玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

後宮 妃嬪 艶情詞

17 毛熙震《巻十10酒泉子二首其二》『花間集』463全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7579

毛熙震  酒泉子二首其二

鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。

曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。

(妃嬪の初夜の様子を詠う)

金銀細工の飾りを入れておく小箱から鳳凰の髪飾りを出して髪に飾って踊る。浦に隠れたり部隊の前に出たり頬を赤らめて魅力を振りまき、緑の黒髪を整える。月明かりが髪を梳いて行く様に斜めに照らす、髪脂で固めた雲型の髷鬘が魅力的である呑み、お化粧の香りは素通りして寒々しい。気が付けば、夜明けのひかりが花を照らすと、微かにシワを寄せて笑い転げているようだ。しなやかなかんざし、金の燕が柔らかに揺れる。その日初めての朝を迎え日は昇る、簾は半ば巻き上げて、夜化粧の残りを整える。 

《花間集》463巻十10

酒泉子二首其二

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7579

(改訂版Ver.2.1

13魏承班

前蜀の詞人

930年前後に在世

 

 

 

 

花間集 教坊曲 《酒泉子》 二十二首

韋莊

巻三24酒泉子  月落星沉,樓上美人春睡。綠雲傾,金枕膩,畫屏深。子規啼破相思夢,曙色東方纔動。柳煙輕,花露重,思難任。

牛嶠

巻四22酒泉子  記得去年,煙暖杏園。花正發,雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟,落梅粧。

張泌

巻四42酒泉子二首其一  春雨打,驚夢覺來天氣曉。畫堂深,紅焰小,背蘭缸。酒香噴鼻懶開缸,惆悵更無人共醉。舊巢中,新鷰子,語雙雙

張泌

巻四43酒泉子二首其二  紫陌青門,三十六宮春色。御溝輦路暗相通,杏園風。咸陽沽酒寶釵空,笑指未央歸去。插花走馬落殘紅,月明中。

毛文錫

巻五07酒泉子  綠樹春深,鷰語鶯啼聲斷續。蕙風飄蕩入芳叢,惹殘紅。柳絲無力裊煙空,金盞不辭須滿酌。海棠花下思朦朧,醉香風。

牛希濟

巻五43酒泉子  枕轉簟涼,清曉遠鐘殘夢。月光斜、簾影動,舊鑪香。夢中盡相思事,纖手勻雙淚。去年書,今日意,斷離腸。

顧夐

巻七09酒泉子七首其一  楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

顧夐

巻七10酒泉子七首其二  羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。登臨,花滿樹,信沉沉

顧夐

巻七11酒泉子七首其三  小檻日斜,風度綠人悄悄。翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。別來情緒轉難判,韶顏看卻老。依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

顧夐

巻七12酒泉子七首其四  黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。小鴛鴦,金翡翠,稱人心。錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。隔年書,千點淚,恨難任。

顧夐

巻七13酒泉子七首其五  掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

顧夐

巻七14酒泉子七首其六  水碧風清,入檻細香紅藕膩。謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。帳深枕膩炷沉煙,負當年。

顧夐

巻七15酒泉子七首其七  黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。殘花微雨隔青樓,思悠悠。芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。畫羅襦,香粉,不勝愁。

孫光憲

巻八17酒泉子三首其一  空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

孫光憲

巻八18酒泉子三首其二  曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲,鬱離襟。展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

孫光憲

巻八19酒泉子三首其三  斂態前,裊裊雀釵頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

毛熙震

《巻十09巻十酒泉子二首其一》  閑臥繡幃,慵想萬般情寵。錦檀偏,翹股重,翠雲欹。暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。

毛熙震

《巻十10酒泉子二首其二》  鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。

李珣

《巻十38酒泉子四首其一》  寂寞青樓,風觸繡簾珠翠撼。月朦朧,花暗澹,鏁春愁。尋思往事依稀夢,淚臉露桃紅色重。鬢欹蟬。釵墜鳳,思悠悠。

李珣

《巻十39酒泉子四首其二》  雨清花零,紅散香凋池兩岸。別情遙,春歌斷,掩銀屏。孤帆早晚離三楚,閑理鈿箏愁幾許?曲中情,絃上語,不堪聽。

李珣

《巻十40酒泉子四首其三》  秋雨聯綿,聲散敗荷叢裏。那堪深夜枕前聽,酒初醒。牽愁惹思更無停,燭暗香凝天欲曉。細和煙,冷和雨,透簾中。

李珣

《巻十41酒泉子四首其四》  秋月嬋娟,皎潔碧紗外。照花穿竹冷沉沉,印池心。凝露滴,砌蛩吟,驚覺謝娘殘夢。夜深斜傍枕前來,影徘徊。

 

酒泉子二首

 

酒泉子二首其一

(これ以上ないほどの寵愛を受けていても、子が生まれないとやがて忘れられるものである)

閑臥繡幃,慵想萬般情寵。

鳳凰の刺繍のとばりの内に静かに横になっている、寵愛を受けているので、何をするにも物憂げになってしまう。

錦檀偏,翹股重,翠雲欹。

寝牀の上には、錦の敷物が乱れてしまい、二人待度々重なり合う、翡翠の雁を付けた妃嬪と雲となりお方は寄り添っている。

暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。

夕暮れになると寝牀のまわりに屏風を立てられ、屏風の絵の春の山の影となる。お香の煙は辺りに漂いその場所は他の所を隔てる様に漂う。

蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。

品性高潔な妃嬪であっても、やがて、あの方を思うことはできても、逢瀬は夢の中の事となってゆき、何時しか両眉の間み深いしわが出来ている。

 

酒泉子二首其の一

繡幃に閑かに臥せて,慵く想う 萬般 情寵を。

錦檀偏り,翹股重り,翠雲欹てる。

暮天 屏上 春山碧り,香を映す 煙霧隔つを。

蕙蘭の心,魂夢の役,蛾眉を斂す。

 

酒泉子二首其二

(妃嬪の初夜の様子を詠う)

鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。

金銀細工の飾りを入れておく小箱から鳳凰の髪飾りを出して髪に飾って踊る。浦に隠れたり部隊の前に出たり頬を赤らめて魅力を振りまき、緑の黒髪を整える。

月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。

月明かりが髪を梳いて行く様に斜めに照らす、髪脂で固めた雲型の髷鬘が魅力的である呑み、お化粧の香りは素通りして寒々しい。

曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。

気が付けば、夜明けのひかりが花を照らすと、微かにシワを寄せて笑い転げているようだ。しなやかなかんざし、金の燕が柔らかに揺れる。

日初昇,簾半掩,對殘粧。

その日初めての朝を迎え日は昇る、簾は半ば巻き上げて、夜化粧の残りを整える。

 

(酒泉子二首其の二)

鈿匣から舞う鸞を,隱れ映して豔紅 碧を脩む。

月 斜に梳き,鬢膩を雲にすれども,粉香 寒し。

曉花 微かに斂し 輕ろく呵展し,裊釵 金鷰軟かなり。

日は初めて昇り,簾は半ば掩う,殘粧に對す。

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『酒泉子二首,其二』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子二首其二

鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。

月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。

曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。

日初昇,簾半掩,對殘粧。

 

(下し文)

酒泉子二首其二

鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。

月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。

曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。

日初昇,簾半掩,對殘粧。

 

(現代語訳)

(妃嬪の初夜の様子を詠う)

金銀細工の飾りを入れておく小箱から鳳凰の髪飾りを出して髪に飾って踊る。浦に隠れたり部隊の前に出たり頬を赤らめて魅力を振りまき、緑の黒髪を整える。

月明かりが髪を梳いて行く様に斜めに照らす、髪脂で固めた雲型の髷鬘が魅力的である呑み、お化粧の香りは素通りして寒々しい。

気が付けば、夜明けのひかりが花を照らすと、微かにシワを寄せて笑い転げているようだ。しなやかなかんざし、金の燕が柔らかに揺れる。

その日初めての朝を迎え日は昇る、簾は半ば巻き上げて、夜化粧の残りを整える。

moon4733
 

 

(訳注)

酒泉子二首其二

(妃嬪の初夜の様子を詠う)

『花間集』には毛熙震の作が二首収められている。双調四十字、前段十九字五句二仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、④③/❼❺3❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は④③/⑦733③の詞形をとる。

鈿匣舞  隱映豔紅脩

月梳斜 雲鬢  粉香

曉花微斂輕呵  裊釵金鷰

日初 簾半  對殘

△●●○  ●●●○○●

●○○ ○●●  ●○○

●○○●△△●  ●○○●●

●○○ ○●●  ●○○

 

鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。

金銀細工の飾りを入れておく小箱から鳳凰の髪飾りを出して髪に飾って踊る。浦に隠れたり部隊の前に出たり頬を赤らめて魅力を振りまき、緑の黒髪を整える。

鈿匣 花鈿、金銀の細工物、簪などを入れておく小箱。良家の子女はその身分を示す簪を大切に持参してくるものだし、妃嬪の地位に召された際、司宝司からその地位に値する宝飾が贈られる。この句は、初夜の準備をいう。

 

月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。

月明かりが髪を梳いて行く様に斜めに照らす、髪脂で固めた雲型の髷鬘が魅力的である呑み、お化粧の香りは素通りして寒々しい。

月梳斜 ここでの月は妃嬪の顔を言い、透かしの髪を両鬢のかける髪型をいう。

雲鬢膩 その地位に見合った髪脂で固めた鬘をつける。重くて大きいもの。

粉香寒 化粧を施せば明るく穏やかになる物だが、小尾では、初夜のため緊張した様子をいう。

 

曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。

気が付けば、夜明けのひかりが花を照らすと、微かにシワを寄せて笑い転げているようだ。しなやかなかんざし、金の燕が柔らかに揺れる。

呵展 1 しかる。どなる。とがめる。「呵責(かしゃく)2 大きな声で笑うさま。わらいころげる。初めての経験で、朝まで情事が続いたことをいう。

裊釵金鷰軟 情事の様子で、金の髪飾りがしなやかに、あるいはやわらかく揺れる。

 

日初昇,簾半掩,對殘粧。

その日初めての朝を迎え日は昇る、簾は半ば巻き上げて、夜化粧の残りを整える。

日初昇 はじめて夜を過ごした場合、梁上に朝日が当たるのをはじめて見る。

簾半掩 朝の光は部屋の奥まで入って来るので、簾を半分垂らして遮る。

對殘粧 夜用の化粧をして、少し崩れているので、化粧をし直す。

17 毛熙震《巻九48南歌子二首其一》『花間集』450全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7514

毛熙震  南歌子二首其一

遠山愁黛碧,橫波慢臉明,膩香紅玉茜羅輕。深院晚堂人靜,理銀箏。

鬢動行雲影,裙遮點屐聲,嬌羞愛問曲中名。楊柳杏花時節,幾多情?

(前の年の春はあれほど寵愛を受けたのに、すぐになくなり、又春が来ても寵愛を受ける事は無いと詠う。)  遠い山影のように眉の緑は愁いに染まる、横波のように寵愛をうけ、心が緩んで顔が明るくなるし、あのお方の体脂とお香のかおりにつつまれ、紅色に輝き茜色のうす絹の上衣も軽やかに揺れる。後宮の奥の宮殿の奥座敷は夕暮れに包まれて人の声はしないで静かなものだ。銀で作られた箏を静かに引いて収める。両鬢の垂れ髪が揺れ雲型の髷の影が進んでゆく、巻スカートで遮断して、木靴の音も点々として聞える。甘えて,演奏される箏の曲の中の愛の言葉を問いかける。それなのに、楊柳が色付き、茂り、杏の花か咲きほこる季節が到来したというのに、あのお方は訪れる事は無い、どれだけ浮気の多いお方なのだろうか。 

《花間集》450巻九48

南歌子二首其一

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7514

(改訂版Ver.2.1

17 毛熙震

前蜀の詞人

九三〇年前後に在世

 

 
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妃嬪は、選ばれて地位があたえられ、全く手のつかないものもいる。この詩は選ばれて妃嬪の一員になったものが、当初は全く寵愛されなくて愁いに満ちていた。ある春に寵愛を受けた、それが初めの二句である。次の三句は寵愛を受けて楽しい生活を述べている。三聯目は寵愛に少しずつ変化が現れ、秋が過ぎ、やがて春が来るが、寵愛を受ける事は無かった。

 

花間集 教坊曲 《南歌子》 十三首

溫庭筠

巻一38南歌子七首其一手裡金鸚鵡,胸前繡鳳凰。眼暗形相,不如從嫁與,作鴛鴦。

溫庭筠

巻一39南歌子七首其二似帶如絲柳,團蘇握雪花。簾捲玉鈎斜,九衢塵欲暮,逐香車。

溫庭筠

巻一40南歌子七首其三窩墮低梳髻,連娟細掃眉。終日兩相思,為君憔悴盡,百花時。

溫庭筠

巻一41南歌子七首其四臉上金霞細,眉間翠鈿深。欹枕覆鴛衾,隔簾鶯百囀,感君心。

溫庭筠

巻一42南歌子七首其五撲蘂添黃子,呵花滿翠鬟。鴛枕映屏山,明月三五夜,對芳顏。

溫庭筠

巻一43南歌子七首其六轉眄如波眼,娉婷似柳腰,花裏暗相招。憶君腸欲斷,恨春宵。

溫庭筠

巻一44南歌子七首其七懶拂鴛鴦枕,休縫翡翠裙,羅帳罷鑪燻。近來心更切,為思君。

張泌

巻四48南歌子三首其一柳色遮樓暗,桐花落砌香。畫堂開處遠風涼,高卷水精簾額,襯斜陽。

張泌

巻四49南歌子三首其二岸柳拖煙綠,庭花照日紅。數聲蜀魄入簾櫳,驚斷碧殘夢,畫屏空

張泌

巻四50南歌子三首其三錦薦紅鸂鶒,羅衣繡鳳凰。綺疎飄雪北風狂,簾幕盡垂無事,鬱金香。

毛熙震

《巻九48南歌子二首其一》  遠山愁黛碧,橫波慢臉明,膩香紅玉茜羅輕。深院堂人靜,理銀箏。鬢動行雲影,裙遮點屐聲,嬌羞愛問曲中名。楊柳杏花時節,幾多情

毛熙震

《巻九49南歌子二首其二》  惹恨還添恨,牽腸即斷腸。凝情不語一枝芳,獨映畫簾閑立,衣香。暗想為雲女,應憐傅粉郎。來輕出閨房,髻慢釵橫無力,縱猖狂

張泌

《巻四48南歌子三首其一》柳色遮樓暗,桐花落砌香。畫堂開處遠風涼,高卷水精簾額,襯斜陽。

 

溫庭筠『花間集』巻九《南歌子七首其一》

手裡金鸚鵡,胸前繡鳳凰。

眼暗形相,不如從嫁與,作鴛鴦。

●●○○●  ○○●●○

○●●○△  △△△●△ ●○○

単調二十三字、五句三平韻で、5⑤⑤5③の詞形をとる。

 

張泌『花間集』巻九《南歌子三首 其一》

柳色遮樓暗,桐花落砌香。

畫堂開處遠風涼,高卷水精簾額,襯斜陽。

●●○○●  ○○●●○

●○○●●△△  ○△●△○● ●○○

単調二十六字、五句三平韻で、5⑤⑦6③の詞形をとる。

 

毛熙震『花間集』巻九《南歌子二首其一》 

南歌子二首其一

(前の年の春はあれほど寵愛を受けたのに、すぐになくなり、又春が来ても寵愛を受ける事は無いと詠う。)

遠山愁黛碧,橫波慢臉明,膩香紅玉茜羅輕。

遠い山影のように眉の緑は愁いに染まる、横波のように寵愛をうけ、心が緩んで顔が明るくなるし、あのお方の体脂とお香のかおりにつつまれ、紅色に輝き茜色のうす絹の上衣も軽やかに揺れる。

深院晚堂人靜,理銀箏。

後宮の奥の宮殿の奥座敷は夕暮れに包まれて人の声はしないで静かなものだ。銀で作られた箏を静かに引いて収める。

鬢動行雲影,裙遮點屐聲,嬌羞愛問曲中名。

両鬢の垂れ髪が揺れ雲型の髷の影が進んでゆく、巻スカートで遮断して、木靴の音も点々として聞える。甘えて,演奏される箏の曲の中の愛の言葉を問いかける。

楊柳杏花時節,幾多情?

それなのに、楊柳が色付き、茂り、杏の花か咲きほこる季節が到来したというのに、あのお方は訪れる事は無い、どれだけ浮気の多いお方なのだろうか。

(南歌子二首其の一)

遠山 愁いて黛碧りなり,橫波 慢に臉明らかなり,膩香 紅玉 茜羅輕ろやかなり。

深院 晚堂 人靜かなり,銀箏を理む。

鬢動き雲は影をして行く,裙遮して屐聲を點じ,嬌羞して曲中の名を愛問す。

楊柳 杏花の時節になるも,幾か多情ならん?

 

南歌子二首其二

惹恨還添恨,牽腸即斷腸。

凝情不語一枝芳,獨映畫簾閑立,繡衣香。

暗想為雲女,應憐傅粉郎。

晚來輕步出閨房,髻慢釵橫無力,縱猖狂。

紅梅202
 

 

『南歌子二首』 現代語訳と訳註

(本文)

南歌子二首其一

遠山愁黛碧,橫波慢臉明,膩香紅玉茜羅輕。

深院晚堂人靜,理銀箏。

鬢動行雲影,裙遮點屐聲,嬌羞愛問曲中名。

楊柳杏花時節,幾多情?

 

 

(下し文)

(南歌子二首其の一)

遠山 愁いて黛碧りなり,橫波 慢に臉明らかなり,膩香 紅玉 茜羅輕ろやかなり。

深院 晚堂 人靜かなり,銀箏を理む。

鬢動き雲は影をして行く,裙遮して屐聲を點じ,嬌羞して曲中の名を愛問す。

楊柳 杏花の時節になるも,幾か多情ならん?

 

(現代語訳)

(前の年の春はあれほど寵愛を受けたのに、すぐになくなり、又春が来ても寵愛を受ける事は無いと詠う。)

遠い山影のように眉の緑は愁いに染まる、横波のように寵愛をうけ、心が緩んで顔が明るくなるし、あのお方の体脂とお香のかおりにつつまれ、紅色に輝き茜色のうす絹の上衣も軽やかに揺れる。

後宮の奥の宮殿の奥座敷は夕暮れに包まれて人の声はしないで静かなものだ。銀で作られた箏を静かに引いて収める。

両鬢の垂れ髪が揺れ雲型の髷の影が進んでゆく、巻スカートで遮断して、木靴の音も点々として聞える。甘えて,演奏される箏の曲の中の愛の言葉を問いかける。

それなのに、楊柳が色付き、茂り、杏の花か咲きほこる季節が到来したというのに、あのお方は訪れる事は無い、どれだけ浮気の多いお方なのだろうか。

大明宮の圖003
tsuki001
 

 

(訳注)

南歌子二首其一

(前の年の春はあれほど寵愛を受けたのに、すぐになくなり、又春が来ても寵愛を受ける事は無いと詠う。)

1 妃嬪は、選ばれて地位があたえられ、全く手のつかないものもいる。この詩は選ばれて妃嬪の一員になったものが、当初は全く寵愛されなくて愁いに満ちていた。ある春に寵愛を受けた、それが初めの二句である。次の三句は寵愛を受けて楽しい生活を述べている。三聯目は寵愛に少しずつ変化が現れ、秋が過ぎ、やがて春が来るが、寵愛を受ける事は無かった。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - 

古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬪、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618626)に、唐は隋の制度を参照して完壁で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛各一人)、捷好九人美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。上記のそれぞれの女性は官品をもち、合計で122人の多きに達した。皇后だけが正妻であり、その他は名義上はみな「妃嬪」-皇帝の妾とされた。

また、皇太子の東宮にも「内官」があり、太子妃一人、その下に良娣、良媛、承徽、昭訓、奉儀などの品級があった。諸親王の王妃の下にも孺人【じゅじん】等の媵妾【ようしょう】の身分があった。

 

皇后を立てることに比べて、妃嬪を立てることはわりあい簡単であり、家柄はそれほど厳格に問題にされることはなかった。彼女たちの大半は皇子を生むか、あるいは寵愛を受けたために妃嬪の品階を賜った者であったから、その中には身分の低い者もいくらか含まれていた。たとえば、玄宗の趙麗妃は歌妓の出身であった。そうした例もあるが、しかし妃賓でも出身、家柄はやはり大切であった。太宗の楊妃は隋の場帝の娘であったから、「地位と名望が高く、内外の人々が皆注目した」(『新唐書』太宗諸子伝)。玄宗の柳捷好は名門大族の娘であり、玄宗は「その名家を重んじて」(『新唐書』十一宗諸子伝)特別な礼遇を与えた。

 

美人が雲のごとく集まっている後宮において、家柄は一頭地を抜くために必要な第一の跳躍台であった。

 

古代、一貫して国の大小にかかわらず、後宮は国の威信をかけて運営された。国の予算の30%以上も浪費していた。その構図は、貴族社会、富貴社会の一個の家、家系、一族、すべて収入の3050%が、奥方の消費に当てられていたのであるから、消費生活の中で、一部の女性の権限は相当なものであった。また、中国は、収賄贈賄をうまく利用運用するものが富を得る社会制という見方もできる。

 

花間集の多くの詩は、白居易の詞詩の流れをくむもので、後宮の寵愛を失った多くの妃嬪たちを題材にしたものである。少なくとも数十人、多ければ数百人の妃嬪たちの中には短期間の寵愛のものが大半であり、ほとんどの妃嬪が寂しい生涯であったのである。この史実を理解して詞詩を読まないとただの艶詞になってしまう。この時代の女性が男に対して媚を売らなければ生きてゆけなかったというのは、貴族制と生産性、倫理観、であり、男社会がすべてであるかのような基盤の下には、女性がたくましく我慢し、族を実際に動かす制度ががっちりとしたものがあったのである。

 

2 構成 双調五十六字十句、前段二十八字二平韻二仄韻、前段二十八字三平韻一仄韻、5⑤❼❻③/⑤⑤❼6③の詞形をとる。

遠山愁黛碧  橫波慢臉
膩香紅玉茜羅  深院晚堂人靜 理銀

鬢動行雲影 裙遮點屐

嬌羞愛問曲中 楊柳杏花時節  幾多

●○○●●  △○●△○

●○○●●○△  △△●○○● ●○○

●●△○● ○○●●○

△○●●●△○ ○●●○○●  △○○

 

遠山愁黛碧,橫波慢臉明,膩香紅玉茜羅輕。

遠い山影のように眉の緑は愁いに染まる、横波のように寵愛をうけ、心が緩んで顔が明るくなるし、あのお方の体脂とお香のかおりにつつまれ、紅色に輝き茜色のうす絹の上衣も軽やかに揺れる。

3 慢 1 心がゆるんで締まりがない。「怠慢」2 速度や進行がだらだらと遅い。「慢性/緩慢」3 他をみくびっておごる。

4 膩 常侍の際に汗と脂が枕に染みついている様子をいう。

 

深院晚堂人靜,理銀箏。

後宮の奥の宮殿の奥座敷は夕暮れに包まれて人の声はしないで静かなものだ。銀で作られた箏を静かに引いて収める。

5 深院 奥庭。中庭。院とは、塀や建物で囲まれた中庭。中国の伝統的な御殿。

6 箏 一般にことと呼ばれ、「琴」の字を当てられるが、正しくは「箏」であり、「琴(きん)」は本来別の楽器である。最大の違いは、箏では柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節するのに対し、琴(きん)では柱が無いことである。

 

鬢動行雲影,裙遮點屐聲,嬌羞愛問曲中名。

両鬢の垂れ髪が揺れ雲型の髷の影が進んでゆく、巻スカートで遮断して、木靴の音も点々として聞える。甘えて,演奏される箏の曲の中の愛の言葉を問いかける。

7 屐 。(1) 木靴木屐木靴,下駄.(2) 靴屐履はきもの.

 

楊柳杏花時節,幾多情?

それなのに、楊柳が色付き、茂り、杏の花か咲きほこる季節が到来したというのに、あのお方は訪れる事は無い、どれだけ浮気の多いお方なのだろうか。
興慶宮沈香亭
 

17 毛熙震《巻九34浣溪沙七首其一》『花間集』436全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7444

毛熙震  浣溪沙七首其一

春暮黃鶯下砌前,水精簾影露珠懸,綺霞低映晚晴天。

弱柳萬條垂翠帶,殘紅滿地碎香鈿,蕙風飄蕩散輕煙。

(后妃もいつしか、水精の宮殿に移ってからは、春が音連れても、あのお方は尋ねてくることはない、この春も何時しか過ぎようとしている。)

春暮れて高樓の砌の前に高麗鶯が止まっている、水精宮の閨には、水珠の簾に日が射しこんで、露の珠の影がうつる。沈みかけた夕日は空低く夕焼けを映している。

華奢な細腰は、柔らかき柳のえだであり、翠の糸を万条と垂れている、春も盛りを過ぎて、地一面の花びらは花鈿、額の飾りの砕けたようであり、香しき風は流れさり、花曇りの薄靄も、もう散りさってしまう。 

《花間集》416巻九15

浣溪沙七首其一

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7444

(改訂版Ver.2.1

17 毛熙震

前蜀の詞人

938年前後に在世

 

 
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毛秘書熙震二十九首

 

毛熙震(生卒年未詳、947年前後在世)、字、出身地ともに未詳。後苛に仕えて秘書監となったので、毛秘書と呼ばれた。『花間集』 には二十九首の詞が収められている。全て艶麗な詞。温庭 の作風に近い。

 

浣溪沙七首

毛熙震

《巻九34浣溪沙七首其一》  春暮鶯下砌前,水精簾影露珠懸,綺霞低映晴天。弱柳萬條垂翠帶,殘紅滿地碎香鈿,蕙風飄蕩散輕煙

毛熙震

《巻九35浣溪沙七首其二》  香紅煙景迷,滿庭芳艸綠萋萋,金鋪閑掩簾低。紫一雙嬌語碎,翠屏十二峯齊,夢魂銷散醉空閨

毛熙震

《巻九36浣溪沙七首其三》  起紅房醉欲銷,綠鬟雲散金翹,雪香花語不勝嬌。好是向人柔弱處,玉纖時急裙腰,春心牽惹轉無

毛熙震

《巻九37浣溪沙七首其四》  一隻橫釵墜髻叢,靜眠珍簟起來慵,羅紅嫩抹酥胸。羞斂細蛾魂暗斷,困迷無語思猶濃,小屏香靄碧山重

毛熙震

《巻九38浣溪沙七首其五》  雲薄羅裙綬帶長,滿身新瑞龍香,翠鈿斜映梅粧。佯不人空婉約,笑和嬌語太倡狂,忍教牽恨暗形相

毛熙震

《巻九39浣溪沙七首其六》  碧玉冠輕裊鷰釵,捧心無語,緩移弓底羅鞋。暗想歡何計好,豈堪期約有時乖,日高深院正忘懷。

毛熙震

《巻九40浣溪沙七首其七》  半醉凝情臥茵,睡容無力卸羅裙,玉籠鸚鵡聽聞。慵整落釵金翡翠,象梳欹鬢月生雲,錦屏幌麝煙薰

 

浣溪沙七首其一

(后妃もいつしか、水精の宮殿に移ってからは、春が音連れても、あのお方は尋ねてくることはない、この春も何時しか過ぎようとしている。)

春暮黃鶯下砌前,水精簾影露珠懸,綺霞低映晚晴天。

春暮れて高樓の砌の前に高麗鶯が止まっている、水精宮の閨には、水珠の簾に日が射しこんで、露の珠の影がうつる。沈みかけた夕日は空低く夕焼けを映している。

弱柳萬條垂翠帶,殘紅滿地碎香鈿,蕙風飄蕩散輕煙。

華奢な細腰は、柔らかき柳のえだであり、翠の糸を万条と垂れている、春も盛りを過ぎて、地一面の花びらは花鈿、額の飾りの砕けたようであり、香しき風は流れさり、花曇りの薄靄も、もう散りさってしまう。

(浣溪沙七首 其の一)

春暮 黃鶯 砌前に下る,水精の簾影 露珠 懸かり,綺霞 低く 晚晴の天に映ゆ。

弱柳 萬條 翠帶を垂れ,殘紅 地に滿ち 香鈿碎ける,蕙風 飄蕩して 輕煙 散る。

花間集 白梅
紅梅202
 

 

『浣溪沙七首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙七首其一

春暮黃鶯下砌前,水精簾影露珠懸,綺霞低映晚晴天。

弱柳萬條垂翠帶,殘紅滿地碎香鈿,蕙風飄蕩散輕煙。

 

(下し文)

(浣溪沙七首 其の一)

春暮 黃鶯 砌前に下る,水精の簾影 露珠 懸かり,綺霞 低く 晚晴の天に映ゆ。

弱柳 萬條 翠帶を垂れ,殘紅 地に滿ち 香鈿碎ける,蕙風 飄蕩して 輕煙 散る。

 

(現代語訳)

(后妃もいつしか、水精の宮殿に移ってからは、春が音連れても、あのお方は尋ねてくることはない、この春も何時しか過ぎようとしている。)

春暮れて高樓の砌の前に高麗鶯が止まっている、水精宮の閨には、水珠の簾に日が射しこんで、露の珠の影がうつる。沈みかけた夕日は空低く夕焼けを映している。

華奢な細腰は、柔らかき柳のえだであり、翠の糸を万条と垂れている、春も盛りを過ぎて、地一面の花びらは花鈿、額の飾りの砕けたようであり、香しき風は流れさり、花曇りの薄靄も、もう散りさってしまう。

 

(訳注)

浣溪沙七首其一

(后妃もいつしか、水精の宮殿に移ってからは、春が音連れても、あのお方は尋ねてくることはない、この春も何時しか過ぎようとしている。)

【解説】 晩春の夕景色を詠う。后妃であっても年を重ねると宮殿で一生を過ごして果てる。白居易の《上陽の白髪の人》白居易「後宮詞」

雨露由來一點恩,爭能遍布及千門?

三千宮女胭脂面,幾個春來無淚痕!

「三千の宮女 胭脂の面、幾箇か春来りて涙の痕無からん」(白居易「後宮詞」)。古来、宮人は女性のなかで最も人間性を踏みにじられた人々であり、官官とともに君主専制制度の直接の犠牲者であった。一方は生殖器をとられ身体を傷つけられた者、一方は人間性を踏みにじられた者である。宮人は奥深い後宮の中に幽閉されて永遠に肉親と別れ、青春と紅顔は葬り去られ、愛情と人生の楽しみは奪われ、生きている時は孤独の苦しみに、また死んだ後は訪れる人もない寂しさの中に置かれた。それで多くの知識人が、彼女たちの境遇に心を痛め嘆息してやまなかったのである。

彼女たちの痛苦の生活と心情を理解しょうとすれば、白居易の「上陽の白髪の人」ほど真実に迫り、生々と彼女たちの人生を描写したものはない。

 

『花間集』には毛照震の作が七首収められている。双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。花間集他の56作品の浣渓沙の解説参照。

春暮黃鶯下砌前 水精簾影露珠懸 綺霞低映晚晴

弱柳萬條垂翠帶 殘紅滿地碎香鈿  蕙風飄蕩散輕

○●○○●●○  ●△○●●○○ ●○○●●○○

●●●○○●● ○○●●●○△  ●△○●●△○

 

春暮黃鶯下砌前,水精簾影露珠懸,綺霞低映晚晴天。

春暮れて高樓の砌の前に高麗鶯が止まっている、水精宮の閨には、水珠の簾に日が射しこんで、露の珠の影がうつる。沈みかけた夕日は空低く夕焼けを映している。

1 砌 《「水限(みぎり)」の意で、雨滴の落ちるきわ、また、そこを限るところからという》1 時節。おり。ころ。「暑さの―御身お大事に」「幼少の―」2 軒下や階下の石畳。

2 水精 水に映り輝く宮殿。水精は水の精。水星、辰星。水の中から産する珠。水の妖精。「珠水精、故以禦火灾」(珠は水精、故に以て火灾を禦【ふせ】ぐ)とある。また、水精宮とすれば、水際の水晶で飾られた宮殿の閨。

杜甫『曲江對酒』

苑外江頭坐不歸,水精宮殿轉霏微。桃花細逐楊花落,黃鳥時兼白鳥飛。

縱飲久判人共棄,懶朝真與世相違。吏情更覺滄洲遠,老大悲傷未拂衣。

(曲江にて酒に對す)

苑外江頭に坐して帰らず、水精の宮殿 転【うたた】霏微【ひび】たり。桃花【とうか】細【こまや】かに梨花を逐うて落ち、黄鳥【こうちょう】時兼【とも】にして白鳥と飛ぶ。

飲を縦【ほしいまま】にし久しく判して人共に棄つ、朝するに懶【ものうし】く真に世と相違【たご】う。吏情【りじょう】更に覚ゆ滄洲【そうしゅう】の遠きを、老大【ろうだい】徒【いたずらに】に傷む未だ衣を払わざるを。

春景色に誘われ、わたしはこの芙蓉苑の外、曲江の池畔で官舎に帰らないままにすわりこんであたりをながめる、水の妖精が生まれ出て水の宮殿がその光を輝かせ、霧のように飛散する水珠も輝く。

それから桃の花は微細に落ちち、やなぎの花、柳絮の散るあとを追いかけて落ちてまた落ちる、黄色の鳥たちは時を同じにして一斉に白色の鳥たちと飛びたつ。

勝手きままにすきなだけ酒を呑んで長いあいだ自暴自棄になり人も相手をしてくれない、参朝することが億劫になってしまい、世間の人皆から見放されてしまっている、実際自分も世の人とは違背しているのである。

官吏としての今の心持は、これまでよりももっと滄洲の仙境と隔たりができた様な気がするばかりで、こんなに年を取ってからでは衣を払って仙境に向って去って行けないことを傷み悲しむだけなのである。

曲江封酒 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 246

 

3 綺霞 美しい夕焼け、夕映え。

 

弱柳萬條垂翠帶,殘紅滿地碎香鈿,蕙風飄蕩散輕煙。

華奢な細腰は、柔らかき柳のえだであり、翠の糸を万条と垂れている、春も盛りを過ぎて、地一面の花びらは花鈿、額の飾りの砕けたようであり、香しき風は流れさり、花曇りの薄靄も、もう散りさってしまう。

4 香鈿 額飾りや頬飾り。ここでは頬飾りを指す。

5 蕙風 香しい風。
長安城図 作図00
 

15閻選《巻九21虞美人二首其二》『花間集』423全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7379

閻選  虞美人二首其二

楚腰蠐領團香玉,鬢疊深深綠。月蛾星眼笑微嚬,柳妖桃豔不勝春,晚粧勻。

水紋簟映青紗帳,霧罩秋波上。一枝嬌臥醉芙蓉,良宵不得與君同,恨忡忡。

(あれほどに美しいお方でも寵愛を受ける期間というのは、わずかの間でしかない、その後は、その時の思い出で生きていくしかないと詠う)その二

楚の国で美しい細腰の宮女はスクモ蟲のようにしろくてながく、ほっそりしている首筋で、薫り高く宝玉のような輝きを集めたようだ。髪型は高く重ねられ、緑の黒髪は深く深く黒い。

月に棲む嫦娥の美しさはほしのかがやきをもつひとみで、ほんの少し微笑むだけで美しい、柳の枝のようにしなやかで、桃のみのように妖艶で春けしと雖もこの美しさに勝てるはずもない。晩になると夜の化粧を施せばここまで述べたすべての美しさに等しくなる。

それが秋になっても水紋模様の天の敷物はそのまま寝牀に牽かれたままであり、春に垂らされたうす絹のとばりもそのままで、霧が大地にかぶさるように秋の気配にここのすべてはおおい尽くされてしまう。

あの柳の一枝の艶めかしさが横になり、芙蓉の花は酒に酔い潰れ、こんなに素敵な夜が訪れてもあのおかたとはもういっしょでいることはない、憂い悲しむ生活を恨むことしかないのだ。

《花間集》422巻九21

虞美人二首其二

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7379

(改訂版Ver.2.1

14 閻選

後蜀の詞人

932年前後に在世

 

 

 
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             ID         
           作品名    作者      

              ■ 閻處士選(閻選【えんせん】)八首                                                  

            1            九巻       虞美人二首,其一   閻選        

            2            九巻       虞美人二首,其二   閻選        

            3            九巻       臨江仙二首,其一   閻選        

            4            九巻       臨江仙二首,其二   閻選        

            5            九巻       浣溪紗一首,          閻選        

            6            九巻       八拍蠻二首,其一   閻選        

            7            九巻       八拍蠻二首,其二   閻選      

 

閻處士選 虞美人二首

間選(生卒年末詳〔約932年前後在世〕)は、後蜀の詞人。字、裡、出身地も未詳。生涯、平民で過ごしたので、人々は閣処士と呼んだ(処士とは無官の意)。『花間集』 には八首の詞が収められている。

 

 

虞美人二首其一

(寵愛を受ける期間というのは、わずかの間でしかない、その後は、その時の思い出で生きていくしかないと詠う)

粉融紅膩蓮房綻,臉動雙波慢。

二人がずっと愛し合って、白粉が崩れ始め、頬を赤くして顔にはあぶら汗でテカっている、蓮の花の花弁ははじめてほころびうけいれる。顏は動き、二つの体は波のようにゆっくりと動く。

小魚銜玉鬢釵橫,石榴裙染象紗輕,轉娉婷。

宮女は小魚の玉を口に含み、そして簪を髪につけて横たわっている、スカートが石榴の柄にそまって、薄絹が軽やかに、愛そのものに形作られている、ひたすら、宮女の姿や振舞いが優雅で美しい。

期錦浪荷深處,一夢雲兼雨。

一時のがれの約束事ではあるが、錦の波が続き、蓮は奥深い所に咲いたのだ、それは、一つの夢であった、それは《高唐賦》の「朝雲暮雨」のようであった。

臂留檀印齒痕香,深秋不寐漏初長,盡思量。

あの方の腕の中の温もりが残り、閨の寝牀にはお香の香りが残る、そして、キスマークにも香りが残るけれども、もう秋も深まるというのに、寵愛もなく、眠りにつけず、夜明けまえの漏刻を聞くながい夜を過ごしている。これからはなにごとも慮って生きていく。

(虞美人二首其の一)

粉融 紅膩 蓮房の綻,臉動き 雙の波慢す。

小魚玉を銜み 鬢釵橫わる,石榴 裙染 象 紗輕す,轉た娉婷【へいてい】。

期 錦浪 荷 深き處,一たびの夢 雲と雨とを兼ぬ。

臂留 檀印 齒痕の香,深秋 不寐し 漏 初めて長し,盡く思量す。

 

虞美人二首其二

(あれほどに美しいお方でも寵愛を受ける期間というのは、わずかの間でしかない、その後は、その時の思い出で生きていくしかないと詠う)その二

楚腰蠐領團香玉,鬢疊深深綠。

楚の国で美しい細腰の宮女はスクモ蟲のようにしろくてながく、ほっそりしている首筋で、薫り高く宝玉のような輝きを集めたようだ。髪型は高く重ねられ、緑の黒髪は深く深く黒い。

月蛾星眼笑微嚬,柳妖桃豔不勝春,晚粧勻。

月に棲む嫦娥の美しさはほしのかがやきをもつひとみで、ほんの少し微笑むだけで美しい、柳の枝のようにしなやかで、桃のみのように妖艶で春けしと雖もこの美しさに勝てるはずもない。晩になると夜の化粧を施せばここまで述べたすべての美しさに等しくなる。

水紋簟映青紗帳,霧罩秋波上。

それが秋になっても水紋模様の天の敷物はそのまま寝牀に牽かれたままであり、春に垂らされたうす絹のとばりもそのままで、霧が大地にかぶさるように秋の気配にここのすべてはおおい尽くされてしまう。

一枝嬌臥醉芙蓉,良宵不得與君同,恨忡忡。

あの柳の一枝の艶めかしさが横になり、芙蓉の花は酒に酔い潰れ、こんなに素敵な夜が訪れてもあのおかたとはもういっしょでいることはない、憂い悲しむ生活を恨むことしかないのだ。

(虞美人二首其の二)

楚腰 蠐領【せいりょう】香玉を團【まと】め,鬢疊 深深として綠なり。

月蛾 星眼 笑微 嚬【ひそ】め,柳妖 桃豔 春も勝らず,晚粧 勻し。

水紋の簟映し 青紗の帳,霧罩 秋波上【くわわ】る。

一枝 嬌臥し 芙蓉を醉わす,良宵 君と與に同じゅうするを得ず,忡忡を恨む。

 

芍薬001
 

『虞美人二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

虞美人二首其二

楚腰蠐領團香玉,鬢疊深深綠。

月蛾星眼笑微嚬,柳妖桃豔不勝春,晚粧勻。

水紋簟映青紗帳,霧罩秋波上。

一枝嬌臥醉芙蓉,良宵不得與君同,恨忡忡。

 

(下し文)

(虞美人二首其の二)

楚腰 蠐領【せいりょう】香玉を團【まと】め,鬢疊 深深として綠なり。

月蛾 星眼 笑微 嚬【ひそ】め,柳妖 桃豔 春も勝らず,晚粧 勻し。

水紋の簟映し 青紗の帳,霧罩 秋波上【くわわ】る。

一枝 嬌臥し 芙蓉を醉わす,良宵 君と與に同じゅうするを得ず,忡忡を恨む。

 

(現代語訳)

(あれほどに美しいお方でも寵愛を受ける期間というのは、わずかの間でしかない、その後は、その時の思い出で生きていくしかないと詠う)その二

楚の国で美しい細腰の宮女はスクモ蟲のようにしろくてながく、ほっそりしている首筋で、薫り高く宝玉のような輝きを集めたようだ。髪型は高く重ねられ、緑の黒髪は深く深く黒い。

月に棲む嫦娥の美しさはほしのかがやきをもつひとみで、ほんの少し微笑むだけで美しい、柳の枝のようにしなやかで、桃のみのように妖艶で春けしと雖もこの美しさに勝てるはずもない。晩になると夜の化粧を施せばここまで述べたすべての美しさに等しくなる。

それが秋になっても水紋模様の天の敷物はそのまま寝牀に牽かれたままであり、春に垂らされたうす絹のとばりもそのままで、霧が大地にかぶさるように秋の気配にここのすべてはおおい尽くされてしまう。

あの柳の一枝の艶めかしさが横になり、芙蓉の花は酒に酔い潰れ、こんなに素敵な夜が訪れてもあのおかたとはもういっしょでいることはない、憂い悲しむ生活を恨むことしかないのだ。

 

 

(訳注)

虞美人二首其二

唐の教坊の曲名。『花間集』には十四首所収。閻選の詩は二首収められている。双調五十八字、前後段五句二十九字三平韻で、75⑦⑦③/75⑦⑦③の詞形をとる。

楚腰蠐領團香玉 鬢疊深深
月蛾星眼笑微 柳妖桃豔不勝 晚粧

水紋簟映青紗 霧罩秋波

 一枝嬌臥醉芙 良宵不得與君  恨忡

●○○●○○●  ●●△△●

●△○●●○○  ●○○●△△○ ●?○

●○●●○○● △●○○●

●○△●●○○ ○○△●△○○  ●○○

 

楚腰 蠐領 團香玉,鬢疊 深深綠。

楚の国で美しい細腰の宮女はスクモ蟲のようにしろくてながく、ほっそりしている首筋で、薫り高く宝玉のような輝きを集めたようだ。髪型は高く重ねられ、緑の黒髪は深く深く黒い。

16 楚腰 楚の細腰

17 蠐領 首はすく蟲のよう。木の中に巣食うスクモ蟲のようにしろくてながく、ほっそりしている首筋。《詩経衛風碩人》「手如柔荑,膚如凝脂,領如蝤蠐,齒如瓠犀,螓首蛾眉。」(領は蝤蠐【しゅうせい】の如し)手は初めて伸びた柔らかい荑のようで、しなやかである。肌は凝り固まった脂肪のように白くてこってりと引き締まって清く、首筋のしなやかであるのは、木の中に巣食うスクモ蟲のようにしろくてながく、ほっそりしている。

18 蠐螬  地中にいる昆虫。コガネムシ類の幼虫を主にいう。地虫(じむし)。せいそう。《季 秋》

19 團 1 まるい。まるくまとまる。「団扇(だんせん)・団団・団欒(だんらん)/大団円」2 ひとかたまりに集まったもの。「団塊・団結・団地/一団・星団・船団・寒気団・原子団」3 同類の人の集まり。人が集まってつくる組織。「団員・団体・団長/楽団・球団・教団・結団・公団・集団・退団・入団・兵団」4 「団体」の略。「団交/経団連」〈トン〉まるい。まるいもの。「団栗(どんぐり)/金団・水団・炭団(たどん)・蒲団(ふとん)」[名のり]あつ・まどか・まる

 

月蛾 星眼 笑微嚬,柳妖 桃豔 不勝春,晚粧勻。

月に棲む嫦娥の美しさはほしのかがやきをもつひとみで、ほんの少し微笑むだけで美しい、柳の枝のようにしなやかで、桃のみのように妖艶で春けしと雖もこの美しさに勝てるはずもない。晩になると夜の化粧を施せばここまで述べたすべての美しさに等しくなる。

20 月蛾 月に上った嫦娥のように美しい。嫦娥(じょうが、こうが)は、中国神話に登場する人物。后羿の妻。姮娥とも表記する。『淮南子』覧冥訓によれば、もとは仙女だったが地上に下りた際に不死でなくなったため、夫の后羿が西王母からもらい受けた不死の薬を盗んで飲み、月に逃げ、蝦蟇になったと伝えられる。別の話では、后羿が離れ離れになった嫦娥をより近くで見るために月に向かって供え物をしたのが、月見の由来だとも伝えている。道教では、嫦娥を月神とみなし、「太陰星君」さらに「月宮黄華素曜元精聖後太陰元君」「月宮太陰皇君孝道明王」と呼び、中秋節に祀っている。「嫦」は「姮」の異体字で同じ意味である。前漢の文帝の名が「恒」であるため、字形のよく似た「姮」を避諱して「嫦」を用いるようになった。日本では百姓読みにより旁の「常」から「じょう」と読まれるようになったが、本来の読み通りに「こう」と読む場合もある。

21 笑微 麗しの傾国の美女の微笑。美しすぎるとその美しさに一人だけ寵愛すると天下の平穏が乱され、国を傾けることになる。唐の宣宗の事例がある。穏健な抑制政策を採用するなどの社会の安定を図ったので聖帝とされたが、献上された美女を数日寵愛し、その後後宮から追放しても朕の思いが残るだけと「沈毒盃」により葬った。

22 勻 読み:イン訓読み:すくない、 ひとしい。

 

水紋 簟映 青紗帳,霧罩 秋波上。

それが秋になっても水紋模様の天の敷物はそのまま寝牀に牽かれたままであり、春に垂らされたうす絹のとばりもそのままで、霧が大地にかぶさるように秋の気配にここのすべてはおおい尽くされてしまう。

23 水紋簟 晩春から初秋まで寝牀のシーツとして敷かれる高価なもの。

24 青紗帳 春に垂らされたうす絹のとばり、夏を過ぎると、白絹に替えられるものである。

25 霧罩 霧が大地にかぶさる

  この二句は、宮女への寵愛は亡くなってしまった様子をいう。水紋簟・青紗帳・霧罩・秋波、一人の寂しさ、侘しさをいう語である。

 

一枝 嬌臥 醉芙蓉,良宵 不得與君同,恨忡忡。

あの柳の一枝の艶めかしさが横になり、芙蓉の花は酒に酔い潰れ、こんなに素敵な夜が訪れてもあのおかたとはもういっしょでいることはない、憂い悲しむ生活を恨むことしかないのだ。

26 忡忡 憂い悲しむさま。気が気でないさま.

大毛蓼003
 

 

 

虞美人二首 【字解】

 

1 粉融 おしろいがとけてくずれる。

2 蓮房綻 蓮の花の花弁はほころびる、縫い目がほどける。破れる。

3 紅膩 頬を赤くし顔が油出て驅。

4 蓮房綻 宮女の閨に鍵をかける。

5 臉動 顔が動く。

6 雙波慢 二つの波がゆっくりと動く。慢【まん】[常用漢字][音]マン(呉)1 心がゆるんで締まりがない。「怠慢」2 速度や進行がだらだらと遅い。「慢性/緩慢」3 他をみくびっておごる。

7 小魚 この句は情事の性描写で訳しにくいこと。

8 鬢釵橫 簪を髪につけて横たわっている

9 石榴 赤身ザクロのほかに、白い水晶ザクロや果肉が黒いザクロなどがあり、アメリカ合衆国ではワンダフル、ルビーレッドなど、中国では水晶石榴、剛石榴、大紅石榴などの品種が多く栽培されている。

10 轉娉婷 【へいてい】.ひたすら、婦人の姿や振舞いが優雅な,美しい.

11  なおざりの時期。一時のがれを約束する。

12 夢雲兼雨 雲雨は情交、高唐賦、朝雲暮雨、男女が愛し合い、片時も離れていられないほどの深い仲であることのたとえ。男女の情交のことも。楚(そ)の懐王(かいおう)が夢の中で情を交わした女神が立ち去る時に、「朝は雲に、日暮れには雨となり、朝な夕なあなたのそばにおります」といったことから。

13 臂留 あの方の腕の中の温もりが残る。

14 檀印 閨の寝牀にはお香の香りが残る。檀:寝牀。檀香。 前蜀休《桐江居》之三:「静室焚檀印,深炉烧铁瓶。...

15 齒痕香 キスマークにも香りが残る。

13魏承班《巻九06訴衷情五首其二》『花間集』408全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7304

魏承班  訴衷情五首其二

春深花簇小樓臺,風飄錦繡開。新睡覺,步香堦,山枕印紅腮。

鬢亂墜金釵,語檀隈。臨行執手重重囑,幾千迴。

(この詩は君王から寵愛が無くなった宮女のおもいを詠ったもの)その二

春景色は深まり、花は宮女の居る楼閣の望み台に集まっている、風は廻っていて錦の幃、刺繍のとばりを開く。昼寝をして目を覚ますと、少し歩いて犬走りの階段のとこまでお香の香りが届いている。起きて少し経つのに、枕の寝跡が顎から頬にかけてついている。髪は少し乱れたままだし簪が落ち掛けている。話すことは、白檀の寝牀の影での独り言をする。あのころは、あの方に臨行して手を取ってもらって手厚くされ、かさねがさね目をつけられる、そんなことがもう幾千回あったのだ。(それが永遠に続くと思っていた。)

巻九06

訴衷情五首其二

13魏承班

(改訂版Ver.2.1

《花間集》408巻九06

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7304

 

 
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『花間集』 このブログで花間集全詩、訳注解説します。

7)魏承班十五首 鹿虔扆六首 閻選八首 尹鶚六首

 

 

ID

作品名

作者

 

 

■ 魏太尉承班(魏承班【ぎしょうはん】)十五首

 

 

 

1

八巻

菩薩蠻二首其一

魏承班

 

 

2

八巻

菩薩蠻二首其二

魏承班

 

 

3

九巻

滿宮花一首

魏承班

 

 

4

九巻

木蘭花一首

魏承班

 

 

5

九巻

玉樓春二首,其一

魏承班

 

 

6

九巻

玉樓春二首,其二

魏承班

 

 

7

九巻

訴衷情五首,其一

魏承班

 

 

8

九巻

訴衷情五首,其二

魏承班

 

 

9

九巻

訴衷情五首,其三

魏承班

 

 

10

九巻

訴衷情五首,其四

魏承班

 

 

11

九巻

訴衷情五首,其五

魏承班

 

 

12

九巻

子二首,其一

魏承班

 

 

13

九巻

子二首,其二

魏承班

 

 

14

九巻

黃鐘樂一首,

魏承班

 

 

15

九巻

漁歌子一首

魏承班

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魏太尉承班 《訴衷情五首》

訴衷情五首其一

(この詩は君王から寵愛が無くなった、それでも思い続ける妃嬪のおもいを詠ったもの)

高歌宴罷月初盈,詩情引恨情。

念奴の声は、高らかに歌い上げて酒宴はたけなわになり、やがて宴は終る頃月は初めて上空にあがっている。詩を作るその気持ちは恨みの感情に吸引されるものであった。

煙露冷,水流輕,思想夢難成。

冷気は靄に、露が辺りに降りてきた。江水の流れは軽やかに流れる。思い続けていることは、もう夢が現実になることはない。

羅帳裊香平,恨頻生。

うす絹のとばりの内側には緩やかにお香がゆれ、立ち上って閨に水平に広がっている。心はというと、やっぱり恨みが頻りに生れてくる。

思君無計睡還醒,隔層城。

君王を思う気持ちを取り戻すには、はかりごとなどない、眠ったかとも思えば、また、おきあがる。もうこんなことの繰り返しをするだけの生活である。君王の宮城からは幾重にも屋根が隔ててしまった。

(訴衷情五首其の一)

高歌 宴罷り 月 初めて盈つ,詩情は恨情を引く。

煙露 冷やかに,水流 輕やかに,思想 夢 成り難し。

羅帳 裊香 平らかに,恨み 頻に生づ。

君を思い 計無く 睡 還た醒め,層城を隔つ。

 

訴衷情五首其二

(この詩は君王から寵愛が無くなった宮女のおもいを詠ったもの)その二

春深花簇小樓臺,風飄錦繡開。

春景色は深まり、花は宮女の居る楼閣の望み台に集まっている、風は廻っていて錦の幃、刺繍のとばりを開く。

新睡覺,步香堦,山枕印紅腮。

昼寝をして目を覚ますと、少し歩いて犬走りの階段のとこまでお香の香りが届いている。起きて少し経つのに、枕の寝跡が顎から頬にかけてついている。

鬢亂墜金釵,語檀隈。

髪は少し乱れたままだし簪が落ち掛けている。話すことは、白檀の寝牀の影での独り言をする。

臨行執手重重囑,幾千迴。

あのころは、あの方に臨行して手を取ってもらって手厚くされ、かさねがさね目をつけられる、そんなことがもう幾千回あったのだ。(それが永遠に続くと思っていた。)

(訴衷情五首其の二)

春深く 花 小樓臺に簇る,風飄 錦繡開く。

新たに睡から覺め,步めば香堦に,山枕 紅腮に印す。

鬢亂 金釵墜ち,檀隈に語る。

臨行して執手 重重の囑,幾千迴る。

 

 

 

『訴衷情五首』 現代語訳と訳註

(本文)

訴衷情五首其二

春深花簇小樓臺,風飄錦繡開。

新睡覺,步香堦,山枕印紅腮。

鬢亂墜金釵,語檀隈。

臨行執手重重囑,幾千迴。

 

(下し文)

(訴衷情五首其の二)

春深く 花 小樓臺に簇る,風飄 錦繡開く。

新たに睡から覺め,步めば香堦に,山枕 紅腮に印す。

鬢亂 金釵墜ち,檀隈に語る。

臨行して執手 重重の囑,幾千迴る。

 

(現代語訳)

(この詩は君王から寵愛が無くなった宮女のおもいを詠ったもの)その二

春景色は深まり、花は宮女の居る楼閣の望み台に集まっている、風は廻っていて錦の幃、刺繍のとばりを開く。

昼寝をして目を覚ますと、少し歩いて犬走りの階段のとこまでお香の香りが届いている。起きて少し経つのに、枕の寝跡が顎から頬にかけてついている。

髪は少し乱れたままだし簪が落ち掛けている。話すことは、白檀の寝牀の影での独り言をする。

あのころは、あの方に臨行して手を取ってもらって手厚くされ、かさねがさね目をつけられる、そんなことがもう幾千回あったのだ。(それが永遠に続くと思っていた。)

大明宮の圖003
 

 

(訳注)

訴衷情五首其二

(この詩は君王から寵愛が無くなった宮女のおもいを詠ったもの)

『花間集』には魏承班の作が五首収められている。単調四十一字、九句六平韻で、⑦⑤③③⑤ ⑤③⑦③の詞形をとる。

春深花簇小樓  風飄錦繡
新睡覺 步香  山枕印紅
鬢亂墜金釵  語檀
臨行執手重重囑  幾千

○△○●●○○  △○●●○

○●● ●○○  ○△●○○

●●●○○    ●○△

△△●●△△●  △○△

凌波曲舞002
 

春深花簇小樓臺,風飄錦繡開。

春景色は深まり、花は宮女の居る楼閣の望み台に集まっている、風は廻っていて錦の幃、刺繍のとばりを開く。

 [音]ソウ(漢) ゾク(慣) [訓]むらがる群がり集まる。「簇出・簇生」

 

新睡覺,步香堦,山枕印紅腮。

昼寝をして目を覚ますと、少し歩いて犬走りの階段のとこまでお香の香りが届いている。起きて少し経つのに、枕の寝跡が顎から頬にかけてついている。

 1.階段.2等級,レベル.

紅腮 えら【鰓/腮/顋】1 水中にすむ動物の呼吸器官。魚類のものは、ふつう櫛(くし)の歯のような鰓弁(さいべん)に毛細血管が分布し、これに触れる水から酸素をとり、二酸化炭素を出す。2 人のあごの骨の左右に角をなす部分。えらぼね

 

鬢亂墜金釵,語檀隈。

髪は少し乱れたままだし簪が落ち掛けている。話すことは、白檀の寝牀の影での独り言をする。

香木の名。「檀香/栴檀(せんだん)・白檀(びゃくだん)」2 ニシキギ科の落葉樹の名。マユミ。「檀紙」3 梵語の音訳字。布施。「檀家・檀那」〈タン〉木の名。「黒檀・紫檀」

ニシキギ科の落葉低木。山野に生え、葉は楕円形で、対生。雌雄異株。初夏、緑白色の小花が集まって咲き、果実はほぼ四角形で、熟すと四つに裂けて赤い種子が現れる。古くは材で弓を作った。やまにしきぎ。かわくまつづら。《季 花=夏 実=秋》

(「檀弓」とも書く)マユミの木で作った弓。

(かさね)の色目の名。表は蘇芳(すおう)、裏は黄。多く秋に用いる。

 

臨行執手重重囑,幾千迴。

あのころは、あの方に臨行して手を取ってもらって手厚くされ、かさねがさね目をつけられる、そんなことがもう幾千回あったのだ。(それが永遠に続くと思っていた。)

臨行 身分の高い人が出かけて行ってその場に臨むこと。

重重 1 同じことを何度も繰り返すさま。かさねがさね。「の不始末、なにとぞお許しください」2 十分であるさま。よくよく。「

囑 1 ものを頼む。「嘱託/依嘱・委嘱」2 目をつける。「嘱望・嘱目」

13魏承班《巻九04玉樓春二首其二》『花間集』406全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7294

魏承班  玉樓春二首 其二

輕斂翠蛾呈皓齒,鶯囀一枝花影裏。聲聲清迥遏行雲,寂寂畫梁塵暗起。

玉斝滿斟情未已,促坐王孫醉公子。春風筵上貫珠勻,豔色韶顏嬌旖旎。

(初めての園游にすぐに指名された妓優、念奴はわけのわからないうちに初めての夜を過ごす、永新と呼ばれる妓優も夢見心地の生活を詠う。)

袖をたくし上げて、やっと美しい眉を画き化粧をやり直して微笑白い歯が素敵だ。鶯が一つの枝にとまってささやきあい、花が咲き乱れ、花陰のもとに宴が催される。宴は盛り上がると、歌声は遠く澄みわたり、空を流れ行く雲までもおしとどめるほどのすばらしい歌声である。そして、人払いがなされて、誰もいない、静寂が広がる、色で描かれた梁の上には光さえ届かずついぞその塵が初めて二人の愛の強さで動く。耀く盃にお酒を注いでかよい合う情をいまだに消えはしない。高貴なお方の子孫であり、諸侯の子息であるお方とひざを詰めて酔いしれる。春の風流な景色は勤政楼花筵の宴の上にあり、真珠を揃え一聯として垂らされる。艶やかな若さあふれる青春真っただ中の美しい顔立ち、その上やわらくて麗しく、そして愛嬌があるのである。

巻九04

玉樓春二首其二

13魏承班

(改訂版Ver.2.1

《花間集》406巻九04

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7294

魏承班 玉樓春二首

 
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花間集 教坊曲《玉樓春》 七首

牛嶠

《巻四24玉樓春》 春入橫塘搖淺浪,花落小園空惆悵。此情誰信為狂夫,恨翠愁紅流枕上。小玉前嗔鷰語,紅淚滴穿金線縷。鴈歸不見報郎歸,織成錦字封過與

顧夐

《巻六48玉樓春四首其一》 月照玉樓春漏促,颯颯風搖庭砌竹。夢驚鴛被覺來時,何處管絃聲斷續。惆悵少年游冶去,枕上兩蛾攢細綠。曉鶯簾外語花枝,背帳猶殘紅燭。

顧夐

《巻六49玉樓春四首其二》 柳映玉樓春日晚,雨細風輕煙草軟。畫堂鸚鵡語雕籠,金粉小屏猶半掩。香滅繡幃人寂寂,倚檻無言愁思遠。恨郎何處縱疎狂,長使含啼眉不展。

顧夐

《巻六50玉樓春四首其三》 月皎露華影細,風送菊香粘繡袂。博山爐冷水沉微,惆悵金閨終日閉。懶展羅衾垂玉淚,羞對菱花篸寶髻。良宵好事枉教休,無計那他狂耍壻。

顧夐

《巻六51玉樓春四首其四》 拂水雙飛來去鷰,曲檻小屏山六扇。春愁凝思結眉心,綠綺懶調紅錦薦。話別情多聲欲戰,玉筋痕留紅粉面。鎮長獨立到黃昏,卻怕良宵頻夢見。

魏承班

《巻九03玉樓春二首其一》  寂寂畫堂梁上,高卷翠簾橫數扇。一庭春色惱人來,滿地落花紅幾片。愁倚錦屏低雪面,羅金縷線。好天涼月盡傷心,為是玉郎長不見

魏承班

《巻九04玉樓春二首其二》  輕斂翠蛾呈皓齒,鶯囀一枝花影裏。聲聲清迥遏行雲,寂寂畫梁塵暗起。玉滿斟情未已,促坐王孫公子醉。春風筵上貫珠色韶顏嬌旖旎

 

 

玉樓春二首 其一

(寵愛を失って初めての春を過ごす、散ゆく花も庭一面にひろがる、全く会うこともないからもう期待することもない。)

寂寂畫堂梁上鷰,高卷翠簾橫數扇。

春の盛りなのに、寂寂として過ぎてゆく、寝殿奥の色鮮やかな画堂の簷梁の上の燕が巣をながめる、翡翠の飾りの簾を高く巻き上げ、数曲の屏風は閉じられて横倒しにしてある。

一庭春色惱人來,滿地落花紅幾片。

庭一面に春の花が咲けば咲くほどは愁いがつのり、地面を敷き詰める散りし花びらは花の絨毯となり、その上に赤い花弁が散り落ちる。 

愁倚錦屏低雪面,淚滴繡羅金縷線。

錦の屏風に愁いながら倚りかかる裏側の何も書いていない雪のように白い面を低くする、涙はあふれてやまず、衣裳の金糸の刺繍にまで濡らしている。

好天涼月盡傷心,為是玉郎長不見。

素晴らしい初夏の日がこようとも、秋の清々しい素晴らしい月の夜がこようとも、心傷み、愛しいお方であっても、長く会えないというのは、何も期待することもなくなってしまうということなのだ。

 

(玉樓春二首 其一)

寂寂たる畫堂 梁上の鷰,高く翠簾を卷き數扇を橫たう。

一庭の春色 人を惱せ來る,滿地の落花 紅 幾片なる。

愁いて錦屏に倚り 雪の面を低れ,淚 繡羅の金縷の線に滴る。

好天 涼月も 盡く傷心し,是れ 玉郎 長く見ざる為めなり。

 

玉樓春二首 其二

(初めての園游にすぐに指名された妓優、念奴はわけのわからないうちに初めての夜を過ごす、永新と呼ばれる妓優も夢見心地の生活を詠う。)

輕斂翠蛾呈皓齒,鶯囀一枝花影裏。

袖をたくし上げて、やっと美しい眉を画き化粧をやり直して微笑白い歯が素敵だ。鶯が一つの枝にとまってささやきあい、花が咲き乱れ、花陰のもとに宴が催される。

聲聲清迥遏行雲,寂寂畫梁塵暗起。

宴は盛り上がると、歌声は遠く澄みわたり、空を流れ行く雲までもおしとどめるほどのすばらしい歌声である。そして、人払いがなされて、誰もいない、静寂が広がる、色で描かれた梁の上には光さえ届かずついぞその塵が初めて二人の愛の強さで動く。

玉斝滿斟情未已,促坐王孫醉公子。

耀く盃にお酒を注いでかよい合う情をいまだに消えはしない。高貴なお方の子孫であり、諸侯の子息であるお方とひざを詰めて酔いしれる。

春風筵上貫珠勻,豔色韶顏嬌旖旎。

春の風流な景色は勤政楼花筵の宴の上にあり、真珠を揃え一聯として垂らされる。艶やかな若さあふれる青春真っただ中の美しい顔立ち、その上やわらくて麗しく、そして愛嬌があるのである。

玉樓春二首 其二

輕く翠蛾を斂め 皓齒を呈し,鶯 一枝に囀いて 花影の裏。

聲聲 清迥たりて 行雲を遏む,寂寂として 畫梁 塵 暗起す。

玉斝 滿斟っするも 情 未だ已むなし,王孫と促坐し 公子醉う。

春風 筵上 珠勻を貫し,豔色 韶顏にして 嬌 旖旎たり。

 

紅梅202
 

『玉樓春二首 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

玉樓春二首 其二

輕斂翠蛾呈皓齒,鶯囀一枝花影裏。

聲聲清迥遏行雲,寂寂畫梁塵暗起。

玉斝滿斟情未已,促坐王孫公子醉。

春風筵上貫珠勻,豔色韶顏嬌旖旎。

 

(下し文)

玉樓春二首 其二

輕く翠蛾を斂め 皓齒を呈し,鶯 一枝に囀いて 花影の裏。

聲聲 清迥たりて 行雲を遏む,寂寂として 畫梁 塵 暗起す。

玉斝 滿斟っするも 情 未だ已むなし,王孫と促坐し 公子醉う。

春風 筵上 珠勻を貫し,豔色 韶顏にして 嬌 旖旎たり。

 

(現代語訳)

玉樓春二首 其二(初めての園游にすぐに指名された妓優、念奴はわけのわからないうちに初めての夜を過ごす、永新と呼ばれる妓優も夢見心地の生活を詠う。)

袖をたくし上げて、やっと美しい眉を画き化粧をやり直して微笑白い歯が素敵だ。鶯が一つの枝にとまってささやきあい、花が咲き乱れ、花陰のもとに宴が催される。

宴は盛り上がると、歌声は遠く澄みわたり、空を流れ行く雲までもおしとどめるほどのすばらしい歌声である。そして、人払いがなされて、誰もいない、静寂が広がる、色で描かれた梁の上には光さえ届かずついぞその塵が初めて二人の愛の強さで動く。

耀く盃にお酒を注いでかよい合う情をいまだに消えはしない。高貴なお方の子孫であり、諸侯の子息であるお方とひざを詰めて酔いしれる。

春の風流な景色は勤政楼花筵の宴の上にあり、真珠を揃え一聯として垂らされる。艶やかな若さあふれる青春真っただ中の美しい顔立ち、その上やわらくて麗しく、そして愛嬌があるのである。

西湖十景 曲院風荷02
白貯舞005
 

(訳注)

玉樓春二首 其二

(初めての園游にすぐに指名された妓優、念奴はわけのわからないうちに初めての夜を過ごす、永新と呼ばれる妓優も夢見心地の生活を詠う。)

 

歌舞等の技芸を専門に学ぶ女芸人を指していた。唐代の「妓」はすでに専業娼妓の呼称になっていたが、しかし同時に「妓」は歌舞音曲に携わったり、縄・竿・球・馬などを操る女芸人を総称する言葉であって、決して肉体を売る女性だけを指すものではなかった。それで常に「聴妓」(音楽を聴く)とか、「観妓」(歌舞を観る)という言い方があったのである。「妓」は娼妓と女芸人を合せた呼称ということができる。事実、芸人は常に売笑を兼ね、娼妓もまた芸を提供せねばならなかった。両者には時として明確な区別というものがなかったので、合せて「妓」と呼んだのは怪しむに足りない。「娼」となると、唐代には多く娼妓を指した。そして「女優」とか、「女伶」などの類の言葉は当然芸人を指した。しかし、彼女たちの身分・地位・生活などは娼妓と非常に近かったので、両者を合せて「妓優」とか「娼優」とかよぶ呼称が常に存在した。それゆえ彼女たちも一括して論ずることにする。以上は本論に入る前の「正名」(名称と実態を正しく概念規定すること)の作業である。

 

『花間集』には七首所収。魏承班の作は二首収められている。双調五十六字、前段二十八字四句三仄韻、後段二十八字四句三仄韻で、❼❼7❼❼7の詞形をとる。

輕斂翠蛾呈皓  鶯囀一枝花影
聲聲清迥遏行雲  寂寂畫梁塵暗
玉斝滿斟情未  促坐王孫醉公
春風筵上貫珠勻  豔色韶顏嬌旖

△●●△△●●  ○●●○○●●

○○○●●△○  ●●●○○●●

●●●△○●●  ●●△○○●●

○△○●△○○  ●●○○△△●

 

輕斂翠蛾呈皓齒,鶯囀一枝花影裏。

袖をたくし上げて、やっと美しい眉を画き化粧をやり直して微笑白い歯が素敵だ。鶯が一つの枝にとまってささやきあい、花が咲き乱れ、花陰のもとに宴が催される。

6 輕斂 袖をたくし上げて、やっと化粧をやり直して

7 翠蛾  ①青黒い三日月形の眉(マユ)。美人の美しい眉のこと。 ②転じて、美人のこと。この廟の聖女祠。

 

聲聲清迥遏行雲,寂寂畫梁塵暗起。

宴は盛り上がると、歌声は遠く澄みわたり、空を流れ行く雲までもおしとどめるほどのすばらしい歌声である。そして、人払いがなされて、誰もいない、静寂が広がる、色で描かれた梁の上には光さえ届かずついぞその塵が初めて二人の愛の強さで動く。

8 聲聲 この句の雰囲気は、念奴の逸話に基づくものであろう。それは、『開元天宝遺事』に見える。容貌に優れ、歌唱に長け、官妓の中でも、玄宗の寵愛を得ていた。玄宗の近くを離れたことがなく、いつも周りの人々を見つめていて、玄宗に「この女は妖麗で、眼で人を魅了する」と評された。その歌声は、あらゆる楽器の音よりもよく響き渡ったと伝えられる。唐代詩人の元稹の「連昌宮詞」に、玄宗時代の盛時をあらわす表現として、玄宗に命じられた高力士が、彼女を呼び、その歌声を披露する場面がある。

元稹《連昌宮詞》「・・・夜半月高絃索鳴,賀老琵琶定場屋。力士傳呼覓念奴,念奴潛伴諸郎宿。

須臾覓得又連催,特敕街中許然燭。春嬌滿眼睡紅綃,掠削雲鬟旋裝束。

飛上九天歌一聲,二十五郎吹管逐。逡巡大遍涼州徹,色色龜茲轟錄續。

李謨笛傍宮牆,得新翻數般曲。平明大駕發行宮,萬人歌舞塗路中。

百官隊仗避岐薛,楊氏諸姨車斗風。・・・・・」

9 清迥 遠く澄みわたること。迥は遠と同じ。

10 遏 [音]アツ(漢) [訓]とどめる押しとどめる。さえぎりとめる。「禁遏・防遏」

【遏雲の曲】あつうんのきょく。空を流れ行く雲までもおしとどめるほどのすばらしい音楽、または歌声。「遏」はとめる意。「列子」湯問篇の「声振林木、響遏行雲(=声は林木を振るはせ、響きは行雲を遏む)」から。

11 寂寂 1 ひっそりとして寂しいさま。「―たる無人の境に」〈荷風・ふらんす物語〉2 無心なさま。何も考えることのないさま。

 

玉斝滿斟情未已,促坐王孫公子醉。

耀く盃にお酒を注いでかよい合う情をいまだに消えはしない。高貴なお方の子孫であり、諸侯の子息であるお方とひざを詰めて酔いしれる。

12 斝 斝(か)は二里頭期・商代前期・商代後期を通じて重要視された彝器(いき)の一つで、酒を温めるための器である。斝は、王墓や重要な貴族などの墓から出土する程度で、貴重なものであった。

13 斟 くむ水や酒などをくむ。転じて、事情をくみとって、手心を加えること。「斟酌」

間隔をつめてすわる。〔史記・淳于〕

14 王孫 1 帝王の子孫。また、貴族の子弟。2 ツクバネソウの別名。

15 公子 中国の春秋戦国時代の各国の公族の子弟。 君主の子は公子と呼ばれ、公子の子は公孫と呼ばれた。実質上、諸侯は王族に等しく、その子弟も王子と呼んでもさしつかえはないが、建前上は列国は周王の家来であり、王は周王ただ一人であるので、諸侯は公を称し、その子弟は公子となった。

 

春風筵上貫珠勻,豔色韶顏嬌旖旎。

春の風流な景色は勤政楼花筵の宴の上にあり、真珠を揃え一聯として垂らされる。艶やかな若さあふれる青春真っただ中の美しい顔立ち、その上やわらくて麗しく、そして愛嬌があるのである。

15 春風筵上 許和子(永新)の逸話に基づく。『楽府雑録』『開元天宝遺事』に見える。吉州永新県の楽家の生まれの女性で本名を許和子と言った。開元の末年ごろに後宮に入り、教坊の宜春院に属した。その本籍によって、永新と呼ばれた。美貌と聡い性質を持ち、歌に長じ、作曲を行い、韓娥・李延年の千年来の再来と称せられた。玄宗から寵愛を受け、演奏中もその歌声は枯れることがなく、玄宗から「その歌声は千金の価値がある」と評せられる。玄宗が勤政楼から顔を出した時、群衆が騒ぎだしたので、高力士の推薦で永新に歌わせたところ、皆、静まりかえったという説話が伝わっている。

16 勻 勻画数:4音読み:イン訓読み:すくない、 ひとしい

16 韶顏 形容青春年少,容貌美好

17 旖旎 柔らかくて麗しい.

 

 

魏承班  玉樓春二首 【字解】

 

1 梁上燕 梁の上の燕。春に戻って来て巣作りする雌雄番の燕を指し、女の孤独感と年増感を際立たせる。

2 高卷翠簾橫數扇 折り畳み屏風が寝牀のまわりに広げて立てかけられることなく、閉じられたまま、横に置いてある。数扇は数曲の面からなる屏風。

 

一庭春色惱人來,滿地落花紅幾片。

庭一面に春の花が咲けば咲くほどは愁いがつのり、地面を敷き詰める散りし花びらは花の絨毯となり、その上に赤い花弁が散り落ちる。 

3 一庭春色悩入来 庭一面の春景色が人の気持ちを苦悩に導く。

 

愁倚錦屏低雪面,淚滴繡羅金縷線。

錦の屏風に愁いながら倚りかかる裏側の何も書いていない雪のように白い面を低くする、涙はあふれてやまず、衣裳の金糸の刺繍にまで濡らしている。

 

好天涼月盡傷心,為是玉郎長不見。

素晴らしい初夏の日がこようとも、秋の清々しい素晴らしい月の夜がこようとも、心傷み、愛しいお方であっても、長く会えないというのは、何も期待することもなくなってしまうということなのだ。

4 好天涼月尽傷心 いかに素晴らしい好風良月の時に巡り会おうとも、それらはすべて心を悲しませずにはいない。なお涼月の語は、普通は秋の月を指すが、ここでは美しい月のかかる夜の意味。

5 玉郎 美男。ここでは愛しい男の意。

 

牛嶠《玉樓春》

春入橫塘搖淺浪,花落小園空惆悵。

此情誰信為狂夫,恨翠愁紅流枕上。

小玉前嗔鷰語,紅淚滴穿金線縷。

鴈歸不見報郎歸,織成錦字封過與。

(年を重ねたおんなには杜秋娘のように誰も振り向いてくれないのか、回文錦字詩を作っても渡す人もいないのかと詠う。)

春になって大堤に若草や柳の緑が色付き河畔に小波が寄せてくる、やがて花は落ちて高楼の庭にも空しい寂しさに覆われてきた。

この寂寞とした思いは誰がしたのか、それはあの浮気男に決まっている。あの男のくれた翡翠の飾りを怨み、紅白粉をしても愁うだけ、枕にはどれだけの涙を流したことか。

ここにいるほかの女が窓の前で、仲睦まじく「鷰語」で語っているのに怒りを覚える。それでも頬紅をつたって堕ちる涙は床を穿つほどで、歳を重ねた女は「金縷曲」の杜秋娘のように憐れに暮らせというのか。

書簡をつたえる雁が帰ってきたはずなのに、音沙汰がないだけでなく、あの男が帰ってきたというのに、顔を見せないばかりか、報せもないのだ。自分の思いを手ずから錦にその字句を織り込んで、一本を夫のもとに送り、一本を役人に献上した「回文錦字詩」の故事のように織りなしたが、それも何もかもやめて仕舞おう。

《玉樓春》

春入り 塘に橫たうて 淺浪を搖らし,花落ち 小園 空しく惆悵す。

此の情 誰をか信じん 狂夫と為すを,翠を恨み 紅を愁い 枕上に流す。

小玉 前 鷰語に嗔り,紅淚は 滴穿し 金線の縷。

鴈歸るも 郎歸るを報らせるを 見ず,織成の錦字 過ぎるとともに封ず。

 

 

顧夐《玉樓春 四首》

玉樓春 四首 其一

月照玉樓春漏促,颯颯風搖庭砌竹。

夢驚鴛被覺來時,何處管絃聲斷續。

惆悵少年游冶去,枕上兩蛾攢細綠。

曉鶯簾外語花枝,背帳猶殘紅燭。

(玉樓春四首 其の一)

月 玉樓を照し 春 漏促し,颯颯として風 庭の砌の竹を搖す。

夢 鴛被に驚き 覺めて來たる時こそ,何處なるか 管絃 聲 斷續するを。

惆悵するは 少年 游冶に去るなり,枕上 兩蛾 細綠を攢【ひそ】む。

曉鶯 簾外に 花枝に語り,帳を背にして 猶お 紅の燭を殘す。

 

玉樓春四首 其二

柳映玉樓春日晚,雨細風輕煙草軟。

畫堂鸚鵡語雕籠,金粉小屏猶半掩。

香滅繡幃人寂寂,倚檻無言愁思遠。

恨郎何處縱疎狂,長使含啼眉不展。

(玉樓春四首其の二)

柳 玉樓を映し 春の日の晚,雨 細く 風 輕く 煙草 軟かなり。

畫堂 鸚鵡 雕籠に語り,金粉 小屏 猶お半ば掩う。

香 滅し 繡幃 人 寂寂たり,檻に倚り 言無く 愁思 遠くなる。

郎も恨み 何處にか 疎しく狂するを縱【ほいままに】し,長く含啼【がんてい】せしめて 眉 展びず。

 

玉樓春四首 其三

月皎露華影細,風送菊香粘繡袂。

博山爐冷水沉微,惆悵金閨終日閉。

懶展羅衾垂玉淚,羞對菱花篸寶髻。

良宵好事枉教休,無計那他狂耍壻。

(其の三)

月皎 露華 影細く,風 菊香を粘繡の袂に送る。

博山 爐冷え 水に微かに沉み,惆悵して 金の閨 終日閉【とざ】。す

羅衾 懶展し 玉淚 垂れるを,菱花に羞對す 篸寶の髻を。

良宵 好事 枉げて休ま教【し】め,計ること無し 那んぞ 壻を耍【からか】うを他狂せんや

 

玉樓春四首 其四

拂水雙飛來去鷰,曲檻小屏山六扇。

春愁凝思結眉心,綠綺懶調紅錦薦。

話別情多聲欲戰,玉筋痕留紅粉面。

鎮長獨立到黃昏,卻怕良宵頻夢見。

(玉樓春四首其の四)

水を拂い雙飛し來りて鷰去り,曲檻 小屏 山 六扇あり。

春愁 思うに凝【わだかま】り 眉心を結び,綠綺 紅錦 薦するを懶調【らんちょう】す。

別るを話し 情多くして 聲 戰わんと欲し,玉筋 紅粉の面に痕留す。

鎮のごとく長く 獨り黃昏に到るを立つれば,卻て 良宵 頻りに夢見むことを怕る。

巻 八49 菩薩蠻二首 其一 13 魏承班 (改訂版Ver.2.1) 《花間集》401巻八49 全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7269

魏承班  菩薩蠻二首 其一

羅裾薄薄秋波染,眉間畫時山兩點。相見綺筵時,深情暗共知。

翠翹雲鬢動,斂態彈金鳳。宴罷入蘭房,邀入解珮璫。

(秋も深まり、菊と月を愛でる宴において、結ばれることになった妓優からひひんになって初めて寵愛を受けることに)

うす絹の裾から足元が透けて見えてきて秋景色の波はずっと色濃くしている。女の眉の間には花鈿が綺麗に点々と画かれて化粧を整えている。秋を愛でるきれいな宴の花筵に互に見つめ合う二人がいる、愛し合う心はますます深くなり、ますます二人だけの世界に入っていくことを知る。女は翡翠の羽を高く掲げるほど有頂天になって雲型の黒かにを動かしていく、服の乱れを整えて、金の鳳凰の飾りを奇麗に弾いて髪を調える。やがて宴も終る、そして、蘭の香りの閨に入ってゆく、すべてを迎い入れ、佩び玉と耳飾りをといて、はじめて結ばれる。

49

菩薩蠻二首 其一

13

魏承班

(改訂版Ver.2.1

《花間集》401巻八49

全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7269

 

 
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菩薩蠻の世界(1

歴史絵巻は私たちに唐代の女性の生き生きとした姿を示してくれる。

彼女たちはいつも外出して活動し、人前に顔をさらしたまま郊外、市街、娯楽場に遊びに行き、芝居やポロを見物した。毎年春には、男たちと一緒に風光明媚な景勝地に遊びに行き、思うぞんぶん楽しむことさえできた。

·施肩吾少婦游春詞

簇錦攢花勝遊,萬人行處最風流。無端自向春園裏,笑摘青梅阿侯。

(錦を集め、花を潜めて 勝游を闘わせ、万人行く処 最も風流。端無くも自ら向う春園の裏,笑うて摘む青梅阿侯。)(七言句押尤韻)

「三月三日 天気新なり、長安の水辺 麗人多し」(杜甫「麗人行」)などの詩句は、みな上流階級の男女が春に遊ぶさまを詠んだものである。

杜甫《卷二41 麗人行》

三月三日天氣新,長安水邊多麗人。

三月三日 天氣新たに,長安の水邊 麗人多し。

態濃意遠淑且真,肌理細膩骨肉勻。

態は濃く 意は遠くして淑且かつ真に,肌理きりは 細膩さい ぢ にして  骨肉は勻ひとし。

繡羅衣裳照暮春,蹙金孔雀銀麒麟。

繍羅しう ら の衣裳は 莫春に 照はゆる,蹙金しゅくきんの孔雀 く じゃく  銀の麒麟 き りん。

頭上何所有,翠微盍葉垂鬢脣。

頭上何の有る所ぞ, 翠を盎葉おうようと爲して鬢びん脣しんに 垂たる。

背後何所見,珠壓腰衱穩稱身。

背後何の見る所ぞ,珠は腰衱えうけふを壓して穩やかに身に稱かなふ。』

就中雲幕椒房親,賜名大國虢與秦。

就中なかんづく 雲幕の椒房せうばうの親しん,名を賜ふ 大國  虢くゎくと秦しんと。

紫駝之峰出翠釜,水精之盤行素鱗。

紫駝しだの峰を翠釜すゐ ふ より 出いだし,水精の盤に  素鱗 行くばる。

犀箸厭飫久未下,鑾刀縷切空紛綸。

犀箸さいちょ 厭飫えんよして久しく未だ下さず,鸞刀らんたう 縷切る せつして  空しく紛綸たり。

黃門飛鞚不動塵,御廚絡繹送八珍。

黄門 鞚くつわを飛ばして塵を動かさず,御廚ぎょちゅう 絡繹らくえきとして 八珍を送る。

簫鼓哀吟感鬼神,賓從雜遝實要津。

簫管 哀吟して 鬼神をも感ぜしめ,賓從ひんじゅう 雜遝ざったふして  要津えうしんに實みつ。』

後來鞍馬何逡巡,當軒下馬入錦茵。

後れ來たる鞍馬は何ぞ 逡巡んする,軒に當たりて 馬より下りて  錦茵きんいんに入る。

楊花雪落覆白蘋,青鳥飛去銜紅巾。

楊花やうくゎ 雪のごとく落ちて  白蘋はくひんを覆ひ,靑鳥 飛び去りて  紅巾こうきんを銜ふくむ。

炙手可熱勢倫,慎莫近前丞相嗔。

手を炙あぶらば 熱す可べし  勢は絶倫なり,慎みて 近前する莫れ  丞相じょうしゃう 嗔いからん。』

麗人行  杜甫:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 65

彼女たちは公然とあるいは単独で男たちと知り合い交際し、甚だしくは同席して談笑したり、一緒に酒を飲んだり、あるいは手紙のやりとりや詩詞の贈答をしたりして、貞節を疑われることも意に介さなかった。白居易の「琵琶行」という詩に出てくる、夫の帰りを待つ商人の妻は夜半に見知らぬ男たちと同船し、話をしたり琵琶を演奏しあったりしている。それで、宋代の文人洪遇は、慨嘆して「瓜田李下の疑い、唐人は譏らず」(『容斎三筆』巻六)といった。

「瓜田李下之疑, 唐人不譏也。」(瓜田李下の疑い、唐人は譏らず。)

「瓜田に履を入れず、李下(すももの木の下)に冠を正さず」 の格言に基づく、疑われやすい状況のたとえ。

宋の洪邁《容齋三筆‧白公夜聞歌者》「然鄂州所見, 亦一女子獨處, 夫不在焉。 瓜田李下之疑, 唐人不譏也。」

 

彼女たちは「胡服騎射」を好む気風があり、胡服戎装(北方民族の軍装)をしたり、男装したりすることを楽しみ、雄々しく馬を走らせ鞭を振い、「撃を露わにして〔馬を〕馳験せた」(『新唐書』車服志)。

またポロや狩猟などの活動に加わることもできた。

杜甫の《卷四32哀江頭》詩に「輦前才人帶弓箭,白馬嚼齧黄金勒。翻身向天仰射雲,一笑正墜雙飛翼。」(輦前の才人 弓箭【きゅうせん】を 帶び,白馬 嚼噛【しゃくげつ】す 黄金の勒【くつわ】。身を翻して天に向ひ 仰ぎて雲を射れば,一笑 正に堕つ 雙飛翼。天子の乗り物の前に才人などの騎兵隊の女官たちが、弓矢を腰に携えていたのだ。先導する白馬は、黄金製のくつわを噛んで堂々としたものだった。体の向きを変えるように、恩ある天子に向かって仰向(あおむ)いて、雲に反旗の矢を射掛ける。楊貴妃の微笑による王朝の頽廃は、梧桐のつがいになって翼を並べて飛んでいた鳥が、ちょうど墜されたのだ卷四32哀江頭と描写されている。馬上で矢を射る女たちの何と雄々しき姿であることか。彼女たちは勇敢かつ大胆で、よく愛し、よく恨み、また、よく怒りよく罵り、古来女性に押しつけられてきた柔順、謙恭、忍耐などの「美徳」とはほとんど無縁のようだった。誰にも馴れない荒馬を前にして、武則天は公衆に言った。「私はこの馬を制することができる。それには三つの物が必要だ。一つめは鉄鞭、二つめは鉄樋(鉄杖、武器の一種)、三つめは短剣である。鉄鞭で撃っても服さなければ馬首を鉄樋でたたき、それでもなお服さなければ剣でその喉を断つ」(『資治通鑑』巻二〇六、則天后久視元年)と。この話は唐代の女性たちに特有の勇敢で、剛毅な性格をじつに生々と表わしている。

彼女たちは積極的に恋愛をし、貞節の観念は稀薄であった。未婚の娘が秘かに男と情を通じ、また既婚の婦人が別に愛人をつくることも少なくなかった。女帝(武則天)が一群の男寵(男妾)をもっていたのみならず、公主(皇女)、貴婦人から、はては皇后、妃嬢にさえよく愛人がいた。離婚、再婚もきわめて普通であり、唐朝公主の再婚や三度目の結婚もあたりまえで珍しいことではなかった。こうした風習に、後世の道学先生たちはしきりに首をふり嫌悪の情を示した。『西廟記』『人面桃花』『侍女離魂』『蘭橋遇仙』『柳毅伝書』等の、儒教道徳に反した恋愛物語が、どれも唐朝に誕生したことは、この常よい証拠である。

 

彼女たちの家庭における地位は比較的高く、「婦は強く夫は弱く、内(女)は齢く外(男)は柔かい」(張鷲『朝野愈載』巻四)といった現象はどこにでも見られた。唐朝の前期には上は天子から下は公卿・士大夫に至るまで、「恐妻」がなんと時代風潮にさえなったのである。ある道化の楽人は唐の中宗の面前で、「かかあ天下も大いに結構」(孟築『本事詩』嘲戯)と歌ったことで、韋皇后から褒美をもらったという。御史大夫の襲談は恐妻家としてたいへん有名であったばかりか、妻は恐るべしという理論までもっていた。妻たちが家で勝手気ままに振舞っているのを見聞したある人は、大いに慨嘆して次のようにいった。「家をもてば妻がこれをほしいままにし、国をもてば妻がそれを占拠し、天下をもてば妻がそれを指図する」(干義方『異心符』)と。

この時代には、まだ「女子は才無きが輒ち是れ徳なり」(清の石成金の『家訓抄』が引く明の陳眉公の語)という観念は形成されていなかった。宮廷の妃嫁、貴婦人、令嬢から貧しい家の娘、尼僧や女道士、娼妓や女俳優、はては婦女にいたるまで文字を識る者がきわめで多く、女性たちが書を読み文を作り、詩を吟じ賊を作る風潮がたいへん盛んであった。これによって唐代には数多くの才能ある女性詩人が生れたのである。女道士の魚玄機はかつて嘆息して、「自ら恨む 羅衣の 詩句を掩うを、頭を挙げて空しく羨む 模中の名(女に生れて詩文の才を発揮できないのが恨めしい。むなしく科挙合格者の名簿を眺める)」(「崇真観の南楼に遊び、新及第の題名の処を括る」)と詠んだ。この詩句は、女性が才能の点で男性に譲らぬ自信をもってはいるが、男とともに金棒(科挙合格者発表の掲示板)に名を載せ、才能を発揮できない無念さをよく表している。

 

 

花間集 巻八 魏太尉承班二首  / 花間集 巻九 魏太尉承班十三首

 

魏承斑(生卒年未詳、およそ九三〇年前後に在世)

前蜀の詞人。字、出身地ともに未詳。魏承斑の父親の魏宏夫は、前蜀の王建の養子となり、王宗弼の名を賜り、斉王に封じられた。蜀承斑は鮒馬都尉(皇女の婿に与えられる官職)となり、官は大尉に至った。その詞は、専ら抒情を主とし、淡白にして明噺で、人々は好んでその詞を模倣したと言われ、薛昭蘊や牛橋には譲るが、毛文錫には勝ると評価されている。『花間集』には十五首の詞が収められている。全唐詩によりなお六首を補うことができる。詞風は溫庭筠に近い。

 

 

菩薩蠻二首 其一

(秋も深まり、菊と月を愛でる宴において、結ばれることになった妓優からひひんになって初めて寵愛を受けることに)

羅裾薄薄秋波染,眉間畫時山兩點。

うす絹の裾から足元が透けて見えてきて秋景色の波はずっと色濃くしている。女の眉の間には花鈿が綺麗に点々と画かれて化粧を整えている。

相見綺筵時,深情暗共知。

秋を愛でるきれいな宴の花筵に互に見つめ合う二人がいる、愛し合う心はますます深くなり、ますます二人だけの世界に入っていくことを知る。

翠翹雲鬢動,斂態彈金鳳。

女は翡翠の羽を高く掲げるほど有頂天になって雲型の黒かにを動かしていく、服の乱れを整えて、金の鳳凰の飾りを奇麗に弾いて髪を調える。

宴罷入蘭房,邀入解珮璫。

やがて宴も終る、そして、蘭の香りの閨に入ってゆく、すべてを迎い入れ、佩び玉と耳飾りをといて、はじめて結ばれる。

(菩薩蠻二首 其の一)

羅裾 薄薄として秋波染め,眉間 畫時 山兩點たり。

相い見る 綺筵の時を,深く情す 暗く共に知るを。

翠翹して 雲鬢動き,態を斂めて 金鳳を彈く。

宴罷み 蘭房に入る,邀えて入る 珮璫を解く。

 

菩薩蠻二首 其二

羅衣隱約金泥畫,玳筵一曲當秋夜。

聲戰覷人嬌,雲鬟裊翠翹。

酒醺紅玉輭,眉翠秋山遠。

繡幌麝煙沉,誰人知兩心。

 

大明宮の圖003
 

『菩薩蠻二首 其一』 現代語訳と訳註

(本文)

羅裾薄薄秋波染,眉間畫時山兩點。

相見綺筵時,深情暗共知。

翠翹雲鬢動,斂態彈金鳳。

宴罷入蘭房,邀入解珮璫。

 

(下し文)

(菩薩蠻二首 其の一)

羅裾 薄薄として秋波染め,眉間 畫時 山兩點たり。

相い見る 綺筵の時を,深く情す 暗く共に知るを。

翠翹して 雲鬢動き,態を斂めて 金鳳を彈く。

宴罷み 蘭房に入る,邀えて入る 珮璫を解く。

 

(現代語訳)

(秋も深まり、菊と月を愛でる宴において、結ばれることになった妓優からひひんになって初めて寵愛を受けることに)

うす絹の裾から足元が透けて見えてきて秋景色の波はずっと色濃くしている。女の眉の間には花鈿が綺麗に点々と画かれて化粧を整えている。

秋を愛でるきれいな宴の花筵に互に見つめ合う二人がいる、愛し合う心はますます深くなり、ますます二人だけの世界に入っていくことを知る。

女は翡翠の羽を高く掲げるほど有頂天になって雲型の黒かにを動かしていく、服の乱れを整えて、金の鳳凰の飾りを奇麗に弾いて髪を調える。

やがて宴も終る、そして、蘭の香りの閨に入ってゆく、すべてを迎い入れ、佩び玉と耳飾りをといて、はじめて結ばれる。

興慶宮沈香亭
 

(訳注)

菩薩蛮二首其一

(秋も深まり、菊と月を愛でる宴において、結ばれることになった妓優からひひんになって初めて寵愛を受けることに)

 

『花間集』には魏承斑の作が二首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎⑤⑤の詞形をとる。

菩薩蠻二首 其一

羅裾薄薄秋波,眉間畫時山兩

相見綺筵,深情暗共

翠翹雲鬢,斂態彈金

宴罷入蘭,邀入解珮

○○●●○○●  ○△●○○●●

△●●○○  △○●△○

●△○●●  ●●△○●

●△●○○  ○●●●○

 

羅裾 薄薄秋波染,眉間畫時山兩點。

うす絹の裾から足元が透けて見えてきて秋景色の波はずっと色濃くしている。妃嬪の眉の間には花鈿が綺麗に点々と画かれて化粧を整えている。

1 羅:絡み織を用いた、目の粗い絹織物の一種。 もともと羅とは鳥や小動物などを捕獲するための網を意味する言葉だったが、絹で織った網のような薄物を指す言葉にもなった。2 :膝から下という意味。転じて、衣服の下の方。

3 眉間山兩點 花鈿をかくこと。

 

相見綺筵時,深情暗共知。

秋を愛でるきれいな宴の花筵に互に見つめ合う二人がいる、愛し合う心はますます深くなり、ますます二人だけの世界に入っていくことを知る。

 

翠翹雲鬢動,斂態彈金鳳。

妃嬪は翡翠の羽を高く掲げるほど有頂天になって雲型の黒かにを動かしていく、服の乱れを整えて、金の鳳凰の飾りを奇麗に弾いて髪を調える。

4 翹《意味》. あげる。鳥の尾羽のように、高くかかげる。つまだてる。つま先だって背を高くする。 特に秀でた人。また、特にすぐれているさま。ぬきんでる。 【翹楚】ぎょうそ. 大勢の中でとびぬけてすぐれていること。また、その人。 「楚」は、特に丈の高い木。

5 斂態彈金鳳 服の乱れを整えて、金の鳳凰の飾りを奇麗に弾いて髪を調える。斂態:服の乱れをまとめること。

酒泉子三首其三

斂態前,裊裊雀釵頸。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

12孫光憲《巻八19酒泉子三首其三》『花間集』371全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7127

 

宴罷入蘭房,邀入解珮璫。

やがて宴も終る、そして、蘭の香りの閨に入ってゆく、すべてを迎い入れ、佩び玉と耳飾りをといて、はじめて結ばれる。

6 珮璫 佩び玉と耳飾り。・珮:① 身につけるもの。腰にさげる装飾品。 奈良時代,礼服(らいふく)に用いた装飾品。組み糸に玉を通し,胸の下から沓(くつ)のところまで垂らし,歩くときに鳴るようにしたもの。おんもの。玉佩。・璫:耳珠・冠飾。〔「木尻」の意〕 刀剣の鞘(さや)の末端。また,そこにはめる金物。 〘建〙(「木尻」とも書く)部材の先端の総称。主として,破風板・垂木などの下方の端。

 

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孫光憲  風流子三首其二

樓倚長衢欲暮,瞥見神仙伴侶。

微傅粉,攏梳頭,隱映畫簾開處。

無語,無緒,慢曳羅裙歸去。

(神仙境といわれる後宮での今宵の佳き伴侶として過ごす妃嬪が選ばれる、まだ幼さを残した妃嬪は、まだあどけない素振りをくりかえす)

日が堕ち、高殿欄干に寄りかかると、大通りに日は落ち、都には夕闇がせまる、神仙郷、後宮の寝殿において、よき伴侶として良く勤めてくれる妃賓を、ざっと目を通し選ばれる。薄化粧でも充分美しいし、髪を梳く姿に魅了される、きれいな絵簾を開けようとしてそこまで行くと、美しい姿を隠れん坊をして、見え隠れする。黙って寄り添い、離れるのは厭だというような顔をする。そして、はにかんで、ゆるゆると薄絹のスカートを引いて奥に去る。

12孫光憲《巻八27風流子三首其二》『花間集』379全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7160

 

 
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孫光憲

巻八26風流子三首其一  茅舍槿籬溪曲,雞犬自南自北。菰葉長,水開,門外春波漲綠。聽織,聲促,軋軋鳴梭穿屋。

孫光憲

巻八27風流子三首其二  樓倚長衢欲暮,瞥見神仙伴侶。微傅粉,攏梳頭,隱映畫簾開處。無語,無緒,慢曳羅裙歸去。

孫光憲

巻八28風流子三首其三  金絡玉銜嘶馬,繫向綠楊陰下。朱掩,繡簾垂,曲院水流花謝。歡罷,歸也,猶在九衢深夜。

 

 

風流子三首其一

(昔、寵愛を受け、後宮で暮らした妃嬪が、川辺の草堂の春を詠い、秋を詠う、隠遁者のように風流を詠う。)

茅舍槿籬溪曲,雞犬自南自北。

草ぶきの四阿にはムクゲの生垣に囲まれていて琴の「前溪曲」が聞えてくる、近くで鶏や犬の鳴き声が南から、北の方からも聞こえてくる。

菰葉長,水開,門外春波漲綠。

春は、離宮の前の川に生えている菰の葉は長く伸びているし、水草の花が開いている。南の門の向うに春の増水でと手の若草に水嵩が上がり漲り、波が立っている。

聽織,聲促,軋軋鳴梭穿屋。

秋には、蟋蟀の鳴き声を耳を澄ましていいていたら、今度はどこからでも聞こえてくる。車のキシミ音のように聞こえてくるけど、琴絃を弓で弾く音か「穿屋巷」に響き渡る。

 

(風流子三首其の一)

茅舍 槿籬 溪曲あり,雞犬は 南より 北より。

菰葉は 長く,水は 開く,門外 春波 綠漲る。

織を聽けば,促を聲く,軋軋として 穿屋に鳴梭す。

 

風流子三首其二

(神仙境といわれる後宮での今宵の佳き伴侶として過ごす妃嬪が選ばれる、まだ幼さを残した妃嬪は、まだあどけない素振りをくりかえす)

樓倚長衢欲暮,瞥見神仙伴侶。

日が堕ち、高殿欄干に寄りかかると、大通りに日は落ち、都には夕闇がせまる、神仙郷、後宮の寝殿において、よき伴侶として良く勤めてくれる妃賓を、ざっと目を通し選ばれる。

微傅粉,攏梳頭,隱映畫簾開處。

薄化粧でも充分美しいし、髪を梳く姿に魅了される、きれいな絵簾を開けようとしてそこまで行くと、美しい姿を隠れん坊をして、見え隠れする。

無語,無緒,慢曳羅裙歸去。

黙って寄り添い、離れるのは厭だというような顔をする。そして、はにかんで、ゆるゆると薄絹のスカートを引いて奥に去る。

(風流子三首其の二)

楼は長衢【ちょうく】に倚りて 暮れんと欲し、神仙の伴侶を瞥見す。

微かに粉を傳き、頭を攏し梳く、隠映す 画簾の開く処。

語ること 無く、緒 無し、慢に羅裙を曳きて 帰り去る。

 

風流子三首其三

金絡玉銜嘶馬,繫向綠楊陰下。

掩,繡簾垂,曲院水流花謝。

歡罷,歸也,猶在九衢深夜。

長安城図 作図00
 

 

『風流子三首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

風流子三首其二

樓倚長衢欲暮,瞥見神仙伴侶。

微傅粉,攏梳頭,隱映畫簾開處。

無語,無緒,慢曳羅裙歸去。

 

(下し文)

(風流子三首其の二)

楼は長衢【ちょうく】に倚りて 暮れんと欲し、神仙の伴侶を瞥見す。

微かに粉を傳き、頭を攏し梳く、隠映す 画簾の開く処。

語ること 無く、緒 無し、慢に羅裙を曳きて 帰り去る。

 

(現代語訳)

(神仙境といわれる後宮での今宵の佳き伴侶として過ごす妃嬪が選ばれる、まだ幼さを残した妃嬪は、まだあどけない素振りをくりかえす)

日が堕ち、高殿欄干に寄りかかると、大通りに日は落ち、都には夕闇がせまる、神仙郷、後宮の寝殿において、よき伴侶として良く勤めてくれる妃賓を、ざっと目を通し選ばれる。

薄化粧でも充分美しいし、髪を梳く姿に魅了される、きれいな絵簾を開けようとしてそこまで行くと、美しい姿を隠れん坊をして、見え隠れする。

黙って寄り添い、離れるのは厭だというような顔をする。そして、はにかんで、ゆるゆると薄絹のスカートを引いて奥に去る。

大明宮 作図011
 

(訳注)

風流子三首其二

(神仙境といわれる後宮での今宵の佳き伴侶として過ごす妃嬪が選ばれる、まだ幼さを残した妃嬪は、まだあどけない素振りをくりかえす)

 

唐の教坊の曲名。またの名を内家嬌、驪山石と言う。『花間集』には孫光憲の三首のみ所収。単調三十四字、八句六仄韻で、❻❻33❻❷❷❻の詞形をとる。

風流子三首其一

茅舍槿籬溪,雞犬自南自

菰葉長,水開,門外春波漲

,聲,軋軋鳴梭穿

△●●○○●  ○●●○●●

○●△  ●○○ ○●○○△● 

△● ○●  ●●○○△●

風流子三首其二

唐の教坊の曲名。またの名を内家嬌、驪山石と言う。『花間集』には孫光憲の三首のみ所収。単調三十四字、八句六仄韻で、❻❻33❻❷❷❻の詞形をとる。

樓倚長衢欲,瞥見神仙伴

微傅粉,攏梳頭,隱映畫簾開

,無,慢曳羅裙歸

○△△○●●  ●●○○●●

○△●  ●○○ ●●●○○●

○● ○●  ●●○○○●

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

樓倚長衢欲暮,瞥見神仙伴侶。

日が堕ち、高殿欄干に寄りかかると、大通りに日は落ち、都には夕闇がせまる、神仙郷、後宮の寝殿において、よき伴侶として良く勤めてくれる妃賓を、ざっと目を通し選ばれる。

13. 長衛 街の中心の大通り、交通の要衝の地。長安の承天門―朱雀門―明徳門の朱雀門街を示すことで長安城に夕闇が訪れたことを言う。

14. 欲暮 暮れようとしている。欲は今にも〜しそうだ、の意。

15. 神仙伴侶 神仙のともがら、仙女。花街で、風流な日を過ごすなかで女性が男にとってよき伴侶でいてくれること、文字通り、痒い所に手が届くおもてなしをしてくれていることを風流に表現する。女道士で後宮に入った妃嬪と思われる。

16. 瞥見 ちらりと見ること。ざっと目を通すこと。一瞥。

 

微傅粉,攏梳頭,隱映畫簾開處。

薄化粧でも充分美しいし、髪を梳く姿に魅了される、きれいな絵簾を開けようとしてそこまで行くと、美しい姿を隠れん坊をして、見え隠れする。

17. 徴博 粉薄く白粉を塗る。

18. 攏梳頭 髪をさっと梳かす。攏は櫛などで筋目をっけること。

19. 隠映 隠れん坊をして、見え隠れする。

 

無語,無緒,慢曳羅裙歸去。

黙って寄り添い、離れるのは厭だというような顔をする。そして、はにかんで、ゆるゆると薄絹のスカートを引いて奥に去る。

20. 無緒 楽しい思いがしない、心楽しまない。ここでは女性が浮かぬ顔をしていることを言う。

 

 

(風流子三首其の二)

楼は長衢【ちょうく】に倚りて 暮れんと欲し、神仙の伴侶を瞥見す。

微かに粉を傳き、頭を攏し梳く、隠映す 画簾の開く処。

語ること 無く、緒 無し、慢に羅裙を曳きて 帰り去る。

 

孫光憲  風流子三首 其一其二 【字解】

 

1.        風流子. 唐教坊曲名。寵愛を失った妃賓、離宮か、墓陵に送られた妃嬪を思い浮かべる作品である。この時代に風流に自然を眺められるのは、何らかの安定した収入源がある女性が前提である。「男耕女織」の時代であるが、この詩には全く労働の気配が感じられない。犬が遠くで鳴き、鶏、鳥が鳴く声が、琴の曲とし、コオロギの声も、琴箏に聞こえる、昔は、春の行楽、秋の菊美、月見にことを演奏し、聞いていた人物であるから、宮中にいた女性、妃嬪という立場であったものが暇を取らされたということである。或は、後宮にいても、寵愛を受けない妃嬪たちは、することは全くないから、この詩の状況に置かれることもあるのである。

『唐六典』 の内官制度の規定によると、后妃たちにも職務が決められていた。妃嬪は皇后を補佐し、「坐して婦礼を論じ」、「内廷に在って万事を統御する」、六儀(後宮にある六つの官庁)は「九御(天子に奉侍する女官たち)に四徳(婦徳・婦言・婦容・婦功)を教え、傘下の婦人を率いて皇后の儀礼を讃え導く」、美人は「女官を率いて祭礼接客の事を修める」、才人は「宴会、寝所の世話を司り、糸枲のことを理め、その年の収穫を帝に献じる」等々。しかしながら、これらの仕事も大半は形式的なもので、なんら実際の労働ではなかった。形式的な「公職」以外で、彼女たちの生活の最も重要なことは、言うまでもなく皇帝の側に侍り、外出の御供をすることであった。彼女たち自身の私的な生活はと言えば、ただいろいろな娯楽、遊戯を思いついては日時をすごし、いかにして孤独と退屈をまざらわすかということに尽きる。「内庭の嬪妃は毎年春になると、宮中に三人、五人と集まり、戯れに金銭を投げ表裏を当てて遊んだ。これは孤独と苦悶の憂さを晴らすためであった」、「毎年秋になると、宮中の妃妾たちは、美しい金製の小龍に蟋蟀を捉えて閉じ込め、夜枕辺に置いて、その鳴き声を聴いた」(王仁裕『開元天宝遺事』巻上)。これらが彼女たちの優閑無聊の生活と娯楽や気晴らしのちょっとした描写である。

2. 茅舍 草ぶきの家,あばら家,茅屋,拙宅.

3. 槿籬 槿(ムクゲ)のいけがき。「槿籬竹屋江村路。槿籬竹屋江村の路」〔王安石・鍾山晩歩〕.

4. 溪曲 前溪曲のこと。古楽府吴声舞曲。

5. 雞犬 『老子、獨立第八十』「鄰國相望、雞犬之聲相聞」(鄰國相い望み、雞犬の聲相い聞ゆる)

6. 動物の飼育

「年は二八(十六歳)、久しく香閏に鎖こめられ、禍児(狩)と鶴鵡を相手に戯ぶのが愛き」(『敦煙変文社会風俗事物考』より引用)とあるように、家庭の少女や婦人、それに宮中の女性たちは常に鶴鵡や犬などの小動物を友として飼い、寂しさをまざらわせていた。楊貴妃が飼っていた鶴鵡は雪衣女といい、犬は康国(中央アジアのサマルカンド)から献上されたもので、どちらも高貴な品種であった。宮女や妃妾もまた常に小さな金の龍に蟻蜂を捉えて飼い、夜枕辺に置いて鳴き声を聞き、孤独の苦しみをまざらわせた。後に、この風習を民間が争ってまねるようになり、蟻蜂を飼うのを娯楽とした(『開元天宝遺事』巻上)。

7. 菰 ① マコモやわらで織った筵(むしろ)。 マコモの古名。 「三島江の入江の-をかりにこそ/万葉集 2766 「薦被(こもかぶ)り② 」の略。

8. 水 1.亦作"" 2.水草名。一年生草本。

9. 聽織,聲促 「聽促織,聲促織」ということ。

杜甫『促織』

促織甚微細、哀音何動人。

草根吟不穏、牀下意相親。

久客得無涙、故妻難及晨。

悲糸与急管、感激異天真。

(促 織)

促織【そくしょく】は  甚【はなは】だ微細なるに、哀音【あいおん】  何ぞ人を動かすや。

草根【そうこん】に 吟ずること 穏かならず、牀下【しょうか】に 意 相【あい】親しむ。

久客【きゅうかく】 涙 無きを得んや、故妻【こさい】  晨【あした】に及び難し。

悲糸【ひし】と急管【きゅうかん】と、感激は天真【てんしん】に異なり。

秦州抒情詩(11)   促織 杜甫 <296> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1355 杜甫詩 700- 416

10 軋軋 清楽は12弦箏を用いたが,他は13弦箏を普通とした。 奏法には指で奏する搊(しゆう),骨製の爪(義甲)で奏する弾,弦を擦って鳴らす軋(あつ)があったというが,搊と弾の意味はかならずしも明確ではない。車にキシミ音のような音。

11. 鳴梭 横糸とする糸を巻いた管を、舟形の胴部の空所に収めたもの。端から糸を引き出しながら縦糸の間を左右にくぐらせる。シャトル。

12. 穿屋 「穿屋巷」細い細い路地のこと。

 

主に宮中の年中行事

年中行事は、唐代では史料も増え、政府の儀礼だけでなく、都市における行事の詳細も分かるようになっている。行事の中でも、立春から冬至までの八節(二十四節気参照)と重日が重要視された。唐代の年中行事は、国家の安泰や農作物の豊穣や無病息災、神々や祖先との交流し、社会的共同性を更新する機会であり、宗教的呪術の場でもあった。

元会は、元旦に都である長安太極宮もしくは大明宮で皇帝が行う朝賀である。元会には各国の使者や百官が集まり、式典を行った。百官は元旦と前後3日間合計7日間休み、元会の儀式が終わると、残る3日新春の訪れを家族と祝った。正月には竹を燃やし、爆竹が鳴らされ、悪霊を追い払った。また、屠蘇酒を飲み、健康を祝い、膠牙糖という水飴を舐めた。

人日節正月7日に行われた行事である。祝宴が宮廷で行われ、百官に魔よけの人形の切り絵である「人勝」が配られる。この日、7種の野草を使う羮が作られた。

上元節は正月15日の前後3日間続く灯籠祭りであり、元宵節とも呼ばれ、仏教の影響もあって、最も盛んとなった祭りである。上元節の期間中は、夜行の禁が解かれ、都市、田舎を問わず、家ごとに灯籠を掛け連ね、着飾った大勢の見物人が夜通し活動する。大都市では、灯籠を無数に連ねた灯樹、灯輪、山棚などというものが飾られ、都市内各地で見物することができた。上元節の灯籠は、玄宗期に隆盛を迎え、その盛大さは多くの唐詩に唱われている。長安では、皇帝も元宵節を楽しみ、雑踏は非常に激しいもので、落とし物も朝には市中にあちこちに転がったと伝えられる。また、昼間は抜河(綱引き)が行われた。長安以外では、洛陽揚州涼州でも大規模な祭りが開かれた。玄宗期の一時期は2月に開かれていた。

探春の宴は早春の野に春の風景を探す行事である。送窮日は、1月最終日で、貧乏神を送り出す行事である。

寒食節は、2月末に、一日中冷たいものを食べる。前後3日間、火を焚くこと、夜間に灯りをつけることを禁じられた。清明節は、31日に寒食節が終わると、一続きで行われる、家で新火をおこし始める行事である。

寒食の用語解説 - 古代中国で、冬至から105日目に、火気を用いないで冷たい食事をしたこと。そのころは風雨が激しいので火災予防のためとも、また、一度火を断って新しい火で春を促すためともいう。

上巳節は、33日に行われる河や池の水で身体を洗う行事である「祓禊」が行われる。長安付近では、曲江池や渭水で行った。全体的に行楽のような意味合いを持った行事で、景色を楽しんだり、宴会が開かれたりした。

春の行事:探春の宴、送窮日、寒食節、清明節、上巳節

秋の行事:七夕、天長節、中秋節、重陽節

端午節は、55日に、悪鬼を防ぐため、艾(よもぎ)人形を戸口にかけ、艾のを頭にかぶる行事である。粽子(ちまき)を食べ、竜船競渡(ボートレース)を行うこともあった。宮廷でも、衣服やチマキが下賜された。部屋に飾る鍾馗の絵は唐代からはじまっている。

夏至には、百官は3日間の休みが与えられる。

七夕は、77日に、年に一度、織女星と牽牛星が会う日である。爆衣・爆書という衣類書籍の虫干しが行われ、夜にや瓜を食べ、を立てて二つの星を祭る。針穴に色糸を通して織物の上達を祈る「乞巧節」でもある。

天長節は、85日の玄宗の誕生日を国慶節としたことによる。宮廷では宴席を行い、興慶宮の広場で、玄宗のもとで宮廷楽団の音楽や大規模な舞踊、出し物や曲芸軽業手品などの百戯が行われた。全国の寺観でも盛大な儀式が行われ、農民も天神を祭るという行事に組み入れられた。

「中秋節は、815日に、中秋の名月を眺める日であり、この日の満月が最も美しい月とされた。果物などを食べながら、月見を行った。唐代の半ばにはじまり、晩唐には定着した。

重陽節は、99日に、人々が高い丘や高楼の高所に登高し、茱萸(かわはじかみ)の枝や菊の花を髪に挿し、その実を入れた袋を肘に下げ、菊酒を飲み邪気を祓う行事である。翌日の910日が小重陽で酒宴が開かれた。

冬至節は、1115日に、皇帝が朝賀を行う前に天に祭り、天下太平・五穀豊穣を祈り、式典が催される。元旦とともに重視され、官僚は7日間の休日を与えられた。民間でも「拝冬」として祝い、ご馳走をする。この前夜は、「至除夜」と言われ、徹夜して夜明けを迎える。

臘日は成道日の128日に、酒宴などを行って祝う行事。宮中でも宴会が開かれる。

徐夕は、1229日か30日の1年の最終日。夜の「除夜」に、新しい年を迎えるため、酒を飲んで、徹夜する。宮廷では「大儺」の儀式が行われた。

12孫光憲《巻八22更漏子二首其一》『花間集』374全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7142

孫光憲  更漏子二首其一

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

12孫光憲《巻八22更漏子二首其一》『花間集』374全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7142

 

 
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花間集 教坊曲『更漏子』十六首

溫庭筠

巻一15更漏子六首其一柳絲長,春雨細,花外漏聲迢遞。驚塞鴈,起城烏,畫屏金鷓鴣。香霧薄,透簾幕,惆悵謝家池閣。紅燭背,繡簾垂,夢長君不知。

溫庭筠

巻一16更漏子六首其二星斗稀,鐘鼓歇,簾外曉鶯殘月。蘭露重,柳風斜,滿庭堆落花。虛閣上,倚蘭望,還似去年惆悵。春欲暮,思無窮,舊歡如夢中。

溫庭筠

巻一17更漏子六首其三金雀釵,紅粉面,花裡暫如相見。知我意,感君憐,此情須問天。香作穗,成淚,還似兩人心意。山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。

溫庭筠

巻一18更漏子六首其四相見稀,相憶久,眉淺淡烟如柳。垂翠幕,結同心,待郎燻繡衾。城上月,白如雪,蟬髩美人愁。宮樹暗,鵲橋橫,玉籤初報明。

溫庭筠

巻一19更漏子六首其五背江樓,臨海月,城上角聲嗚咽。堤柳動,島煙昬,兩行征鴈分。西陵路,歸帆渡,正是芳菲欲度。銀燭盡,玉繩低,一聲村落雞。

溫庭筠

巻一20更漏子六首其六玉鑪香,紅蠟淚,偏照畫堂秋思。眉黛薄,髩雲殘,夜長衾枕寒。梧桐樹,三更雨,不道離情正苦。一葉葉,一聲聲,空階滴到明。

韋莊

巻三23更漏子鐘皷寒,樓閣暝,月照古桐金井。深院閉,小庭空,落花香露紅。煙柳重,春霧薄,燈背水高閣。閑倚,暗沾衣,待郎郎不歸。

牛嶠

巻四11更漏子三首其一 星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。挑錦字,記情事,惟願兩心相似。收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。

牛嶠

巻四12更漏子三首其二 春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。驚夢斷,錦屏深,兩明月心。閨艸碧,望歸客,還是不知消息。辜負我,悔憐君,告天天不聞。

牛嶠

巻四13更漏子三首其三南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。

毛文錫

巻五12 更漏子一首 春夜闌,春恨切,花外子規啼月。人不見,夢難憑,紅紗一點燈。偏怨別,是芳節,庭中丁香千結。宵霧散,曉霞輝,梁間雙鷰飛。

顧夐

巻七37 更漏子一首  舊歡,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。

孫光憲

巻八22更漏子二首其一 聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡,下珠簾,滿庭噴玉蟾。人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

孫光憲

巻八23更漏子二首其二 今夜期,來日別,相對秖堪愁。隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。

毛熙震

巻九43更漏子二首其一  秋色清,河影澹,深燭寒光暗。幌碧,錦衾紅,博山香融。更漏咽,蛩鳴切,滿院霜華如雪。新月上,薄雲收,映簾懸玉鉤

毛熙震

巻九44更漏子二首其二  煙月寒,秋夜靜,漏轉金壺初永。羅幕下,屏空,燈花結碎紅。人悄悄,愁無了,思夢不成難曉。長憶得,與郎期,竊香私語時

 

 

更漏子二首其一

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。

扃繡,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。

誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。

雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

 

(更漏子二首 其の一)

寒更を聽けば,遠く鴈を聞く,半夜 蕭娘 深き院。

扃し,珠簾を下る,滿庭 玉蟾噴く。

人語 靜かにして,香閨 冷く,紅幕 半ば垂れて清影あり。

雲雨 態し,蕙蘭の心,此情 江海 深くす。

 

更漏子二首其二

今夜期,來日別,相對秖堪愁

隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。

銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。

聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。

pla029
 

 

『更漏子二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

更漏子二首其一

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。

扃繡,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。

雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

 

(下し文)

(更漏子二首 其の一)

寒更を聽けば,遠く鴈を聞く,半夜 蕭娘 深き院。

扃し,珠簾を下る,滿庭 玉蟾噴く。

人語 靜かにして,香閨 冷く,紅幕 半ば垂れて清影あり。

雲雨 態し,蕙蘭の心,此情 江海 深くす。

 

(現代語訳)

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。

中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。

誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。

二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

朱槿花・佛桑華00
 

(訳注)

更漏子二首其一

(富貴の家の歌妓が今夜は歌っていない。漏刻の音がしっかり聞えるし、雁の啼くのも聞こえた。奥座敷で二人が交わっているからだと詠う。)

 

1.    更漏 漏壺であり、計時器をいう。 古代、滴漏計時に用いたもの, 夜間、漏刻に憑り更を傳える, 故に稱す。 唐の李肇が《唐國史補》卷中に漏刻を説明している。「 惠遠以山中不知更漏,乃取銅葉製器,狀如蓮花,置盆水之上,底孔漏水,半之則沈,每晝夜十二沈, 為行道之節, 雖冬夏短長, 雲陰月黑, 亦無差也。」

 

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、336335/336335の詞形をとる。

更漏子二首其一

聽寒更,聞遠,半夜蕭娘深。扃繡,下珠,滿庭噴玉

人語靜,香閨,紅幕半垂清。雲雨態,蕙蘭,此情江海

△○△  △●● ●●○○△△ ○●● ●○○  ●○△●○

○●●  ○○△ ○●●○○●  ○●● ●○○  ●○○●△

 

聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。

真夜中を過ぎて時を知らせる漏刻の音が聴こえてくると寒さが増してくる、遠くの方で雁が鳴いていくのが聞える。歌妓のあの娘も真夜中過ぎれば奥の閨にいる。

2. 寒更 夜更けの薄ら寒い様を言いう。五更: 1 一夜を初更(甲夜)・二更(乙夜(いつや))・三更(丙夜)・四更(丁夜)・五更(戊夜(ぼや))に五等分した称。2 五更の第五。およそ現在の午前3時から午前5時、または午前4時から午前6時ころにあたる。寅(とら)の刻。戊夜。

3. 蕭娘 歌妓の名前。「唐娘」「謝娘」など六朝時代の女妓の一般呼称。民妓、家妓、美女や妓女、あるいは愛妾をいう。

沈満願『戯蕭娘』

明珠翠羽帳、金薄綠綃帷。

因風時蹔擧、想像見芳姿

凊晨插歩揺、向晩解羅衣。

託意風流子、佳情詎肯私。

(蕭娘を戯むる)

明珠【めいしゅ】翠羽【すいう】の帳【とばり】、金薄【きんぱく】綠綃【りょくしょう】の帷【い】。

風に因りて時に暫く擧がる、想像して芳姿を見る。

凊晨【せいしん】に歩揺を插【さしはさ】み、晩に向いて羅衣【らい】を解く。

意を託すは風流の子、佳情 詎【なん】ぞ肯えて私にせん。

戯蕭娘 范靖婦沈満願 宋詩<120>玉台新詠集巻四 女性詩 557 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1488

・謝家 民妓、家妓、美女や妓女、あるいは愛妾の棲む家。唐の李徳祐が豪邸を築いて謝秋娘を池のほとりの楼閣に住まわせたことによる。比喩する相手が特定される場合は、晋の謝安であったり、謝靈運、謝朓を示す場合もある。

 

扃繡,下珠簾,滿庭噴玉蟾。

中庭のあるその家の飾られた扉には閂で戸締まりをしている。庭には珠簾の草花を植えてあり、月の光があふれる様に照らしている。

4. 扃 (1) (外からの)かんぬき.(2) (を閉ざす)1 草が生い茂って道や入り口を閉ざすこと。「立ちとまり霧のまがきの過ぎうくは―にさはりしもせじ」〈源・若紫〉2 簡素な住まい。わび住まい。

5. 珠簾 1 玉で飾ったすだれ。また、すだれの美称。たまだれ。2 ヒガンバナ科の多年草。地下の鱗茎(りんけい)から細長い葉が群がって出る。夏、高さ約30センチの茎を出し、クロッカスに似た白い花をつける。

6.  激しくふく。

7. 玉蟾 【ぎょくせん】《月の中に三つ足の蟾(ヒキガエル)がいるという伝説から》月の異称。

 

人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。

誰もいなくて人声などなく、唐なども焚かれず閨は冷え切ったままだ。蝋燭の火が赤く半ば垂らした戸帳を照らし、あの子が待っていたそこに清々しい影が映っている。

 

雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。

二人は「高唐賦」の雨と雲とに化身し交わった。最高の蕙蘭のような心情であろうと思うし、この気持ちは長江を流れ、滄海のうみのふかさというべきかもしれない。

8. 雲雨 男女の交情をいう。楚の襄王が巫山で夢に神女と契ったことをいう。神女は朝は巫山の雲となり夕べには雨になるという故事からきている。漂いやがて消えてゆくガスのような雲なので、探しようがない。

宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。

杜甫『水檻遣心二首』其の2 「蜀天常夜雨,江檻已朝晴。葉潤林塘密,衣幹枕席清。不堪支老病,何得尚浮名?淺把涓涓酒,深憑送此生。」楚の懐王が巫山の神女と夢のなかで交わった故事を連想させるが蜀では夜雨が降る。

李商隠『細 雨』「帷飄白玉堂、簟巻碧牙牀。楚女昔時意、蕭蕭髪彩涼。」(やわらかに風に翻るとばりは、白い玉の輝く堂を包んでいる。あるいは竹の敷物は、冷やかに碧く光る象牙の牀に拡げられている。巫山の神女はその身をささげたあの時の気持ちを秘めて今もいる、粛々と黒髪を一層色濃くし涼やかにしている。

淸平樂(一) 韋荘  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-260-5-#14  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2682

9. 蕙蘭 広東省を主な原産地とするシンビジウム属の一部で、 わが国にやってきて100年以上になるため帰化植物と同じく作りやすい蘭である。 花は品種によって2月から4月ごろ開花して、中国蘭特有のよい香りが漂う。

12孫光憲《巻八19酒泉子三首其三》『花間集』371全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7127

酒泉子三首其三

斂態前,裊裊雀釵頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

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韋莊

巻三24酒泉子月落星沉,樓上美人春睡。綠雲傾,金枕膩,畫屏深。子規啼破相思夢,曙色東方纔動。柳煙輕,花露重,思難任。

牛嶠

巻四22酒泉子記得去年,煙暖杏園。花正發,雪飄香,江艸綠,柳絲長。鈿車纖手捲簾望,眉學春山樣。鳳釵低裊翠鬟,落梅粧。

張泌

巻四42酒泉子二首其一春雨打,驚夢覺來天氣曉。畫堂深,紅焰小,背蘭缸。酒香噴鼻懶開缸,惆悵更無人共醉。舊巢中,新鷰子,語雙雙

張泌

巻四43酒泉子二首其二紫陌青門,三十六宮春色。御溝輦路暗相通,杏園風。咸陽沽酒寶釵空,笑指未央歸去。插花走馬落殘紅,月明中。

毛文錫

巻五07酒泉子綠樹春深,鷰語鶯啼聲斷續。蕙風飄蕩入芳叢,惹殘紅。柳絲無力裊煙空,金盞不辭須滿酌。海棠花下思朦朧,醉香風。

牛希濟

巻五43酒泉子枕轉簟涼,清曉遠鐘殘夢。月光斜、簾影動,舊鑪香。夢中盡相思事,纖手勻雙淚。去年書,今日意,斷離腸。

顧夐

巻七09酒泉子七首其一楊柳舞風,輕惹春煙殘雨。杏花愁,鶯正語,畫樓東。錦屏寂寞思無窮,還是不知消息。鏡塵生,珠淚滴,損儀容。

顧夐

巻七10酒泉子七首其二羅帶縷金,蘭麝煙凝魂斷。畫屏欹,雲鬢亂,恨難任。幾迴垂淚滴鴛衾,薄情何處去。登臨,花滿樹,信沉沉

顧夐

巻七11酒泉子七首其三小檻日斜,風度綠人悄悄。翠幃閑掩舞雙鸞,舊香寒。別來情緒轉難判,韶顏看卻老。依稀粉上有啼痕,暗銷魂。

顧夐

巻七12酒泉子七首其四黛薄紅深,約掠綠鬟雲膩。小鴛鴦,金翡翠,稱人心。錦鱗無處傳幽意,海鷰蘭堂春又去。隔年書,千點淚,恨難任。

顧夐

巻七13酒泉子七首其五掩卻菱花,收拾翠鈿休上面。金蟲玉鷰鏁香奩,恨猒猒。雲鬟半墜懶重篸,淚侵山枕濕。恨燈背帳夢方酣,鴈飛南。

顧夐

巻七14酒泉子七首其六水碧風清,入檻細香紅藕膩。謝娘斂翠恨無涯,小屏斜。堪憎蕩子不還家,謾留羅帶結。帳深枕膩炷沉煙,負當年。

顧夐

巻七15酒泉子七首其七黛怨紅羞,掩映畫堂春欲暮。殘花微雨隔青樓,思悠悠。芳菲時節看將度,寂寞無人還獨語。畫羅襦,香粉,不勝愁。

孫光憲

巻八17酒泉子三首其一空磧無邊,萬里陽關道路。馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。綺羅心,魂夢隔,上高樓。

孫光憲

巻八18酒泉子三首其二曲檻小樓,正是鶯花二月。思無憀,愁欲,鬱離襟。展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

孫光憲

巻八19酒泉子三首其三斂態前,裊裊雀釵頸。鷰成雙,鸞對影,耦新知。玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。翠連娟,紅縹渺,早粧時。

毛熙震

《巻十09巻十酒泉子二首其一》  閑臥繡幃,慵想萬般情寵。錦檀偏,翹股重,翠雲欹。暮天屏上春山碧,映香煙霧隔。蕙蘭心,魂夢役,斂蛾眉。

毛熙震

《巻十10酒泉子二首其二》  鈿匣舞鸞,隱映豔紅脩碧。月梳斜,雲鬢膩,粉香寒。曉花微斂輕呵展,裊釵金鷰軟。日初昇,簾半掩,對殘粧。

李珣

《巻十38酒泉子四首其一》  寂寞青樓,風觸繡簾珠翠撼。月朦朧,花暗澹,鏁春愁。尋思往事依稀夢,淚臉露桃紅色重。鬢欹蟬。釵墜鳳,思悠悠。

李珣

《巻十39酒泉子四首其二》  雨清花零,紅散香凋池兩岸。別情遙,春歌斷,掩銀屏。孤帆早晚離三楚,閑理鈿箏愁幾許?曲中情,絃上語,不堪聽。

李珣

《巻十40酒泉子四首其三》  秋雨聯綿,聲散敗荷叢裏。那堪深夜枕前聽,酒初醒。牽愁惹思更無停,燭暗香凝天欲曉。細和煙,冷和雨,透簾中。

李珣

《巻十41酒泉子四首其四》  秋月嬋娟,皎潔碧紗外。照花穿竹冷沉沉,印池心。凝露滴,砌蛩吟,驚覺謝娘殘夢。夜深斜傍枕前來,影徘徊。

 

 

酒泉子三首其一

(西域を守る兵士たちは行ったら行ったきり帰って来ることは難しい、残された者たちがどんな思いをしていても間には高い山があり、砂漠があり、万里の長城が隔てている。)

空磧無邊,萬里陽關道路。

砂漠に空しく石ころを防塁として果てしなく続いている、万里の先にある西域の陽関への道路はつづく先に兵士はいる。

馬蕭蕭,人去去,隴雲愁。

そこに至る天に続く道は馬でさえヒューヒューとくるしくて嘶き、人は行き去り、帰ることなく行き去る、隴山にかかる雲はこんな悲しい出来事を見ている。

香貂舊制戎衣窄,胡霜千里白。

西域を守る兵士は貂【てん】の防寒軍服が誰かの御下がりであろうが、古着の継ぎはぎだらけであろうと、この地は千里にわたり異民族の攻め寄るところであり極寒の霜は白く凍りつくので必要不可欠の服なのだ。

綺羅心,魂夢隔,上高樓。

美しい綺羅の衣を着た女がどんなに兵士のことを思っていても、どんなに夢に見て思おうと、それは隴山と砂漠の防塁に隔てられて届きはしない。高楼に上って西の空を臨んでいることだろう。

(酒泉子三首 其の一)

空磧 辺 無く、万里のさき陽関の道路あり。

馬は蕭蕭とし、人は去り去りて、隴雲は愁う。

香貂【こうちょう】 旧製にして戎衣窄【きつ】し、胡霜 千里さきに白し。

綺羅 心し、魂夢は隔つ、高楼に上らん。

 

酒泉子三首其二

(又春になり、久方ぶりに高楼にあがって眺めると春の盛りであった。気分がよくなり閨に戻って屏風を広げると古代の舜帝を追って旅をした瀟水と湘水の、二神の絵が出てくると前にもまして心がふさがれる)

曲檻小樓,正是鶯花二月。

閨から出て渡り廊下の欄干に沿って小さめの楼閣に来て見ると、まさに盛春真っただ中の鶯は囀り花は満開の二月の景色に変わっている。

思無憀,愁欲,鬱離襟。

晴れやかに気持ちになって何にもおもいでボーとしている。これで愁いに思ったりすることから立ち直ることが出来るだろう。憂欝の底とは縁が切れる。

展屏空對瀟湘水,眼前千萬里。

閨に帰って、雰囲気を変えようと屏風を広げて見ると瀟水と湘水の、水の神の絵に空しく対峙することになる。絵ははるか千里万里を越えて行くものである。

淚掩紅,眉斂翠,恨沉沉。

女はこの部屋から出ることはないが絵のように千里万里行くことが出来たらと思うと涙はあふれ、紅色の頬をおおいつくし、緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せている、また怨みに思う気持ちは深く沈んでゆく。

(酒泉子三首 其の二)

曲檻 小樓,正に是れ鶯花二月なり。

思うは無憀にして,愁いんと欲す,鬱 襟を離る。

展屏 空しく對す 瀟湘の水に,眼前に 千萬里。

淚 紅に掩い,眉 翠に斂まり,恨 沉沉たり。

 

酒泉子三首其三

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

斂態前,裊裊雀釵頸。

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

(酒泉子三首其の三)

態を斂めて前にあり,裊裊として雀釵 頸をす。

鷰 雙を成し,鸞 影に對し,耦 新たに知る。

玉纖 澹拂し眉山 小さくし,鏡中 嗔 共に照す。

翠 娟に連り,紅 渺に縹す,早に粧 時にす。

 

凌波曲舞002
 

『酒泉子三首其三』 現代語訳と訳註

(本文)

酒泉子三首其三

斂態前,裊裊雀釵頸。

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

 

(下し文)

(酒泉子三首其の三)

態を斂めて前にあり,裊裊として雀釵 頸をす。

鷰 雙を成し,鸞 影に對し,耦 新たに知る。

玉纖 澹拂し眉山 小さくし,鏡中 嗔 共に照す。

翠 娟に連り,紅 渺に縹す,早に粧 時にす。

 

(現代語訳)

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。

それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。

繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。

眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

DCF00209
 

(訳注)

酒泉子三首其三

(若くて美しい女を愛おしくかわいがる姿を詠う。)

 

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句一仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、③/❼❺3❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其一

空磧無邊,萬里陽關道。馬蕭,人去去,隴雲

香貂舊制戎衣,胡霜千里。綺羅心,魂夢,上高

△●○○  ●●○○●● ●○○  ○●● ●○○

○○●●○△● ○○○●●  ●○○ ○△●  ●○○

『花間集』には孫光憲の作が三首収められている。双調四十字、前段十九字五句二仄韻二平韻、後段二十一字五句三仄韻二平韻で、③/❼❺③❸③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は③/⑦733③の詞形をとる。

酒泉子三首其二

曲檻小,正是鶯花二

思無憀,愁欲,鬱離

展屏空對瀟湘,眼前千萬

淚掩,眉斂,恨沉

●●●○  △●○○●●

△○○  ○●● ●△○

●△△●○○● ●○○●●

●●○ ○●●  ●○○

双調四十字、前段十九字五句二仄韻一平韻、後段二十一字五句三仄韻一平韻で、③/❼533③の詞形をとる。ちなみに溫庭筠、韋荘は孫光憲と同じ詞形で、張泌、牛嶠は③/⑦7③❸③の詞形をとる。

酒泉子三首其三

斂態,裊裊雀釵

鷰成雙,鸞對,耦新

玉纖澹拂眉山,鏡中嗔共

翠連,紅縹,早粧

●●?○  ??●○○△

●○○  ○●● ●○○

●○△●○○● ●△○△●

●○○ ○●●  ●?○

 

斂態前,裊裊雀釵頸。

服の乱れをまとめて窓際に近寄っていく、首を投げ出すように振り返ると、孔雀の簪がゆらゆら揺れる。

18 裊裊【嫋嫋じょうじょう】①. なよなよとして風情のあるさま。しなやかなさま。たおやかなさま。②. 音や声が細く長く続くさま。

19  (1) 投げる,ほうる抛球球を投げる.(2) 捨て去る,置き去りにする抛下妻子儿女妻子を捨て去る.投げ売りする.抛光 つや出しをする,研磨する.

 

鷰成雙,鸞對影,耦新知。

それからは燕が二人並ぶように、鸞とりが二つの影をかさねるように、二人が結合してあたらしい愛を知るのである。

20 纖 1 ほそい。こまかい。「繊維・繊細・繊繊・繊毛」2 繊維。

21 耦 二人が並んで耕す.耦合:カップリング,結合.

 

玉纖澹拂眉山小,鏡中嗔共照。

繊細で奇麗な白い肌は輝いて幾度となく波のように揺れ払うように動く、この時にはきれいだった眉も色薄く小さくなっている。それに気がついて鏡を取り出し、見ようとするとあの人が顔を乗り出して鏡の中に伴に移されてしまい見えないから怒ったりする。

22 澹拂 風や波によってゆったりと動き、払うように動く。

23 嗔 怒る 嗔怪 怒って責める.

 

翠連娟,紅縹渺,早粧時。

眉を緑にうつくしく連なって書き直し、頬紅は微かではっきりしないほどに着けてみる。どちらにしても化粧直しは早くしないといけないと思う。

24 娟 美しい,麗しい娟秀麗しい.娟媚姿が素晴らしい.

25 縹渺 1 広くはてしないさま。「―たる雪の広野を隔てて」〈鏡花・註文帳〉2 かすかではっきりとしないさま。

 

 

 

 

 

 

孫光憲 《酒泉子三首》 【字解】

 

 

 

1. 空磧 空漠とした石ころ砂漠。

2. 陽關 関門の名。今の甘粛省敦燈の西南。玉関の南にあったので陽閑と言った。陽関(ようかん):盛唐の詩人・王 維の詩で知られる陽関。

王維『送元二使安西』

 渭城朝雨潤輕塵、 客舎青青柳色新。

 勧君更盡一杯酒、 西出陽關無故人。

(元二の安西に使するを送る)

渭城の朝雨 軽塵を潤し、客舎青青柳色新たなり。

君に勧む更に盡くせ一杯の酒、西のかた陽關を出ずれば故人無からん。

 陽関の烽火台

 陽関は甘粛省敦煌市の西南70キロにあり、古代シルクロードの関所である。前漢に関所がおかれ玉門関の南(陽)にあったこと からこの名がある。玉門関と並んで西域交通の門戸であった。前漢時代は陽関都尉の治所であり、魏晋時代は陽関県が置かれた。

唐代には寿昌県がおかれた。宋・元代以後は西方との陸路交通がだんだんと衰退し、関所も廃棄された。

3. 粛粛 馬の斯き声の形容。

4. 隴雲愁 西への道は天に続く、天日への道であること。そこに続く道は杜甫の「兵車行」に述べられており、隴西から過酷な峠を抜ける様子も「前出塞九首」「後出塞五首」に述べられており、隴山に懸かる雲はそのすべてを見ている。

兵車行  杜甫

5. 香貂舊制戎衣窄 貂の革製の昔誰かが作ったもので出征する際に持たされた軍服は体に少々きつくても必要なものだ。香貂は貂が極寒の冬には形が古かろうが、大きさがあって居なくても寒さをしのぐうえで威力を発揮して素晴らしいというほどの意味、美称。

6. 綺羅心 美しい綺羅の衣を着た女の心。

7. 魂夢隔 ここは夢魂が空磧、萬里、陽關、道路、隴雲に隔てられてとても届くはずがないというものである。

○この三句を故郷にいる妻の言葉としている解釈もあるが、間違い。この三句は男目線の言葉であり、孫光憲のものの見方である。

前出塞九首 其一 杜甫

前出塞九首 其二 杜甫

前出塞九首 其三 杜甫

前出塞九首 其四 杜甫

前出塞九首 其五 杜甫 44

前出塞九首 其六 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 45

出塞九首 其七 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 46

前出塞九首 其八 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 47

前出塞九首 其九 杜甫 :紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 48

後出塞五首 其一 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 95

後出塞五首 其二 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 96

後出塞五首 其三 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 97

後出塞五首 其四 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 98

後出塞五首 其五 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 99

 

8. 曲檻 閨は奥まったところにあるのでそこから樓閣までにある欄干のある廊下。

9. 小樓 多くくない楼閣。

10. 鶯花 鶯は囀り花は満開である。

11. 二月 盛春真っただ中の二月の景色に変わっている。閨にいると暦は二月であっても季節感がないので、この言い方になる。

12. 無憀 ・何もしないでボーっとする。顧夐『河傳三首 其三』「棹舉,舟去,波光渺渺,不知何處,岸花汀草共依依,雨微,鷓鴣相逐飛。天涯離恨江聲咽,啼猿切,此意向誰倚蘭橈,無憀。魂消,小爐香欲焦。」13-9 河傳三首 其三 》顧太尉(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-461-13-(9) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3852

・心が晴れやかにならない。悲しんだり、恨んだりすることはない。牛希濟『臨江仙七首 其三』「渭闕宮城秦樹凋,玉樓獨上無憀。含情不語自吹簫,調情和恨,天路逐風飄。何事乘龍入忽降,似知深意相招。三清攜手路非遙,世間屏障,彩筆劃嬌饒。」10 -7 臨江仙七首其三 牛學士希濟(牛希濟)ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-404-10-#7  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3567

13. 瀟湘水 娥皇と女英の二人の女神からなる洞庭湖から湘江、瀟水にかけての地域の絵が描かれている。

14. 眼前千萬里 当時の女性は基本的に閨から出ることはないので、絵を見て千里万里を行くことが出来たら、あの人を探して歩けるだろうというほどの意味になる。

15. 紅 頬の琴、転じて化粧をした顔。

16. 眉斂翠 緑の蛾眉の間の額にはしわを寄せることをいう。

17. 沉沉 ](1) (水中に)沈む,水没する.【反】浮(2) (抽象的事物について)抑える,鎮める.沉不住气怒りを抑えられない.(3) 《方》休む,休息する.━ [](1) (重量が)重い,目方のある.(2) 程度が大きい,甚だしい.

薛昭蘊『浣溪紗八首 其四』

握手河橋柳似金,蜂鬚輕惹百花心,蕙風蘭思寄清琴。

意滿便同春水滿,情深還似酒盃深,楚煙湘月兩沉沉。

手を握りあったのは河橋のたもとの柳が金のように芽吹き繁る下でした。蜂はその鬚でもって、輕やかに百花の芯に惹かれ、飛び回るのです。花のかおりが風に乗って吹いて来て、そのなかの蘭のはなに思いよせると、いつのまにか清がしい琴の音に寄ってしまうのです。

あの人への思いは胸いっぱいであり、ちょうど今、川いっぱいの春の増水とおなじのようなのです,あのひとのおもい、やさしさはとても深く、だから、また、酒盃をいっぱいに何度も注いでくれることのようでした,楚の巫女と皇帝の化身である靄、カスミが漂い、舜の後を追って湘水に身を投げた娥皇と女英が月に化身している,そのふたつの思いは、やがて沉沉とおさまっていくものです。

9 6 浣溪紗八首 其四 (薛昭蘊)薛侍郎昭蘊ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」 Gs-382-9-#6  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3457

18 裊裊【嫋嫋じょうじょう】①. なよなよとして風情のあるさま。しなやかなさま。たおやかなさま。②. 音や声が細く長く続くさま。

19  (1) 投げる,ほうる抛球球を投げる.(2) 捨て去る,置き去りにする抛下妻子儿女妻子を捨て去る.投げ売りする.抛光 つや出しをする,研磨する.

20 纖 1 ほそい。こまかい。「繊維・繊細・繊繊・繊毛」2 繊維。

21 耦 二人が並んで耕す.耦合:カップリング,結合.

22 澹拂 風や波によってゆったりと動き、払うように動く。

23 嗔 怒る 嗔怪 怒って責める.

24 娟 美しい,麗しい娟秀麗しい.娟媚姿が素晴らしい.

25 縹渺 1 広くはてしないさま。「―たる雪の広野を隔てて」〈鏡花・註文帳〉2 かすかではっきりとしないさま。

12孫光憲《巻八02菩薩蠻五首其二 花冠》『花間集』354全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7042

孫光憲  菩薩蠻              其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。握手送人歸,半拖金縷衣。

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

12孫光憲《巻八02菩薩蠻五首其二 花冠》『花間集』354全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7042

 

 
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菩薩蠻 五首其一

(妃嬪も年を重ねてきて以前の若さがなくなってきて、それでも希望をもって夜を過ごす女を詠う)

月華如水籠香砌,金環碎撼門初閉。

仲秋の明月は明るく庭を照らすけれど、水に映るのと違って地面にかくれている、庭に出ると石砌のとこまでは閨のお香が漂ってくる。風が吹く度、門がゆれ、錠の音が響くので、開いていた門扉をはじめて閉じる。

      寒影墮高簷,鉤垂一面簾。

秋の夜が更け、高き庇の影が寒々と地に落ちる。月の形の吊金具をはずしてすべての簾を垂らす。

      碧煙輕裊裊,紅戰燈花笑。

閨で青い薫香が軽やかに、なよなよと立ち上がり、紅き炎が大きく揺れ、灯芯が爆けて嬉しいことと笑みをうかべる。

      即此是高唐,掩屏秋夢長。

すなわち、これこそが、きっと「高唐賦」にいう化身をしたことだろう。寝牀のまわりにたてる屏風を用意し、秋の夜は長いから、秋の夜の夢はながくつづく。

(菩薩蠻          其の一)

月華 水の如く香砌【こうせい】を籠め,金環 碎け撼【ゆ】れて 門 初めて閉す。

影を寒くして 高簷【こうえん】に墮ち,鉤は 一面に簾を垂らす。

碧煙 輕やかに 裊裊【じょうじょう】とし,紅 戰うは 燈花 笑う。

即ち 此れは 是れ「高唐」なり,屏を掩うは 秋の夢も 長し。

 

菩薩蠻 其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

      門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

      薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

      握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

(菩薩蠻          其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

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『菩薩蠻  其二』 現代語訳と訳註

(本文)

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

門外早鶯聲,背樓殘月明。

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

握手送人歸,半拖金縷衣。

 

(下し文)

(菩薩蠻              其の二)

花冠 頻りに 牆頭 翼を鼓し、東方 澹白にして 窓色に連なる。

門外 早に鶯声すれど、楼を背に 残月 明きらかなり。

薄寒 酔態を寵め、旧に依り 鈆華 在り。

手を握り 人 帰るを送り、半ば金縷の衣を拖く。

 

(現代語訳)

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

 

(訳注)

菩薩蠻     其二

(寵愛を受け、夜を一緒に過ごしたけれど、暗いうちから、鶏や、鶯までも鳴きだして朝を知らせる。まだ名残の月が明るいというのに見送らねばならないと妃賓を詠う)

【解説】 後朝の別れを詠う。朝化粧を整える暇もなく、昨夜の化粧のまま、金刺着物を羽織らせて見送るけれど、少しでも長く寵愛を受けたいと一緒にいたいがために時間を惜しむのは、寵愛を一手に受けて、子を授かりたいというのが最大の幸せであるということであるから。。

 

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其一

月華如水籠香,金環碎撼門初

寒影墮高,鉤垂一面

碧煙輕裊,紅戰燈花

即此是高,掩屏秋夢

●△△●△○●  ○○●●○○●

○●△○○  ○○●●○

●○△??  ○●○○●

●●●○○  ●△○△△

『花問集』 には孫光憲の作が五首収められている。双調四十四字、前段二十四字四句二仄韻二平韻、後段二十字四句二仄韻二平韻で、❼❼⑤⑤/➎➎➄➄の詞形をとる。

菩薩蠻    其二

花冠頻皷牆頭,東方澹白連

門外早鶯,背樓殘月

薄寒籠醉,依舊鈆華

握手送人,半拖金縷

○△○●○○●  ○○△●○?●

○●●○○  ●○○●○

●○△●●  △●○△●

●●●○○  ●△○●△

 

花冠頻皷牆頭翼,東方澹白連色。

まだ暗いうちに雄鶏が土塀の上でしきりに羽ばたきをはじめた。するとまもなく、東側の窓が白みはじめて空が明け初めた。

12. 花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

13. 翼 ここでは羽を羽ばたかせること。「鶏鳴狗盗」とあるように鶏が鳴くと関所を開けて通行させる、夜が明けると朝賀が始まる、鳥がはばたく音で飛いうことで急いで帰り支度をすることをいう。女は帰したくないと思っているのに鳥のはばたきに邪魔をされる。すると「東方澹白連色」東の窓が白じんで来ることで、別れを予感する女の焦りを表現する。

 

門外早鶯聲,背樓殘月明。

門の外の高枝で、まだ夜が明けきっていない早い時間なのに鶯がなきだした、名残月は高殿の彼方高く、まだ明るくのこっている。

14. 早鶯聲 早春ではあるが、朝まだ期に鶯が鳴いて春を告げる。鶏が鳴き、すると、鶯が鳴きが啼きはじめる。鶯聲は早春を意味する。これから盛春になろうというのに別れなければいけないのか、という意味になる。

15. 残月 名残月。(20日前後から下弦月までの月をいう)夜明けの空に懸かる月。その日以降の別れを予見する月を意味する。

 

薄寒籠醉態,依舊鈆華在。

春といっても早朝はまだ寒く、酔いが残るからだを寒さが包む、少しでも長く仲睦まじくしていたいから、夜化粧はそのままにしている。

16. 依旧鉛華在 昨夜の化粧がそのままに残っていること。依旧は、もとのまま、以前どおり。旧は仲睦まじくしていたころのこと。鈆華は白粉。

 

握手送人歸,半拖金縷衣。

あのお方がお帰りになるのを送るために手を握り交わし、金糸の縫い取りの衣を半ば肩にはおらせてあげる。

17. 半拖金縷衣 拖:(1) 引く,引きずる用子拖縄で引っ張る.把孩子拖屋子供を引きずって部屋に入れる.(2) 体の後に垂らす。身后拖着一条大子背中に長いお下げの髪を垂らしている.(3) 引き延ばす。拖日子日を延ばす.

海棠花101
 

 

 

 

 

 

 

 

孫光憲 菩薩蠻五首  【字解】

 

1.   月華 月光。

2.   水籠もり/水隠り 《「みこもり」とも》1 水中に隠れること。2 心に秘めていること。

3.   香砌 香はお香の香りが残る範囲の砌。閨の軒下の石畳、みぎり。妃嬪の樓殿、愛妾の家。

4.   金環 門扉の表面に付けられた金鋪(ノッカーの敷金)にふくませる金輪(ノッカー)。

5.   砕撼 ここでは門扉を閉じたままにしていて風に揺れて金鎧が揺れて細かな音を立てること。砕は誰も来ず静かな中で音が砕ける。撼は門扉が風に揺れる。

6.   門初閉 開いていた門戸をはじめて閉じること

7.   寒影墮高簷 作者、女性がどの位置にいてその目線はどこにあるかによってこの解釈は異なる。御殿の門が見えるところで、あるから平地、砌に立っている。したがって、月が高く庇の影が庭の地面に影を落としている。月があまりに明るいから、すべてが冷たくみえる。だから、すだれをおろそうと思ったということである。別に、高い庇の寒々とした影が地に落ちる。なお別の解釈として、寒々とした月の光が高い庇に射している、また、月光でできた寒々とした物影が高い庇の上に落ちている、と解する説もある。

8.   碧煙 ここでは薫く香の煙は情交を連想させる。

9.   裊裊 /嫋嫋 ①なよなよとして風情のあるさま。しなやかなさま。たおやかなさま。②音や声が細く長く続くさま。③風がそよそよと吹くさま。

10. 紅戰燈花笑 灯火の紅い炎が細かに揺れて灯芯がぱちぱちとする。この二句は、男女のまじりあいを連想させる。

11. 高唐 宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。「巫山之夢」。婉約の詩詞によく使われるが、千載不磨の契りといった感じのものではなく、もっと、気楽な契りをいう。高唐の夢/巫山の夢:男女の交わり、情交のたとえ。

【2】    花冠 美しい鶏冠。ここでは雄鶏のこと。

【3】   翼 ここでは羽を羽ばたかせること。「鶏鳴狗盗」とあるように鶏が鳴くと関所を開けて通行させる、夜が明けると朝賀が始まる、鳥がはばたく音で飛いうことで急いで帰り支度をすることをいう。女は帰したくないと思っているのに鳥のはばたきに邪魔をされる。すると「東方澹白連色」東の窓が白じんで来ることで、別れを予感する女の焦りを表現する。

【4】    早鶯聲 早春ではあるが、朝まだ期に鶯が鳴いて春を告げる。鶏が鳴き、すると、鶯が鳴きが啼きはじめる。鶯聲は早春を意味する。これから盛春になろうというのに別れなければいけないのか、という意味になる。

【5】    残月 名残月。(20日前後から下弦月までの月をいう)夜明けの空に懸かる月。その日以降の別れを予見する月を意味する。

【6】    依旧鉛華在 昨夜の化粧がそのままに残っていること。依旧は、もとのまま、以前どおり。旧は仲睦まじくしていたころのこと。鈆華は白粉。

【7】    半拖金縷衣 拖:(1) 引く,引きずる用子拖縄で引っ張る.把孩子拖屋子供を引きずって部屋に入れる.(2) 体の後に垂らす。身后拖着一条大子背中に長いお下げの髪を垂らしている.(3) 引き延ばす。拖日子日を延ばす.

12孫光憲《巻七43浣溪沙九首其六》『花間集』345全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6997

孫光憲  浣溪沙九首 其六

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

紅梅002
 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

             

浣溪沙九首 其四

(春の行楽というのに日がな一日物憂げに暮らし、季節が過ぎていく、寵愛を失い、悲しみと愁いが廻って次々と生まれてくる。歳を重ねてもちょうあいのことはわすれられない訪れるものがいない妃嬪を詠う。)

      攬鏡無言淚欲流,凝情半日懶梳頭,一庭疎雨濕春愁。

鏡を手にとって見ても言葉にもならず、涙をこらえられなくて、とめどなく流れてゆこうとしている、寵愛を受けたい気持ちだけでいるものの、半日何もする気にならず髪を梳くこともしていない。寝殿前の中庭に、時折雨が降り、春というのに愁いも湿っている。

      楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌羞,淚沾魂斷軫離憂。

楊柳は繁り、春の盛り、季節を知るだけだと、やっぱりあの別れたことは傷ついて恨む、合格発表の後、杏の花の咲く庭園で、詩文で答えてくれたから恥を忍んで愛嬌をだしたのに裏切られた。なみだはとめどがなくながれきものをぬらすのでこころもきれてしまう、愁い悲しみから離れてもまた愁いと悲しみがやってくる。

              浣溪沙九首 其四

鏡を攬り 無言にして 淚 流んと欲す,情を凝らし 半日 頭を梳くを懶く,一庭に 疎雨あり 春愁に濕う。

楊柳 秖だ知るも 怨別に傷み,杏花 應信あり 嬌羞を損い,淚沾い 魂斷し 離憂を軫る。

             

浣溪沙九首 其五

(選抜され、後宮に入り、ただ待つだけの生活、さきのことはわからない)

      半踏長裾宛約行,晚簾疎處見分明,此時堪恨昧平生。

細腰の妃賓が半歩ずつ、長い裾の服を引いて、たおやかに小股であるいていく、夕暮れの簾の隙間からはっきりとみえている。ずっとここの御殿にいるだけで、この時、恨めしいいとおもう心は我慢ができない。

      早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃聲,杳無消息若為情。

燃え残る灯火に映る影に既に魂は奪われ、さらに彼女の弦の調べに愁いの耳を傾けすごした、でもそれ以上は知らない、こんな思いはどうすればよいのだろう。

(浣溪沙九首 其の五)

半ば 長く裾を踏み 宛約として行く,晚簾 疎なる處 見ること分明,此の時 恨むに 平生昧きに堪える。

早に是れ  殘燭の影に銷魂し,更聞著するを愁う  品絃の聲,杳として無く 消息 情を若為【いかん】せん。

 

浣溪沙九首       其六

(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)
           蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

           翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。

紅梅003
             

 

『浣溪沙九首 其六』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首 其六

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

 

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の六)

蘭沐 初めて休む 曲檻の前きに,暖風 遲日 洗頭の天,濕雲 新らたに斂【まと】め 未だ蟬を梳かず。

翠袂 半ば將に 粉臆を遮らんとし,寶釵 長く 香肩に墜ちんと欲し,此の時 模樣 憐れむに禁ぜず。

 

(現代語訳)

(後宮の妃賓の洗髪のあとはきっとこのような姿であろうと、春の日長に、胸元をはだけて髪を洗い終えたばかりの魅惑的な姿を讃えた詞。)

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

 

(訳注)

浣溪沙九首 其六

(春の日長に、上半身をはだけて髪を洗い終えたばかりの女の魅惑的な姿を讃えた詞。)

【解説】春の日に、沐浴をし、蘭香を浸した湯水で髪を洗い、お湯から上がり、上半身をあらわにして髪を暖風遲日のなかで乾かす。綺麗、繊細で、魅力的な妃嬪を詠う。

正妻でもそれ以外でも通い婚である。休みの日に若い女の家に行って見かけた光景である。孫光憲の詩はエロ差は全くなく描き方をしていて、女性を蔑視、卑下していないのが特徴である。

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐,畫簾垂地晚堂,墮階縈蘚舞愁

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰,蕙心無處與人

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

浣溪沙九首 其四双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

攬鏡無言淚欲,凝情半日懶梳,一庭疎雨濕春

楊柳秖知傷怨別,杏花應信損嬌,淚沾魂斷軫離

●●○○●●○  △○●●●○○ ●○△●●○○

○●?○△△● ●○△△●△○  ●△○●●△○

浣溪沙九首 其五は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

半踏長裾宛約,晚簾疎處見分,此時堪恨昧平

早是銷魂殘燭影,更愁聞著品絃,杳無消息若為

●●△○△●△  ●○△●●△○ ●○○●●○△

●●○○○●● △○△△●△○  ●○○●△○○

浣溪沙九首 其六は 双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蘭沐初休曲檻,暖風遲日洗頭,濕雲新斂未梳

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香,此時模樣不禁

○●○△●●○  ●△○●●○○ ●○○●●○○

●●●△○●● ●○△●●○○  ●○○●△△○

 

蘭沐初休曲檻前,暖風遲日洗頭天,濕雲新斂未梳蟬。

御殿の角の手すりの前で、蘭香を浸した沐浴、髪を洗い終えたばかり、春分を過ぎれば、風は暖かになり、春の日は長くなっていくから、頭を洗って陽気の中にそのままいる。それから、長い髪を頭の上で雲型にまとめてみたものの、まだ櫛を使って梳くことなどしないし、蝉の簪も付けたりしない。

蘭沐 蘭香を浸した水で髪を洗う。 

洗頭天 髪を洗うのに良い陽気で、洗髪した後しばらく長い髪のままでそのままいることをいう。

湿雲 濡れ髪。雲は雲撃。豊かな女性の黒髪。

新斂 あらたに束ねたばかりをいう。新は〜したばかり、の意。

梳蟬 蝉の羽のように肌の透けて見える垂れた美しい髪の毛。ここでは髪の意であり、蝉の簪を意味する。

 

翠袂半將遮粉臆,寶釵長欲墜香肩,此時模樣不禁憐。

翡翠色の袂には胸の襟元から、白粉をしたように白い胸を、遮ることになっている、長い宝飾の簪が蘭香の香り漂う肩に落ちかかろうとしている。こんな有様を見ることができると同時に、愛おしいと覚えずにはいられない。

半將 髪を洗い濡れているため、襟首のラインが下がっていて胸が少し見えるという表現。

粉臆 白い白粉を付けたようにきれいな胸。臆は胸臆。

欲墜香肩 髪の毛を上に束ねた簪がぬけかかって蘭香のかおる肩に落ちそうだ。欲は今にも〜しそうだ、の意。

不禁憐 愛おしいと覚えずにはいられない。この場合の憐は可憐なさまという意味。

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孫光憲  浣溪沙九首其三

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

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孫光憲(900年-968年),字孟文,自號葆光子。陵州貴平(今屬四川仁壽縣東北)人。五代詞人。

 

出生農家,好讀書,喜抄書,至老不廢。五代後唐時,曾任陵州判官,後得梁震之薦,荊南高季興聘為掌書記。[1]歷事高季興、高從誨、高保融、高保勗、高繼沖諸王,累官至檢校秘書監兼御史大夫賜金紫。後勸高繼沖獻地納降,宋太祖聞之甚悅,授黃州刺史。在荊南期間,作《北夢瑣言》。能填詞,作有《浣溪沙》、《菩薩蠻》、《虞美人》等,陳廷焯他“詞氣甚遒,措辭亦多警練,然不及溫韋處亦在此,坐少閒逸之致”[2]《花間集》收其詞61首。

 

孫光憲900年-968年)、字を孟文と言い、自ら葆光子と号した。陵州の貴平(今の四川省仁壽縣東北)の人。唐の末に陵州の判官となったが、後唐の明宗の926年天成初年、戦乱を避けて江陵(今の湖北省の江陵)に住んだ時、南平王の高従義の知遇を得て、彼の幕下となった。963年建隆四年、当時南平王であった高継沖に末に帰服することを勧め、高継沖は、彼の勧めに従って宋に下った。宋の太祖はその功績を嘉して孫光憲を黄州刺史に任じたが、赴任前に亡くなった。詞風は淡麗清疏、水郷の風光描写に優れるが、反面、脂粉の香りにはやや欠ける。多くの著作のあったことは分かっているが、そのほとんどが末代に既に失われた。唐五代の詞人中、今日に伝わる詞は最も多く、『花間集』には六十一首の詞が収められている

 

 

 

浣溪沙九首 其一

(諸葛亮は万里橋で劉備の御征伐の船出を見送り、薛濤は、思い人を望江樓から見送った、。雁書が届くだろうか,杳杳として、茫茫としているところであるから川が流れ去るように忘れていくことになるのか、瀟湘二妃嬪、屈原、賈誼、とそこに沈んだ人の思いは、人の心に残っている)

      蓼岸風多橘柚香,江邊一望楚天長,片帆煙際閃孤光。

岸辺の蓼がしげる中を風がぬけ、橘や柚子の香りを運んでくる、大江のほとり望江樓から一望すると船の進むと、「高唐賦」の楚は、はるかとおくに、一片の帆影を浮かべて霞む果てには雲雨を呼ぶ閃光が一つきらめく。

      目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫茫,蘭紅波碧憶瀟湘。

眼を空に向け、飛び行く雁を遠くかすかなところまで追いかける、それでも、長江の流れははてしなくひろくひろがるから、雁書が届くのがみずのながれのようにながれてしまうのか、瀟湘八景の赤い蘭花、碧く波は数々の賢者を思い起こさせてくれる。

(浣溪沙九首 其の一)

蓼岸【りょうがん】風 橘柚の香多くし,江邊 一望 楚天長しい,片帆 煙際に 孤光 閃く。

目【もく】 征鴻を送れば 飛びて杳杳たり,思いは流水に隨い去りて茫茫たり,蘭は紅いに 波は碧く 瀟湘を憶う。

             

浣溪沙九首 其二

(春が来れば、行楽を楽しみにするが、今年は、どうなるのかわからない、立派な御殿に住まいをしてはいても、やるせない気持ちは晴れないのでお酒に頼ってしまう。そんな思いを詩歌を壁に書いて晴らす)

      桃杏風香簾幕閑,謝家門約花關,畫梁幽語鷰初還。

春が訪れ、桃花の香りが風に乗り、次に杏の花の香りが届けられる、それは、簾と幔幕を抜けて誰もいないこの部屋に。愛されている妾の家に、花は満開に咲いているのに門の扉は閉められたまま。いろどられた梁の上の燕は鳴き声などなく静かになったので、初めてツバメがいなくなったのを知る。

      繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒山,卻疑身是夢魂間。

夜が明けてくれば屏風を動かして一人寝の枕から酔いが残ったままで目覚め、厠に行く。春の行楽を過ごすことができるのだろうか、夢とうつつとの間を行ったり来たりの生活をしていてよいのだろうか。そうした思いを、薄絹に刺繍をほどこした樓閣の壁に、数行の詩歌を題した。

浣溪沙九首     其二

桃杏から風香し 簾幕閑なり,謝家の門 花關に約し,畫梁には幽語 鷰初めて還る。

繡閣 數行 壁に題し了り,曉屏 一たび枕し 酒醒め 山に,卻て疑う 身是とし夢魂の間に。

             

浣溪沙九首 其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

      花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

      膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

『浣溪沙九首其三』 現代語訳と訳註

(本文)

浣溪沙九首其三

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

 

(下し文)

(浣溪沙九首 其の三)

花 漸く凋疎し 風に耐えず,畫簾 地に垂れ 晚の堂 空し,階墮ち 縈蘚 愁い 紅に舞う。

膩粉 金靨子を半粘し,殘香 猶お繡薰籠に暖く,蕙心 處に無く 人と同じうす。

 

 

(現代語訳)

浣溪沙九首 其三(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

紅梅002
 

(訳注)

浣溪沙九首其三

(庭にたくさんの花が咲くように、あまたいる妃嬪も清純で溌剌としていたが、寵愛を受け、歳を重ねればその純真さはどこへ行くのだろう。)

 

浣溪沙とは谷間の砂浜で早春の風物詩で、染め上げた沙羅を水で晒した後、並べて乾かすと、谷合が花が咲いたように見えることをいう。独り者の女性だけで行ったことで、春と沙羅と女性ということで艶歌としてうたったものが多いが、春の谷あいの様子を詠うものも多いのである。

 

『花間集』には孫光憲の作が六十一首収められている。浣溪沙九首其一は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

蓼岸風多橘柚,江邊一望楚天,片帆煙際閃孤

目送征鴻飛杳杳,思隨流水去茫,蘭紅波碧憶瀟

●●△○●●○  ○○●△●○△ ●△○●●○△

●●○△○●● △○○●●○○  ○○○●●○○

 

浣溪沙九首其二は、双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

桃杏風香簾幕,謝家門約花,畫梁幽語鷰初

繡閣數行題了壁,曉屏一枕酒醒,卻疑身是夢魂

○●△○○●○  ●○○●●○○ ●○○●●○○ 

●●●△△●● ●△●△●△○  ●○○●△○△

 

浣溪沙九首其三は双調四十二字、前段二十一字三句三平韻、後段二十一字三句二平韻で、⑦⑦⑦/7⑦⑦の詞形をとる。

花漸凋疎不耐,畫簾垂地晚堂,墮階縈蘚舞愁

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰,蕙心無處與人

○△○△△●△  ●○○●●○△ △○○●●○○

●●●○○●● ○○△●●△△  ●○○●△○○

 

花漸凋疎不耐風,畫簾垂地晚堂空,墮階縈蘚舞愁紅。

庭一杯に咲いていた花もしだいにしぼみ、まばらになってきて風に堪えられなくなってくる。きれいな簾は下におろしたまま西日が射しこむ御殿の座敷はおつきのものを下がらせて、誰もいなくて二人だけの静けさが広がる。散り落ちた赤い花弁は階にそのままにされ、舞い落ちる花弁は憂いを表して絡みながら落ちる。

漸 1 長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま。やっとのことで。2 苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか。3 物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん。

墮階 階に散去った花びらが落ちているさま。寵愛を失って、官位をさげられること。

縈蘚 苔が絡みつく。まといつく,絡む.気にかかる. (周りを)巡る,まつわる。逢瀬の様子を、花弁や、苔が絡みつくことで表現する。

 

膩粉半粘金靨子,殘香猶暖繡薰籠,蕙心無處與人同。

寵愛を受け、化粧によるきめの細かい皮膚に、金の付け黒子も半ばとれそうだ。閨に香りは残り、まだ刺繍の台に乗った網籠の香炉には暖かさが残っている。妃寵愛を受ければ、妃嬪の麗しい心はどこにあるのか、歳をかさねれば行く末は誰もとおんなじようになってしまう。

膩粉 滑らかなおしろい。なめらかなおしろい。べにやおしろい。化粧のこと。化粧によるきめの細かい皮膚。

金靨子 金の付けぼくろ。靨:〔笑(え)窪(くぼ)の意〕 笑うと,頰にできる小さなくぼみ。 ほくろ。仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。

殘香猶暖 香炉は、お香をたくことと暖房の役割が主で、ここでは、残り火でまだ温かいことを言う。逢瀬が終わって間もないことを言う。

繡薰籠 

蕙心 美人の麗しい心。

11顧夐 (改)《巻七28荷葉杯九首其七》『花間集』330全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6922

顧夐  荷葉杯九首 其七  

金鴨香濃鴛被,枕膩。小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。憐摩憐,憐摩憐。

(寵愛を受けることに喜びを持ち、妃嬪はいま最高に妖艶であり可憐であると詠う。)

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、楽しみにして鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。柳のように細腰で美しく、柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。可憐なるか、可愛いい、可愛いいですかとても可憐です。

11顧夐 (改)《巻七28荷葉杯九首其七》『花間集』330全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6922

 

 
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荷葉杯九首其一

(春には逢えると約束していたのに、花が散り落ちるように寵愛を失えばもう戻ることはない。しかし、自分の立場は認識したし、病気になっても耐えるしかないと諦める女、妃嬪を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている寝殿奥の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。花が落ちることは、寵愛を失うことは、もう元に戻らない。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気になろうともただあのお方との逢瀬の約束の日を楽しみに思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

現実を知り、此れを本当に知ったということなのか。此れでわかったということなのか本当にわかったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

荷葉杯九首其二

(いつかは寵愛を失うと覚悟はしていたが、妃嬪は愁うことしかできないと詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌う声が聞こえてくる、どこの御殿の宴筵席で歌を謡っているのか。澄んだ音色で響き渡ってくる。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

はっきりとお別れをしたわけではないが寵愛を失なえば恨んでばかり、まさにこころがはるか遠くに行ってしまった。御殿の閨には蘭型の燈火がともる、しかし、とばりを背にすわる、名月がこの高楼を照らす。

愁摩愁,愁摩愁。

思いが募れば愁えが増し、忘れようと思っても、やっぱり愁えているのか。また、愁えている、やっぱり愁えるのか。

(荷葉杯九首 其の二)

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁うや愁う,愁えんや愁う。

 

荷葉杯九首 其三

(春の行楽に美しい女たちが選ばれ、その家のボタンを自慢にして、庭先で酒宴が開かれる、都の貴公子に惚れてしまうと詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も選ばれ、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も選ばれるが、尽くした挙句、心は折られる。都大路は晴れやか。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

都大路の貴公子の檀郎、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香に女たちは心打たれてしまう。

狂摩狂,狂摩狂。

愛して狂っちゃいそうになるのではないか、もう狂ってしまった。もう狂ってしまったのではないか、キットどうにかなってしまった。

(荷葉杯九首 其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

荷葉杯九首其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

(成人してすぐに後宮に入ったが、それがどんなことをいわれても寵愛を受けることに喜びを感じるようになり、逢瀬を過ごすことから離れることできないという女のこころを詠う。)

私の為に書いてくれた詩は、あの時のこと、そして、互にみつめあってから、互いの肝と肝を戦わせた。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったし、もう、頭を持ち上げることもできない。

それは、愧ることか、恥でもいい、あれは、恥ることなのか、恥でもいい。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

荷葉杯九首 其五

(寵愛を失っても、秋の夜、庭に出て、お越しを待ちわびる妃嬪の思いを詠う。)

夜久歌聲怨咽,殘月。

秋の夜は長く、歌声が響き届くと待つ身には、怨みがこみあげ、咽び泣く、空には名残の

月。

菊冷露微微,看看濕透縷金衣。

菊の花にうっすらと露に濡れ、冷ややかな夜がふける、居待ち月を見ていると夜露に濡れ金糸の縫い取りの衣は透けている。

歸摩歸,歸摩歸。

帰って来い、きっとここに、帰ってくる。果たして帰って来るのか、きっと帰って来る。(荷葉杯九首 其の五)

夜 久しく 歌聲 怨み咽【むせ】び,殘【なご】り月。

菊 冷やかに 露 微微たり,看看たり 縷金の衣を濕し透す。

歸らんや歸らん,歸らんや歸らん。

 

荷葉盃其六 其六

(逢瀬の時にうれしくて赤色の䇳紙に書き写し残した詩を見ては、苦い思いをしながらも、忘れることはできないと吟じてしまう妃嬪を詠う)

我憶君詩最苦,知否。

あのお方が残していった詩を見手は思い出す、それから、最も苦々しい思いにかられる。知っているのか、知らないのか。

字字盡關心,紅牋寫寄表情深。

その詩の一字一字一句一句にそんな気持ちになってしまうし、それ以外に考えられなくなる。しかも、その時はうれしくて赤色の䇳紙に書き写し、また寄せたりして心の底から愛していた。

吟摩吟,吟摩吟。

この詩を吟じるか、やっぱり吟じよう。吟じようか、やっぱり吟じよう。

(其の六)

君が詩に我が憶い 最も苦く,知るや否や。

字字 盡く關心,紅牋 寫し寄り 表情 深し。

吟じるや吟ぜん,吟じるや吟ぜん。

 

荷葉杯九首 其七

(寵愛を受けることに喜びを持ち、妃嬪はいま最高に妖艶であり可憐であると詠う。)

金鴨香濃鴛被,枕膩。

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、楽しみにして鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。柳のように細腰で美しく、柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

憐摩憐,憐摩憐。

可憐なるか、可愛いい、可愛いいですかとても可憐です。

(其の七)

金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。

小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。

憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。

 

荷葉杯九首 其八

曲砌蝶飛煙暖,春半。

花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。

嬌摩嬌,嬌摩嬌。

 

荷葉杯九首 其九

一去又乖期信,春盡。

滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。

來摩來,來摩來。

 

 

『荷葉盃其六』 現代語訳と訳註

(本文)

荷葉杯九首 其七

金鴨香濃鴛被,枕膩。

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

憐摩憐,憐摩憐。

(下し文)
(荷葉杯九首 其の七)

金鴨の香 鴛被濃くし,枕 膩【てか】る。

小髻【しょうけい】花鈿に簇【むらが】り,腰は細柳の如く臉【ほほ】は蓮の如し。

憐れんや憐れむ,憐れんや憐れむ。

(現代語訳)
(寵愛を受けることに喜びを持ち、妃嬪はいま最高に妖艶であり可憐であると詠う。)

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、楽しみにして鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。柳のように細腰で美しく、柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

可憐なるか、可愛いい、可愛いいですかとても可憐です。


(訳注)

荷葉杯九首 其七

(寵愛を受けることに喜びを持ち、妃嬪はいま最高に妖艶であり可憐であると詠う。)

女儀の魅力が一番のころ、寝室の布団に薫き込められた香の香りは濃く、用意された枕は髪油で光り、結い上げた髪に一杯に挿された髪飾り、可愛さを強調する。

男と過ごす閨でのなよなよとした柳の枝のような細腰、蓮の花のような顔、すべてが可愛いくてしかたがない。

十数歳に達した「良家の子女」は、この種の選抜をへて多数宮廷に入ったのであるが、彼女たちの中のほんの少しの者だけが幸運を得て妃嬢に列し、大多数の者は名もなき宮女のままで生涯を終えたのである。このように良家の子女を選抜するのが、宮廷女性の主要な来源であり、宮廷女性の中で少なからざる比率を占めていた。

 

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。単調二十六字、六句二仄韻、四平韻、❷⑤⑦③③の詞形をとる。

荷葉杯九首其一

春盡小庭花,寂

凭檻斂雙,忍教成病憶佳

知摩?知摩

○●●○○●  ●●

△●●○○  ●△○●●○○

○△○ ○△○

荷葉杯九首 其二

歌發誰家筵,寥

別恨正悠,蘭釭背帳月當

愁摩,愁摩

○●○○○●  △●

●●△○○  ○○●●●△○

○△○  ○△○

荷葉杯九首 其三

弱柳好花盡,晴

陌上少年,滿身蘭麝撲人

狂摩,狂摩

●●●○●●  ○●

●●●○○  ●○○●●○○

△△△  △△△

荷葉杯九首其四

記得那時相,膽

鬢亂四肢,泥人無語不擡

羞摩,羞摩

●●△○△●  ●●

●●●○○  △○○●△○○

○△○  ○△○

荷葉杯九首 其五

夜久歌聲怨,殘

菊冷露微,看看濕透縷金

歸摩,歸摩

●●○○△△  ○●

●△●○○  △△●●●○△

○△○  ○△○

荷葉盃其六 其六

我憶君詩最,知

字字盡關,紅牋寫寄表情

吟摩,吟摩

●●○○●●  ○●

●●●○○  ○○●●●○△

△△△  △△△

荷葉杯九首 其七

金鴨香濃鴛,枕

小髻簇花,腰如細柳臉如

憐摩,憐摩
○●○○○●  △●

●●●○△  ○△●●△△△

○△○  ○△○

金鴨香濃鴛被,枕膩。

鴨形のかざりのある香炉に薫く香は閨に濃く広がり、楽しみにして鴛鴦の掛け布団をととのえる、枕は髪油に光っている。

・金鴨香濃 鴨が上に飾られた香炉に香を焚くとその煙が部屋に充満すること。

・鴛被 鴛鴦の刺繍のかけ布団。

・枕膩 枕に髪脂がついて光っていること。夜の化粧をキチン整えてベットインすること。男女の仲がうまくいっていることをあらわす語である。

 

小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。

夜化粧の小さく結い上げた髪をととのえ、額に花鈿飾りが美しい。柳のように細腰で美しく、柳の枝のごとくゆれ、白い頬に紅をさし、蓮の花のように妖艶である。

・簇花鈿 花鈿の用語解説 - 仏粧は唐代に入ってからさらに中国の特徴的な化粧として完成した。〈的〉は紅で眉間にさまざまな紋様を描く〈花鈿(かでん)・花子(かし)〉に発達し,また唇の両側に黒点や緑点を描く〈靨鈿(ようでん)・粧靨(しようよう)〉がうまれた。さらに女子俑(よう)に見られるように両ほおに紅で華やかな草花模様を描くようになった。

・腰如細柳 女妓の美人は細腰型と肉感タイプとあり、柳は細腰の代名詞である。

・臉如蓮 蓮の花のように白い肌に頬紅を表現する。と同時に女性自身を示すこともある。

 

憐摩憐,憐摩憐。

可憐なるか、可愛いい、可愛いいですかとても可憐です。

・憐 可愛い、可憐。

・摩 疑問を表す。〜かしら。

 

 

 

 

音楽と歌舞(2)

 

永新と念奴は、共に盛唐時代の著名な宮廷歌手であった。永新の本名は許和子といい、もとは吉州永新(江西省永新県)の楽家(音楽を専業にしていた家)の娘であり、選ばれて宮廷に入った。彼女は歌が上手なばかりでなく、新しい歌を編み出すことができた。秋が深まり月が晴々と輝き、楼台、宮殿が静まりかえった時に、彼女がひと声歌えば、その声は長安の大通りに響き渡ったという。ある時、玄宗皇帝は勤政楼で大宴会を開き、数多くのアトラクションを催した。楼閣の下の観衆は数千数万に達し、その喧騒は凄まじかった。玄宗はいささか不機嫌になり、宴会を罷めて退席しょうとした。

この時、宦官の高力士が「永新を呼んで楼台上で一曲歌わせたら、きっと騒ぎは収まります」と提案した。そこで永新は髪をかき上げ袖をたくし上げ、楼台に出て歌った。歌声がひとたび響くと、はたして広場はしーんと静まり返り、あたかも誰一人いないかのようだった。彼女の歌は、「喜ぶ者がそれを聴くとますます元気づけられ、悲しい者がそれを聞くと断腸の思いに沈む」と評され、芸術的な影響力は絶大なものがあった(『楽府雑録』「歌」)。

 

念奴も歌がたいへん上手で、玄宗は彼女をひじょうに愛し、一日たりとも側を離れることを許さなかった。彼女は歌声で人を魅了したばかりでなく、身振りも人の心をうった。彼女は歌う度に観衆を見まわし、流し目を送ってうっとりさせた。歌声は雲や霞を突き抜け、鐘・太鼓・笙・竿(大型の笙)などにぎやかな音も、彼女の歌声を凌ぐことはできなかった(『開元天宝遺事』巻上)。

 

また、張紅紅という著名な歌手がいた。彼女はもともと父について大道で歌を唱って暮らしていたが、その歌声が将軍寺青の耳にとまり彼の姫妾にされた。彼女は非常に賢く、曲をすぐ覚えてしまった。ある時、韋青は一人の楽工(歌舞演奏の芸人)に曲を作らせ一遍だけ歌わせた。側にいた張紅紅は豆を置きながらメロディーとリズムを覚えて、楽工が歌い終るとすぐ一人で歌い、楽工を大いに驚かせた。彼女の芸術的才能は後に代宗の耳にも達し、宮中に召されて才人に封じられ、宮中で「記曲娘子」(曲覚えの名手)とよばれた(『楽府雑録』「歌」)。

 

教坊妓の中でも、任智方の四人の娘は、いずれも歌が上手で、それぞれの歌いぶりに特徴があった。中でも「二番目の娘は発声の仕方が柔かく物悲しく、歌が終る時いつ止んだのか分からないほど静かだった。三番目の娘は物腰が穏やかで、側で見ると歌を唱っているという意識が全くないようであった。四番目の娘は声が穏やかでしっとりしており、また透き通るように澄んでいてその声はあたかも空から降ってくるようだった」(『教坊記』「仕氏四女」、以下本書によるものは特別注記しない)。

 

劉采春と周徳華は俳優、楽工の身分に属する歌手であり、二人は母娘の関係であった。劉采春の歌声は空の雲をつき通すほど響きわたった。その歌はすべて当代の才子が書いた新詩であり、中でも羅貢曲が得意だった。周徳華は楊柳詞を歌うのが上手で、多くの名門・豪族の家の女性たちが彼女から歌を学んだ。彼女の性格は上品で世俗に媚びず、一流の作者による優れた歌曲を唱うだけで、輕佻浮薄な歌はいっさい唱わなかった(『雲渓友議』巻九、一〇)。

 

貞元年間、洛陽の金谷県に葉という姓の女性がおり、歌がじつに素晴らしかった。彼女は人の家の家妓になったことがあったが、後に長安に出た。長安の歌手たちは彼女の名声を聞くと、次々と彼女と歌合わせに来た。彼女が二戸発すると伴奏していた絃工、楽師もみな歌声に聞き惚れて演奏を忘れてしまった。この女性はまた、ある大家の子弟の家妓にされた。人柄がよかったので、人々は彼女の歌の才能を宮廷に漏さなかったということである。かくして、この芸術的な至宝は長く民間に瓜田まることができた(『文苑英華』巻八三二、沈亜之「歌者菓記」)。

11顧夐 (改)《巻七25荷葉杯九首其四》『花間集』327全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6907

顧夐  荷葉杯九首其四  

記得那時相見,膽戰。鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。羞摩羞,羞摩羞。

(成人してすぐに後宮に入ったが、それがどんなことをいわれても寵愛を受けることに喜びを感じるようになり、逢瀬を過ごすことから離れることできないという女のこころを詠う。)私の為に書いてくれた詩は、あの時のこと、そして、互にみつめあってから、互いの肝と肝を戦わせた。髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったし、もう、頭を持ち上げることもできない。それは、愧ることか、恥でもいい、あれは、恥ることなのか、恥でもいい。

11顧夐 (改)《巻七25荷葉杯九首其四》『花間集』327全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6907

 

 
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荷葉杯九首其一

(春には逢えると約束していたのに、花が散り落ちるように寵愛を失えばもう戻ることはない。しかし、自分の立場は認識したし、病気になっても耐えるしかないと諦める女、妃嬪を詠う)

春盡小庭花落,寂寞。

春が今終ろうとしている寝殿奥の庭の花は散りおちてしまった、ひっそりとした寂しさが漂う。花が落ちることは、寵愛を失うことは、もう元に戻らない。

凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。

手摺にもたれかかり二つの眉をひそめている。こうして堪えることを教えられ、病気になろうともただあのお方との逢瀬の約束の日を楽しみに思うだけなのだ。

知摩知?知摩知?

現実を知り、此れを本当に知ったということなのか。此れでわかったということなのか本当にわかったのか。

(荷葉杯九首 其の一)

春盡く 小庭の花落つ,寂寞たり。

檻に凭【もた】れ 雙眉に斂じ,教を忍び 病を成し 佳期を憶う。

知らんや知らん?知らんや知らん?

 

荷葉杯九首其二

(いつかは寵愛を失うと覚悟はしていたが、妃嬪は愁うことしかできないと詠う)

歌發誰家筵上,寥亮。

歌う声が聞こえてくる、どこの御殿の宴筵席で歌を謡っているのか。澄んだ音色で響き渡ってくる。

別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。

はっきりとお別れをしたわけではないが寵愛を失なえば恨んでばかり、まさにこころがはるか遠くに行ってしまった。御殿の閨には蘭型の燈火がともる、しかし、とばりを背にすわる、名月がこの高楼を照らす。

愁摩愁,愁摩愁。

思いが募れば愁えが増し、忘れようと思っても、やっぱり愁えているのか。また、愁えている、やっぱり愁えるのか。

(荷葉杯九首 其の二)

歌發すは 誰が家の筵の上に,寥亮。

別恨み 正に悠悠たり,蘭釭 帳を背にし 當樓に月る。

愁うや愁う,愁えんや愁う。

 

荷葉杯九首 其三

(春の行楽に美しい女たちが選ばれ、その家のボタンを自慢にして、庭先で酒宴が開かれる、都の貴公子に惚れてしまうと詠う)

弱柳好花盡拆,晴陌。

若い柳の細腰の女も選ばれ、艶やかな素敵なぼたんの花の様な女も選ばれるが、尽くした挙句、心は折られる。都大路は晴れやか。

陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。

都大路の貴公子の檀郎、体全身に蘭麝香の香り漂い、その香に女たちは心打たれてしまう。

狂摩狂,狂摩狂。

愛して狂っちゃいそうになるのではないか、もう狂ってしまった。もう狂ってしまったのではないか、キットどうにかなってしまった。

(荷葉杯九首 其の三)

弱【わか】い柳 好き花 拆り盡し,晴れたる陌。

陌上 少年の郎,滿身 蘭麝 人 香に撲【なげう】つ。

狂わんや狂わん,狂わんや狂わん。

 

荷葉杯九首其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

(成人してすぐに後宮に入ったが、それがどんなことをいわれても寵愛を受けることに喜びを感じるようになり、逢瀬を過ごすことから離れることできないという女のこころを詠う。)

私の為に書いてくれた詩は、あの時のこと、そして、互にみつめあってから、互いの肝と肝を戦わせた。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったし、もう、頭を持ち上げることもできない。

それは、愧ることか、恥でもいい、あれは、恥ることなのか、恥でもいい。

(其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

楊貴妃清華池002
 

『荷葉杯九首 其四』 現代語訳と訳註

(本文)

荷葉杯九首其四

記得那時相見,膽戰。

鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。

羞摩羞,羞摩羞。

 

 

(下し文)

(荷葉杯九首其の四)

記 那の時 相い見るを得ん,膽戰。

鬢亂れるも 四肢柔らかなり,泥人となりて 語る無く 擡頭せざる。

羞らんや羞り,羞らんや羞る。

 

 

(現代語訳)

(成人してすぐに後宮に入ったが、それがどんなことをいわれても寵愛を受けることに喜びを感じるようになり、逢瀬を過ごすことから離れることできないという女のこころを詠う。)

私の為に書いてくれた詩は、あの時のこと、そして、互にみつめあってから、互いの肝と肝を戦わせた。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったし、もう、頭を持ち上げることもできない。

それは、愧ることか、恥でもいい、あれは、恥ることなのか、恥でもいい。

 

(訳注)

荷葉杯九首其四

(成人してすぐに後宮に入ったが、それがどんなことをいわれても寵愛を受けることに喜びを感じるようになり、逢瀬を過ごすことから離れることできないという女のこころを詠う。)

 

唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された。

 

<后妃と宮人>

十数歳に達した「良家の子女」は、この種の選抜をへて多数宮廷に入ったのであるが、彼女たちの中のほんの少しの者だけが幸運を得て妃嬢に列し、大多数の者は名もなき宮女のままで生涯を終えたのである。このように良家の子女を選抜するのが、宮廷女性の主要な来源であり、宮廷女性の中で少なからざる比率を占めていた。陳鴻は『長恨歌伝』のなかで、玄宗の時代、宮中の「良家の子は、千を以て数える」といい、辞調も『劉無双伝』の中で「後宮に選抜された宮嬢の多くは衣冠(公卿大夫)の家の子女である」と書いている。しかしながら、良家の子女の才智徳行あるものを厳格に選択するというのは、主に皇太子、諸王の妃を決める時だけであった。事実、歴代の皇帝は宮女を選別するのに、決してこれほど厳格な規定を持ってはいなかった。皇帝たちは名門の令嬢でも、貧しい家の娘でも、はては娼妓、俳優などの賎しい女たちであろうとも、ただ容姿、技芸が衆に抜きんでていれば、一様に選んで宮廷に入れたのであった。玄宗は、かつて「花鳥使」なる役人を四方に派遣して密かに美人をさがさせたが、家柄や才能、徳行などは必ずしも問題にしなかったようである。その他、唐の宮中には教坊などの役所があり、皇族の耳目を楽しませる多数の宮妓を専門に養成していた。この教坊もしばしば民間で女性を選抜した。たとえば憲宗の時、教坊は「密旨だとして良家の子女、及び衣冠の族の別宅の妓人を取り上げた」(『旧唐書』李緯伝)。宮妓を選抜するにはただ容姿、技芸を見るだけであったから、良家の出か、才智徳行がどうかは問題にしなかった。

古来、自分の青春と自由を、移り気で定かならぬ皇帝の寵愛ごときと取り換えようなどと思う女性はいくらもいなかったし、また自分の娘を世間から隔絶したそんな所に送ろうとする父母もほとんどいるわけはなかった。それで、ひとたび官女を選抜するという話があれば、朝野、貴職を問わず人々はみな恐怖におののいた。そのため、玄宗、文宗の両皇帝は官女の選抜をやめざるを得なかった。

 

『花間集』には顧夐の作が九首収められている。単調二十六字、六句二仄韻、四平韻、❷⑤⑦③③の詞形をとる。

荷葉杯九首其一

春盡小庭花,寂

凭檻斂雙,忍教成病憶佳

知摩?知摩

○●●○○●  ●●

△●●○○  ●△○●●○○

○△○ ○△○

荷葉杯九首 其二

歌發誰家筵,寥

別恨正悠,蘭釭背帳月當

愁摩,愁摩

○●○○○●  △●

●●△○○  ○○●●●△○

○△○  ○△○

荷葉杯九首 其三

弱柳好花盡,晴

陌上少年,滿身蘭麝撲人

狂摩,狂摩

●●●○●●  ○●

●●●○○  ●○○●●○○

△△△  △△△

荷葉杯九首其四

記得那時相,膽

鬢亂四肢,泥人無語不擡

羞摩,羞摩

●●△○△●  ●●

●●●○○  △○○●△○○

○△○  ○△○

溫庭筠

《巻二14 荷葉盃三首其一》 一點露珠凝冷,波影。滿池塘。綠莖紅豔兩相亂,腸斷。水風涼。

溫庭筠

《巻二15 荷葉盃三首其二》 鏡水夜來秋月,如雪。採蓮時。小娘紅粉對寒浪,惆悵。正思想。

溫庭筠

《巻二16 荷葉盃三首其三》 楚女欲歸南浦,朝雨。濕愁紅。小船搖漾入花裏,波起。隔西風。

韋莊

《巻二44 荷葉盃二首其一》 代佳人難得,傾國,花下見無期。一雙愁黛遠山眉,不忍更思惟。閑掩翠屏金鳳,殘夢,羅幕畫堂空。碧天無路信難通,惆悵舊房櫳。

韋莊

《巻二45 荷葉盃二首其二》 記得那年花下,深夜,初識謝娘時。水堂西面畫簾垂,攜手暗相期。惆悵曉鶯殘月,相別,從此隔音塵。如今俱是異人,相見更無因。

顧夐

《巻七22 荷葉杯九首其一》 春盡小庭花落,寂寞。凭檻斂雙眉,忍教成病憶佳期。知摩知?知摩知?

顧夐

《巻七23 荷葉杯九首其二》 歌發誰家筵上,寥亮。別恨正悠悠,蘭釭背帳月當樓。愁摩愁,愁摩愁。

顧夐

《巻七24 荷葉杯九首其三》 弱柳好花盡拆,晴陌。陌上少年郎,滿身蘭麝撲人香。狂摩狂,狂摩狂。

顧夐

《巻七25 荷葉杯九首其四》 記得那時相見,膽戰。鬢亂四肢柔,泥人無語不擡頭。羞摩羞,羞摩羞。

顧夐

《巻七26 荷葉杯九首其五》 夜久歌聲怨咽,殘月。菊冷露微微,看看濕透縷金衣。歸摩歸,歸摩歸。

顧夐

《巻七27 荷葉杯九首其六》 我憶君詩最苦,知否。字字盡關心,紅牋寫寄表情深。吟摩吟,吟摩吟。

顧夐

《巻七28 荷葉杯九首其七》 金鴨香濃鴛被,枕膩。小髻簇花鈿,腰如細柳臉如蓮。憐摩憐,憐摩憐。

顧夐

《巻七29 荷葉杯九首其八》 曲砌蝶飛煙暖,春半。花發柳垂條,花如雙臉柳如腰。嬌摩嬌,嬌摩嬌。

顧夐

《巻七30 荷葉杯九首其九》 一去又乖期信,春盡。滿院長莓苔,手挼裙帶獨徘徊。來摩來,來摩來。

 

 

記得 那時 相見,膽戰。

私の為に書いてくれた詩は、あの時のこと、そして、互にみつめあってから、互いの肝と肝を戦わせた。

・那時 そのとき; その時点; その時。

・膽 1 内臓器官の名。六腑の一。「胆汁・胆石・胆嚢(たんのう)/臥薪嘗胆(がしんしょうたん)2 どっしりと落ち着いた精神力。きもったま。

 

鬢亂 四肢柔,泥人 無語 不擡頭。

髪をかき乱し、肢体を柔らかにして許したし、汗まみれになって疲れ果て、もう言葉にすることもできないほどになったし、もう、頭を持ち上げることもできない。

・擡頭 ・台頭・抬頭【たいとう】 . 頭を持ち上げること。あるものの勢力が伸び,進出すること。 「新興勢力が-する」. . 上奏文などの中で,高貴の人に関した語を書く時,敬意を示すため行を改め,ほかよりも高く書くこと。

 

羞摩羞,羞摩羞。

それは、愧じることか、恥でもいい、あれは、恥ることなのか、恥でもいい。

 

 

 

音楽と歌舞 4分割(3

 

彼女たちの生活も比較的自由で、彼女たちに対する宮中の束縛も、それほど厳格ではなかった。年をとり容色が衰えると、宮中から出て家に帰りたいと申し出ることが許されており、宮人のように必ずしも深宮の中で朽ち果てねばならないというわけではなかった。『教坊記』に記されている竿木妓の范漢女大娘子、許渾の「簫煉師に贈る」という詩に出てくる内妓の簫煉師、また『楽府雑録』に記されている宣徽院(宮中の一役所)の門弟楊氏などは、みな年老いて後、宮中から退出した内人であった。張祜の「退宮の人」という詩に、「歌喉漸く退えで宮闈を出でんとし、泣いて伶官(宮中の楽官)に話せば 上 帰るを許す」とある。廖融の「退官妓」という詩に、「一旦色衰えて故里に帰るも、月明 猶お夢に梁州(曲名)を按く」とあるが、これらはいずれも内人が年老いて後、宮中から退いたことを述べているのである。宮妓が宮中から出た後の境遇は、おしなべてそれほど良いというわけでもなかったが、宮人に比べれば概して自由の身であった。以上によって、唐朝の宮廷は宮妓を芸人と見なして待遇し、宮人のような賎民身分とは区別していたこと、宮妓たちの待遇はまだ比較的良かったことが分かる。

11顧夐 (改)《巻六46甘州子五首其四》『花間集』297全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6757

顧夐  甘州子五首其四

露桃花裏小樓深,持玉盞,聽瑤琴。醉歸青瑣入鴛衾,月色照衣襟。山枕上,翠鈿鎮眉心。

(一芸に秀でたものが集まる桃花宴で、甘州子を聞き、月が上にあるうちに、酔いつぶれる前に閨に入ってまじりあうことを詠う)露桃の花が咲く林に小道があり奥深き所に小さな高殿があり、そこでは玉の杯を手にして、玉を用いた装の琴で甘州子の調べを聴く。酔って帰り、靑扉を閉め、閏の鴛鴦模様の掛け布団に入る。月は真上にあり妃嬪の襟元照らしている。女は横になり、ふたり枕をならべる、緑色の花鈿の化粧した妃嬪と眉もこころも合体する。

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甘州子五首 其一

(西域地方から来た娘が初めて寵愛をうける、龍涎香と麝香の香りが閨にひろがり、秋の夜長を過ごすのをうたう。)

一爐龍麝錦帷旁,屏掩映,燭熒煌。

香炉より龍涎香と麝香の二つの香が一筋になって立ち上り、錦の帳の傍ら、屏風に照り映えて浮びあがり、招かれた閨に灯火きらめきあかるい。

禁樓刁斗喜初長,羅薦繡鴛鴦。

宮中で時刻を知らせるためにならせる鈴音が、今、初更の時を告げる。一緒に過ごす夜はまだこれからで長いから、嬉しくおもう。ベッドのうえには薄絹の鴛駕の縫い取り模様の敷物の上にまねかれる、

山枕上,私語口脂香。

女は横になり、ふたり枕をならべる、耳元にささやく時に口紅の香がする。

(甘州子五首 其の一)

一爐の龍麝【りょうじゃ】錦帷【きんい】の旁ら,屏 掩て映し,燭 熒煌【けいこう】たり。

禁樓の刁斗【ちょうと】 初めて長きを喜び,羅薦【らせん】繡りの鴛鴦あり。

山 枕の上に,私語 口脂の香。

 

甘州子五首 其二

(清々しい夜がくるといつも寵愛を受けた、どんなに素晴らしく過ごしても心配で仕方なかったのが、現実になり、一年に一度の河を渡ってくることもなくなってしまった妃賓を詠う。)

每逢清夜與良晨,多悵望,足傷神。

清々しい夜がくるといつもお逢いできた、それにともなって、素晴らしい夜明けを迎えた。それでも、将来のことが心配して遙か先を眺めたり、立ち直れないほど深く心を傷めたりした。

雲迷水隔意中人,寂寞繡羅茵。

天の雲が迷えば、お慕いする人とは天の川の水に隔てられてしまう。鳳凰の刺繍の敷物の牀の上は寂寞としてさびしい限り。

山枕上,幾點淚痕新。

いつものように牀の枕に横になる、はらはらと落ちた涙の模様ができる、そして今宵もまた新しい模様が加わる。

(甘州子五首 其の二)

逢う每に 清夜と良晨【りょうしん】となり,悵望すること多く,神を傷ましむに足りたり。

雲 迷えば 水 隔つもの 意中の人も,寂寞【せきばく】たり 繡の羅茵【らいん】には。

山 枕の上,幾ばくの點【てん】淚痕【るいこん】新たにせん。

 

 

甘州子五首 其三

曾如劉阮訪仙蹤,深洞客,此時逢。

綺筵散後繡衾同,款曲見韶容。

山枕上,長是怯晨鐘。

(劉郎・阮郎といわれるものは仙郷にゆき、夢のようなひと時をすごす、その様子を詠う。)

かつて劉郎とか、阮郎のようにすごし、仙界に訪れた。仙郷の三洞の奥深い所に案内され、この時出逢ったのである

綵絹の縁取りの筵の敷物の上で宴をして終わった後には、鳳凰の縫い取りのある布団の中に並んで入る。打ち解けた甘州子の楽曲が流れる中、奇麗な顔立ちを見続ける。

女は横になり、ふたり枕をならべる、夜長のこんな時間を過ごしていると朝を告げる鐘の音が聞こえてこないかと怯える。

(甘州子五首 其の三)

曾て劉阮の如く仙を訪ねた蹤あり,洞を深くし客あり,此の時逢う。

綺筵 散後 繡衾 同じゅうし,曲を款めて韶を見て容く。

山 枕の上,是を長くして 晨鐘に怯る。

 

甘州子五首其四

(一芸に秀でたものが集まる桃花宴で、甘州子を聞き、月が上にあるうちに、酔いつぶれる前に閨に入ってまじりあうことを詠う)

露桃花裏小樓深,持玉盞,聽瑤琴。

露桃の花が咲く林に小道があり奥深き所に小さな高殿があり、そこでは玉の杯を手にして、玉を用いた装の琴で甘州子の調べを聴く。

醉歸青瑣入鴛衾,月色照衣襟。

酔って帰り、靑扉を閉め、閏の鴛鴦模様の掛け布団に入る。月は真上にあり妃嬪の襟元照らしている。

山枕上,翠鈿鎮眉心。

女は横になり、ふたり枕をならべる、緑色の花鈿の化粧した妃嬪と眉もこころも合体する。

 

(甘州子五首其の四)

露桃 花の裏 小樓深くして,玉盞【ぎょくさん】を持ち,瑤琴を聽く。

醉うて青瑣に歸り 鴛衾に入り,月色 衣襟を照らす。

山 枕上し,翠鈿 眉心を鎮う。

 

其五

紅鑪深夜醉調笙,敲拍處,玉纖輕。

小屏古畫岸低平,煙月滿閑庭。

山枕上,燈背臉波橫。

 

 

『甘州子五首其四』 現代語訳と訳註

(本文)

甘州子五首其四

露桃花裏小樓深,持玉盞,聽瑤琴。

醉歸青瑣入鴛衾,月色照衣襟。

山枕上,翠鈿鎮眉心。

 

(下し文)

(甘州子五首其の四)

露桃 花の裏 小樓深くして,玉盞【ぎょくさん】を持ち,瑤琴を聽く。

醉うて青瑣に歸り 鴛衾に入り,月色 衣襟を照らす。

山 枕上し,翠鈿 眉心を鎮う。

 

 

(現代語訳)

(一芸に秀でたものが集まる桃花宴で、甘州子を聞き、月が上にあるうちに、酔いつぶれる前に閨に入ってまじりあうことを詠う)

露桃の花が咲く林に小道があり奥深き所に小さな高殿があり、そこでは玉の杯を手にして、玉を用いた装の琴で甘州子の調べを聴く。

酔って帰り、靑扉を閉め、閏の鴛鴦模様の掛け布団に入る。月は真上にあり妃嬪の襟元照らしている。

女は横になり、ふたり枕をならべる、緑色の花鈿の化粧した妃嬪と眉もこころも合体する。

 

(訳注)

甘州子五首其四

(一芸に秀でたものが集まる桃花宴で、甘州子を聞き、月が上にあるうちに、酔いつぶれる前に閨に入ってまじりあうことを詠う)

【解説】 桃花の時節、男女の逢瀬を詠う。「小楼 深く」「青瑣に歸り」の語は、二人の出会いが秘められたものであることを暗示し、酔って女の閏に帰った後の静かな情景描写は、酔う前に布団に入り込み、「翠鈿鎮眉心」と合体することを表す。

甘州子は西域から花街に来た娘をいう。 唐の長安は当時世界最大の都市で、国際交流都市であった。そこには青い目の娘がいた。特にペルシャ系、トルコ系の美女が詩に登場している。雅楽に「甘州子」がある。中国の雅楽は,〈雅正の楽〉の意で俗楽に対立し,儒教の礼楽思想に基づいて成立,発展したために狭義には天地宗廟の祭祀楽を意味するが,広義には国家,宮廷の儀式や宴饗の楽も含める。狭義の雅楽は古来の雅楽器を用い,堂上登歌(どうじようとうか),堂下楽懸(どうかがくけん)の2種の楽を奏し,八佾(はちいつ)の舞を舞うという一定の形式を有する。

甘州(かんしゅう)は中国にかつて存在した州。現在の中華人民共和国甘粛省張掖市に比定される。南北朝時代には西魏により西涼州が設置され、553年(廃帝3年)に甘州と改称された。その後、隋代は、隋朝が成立すると当初は甘州が設置され27県を管轄した。607年(大業3年)には郡制施行に伴い武威郡と改称された。

唐の教坊の曲名。『花問集』には顧夐の五首のみ所収。単調三十三字、七句五平韻で、⑦3③⑦⑤3⑤の詞形をとる。

甘州子五首 其一

一爐龍麝錦帷,屏掩映,燭熒

禁樓刁斗喜初,羅薦繡鴛

山枕上,私語口脂

●○○●●○○  △●● ●○○ 

△○○●●○△ ○●●○○

○△● ○●●○○

 

甘州子五首 其二

每逢清夜與良,多悵望,足傷

雲迷水隔意中,寂寞繡羅

山枕,幾點淚痕

●○○●△○○  ○●△ ●△○

○○●●●△○ ●●●○○

○△● △●●○○

 

甘州子五首 其三

曾如劉阮訪仙,深洞客,此時

綺筵散後繡衾,款曲見韶

山枕上,長是怯晨

○△○△●○○  △△● ●○○

●○●●●○○ ●●●○○

○△● △●●○○

 

甘州子五首 其四

露桃花裏小樓,持玉盞,聽瑤

醉歸青瑣入鴛,月色照衣

山枕上,翠鈿鎮眉

●○○●●○△  ○●● △○○

●○○●●○○ ●●●△○

○△● ●△●○○

 

露桃花裏小樓深,持玉盞,聽瑤琴。

露桃の花が咲く林に小道があり奥深き所に小さな高殿があり、そこでは玉の杯を手にして、玉を用いた装の琴で甘州子の調べを聴く。

○露桃 露井の傍らに植えられた桃。露井は屋根なしの井戸。・桃花:「桃李不言、下自成蹊。」桃や李は口をきいて人を招くことはしないが、良い花や実があるので人々が争って来て、結果として自然に小道ができる。

○瑤琴 玉を飾った琴。ここは琴の音で「甘州子」を意識させる。いた琴。 南朝宋照《之七》:「明鏡塵匣中,瑶琴生網

 

醉歸青瑣入鴛衾,月色照衣襟。

酔って帰り、靑扉を閉め、閏の鴛鴦模様の掛け布団に入る。月は真上にあり妃嬪の襟元照らしている。

○青瑣 青く塗られ連鎖模様の彫刻が施された扉。青い扉は東の扉であることは西の閨を連想させる。

 

山枕上,翠鈿鎮眉心。

女は横になり、ふたり枕をならべる、緑色の花鈿の化粧した妃嬪と眉もこころも合体する。

○鎮眉心 上から押さえる。男の眉と女の眉を重ね、心を重ね合わすこと。

11顧夐 (改)《巻六43甘州子五首其一》『花間集』294全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6742

顧夐  甘州子五首 其一  

一爐龍麝錦帷旁,屏掩映,燭熒煌。禁樓刁斗喜初長,羅薦繡鴛鴦。山枕上,私語口脂香。

(西域地方から来た娘が初めて寵愛をうける、龍涎香と麝香の香りが閨にひろがり、秋の夜長を過ごすのをうたう。)香炉より龍涎香と麝香の二つの香が一筋になって立ち上り、錦の帳の傍ら、屏風に照り映えて浮びあがり、招かれた閨に灯火きらめきあかるい。宮中で時刻を知らせるためにならせる鈴音が、今、初更の時を告げる。一緒に過ごす夜はまだこれからで長いから、嬉しくおもう。ベッドのうえには薄絹の鴛駕の縫い取り模様の敷物の上にまねかれる、女は横になり、ふたり枕をならべる、耳元にささやく時に口紅の香がする。

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花間集 顧夐 巻六 甘州子五首

巻六43甘州子五首其一  一爐龍麝錦帷旁,屏掩映,燭熒煌。禁樓刁斗喜初長,羅薦繡鴛鴦。山枕上,私語口脂香。

巻六44甘州子五首其二  每逢清夜與良晨,多悵望,足傷神。雲迷水隔意中人,寂寞繡羅茵。山枕上,幾點淚痕新。

巻六45甘州子五首其三  曾如劉阮訪仙蹤,深洞客,此時逢。綺筵散後繡衾同,款曲見韶容。山枕上,長是怯晨鐘。

巻六46甘州子五首其四  露桃花裏小樓深,持玉盞,聽瑤琴。醉歸青瑣入鴛衾,月色照衣襟。山枕上,翠鈿鎮眉心。

巻六47甘州子五首其五  紅鑪深夜醉調笙,敲拍處,玉纖輕。小屏古畫岸低平,煙月滿閑庭。山枕上,燈背臉波橫。

 

 

甘州子五首 其一

(西域地方から来た娘が初めて寵愛をうける、龍涎香と麝香の香りが閨にひろがり、秋の夜長を過ごすのをうたう。)

一爐龍麝錦帷旁,屏掩映,燭熒煌。

香炉より龍涎香と麝香の二つの香が一筋になって立ち上り、錦の帳の傍ら、屏風に照り映えて浮びあがり、招かれた閨に灯火きらめきあかるい。

禁樓刁斗喜初長,羅薦繡鴛鴦。

宮中で時刻を知らせるためにならせる鈴音が、今、初更の時を告げる。一緒に過ごす夜はまだこれからで長いから、嬉しくおもう。ベッドのうえには薄絹の鴛駕の縫い取り模様の敷物の上にまねかれる、

山枕上,私語口脂香。

女は横になり、ふたり枕をならべる、耳元にささやく時に口紅の香がする。

(甘州子五首 其の一)

一爐の龍麝【りょうじゃ】錦帷【きんい】の旁ら,屏 掩て映し,燭 熒煌【けいこう】たり。

禁樓の刁斗【ちょうと】 初めて長きを喜び,羅薦【らせん】繡りの鴛鴦あり。

山 枕の上に,私語 口脂の香。

 

 

『甘州子五首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

甘州子五首 其一

一爐龍麝錦帷旁,屏掩映,燭熒煌。

禁樓刁斗喜初長,羅薦繡鴛鴦。

山枕上,私語口脂香。

 

(下し文)

(甘州子五首 其の一)

一爐の龍麝【りょうじゃ】錦帷【きんい】の旁ら,屏 掩て映し,燭 熒煌【けいこう】たり。

禁樓の刁斗【ちょうと】 初めて長きを喜び,羅薦【らせん】繡りの鴛鴦あり。

山 枕の上に,私語 口脂の香。

 

(現代語訳)

(西域地方から来た娘が初めて寵愛をうける、龍涎香と麝香の香りが閨にひろがり、秋の夜長を過ごすのをうたう。)

香炉より龍涎香と麝香の二つの香が一筋になって立ち上り、錦の帳の傍ら、屏風に照り映えて浮びあがり、招かれた閨に灯火きらめきあかるい。

宮中で時刻を知らせるためにならせる鈴音が、今、初更の時を告げる。一緒に過ごす夜はまだこれからで長いから、嬉しくおもう。ベッドのうえには薄絹の鴛駕の縫い取り模様の敷物の上にまねかれる、

女は横になり、ふたり枕をならべる、耳元にささやく時に口紅の香がする。

 

(訳注)

甘州子五首其一

(西域地方から来た娘が初めて寵愛をうける、龍涎香と麝香の香りが閨にひろがり、秋の夜長を過ごすのをうたう。)

長い夜の共寝の喜びを詠う。末尾、愛しの女のささやく口許から口紅の香りが漂うという表現、夜の濃密な男女の愛の姿を描き出している。

甘州子は西域から来た娘をいう。 唐の長安は当時世界最大の都市で、国際交流都市であった。そこには青い目の娘がいた。特にペルシャ系、トルコ系の美女が詩に登場している。雅楽に「甘州子」がある。中国の雅楽は,〈雅正の楽〉の意で俗楽に対立し,儒教の礼楽思想に基づいて成立,発展したために狭義には天地宗廟の祭祀楽を意味するが,広義には国家,宮廷の儀式や宴饗の楽も含める。狭義の雅楽は古来の雅楽器を用い,堂上登歌(どうじようとうか),堂下楽懸(どうかがくけん)の2種の楽を奏し,八佾(はちいつ)の舞を舞うという一定の形式を有する。

甘州(かんしゅう)は中国にかつて存在した州。現在の中華人民共和国甘粛省張掖市に比定される。南北朝時代には西魏により西涼州が設置され、553年(廃帝3年)に甘州と改称された。その後、隋代は、隋朝が成立すると当初は甘州が設置され27県を管轄した。607年(大業3年)には郡制施行に伴い武威郡と改称された。

唐の教坊の曲名。『花問集』には顧夐の五首のみ所収。単調三十三字、七句五平韻で、⑦3③⑦⑤3⑤の詞形をとる。

甘州子五首 其一

一爐龍麝錦帷,屏掩映,燭熒

●○○●●○○  △●● ●○○ 

禁樓刁斗喜初,羅薦繡鴛

△○○●●○△ ○●●○○

山枕上,私語口脂

○△● ○●●○○

 

一爐龍麝錦帷旁,屏掩映,燭熒煌。

香炉より龍涎香と麝香の二つの香が一筋になって立ち上り、錦の帳の傍ら、屏風に照り映えて浮びあがり、招かれた閨に灯火きらめきあかるい。

龍麝 龍涎香と麝香。龍涎は鯨の内分泌物が固まってできた動物性の香料。高貴な香料で大食国(サラセン国)の近海から採れる。麝香は麝香鹿から採れる香料。なお龍を龍脳香と解する説もある。

掩映 屏風全体を掩い映える。

熒煌 きらきらする、輝く。

 

禁樓刁斗喜初長,羅薦繡鴛鴦。

宮中で時刻を知らせるためにならせる鈴音が、今、初更の時を告げる。一緒に過ごす夜はまだこれからで長いから、嬉しくおもう。ベッドのうえには薄絹の鴛駕の縫い取り模様の敷物の上にまねかれる、

禁楼刁斗 宮中で時刻を知らせるためにならせる鈴。刁斗は鈴。

喜初長 夜の最初の時刻の知らせがあったばかりなのに、一緒にいる夜が長いのが嬉しいという意。

羅薦 うす絹の床敷。

 

山枕上,私語口脂香。

女は横になり、ふたり枕をならべる、耳元にささやく時に口紅の香がする。

山枕上 女性が横たわることを山という表現をする。

10和凝 (改)《巻六17臨江仙二首其二》『花間集』268全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6612

和凝  臨江仙二首 其二  

披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。

肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

(呉に送られた西施は心に秘めて閨に入り、春を迎えて晴れやかな気持ちで身をゆだねのを詠う。)

暖かい綿入れの服を身に着けている衣の下から風が吹き上げ、紅い宮錦をまきあげる、鶯が春を告げる朝にときとして囀ってくれる声が軽やかに聞こえてくる。みどりの薄絹の上掛け布で、しとやかに象牙の簪を付けて、顔を隠す。金細工の鳳凰は歩くに従い雌雄そろって揺れる。しなやかで、ほっそりとしたからだ、きめこまかい肌がつやつやして美しい。それにどうしたのか顔に表情を少し変えて、春を迎えて晴れやかな気持ちを微笑に伝えて、贈ってくる。なまめかしさと恥じらいをみせていて、閨の布団にあえて入ろうとはしない。部屋には蘭膏の香りが広がり、燈火の内にふたりのこころは深くなっていく。

10和凝 (改)《巻六17臨江仙二首其二》『花間集』268全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6612

 

 
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10和凝 (改)《巻六14小重山二首其一》『花間集』265全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6597

和凝《小重山二首其一》

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。

煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。初心【うぶ】に見える涙顔の化粧を施して、曉花の朝露をささげて、麗らかな春の日は早く明けそして日ごとに長くなる、風が吹いてきて、花々の匂いを届けてくれて和ませてくれる。春の夕靄が漂うと青柳の長いゆれる枝を隠してしまう、お堀の水は春水で嵩をたかく、淥水一層青く澄んでいる、そして太掖池に流れ入り堤をびっしり春の草が生えている。一時ふった春雨がまた降り、花を散り落として春の景色を洗い流してしまうけれど、天使の夾城はるか遠くまで続き、季節が変わっても花の苑に向かう、そうして《竹枝子曲》の笙歌を吹奏するのである。

10和凝 (改)《巻六14小重山二首其一》『花間集』265全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6597

 

 
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10 和學士凝二十首

 和凝898955)字は成績、郭州須昌(山東省東平県)の人。幼少のころから聡明で、学問を好み、一読した書はみなその大義に達していた。十七歳で明経に挙げられ、十九歳で進士に及第した。はじめ後梁に仕えて地方官をつとめたが、つづいて後唐に仕えて、天成年間(926929)に殿中侍御史を拝し、礼部員外即を経て主客員外郎、知制許に改められ、ついで翰林に入って学士となった。また後晋に仕えて、天福五年(940) に中書侍郎同中書門下平車掌(宰相)を拝命した。ついでまた後漢に仕えて、太子大伴を拝し、魯国公に封ぜられた。後周の顕徳二年(955)五十八歳で卒した。のち侍中を贈与された。外見をつくろうことが好きで、平生、乗物や衣服を美しく装飾してりっぱなようすをしていた。また、後進のものを世話するのが好きで、賢不肖にかかわらず、虚心をもってその仕進の道を開きみちびいたので、たいそう評判がよかったという。

文章をつくるにはその分量の多いことが得意であった。文集は百余巻あり、かつて自ら板に訝って、数百状を校印し、人に分かち与えた。短歌艶曲に長じ、「由子相公」というよび名がつけられていた。かれの艶詞をあつめたものに香密集があり、宰相の名を避けて韓樫の名に託してあったというが、今日伝わる韓促の香密集(香散薬)は和顔の作ではないことはすでに明の毛管などがその尤もであることを弁じている(五唐人集)。著述に演論集三十巻、群芸集五十巻、紅薬編五巻(宋史芸文志)があったといぅが、今伝わらない。

かれの詩集に紅葉稿一巻あり、百余首を収めているといぅが(歴代詩余、竜沐勘著唐宋名家詩選に紹介した宋大字本)、この本も明らかではない。紅葉稿は紅薬編のことで、これは制語に関する著述であるといぅ説もある (胡透、詞選)。かれの詞は花間集に二十首収められている。王国経の輯本には二十九首を収めている。

* 旧五代史巻一二七 新五代史巻五六 北夢項言巻パ以歌詞自娯粂 歴代詩余巻一〇二詞人姓氏 全唐詩巻三二 紅葉稿詞一巻 王国稚韓、唐五代二十一家詞輯所収

 

「花間集」和學士凝二十首

巻六14小重山二首其一  春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

巻六15小重山二首其二  正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

巻六16臨江仙二首其一  海棠香老春江晚,小樓霧縠濛。翠鬟初出繡簾中,麝煙鸞珮蘋風。碾玉釵搖鸂鶒戰,雪肌雲鬢將融。含情遙指碧波東,越王臺殿蓼花紅。

巻六17臨江仙二首其二  披袍窣地紅宮錦,鶯語時囀輕音。碧羅冠子穩犀簪,鳳皇雙颭步搖金。肌骨細勻紅玉軟,臉波微送春心。嬌羞不肯入鴛衾,蘭膏光裏兩情深。

巻六18菩薩蠻一首  越梅半拆輕寒裏,冰清澹薄籠藍水。暖覺杏梢紅,遊絲狂惹風。閑堦莎徑碧,遠夢猶堪惜。離恨又迎春,相思難重陳。

巻六19山花子二首其一  鶯錦蟬縠馥麝臍,輕裾花早曉烟迷。鸂鶒戰金紅掌墜,翠雲低。星靨笑隈霞臉畔,蹙金開襜襯銀泥。春思半和芳草嫩,碧萋萋。

巻六20山花子二首其二  銀字笙寒調正長,水紋簟冷畫屏涼。玉腕重金扼臂,澹梳粧。幾度試香纖手暖,一迴嘗酒絳脣光。佯弄紅絲蠅拂子,打檀郎。

巻六21河滿子二首其一  正是破瓜年幾,含情慣得人饒。桃李精神鸚鵡舌,可堪虛度良宵。卻愛藍羅裙子,羨他長束纖腰。

巻六22河滿子二首其二  寫得魚牋無限,其如花鏁春輝。目斷巫山雲雨,空教殘夢依依。卻愛熏香小鴨,羨他長在屏幃。

巻六23薄命女一首  天欲曉,宮漏穿花聲繚繞。牎裏星光少,冷霞寒侵帳額,殘月光沉樹杪。夢斷錦幃空悄悄,強起愁眉小。

巻六24望梅花一首  春草全無消息,臈雪猶餘蹤跡。越嶺寒枝香自拆,冷豔奇芳堪惜。何事壽陽無處覓,吹入誰家橫笛。

巻六25天仙子二首其一  柳色披衫金縷鳳,纖手輕拈紅豆弄,翠蛾雙斂正含情。桃花洞,瑤臺夢,一片春愁誰與共。

巻六26天仙子二首其二  洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。

巻六27春光好二首其一  紗暖,畫屏閑,嚲雲鬟。睡起四肢無力,半春間。玉指剪裁羅勝,金盤點綴蘇山。窺宋深心無限事,小眉彎。

巻六28春光好二首其二  蘋葉軟,杏花明,畫舡輕。雙浴鴛鴦出淥汀,棹歌聲。春水無風無浪,春天半雨半晴。紅粉相隨南浦晚,幾含情。

巻六29採桑子一首  蝤蠐領上訶梨子,繡帶雙垂,椒閑時,競學樗蒲賭荔枝。叢頭鞋子紅編細,裙窣金絲。無事嚬眉,春思飜教阿母疑。

巻六30柳枝三首其一  軟碧瑤煙似送人,映花時把翠蛾嚬。青青自是風流主,慢颭金絲待洛神。

巻六31柳枝三首其二  瑟瑟羅裙金縷腰,黛眉隈破未重描。醉來咬損新花子,拽住仙郎盡放嬌。

巻六32柳枝三首其三  鵲橋初就咽銀河,今夜仙郎自姓和。不是昔年攀桂樹,豈能月裏索嫦娥。

巻六33漁父一首   白芷汀寒立鷺鷥,蘋風輕剪浪花時。烟冪冪,日遲遲。香引芙蓉惹釣絲。

 

 

小重山二首 其一

(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。

曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。

初心【うぶ】に見える涙顔の化粧を施して、曉花の朝露をささげて、麗らかな春の日は早く明けそして日ごとに長くなる、風が吹いてきて、花々の匂いを届けてくれて和ませてくれる。

煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。

春の夕靄が漂うと青柳の長いゆれる枝を隠してしまう、お堀の水は春水で嵩をたかく、淥水一層青く澄んでいる、そして太掖池に流れ入り堤をびっしり春の草が生えている

時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

一時ふった春雨がまた降り、花を散り落として春の景色を洗い流してしまうけれど、天使の夾城はるか遠くまで続き、季節が変わっても花の苑に向かう、そうして《竹枝子曲》の笙歌を吹奏するのである。

(小重山二首 其の一)

春神京に入り 萬木 芳し,禁林 鶯語滑かなり,蝶 飛狂す。

曉花 擎露を【ささ】げて啼粧【ていしょう】を妬く,紅日 永く,風 百花と和【とも】に香る。

煙 柳絲の長きを鏁【とざ】し,御溝【ぎょこう】碧水 澄み,池塘に轉ず。

時時 微雨 風光を洗う,天衢【てんく】遠く,到る處 笙篁【しょうこう】を引く。

 

小重山二首 其二

正是神京爛熳時,羣仙初折得,郄詵枝。

烏犀白紵最相宜,精神出,御陌袖鞭垂。

柳色展愁眉,管絃分響亮,探花期。

光陰占斷曲江池,新牓上,名姓徹丹墀。

 

唐長安城 都計画図00
 

『小重山二首 其一』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

小重山二首 其一

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。

曉花擎露妬啼粧,紅日永,風和百花香。

煙鏁柳絲長,御溝澄碧水,轉池塘。

時時微雨洗風光,天衢遠,到處引笙篁。

(下し文)
(小重山二首 其の一)

春神京に入り 萬木 芳し,禁林 鶯語滑かなり,蝶 飛狂す。

曉花 擎露を【ささ】げて啼粧【ていしょう】を妬く,紅日 永く,風 百花と和【とも】に香る。

煙 柳絲の長きを鏁【とざ】し,御溝【ぎょこう】碧水 澄み,池塘に轉ず。

時時 微雨 風光を洗う,天衢【てんく】遠く,到る處 笙篁【しょうこう】を引く。

(現代語訳)
(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。

初心【うぶ】に見える涙顔の化粧を施して、曉花の朝露をささげて、麗らかな春の日は早く明けそして日ごとに長くなる、風が吹いてきて、花々の匂いを届けてくれて和ませてくれる。

春の夕靄が漂うと青柳の長いゆれる枝を隠してしまう、お堀の水は春水で嵩をたかく、淥水一層青く澄んでいる、そして太掖池に流れ入り堤をびっしり春の草が生えている

一時ふった春雨がまた降り、花を散り落として春の景色を洗い流してしまうけれど、天使の夾城はるか遠くまで続き、季節が変わっても花の苑に向かう、そうして《竹枝子曲》の笙歌を吹奏するのである。



(訳注)

小重山二首 其一

(大明宮を中心に南の離宮に通じる夾城、北は長安城より広い禁苑を有し、天使の過ごすところには、それぞれに初心な妃嬪が配置されていることを詠う。)

【解説】 都の春景色を讃えた詞。前段は、嗅覚、聴覚、視覚を動員して大明宮の春の景の中、天使と過ごす喜びの時を過ごすが、同時に他の多くの妃賓にとっては、一人で寂しく過ごすことを意味する。後段は、春景色の移り変わりは、それぞれ異なった御苑があり、それを結ぶ専用道路があって、順にこれを愛でる、一年中行楽にでかけることができる模様を描く。前段の 「曉花 擎露を【ささ】げて啼粧【ていしょう】を妬く」の句は、夜明けの花が、男と夜を共に過ごしたように露に濡れている。その花に嫉妬してしまうと、朝露に濡れて咲いているさまを述べ、天使の寵愛に会いそのうれしさ表現を強調したものである。この詩を単なる抒情詩としてとらえることと、この解説のような意味を理解しなくては、この詩の深みはわからない。当時の倫理観、生活様式、その中で詞はできていることを理解されたい。小重山は後宮の恋愛事情を詠ったものであること、酒宴の席で、高級官僚のお遊びとしてうたわれたものであること、中国でも日本でも、酒宴の席では、卑猥と表裏一体な出来事をいかにきれいに歌い上げるかというお遊びの歌なのである。教坊曲とはそうしたものである。小重山とは女性が寝牀に横に臥せ、そのシルエットが、小山であること、それが屏風の画とかなって連山となるということからいうのである。

 

和凝(898955)、字を成績と言い、鄆州の須昌(今の山東省東平の西北)の人。彼は幼い時から聡明で、早くから書物を学び、一読すれば常に大義に通じた。梁の義成軍節度使賀瓌に招かれて従事となったが、賀瓌が唐の荘宗との戦いに敗れると、彼一人が賀瓌に従った。賀瓌は和凝に対して、自分に従うのをやめて己の道を求めるように勧めたが、和凝は「男子たるもの、人の知遇を得ながら危難の際に恩に報いないのは、本意ではない」と言い、行動をともにし、追っ手を射倒して、賀瓌の命を救った。そこで、賀瓌は自分の娘を和凝に娶らせ、「和凝は将来重位に就くであろぅから、謹んで仕えるように」と子供らに諭した。そのために、和凝の名は一時に轟いた。彼は、梁、唐、晋、漢、周の五朝に仕え、多くの後進を導いたので、人々から広く慕われたと言う。和凝は若い時に好んで艶詞を作ったが、晋の宰相になると詞を回収して焼き捨てさせた。しかし、艶詞のために名を汚すことになり、契丹は晋に入朝すると、彼を曲子相公と呼んだと言う。和凝の詞は二十七首が伝わり、『花間集』 には二十首の詞が収められている。後周の顕徳二年(955)五十八歳で没した。

【構成】『花間集』には和凝の作が二首収められている。

小重山二首 其一は双調五十八字、前段三十宇六句四平韻、後段二十八字六句四平韻で、⑦5③⑦3⑤/⑤5③⑦3⑤の詞形をとる。

春入神京萬木,禁林鶯語滑,蝶飛。 曉花擎露妬啼,紅日永,風和百花

煙鏁柳絲,御溝澄碧水,轉池。   時時微雨洗風,天衢遠,到處引笙

○●○○●●○  △○○●● ●○△  ●○○●●○○ ○●●  △△●○○

○?●○△  ●○○●● ●○○    ○○○●●△△ ○○●  ●●●○○

原型となった韋荘の作構成は以下の通り。

双調五十八字、前段三十字六句四平韻、後段二十八字六句四平韻で、⑦5③⑦3⑤/⑤5③⑦3⑤の詞形をとる。

一閉昭陽春又、夜寒宮漏永、夢君恩。 臥思陳事暗消魂、羅衣濕、紅袂有啼

歌吹隔重閽、繞庭芳草綠、倚長門。   萬般惆悵向誰、凝情立、宮殿欲黃昏。

。 

。   

 

春入神京萬木芳,禁林鶯語滑,蝶飛狂。

天子のお住まいの都に春景色にかわり、ここのすべて木々は萌えて香りひろがる。後宮の奥に広がる御苑に春を告げる鶯声が滑らかにひろがる。花から花へ蝶は飛び、ひらひら狂い飛び交う。

○神京 神は天子を示す、天子のお住まいの都長安、大明宮。

○禁林 御苑の木立。図に見る様に大明宮は東側から北側広大な禁苑にかこまれているが、ここではこの中にある、梨園、梅園、葡萄園、蚕壇亭、望春亭と妃嬪、妓優の関連施設が点在していたことを言う。ここの春景色、妃嬪妓優らとの春の行楽をしさするものである。したがって、ここでは蝶は天子であり、後宮の妃嬪、妓優、宮女の花に飛び回ることを示している。
興慶宮の位置関係00
長安城図 作図00
 

9欧陽烱《巻六11賀明朝二首 其二》『花間集』262全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6582

欧陽烱  賀明朝二首 其二   

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。人前不解,巧傳心事。別來依舊,辜負春晝。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

9欧陽烱《巻六11賀明朝二首 其二》『花間集』262全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6582

 

 
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(改訂版Ver.2.1

賀明朝二首 其一

(乙女のころ寵愛を受け始めたし、「結同心」をして愛を確かめた。しかし。寵愛を失い再び愛を確かめることはなかった。妃嬪を詠う。)

憶昔花間初識面,紅袖半遮粧臉。

昔を思いだして、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った。その時、きちんと化粧をした顔を恥かしそうに紅い袖で半ば隠していた。

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金線。

石榴色のスカートを軽く揺らして、帯を緩やかにしめた。ことさらに白いほっそりとした指をみせて示し、つぎに、密かにスカートの鳳風の金糸を「結同心」によじってつけた。

碧梧桐鏁深深院,誰料得,兩情何日教繾綣。

仲睦まじい鳳凰の住まいであるみどりの梧桐の葉の茂った奥の奥、深く閉ざされた楼閣の奥庭に、いったい誰に推し量ることができよう、二人の恋が実っていたはずなのにまたいつの日結ばれるのか。

羨春來雙鷰,飛到玉樓,朝暮相見。

羨ましいとおもうのは、春がくれば番の燕は子作るものだし、あの輝くような高楼館にすんでいるところへ飛んでゆくなら、朝に、夕べにたがいに会うことができるというものだ。

(賀明朝二首 其の一)

昔を憶う 花間に 初め面を識りしおり,紅袖 半ば粧臉【しょうけん】遮【さえぎ】る。

輕やかに石榴の裙帶を轉【めぐら】し,故に纖纖【せんせん】たる玉指を將て,【ひそ】かに雙鳳の金線を撚【よ】りしを

碧の梧桐 深深たる院を鏁【とざ】し,誰か料【はか】り得ん,兩情 何れの日にか繾綣【けんけん】たら教【しめ】ん。

春 雙鷰來たるを羨【うらや】む,玉樓に飛び到り,朝に暮に 相い見る。

 

賀明朝二首 其二

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

人前不解,巧傳心事。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

別來依舊,辜負春晝。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

(賀明朝二首 其の二)

憶う昔 花の間 たがいに見そめし後に,只だ 纖手に憑かれ,暗【だま】って紅豆を【なげう】つ

人前に解【と】かず,心事を巧傳するを。

別れ來り 舊に依り,春晝に辜負【こふ】す。

碧の羅衣の上 金繡を蹙【しゅく】し,對【つい】するを睹て 鴛鴦對【つい】し,空しく裛【たぎし】め 淚痕 透す。

韶顏を想えば 久しく非らず,終【つい】に是れ 伊れを為す,只だ恁瘦。

 

 

『賀明朝二首其一』現代語訳と訳註

(本文)

賀明朝二首 其二

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

人前不解,巧傳心事。

別來依舊,辜負春晝。

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

 

(下し文)

(賀明朝二首 其の二)

憶う昔 花の間 たがいに見そめし後に,只だ 纖手に憑かれ,暗【だま】って紅豆を【なげう】つ

人前に解【と】かず,心事を巧傳するを。

別れ來り 舊に依り,春晝に辜負【こふ】す。

碧の羅衣の上 金繡を蹙【しゅく】し,對【つい】するを睹て 鴛鴦對【つい】し,空しく裛【たぎし】め 淚痕 透す。

韶顏を想えば 久しく非らず,終【つい】に是れ 伊れを為す,只だ恁瘦。

 

 

(現代語訳)

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

 

 

(訳注) (改訂版Ver.2.1

賀明朝二首 其二

(高貴なお方は若い細身の音楽の上手い女を好むもので、その春の行楽の情愛の有様を詠う)

唐の教坊の曲名。またの名を賀熙朝、双調朝聖朝、賀聖朝と言う。『花間集』には欧陽烱の二首のみ所収。賀明朝二首 其二は双調六十一字、前段三十一字七句五仄韻、後段三十字六句四仄韻で❼4❹4❹❹❹/❼5❺❺4❹の詞形をとる。

憶昔花間相見  只憑纖手 

●●○△△●●  △○○●  ●○○●

人前不解  巧傳心

○○△●  ●△○●

別來依  辜負春

●△△●  ○●○●

碧羅衣上蹙金  睹對對鴛鴦  空裛淚痕
●○△●●○●  ●●●○○  △●●○●

想韶顏非  終是為伊  只恁

●○○○●  ○●○○  △△○●

 

賀明朝二首 其一

唐の教坊の曲名。またの名を賀熙朝、双調朝聖朝、賀聖朝と言う。『花間集』には欧陽烱の二首のみ所収。双調六十一字、前段三十一字五句三仄韻、後段三十字六句四仄韻で❼❻66❻/❼3❼❺4❹の詞形をとる。

賀明朝二首其一

憶昔花間初識,紅袖半遮粧

●●○△○●●  ○●●○?△

輕轉石榴裙帶,故將纖纖玉指,撚雙鳳金

△●●○○●  ●△○○●●  ○●○●○●

碧梧桐鏁深深,誰料得,兩情何日教繾

●○○?△△△  ○△●  ●○△●△●● 

羨春來雙,飛到玉樓,朝暮相

○○△○●  ○●●○  ○●△●

 

憶昔花間相見後,只憑纖手,暗紅豆。

昔のこと、満開の花に囲まれた中で初めて知り合った、それは後につづいた。ただ、この若くてか細いこの手にたよって、押し黙ってその人に気付いてもらうために紅小豆をなげた。

憑纖手 憑はたのむこと。纖手は若い妃嬪のやさしくか細い手。 

 おしだまって。

紅豆 紅豆は女性自身を示し、小豆を投げて気を引くことを表現する。

 

人前不解,巧傳心事。

人の前では知らないそぶりをし、心の中で寵愛を受けたいと思う気持ちをうまく伝える一番良い方法である。

巧傳心事 あなたと一緒に過ごしたいということを一番うまく表現するということ。

 

別來依舊,辜負春晝。

春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れてであい、そうして愛し合い、そうして別れたが能くその時の事を思い出す。

依舊 どうしてもその時の事を思い出します

辜負春晝 「依舊」に対する意味で、“春の行楽で明るい日差しの中で恥ずかしさも忘れて愛し合ったことです”ということ。この句と次の三句もこれにあたる

 

碧羅衣上蹙金繡,睹對對鴛鴦,空裛淚痕透。

緑色の薄絹の着物の金の刺繍の裾がちぢまり、体を開いく、そしてツガイになり、鴛鴦のように一体となって、そんな思いを胸に包むほどに空しくなり、涙が流れてかわくことがない。

蹙金繡 蹙は金の刺繍がちぢまることで、セックスの描写で、思い浮かべていること。

睹對對鴛鴦 こちらでツガイの鴛鴦を見ると、また傍につがいをみる。*思い浮かべる性交を表現している。

 ふくろにする。たきしめる。心の片隅に思いを留める。

淚痕透 涙が乾かず流れつづくことをいう。

 

想韶顏非久,終是為伊,只恁瘦。

どんなに音楽の優れていて若く美しい妃嬪であってもいつまでもそれを保てることはない。結局このことが問題で、若くて美しい時に限るということで、ただ、こんな調子で選ばれるから食べないで、こっそり細身の女になろうとする。

韶顏 音楽の優れた美しい妓女。韶:舜の楽。楽を奏でる宮女は若い子に限られる。宋時代以降、音楽の優れた美しい妓女をいう。

 おもう。このように

 (1) 盗む人家自行人の自転車を盗む.(2) (暇を)見つける空儿 kòngr 時間をつくる.━ []こっそり听盗み聞きする.跑了ずらかった.いい加減にする(とも書く) tōu'ān[]《書》目先の安逸。*「不倫する。よばい。」と。

7毛文錫《巻五28戀情深二首其二》『花間集』229全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6417

毛文錫  戀情深二首其二  

玉殿春濃花爛熳,簇神仙伴。羅裙窣地縷黃金,奏清音。

酒闌歌罷兩沉沉,一笑動君心。永作鴛鴦伴,戀情深。

(花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まり、酒宴は酣になり、やがて終わるころには、その日から寵愛を受け、久しく寵愛を受けることになる。妃嬪は、この夜、深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)其の二  寝殿は耀ける宮殿、いま花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まってくる。うす絹の巻きスカートで踊ると突然の地面には金の糸が途切れずに敷き詰められる、清らかな音楽を奏でる。音楽が盛り上がるほど、酒宴は盛り上がり、歌は最盛期になる、やがて酒宴も終わりを迎えると、酒も歌も、その両方とも静かになってゆく。それから、一人の妃嬪の微笑が君王の心をとらえ、動かす。その夜から、とこしえに鴛鴦が一緒にいるようになり、深く愛し合い、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

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毛文錫  戀情深二首

 

戀情深二首其一

(春の訪れに寵愛を受け、妃嬪は酒宴に酔い、そして、この夜も深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)其の一

滴滴銅壺塞漏咽,醉紅樓月。

ピン、ピン、・・・・、銅製の壺の塞いだところから漏れて、時は過ぎる、むせび泣くような声である。紅樓にかかる月をながめて酒に酔う。 

宴餘香殿會鴛衾,蕩春心。

寝殿の側の香殿の酒宴は遅くまで続いた後には、鴛鴦のかけ布団のなかですごす。互に盛んに愛し合い、互いに揺らめいている。

真珠簾下曉光侵,鶯語隔瓊林。

楽しく過ごす閨に真珠の珠簾の聯の下に、朝の光が差し込み、暁鶯の啼き声が、少し離れた瓊林から聞こえてくる。

寶帳欲開慵起,戀情深。

宝飾に飾られたとばりがある、けだるさが残っているけれど起き上がって開こうとする、深く愛し合った、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

 

戀情深二首其一

滴滴 銅壺 塞ぐも漏れ咽【むせ】び,紅樓の月に醉う。

宴 餘り 香殿 鴛衾【えんきん】に會し,春心を蕩【とろか】す。

真珠の簾の下 曉光侵し,鶯語 瓊林を隔つ。

寶帳 慵起を開かんと欲す,戀情深し。

 

 

戀情深二首其二

(花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まり、酒宴は酣になり、やがて終わるころには、その日から寵愛を受け、久しく寵愛を受けることになる。妃嬪は、この夜、深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)其の二

玉殿春濃花爛熳,簇神仙伴。

寝殿は耀ける宮殿、いま花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まってくる。

羅裙窣地縷黃金,奏清音。

うす絹の巻きスカートで踊ると突然の地面には金の糸が途切れずに敷き詰められる、清らかな音楽を奏でる。

酒闌歌罷兩沉沉,一笑動君心。

音楽が盛り上がるほど、酒宴は盛り上がり、歌は最盛期になる、やがて酒宴も終わりを迎えると、酒も歌も、その両方とも静かになってゆく。それから、一人の妃嬪の微笑が君王の心をとらえ、動かす。

永作鴛鴦伴,戀情深。

その夜から、とこしえに鴛鴦が一緒にいるようになり、深く愛し合い、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

戀情深二首其の二

玉殿 春濃く花爛熳なり,神仙簇り伴う。

羅裙 窣地 縷の黃金,清音を奏ず。

酒闌わ 歌罷めば兩 沉沉たり,一笑は君の心を動かす。

永作す 鴛鴦伴い,戀情深し。

 

 

『戀情深二首其二』 現代語訳と訳註

(本文)

戀情深二首其二

玉殿春濃花爛熳,簇神仙伴。

羅裙窣地縷黃金,奏清音。

酒闌歌罷兩沉沉,一笑動君心。

永作鴛鴦伴,戀情深。

 

(下し文)

戀情深二首其の二

玉殿 春濃く花爛熳なり,神仙簇り伴う。

羅裙 窣地 縷の黃金,清音を奏ず。

酒闌わ 歌罷めば兩 沉沉たり,一笑は君の心を動かす。

永作す 鴛鴦伴い,戀情深し。

 

(現代語訳)

(花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まり、酒宴は酣になり、やがて終わるころには、その日から寵愛を受け、久しく寵愛を受けることになる。妃嬪は、この夜、深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)其の二

寝殿は耀ける宮殿、いま花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まってくる。

うす絹の巻きスカートで踊ると突然の地面には金の糸が途切れずに敷き詰められる、清らかな音楽を奏でる。

音楽が盛り上がるほど、酒宴は盛り上がり、歌は最盛期になる、やがて酒宴も終わりを迎えると、酒も歌も、その両方とも静かになってゆく。それから、一人の妃嬪の微笑が君王の心をとらえ、動かす。

その夜から、とこしえに鴛鴦が一緒にいるようになり、深く愛し合い、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

 

(訳注)

戀情深二首其二

(宮女は酒宴に酔いも進み、そして、この夜も深く愛されると詠う。)

(1) 彼女たちはいったん年老いて容色が衰え、婚期を逸すると、宮中を退いてから嫁に行くのは容易でなく、また芸を売るのはさらに難しかった。それでほとんどの宮妓が尼か女道士となって、孤独と貧寒の中で残生のけりをつけなければならなかった。

宮廷の名妓粛煉師は寺観の中で一生を終えたし、有名な歌妓永新は当時皇帝から光栄ある寵愛をこうむっていたが、安史の乱の後、宮中を出て一人の読書人に付き従い、その読書人が死んだ後は母とともに長安に帰り、乱世の中で老いて死んだ(『楽府雑録』「歌」)。

(2) 古来、宮中にはいわゆる「内職」という制度があった。『礼記』「昏義」 に、「古、天子は、后に六宮、三夫人、九嬢、二十七世婦、八十一御妻を立て、以て天下の内治を聴く」とある。唐初の武徳年間(618626)に、唐は隋の制度を参照して完璧で精密な「内官」制度をつくった。その規定では、皇后一人、その下に四人の妃(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃各一人)、以下順位を追って、九嬢(昭儀、昭容、昭嬢、修儀、修容、修嬢、充儀、充容、充媛各一人)、婕妤九人、美人九人、才人九人、宝林二十七人、御女二十七人、采女二十七人が配置される。上記のそれぞれの女性は官品をもち、合計で122人の多きに達した。皇后だけが正妻であり、その他は名義上はみな「妃嬪」「妃嬢」 - 皇帝の妾とされた。

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十一字四句二平韻一仄韻、後段二十一字四句三平韻で、❼4⑦③/❼⑤6③の詞形をとる。

滴滴銅壺塞漏  醉紅樓月  宴餘香殿會鴛  蕩春
真珠簾下曉光  鶯語隔瓊林  寶帳欲開慵起  戀情

●●○○●●△  ●○○●  ●○○●●○○  ●○○

○○○●●△△  ○●●○○  ●●●○○●  ●○△

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十一字四句二平韻二仄韻、後段二十字四句二平韻二仄韻で、❼❹⑦③/⑦⑤❺❸の詞形をとる。

玉殿春濃花爛  簇神仙  羅裙窣地縷黃   奏清
酒闌歌罷兩沉  一笑動君  永作鴛鴦  戀情

●●○○○●●  ●○○●  ○○●●●○○  ●○○

●○○△●○○  ●●●○○  ●●○○●  ●○△

 

 

玉殿春濃花爛熳,簇神仙伴。

寝殿は耀ける宮殿、いま花は色濃く咲き乱れ春爛漫で、仙郷の神々のもとに仙女が集まってくる。

玉殿 (1).殿の美称。 (2).朝廷,天子のこと。 (3).伝説中天界神仙の殿。

 

羅裙窣地縷黃金,奏清音。

うす絹の巻きスカートで踊ると突然の地面には金の糸が途切れずに敷き詰められる、清らかな音楽を奏でる。

窣地 突然のように地面に。

縷[音]ル(呉)(漢)1 細々と連なる糸筋。「一縷」2 細く、途切れずに続くさま。こまごまとしたさま。「縷言・縷述・縷説・縷陳・縷縷」3 ぼろ。「襤縷(らんる)

 

酒闌歌罷兩沉沉,一笑動君心。

音楽が盛り上がるほど、酒宴は盛り上がり、歌は最盛期になる、やがて酒宴も終わりを迎えると、酒も歌も、その両方とも静かになってゆく。それから、一人の妃嬪の微笑が君王の心をとらえ、動かす。

闌【酣/たけなわ】とは。行事・季節などが最も盛んになった時。盛りが極まって、それ以後は衰えに向かう時。また、そのようなさま。真っ盛り。真っ最中。

 

永作鴛鴦伴,戀情深。

その夜から、とこしえに鴛鴦が一緒にいるようになり、深く愛し合い、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

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毛文錫  戀情深二首其一  

滴滴銅壺塞漏咽,醉紅樓月。宴餘香殿會鴛衾,蕩春心。

真珠簾下曉光侵,鶯語隔瓊林。寶帳欲開慵起,戀情深。

(春の訪れに寵愛を受け、妃嬪は酒宴に酔い、そして、この夜も深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)ピン、ピン、・・・・、銅製の壺の塞いだところから漏れて、時は過ぎる、むせび泣くような声である。紅樓にかかる月をながめて酒に酔う。 寝殿の側の香殿の酒宴は遅くまで続いた後には、鴛鴦のかけ布団のなかですごす。互に盛んに愛し合い、互いに揺らめいている。楽しく過ごす閨に真珠の珠簾の聯の下に、朝の光が差し込み、暁鶯の啼き声が、少し離れた瓊林から聞こえてくる。宝飾に飾られたとばりがある、けだるさが残っているけれど起き上がって開こうとする、深く愛し合った、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

 

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花間集の中でも、特異な詩題であり、毛文錫だけが題している。教坊の曲の詩として宮女・妓優が恋心を抱いたこと、自由恋愛をイメージさせるものである。唐から宋にかけて、倫理は史上最高に自由であったことをベースに考えて詠んでいくとよい。

 

宮妓は後代の娼妓を意味するものではなく、専門に宮廷に奉仕する女芸人であった。彼女たちは歌舞や楽器を習い、縄・竿・球・馬などを操る曲芸を学んだ。その職責は皇室が挙行する各種の祝祭・式典・宴会などの儀式に出演したり、また平生にあっては天子の耳目を楽しませることであった。

 

宮妓の大部分は直接民間から選抜された芸、容貌ともに秀でた楽戸、侶優などの女子、それに少数の一般平民出身の女子であった。

 

選ばれて宜春院に入った「内人」は身分が最も高かった。彼女たちが演舞する時に

は、雲藷院で訓練中の宮人とは衣服や装飾品に高低の区別があり、「内人」 には凧魚(五品以上の貴人が身に着けることを許されていた魚形のバッジ)が許されていた。

 

宮妓は芸術家であり、原則として芸は献じるが身は献じないということになっていたにせよ、そしてまた一般の宮人に比べれば高い礼遇を受けていたにせよ、所詮彼女たちも皇帝の慰み物にすぎず、その漁色の対象になるものも少なくなかった。

 

宮妓はまたしばしば皇帝の御下賜品として大臣や貴族に与えられた。唐の各時代に、某人に「女楽」幾組を下賜するといった記録があるが、この「女楽」とはよく訓練された宮中の楽妓のことである。

 

長く宮中に住む宮妓の他に、玄宗の時代から長安と洛陽の宮殿にほど近い街区に、左右二つの芸妓養成のための外教坊が設けられた。ここでも多数の芸妓が養成されたが、この芸妓は宮廷の専用に充てられ、官官によって管理された。彼女たちが宮妓と異なるのは、宮中には住まず、必要な時に呼び出され宮中の御用に供された点にある。

 

教坊妓は彼女たち独特の一風変った生活の仕方と考えを持っていた。彼女たちは仲間同士で意気投合すると、「香火兄弟」(神仏の前で香火をたき義姉妹の契りを結んだ仲)となった。多いものは十四、五人、少ないものでも八、九人がそれぞれ集団をつくった。もし、その中の一人が嫁に行くと、香火兄弟たちは彼女の夫を女仲間にみたてて、「媛捜」とか「新婦」などとよんだ。また同時にその夫に睦み親しむことができたが、妻となった妓は決して嫉妬することはなかった。彼女たちはそれを突蕨の習俗にならったものであるといっていた。

また、香火兄弟でない人々の間でも、男女関係は比較的自由であった。

 

彼女たちはいったん年老いて容色が衰え、婚期を逸すると、宮中を退いてから嫁に行くのは容易でなく、また芸を売るのはさらに難しかった。それでひじょうに多くの宮

妓が尼か女道士となって、孤独と貧寒の中で残生のけりをつけなければならなかった。

 

 

戀情深二首

 

戀情深二首其一

(春の訪れに寵愛を受け、妃嬪は酒宴に酔い、そして、この夜も深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)

滴滴銅壺塞漏咽,醉紅樓月。

ピン、ピン、・・・・、銅製の壺の塞いだところから漏れて、時は過ぎる、むせび泣くような声である。紅樓にかかる月をながめて酒に酔う。 

宴餘香殿會鴛衾,蕩春心。

寝殿の側の香殿の酒宴は遅くまで続いた後には、鴛鴦のかけ布団のなかですごす。互に盛んに愛し合い、互いに揺らめいている。

真珠簾下曉光侵,鶯語隔瓊林。

楽しく過ごす閨に真珠の珠簾の聯の下に、朝の光が差し込み、暁鶯の啼き声が、少し離れた瓊林から聞こえてくる。

寶帳欲開慵起,戀情深。

宝飾に飾られたとばりがある、けだるさが残っているけれど起き上がって開こうとする、深く愛し合った、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

 

戀情深二首其一

滴滴 銅壺 塞ぐも漏れ咽【むせ】び,紅樓の月に醉う。

宴 餘り 香殿 鴛衾【えんきん】に會し,春心を蕩【とろか】す。

真珠の簾の下 曉光侵し,鶯語 瓊林を隔つ。

寶帳 慵起を開かんと欲す,戀情深し。

 

 

戀情深二首其二

玉殿春濃花爛熳,簇神仙伴。

羅裙窣地縷黃金,奏清音。

酒闌歌罷兩沉沉,一笑動君心。

永作鴛鴦伴,戀情深。

 

 

『戀情深二首其一』 現代語訳と訳註

(本文)

戀情深二首其一

滴滴銅壺塞漏咽,醉紅樓月。

宴餘香殿會鴛衾,蕩春心。

真珠簾下曉光侵,鶯語隔瓊林。

寶帳欲開慵起,戀情深。

 

(下し文)

戀情深二首其一

滴滴 銅壺 塞ぐも漏れ咽【むせ】び,紅樓の月に醉う。

宴 餘り 香殿 鴛衾【えんきん】に會し,春心を蕩【とろか】す。

真珠の簾の下 曉光侵し,鶯語 瓊林を隔つ。

寶帳 慵起を開かんと欲す,戀情深し

 

(現代語訳)

(春の訪れに寵愛を受け、妃嬪は酒宴に酔い、そして、この夜も深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)

ピン、ピン、・・・・、銅製の壺の塞いだところから漏れて、時は過ぎる、むせび泣くような声である。紅樓にかかる月をながめて酒に酔う。 

寝殿の側の香殿の酒宴は遅くまで続いた後には、鴛鴦のかけ布団のなかですごす。互に盛んに愛し合い、互いに揺らめいている。

楽しく過ごす閨に真珠の珠簾の聯の下に、朝の光が差し込み、暁鶯の啼き声が、少し離れた瓊林から聞こえてくる。

宝飾に飾られたとばりがある、けだるさが残っているけれど起き上がって開こうとする、深く愛し合った、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

 

(訳注)

戀情深二首其一

(春の訪れに寵愛を受け、妃嬪は酒宴に酔い、そして、この夜も深く愛され、恋する気持ちはさらに深くなると詠う。)

『花間集』には孫光憲の作が二首収められている。双調四十六字、前段二十一字四句二平韻、後段二十一字四句三平韻で、74⑦③/⑦⑤6③の詞形をとる。

滴滴銅壺塞漏  醉紅樓月  宴餘香殿會鴛  蕩春
真珠簾下曉光侵  鶯語隔瓊林  寶帳欲開慵起  戀情

●●○○●●△  ●○○●  ●○○●●○○  ●○○

○○○●●△△  ○●●○○  ●●●○○●  ●○△

 

滴滴銅壺塞漏咽,醉紅樓月。

ピン、ピン、・・・・、銅製の壺の塞いだところから漏れて、時は過ぎる、むせび泣くような声である。紅樓にかかる月をながめて酒に酔う。 

滴滴 ① 水などのしたたり。点々と落ちるしずく。② 点々とあるようす。

銅壺 銅板などでかまど形につくったもの。内部を空洞にしてあるので,そこへ水を満たし,空洞の中に排水を落とし、その音が地上に聞こえるように設計され、水位に倚り、時刻を計る。この時、排水は滴水化して落とす。具体的な過程としては、縦穴を伝って流れ落ちた水が水滴となって空洞の底面に溜まった水に落ち、その際に発せられた音が縦穴を通して外部に漏れる。この原理は、水琴窟に発展する。

 

宴餘香殿會鴛衾,蕩春心。

寝殿の側の香殿の酒宴は遅くまで続いた後には、鴛鴦のかけ布団のなかですごす。互に盛んに愛し合い、互いに揺らめいている。

香殿 

《庾信賦》披香殿裹作春衣。椒香殿。全廟有九蟒殿、五嶽殿、香殿等。 編輯本段. 歷史. 峨眉大廟飛來殿. 峨眉大廟飛來殿爲中國古代道教建築。

鴛衾 鴛鴦のかけ布団。一夜を共にする。

【とう】1 揺れ動く。ゆらゆら動かす。「蕩揺/漂蕩」2 酒色などにおぼれる。締まりがない。「蕩児/淫蕩(いんとう)・放蕩・遊蕩」3 豊かに広がっている。

 

真珠簾下曉光侵,鶯語隔瓊林。

楽しく過ごす閨に真珠の珠簾の聯の下に、朝の光が差し込み、暁鶯の啼き声が、少し離れた瓊林から聞こえてくる。

鶯語 鶯(うぐいす)の鳴き声。ウグイスの鳴き声。

《巻九63絶句漫興 九首 其一》「眼見客愁愁不醒,無賴春色到江亭。即遣花開深造次,便教鶯語太丁寧。」絶句漫興九首 其二 成都浣花渓 杜甫 <446  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2175 杜甫詩1000-446-629/1500

白居易 琵琶行 間關鶯語花底滑,幽咽泉流水下灘。(間關たる鶯語 花底に滑かに,幽咽せる泉流は 氷下に難む。)

瓊林 隋から唐の時代、「瓊花(チウンホア)」は「玉蘂」とも呼ばれ、その芳香のある黄白色の花が愛でられたと玉のように美しい瓊樹の林。その花を食べると長寿になる。ここでは、その木々が描かれた屏風、何時までも二人で過ごす、仲睦まじい様子が続くというほどの意味。

 

寶帳 欲開慵起,戀情深。

宝飾に飾られたとばりがある、けだるさが残っているけれど起き上がって開こうとする、深く愛し合った、恋い慕う気持ちはさらに深くなっている。

慵起 けだるく起きるのも億劫であること。

戀情 恋い慕う気持ち。

7毛文錫《巻五11中興樂一首》『花間集』212全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6332

毛文錫  中興樂  

花繁煙豔深,丁香軟結同心。翠鬟女,相與共淘金。

紅蕉葉裏猩猩語,鴛鴦浦,鏡中鸞舞。絲雨隔,荔枝陰。

(若くして妃嬪として宮中に入った女性が、寵愛の絶頂であること、花や果物に喩えて詠う。楊貴妃を連想させる。)ニクズクにもいっぱい花が咲き、春霞が濃く深くそこにただよっている。丁子は貞操を守り、心はやさしく結ばれることになる。髪をほどいて翡翠の飾りを付けた妃嬪は、砂金を掬いより分ける簀子の中の金のようにゆれうごいている。姫芭蕉は葉を裏にしたり、顔を赤らめて、酔っ払って言うような「猩猩」とした言葉を発し、それは鴛鴦が暮らす入り江の奥まった砂浜の安定的な暮らしであるし、鏡に描かれた仲睦まじい鳳凰鸞の舞のようである。雨絲は次第に隔絶してきて、熟れた荔枝はそっと陰におかれる。

7毛文錫《巻五11中興樂一首》『花間集』212全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6332

 
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