の曲名。『花間集』には下に示した表のとおり、二十六首所収。顧夐の作は三首収められている。双調五十八字、前後段二十九字五句三平韻で、7⑥⑦4⑤/7⑥⑦4⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『臨江仙』 二十四首

 

 

張舍人泌

 

臨江仙一首

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

臨江仙一首

 

 

牛學士希濟

 

臨江仙七首其一

 

 

 

 

臨江仙七首其二

 

 

 

 

臨江仙七首其三

 

 

 

 

臨江仙七首其四

 

 

 

 

臨江仙七首其五

 

 

 

 

臨江仙七首其六

 

 

 

 

臨江仙七首其七

 

 

和學士凝

 

臨江仙二首 其一

 

 

 

 

臨江仙二首 其二

 

 

(顧太尉

 

臨江仙三首

 

 

孫少監光憲

 

臨江仙二首

 

 

魏太尉承班

 

臨江仙二首

 

 

閻處士選

 

臨江仙二首

 

 

毛秘書熙震

 

臨江仙二首

 

 

李秀才珣

 

臨江仙二首

 

 

 

 

 

 

其三

(月が丸くなったころに帰って来るという約束を破られた女を詠う)

合歓の花
 

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

夜が更けていき月が傾くと簾越に月かげが閨に入って來ました。風は竹林に入りざわめいているし、屏風は使うこともなく壁に立てかけていて、二つの眉にはこの時愁いの思いしかできなくて潜めているようになりました。

・月色穿簾 月が穿簾を突き抜け部屋に入って來ることは、真上にあがっていては入らない、つまり、西に傾くまで寝ずに待っていたことをいう。また、月が明るいことをいみする。すなわち、十日すぎから二十日月の間に帰って来ると約束したと思われる。風が竹林を抜けると音を立てるのは、風が船の帆を押して早く帰って来ることを願うという意味であり、待っている女の様子をあらわしている。

 

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

閨に続くきざはしの奥の砌には、枝につけた咲く花の二つ三つとあり、夜露にしっとりと濡れています。恨みに満ちた顔は泣き崩れてしまいました。あの人がわたしを思う心は断絶し、わたしは自分の身繕いをすることもしたくないのです。

・砌花の句 この女妓には約束の日に男は来なかったが、階の向うの花には(他の女妓をいう場合が多い。)他の女妓は男性が来てくれていて、逢瀬を楽しんでいるという意味である。

 

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

あの人を迎えるための香炉には香を焚くこともなく高台の上の鴨の飾りも冷え切ったままです。前におあいした時の約束日に来ないというわたしの心が踏みにじられたことに堪えなければいけないのです。

・辜負 「辜」「負」はともにそむく意で. 強い意志をもってそむくこと。

 

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

刺繍の入った襦袢を着たり、雲型や見蜜らの髪型を整えることもしたくなくなり、何度も何度も辛い悲しい思いをすることか、こんなふうに思い続けていくことが人生、生きていくことと云うことなのでしょう。

・鬢鬟 びんとみみつら。耳の傍に垂らす髪型。

・欹 そばだてる。

花間集02

13-336《臨江仙三首 其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-519-13-(336) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4142

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

        
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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13-336《臨江仙三首 其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-519-13-(336)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4142

 

 

臨江仙三首

其一

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。
博山鑪暖澹煙輕。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

博山爐01
 

其二

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。

(臨江仙三首 其の二)

幽閨 小檻 春光の晚,柳濃 花淡 鶯稀れなり。

舊歡 思想 尚お依依たり,翠嚬 紅斂,終日 芳菲を損う。

何事ぞ 狂夫 音信斷ちたるは,梁鷰 猶の歸る不如たるは。

畫意 深處 麝煙 微にし,屏虛 枕冷,風 細雨霏霏たり。

 

其三

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

 

 

『臨江仙三首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

其二

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

 

(下し文)

(臨江仙三首 其の二)

幽閨 小檻 春光の晚,柳濃 花淡 鶯稀れなり。

舊歡 思想 尚お依依たり,翠嚬 紅斂,終日 芳菲を損う。

何事ぞ 狂夫 音信斷ちたるは,梁鷰 猶の歸る不如たるは。

畫意 深處 麝煙 微にし,屏虛 枕冷,風 細雨霏霏たり。

 

 

(現代語訳)

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。

 

(訳注)

臨江仙三首 其二

唐の教坊の曲名。『花間集』には下に示した表のとおり、二十六首所収。顧夐の作は三首収められている。双調五十八字、前後段二十九字五句三平韻で、7⑥⑦4⑤/7⑥⑦4⑤の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『臨江仙』 二十四首

 

 

張舍人泌

 

臨江仙一首

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

臨江仙一首

 

 

牛學士希濟

 

臨江仙七首其一

 

 

 

 

臨江仙七首其二

 

 

 

 

臨江仙七首其三

 

 

 

 

臨江仙七首其四

 

 

 

 

臨江仙七首其五

 

 

 

 

臨江仙七首其六

 

 

 

 

臨江仙七首其七

 

 

和學士凝

 

臨江仙二首 其一

 

 

 

 

臨江仙二首 其二

 

 

(顧太尉

 

臨江仙三首

 

 

孫少監光憲

 

臨江仙二首

 

 

魏太尉承班

 

臨江仙二首

 

 

閻處士選

 

臨江仙二首

 

 

毛秘書熙震

 

臨江仙二首

 

 

李秀才珣

 

臨江仙二首

 

 

 

 

 

 

其二

(昔を懐かしみ、今を悲しむ。調度品から女妓・家妓であることが知れる。楽しかったころを思い出しては涙する)

 

 

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

誰も居なくてひっそりした閨、そこに続く欄干に春の日は暮れかかっている、柳の枝には葉が色濃くなり、春の盛りに満開となっていた花も淡いものに変わっていく、鶯の啼き声も聞かれなくなっている。

・幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。この二句は女のまわりの春景色が過ぎてゆくことをいい、女盛りが過ぎ、歳を重ねて、男が全く音信不通になったことをいう。

 

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

むかしあれほどたのしかったことをおもいだしてはさびしくなるし、翡翠の飾りをつけても苦々しげに口をゆがめ、ほほ紅で化粧しても顔は歪める日がつづく、一日中草花のよいにおいが一杯であっても何の意味もない。

嚬 苦々しげに口をゆがめる。

芳菲 草花のよいにおいがすること。また、草花が美しく咲きにおっていること。

 

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

あの若い女にうつつを抜かす男というものはどんなことが起こっているのか、音信することを全くしなくなった。女のもとには帰って来ることはないのか、それでもなお梁の上の燕は新しい春の日には帰って来るというのに。

・狂夫 一つのことに一生懸命になることで、他が見えないことをいい、ここでは、若い女に入り浸っていることをいう。

・梁鷰猶歸 春が来れば梁の上に巣を作り子作りをして秋には飛び去るが、新しい春と共に帰ってきてくれること。

 

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

思いのたけを書き連ねても部屋には麝香を微かに焚いても、一緒に過ごす時の屏風を使うことなく空しく立てかけているし、男が使うはずの枕は冷め切ったままなのだ。風は吹きぬけるままだし、雨は降り続き、涙は流れるままに続いている。

・畫意の句 書画を遺して行っているのでそこの思い出があり、楽しかったころと同じことをしてみることをいう。

・屏虛枕冷 男が全く寄り付かないことの表現。屏風は女の閨は広い部屋で、寝牀も広いので帳や屏風で寝姿が見えないよう隠すが、その屏風牙鬚買われることもなく空しくあるだけ、同じ意味で枕も使われて体温のために暖められることがなく冷たいままである。

・霏霏 1 雪や雨が絶え間なく降るさま。「―として秋雨が降る」2 物事が絶え間なく続くさま。春から夏にかけての小ぬか雨をいう、季節が変わったことをいい、歳を重ねたことをいう。
tsubame
 

13-335《臨江仙三首 其一》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-518-13-(335) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4137

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

        
 2014年5月2日の紀頌之5つのブログ 
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 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
 孟郊張籍     
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 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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13-335《臨江仙三首 其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-518-13-(335)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4137

 

 

臨江仙三首 其一

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。
博山鑪暖澹煙輕。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

 

其二

幽閨小檻春光晚,柳濃花淡鶯稀。

舊歡思想尚依依,翠嚬紅斂,終日損芳菲。

何事狂夫音信斷,不如梁鷰猶歸。

畫意深處麝煙微,屏虛枕冷,風細雨霏霏。

 

其三

月色穿簾風入竹,倚屏雙黛愁時。

砌花含露兩三枝,如啼恨臉,魂斷損容儀。

香燼暗銷金鴨冷,可堪辜負前期。

繡襦不整鬢鬟欹,幾多惆悵,情緒在天涯。

桄榔00
 

 

『臨江仙三首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

臨江仙三首 其一

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

博山鑪暖澹煙輕。

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

 

(下し文)

(臨江仙三首其の一)

碧 長空を染め 池は鏡に似たり,樓に倚り 閑かに望み 情を凝らし,衣に滿ち 紅藕【こうぐう】 細香 清がし。

象床 珍簟【ちんてん】あり,山障 掩いて,玉琴 橫たわる。

暗に想う 昔時は 懽笑【かんしょう】の事を,如今【じょこん】は 愁生ずるを贏得【えいとく】するを。

博山 鑪暖く 澹煙【たんえん】輕く。

蟬は吟じ 人は靜かなり,殘日 傍いて,小 明るし。

 

 

(現代語訳)

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。 

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。
神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。 
 

(訳注)

臨江仙三首

唐の教坊の曲名。『花間集』には下に示した表のとおり、二十六首所収。顧夐の作は三首収められている。双調六十字、前後段三十字六句三平韻で、7⑥⑦43③/7⑥⑦43③の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『臨江仙』 二十四首

 

 

張舍人泌

 

臨江仙一首

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

臨江仙一首

 

 

牛學士希濟

 

臨江仙七首其一

 

 

 

 

臨江仙七首其二

 

 

 

 

臨江仙七首其三

 

 

 

 

臨江仙七首其四

 

 

 

 

臨江仙七首其五

 

 

 

 

臨江仙七首其六

 

 

 

 

臨江仙七首其七

 

 

和學士凝

 

臨江仙二首 其一

 

 

 

 

臨江仙二首 其二

 

 

(顧太尉

 

臨江仙三首

 

 

孫少監光憲

 

臨江仙二首

 

 

魏太尉承班

 

臨江仙二首

 

 

閻處士選

 

臨江仙二首

 

 

毛秘書熙震

 

臨江仙二首

 

 

李秀才珣

 

臨江仙二首

 

 

 

 

 

 

 

其一

(高貴・富貴の家の愛妾も年を重ねてきて、昔を懐かしみ今を悲しむ日をすごす詞。)

作中の主人公は調度品から高貴な人の愛妾であることが知れる。楽しき思い出とは、愛人と過ごした日々のことを指す。

紅莓苔子002
 

碧染長空池似鏡,倚樓閑望凝情,滿衣紅藕細香清。

晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空、ここに広がる池は鏡のようである、高殿に上り手摺に寄り静かに眺めて、思いを凝らせば、衣に赤い蓮の花の清々しく細やかな香りが満ちあふれる。

碧染長空 晴わたる春の日、帰らぬ男を待ち侘びて見上げる遙かな北の空をいう。

 

象床珍簟,山障掩,玉琴橫。

この閨には象牙飾りのある寝牀に立派な模様の涼しき竹延シーツがあり、横たわる女を衝立が覆っている、だけど、男に聞かせる玉の琴はしばらく使っていなくて横におかれている。  

象床・珍簟・障掩・玉琴 これらの物は相当高貴な人か、富貴の愛妾であったことをあらわしている。

 ○象床 象牙の飾りの付いた寝台。

○珍簟 上等な夏用の敷物。簟は、竹の皮を薄く剥いで編んだ竹筵シーツで涼しい模様に編んでいた。

○山障 山形の衝立。

○玉琴 玉を飾った琴。
 

暗想昔時懽笑事,如今贏得愁生。

密かに思うことは、昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。

懽笑事/贏得愁生 昔は楽しく笑って二人で過ごしたことばかりが思い出されるが、今は毎日患いばかり思い続ける、良いことがあっても愁いの方が勝ってしまう。

○懽 懽・歡で 喜ぶ,楽しむ.((方言)) 形容詞 勢いがよい,活発である,盛んである.

得 苦労の末、手に入れたもの、残ったもの。

 

博山鑪暖澹煙輕。

神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

○博山 神仙三山がかたちづくられた閨におかれている博山鑪にお香焚くとあの頃と同じように煙は軽く広がる。

 ○博山 大型の高価な香炉の形であるが、ここでは香が置いてあるその部屋を指す。

博山炉【はくさんろ】中国の香炉の一種で,豆(とう)形の火皿に先端のとがった山形の蓋をもつ。承盤をともなうものも多く,これは海中に浮かぶ神山にたとえたとみられ,神仙道との関係がうかがわれる。戦国末期にあらわれ,漢代に盛行し,青銅製品には金象嵌をほどこした華麗なものがある。江南では東晋,南朝代に青磁製のものがみられる。南北朝代には仏教徒も用い,仏像の台座正面や供養者の持物にあらわされた。隋・唐代には山形の蓋が蓮華をかたどった緑釉陶もつくられた。
 

蟬吟人靜,殘日傍,小明。

蝉が鳴けばなくほど誰もいないここには静寂が広がり、夕日はへやのおくまでてらしている、たかいところにある小窓にもゆうひがあたって明るい。

 博山爐01

13-334《漁歌子一首》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-517-13-(334) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4132

漁歌子一首≫顧夐≫(隠遁者の心得を詠う)奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

        
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漁歌子

(隠遁者の心得を詠う)

曉風清,幽沼綠,倚欄凝望珍禽浴。

初秋の明け方の清々しい風にあたる。誰もいない沼には緑があふれている。水際の欄干に倚りかかって珍しい鳥が水浴びをしているのを少し離れてはいるがじっと眺める。

畫簾垂,翠屏曲,滿袖荷香馥郁。

奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

好攄懷,堪寓目,身閑心靜平生足。

思いを広くしていくのはよいことであり、風流なものを注目することは何よりいいことであり、身体はうごかさず、こころは静かにする、これが隠遁者の平生の生活なのである。

酒盃深,光影促,名利無心較逐。

酒を呑むのは十分に飲むし、日中の夜においてもそうする。名誉と利益については全く関心がないし、人と競い合うことなどもしない。

(漁歌子)

曉風 清【すがすが】しく,幽沼 綠なり,欄に倚り 珍禽の浴を凝望するなり。

畫簾 垂れ,翠屏 曲し,袖に 荷香馥郁【ふくいく】を滿たす。

攄懷【ちょかい】を好み,寓目に堪え,身は閑し 心は靜す 平生足る。

酒盃 深く,光影 促し,名利 較逐するに無心なり。

水鳥ケリ001
 

 

『漁歌子』 現代語訳と訳註

(本文)

漁歌子

曉風清,幽沼綠,倚欄凝望珍禽浴。

畫簾垂,翠屏曲,滿袖荷香馥郁。

好攄懷,堪寓目,身閑心靜平生足。

酒盃深,光影促,名利無心較逐。

 

 

(下し文)

(漁歌子)

曉風 清【すがすが】しく,幽沼 綠なり,欄に倚り 珍禽の浴を凝望するなり。

畫簾 垂れ,翠屏 曲し,袖に 荷香馥郁【ふくいく】を滿たす。

攄懷【ちょかい】を好み,寓目に堪え,身は閑し 心は靜す 平生足る。

酒盃 深く,光影 促し,名利 較逐するに無心なり。

 

(現代語訳)

(隠遁者の心得を詠う)

初秋の明け方の清々しい風にあたる。誰もいない沼には緑があふれている。水際の欄干に倚りかかって珍しい鳥が水浴びをしているのを少し離れてはいるがじっと眺める。

奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

思いを広くしていくのはよいことであり、風流なものを注目することは何よりいいことであり、身体はうごかさず、こころは静かにする、これが隠遁者の平生の生活なのである。

酒を呑むのは十分に飲むし、日中の夜においてもそうする。名誉と利益については全く関心がないし、人と競い合うことなどもしない。

 花間集

 

(訳注)

漁歌子

花間集には、教坊曲『漁歌子』は八首所収されている。

総長五十字、前後二十五字六句四仄韻、3❸❼3❸❻/3❸❼3❸❻の詞形をとる。若いころの放蕩を改め、風流、興を感じる隠士の生活を詠うものを基本とする。

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『漁歌子』八首

 

 

(顧太尉

漁歌子一首

 

 

孫少監光憲

漁歌子二首

 

 

魏太尉承班

漁歌子一首

 

 

李秀才珣

漁歌子四首

 

 

 

 

 

 

 

曉風清,幽沼綠,倚欄凝望珍禽浴。

初秋の明け方の清々しい風にあたる。誰もいない沼には緑があふれている。水際の欄干に倚りかかって珍しい鳥が水浴びをしているのを少し離れてはいるがじっと眺める。

 

畫簾垂,翠屏曲,滿袖荷香馥郁。

奇麗な絵が描かれた簾は垂らしておき、女には用がないから翡翠の屏風はたたんで使わず、それでも着物の袂には蓮の香りをいっぱいにしみ込ませ良い香りを漂わせるのである。

○馥郁 よい香りがただよっているさま。

 

好攄懷,堪寓目,身閑心靜平生足。

思いを広くしていくのはよいことであり、風流なものを注目することは何よりいいことであり、身体はうごかさず、こころは静かにする、これが隠遁者の平生の生活なのである。

攄懷 おもいをひろくめぐらす。

○寓目 目を向けること。注目すること。

 

酒盃深,光影促,名利無心較逐。

酒を呑むのは十分に飲むし、日中の夜においてもそうする。名誉と利益については全く関心がないし、人と競い合うことなどもしない。

○名利(個人の)名誉と利益.用例名利思想=個人の利益・名誉・地位を追い求める考え.名利双收((成語))=名誉と利益を両方とも手に入れる.

○較逐 (競逐). ;較對. (競爭對抗). ;較逐. (角逐,競爭追求).
鸂鶒けいせき001
 

13-333《荷葉盃九首,其九》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-516-13-(333) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4127

(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしていたら春も終ってしまう。

        
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 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
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 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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 薛濤の全詩花間集(1)花間集(2)花間集(3)花間集(4)花間集(5) 
 魚玄機全詩●花間集(6)●花間集(7)●花間集(8)●花間集(9)●花間集(10) 
 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
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13-333《荷葉盃九首,其九》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-516-13-(333)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4127


荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

13-325《荷葉盃九首,其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-508-13-(325) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4087

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

13-326《荷葉盃九首,其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-509-13-(326) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4092

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

13-327《荷葉盃九首,其三》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-510-13-(327) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4097


其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

13-328《荷葉盃九首,其四》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-511-13-(328) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4102


其五

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

歸摩歸,歸摩歸。

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

其六

(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)

我憶君詩最苦,知否。

あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。

吟摩吟,吟摩吟。

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。

(其の六)

君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。

字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。

吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。

 

其七

(全てが絶頂の可愛くて仕方がない女を詠う)

金鴨香濃鴛被,枕膩。

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

憐摩憐,憐摩憐。

可愛いいですかとても可愛いでしょう、

可愛いいですかとても可愛いでしょう。

(其の七)

金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。

小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。

憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。
 

其八

(女最盛期は最上の扱いであることを詠う)

曲砌蝶飛煙暖,春半。

奥座敷の奥まった階のみぎりの所に花壇があり、朝が飛んできて、春霞の暖かい陽だまりに、春は真っ只中の景色である。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

花が一杯に開き、柳の梢は葉をつけたれかけているこの街にも春の盛りを迎えている。ここの美女も春の盛りで、両の瞳は花が開いたようであり、その細い腰つきは柳を揺らせるように美しい。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

これはなよなよと愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

(其の八)

曲砌 蝶飛び 煙暖か,春半ばなり。

花は發き 柳條を垂れ,花は雙臉の如く柳は腰の如し。

嬌せんや嬌し,嬌せんや嬌す。


其九

(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)

一去又乖期信,春盡。

一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしていたら春も終ってしまう。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

この庭には長いこと姫蔓コケモモが一杯になるけれど、女もこれとおんなじで庭に出るだけだ。手をこすり合わせ、スカートに帯を付けて一人この庭を歩き回ることしかできない。

來摩來,來摩來。

帰って来るのか、いや帰って来る。

帰って来るのか、きっと帰って来る。

(其の九)

一たび去り 又た期信を乖【かい】す,春盡る。

滿院 長しく莓苔あり,手挼【しゅだい】裙帶【くんたい】獨り徘徊す。

來らんや來り,來らんや來る。


花間集


『荷葉盃九首其八』 現代語訳と訳註

(本文)

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。


(下し文)

(其の九)

一たび去り 又た期信を乖【かい】す,春盡る。

滿院 長しく莓苔あり,手挼【しゅだい】裙帶【くんたい】獨り徘徊す。

來らんや來り,來らんや來る。



(現代語訳)

(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)

一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしていたら春も終ってしまう。

この庭には長いこと姫蔓コケモモが一杯になるけれど、女もこれとおんなじで庭に出るだけだ。手をこすり合わせ、スカートに帯を付けて一人この庭を歩き回ることしかできない。

帰って来るのか、いや帰って来る。

帰って来るのか、きっと帰って来る。


杏の花0055

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 


其九

(女のもとを去って、姫つたこけ桃が毎年も実を付けた、それでも庭に出てただ待っている女を詠う)


一去又乖期信,春盡。

一度ここを立ち去ってしまうと又帰って来る日を手紙が届くことをおとなしく待つだけだ。そんなにしてたら春も終ってしまう。

乖とは。意味や日本語訳。[](1) (子供が)おとなしい,素直な孩子真乖この子は本当に素直だ.(2) 賢い,利口な乖機敏で賢い.(1) 非常識な,道にもとる乖舛間違った.(2) ひねくれた.乖乖 guāiguāi[](~儿的)おとなしい,ききわけがよい


滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

この庭には長いこと姫蔓コケモモが一杯になるけれど、女もこれとおんなじで庭に出るだけだ。手をこすり合わせ、スカートに帯を付けて一人この庭を歩き回ることしかできない。

・莓苔 莓苔子のことで、蔓苔桃という植物。常緑低木の総称。北半球、寒帯の酸性の沼地に見られる。 主な種はツルコケモモ(蔓苔桃)、ヒメツルコケモモ(姫蔓苔桃)、オオミノツルコケモモ(大実蔓苔桃)、アクシバ(灰汁柴、青木柴)。

挼とは。意味や日本語訳。[](1) (紙などが)(しわ)になる.(2) (布などが)すりへる.


來摩來,來摩來。

帰って来るのか、いや帰って來る。

帰って来るのか、きっと帰って來る


 


 


 紅莓苔子002


 


 


 


 


 


 


 


 紅莓苔子003


 


 


 


 


 


 


 



















13-332《荷葉盃九首,其八》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-515-13-(332) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4122

荷葉盃九首,其八≫顧夐≫花が一杯に開き、柳の枝は葉をつけたれかけているこの街にも春の盛りを迎えている。ここの美女も春の盛りで、両の瞳は花が開いたような顔つきであり、その細い腰つきは柳を揺らせるように美しい。


        
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13-332《荷葉盃九首,其八》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-515-13-(332)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4122

 

 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

13-325《荷葉盃九首,其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-508-13-(325) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4087

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

13-326《荷葉盃九首,其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-509-13-(326) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4092

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

其五

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

歸摩歸,歸摩歸。

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

其六

(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)

我憶君詩最苦,知否。

あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。

吟摩吟,吟摩吟。

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。

(其の六)

君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。

字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。

吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。

 

其七

(全てが絶頂の可愛くて仕方がない女を詠う)

金鴨香濃鴛被,枕膩。

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

憐摩憐,憐摩憐。

可愛いいですかとても可愛いでしょう、

可愛いいですかとても可愛いでしょう。

(其の七)

金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。

小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。

憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。
 

其八

(女最盛期は最上の扱いであることを詠う)

曲砌蝶飛煙暖,春半。

奥座敷の奥まった階のみぎりの所に花壇があり、朝が飛んできて、春霞の暖かい陽だまりに、春は真っ只中の景色である。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

花が一杯に開き、柳の梢は葉をつけたれかけているこの街にも春の盛りを迎えている。ここの美女も春の盛りで、両の瞳は花が開いたようであり、その細い腰つきは柳を揺らせるように美しい。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

これはなよなよと愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

(其の八)

曲砌 蝶飛び 煙暖か,春半ばなり。

花は發き 柳條を垂れ,花は雙臉の如く柳は腰の如し。

嬌せんや嬌し,嬌せんや嬌す。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

 

 

『荷葉盃九首其八』 現代語訳と訳註

(本文)

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

(下し文)

(其の八)

曲砌 蝶飛び 煙暖か,春半ばなり。

花は發き 柳條を垂れ,花は雙臉の如く柳は腰の如し。

嬌せんや嬌し,嬌せんや嬌す。

 

(現代語訳)

(女最盛期は最上の扱いであることを詠う)

奥座敷の奥まった階のみぎりの所に花壇があり、朝が飛んできて、春霞の暖かい陽だまりに、春は真っ只中の景色である。

花が一杯に開き、柳の枝は葉をつけたれかけているこの街にも春の盛りを迎えている。ここの美女も春の盛りで、両の瞳は花が開いたような顔つきであり、その細い腰つきは柳を揺らせるように美しい。

これはなよなよと愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

 

 DCF00104

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

botan00
 

其八

(女最盛期は最上の扱いであることを詠う)

草花の春は毎年来るもので、美女の春最盛期は一度であること、それを師でどう表現するかが荷葉盃という詩なのである。

 

曲砌蝶飛煙暖,春半。

奥座敷の奥まった階のみぎりの所に花壇があり、朝が飛んできて、春霞の暖かい陽だまりに、春は真っ只中の景色である。

曲砌 建物のまわりに階があり、それの奥まった砌の所、そのには草花を植えているもので、蝶が飛んでいることから、花が一杯に咲いている庭の隈をいう。

春半 春の最盛期、これはここに登場する美女のことをいう。

 

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

花が一杯に開き、柳の枝は葉をつけたれかけているこの街にも春の盛りを迎えている。ここの美女も春の盛りで、両の瞳は花が開いたような顔つきであり、その細い腰つきは柳を揺らせるように美しい。

花・柳 花と柳は花柳界という名の起こりであり、細腰の女は傾国という表現をされた。

 

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

これはなよなよと愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。

愛らしいいというものだろうか、艶めかしく愛らしいのだ。
美女画557
 

13-331《荷葉盃九首,其七》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-514-13-(331) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4117

荷葉盃九首,其七≫顧夐≫夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。可愛いいですかとても可愛いでしょう。

        
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13-331《荷葉盃九首,其七》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-514-13-(331)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4117

 

 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

其五

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

歸摩歸,歸摩歸。

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

其六

(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)

我憶君詩最苦,知否。

あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。

吟摩吟,吟摩吟。

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。

(其の六)

君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。

字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。

吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。

 

其七

(全てが絶頂の可愛くて仕方がない女を詠う)

金鴨香濃鴛被,枕膩。

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

憐摩憐,憐摩憐。

可愛いいですかとても可愛いでしょう、

可愛いいですかとても可愛いでしょう。

(其の七)

金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。

小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。

憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

pla880014
 

 

『荷葉盃九首其七』 現代語訳と訳註

(本文)

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

(下し文)

(其の七)

金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。

小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。

憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。

 

(現代語訳)

(全てが絶頂の可愛くて仕方がない女を詠う)

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

可愛いいですかとても可愛いでしょう、

可愛いいですかとても可愛いでしょう。

 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 

其七

(名の持鴨全てが絶頂の可愛くて仕方がない女を詠う)

女儀の魅力が一番のころ、寝室の布団に薫き込められた香の香りは濃く、用意された枕は髪油で光り、結い上げた髪に一杯に挿された髪飾り、可愛さを強調する。

男と過ごす閨でのなよなよとした柳の枝のような細腰、蓮の花のような顔、すべてが可愛いくてしかたがない。

白鬚草01
 

 

金鴨香濃鴛被,枕膩。

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

・金鴨香濃 鴨が上に飾られた香炉に香を焚くとその煙が部屋に充満すること。

・鴛被 鴛鴦の刺繍のかけ布団。

・枕膩 枕に髪脂がついて光っていること。夜の化粧をキチン整えてベットインすること。男女の仲がうまくいっていることをあらわす語である。

 

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。細腰の美しい女は柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

・簇花鈿 花鈿の用語解説 - 仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。

・腰如細柳 女妓の美人は細腰型と肉感タイプとあり、柳は細腰の代名詞である。

・臉如蓮 蓮の花のように白い肌に頬紅を表現する。と同時に女性自身を示すこともある。

 

憐摩憐,憐摩憐。

可愛いいですかとても可愛いでしょう、

可愛いいですかとても可愛いでしょう。

・憐 可愛い、可憐。

・摩 疑問を表す。〜かしら。

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(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。


        
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晩菊002

 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

其五

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

歸摩歸,歸摩歸。

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

其六

(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)

我憶君詩最苦,知否。

あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。

吟摩吟,吟摩吟。

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。

(其の六)

君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。

字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。

吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

 

采蓮003
 

『荷葉盃其六』 現代語訳と訳註

(本文)

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

 

(下し文)

(其の六)

君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。

字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。

吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。

 

 

(現代語訳)

(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)

あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。

 

 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 

 

其六

(男が残した詩を見て苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう女を詠う)

 

我憶君詩最苦,知否。

あの人が残していった詩を見ると私の心は最も苦々しい思いにかられます。知っていますか知らないのか。

・君詩 別れも告げ蕊亡くなった男の残した詩。

・最苦 もっとも苦痛なこと。苦々しい思い。

・知否 知るや否や。女が苦痛であることを知っているのか知らないのか。

 

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していたのですから。

・字字 その詩の一字一字、一句一句。

・關心 心惹かれ、気になってしまう。

・紅牋 薛濤䇳のこと。色紙の様なもの

・寫寄 詞を書き写したり、返詩をよせたりする。

・表情深 心の底から愛していることをいう。

 

吟摩吟,吟摩吟。

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。まだまだ愛しているから、

この詩を吟じようか、やっぱり吟じよう。

○吟摩吟、吟摩吟 摩は疑問を表す。〜かしら。
花間集02
 

13-329《荷葉盃九首,其五》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-512-13-(329) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4107

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、


        
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晩菊002

 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

其五

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

歸摩歸,歸摩歸。

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

 

采蓮003
 

『荷葉杯九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

荷葉杯九首 其五

夜久歌聲怨咽,殘月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

歸摩歸,歸摩歸。

 

(下し文)

(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

(現代語訳)

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 moon5411

 

其五

(秋の夜、庭に出て男の帰りを待ちわびる女の思いを詠う。)

 

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は日増しに長くなり、今宵は歌声をきくと怨みがこみあげ咽び泣いてしまいます。眠れぬ夜を過ごし、空には名残の月、やっぱり諦めきれない。

・殘月 寝待ち月(二十日ころの月)から下弦の月を過ぎてのつき。待ち侘びる名残の月のこと。夜明けの空に懸かる月。

 

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花が一杯になるとうっすらと露に濡れて冷ややかな夜が来る、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている、

○綾金衣 金線衣に同じ。金糸の刺繍のある衣裳。

○残月・菊・露・濕 待ち侘びて明け方まで庭に出ていて夜露に濡れるということ。

 

歸摩歸,歸摩歸。

あの人は帰って来るかしら、きっと帰ってく。

あの人は果たして帰って来るのかしら、帰って来ると思う。

○帰摩帰、帰摩帰 摩は疑問を表す。〜かしら。
花間集02
 

13-328《荷葉盃九首,其四》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-511-13-(328) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4102

荷葉盃九首,其四≫顧夐≫髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。


        
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 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
 Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
 
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李白index- 39 《760年上元元年60歳 春、武昌、夏、潯陽に行き、初秋から江南、歴陽の各地に遊ぶ。》李白詩 全詩<李白index- 39> Ⅰ李白詩1110 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4098 
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 ・李商隠詩 (1) 136首の75首・李商隠詩 (2) 135首の61首●韓愈index-1 ・孟郊、張籍と交遊・汴州乱41首●韓愈詩index-2[800年 33歳~804年 37歳]27首●韓愈詩index-3 805年 38歳・]陽山から江陵府 36首●韓愈詩index-4 806年 39歳 江陵府・権知国子博士 51首(1)25首 
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 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoor13-328《荷葉盃九首,其四》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-511-13-(328) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4102  
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 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
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荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

其五

夜久歌聲怨咽,殘月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

歸摩歸,歸摩歸。

 

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

 

 蓼花01

『荷葉杯九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

 

 

(下し文)

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

 

(現代語訳)

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 豆蔻 なつめぐ01

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

 

記得 那時 相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

・那時 そのとき; その時点; その時。

・膽 1 内臓器官の名。六腑の一。「胆汁・胆石・胆嚢(たんのう)/臥薪嘗胆(がしんしょうたん)2 どっしりと落ち着いた精神力。きもったま。

 

鬢亂 四肢柔,泥人 無語 不擡頭。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

・擡頭 ・台頭・抬頭【たいとう】 . 頭を持ち上げること。あるものの勢力が伸び,進出すること。 「新興勢力が-する」. . 上奏文などの中で,高貴の人に関した語を書く時,敬意を示すため行を改め,ほかよりも高く書くこと。

 

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

花間集02
 

13-327《荷葉盃九首,其三》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-510-13-(327) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4097

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。


        
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13-327

《荷葉盃九首,其三》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-510-13-(327)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4097

 


晩菊002

 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

 

其五

夜久歌聲怨咽,殘月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

歸摩歸,歸摩歸。

 

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

pla880014
 

 

『荷葉杯九首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

其三

弱柳好花盡拆,晴陌。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

狂摩狂,狂摩狂。

 

(下し文)

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

(現代語訳)

(都の貴公子男について詠う)

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

 

 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。杏の花001

 

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

 

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

・弱柳 若い柳の細腰の女。弱:若い。柳は細腰の女性を示す。

・好花 艶やかな素敵なぼたんの花の様な女。

・盡拆 ことごとく折る。あの男にかかって折られ、摘み取られてしまう。

・晴陌 晴たる大通り。男は都大路を晴れやかに闊歩するというほどの意。

 

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

・少年郎 少年は1820歳程度の高貴な家のやんちゃな息子たち。郎は、遊郎、檀郎、阮郎、劉郎などプレイボーイをいう。やりたい放題をする富貴の二男坊ということである。李白・杜甫・王維など歌っている。

贈少年 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-56-9-# 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1840

温庭筠『贈少年』

江海相逢客恨多,秋風葉下洞庭波。

酒酣夜別淮陰市,月照高樓一曲歌。

王維 少年行
新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。
相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。
李白 17少年行
少年行      
五陵年少金市東、銀鞍白馬度春風。
落花踏尽遊何処、笑入胡姫酒肆中。
杜甫 少年行

馬上誰家白面郎、臨階下馬坐人牀。
不通姓氏麤豪甚、指點銀瓶索酒嘗。
 
王昌齢『少年行』
走馬遠相尋,西樓下夕陰。結交期一劍,留意贈千金。高閣歌聲遠,重門柳色深。夜闌須盡飲,莫負百年心。
いなせな若者や壮士を詠う。

 

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

・摩 疑問をあらわす語で、~かしら。

 花間集02

13-326《荷葉盃九首,其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-509-13-(326) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4092

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。


        
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 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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13-326《荷葉盃九首,其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-509-13-(326)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4092

 

杏の花0055
 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

弱柳好花盡拆,晴陌。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

狂摩狂,狂摩狂。

 

其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

 

其五

夜久歌聲怨咽,殘月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

歸摩歸,歸摩歸。

 

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

tsuki001
 

 

『荷葉杯九首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

其二

歌發誰家筵上,寥亮。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

愁摩愁,愁摩愁。

 

(下し文)

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

 

(現代語訳)

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

 

Flower1-004
 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

 

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

・寥亮 声や音が澄んだ音色で響き渡るさま。

 

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

・悠悠 1 はるかに遠いさま。限りなく続くさま。2 ゆったりと落ち着いたさま。

・蘭釭 蘭の火灯し皿。

 

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

・摩 疑問をあらわす語で、~かしら。

13-325《荷葉盃九首,其一》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-508-13-(325) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4087

荷葉盃九首,其一》顧(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

        
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13-325《荷葉盃九首,其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-508-13-(325)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4087

 

 

荷葉杯九首 其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

歌發誰家筵上,寥亮。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

愁摩愁,愁摩愁。

 

其三

弱柳好花盡拆,晴陌。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

狂摩狂,狂摩狂。

 

其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

 

其五

夜久歌聲怨咽,殘月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

歸摩歸,歸摩歸。

 

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

采蓮004
 

 

『荷葉杯九首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

荷葉杯九首

其一

春盡小庭花落,寂寞。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

知摩知?知摩知?

 

(下し文)

(荷葉杯九首 

春盡く 小庭花落,寂寞たり

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

(現代語訳)

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

 

 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

 

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

・寂寞 1 ひっそりとして寂しいさま。じゃくまく。「人居を遠く離れた―たる別世界にも」〈柳田・山の人生〉2 心が満たされずにもの寂しいさま。

 

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

・佳期 逢瀬の約束した日。

 

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

・摩 疑問をあらわす語で、~かしら。
采蓮003
 

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13-324《訴衷情二首 其二》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-507-13-(324) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4082

この愁いは耐え忍ぶよりなくいのだ、だって、どこをどうやって探したらよいのかわからないのだから。鴛鴦用の寝牀に独り布団で寝させるなんて恨めしい。私の心を、あなたの心にしたならば、その時初めて我が思いの深さを知るでしょう。

 

        
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
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13-324《訴衷情二首 其二》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-507-13-(324)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4082

 


訴衷情二首 其一

(帰って来ることを待ち侘びて、毎日を過ごす女の心を詠う。)

香滅簾垂春漏永,整鴛衾。

閨にはお香は焚かれることがなく、簾はおろしたままで、春というのに時はただひたすら流れてゆく、それでも、鴛鴦の布団を整えている。

羅帶重,雙鳳,縷黃金。

薄絹をつけ帯を重ねて、裾にはツガイの鳳凰があり、金の縁取りがしてある。

外月光臨,沉沉。

この夜も窓の外は月明かりが一杯に挿すので眺めるけれど、しんしんと静けさがひろがる。

斷腸無處尋,負春心。

悶々とした腸を斬るほど悶えるけれどあの人は何処に行ったやらわからない、待ちのぞんでいるあの人と春の夜を過ごす思いはあきらめる。

(衷情を訴える二首其の一)

香滅し 簾垂れ 春漏 永ければ,鴛衾を整う。

羅帶 重く,雙つながらの鳳,黃金を縷す。

外 月光臨み,沉沉たり。

斷腸 尋ぬる處無く,春心に負る。

 

其二

(どこかに出かけたきり帰らぬ男を待つ女、何時しか時が過ぎて愁いを持ったまま過ごし女ではなくなると恨みを詠う。)

永夜人何處去,來音。

秋の夜長を一人で過ごすのも随分長い、突然、私を放ってどこへ行ってしまったのか。帰ってくる知らせなどなにもない。

香閣掩,眉斂,月將沉。

閏で待つ準備のお香を焚いては消えても十分おおわれているいつの間にか眉間を寄せるようになる、独りで過ごす夜はとても長いはずなのに月が今しも沈みかかるようになっている。(こんなに長く放置されると女ではなくなる。)

怎忍不相尋?鴛孤衾。

この愁いは耐え忍ぶよりなくいのだ、だって、どこをどうやって探したらよいのかわからないのだから。鴛鴦用の寝牀に独り布団で寝させるなんて恨めしい。

換我心為你心,始知相憶深。

私の心を、あなたの心にしたならば、その時初めて我が思いの深さを知るでしょう。


(衷情を訴える二首其の二)

永い夜 人をち 何處にか去る,來音

香閣 掩い,眉斂め,月將に沉まんとす。

怎で忍ばん 相いに尋ねざらんや?鴛 孤衾す。

我が心に換えて你の心を為せば,始めて知る 相いに深く憶うを。

 tsuki001


『訴衷情二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

訴衷情二首其二

永夜人何處去,來音。

香閣掩,眉斂,月將沉。

怎忍不相尋?鴛孤衾。

換我心為你心,始知相憶深。

 

(下し文)

(衷情を訴える二首其の二)

永い夜 人をち 何處にか去る,來音つ。

香閣 掩い,眉斂め,月將に沉まんとす。

怎で忍ばん 相いに尋ねざらんや?鴛 孤衾す。

我が心に換えて你の心を為せば,始めて知る 相いに深く憶うを。

 

(現代語訳)

(どこかに出かけたきり帰らぬ男を待つ女、何時しか時が過ぎて愁いを持ったまま過ごし女ではなくなると恨みを詠う。)

秋の夜長を一人で過ごすのも随分長い、突然、私を放ってどこへ行ってしまったのか。帰ってくる知らせなどなにもない。

閏で待つ準備のお香を焚いては消えても十分おおわれているいつの間にか眉間を寄せるようになる、独りで過ごす夜はとても長いはずなのに月が今しも沈みかかるようになっている。(こんなに長く放置されると女ではなくなる。)

この愁いは耐え忍ぶよりなくいのだ、だって、どこをどうやって探したらよいのかわからないのだから。鴛鴦用の寝牀に独り布団で寝させるなんて恨めしい。

私の心を、あなたの心にしたならば、その時初めて我が思いの深さを知るでしょう。

 

 tsuki04


(訳注)

訴衷情二首

『花間集』には顧夏の作が二首収められている。単調三十七字、十句七平韻二灰韻で単調三十三字、九句六平韻二仄韻で、7❸❷③⑤②⑤③の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『訴衷情』 十三首

 

 

溫庭筠(溫助教庭筠)

 

訴衷情一首

 

 

韋莊(韋相莊)

 

訴衷情二首 其一

 

 

 

 

訴衷情二首 其二

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

訴衷情二首(未掲載)

 

 

 

 

その二(未掲載)

 

 

(顧太尉

 

訴衷情二首

 

 

魏承班(魏太尉承班)

 

訴衷情五首(未掲載)

 

 

 

 

 

 

 


其二

(どこかに出かけたきり帰らぬ男を待つ女、何時しか時が過ぎて愁いを持ったまま過ごし女ではなくなると恨みを詠う。)

 

永夜人何處去,來音。

秋の夜長を一人で過ごすのも随分長い、突然、私を放ってどこへ行ってしまったのか。帰ってくる知らせなどなにもない。

○永夜 期間的に長いこと、1,2、年の長さではない。ずっと長く立ってしまった夜うをいう。

人 出て行くこともわからず、突然に出て行ったことをいう。一夫多妻制の倫理観であること。

○来音 来信、知らせ。

 

香閣掩,眉斂,月將沉。

閏で待つ準備のお香を焚いては消えても十分おおわれているいつの間にか眉間を寄せるようになる、独りで過ごす夜はとても長いはずなのに月が今しも沈みかかるようになっている。(こんなに長く放置されると女ではなくなる。)

○香閤 婦人の寝室。闇は関。

〇月将沈 月は沈もうとしている。将は今に〜しそうだ、の意。月が沈むのは十日過ぎから二十日までの間、月は女性とされ女性でなくなることをイメージさせるもの。

 


怎忍不相尋?鴛孤衾。

この愁いは耐え忍ぶよりなくいのだ、だって、どこをどうやって探したらよいのかわからないのだから。鴛鴦用の寝牀に独り布団で寝させるなんて恨めしい。

○孤衾 寝牀は相当広く、そこでの布団もWベッド以上もある。そこで独り寝する意。

 

換我心為你心,始知相憶深。

私の心を、あなたの心にしたならば、その時初めて我が思いの深さを知るでしょう。

珠櫻001
 


(衷情を訴える二首其の一)

香滅し 簾垂れ 春漏 永ければ,鴛衾を整う。

羅帶 重く,雙つながらの鳳,黃金を縷す。

外 月光臨み,沉沉たり。

斷腸 尋ぬる處無く,春心に負る。

 

其の二

永い夜 人をち 何處にか去る,來音

香閣 掩い,眉斂め,月將に沉まんとす。

怎で忍ばん 相いに尋ねざらんや?鴛 孤衾す。

我が心に換えて你の心を為せば,始めて知る 相いに深く憶うを。
合歓の花

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13-323《訴衷情二首 其一》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-506-13-(323) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4077

(帰って来ることを待ち侘びて、毎日を過ごす女の心を詠う。)悶々とした腸を斬るほど悶えるけれどあの人は何処に行ったやらわからない、待ちのぞんでいるあの人と春の夜を過ごす思いはあきらめる。


        
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杏の花0055
 

訴衷情二首 其一

(帰って来ることを待ち侘びて、毎日を過ごす女の心を詠う。)

香滅簾垂春漏永,整鴛衾。

閨にはお香は焚かれることがなく、簾はおろしたままで、春というのに時はただひたすら流れてゆく、それでも、鴛鴦の布団を整えている。

羅帶重,雙鳳,縷黃金。

薄絹をつけ帯を重ねて、裾にはツガイの鳳凰があり、金の縁取りがしてある。

外月光臨,沉沉。

この夜も窓の外は月明かりが一杯に挿すので眺めるけれど、しんしんと静けさがひろがる。

斷腸無處尋,負春心。

悶々とした腸を斬るほど悶えるけれどあの人は何処に行ったやらわからない、待ちのぞんでいるあの人と春の夜を過ごす思いはあきらめる。

其二

永夜人何處去,來音。

香閣掩,眉斂,月將沉。

怎忍不相尋?鴛孤衾。

換我心為你心,始知相憶深。

 

(衷情を訴える二首其の一)

香滅し 簾垂れ 春漏 永ければ,鴛衾を整う。

羅帶 重く,雙つながらの鳳,黃金を縷す。

外 月光臨み,沉沉たり。

斷腸 尋ぬる處無く,春心に負る。

 

其二

永い夜 人をち 何處にか去る,來音

香閣 掩い,眉斂め,月將に沉まんとす。

怎で忍ばん 相いに尋ねざらんや?鴛 孤衾す。

我が心に換えて你の心を為せば,始めて知る 相いに深く憶うを。

 

pla880014
 

『訴衷情二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

訴衷情二首 其一

香滅簾垂春漏永,整鴛衾。

羅帶重,雙鳳,縷黃金。

外月光臨,沉沉。

斷腸無處尋,負春心。

 

(下し文)

(衷情を訴える二首其の一)

香滅し 簾垂れ 春漏 永ければ,鴛衾を整う。

羅帶 重く,雙つながらの鳳,黃金を縷す。

外 月光臨み,沉沉たり。

斷腸 尋ぬる處無く,春心に負る。

 

(現代語訳)

(帰って来ることを待ち侘びて、毎日を過ごす女の心を詠う。)

閨にはお香は焚かれることがなく、簾はおろしたままで、春というのに時はただひたすら流れてゆく、それでも、鴛鴦の布団を整えている。

薄絹をつけ帯を重ねて、裾にはツガイの鳳凰があり、金の縁取りがしてある。

この夜も窓の外は月明かりが一杯に挿すので眺めるけれど、しんしんと静けさがひろがる。

悶々とした腸を斬るほど悶えるけれどあの人は何処に行ったやらわからない、待ちのぞんでいるあの人と春の夜を過ごす思いはあきらめる。

 

 

(訳注)

訴衷情二首

『花間集』には顧夏の作が二首収められている。単調三十七字、十句七平韻二灰韻で単調三十三字、九句六平韻二仄韻で、7❸❷③⑤②⑤③の詞形をとる。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『訴衷情』 十三首

 

 

溫庭筠(溫助教庭筠)

 

訴衷情一首

 

 

韋莊(韋相莊)

 

訴衷情二首 其一

 

 

 

 

訴衷情二首 其二

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

訴衷情二首(未掲載)

 

 

 

 

その二(未掲載)

 

 

(顧太尉

 

訴衷情二首

 

 

魏承班(魏太尉承班)

 

訴衷情五首(未掲載)

 

 

 

 

 

 

 

其一

(帰って来ることを待ち侘びて、毎日を過ごす女の心を詠う。)

衷情とは? うそいつわりのない心。まごころ。誠意。 「悶々の衷情を訴える。

 

香滅簾垂春漏永,整鴛衾。

閨にはお香は焚かれることがなく、簾はおろしたままで、春というのに時はただひたすら流れてゆく、それでも、鴛鴦の布団を整えている。

 

羅帶重,雙鳳,縷黃金。

薄絹をつけ帯を重ねて、裾にはツガイの鳳凰があり、金の縁取りがしてある。

 

外月光臨,沉沉。

この夜も窓の外は月明かりが一杯に挿すので眺めるけれど、しんしんと静けさがひろがる。

 

斷腸無處尋,負春心。

悶々とした腸を斬るほど悶えるけれどあの人は何処に行ったやらわからない、待ちのぞんでいるあの人と春の夜を過ごす思いはあきらめる。

・斷腸 春の夜を二人で過ごすことが満たされなく悶々とすることをいう。

・無處尋 どこにいるのか尋ねようもない。

・負春心 待ちのぞんでいるあの人と春の夜を過ごす思いに背くことしかできない。どうすることもできないことをいう。
花間集
 

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(天の定めに従わざるを得ないことを詠う)眉を顰めて、色情を模様しているから、もう許しているから、としていたのに、それなのに、屏風を壁に立てかけ、閨に過ごすも物憂さにして、話す人もいないのだ。


        
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應天長

(天の定めに従わざるを得ないことを詠う)

瑟瑟羅裙金線縷,輕透鵝黃香畫袴。

さらさらと衣擦れの鳴る金糸の縫い取りのあるスカート、その下に薄く透く絵模様の黄のズボンから芳しい香りがしてくる。

垂交帶,盤鸚鵡,裊裊翠翹移玉步。

垂らす帯には鸚鵡の絵が交わっていて、簪の翡翠の羽飾り揺らして思わせぶりに歩みを移す。 

背人勻檀炷,慢轉橫波覷。

今度は背を向けて口紅整えて、ゆっくりすこし首をふって流し目にして見てくる。

斂黛春情暗許,倚屏慵不語。

眉を顰めて、色情を模様しているから、もう許しているから、としていたのに、それなのに、屏風を壁に立てかけ、閨に過ごすも物憂さにして、話す人もいないのだ。

 

(天長に應ず)

瑟瑟として羅裙 金の線縷あり,輕やかに鵝黃を透し 畫袴香し。

交帶を垂れ,鸚鵡 盤【わだかま】る,裊裊【じょうじょう】たる翠翹【すいぎょう】玉步を移す。

人に背け 檀を勻【ととの】え炷け,慢【ゆる】やかに橫波を轉じて 【ぬす】み覷る。

黛を斂め 春情 暗に許すも,屏を倚せて慵く語らず。

錦雞鳥00
 

 

『應天長』 現代語訳と訳註

(本文)

應天長

瑟瑟羅裙金線縷,輕透鵝黃香畫袴。

垂交帶,盤鸚鵡,裊裊翠翹移玉步。

背人勻檀炷,慢轉橫波覷。

斂黛春情暗許,倚屏慵不語。

 

 

(下し文)

(應天長)

瑟瑟として羅裙 金の線縷あり,輕やかに鵝黃を透し 畫袴香し。

交帶を垂れ,鸚鵡 盤【わだかま】る,裊裊【じょうじょう】たる翠翹【すいぎょう】玉步を移す。

人に背け 檀を勻【ととの】え炷け,慢【ゆる】やかに橫波を轉じて 【ぬす】み覷る。

黛を斂め 春情 暗に許すも,屏を倚せて慵く語らず。

 

(現代語訳)

(天の定めに従わざるを得ないことを詠う)

さらさらと衣擦れの鳴る金糸の縫い取りのあるスカート、その下に薄く透く絵模様の黄のズボンから芳しい香りがしてくる。

垂らす帯には鸚鵡の絵が交わっていて、簪の翡翠の羽飾り揺らして思わせぶりに歩みを移す。 

今度は背を向けて口紅整えて、ゆっくりすこし首をふって流し目にして見てくる。

眉を顰めて、色情を模様しているから、もう許しているから、としていたのに、それなのに、屏風を壁に立てかけ、閨に過ごすも物憂さにして、話す人もいないのだ。

白芷00
 

 

(訳注)

應天長

花間集 教坊曲『應天長』 六首収められ、顧夐の作は一首収められている。双調四十九字、前段二十七字五句四仄韻、後段二十二字四句四仄韻で、❼❼3❸❼/❺❻❻❺詞形をとる。韋莊、牛嶠、毛文錫の応天長の解説参照。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『應天長』 六首

 

 

韋荘(韋相莊)

 

應天長 二首 其一 

 

 

 

 

應天長 二首 其二

 

 

牛嶠(牛給事嶠)

 

應天長二首 其一

 

 

 

 

應天長二首 其二

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

 

應天長一首

 

 

(顧太尉

 

應天長一首

 

 

 

 

 

 

 

應天長

(天の定めに従わざるを得ないことを詠う)

【解説】 女妓は若くて魅力を振りまいていた。どんな男も女の色香にイチゴロであった、歳を重ねると閨で誰とも話すこともなくなる女妓の一生を詠う。前段は、美しく着飾って、髪飾りを揺らしながら歩みを移す娘の姿について述べる。後段は、男に背を向けて口紅を整え、ゆっくりと横目で男の様子を盗み見て、じらしながら、魅力を振りまいていたが、いまでは屏風を壁に立てかけて使うこともなく、誰とも話すことがなくなった。

 

瑟瑟羅裙金線縷,輕透鵝黃香畫袴。

さらさらと衣擦れの鳴る金糸の縫い取りのあるスカート、その下に薄く透く絵模様の黄のズボンから芳しい香りがしてくる。

○瑟瑟 【しつしつ】① 風が寂しく吹くさま。② 波の立つさま。瑟瑟座【しつしつざ】仏像の台座の一。スカートのすれ音の形容。なお、碧色の形容と解する説もある。

○鵝黃 淡黄色。

○袴 ズボン。

 

垂交帶,盤鸚鵡,裊裊翠翹移玉步。

垂らす帯には鸚鵡の絵が交わっていて、簪の翡翠の羽飾り揺らして思わせぶりに歩みを移す。 

○交帯 結んだ帯。

○裊裊 揺れるさま。

○翠翹 簪の翡翠の羽飾り。

 

背人勻檀炷,慢轉橫波覷。

今度は背を向けて口紅整えて、ゆっくりすこし首をふって流し目にして見てくる。

○勻檀炷 口紅をさして整える。檀は赤色。ここでは口紅のこと。

○慢轉橫波 ゆっくりと流し目をしてちらっと見る。

 

斂黛春情暗許,倚屏慵不語。

眉を顰めて、色情を模様しているから、もう許しているから、としていたのに、それなのに、屏風を壁に立てかけ、閨に過ごすも物憂さにして、話す人もいないのだ。

○斂黛 眉を寄せる。

○春情 ① 春らしいようす。はるげしき。春色。 いろけ。春機。色情。

○倚屏 年を取って、男性が寄り付かなくなった閨の様子をいう。屏風はベットの横に立てかけて個室のようにするためにある。その屏風を壁に倚りかけておいてあることはベットに一人寝することを意味する。この句が現実の今であり、此の句の前にあるすべての句は女が若くて魅力があった時の様子をいうのである。

-321《獻衷心一首》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-504-13-(321) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4067

(帰ってこない人を思い続ける気力も失われたけれど、こんな生活ができている最初の気持ちを思い出さねばならないと詠う。)よくよく考えてみると、黄金で飾られた閨に、きちんとした牀に枕を高くして眠ることが出来ている、初めてそう思ったころのことを思い出さねばならない。

        
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獻衷心

(帰ってこない人を思い続ける気力も失われたけれど、こんな生活ができている最初の気持ちを思い出さねばならないと詠う。)

繡鴛鴦帳暖,畫孔雀屏欹。

鴛鴦の刺繍がきれいな帳の内は暖かい、屏風にはきれいな孔雀が描かれていて寝牀の横におかれていたものだ。

人悄悄,月明時,想昔年懽笑,恨今日分離。

この頃は、あの人も寄り付かず陰鬱な気配の部屋であり、今日も、月が明るく昇ったというのに。哂い転げて過ごした昔の歳月を思い出す。だけど今のこんな別れたままというのはやっぱり恨みに思う。

銀釭背,銅漏永,阻佳期。

閨牀の枕元に置く燭台や銅の水時計も長い間そのままして、着てくれると約束してくれた日もこばまれて、わからなくなった。

小樓煙細,虛閣簾垂。

女のいる離れの小さな高殿にはお香の煙が細やかに漂うだけで、二人で過ごしていた高閣には誰もいなくてただ簾が下がっているだけだ。

幾多心事,暗地思惟。

どうしてこんなにも多くのことを考えさせられるのだろう。こんなにもこの地が暗く、こんなにもただ思うだけなのだろう。

被嬌娥牽役,魂夢如癡。

あの人は、艶めかしく引き止められてそのまま過ごしているだろうと考えたり、そんなことを夢にまで見るようでは、愚かな女になったというようなものではないか。

金閨裡,山枕上,始應知。

よくよく考えてみると、黄金で飾られた閨に、きちんとした牀に枕を高くして眠ることが出来ている、初めてそう思ったころのことを思い出さねばならない。

獻衷心

繡鴛鴦 帳暖たり,畫孔雀 屏欹る。

人悄悄として,月明の時,昔年を想い懽笑し,今日分離するを恨む。

銀釭の背,銅漏の永,佳期を阻む。

小樓 煙細やか,虛閣 簾垂る。

幾多の心事,地を暗くし思惟す。

嬌娥 牽役を被い,魂夢 癡の如し。

金閨の裡,山枕の上,始めて應に知る。

 

魚玄機550034
 

『獻衷心』 現代語訳と訳註

(本文)

獻衷心

繡鴛鴦帳暖,畫孔雀屏欹。

人悄悄,月明時,想昔年懽笑,恨今日分離。

銀釭背,銅漏永,阻佳期。

小樓煙細,虛閣簾垂。

幾多心事,暗地思惟。

被嬌娥牽役,魂夢如癡。

金閨裡,山枕上,始應知。

 

(下し文)

獻衷心

繡鴛鴦 帳暖たり,畫孔雀 屏欹る。

人悄悄として,月明の時,昔年を想い懽笑し,今日分離するを恨む。

銀釭の背,銅漏の永,佳期を阻む。

小樓 煙細やか,虛閣 簾垂る。

幾多の心事,地を暗くし思惟す。

嬌娥 牽役を被い,魂夢 癡の如し。

金閨の裡,山枕の上,始めて應に知る。

 

(現代語訳)

(帰ってこない人を思い続ける気力も失われたけれど、こんな生活ができている最初の気持ちを思い出さねばならないと詠う。)

鴛鴦の刺繍がきれいな帳の内は暖かい、屏風にはきれいな孔雀が描かれていて寝牀の横におかれていたものだ。

この頃は、あの人も寄り付かず陰鬱な気配の部屋であり、今日も、月が明るく昇ったというのに。哂い転げて過ごした昔の歳月を思い出す。だけど今のこんな別れたままというのはやっぱり恨みに思う。

閨牀の枕元に置く燭台や銅の水時計も長い間そのままして、着てくれると約束してくれた日もこばまれて、わからなくなった。

女のいる離れの小さな高殿にはお香の煙が細やかに漂うだけで、二人で過ごしていた高閣には誰もいなくてただ簾が下がっているだけだ。

どうしてこんなにも多くのことを考えさせられるのだろう。こんなにもこの地が暗く、こんなにもただ思うだけなのだろう。

あの人は、艶めかしく引き止められてそのまま過ごしているだろうと考えたり、そんなことを夢にまで見るようでは、愚かな女になったというようなものではないか。

よくよく考えてみると、黄金で飾られた閨に、きちんとした牀に枕を高くして眠ることが出来ている、初めてそう思ったころのことを思い出さねばならない。

 

oborotsuki04
 

(訳注)

獻衷心

唐の教坊の曲名。『花間集』には二首所収。顧夐の作が一首、欧陽烱の作が収められている。六十四字、単調九平韻である。

 

前半三十五字、後半三十一字、三字句が多く可愛らしさを陰僧都蹴るものである。(5⑤ ③③ 5⑤ 33③ / 4④4④ 5④ 33③)(35 31

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『獻衷心』 二首

 

 

歐陽舍人炯

 

獻衷心一首

 

 

(顧太尉

 

獻衷心一首

 

 

 

 

 

 

 

 

獻衷心

(帰ってこない人を思い続ける気力も失われたけれど、こんな生活ができている最初の気持ちを思い出さねばならないと詠う。)

 

繡鴛鴦帳暖,畫孔雀屏欹。

鴛鴦の刺繍がきれいな帳の内は暖かい、屏風にはきれいな孔雀が描かれていて寝牀の横におかれていたものだ。

 

人悄悄,月明時,想昔年懽笑,恨今日分離。

この頃は、あの人も寄り付かず陰鬱な気配の部屋であり、今日も、月が明るく昇ったというのに。哂い転げて過ごした昔の歳月を思い出す。だけど今のこんな別れたままというのはやっぱり恨みに思う。

・悄悄 物悲しさと失望でいっぱいの気鬱 鬱々たる 大腐り 陰々滅々 欝欝たる 湿っぽい 鬱鬱たる 暗然たる 鬱陶しげ うっとうしい 気が重い

・懽笑 笑い転げた。活発に笑う。懽:1 喜ぶ,楽しむ.2((方言)) 形容詞 勢いがよい,活発である,盛んである.

 

銀釭背,銅漏永,阻佳期。

閨牀の枕元に置く燭台や銅の水時計も長い間そのままして、着てくれると約束してくれた日もこばまれて、わからなくなった。

・銀釭 銀の火灯し油皿。閨牀の枕元に置く燭台。

 

小樓煙細,虛閣簾垂。

女のいる離れの小さな高殿にはお香の煙が細やかに漂うだけで、二人で過ごしていた高閣には誰もいなくてただ簾が下がっているだけだ。

 

幾多心事,暗地思惟。

どうしてこんなにも多くのことを考えさせられるのだろう。こんなにもこの地が暗く、こんなにもただ思うだけなのだろう。

 

被嬌娥牽役,魂夢如癡。

あの人は、艶めかしく引き止められてそのまま過ごしているだろうと考えたり、そんなことを夢にまで見るようでは、愚かな女になったというようなものではないか。

・嬌娥 なまめかしい女妓

・癡 1 愚かなこと。また、その人。

 

金閨裡,山枕上,始應知。

よくよく考えてみると、黄金で飾られた閨に、きちんとした牀に枕を高くして眠ることが出来ている、初めてそう思ったころのことを思い出さねばならない。

 

 

 

 

欧陽烱『獻衷心』

(春が来て楽しい日々を暮らしそれが秋まで続いた、仲秋の日に棄てられそれっきりになってしまった女を詠う。)

詩は物語のようで、若いころには、女のもとに足しげく来て一緒に過ごしていたものが、女が年を取ると〔この頃は二十代中盤を過ぎること〕見限られてしまったことを云う。おんなを檀の実に喩えて詠っている。

 

獻衷心

見好花顏色,爭笑東風。

雙臉上,晚粧同。

閑小樓深閣,春景重重。

三五夜,偏有恨,月明中。

情未已,信曾通,滿衣猶自染檀紅。

恨不如雙鷰,飛舞簾櫳。

春欲暮,殘絮盡,柳條空。

献衷心【けんそうしん】

見好し 花顏の色を,東風に笑うを爭う。

雙臉の上に,晚粧 同じゅうす。

小樓を閑かにし閣を深くす,春景 重重たり。

三五の夜,偏えに恨有り,月は明るく中なり。

情 未だ已まず,信 曾通し,滿衣 猶お自ら檀紅に染る。

雙鷰の如からずを恨み,飛舞すは簾櫳のみ。

春も暮んと欲せば,殘絮 盡くし,柳條 空し。

(春が来て楽しい日々を暮らしそれが秋まで続いた、仲秋の日に棄てられそれっきりになってしまった女を詠う。)

若い花のようなはちきれんばかりの赤く染まった顔を見るのがとても好きで、春風の吹くころには笑い声が絶えなかったのです。

両のまぶたの上には夜の化粧をいつもと同じようにするのです

 

奥まったところの高閣が、春の景色がいっぱいであり、その上に春の様相、行事と重なって華やかな暮らしのなかにも静かな離れの小さな楼閣のくらしがあるのです。

それは仲秋まで続き、十五夜の夜のこと、ひたすらに恨みに思うことがありました。それは月が明るく真上の上がった真夜中のことです。

あの人との情事が未だ終わっていないときでしたが心は通い合っておりました。脱ぎ捨てた衣でいっぱいの閨にはそれでもなお、自分自身で檀の葉が紅く色づいていたのです。

恨んでいるのは、ツガイの燕のようにしてくれなくなったことで、飛び交い、舞いを舞うのもこの閨の簾にかこまれたところだけに限られていることなのです。

やがて春も過ぎようとする頃には、残った柳絮もことごとく飛んで行ってしまい、柳の枝でまた会う約束をしていてもそれは空しい思いに変わってしまったのです。

 

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荷葉盃九首,其四≫顧夐≫髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

 

13-328《荷葉盃九首,其四》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-511-13-(328)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4102

 

 

 

荷葉杯九首

其一

(春には逢おうと約束してたのに、もう春も終ろうとしている思い悩んで病気になっても耐えるしかないと諦める女を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている閨の前の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

高楼の手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気にまでなってもただあの人と過ごすという約束の日のことを思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

此れで知ったということなのか本当に知ったのか。此れで知ったということなのか本当に知ったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

其二

(放蕩男を待つ女を詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌の上手いあの人は誰かの家の宴筵席で歌を謡っていることでしょう。澄んだ音色で響き渡っていることでしょう。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

別れてから恨むことばかり、まさにはるか遠くの存在になってしまった。閨には蘭型の燈火をともし、しかし、とばりは後ろに置いて使うことはないけれど、名月がこの高楼を照らすように、愛妾は閨にいるのです。

愁摩愁,愁摩愁。

愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。愁えることしかないのか、やっぱり愁うだけです。

其の二

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁えんや愁う,愁えんや愁う。

 

其三

(都の貴公子男について詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も、あの男にかかって折られてしまう。男は都大路を晴れやかに闊歩する。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

そうなのだ、この都大路の貴公子の檀郎といわれる男だ、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香にも女たちは心打たれてしまうという。

狂摩狂,狂摩狂。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

どっか狂っているのではないか、キットどうかしている。

(其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

記得那時相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

其五

夜久歌聲怨咽,殘月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

歸摩歸,歸摩歸。

 

其六

我憶君詩最苦,知否。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

吟摩吟,吟摩吟。

 

其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

 

其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

 蓼花01

 

『荷葉杯九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

 

 

(下し文)

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

 

(現代語訳)

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

豆蔻 なつめぐ01
 

(訳注)

荷葉杯九首

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。双調二十六字、前段八字二句二仄韻、後段十二字四句四平韻で、❷/⑤⑦③③の詞形をとる。

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『荷葉盃』 十四首

 

 

溫助教庭筠

 

荷葉盃 三首 其一

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其二

 

 

 

 

荷葉盃 三首 其三

 

 

韋荘(韋相莊)

 

荷葉杯二首其一

 

 

 

 

荷葉杯二首其二

 

 

(顧太尉

 

荷葉盃九首

 

 

 

 

 

 

 

其四

(どんなことをいわれても逢瀬を過ごすことから離れることできないという女を詠う。)

 

記得 那時 相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時互にみて確認したものだったけれど、それを見て落ち着いた気持になろうと闘ったのです。

・那時 そのとき; その時点; その時。

・膽 1 内臓器官の名。六腑の一。「胆汁・胆石・胆嚢(たんのう)/臥薪嘗胆(がしんしょうたん)2 どっしりと落ち着いた精神力。きもったま。

 

鬢亂 四肢柔,泥人 無語 不擡頭。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したのですし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったもので、高貴な人とされなくてもいいとまで思ったのです。

・擡頭 ・台頭・抬頭【たいとう】 . 頭を持ち上げること。あるものの勢力が伸び,進出すること。 「新興勢力が-する」. . 上奏文などの中で,高貴の人に関した語を書く時,敬意を示すため行を改め,ほかよりも高く書くこと。

 

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることでしょうか、恥でもいいのです。

それは、愧じなのでしょうか、恥ということでもいいのです。

 花間集02

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花鈿の若い緑に紅い口紅を、二つの瞳は顔に鮮やかな花が咲いたように若々しい、涙が両の頬に二筋の痕があり、眉は春の遠くに山を見るようにひかれている。風に乗せて運んでいた笙の笛は今はやめている。鏡には埃が珠って曇ったままだ。



        
 2014年4月17日の紀頌之5つのブログ 
 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
 Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
 
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 薛濤の全詩花間集(1)花間集(2)花間集(3)花間集(4)花間集(5) 
 魚玄機全詩●花間集(6)●花間集(7)●花間集(8)●花間集(9)●花間集(10) 
 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
 毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻 
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13-320《遐方怨一首》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-503-13-(320)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4062



遐方怨

(今年も春が過ぎ夏が過ぎても、精いっぱいの化粧をし、部屋の繕いもしても音沙汰なく過ぎてしまう。いつしか、歳を重ねてしまい思いだけをしっかりすることとしている)

簾影細,簟紋平。

日が斜めになり簾の細いが下が閨に落す、寝牀の簟のシーツの模様も平らかに敷かれている。

象紗籠玉指,縷金羅扇輕。

うす絹を身に着けて細い指がきれいに整えていて黄金のよじった飾に薄絹の扇を軽やかに揺らす。

嫩紅雙臉似花明,兩條眉黛遠山橫。

花鈿の若い緑に紅い口紅を、二つの瞳は顔に鮮やかな花が咲いたように若々しい、涙が両の頬に二筋の痕があり、眉は春の遠くに山を見るようにひかれている。

風簫歇,鏡塵生。

風に乗せて運んでいた笙の笛は今はやめている。鏡には埃が珠って曇ったままだ。

遼塞音書,夢魂長暗驚。

北の国境の塞から音沙汰が全くなく、夢には出てくるあの人は長い間出て来なくなったことに驚いてしまう。

玉郎經負娉婷,教人爭不恨無情。

どんなに美しいあの人も年を重ねてきて、若い美しい女性をお相手するには難しいでしょうし、そんな人から教えてもらったことは、嫉妬して爭うことはいけないし、恨み言を思う心などなしにしなくてはいけない。


遐方怨【かほうえん】 

簾 影細く,簟の紋 平ぐ。

象紗 籠玉指し,縷金 羅扇 輕し。

嫩紅【どんこう】 雙臉【そうけん】 花に似て明く,兩條 眉黛 遠く山橫る。

風簫 歇み,鏡塵 生ず。

遼塞 音書,夢魂 長暗 驚く。

玉郎 娉婷【へいてい】に負う,人に教う爭うことなし、恨むこと 情無し。

sas0020900


『遐方怨』 現代語訳と訳註

(本文)

遐方怨 

簾影細,簟紋平。

象紗籠玉指,縷金羅扇輕。

嫩紅雙臉似花明,兩條眉黛遠山橫。

風簫歇,鏡塵生。

遼塞音書,夢魂長暗驚。

玉郎經負娉婷,教人爭不恨無情。


(下し文)

遐方怨【かほうえん】 

簾 影細く,簟の紋 平ぐ。

象紗 籠玉指し,縷金 羅扇 輕し。

嫩紅【どんこう】 雙臉【そうけん】 花に似て明く,兩條 眉黛 遠く山橫る。

風簫 歇み,鏡塵 生ず。

遼塞 音書ち,夢魂 長暗 驚く。

玉郎 を經て娉婷【へいてい】に負う,人に教う爭うことなし、恨むこと 情無し。


(現代語訳)

(今年も春が過ぎ夏が過ぎても、精いっぱいの化粧をし、部屋の繕いもしても音沙汰なく過ぎてしまう。いつしか、歳を重ねてしまい思いだけをしっかりすることとしている)

日が斜めになり簾の細いが下が閨に落す、寝牀の簟のシーツの模様も平らかに敷かれている。

うす絹を身に着けて細い指がきれいに整えていて黄金のよじった飾に薄絹の扇を軽やかに揺らす。

花鈿の若い緑に紅い口紅を、二つの瞳は顔に鮮やかな花が咲いたように若々しい、涙が両の頬に二筋の痕があり、眉は春の遠くに山を見るようにひかれている。

風に乗せて運んでいた笙の笛は今はやめている。鏡には埃が珠って曇ったままだ。

北の国境の塞から音沙汰が全くなく、夢には出てくるあの人は長い間出て来なくなったことに驚いてしまう。

どんなに美しいあの人も年を重ねてきて、若い美しい女性をお相手するには難しいでしょうし、そんな人から教えてもらったことは、嫉妬して爭うことはいけないし、恨み言を思う心などなしにしなくてはいけない。

木蘭02


(訳注)

遐方怨

唐の教坊曲で花間集に三首収められている。双調60字、前半30字六句四平韻、後半30字六句四平韻、3③5⑤⑦⑦/3③5⑤⑦⑦の詞形をとる。


 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『遐方怨』 三首

 

 

溫助教庭筠

 

『遐方怨 二首之一』(花半坼)

 

 

 

 

『遐方怨 二首之二 』(憑繡檻)

 

 

(顧太尉

 

遐方怨一首

 

 

 

 

 

 


遠方に出かけて帰る様子のない男を待つ女を詠う。




簾影細,簟紋平。

日が斜めになり簾の細いが下が閨に落す、寝牀の簟のシーツの模様も平らかに敷かれている。


象紗籠玉指,縷金羅扇輕。

うす絹を身に着けて細い指がきれいに整えていて黄金のよじった飾に薄絹の扇を軽やかに揺らす。


嫩紅雙臉似花明,兩條眉黛遠山橫。

花鈿の若い緑に紅い口紅を、二つの瞳は顔に鮮やかな花が咲いたように若々しい、涙が両の頬に二筋の痕があり、眉は春の遠くに山を見るようにひかれている。

○嫩 花鈿は額の蕊と口元にえくぼのように緑のポイントを付ける。新緑。 【嫩い】わかい. 生じたばかりで柔らかい。新しく柔らかい。 【嫩草】わかくさ. 若々しく柔らかい草。 「若草」とも書く。「どんそう」とも読む。 【嫩葉】わかば. 芽生えたばかりに柔らかい葉。 嫩葉 ( どんよう ) 」に同じ。 「若葉」とも書く。


風簫歇,鏡塵生。

風に乗せて運んでいた笙の笛は今はやめている。鏡には埃が珠って曇ったままだ。

○風簫歇 この時代の芸妓の習い事は琴、瑟と笙の笛を吹くのをやめる。風が韶の笛のようになっていたが吹きやんだという意味ではあるが、歳月が経ってしまって、聞かせる人がいないということ。

○鏡塵生 鏡に塵が積もっている、この時代の女性は、自分の意志で外に出ることはなく、待つ身の女性は閨で過ごすだけなので化粧をすることがなくなったことをいうのである。


遼塞音書,夢魂長暗驚。

北の国境の塞から音沙汰が全くなく、夢には出てくるあの人は長い間出て来なくなったことに驚いてしまう。

遼塞 はるかとおくの塞。


玉郎經負娉婷,教人爭不恨無情。

どんなに美しいあの人も年を重ねてきて、若い美しい女性をお相手するには難しいでしょうし、そんな人から教えてもらったことは、嫉妬して爭うことはいけないし、恨み言を思う心などなしにしなくてはいけない。

○娉婷 【へいてい】.女性の)穏やかな美しさがある・こと(さま)。

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13-319《楊柳枝一首》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-502-13-(319) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4057

(別れたのは柳が繁る春のこと、秋の夜長を一人帰りを待つけれど帰る様子は全くない。寂寞の思いで過ごす女を詠う。)秋の夜長、閏にはお香が広がるが待ち人は来ない、さびしく、しずかなうちに思いばかり進んでいく、はるか遠くで水時計の音が聞こえてくる。


 


        
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13-319楊柳枝一首》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-502-13-(319)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4057


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楊柳枝

(別れたのは柳が繁る春のこと、秋の夜長を一人帰りを待つけれど帰る様子は全くない。寂寞の思いで過ごす女を詠う。)

秋夜香閨思寂寥,漏迢迢。

秋の夜長、閏にはお香が広がるが待ち人は来ない、さびしく、しずかなうちに思いばかり進んでいく、はるか遠くで水時計の音が聞こえてくる。

鴛幃羅幌麝煙銷,燭光搖。

鴛鴦の戸帳、薄絹の幌もそのままに、薫香の煙も消えたままだ、灯火の炎だけが揺らぐのをみている。

正憶玉郎遊蕩去,無尋處。

 こんな夜長に思うことと云うのはまさに浮気者のあの人のこと今もどこかでほかの女と遊んでいるだろう、尋ねるすべが全くない。
更聞簾外雨蕭蕭,滴芭蕉。

今夜も眠れぬままに五更の鐘が聞える、簾の外のしとしとと降る雨の音もずっと聞こえている、それは芭蕉の葉に雨が滴っているからだ。 

(楊柳の枝)

秋の夜 閨に香る 思い寂寥たり,漏 迢迢たり。

鴛幃 羅幌 麝煙 銷ゆ,燭光 搖ぐ。

正に憶う 玉郎 遊蕩として去り,尋ぬる處無し。

更 聞く 簾外 雨蕭蕭たり,芭蕉に滴す。

 

 

『楊柳枝』 現代語訳と訳註

(本文)

楊柳枝

秋夜香閨思寂寥,漏迢迢。

鴛幃羅幌麝煙銷,燭光搖。

正憶玉郎遊蕩去,無尋處。

更聞簾外雨蕭蕭,滴芭蕉。

 

 

(下し文)

(楊柳の枝)

秋の夜 閨に香る 思い寂寥たり,漏 迢迢たり。

鴛幃 羅幌 麝煙 銷ゆ,燭光 搖ぐ。

正に憶う 玉郎 遊蕩として去り,尋ぬる處無し。

更 聞く 簾外 雨蕭蕭たり,芭蕉に滴す。

 

(現代語訳)

(別れたのは柳が繁る春のこと、秋の夜長を一人帰りを待つけれど帰る様子は全くない。寂寞の思いで過ごす女を詠う。)

秋の夜長、閏にはお香が広がるが待ち人は来ない、さびしく、しずかなうちに思いばかり進んでいく、はるか遠くで水時計の音が聞こえてくる。

鴛鴦の戸帳、薄絹の幌もそのままに、薫香の煙も消えたままだ、灯火の炎だけが揺らぐのをみている。

 こんな夜長に思うことと云うのはまさに浮気者のあの人のこと今もどこかでほかの女と遊んでいるだろう、尋ねるすべが全くない。

 今夜も眠れぬままに五更の鐘が聞える、簾の外のしとしとと降る雨の音もずっと聞こえている、それは芭蕉の葉に雨が滴っているからだ。
楊柳枝003
 

(訳注)

楊柳枝

『花間集』には顧夐の作が一首収められている。双調四十字、前段二十字四句四平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、⑦③⑦③/❼❸⑦③の詞形をとり、既出の温庭第の楊柳枝⑦⑦7⑦とかなり異なる。皇甫松、牛嶠は溫庭筠と同じである。

【解説】楊柳枝は北の塞に役務で出かけるおとこの無事で帰還することを願ってサイクル上に枝を折ることをいう。春別れを告げることをいう。それが秋に音沙汰がない悲しみを詠うのである。秋は夜が長く、身もだえに苦しむことを意味する。男目線の秋の閏怨の詞。後段は、愛する男を恋しく思い、ただでさえ悲しいのに、しとしとと降る雨の芭蕉の葉に降り落ちる音が、さらに悲しみを誘うことを言う。彼女は雨音が耳について眠れぬままに、おそらく秋の長夜を明かしてしまったことであろう。この詞でも鴛鴦は女性の孤独を際立たせており、彼女は物思いに沈んでいて、気付いた時には香炉の火も消えており、これもまた女の失意消沈を強調する働きをしている。

 

秋夜香閨思寂寥,漏迢迢。

秋の夜長、閏にはお香が広がるが待ち人は来ない、さびしく、しずかなうちに思いばかり進んでいく、はるか遠くで水時計の音が聞こえてくる。

○漏迢迢 夜の長いこと。漏は水時計。ここでは時間の意であるが、迢迢ははるか遠くなのに聞こえてくる、きっとあの人が聞いている水時計の音だろうというほどの意味である。

 

鴛幃羅幌麝煙銷,燭光搖。

鴛鴦の戸帳、薄絹の幌もそのままに、薫香の煙も消えたままだ、灯火の炎だけが揺らぐのをみている。

 

正憶玉郎遊蕩去,無尋處。

こんな夜長に思うことと云うのはまさに浮気者のあの人のこと今もどこかでほかの女と遊んでいるだろう、尋ねるすべが全くない。

○玉郎 美男。ここでは愛しい男の意。

 

更聞簾外雨蕭蕭,滴芭蕉。

今夜も眠れぬままに五更の鐘が聞える、簾の外のしとしとと降る雨の音もずっと聞こえている、それは芭蕉の葉に雨が滴っているからだ。

 

 美女画557
 

 

 

 

皇甫松

楊柳枝二首

其一

春入行宮映翠微,玄宗侍女舞煙絲。

如今柳向空城綠,玉笛何人更把吹。

 

其二

爛熳春歸水國時,王宮殿柳絲垂。

黃鶯長叫空閨畔,西子無因更得知。

 

 

牛嶠

柳枝五首

其一

解凍風來末上青,解垂羅袖拜卿卿。

無端裊娜臨官路,舞送行人過一生。

 

其二

王宮裡色偏深,一簇纖條萬縷金。

不憤錢塘蘇小小,引郎松下結同心。

 

其三

橋北橋南千萬條,恨伊張緒不相饒。

金羈白馬臨風望,認得楊家靜婉腰。

 

其四

狂雪隨風撲馬飛,惹煙無力被春欺。

莫交移入靈和殿,宮女三千又妬伊。

 

其五

裊翠籠煙拂暖波,舞裙新染麴塵羅。

章華臺畔隋堤上,傍得春風爾許多。

 


     
 花間集 楊柳枝 二十四首 
 溫助教庭筠(温庭筠) 楊柳枝八首之一 
   楊柳枝八首之二 
   楊柳枝八首之三 
   楊柳枝八首之四 
   楊柳枝八首之五 
   楊柳枝八首之六 
   楊柳枝八首之七 
   楊柳枝八首之八 
 皇甫先輩松(皇甫松) 楊柳枝二首 
 牛給事嶠(牛嶠) 柳枝五首 
     
     
 張舍人泌(張泌) 柳枝一首 
 和學士凝(和凝) 柳枝三首  其一 
   柳枝三首  其二 
   柳枝三首 其三 
     
 顧太尉敻(顧敻) 楊柳枝一首 
 孫少監光憲(孫光憲) 楊柳枝四首 
     

13-318《酒泉子七首,其七》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-501-13-(318) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4052

(又春が来ると眉にしわが残るものの口紅には期待の紅をさす。しかしあの人は来ない。何もする気になれず春は終わっていく。)黛を書くと恨みに思うのが出てしまう、口紅を指すと思い出で恥じらう様子になる。かがやく奇麗な高楼に日差しがそそぎ春は終わろうとしている。

        
 2014年4月15日の紀頌之5つのブログ 
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 index-5 806年39歳 50首の(2)25首index-6[807年~809年 42歳]20首index-7[810年~811年 44歳] 34首index-8 [812年~814年47歳]46首index-9[815年~816年 49歳] 57首index-10[817年~818年 51歳]・「平淮西碑」28首 
 index-11 819年 52歳 ・『論佛骨表』左遷 38首index-12 820年 53歳 ・9月國子祭酒に。18首index-13 821年~822年 55歳 22首index-14 823年~824年 57歳・病気のため退職。没す。 14首韓愈 哲学・儒学「五原」賦・散文・上奏文・碑文など 
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 杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首 
 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
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 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
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13-318《酒泉子七首,其七》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-501-13-(318)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4052

 

 

酒泉子七首 其一

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

丹念な化粧もしないからか鏡に埃がかかっているし、頬をつたうなみだは真珠をつないだように流れていて、起ち居振舞もあの凛とした姿かたちはなくなってしまった。

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。

酒泉子七首其二其二

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

登臨,花滿樹,信沉沉。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。

(酒泉子七首其の二)

羅帶 縷金【るきん】あり,蘭麝【らんじゃ】煙凝り 魂斷えたり。

畫屏 欹【そばだ】ち,雲鬢亂れ,恨 任難し。

幾つも迴して淚を垂し鴛衾に滴し,薄情 何處にか去らん。

登って臨み,花 樹に滿ち,信 沉沉【ちんちん】たり

 

酒泉子七首其三

(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

小檻日斜,風度綠人悄悄。

閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

翡翠の飾りのとばりが静かに蔽っている底にはツガイの鸞王が描かれている。香炉には消えた古い香がそのままになっている。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

別れてもまたこの閨に来てくれると心に思うことはあの人の思いばかりで他のことは考えられない、若くて美しい顔は見ると少し老けたように見える。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

白粉を上に塗って化粧を整えた顔に涙の痕がついている、どうしても心は沈んでもうあの人のことは思い出すこともできなくなってしまう。

 

(酒泉子七首 其の三)

小檻 日斜めなり,風 綠度り 人悄悄たり。

翠幃 閑に掩う 雙鸞舞い,舊香 寒し。

情緒を別來して 轉た判り難し,韶顏 卻老るを看る。

粉上に依稀れにして 啼痕有り,魂銷すを暗くす。

haqro04

 

酒泉子七首其四

(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

あのころはまだ、眉が少し薄く書き、唇の赤は、色濃いまま、黒髪は少女のあげまきに結った髪を、人目につかないように、はやりのおおきな雲型に油でかためた髪型にしてもらった。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

その後、小さな鴛鴦のように過し、黄金と翡翠で飾った部屋になっていく、ひとの心とはそういったものだ。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

錦色の鱗のように輝くお人はここにはいないもの静かな思いだけが伝わってくる。海ツバメが春になれば巣づくりにこのきらびやかなお座敷に帰って来たけれど、また去って行った。

隔年書,千點淚,恨難任。

今では重陽の日に届けてくれるお手紙も来なくなって、あるのは沢山の涕の痕、うらみにおもうことだしていてはいけないのに。 

(酒泉子七首其の四)

黛薄く紅深し,綠鬟【りょくかん】雲膩【うんじ】を約掠【やくりゃく】す。

小さき鴛鴦たり,金の翡翠に,人心を稱す。

錦鱗 處に無く 幽意を傳え,海鷰【かいえん】春に蘭堂にあるも又た去る。

年書隔り,千點の淚に,恨み 任せ難し。

鸂鶒けいせき001
 

其五

(秋には帰ると言って別れたのに、幾度の秋を過す。また今年も秋が過ぎてしまう女を詠う)

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

又夏が来て、以前には菱の花でいっぱいになっていた。でも翡翠も、花鈿も拾い集め、納めてしまって、お顔に飾るのはもうやめにした。

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

玉虫の飾り、輝くツガイの燕、大切な飾りの化粧箱を閉じたまま、恨みはたまっていくばかり。

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

雲型の髪に上の方に丸型に高く固めた髪が半ば崩れて垂れていて、竹の簪も下にずれているのに物憂げにそのままにしている。涙が枕に浸みこんで濡れたままになっている。

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

閨の寝牀のとばりを背にした恨みの燈燭が夢を見ることと深酔いに向かわせる。もう秋のおわるのか、雁が南に向かう。

 

(其の五)

卻て菱花に掩う,翠鈿を收拾し 上面に休む。

金蟲 玉鷰 香奩に鏁し,恨み猒猒たり。

雲鬟【うんかん】半ば墜ち 重篸懶く,淚侵して山枕濕す。

背帳に恨燈し 夢と方【なら】んで酣す,鴈 南に飛ぶ。

其六

(幸せな春を全て背負って生活していた愛妾が年を重ねて、思うようなことが全くできなくなると詠う)

水碧風清,入檻細香紅藕膩。

水際の高楼には水の青さに影を落とし、清々しい風が吹き抜けてゆく。女の閨には細やかな行の香りが広がり紅もしっかりと化粧をしっかりと整えている。

謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。

あの娘には春がすべてあつまり恨みに思うことなど一生ないと思ってた、ところが屏風を斜めの立てかけるようになってしまった。

憎蕩子不還家,謾留羅帶結。

浮気者、遊び人の男は家に帰ってこなくなり、憎むことに堪えねばならなくなっていき、うす絹を付けたり、帯を結んだりすることさえ怠るようになってゆく。

帳深枕膩炷沉煙,負當年。

閨のとばりの奥には、枕に油垢に汚れ、香をひとたきくゆらせることもしなくなっている。ことしも思うようにならない。 

(酒泉子七首其の六)

水碧りに風清く,入檻にる細香 紅く藕膩す。

謝娘 斂翠し 恨み涯に無く,小屏 斜めなり。

憎むに堪ゆ 蕩子 家に還らざるを,謾留して 羅帶結ぶ。

帳深くし 枕膩し 炷 煙り沉む,當年に負う。

 

酒泉子七首其七

(又春が来ると眉にしわが残るものの口紅には期待の紅をさす。しかしあの人は来ない。何もする気になれず春は終わっていく。)

黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。

黛を書くと恨みに思うのが出てしまう、口紅を指すと思い出で恥じらう様子になる。かがやく奇麗な高楼に日差しがそそぎ春は終わろうとしている。

殘花微雨隔青樓,思悠悠。

満開の花の残りが小雨に濡れている、春の出来事のあの樓閣での事はもう無くなって随分経っている。

芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。

草花が美しく咲きにおっているこの季節は見るだけでまさに過ぎてしまう。心が満たされずにもの寂しい閨にはあの人はいない、また独り言を言うだけだ。

畫羅襦,香粉,不勝愁。

絵柄のうす絹肌襦袢はそのまま、お香も焚かず、お化粧も崩れたままにしている、それは愁いの気持ちでずっといるからだ。

 

(酒泉子七首其の七)

黛は怨り紅は羞らう,畫堂に掩映し春暮れんと欲す。

花殘り 雨微かなり 青樓に隔り,思うは悠悠たり。

芳菲の時節 看 將に度り,寂寞 人無く 還た獨り語る。

畫の羅襦,香粉,愁に勝らず。

 

紅梅00
 


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13-317《酒泉子七首,其六》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-500-13-(317) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4047

(幸せな春を全て背負って生活していた愛妾が年を重ねて、思うようなことが全くできなくなると詠う)水際の高楼には水の青さに影を落とし、清々しい風が吹き抜けてゆく。女の閨には細やかな行の香りが広がり紅もしっかりと化粧をしっかりと整えている。


        
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(秋には帰ると言って別れたのに、幾度の秋を過す。また今年も秋が過ぎてしまう女を詠う)又夏が来て、以前には菱の花でいっぱいになっていた。でも翡翠も、花鈿も拾い集め、納めてしまって、お顔に飾るのはもうやめにした。

        
 2014年4月13日の紀頌之5つのブログ 
 ●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場 
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 杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首 
 ●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている 
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集 Fc2ブログ342 韓昌黎集 巻二 43 《縣齋有懷(陽山縣齋作,時貞元二十一年順宗新即位)》 韓愈kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞 fc2ブログ 4036 (04/13) 
        
 ●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集 
 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性 LiveDoor13-316《酒泉子七首,其五》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-499-13-(316) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4042 
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 温庭筠66首 花間集1・2巻皇甫松11首 花間集二巻韋莊47首 花間集二巻薛昭蘊19首 花間集三巻牛嶠31首 花間集三・四巻張泌27首 花間集四巻 
 毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻 
 魏承班15首 花間集8・9巻鹿虔扆6首 花間集9巻閻選8首 花間集9巻尹鶚6首 花間集9巻毛熙震29首 花間集9・10巻李珣39首 花間集10巻 
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13-316《酒泉子七首,其五》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-499-13-(316)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4042

 

 

酒泉子七首 其一

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

丹念な化粧もしないからか鏡に埃がかかっているし、頬をつたうなみだは真珠をつないだように流れていて、起ち居振舞もあの凛とした姿かたちはなくなってしまった。

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。

酒泉子七首其二其二

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

登臨,花滿樹,信沉沉。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。

(酒泉子七首其の二)

羅帶 縷金【るきん】あり,蘭麝【らんじゃ】煙凝り 魂斷えたり。

畫屏 欹【そばだ】ち,雲鬢亂れ,恨 任難し。

幾つも迴して淚を垂し鴛衾に滴し,薄情 何處にか去らん。

登って臨み,花 樹に滿ち,信 沉沉【ちんちん】たり

 

酒泉子七首其三

(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

小檻日斜,風度綠人悄悄。

閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

翡翠の飾りのとばりが静かに蔽っている底にはツガイの鸞王が描かれている。香炉には消えた古い香がそのままになっている。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

別れてもまたこの閨に来てくれると心に思うことはあの人の思いばかりで他のことは考えられない、若くて美しい顔は見ると少し老けたように見える。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

白粉を上に塗って化粧を整えた顔に涙の痕がついている、どうしても心は沈んでもうあの人のことは思い出すこともできなくなってしまう。

 

(酒泉子七首 其の三)

小檻 日斜めなり,風 綠度り 人悄悄たり。

翠幃 閑に掩う 雙鸞舞い,舊香 寒し。

情緒を別來して 轉た判り難し,韶顏 卻老るを看る。

粉上に依稀れにして 啼痕有り,魂銷すを暗くす。

haqro04

 

酒泉子七首其四

(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

あのころはまだ、眉が少し薄く書き、唇の赤は、色濃いまま、黒髪は少女のあげまきに結った髪を、人目につかないように、はやりのおおきな雲型に油でかためた髪型にしてもらった。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

その後、小さな鴛鴦のように過し、黄金と翡翠で飾った部屋になっていく、ひとの心とはそういったものだ。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

錦色の鱗のように輝くお人はここにはいないもの静かな思いだけが伝わってくる。海ツバメが春になれば巣づくりにこのきらびやかなお座敷に帰って来たけれど、また去って行った。

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(酒泉子七首其の四)

黛薄く紅深し,綠鬟【りょくかん】雲膩【うんじ】を約掠【やくりゃく】す。

小さき鴛鴦たり,金の翡翠に,人心を稱す。

錦鱗 處に無く 幽意を傳え,海鷰【かいえん】春に蘭堂にあるも又た去る。

年書隔り,千點の淚に,恨み 任せ難し。

鸂鶒けいせき001
 

其五

(秋には帰ると言って別れたのに、幾度の秋を過す。また今年も秋が過ぎてしまう女を詠う)

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

又夏が来て、以前には菱の花でいっぱいになっていた。でも翡翠も、花鈿も拾い集め、納めてしまって、お顔に飾るのはもうやめにした。

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

玉虫の飾り、輝くツガイの燕、大切な飾りの化粧箱を閉じたまま、恨みはたまっていくばかり。

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

雲型の髪に上の方に丸型に高く固めた髪が半ば崩れて垂れていて、竹の簪も下にずれているのに物憂げにそのままにしている。涙が枕に浸みこんで濡れたままになっている。

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

閨の寝牀のとばりを背にした恨みの燈燭が夢を見ることと深酔いに向かわせる。もう秋のおわるのか、雁が南に向かう。

 

(其の五)

卻て菱花に掩う,翠鈿を收拾し 上面に休む。

金蟲 玉鷰 香奩に鏁し,恨み猒猒たり。

雲鬟【うんかん】半ば墜ち 重篸懶く,淚侵して山枕濕す。

背帳に恨燈し 夢と方【なら】んで酣す,鴈 南に飛ぶ。

花間集
 

 

『酒泉子七首,其五』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子七首,其五

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

 

 

(下し文)

(其の五)

卻て菱花に掩う,翠鈿を收拾し 上面に休む。

金蟲 玉鷰 香奩に鏁し,恨み猒猒たり。

雲鬟【うんかん】半ば墜ち 重篸懶く,淚侵して山枕濕す。

背帳に恨燈し 夢と方【なら】んで酣す,鴈 南に飛ぶ。

 

(現代語訳)

(秋には帰ると言って別れたのに、幾度の秋を過す。また今年も秋が過ぎてしまう女を詠う)

又夏が来て、以前には菱の花でいっぱいになっていた。でも翡翠も、花鈿も拾い集め、納めてしまって、お顔に飾るのはもうやめにした。

玉虫の飾り、輝くツガイの燕、大切な飾りの化粧箱を閉じたまま、恨みはたまっていくばかり。

雲型の髪に上の方に丸型に高く固めた髪が半ば崩れて垂れていて、竹の簪も下にずれているのに物憂げにそのままにしている。涙が枕に浸みこんで濡れたままになっている。

閨の寝牀のとばりを背にした恨みの燈燭が夢を見ることと深酔いに向かわせる。もう秋のおわるのか、雁が南に向かう。

 

 

(訳注)

酒泉子七首,其五

『花間集』には顧夐の作が七首収められている。双調四十字、前段十九字五句二平韻二仄韻、後段二十一字五句二平韻で、④❼❼③/⑦57③の詞形をとる。

 

其五

(秋には帰ると言って別れたのに、幾度の秋を過す。また今年も秋が過ぎてしまう女を詠う)

 

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

又夏が来て、以前には菱の花でいっぱいになっていた。でも翡翠も、花鈿も拾い集め、納めてしまって、お顔に飾るのはもうやめにした。

○翠鈿 翡翠石と金細工を花鈿として額に付ける。

溫庭筠『菩薩蠻 九』

牡丹花謝聲歇,綠楊滿院中庭月。
相憶夢難成,背窗燈半明。
翠鈿金壓臉,寂寞香閨掩。
人遠淚闌幹,燕飛春又殘。

牡丹 花謝【お】ち 鶯聲歇【や】む,綠楊【りょくよう】院に滿ち 中庭の月。
相憶【そうおく】の夢 成し難く,窗を背に燈び明りを半ばにする。
翠鈿【すいてん】の金 臉【ほほ】に壓【くず】す,寂寞【せきばく】として香 閨に掩う。
人遠く淚 闌幹【らんかん】し,燕飛 春 又殘る。

 

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

玉虫の飾り、輝くツガイの燕、大切な飾りの化粧箱を閉じたまま、恨みはたまっていくばかり。

○鏁 錠・鏁・鎖〔動詞「鏈る」の連用形から〕 金属製の輪をつないだひも状のもの。 「懐中時計の-」 -につながれた猛獣」 物と物とを結び付けているもの。きずな。

○「香奩」は化粧道具を収める箱》漢詩で、女性の姿態や男女の恋愛感情などを写した艶麗な詩体。

○猒猒 安泰的な樣子をいう。荀子•儒效:「猒猒兮其能長久也。」とある。

 

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

雲型の髪に上の方に丸型に高く固めた髪が半ば崩れて垂れていて、竹の簪も下にずれているのに物憂げにそのままにしている。涙が枕に浸みこんで濡れたままになっている。

○篸 竹の簪。

 

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

閨の寝牀のとばりを背にした恨みの燈燭が夢を見ることと深酔いに向かわせる。もう秋のおわるのか、雁が南に向かう。
nanda019
 

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(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

 


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花間集 教坊曲『酒泉子』二十六首

 

 

温庭筠(溫助教庭筠)

 酒泉子四首 (一)

 

 

 

(二) 

 

 

 

(三) 

 

 

 

(四) 

 

 

韋荘(韋相莊)

酒泉子一首

 

 

牛嶠(牛給事嶠)

酒泉子一首

 

 

張泌(張舍人泌)

 酒泉子二首之一

 

 

 

   二首之二

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

酒泉子一首

 

 

牛希済(牛學士希濟)

酒泉子一首

 

 

(顧太尉

 酒泉子七首

 

 

孫光憲(孫少監光憲)

 酒泉子三首

 

 

毛熙震(毛秘書熙震)

 酒泉子二首

 

 

李絢(李秀才珣)

 酒泉子四首

 

 

 

 

 

 

 

 

酒泉子七首

其一(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

 

其二(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

登臨,花滿樹,信沉沉。

 

其三(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

小檻日斜,風度綠人悄悄。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

 

其四(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

隔年書,千點淚,恨難任。

 

其五

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

 

其六

水碧風清,入檻細香紅藕膩。

謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。

堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。

帳深枕膩炷沉煙,負當年。

 

其七

黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。

殘花微雨隔青樓,思悠悠。

芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。

畫羅襦,香粉,不勝愁。

 

 

酒泉子七首 其一

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

丹念な化粧もしないからか鏡に埃がかかっているし、頬をつたうなみだは真珠をつないだように流れていて、起ち居振舞もあの凛とした姿かたちはなくなってしまった。

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。

酒泉子七首其二其二

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

登臨,花滿樹,信沉沉。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。

(酒泉子七首其の二)

羅帶 縷金【るきん】あり,蘭麝【らんじゃ】煙凝り 魂斷えたり。

畫屏 欹【そばだ】ち,雲鬢亂れ,恨 任難し。

幾つも迴して淚を垂し鴛衾に滴し,薄情 何處にか去らん。

登って臨み,花 樹に滿ち,信 沉沉【ちんちん】たり

 

酒泉子七首其三

(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

小檻日斜,風度綠人悄悄。

閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

翡翠の飾りのとばりが静かに蔽っている底にはツガイの鸞王が描かれている。香炉には消えた古い香がそのままになっている。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

別れてもまたこの閨に来てくれると心に思うことはあの人の思いばかりで他のことは考えられない、若くて美しい顔は見ると少し老けたように見える。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

白粉を上に塗って化粧を整えた顔に涙の痕がついている、どうしても心は沈んでもうあの人のことは思い出すこともできなくなってしまう。

 

(酒泉子七首 其の三)

小檻 日斜めなり,風 綠度り 人悄悄たり。

翠幃 閑に掩う 雙鸞舞い,舊香 寒し。

情緒を別來して 轉た判り難し,韶顏 卻老るを看る。

粉上に依稀れにして 啼痕有り,魂銷すを暗くす。

haqro04

 

酒泉子七首其四

(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

あのころはまだ、眉が少し薄く書き、唇の赤は、色濃いまま、黒髪は少女のあげまきに結った髪を、人目につかないように、はやりのおおきな雲型に油でかためた髪型にしてもらった。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

その後、小さな鴛鴦のように過し、黄金と翡翠で飾った部屋になっていく、ひとの心とはそういったものだ。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

錦色の鱗のように輝くお人はここにはいないもの静かな思いだけが伝わってくる。海ツバメが春になれば巣づくりにこのきらびやかなお座敷に帰って来たけれど、また去って行った。

隔年書,千點淚,恨難任。

今では重陽の日に届けてくれるお手紙も来なくなって、あるのは沢山の涕の痕、うらみにおもうことだしていてはいけないのに。 

(酒泉子七首其の四)

黛薄く紅深し,綠鬟【りょくかん】雲膩【うんじ】を約掠【やくりゃく】す。

小さき鴛鴦たり,金の翡翠に,人心を稱す。

錦鱗 處に無く 幽意を傳え,海鷰【かいえん】春に蘭堂にあるも又た去る。

年書隔り,千點の淚に,恨み 任せ難し。

鸂鶒けいせき001
 

 

酒泉子七首其四』 現代語訳と訳註

(本文)

其四

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

隔年書,千點淚,恨難任。

 

 

(下し文)

(酒泉子七首其の四)

黛薄く紅深し,綠鬟【りょくかん】雲膩【うんじ】を約掠【やくりゃく】す。

小さき鴛鴦たり,金の翡翠に,人心を稱す。

錦鱗 處に無く 幽意を傳え,海鷰【かいえん】春に蘭堂にあるも又た去る。

年書隔り,千點の淚に,恨み 任せ難し。

 

(現代語訳)

(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

あのころはまだ、眉が少し薄く書き、唇の赤は、色濃いまま、黒髪は少女のあげまきに結った髪を、人目につかないように、はやりのおおきな雲型に油でかためた髪型にしてもらった。

その後、小さな鴛鴦のように過し、黄金と翡翠で飾った部屋になっていく、ひとの心とはそういったものだ。

錦色の鱗のように輝くお人はここにはいないもの静かな思いだけが伝わってくる。海ツバメが春になれば巣づくりにこのきらびやかなお座敷に帰って来たけれど、また去って行った。

今では重陽の日に届けてくれるお手紙も来なくなって、あるのは沢山の涕の痕、うらみにおもうことだしていてはいけないのに。

杏の花0055
 

(訳注)

酒泉子七首 其四

『花間集』には顧夐の作が七首収められている。双調四十字、前段十九字五句二平韻二仄韻、後段二十一字五句二平韻で、④❼3❸③/⑦③の詞形をとる。

 

其四

(少女の時に芸妓の世界に入って、身請けしてもらったものの出世した男はやがて来なくなり、手紙さえ来なくなった。)

 

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

あのころはまだ、眉が少し薄く書き、唇の赤は、色濃いまま、黒髪は少女のあげまきに結った髪を、人目につかないように、はやりのおおきな雲型に油でかためた髪型にしてもらった。

○約掠 約束が守られず苦しむこと。・約 ①結ぶ。②積める。③しめ来る④倹約する⑤悩む、苦しむ。⑥おおむね。

・掠 ① すきをねらってすばやく盗む。 「すきをみて,カキを-・めてきた」 (多く「目をかすめて」の形で)ある人のすきをねらう。③鞭打つ④くるしむ。

○綠鬟 あげまきに結った髪。転じて、その髪を結った少女・小間使い。

○雲膩 雲型に油を使って固めた髪型。

 

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

その後、小さな鴛鴦のように過し、黄金と翡翠で飾った部屋になっていく、ひとの心とはそういったものだ。

○鴛鴦 仲が良い夫婦を「おしどり夫婦」と呼ぶが、鳥類のオシドリは、冬ごとに毎年パートナーを替える。 抱卵はメスのみが行う。育雛も夫婦で協力することはない。

○翡翠 深緑の半透明な宝石のひとつ。閨にかざられるのはかわせみの羽のこと。

⋆この聯は、最高に可愛がってもらっている時期を示す。

 

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

錦色の鱗のように輝くお人はここにはいないもの静かな思いだけが伝わってくる。海ツバメが春になれば巣づくりにこのきらびやかなお座敷に帰って来たけれど、また去って行った。

○錦鱗 色彩の美しい魚。

○幽意 幽遠な心と静閑な感情.

○蘭堂 蘭の香りに包まれた奥座敷。男を迎えるため用意の出来たの閨。

 

隔年書,千點淚,恨難任。

今では重陽の日に届けてくれるお手紙も来なくなって、あるのは沢山の涕の痕、うらみにおもうことだしていてはいけないのに。
花間集02

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(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。


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13-314《酒泉子七首,其三》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-497-13-(314)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4032

 

 

酒泉子七首 其一

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

丹念な化粧もしないからか鏡に埃がかかっているし、頬をつたうなみだは真珠をつないだように流れていて、起ち居振舞もあの凛とした姿かたちはなくなってしまった。

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。

酒泉子七首其二其二

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

登臨,花滿樹,信沉沉。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。

(酒泉子七首其の二)

羅帶 縷金【るきん】あり,蘭麝【らんじゃ】煙凝り 魂斷えたり。

畫屏 欹【そばだ】ち,雲鬢亂れ,恨 任難し。

幾つも迴して淚を垂し鴛衾に滴し,薄情 何處にか去らん。

登って臨み,花 樹に滿ち,信 沉沉【ちんちん】たり

 

酒泉子七首其三

(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

小檻日斜,風度綠人悄悄。

閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

翡翠の飾りのとばりが静かに蔽っている底にはツガイの鸞王が描かれている。香炉には消えた古い香がそのままになっている。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

別れてもまたこの閨に来てくれると心に思うことはあの人の思いばかりで他のことは考えられない、若くて美しい顔は見ると少し老けたように見える。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

白粉を上に塗って化粧を整えた顔に涙の痕がついている、どうしても心は沈んでもうあの人のことは思い出すこともできなくなってしまう。

 

(酒泉子七首 其の三)

小檻 日斜めなり,風 綠度り 人悄悄たり。

翠幃 閑に掩う 雙鸞舞い,舊香 寒し。

情緒を別來して 轉た判り難し,韶顏 卻老るを看る。

粉上に依稀れにして 啼痕有り,魂銷すを暗くす。

haqro04
 

 

酒泉子七首其三』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子七首 其三

小檻日斜,風度綠人悄悄。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

 

 

(下し文)

(酒泉子七首 其の三)

小檻 日斜めなり,風 綠に度り 人悄悄たり。

翠幃 閑に掩う 雙鸞舞い,舊香 寒し。

情緒を別來して 轉た判り難し,韶顏 卻老るを看る。

粉上に依稀れにして 啼痕有り,魂銷すを暗くす。

 

(現代語訳)

(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。

翡翠の飾りのとばりが静かに蔽っている底にはツガイの鸞王が描かれている。香炉には消えた古い香がそのままになっている。

別れてもまたこの閨に来てくれると心に思うことはあの人の思いばかりで他のことは考えられない、若くて美しい顔は見ると少し老けたように見える。

白粉を上に塗って化粧を整えた顔に涙の痕がついている、どうしても心は沈んでもうあの人のことは思い出すこともできなくなってしまう。

花間集
 

 

(訳注)

酒泉子七首 其三

『花間集』には顧夐の作が七首収められている。双調四十字、前段十九字五句二平韻二仄韻、後段二十一字五句二平韻で、④❼❼③/⑦57③の詞形をとる。

 

其三

(棄てられた女が初夏の昼下がりに閨で過ごす、どんなに思い続けても諦めるよりほかないのか、愁いで少し老けてしまう女を詠う。)

 

小檻日斜,風度綠人悄悄。

閨に西に傾いた日が射しこむ、風が緑色の枠の窓を抜けて、 静かでもの寂しく一人過ごす部屋を吹き抜けわたる。

・小檻 この時代の女性は一人で出かけることはできず、閨で全て過すもので小さな檻と可愛らしく表現した。まだ若い女性の場合に用いられる表現である。・綠 窗部分を緑の色に飾り塗りしてあるものでそこにうす絹を張ってあるが、晩春から初夏以降にかけてはこれを外すと風が抜けてゆく。

・日斜 日が西に傾きかけると部屋にひがさし始めることをいうが、同時に女性が若い盛りから老けはじめたことをイメージさせるものである。

悄悄 1 元気がなく、うちしおれているさま。悄然。2 静かでもの寂しいさま。

 

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

翡翠の飾りのとばりが静かに蔽っている底にはツガイの鸞王が描かれている。香炉には消えた古い香がそのままになっている。

・翠幃 翡翠で飾られたとばり。

・舞雙鸞 とばりに描かれているツガイの鸞鳥、伝説の鳥である鳳凰。富貴のものの愛妾と考えられるのはこの語である。

 

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

別れてもまたこの閨に来てくれると心に思うことはあの人の思いばかりで他のことは考えられない、若くて美しい顔は見ると少し老けたように見える。

・韶顏 若くて美しい顔。

 

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

白粉を上に塗って化粧を整えた顔に涙の痕がついている、どうしても心は沈んでもうあの人のことは思い出すこともできなくなってしまう。
DCF00207
 

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花間集 教坊曲『酒泉子』二十六首

 

 

溫助教庭筠

 酒泉子四首 (一)

 

 

 

(二) 

 

 

 

(三) 

 

 

 

(四) 

 

 

韋相莊

酒泉子一首

 

 

牛嶠(牛給事嶠)

酒泉子一首

 

 

張舍人泌

 酒泉子二首之一

 

 

 

   二首之二

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

酒泉子一首

 

 

牛學士希濟

酒泉子一首

 

 

(顧太尉

 酒泉子七首

 

 

孫少監光憲

 酒泉子三首

 

 

毛秘書熙震

 酒泉子二首

 

 

李秀才珣

 酒泉子四首

 

 

 

 

 

 



酒泉子七首

其一(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。


其二(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

登臨,花滿樹,信沉沉。


其三

小檻日斜,風度綠人悄悄。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。


其四

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

隔年書,千點淚,恨難任。


其五

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。


其六

水碧風清,入檻細香紅藕膩。

謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。

堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。

帳深枕膩炷沉煙,負當年。


其七

黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。

殘花微雨隔青樓,思悠悠。

芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。

畫羅襦,香粉,不勝愁。

珠櫻001

酒泉子七首 其一

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

丹念な化粧もしないからか鏡に埃がかかっているし、頬をつたうなみだは真珠をつないだように流れていて、起ち居振舞もあの凛とした姿かたちはなくなってしまった。

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。



酒泉子七首其二其二

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

登臨,花滿樹,信沉沉。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。


(酒泉子七首其の二)

羅帶 縷金【るきん】あり,蘭麝【らんじゃ】煙凝り 魂斷えたり。

畫屏 欹【そばだ】ち,雲鬢亂れ,恨 任難し。

幾つも迴して淚を垂し鴛衾に滴し,薄情 何處にか去らん。

登って臨み,花 樹に滿ち,信 沉沉【ちんちん】たり



酒泉子七首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

其二

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

登臨,花滿樹,信沉沉。


(下し文)

(酒泉子七首其の二)

羅帶 縷金【るきん】あり,蘭麝【らんじゃ】煙凝り 魂斷えたり。

畫屏 欹【そばだ】ち,雲鬢亂れ,恨 任難し。

幾つも迴して淚を垂し鴛衾に滴し,薄情 何處にか去らん。

登ってに臨み,花 樹に滿ち,信 沉沉【ちんちん】たり。


(現代語訳)

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。



(訳注)

酒泉子七首 其二

『花間集』には顧夐の作が七首収められている。双調四十字、前段十九字五句二平韻二仄韻、後段二十一字五句二平韻で、④❻3❸③/⑦③の詞形をとる。


其二

(帰らぬ男を思う無気力になっていく女性の情を詠う。)

夜長の秋も過ぎてしまい、無気力になってしまう。気持ち替えて江楼に登ると春真っ盛り、ずっと便りも来ないので気も萎えてしまう。帰らぬ男を思う女性の情を詠う。。



羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

金糸の縫い取りの帯もそのままおかれ、独り閨に蘭麝の香はひろがったままで煙は濃くただようまま、おんなの魂は気持ちを維持することが出来ない。


畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

思い出の絵屏風は斜めにしたままだし、雲型の髪は乱れたまま、恨みはもう堪えることができない。


幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

涙で濡らして布団を何度変えるけれど鴛鴦模様の掛け布団はまた涙を流してしまう。薄情な彼の人はいずこに行ってしまったのだろう。

鴛衾 雌雄仲睦まじいオシドリを借りて女の孤独を際立たせる。


登臨,花滿樹,信沉沉。

高楼に上って窓から遠くを臨む、いつの間にか花は木々にいっぱい咲く良き時節になっている、いまも便り一つ来ないのでまた気持ちは沈んでゆく。

○信沈沈 便りの全くなくて気持ちが堕ちこんでゆくこと。


 


杏の花001

13-312《酒泉子七首,其一》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-495-13-(312) 花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4022

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2014年4月9日

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杜甫詩(1)736~751年 青年期・李白と交遊期・就活の詩 53首杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73首(青年期・就活の詩) 杜甫詩(3)755年~756年、45歳 安史の乱に彷徨う 26首杜甫詩(4)作時757年、46歳 安史軍捕縛、脱出、左拾遺 43首杜甫詩(5)758年;乾元元年、47歳 左拾遺、朝廷疎外、左遷 53首杜甫詩 (6)759年;乾元二年、48歳 三吏三別 官を辞す 44首
杜甫詩(7)759年;乾元二年、48歳 秦州抒情詩 66首杜甫詩(8)作時759年、48歳 秦州発、同谷紀行、成都紀行 36首杜甫詩(9)760年;上元元年、49歳 成都浣花渓草堂 45首杜甫詩(10)761年;上元二年、50歳 成都浣花渓草堂 82首杜甫詩(11)762年寶應元年 杜甫51歳  浣花渓草堂~蜀中転々 43首杜甫詩(12)762年寶應元年 杜甫51歳 蜀中転々 49首
●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集 Fc2ブログ
      
●花間集全詩●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩。唐から五代詩詞。花間集
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毛文錫31首 花間集5巻牛希濟11首 花間集5巻欧陽烱17首 花間集5・6巻和凝20首 花間集6巻顧夐56首 花間集6・7巻孫光憲47首 花間集7・8巻
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13-312《酒泉子七首,其一》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-495-13-(312)  花間集 巻第七漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4022

 

 

 

 

 

 

 

 

花間集 教坊曲『酒泉子』二十六首

 

 

溫助教庭筠

 酒泉子四首 (一)

 

 

 

(二) 

 

 

 

(三) 

 

 

 

(四) 

 

 

韋相莊

酒泉子一首

 

 

牛嶠(牛給事嶠)

酒泉子一首

 

 

張舍人泌

 酒泉子二首之一

 

 

 

   二首之二

 

 

毛文錫(毛司徒文錫)

酒泉子一首

 

 

牛學士希濟

酒泉子一首

 

 

(顧太尉

 酒泉子七首

 

 

孫少監光憲

 酒泉子三首

 

 

毛秘書熙震

 酒泉子二首

 

 

李秀才珣

 酒泉子四首

 

 

 

 

 

 

 

 

酒泉子七首

其一(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

 

其二

羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。

畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。

幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。

登臨,花滿樹,信沉沉。

 

其三

小檻日斜,風度綠人悄悄。

翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。

別來情緒轉難判,韶顏看卻老。

依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

 

其四

黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。

小鴛鴦,金翡翠,稱人心。

錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。

隔年書,千點淚,恨難任。

 

其五

掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。

金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。

雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。

恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

 

其六

水碧風清,入檻細香紅藕膩。

謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。

堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。

帳深枕膩炷沉煙,負當年。

 

其七

黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。

殘花微雨隔青樓,思悠悠。

芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。

畫羅襦,香粉,不勝愁。

 

酒泉子七首 其一

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

杏花愁,鶯正語,畫樓東。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。

鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

丹念な化粧もしないからか鏡に埃がかかっているし、頬をつたうなみだは真珠をつないだように流れていて、起ち居振舞もあの凛とした姿かたちはなくなってしまった。

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。

花間集02
 

酒泉子七首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子七首 其一

楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。

錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

 

(下し文)

(酒泉子七首 其一)

楊柳 風に舞い,春煙の殘雨に輕やかに惹る。

杏花 愁い,鶯 正に語り,畫樓の東に。

錦屏 寂寞として 思い窮り無く,還是たりて 消息を知らざれり。

鏡 塵生じ,珠淚 滴り,儀容を損う。

 

(現代語訳)

(愁いで崩れた年増女妓(家妓・愛妾)の孤閏の悲しみを詠う。)

楊と柳は吹く風に舞い揺れる。春景色に春雨が降りやんで、靄が漂っているとどうしてもあの人とのことを考えてしまう。

盛春に咲き誇る杏花も同じであのひとがこないと愁えてしまうし、鶯が春を告げる一番の時期も同じように思ってしまう、梁景色のきらびやかな東側の高楼のなかで春めいた心を動かされてしまう。

閨の錦の屏風、むなして、さびしくて、あの人を思うのにたえることができない。相も変わらず知らせはないし、何処にいるのかわからない。