欧陽烱 鳳樓春 一首
鳳髻綠雲叢,深掩房攏。錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。因想玉郎何處去,對淑景誰同。
小樓中,春思無窮。倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。海棠零落,鶯語殘紅。
(寵愛は若いときだけのもので、また春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたってもただ寵愛を待つだけと閨怨を詠う。)
豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。
9欧陽烱《巻六13鳳樓春一首》『花間集』264全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6592
鳳樓春 一首
(寵愛は若いときだけのもので、また春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたってもただ寵愛を待つだけと閨怨を詠う。)
鳳髻綠雲叢,深掩房攏。
豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。
錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。
練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。
因想玉郎何處去,對淑景誰同。
誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。
小樓中,春思無窮。
小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。
倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。
手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。
斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。
やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。
海棠零落,鶯語殘紅。
やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。
『鳳樓春』 現代語訳と訳註
(本文)
鳳樓春
鳳髻綠雲叢,深掩房攏。
錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。
因想玉郎何處去,對淑景誰同。
小樓中,春思無窮。
倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。
斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。
海棠零落,鶯語殘紅。
(下し文)
(鳳樓春【ほうろうしゅん】)
鳳髻【ほうけい】綠雲 叢【そう】とし,深く房攏を掩う。
錦書 通し,夢中 相い見 覺め來りて慵【ものう】き,面を勻い 臉に淚し 珠融く。
因りて想う 玉郎 何處にか去らん,淑景に對し誰か同じうすと。
小樓に中【あた】って,春思 窮り無し。
欄に倚り顒望【ぎょうぼう】し,闇牽するは愁緒【しゅうちょ】を,柳花 東風に飛び起つ。
日斜むけば簾を照し,羅の幌には香 冷めて 粉しても屏は空し。
海棠も零落し,鶯語も殘紅す。
(現代語訳)
(寵愛は若いときだけのもので、また春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたってもただ寵愛を待つだけと閨怨を詠う。)
豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。
練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。
誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。
小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。
手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。
やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。
やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。
(訳注)
鳳樓春一首
(春から初夏になっても連絡がない、次から次へと咲く海棠の花散る時節にいたる閨怨を詠う。)
鳳樓春 宮中における妃賓の、寝殿の楼閣における恋愛模様を言う。
唐の教坊の曲名。『花間集』には欧陽烱の一首のみ所収。双調七十七字、前段三十七字七句六平韻、後段四十字九句五平韻で、⑤❹③⑦⑥7⑤/❸④❹4❻4⑦4④の詞形をとる。
鳳髻綠雲叢 深掩房攏
錦書通 夢中相見覺來慵 勻面淚臉珠融
因想玉郎何處去 對淑景誰同
小樓中 春思無窮
“/”
倚欄顒望 闇牽愁緒 柳花飛起東風
斜日照簾 羅幌香冷粉屏空
海棠零落 鶯語殘紅
△○○△ ●△○● ●○○●○△
○●●○ ○●○△●△△
●○△● ○●○○
鳳髻綠雲叢,深掩房攏。
豊かな黒髪を両鬢の雲型に後ろの髻の鳳凰の結び目、髪に結い降ろし、宮殿深くの房閏の帳をたらし、向こうに連子窓がある。
○鳳髻綠雲叢 全体は雲型で後ろに背に向けて鳳の羽の形に結い上げた豊かな黒髪。宮妓の髪。
○房攏 房は宮女の部屋の前のたたき廊下の連子窓。攏は、獣を入れておく「おり、」。連子窓。
錦書通,夢中相見覺來慵,勻面淚臉珠融。
練り絹の書は何度も届く。夢中ではたがいに会えたが覚めたらけだるさが残る、涙の後を化粧で整えても、珠の涙は頬紅を溶かしてしまう。
○錦書通 練り絹に書いてかれた妃嬪への手紙。前秦の竇滔の妻蘇氏が錦を織って廻文の詩二百余首を題して任地に行ったままで消息の分からない夫の滔におくって愛情を取り戻したという故事にならっている。手紙の美称。(夫は趙明誠)
○慵 けだるさだけが残ってしまう。虚無感。
○勻 均等に整える。ここでは拭い払うこと。
○腺珠融 頬の涙の滴が (紅白粉を) くずす。涙で紅白粉が溶けることを言う。
因想玉郎何處去,對淑景誰同。
誰からも愛される高貴なお方に手紙は届いているはずなのに合いには来てくれない、何処に行かれているのか、春の美しい景色を誰とともに過ごしているのか。
○玉郎 玉の様に輝かしい男。ここでは若くて輝いている、誰からも愛される高貴な男の意。
○淑景 春の美しい景色。
小樓中,春思無窮。
小樓に登って眺める、春にあのお方と過ごすという思いは果てない。
○春思 万物が子作りを始め、成長するのが春。冬の間にたくわえられて春に開花する、人の思いも思い続けていたものが春には遂げられるという五行思想をいう。
倚欄顒望,闇牽愁緒,柳花飛起東風。
手すりにもたれて臨む、知らぬ間にまた愁いのなかにひきこまれる。柳絮は春風がおこるたびに舞い散る。
○顒望 じっと動かず遠くを眺める
○闇牽 闇に牽く。知らぬ間に誘い込まれる、あるいは一つの考えに引き込まれることを云う。
斜日照簾,羅幌香冷粉屏空。
やがて日が傾き、簾越に牀を照らし、寝牀を覆う薄絹の帳にはお香の火も消えてつめたい、ただ空しく鳳凰の屏風が立つ。
○羅幌香冷粉麻空 寝台を覆う薄絹の帳は香炉の火も消え、白く塗り飾った屏風の中には人影(夫の姿) のないことを言う。女性の悲しみを言ったもの。
海棠零落,鶯語殘紅。
やがて海菜の花も凋んで落ち、春を告げていた鶯の啼き声も残った紅の花の中に消える。美しかった妃賓も美しさを失う。
○海棠 紫色の枝から数㎝の花柄を伸ばし、淡いピンク色の花を次つぎと咲かせ、花の美しさから美女を形容するときにも登場する、晩春から初夏にかけて咲く。女盛りをいう。
○零落 1 落ちぶれること。2 草木の枯れ落ちること。
○鶯語殘紅 ここは、海棠の花が咲き誇っている時に鶯が啼いていたのが記憶として残っていること、海棠花が零落しているのであるから夏が来ているのであるから、鶯は啼いてはいない。















