欧陽烱 三字令
春欲盡,日遲遲,牡丹時。羅幌卷,翠簾垂。彩牋書,紅粉淚,兩心知。
人不在,鷰空歸,負佳期。香燼落,枕函欹。月分明,花澹薄,惹相思。
(寵愛を受ける日々は楽しいものであった、短冊に優しい言葉に溢れた詩文を読み、嬉しさに涙した。この春、約束は守られず、誰もいない閨で、それでも寵愛を受ける準備をしていると詠う。)これほど楽しい春が終わろうとしている。日ごとに夕暮れが遅くなっていき、牡丹の花が咲いて初夏を迎えようとする。その楽しかったころ、薄絹の帳を巻き上げ、翡翠の簾を垂らしたりした。色の鮮やかな薛濤䇳に書いてくれた詩歌を読み、うれし涙が紅白粉を溶かして流れる。妃嬪の心の中をよく分かっている内容で、信じていた。ところが、この春、この閨に、そのお方はいない。軒端の燕は春になって帰って来たけれど空しい、あのお方は約束の期日を破っているから。お香の火も、灯芯さえも燃え落ちる、お方の使った枕に身寄せてみる。月は明るくてらし、はっきるとして、牡丹の花の濃淡までわかる。それでも、ただ、寵愛を受ける事、思い続けていくだけ。
(改訂版)9欧陽烱《巻五50三字令》『花間集』251全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6527
(改訂版Ver.2.1)
三字令
(寵愛を受ける日々は楽しいものであった、短冊に優しい言葉に溢れた詩文を読み、嬉しさに涙した。この春、約束は守られず、誰もいない閨で、それでも寵愛を受ける準備をしていると詠う。)
春欲盡,日遲遲,牡丹時。
これほど楽しい春が終わろうとしている。日ごとに夕暮れが遅くなっていき、牡丹の花が咲いて初夏を迎えようとする。
羅幌卷,翠簾垂。
その楽しかったころ、薄絹の帳を巻き上げ、翡翠の簾を垂らしたりした。
彩牋書,紅粉淚,兩心知。
色の鮮やかな薛濤䇳に書いてくれた詩歌を読み、うれし涙が紅白粉を溶かして流れる。妃嬪の心の中をよく分かっている内容で、信じていた。
人不在,鷰空歸,負佳期。
ところが、この春、この閨に、そのお方はいない。軒端の燕は春になって帰って来たけれど空しい、あのお方は約束の期日を破っているから。
香燼落,枕函欹。
お香の火も、灯芯さえも燃え落ちる、お方の使った枕に身寄せてみる。
月分明,花澹薄,惹相思。
月は明るくてらし、はっきるとして、牡丹の花の濃淡までわかる。それでも、ただ、寵愛を受ける事、思い続けていくだけ。
(三字令)
春は盡きむと欲し,日は遲遲たり,牡丹の時なり。
羅幌 卷き,翠簾 垂る。
彩牋の書,紅粉の淚,兩の心 知る。
人 在ざるも,鷰は空しく歸り,佳期に負く。
香燼 落ち,枕函 欹【そ】う。
月は 分るほど明るく,花は 澹薄,「相思」に惹る。
(改訂版Ver.2.1)
『三字令』 現代語訳と訳註
(本文)
三字令
春欲盡,日遲遲,牡丹時。
羅幌卷,翠簾垂。
彩牋書,紅粉淚,兩心知。
人不在,鷰空歸,負佳期。
香燼落,枕函欹。
月分明,花澹薄,惹相思。
(下し文)
(三字令)
春は盡きむと欲し,日は遲遲たり,牡丹の時なり。
羅幌 卷き,翠簾 垂る。
彩牋の書,紅粉の淚,兩の心 知る。
人 在ざるも,鷰は空しく歸り,佳期に負く。
香燼 落ち,枕函 欹【そ】う。
月は 分るほど明るく,花は 澹薄,「相思」に惹る。
(現代語訳)
(寵愛を受ける日々は楽しいものであった、短冊に優しい言葉に溢れた詩文を読み、嬉しさに涙した。この春、約束は守られず、誰もいない閨で、それでも寵愛を受ける準備をしていると詠う。)
これほど楽しい春が終わろうとしている。日ごとに夕暮れが遅くなっていき、牡丹の花が咲いて初夏を迎えようとする。
その楽しかったころ、薄絹の帳を巻き上げ、翡翠の簾を垂らしたりした。
色の鮮やかな薛濤䇳に書いてくれた詩歌を読み、うれし涙が紅白粉を溶かして流れる。妃嬪の心の中をよく分かっている内容で、信じていた。
ところが、この春、この閨に、そのお方はいない。軒端の燕は春になって帰って来たけれど空しい、あのお方は約束の期日を破っているから。
お香の火も、灯芯さえも燃え落ちる、お方の使った枕に身寄せてみる。
月は明るくてらし、はっきるとして、牡丹の花の濃淡までわかる。それでも、ただ、寵愛を受ける事、思い続けていくだけ。
(訳注) (改訂版Ver.2.1)
三字令
(寵愛を受ける日々は楽しいものであった、短冊に優しい言葉に溢れた詩文を読み、嬉しさに涙した。この春、約束は守られず、誰もいない閨で、それでも寵愛を受ける準備をしていると詠う。)
【解説】前段は、楽しかった去年の春のことを思い、寝台の周囲の帳を巻き上げ、窓の簾を垂らし、以前に男からの詩歌を読み返して涙を流し、「お互いに胸の内はよく分かり合っていたはずなのに」と呟く。後段は、せっかくの春を空しく過ごさなければいけない、いつまでも寝付くことができず、思いが募る妃嬪の苦しみ、それでも寵愛を受ける事だけ、と詠う。前段の「彩牋の書」は、薛濤䇳のようなものに書かれた男の詩歌ということの方が風流。
【詞形】『花間集』には欧陽烱の一首のみ所収。三字で句を構成し、韻の配置から可愛らしい、甘えた感じを演出している。毎句が三字からなるのでこの名が付けられた。双調四十八字、前後段二十四字八句四平韻で、3③③3③33③/3③③3③33③の詞形をとる。
春欲盡 日遲遲 牡丹時
○●● ●○○ ●○○
羅幌卷 翠簾垂
○●△ ●○○
彩牋書 紅粉淚 兩心知
●○○ ○●● ●○○
人不在 鷰空歸 負佳期
○△● ●△○ ●○○
香燼落 枕函欹
○●● △○○
月分明 花澹薄 惹相思
●△○ ○△● ●△△
春欲盡,日遲遲,牡丹時。
これほど楽しい春が終わろうとしている。日ごとに夕暮れが遅くなっていき、牡丹の花が咲いて初夏を迎えようとする。
○春欲尽 春が終わろうとしている。欲は“毎日過ぎてゆくことが辛い”今にも〜しそうだ、の意。
○日遲遲 日ごとに夕暮れが遅くなる。日ごとに日が長くなる。
牡丹時 元は薬用として利用されていたが、盛唐期以降、牡丹の花が「花の王」として他のどの花よりも愛好されるようになった。また開花時期に科挙合格発表がおこなわれ、長安の貴族庭園は無礼講として開放され、花木祭りの様相であった。三月の終わりごろ(今、5月上旬頃〜中旬)のことである。
羅幌卷,翠簾垂。
その楽しかったころ、薄絹の帳を巻き上げ、翡翠の簾を垂らしたりした。
○羅幌 寝台の回りに垂らす薄絹の帳。
○翠簾垂 翡翠の飾りを付けた簾を垂らす。
彩牋書,紅粉淚,兩心知。
色の鮮やかな薛濤䇳に書いてくれた詩歌を読み、うれし涙が紅白粉を溶かして流れる。妃嬪の心の中をよく分かっている内容で、信じていた。
○彩牋書 色巻紙に書かれた手紙。薛濤䇳に書かれた詩歌。
○紅粉涙 顔の紅白粉を溶かして流れる涙。女性の涙。
○両心知 お互いに心の中はよく分かっている。別れ送り出す時に確認したことを云う。同心結に近いもの。①ひもや帯の結び方の一種で、かたく解けない結び方。夫婦の愛情のかたい結びつきのたとえ。〔梁武帝・有所思〕②愛の契りをこめたお守り。
人不在,鷰空歸,負佳期。
ところが、この春、この閨に、そのお方はいない。軒端の燕は春になって帰って来たけれど空しい、あのお方は約束の期日を破っているから。
○人不在
○鷰空歸
○負任期 会う約束を破る。ここでは男が春には帰るという約束を破ったことを言う。負はそむく。佳期は男女が会う約束。
香燼落,枕函欹。
お香の火も、灯芯さえも燃え落ちる、お方の使った枕に身寄せてみる。
○香燼落 灯芯が燃え落ちる。灯火の燃え尽きたことを言う。
○枕函欹 ここでは枕を斜めに立てかけて身を寄せる意。眠れぬ状態を表す。枕函は横長の大きめの箱枕。
月分明,花澹薄,惹相思。
月は明るくてらし、はっきるとして、牡丹の花の濃淡までわかる。それでも、ただ、寵愛を受ける事、思い続けていくだけ。
○分明 1 他との区別がはっきりしていること。あきらかなこと。また、そのさま。ぶんみょう。2 明らかになること。
○澹薄 淡白に同じ。ここでは月の光に牡丹の花が色淡く見えること。















