牛嶠 女冠子四首其四
雙飛雙舞,春晝後園鶯語。卷羅幃。錦字書封了,銀河鴈過遲。
鴛鴦排寶帳,荳蔻繡連枝。不語勻珠淚,落花時。
(春の日中、後宮の寝殿の庭で鶯のように語り合い、二つ並んで飛び、二つ揃って舞う、若くして子を作り、連枝に名を縫いこまれはしても、花が散るように、忘れ去られ、妃嬪は涙をするばかり。)
牛嶠《巻四45女冠子四首 其四》『花間集』196全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6252
(改訂版Ver.2.1)
女冠子四首
牛嶠(生卒年不詳),字を松卿といい,また延峰ともいった。隴西(今の甘肅省西部)の人,唐の宰相、牛僧孺の孫である。唐の僖宗、878年乾符元年の進士,拾遺,補尚書郎を歷任した。王建が蜀の鎮守になると,牛嶠は判官に任じられ、王建が建国して帝を称えると給事中等職に任じられ,故に後の人は “牛給事”と稱した。牛嶠博學、文才有り,詩は李賀に學んだ,尤も其の詞を以って世に聞く,現在《歌詩集》三捲あったことは知られているが今日うしなわれていて傳わらない。花間集に三十二首収められている。
(改訂版Ver.2.1)
女冠子四首其一
女冠子四首其の一(若くてアイドルのような女冠が初め恋をした有様を詠う)
綠雲高髻,點翠勻紅時世。月如眉。
黒髪が輝き両鬢の雲型に高くした髷のもとどり姿、翡翠が鏤められた髪飾り、若い人に流行の赤くきれいな頬紅の化粧をする、それに新月のような眉を書いている。
淺笑含雙靨,低聲唱小詞。
恥しがってすこし笑うと両の頬にえくぼができる、低い声で短冊に書き込んだ短篇詞譜をうたっている。
眼看唯恐化,魂蕩欲相隨。
鏡を見るとただ変わっていくのが恐ろしいし、落ち着かず蕩心であってもいい、連れ立って歩きたいと思っている。
玉趾迴嬌步,約佳期。
耀く歌を謡って庭をいっしょに歩いてまわればその声は余韻として広がり、また、逢瀬の期日約束をする。
(女冠子四首 其の一)
綠雲の高髻,點翠 勻紅しく 時世なり。月 眉の如し。
淺笑 雙靨を含み,低聲 小詞を唱う。
眼看 唯だ化を恐れ,魂蕩 相い隨わんと欲す。
玉趾して嬌步迴り,佳期を約す。
(改訂版Ver.2.1)
女冠子四首其二
(後蜀の後宮に美女がそろい、この春、寵愛を受ける妃賓に最高の飾り身支度に包まれ、それが久しく続くと詠う。)
錦江煙水,卓女燒春濃美。小檀霞。
錦江の水面は春の煙がただよい、卓文君をおもわせる宮女がならび、温む燒春の新酒の美酒が用意され、宮女はきれいに紫紅色の化粧をととのえる。
繡帶芙蓉帳,金釵芍藥花。
鸞の刺繍の帯、芙蓉の帳、金の簪、芍薬の花、限りの無いほどの寵愛を受けているさまでいっぱい。
額黃侵膩髮,臂釧透紅紗。
そのうえ、生え際までの黄色の額に花鈿の化粧をして、紅色の紗の袖に腕輪が透けて見える。
柳暗鶯啼處,認郎家。
柳が緑色濃く繁り、陰を暗くする頃、鶯が囀るあたり、愛しき君の邸宅が見える。
(女冠子四首其二)
錦江の煙水,卓女の燒春 濃美なり。小檀霞【しょうだんか】。
繡帶【しゅうたい】芙蓉の帳,金釵 芍藥の花。
額黃【がくこう】膩髮【じはつ】を侵し,臂釧【ひせん】紅紗【こうさ】に透ける。
柳 暗く 鶯 啼く處,郎が家を認む。
女冠子四首其三
女冠詞四首その三(禁断の園には、今年も春の盛りが来て杏の花の香りに包まれる、一時期の寵愛であったかもしれないが、それを夢見て暮らすと詠う)
星冠霞帔,住在蘂珠宮裏。佩叮噹。
星の如く宝玉を鏤めた冠、霓裳羽衣の美しくて軽やかな衣装、額の中心に黄色い花鈿の化粧をし、その中心に真珠を付けていて宮殿の内に住んでいる。そこには佩びの音がなりひびく。
明翠搖蟬翼,纖珪理宿粧。
翡翠のとばりを明るく照らされ蝉の翼が揺れ、きめのこまかい白粉の粉を宵越しの化粧をしている。
醮壇春艸綠,藥院杏花香。
災厄を消除する祭祀の祭壇には春草が一斉に伸びて一面緑に変っている。禁苑の囲いの庭には満面の花で、もう杏花の香りがいっぱいに広がる。
青鳥傳心事,寄劉郎。
恋の使者である青鳥よ伝えてくれ 心にある思いを、あのおかたに寄せるこの詩を。
其の三
星の冠 霞の帔,住むは蘂珠【ずいしゅ】宮裏に在る。佩し、叮し、噹す。
翠を明し 蟬翼搖れ,纖珪 宿粧を理す。
醮壇【しょうだん】 春艸【しゅんそう】の綠,藥院【やくいん】 杏花の香。
青鳥 心事を傳へ,劉郎に寄す。
(改訂版Ver.2.1)
女冠子四首其四
雙飛雙舞,春晝後園鶯語。卷羅幃。
離れる事は無いと二つ並んで飛び、二つ揃って舞う、春の日中、後宮の寝殿の庭で鶯のように語り合う、そして、仙郷月宮に遊び、うす絹で袋のように包まれ、巻かれる。
錦字書封了,銀河鴈過遲。
すぐれて美しい詩句、書、慕って送る手紙もすべてやりつくし、銀河をとぶ、あの雁さえも過ぎ去るときも遅くなる。
鴛鴦排寶帳,荳蔻繡連枝。
鴛鴦は宝の幃の中で排卵をし、にくづくの花のように、若くして子を作り、連枝に縫いこまれる。
不語勻珠淚,落花時。
そして、花が散る時がやってくる、いま、語る人もなく真珠の玉のような涙をおとしつづける。
(女冠子四首其の四)
雙ながら飛び 雙ながら舞い,春の晝 後園 鶯 語る。羅幃を卷く。
錦字 書 封じ了し,銀河 鴈 遲れて過る。
鴛鴦 寶帳に排し,荳蔻 連枝を繡する。
語らずして珠淚に勻【あまね】し,落花の時。
(改訂版Ver.2.1)
『女冠子』 現代語訳と訳註
(本文)女冠子四首其四
雙飛雙舞,春晝後園鶯語。卷羅幃。
錦字書封了,銀河鴈過遲。
鴛鴦排寶帳,荳蔻繡連枝。
不語勻珠淚,落花時。
(下し文)
(女冠子四首其の四)
雙ながら飛び 雙ながら舞い,春の晝 後園 鶯 語る。羅幃を卷く。
錦字 書 封じ了し,銀河 鴈 遲れて過る。
鴛鴦 寶帳に排し,荳蔻 繡 枝を連る。
語らずして珠淚に勻【あまね】し,落花の時。
(現代語訳)
(春の日中、後宮の寝殿の庭で鶯のように語り合い、二つ並んで飛び、二つ揃って舞う、若くして子を作り、連枝に名を縫いこまれはしても、花が散るように、忘れ去られ、妃嬪は涙をするばかり。)
離れる事は無いと二つ並んで飛び、二つ揃って舞う、春の日中、後宮の寝殿の庭で鶯のように語り合う、そして、仙郷月宮に遊び、うす絹で袋のように包まれ、巻かれる。
すぐれて美しい詩句、書、慕って送る手紙もすべてやりつくし、銀河をとぶ、あの雁さえも過ぎ去るときも遅くなる。
鴛鴦は宝の幃の中で排卵をし、にくづくの花のように、若くして子を作り、連枝に縫いこまれる。
そして、花が散る時がやってくる、いま、語る人もなく真珠の玉のような涙をおとしつづける。
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