張泌 蝴蝶兒 一首
蝴蝶兒,晚春時,阿嬌初著淡黃衣,倚䆫學畫伊。
還似花間見,雙雙對對飛。
無端和淚拭鷰脂,惹教雙翅垂。
(若い女が楽しく手習いをしていて窓辺で蝶の絵を描く、庭の花の間にはツガイの朝が舞う、自分は何時まで一人なのか、先行き不安であるとそのさまを詠う。)かわいらしい蝶が舞い、春もおわろうとする頃、阿矯ちゃんは初めて大人の装いの薄黄の衣を身に着けた。こんどは窓近くいて、習いたての絵、それも胡蝶の絵を描いている。
張泌《巻五04蝴蝶兒 一首》『花間集』205全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6297
蝴蝶兒 一首
(若い女が楽しく手習いをしていて窓辺で蝶の絵を描く、庭の花の間にはツガイの朝が舞う、自分は何時まで一人なのか、先行き不安であるとそのさまを詠う。)
蝴蝶兒,晚春時,阿嬌初著淡黃衣,倚䆫學畫伊。
かわいらしい蝶が舞い、春もおわろうとする頃、阿矯ちゃんは初めて大人の装いの薄黄の衣を身に着けた。こんどは窓近くいて、習いたての絵、それも胡蝶の絵を描いている。
還似花間見,雙雙對對飛。
咲き乱れている花間に蝶がみえ、二つながら、一つになって留まっているし、番となりて並んで飛んでいる。
無端和淚拭鷰脂,惹教雙翅垂。
訳もなく涙を落して絵がにじんでしまった、蝴蝶は対になって楽しそうに飛んでいるのに比べ、自分は独りなので、つい、わけもなく涙が出たのだ、絵にそんなことを引き起こしたので、燕脂の色で拭ってみると、胡蝶の羽が垂れ下れてしまった。もう、楽しく飛ぶ蝶ではなくなってしまった。
(蝴蝶兒【こちょうじ】)
蝴蝶兒,晚春の時,阿嬌【あきょう】初めて淡黃の衣を著けて,䆫に倚り 伊【これ】を畫くを學ぶ。
還た花間 見るに似たり,雙雙とし 對對として飛ぶ。
端無くも淚を和して 鷰脂【えんし】を拭【ぬぐい】,惹【さそ】いて雙翅【そうし】垂れ教【し】む。
『蝴蝶兒』 現代語訳と訳註
(本文)
蝴蝶兒 一首
蝴蝶兒,晚春時,阿嬌初著淡黃衣,倚䆫學畫伊。
還似花間見,雙雙對對飛。
無端和淚拭鷰脂,惹教雙翅垂。
(下し文)
(蝴蝶兒【こちょうじ】)
蝴蝶兒,晚春の時,阿嬌【あきょう】初めて淡黃の衣を著けて,䆫に倚り 伊【これ】を畫くを學ぶ。
還た花間 見るに似たり,雙雙とし 對對として飛ぶ。
端無くも淚を和して 鷰脂【えんし】を拭【ぬぐい】,惹【さそ】いて雙翅【そうし】垂れ教【し】む。
(現代語訳)
(若い女が楽しく手習いをしていて窓辺で蝶の絵を描く、庭の花の間にはツガイの朝が舞う、自分は何時まで一人なのか、先行き不安であるとそのさまを詠う。)
かわいらしい蝶が舞い、春もおわろうとする頃、阿矯ちゃんは初めて大人の装いの薄黄の衣を身に着けた。こんどは窓近くいて、習いたての絵、それも胡蝶の絵を描いている。
咲き乱れている花間に蝶がみえ、二つながら、一つになって留まっているし、番となって並んで飛んでいる。
訳もなく涙を落して絵がにじんでしまった、蝴蝶は対になって楽しそうに飛んでいるのに比べ、自分は独りなので、つい、わけもなく涙が出たのだ、絵にそんなことを引き起こしたので、燕脂の色で拭ってみると、胡蝶の羽が垂れ下れてしまった。もう、楽しく飛ぶ蝶ではなくなってしまった。
(訳注)
蝴蝶兒
(若い女が楽しく手習いをしていて窓辺で蝶の絵を描く、庭の花の間にはツガイの朝が舞う、自分は何時まで一人なのか、先行き不安であるとそのさまを詠う。)
描かれた番の蝶は、楽しそうで花から花へと並び飛ぶえであったものが、ほかの女のもとに行った男を思い、思わず絵に涙を落とす。そして、慌てて濡れた腋脂の色をぬぐうと、蝶の絵は二枚の羽を垂れた姿に変わったと述べる。媒の絵を見て悔しい思い涙を落とした。
『花間集』には張泌の一首のみ所収。曲名が作品冒頭の語になっていること、またこの曲名の作品は、張泌以外にはないことからすると、彼の創作曲である。双調四十字、前段十八字四句四平韻、後段二十二字四句三平韻で、③③⑦⑤/5⑤⑦⑤の詞形をとる。
蝴蝶兒 一首
蝴蝶兒 晚春時
阿嬌初著淡黃衣 倚䆫學畫伊
還似花間見 雙雙對對飛
無端和淚拭鷰脂 惹教雙翅垂
○●○ ●○○
○△○△△○△ △○●●○
○●○△● ○○●●○
○○△●●●○ ●△○●○
蝴蝶兒,晚春時,阿嬌初著淡黃衣,倚䆫學畫伊。
かわいらしい蝶が舞い、春もおわろうとする頃、阿矯ちゃんは初めて大人の装いの薄黄の衣を身に着けた。こんどは窓近くいて、習いたての絵、それも胡蝶の絵を描いている。
・胡蝶児 胡蝶に同じ。児は接尾辞。多く愛らしいものや小さいものに付ける。「・・・・ちゃん」という雰囲気の類。児童、子どもの意味はない。
・阿嬌 漢の武帝の従妹の名。武帝が「若得阿嬌,當以金屋貯之。」と言い、後に皇后とした。ここでは、美少女の意味で使われている。阿は呼びかけの接頭語。ここでは少女を意味する。「かわいこちゃん」という雰囲気の類。
・淡黄 アオギリ科の落葉高木。樹皮は緑色。葉は大形で手のひら状に三~五つに裂け、柄は長い。夏に、淡黄色の雄花と雌花がまじって咲き、果実は、種子のついた舟形のさやが放射状につく。庭木・街路樹とし、材は楽器・家具用。梧桐 (ごどう) 。《季 夏》
・倚窗 窓に寄り添い。
・學畫 絵を学ぶ。
・伊 指示代名詞。ここでは蝶を指す。
還似花間見,雙雙對對飛。
咲き乱れている花間に蝶がみえ、二つながら、一つになって留まっているし、番となりて並んで飛んでいる。
・還似 まるで…みたい。なおも…のごとく。
・花間 花の咲き乱れているところ。
・見 出会う。
・雙雙 あちらで二匹、こちらで二匹という具合に、ならんで飛んでいるさま。
・對對 あちらで一対、こちらで一対という具合に、対になって飛んでいるさま。
・還似花間見 この句は男女の関係、性交を云うもので、花が女で、蝶が男ということでの花間に見るようだということ『花間集』の象徴ともいえるものである。還は、やはり。だからこそ、絵の蝶は「やはり」花の間を飛ぶ、本当の蝶のようだの意。好きな人とうまくいっている時には、思うことも、絵にかいても二つ、つがいに書くという女心を云う。今だったら相合傘を書くということだ。
無端和淚拭鷰脂,惹教雙翅垂。
訳もなく涙を落して絵がにじんでしまった、蝴蝶は対になって楽しそうに飛んでいるのに比べ、自分は独りなので、つい、わけもなく涙が出たのだ、絵にそんなことを引き起こしたので、燕脂の色で拭ってみると、胡蝶の羽が垂れ下れてしまった。もう、楽しく飛ぶ蝶ではなくなってしまった。
・無端 ゆえなく。わけもなく。端なくも。
・和涙 涙と共に。
・拭臙脂 (絵を描いている)べにをぬぐう。涙がべにを流し去ったということ。
・惹 引き起こす。















