顧夐 更漏子一首
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。
11顧夐 (改)《巻七37更漏子舊歡娛,》『花間集』339全詩訳注解説(改訂版Ver.2.1)-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-6967
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溫庭筠 |
《巻一15更漏子六首其一》 柳絲長,春雨細,花外漏聲迢遞。驚塞鴈,起城烏,畫屏金鷓鴣。香霧薄,透簾幕,惆悵謝家池閣。紅燭背,繡簾垂,夢長君不知。 |
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溫庭筠 |
《巻一16更漏子六首其二》 星斗稀,鐘鼓歇,簾外曉鶯殘月。蘭露重,柳風斜,滿庭堆落花。虛閣上,倚蘭望,還似去年惆悵。春欲暮,思無窮,舊歡如夢中。 |
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溫庭筠 |
《巻一17更漏子六首其三》 金雀釵,紅粉面,花裡暫如相見。知我意,感君憐,此情須問天。香作穗,䗶成淚,還似兩人心意。山枕膩,錦衾寒,覺來更漏殘。 |
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溫庭筠 |
《巻一18更漏子六首其四》 相見稀,相憶久,眉淺淡烟如柳。垂翠幕,結同心,待郎燻繡衾。城上月,白如雪,蟬髩美人愁絕。宮樹暗,鵲橋橫,玉籤初報明。 |
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溫庭筠 |
《巻一19更漏子六首其五》 背江樓,臨海月,城上角聲嗚咽。堤柳動,島煙昬,兩行征鴈分。西陵路,歸帆渡,正是芳菲欲度。銀燭盡,玉繩低,一聲村落雞。 |
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溫庭筠 |
《巻一20更漏子六首其六》 玉鑪香,紅蠟淚,偏照畫堂秋思。眉黛薄,髩雲殘,夜長衾枕寒。梧桐樹,三更雨,不道離情正苦。一葉葉,一聲聲,空階滴到明。 |
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韋莊 |
《巻三23更漏子 一首 》 鐘皷寒,樓閣暝,月照古桐金井。深院閉,小庭空,落花香露紅。煙柳重,春霧薄,燈背水䆫高閣。閑倚戶,暗沾衣,待郎郎不歸。 |
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牛嶠 |
《巻四11更漏子三首其一》 星漸稀,漏頻轉,何處輪臺聲怨。香閣掩,杏花紅,月明楊柳風。挑錦字,記情事,惟願兩心相似。收淚語,背燈眠,玉釵橫枕邊。 |
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牛嶠 |
《巻四12更漏子三首其二》 春夜闌,更漏促,金燼暗挑殘燭。驚夢斷,錦屏深,兩鄉明月心。閨艸碧,望歸客,還是不知消息。辜負我,悔憐君,告天天不聞。 |
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牛嶠 |
《巻四13更漏子三首其三》 南浦情,紅粉淚,爭柰兩人深意。低翠黛,卷征衣,馬嘶霜葉飛。招手別,寸腸結,還是去年時節。書托鴈,夢歸家,覺來江月斜。 |
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毛文錫 |
《巻五12 更漏子 一首》 春夜闌,春恨切,花外子規啼月。人不見,夢難憑,紅紗一點燈。偏怨別,是芳節,庭中丁香千結。宵霧散,曉霞輝,梁間雙鷰飛。 |
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顧夐 |
《巻七37 更漏子 一首》 舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。 |
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孫光憲 |
《巻八22更漏子二首其一》 聽寒更,聞遠鴈,半夜蕭娘深院。扃繡戶,下珠簾,滿庭噴玉蟾。人語靜,香閨冷,紅幕半垂清影。雲雨態,蕙蘭心,此情江海深。 |
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孫光憲 |
《巻八23更漏子二首其二》 今夜期,來日別,相對秖堪愁絕。隈粉面,撚瑤簪,無言淚滿襟。銀箭落,霜華薄,牆外曉雞咿喔。聽付囑,惡情悰,斷腸西復東。 |
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毛熙震 |
《巻九43更漏子二首其一》 秋色清,河影澹,深戶燭寒光暗。綃幌碧,錦衾紅,博山香炷融。更漏咽,蛩鳴切,滿院霜華如雪。新月上,薄雲收,映簾懸玉鉤。 |
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毛熙震 |
《巻九44更漏子二首其二》 煙月寒,秋夜靜,漏轉金壺初永。羅幕下,繡屏空,燈花結碎紅。人悄悄,愁無了,思夢不成難曉。長憶得,與郎期,竊香私語時。 |
更漏子一首
(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。
(更漏子一首)
舊には歡娛,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。
濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。
簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。
歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。
『更漏子一首』 現代語訳と訳註
(本文)
更漏子
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
(下し文)
(更漏子一首)
舊には歡娛,新しきは悵望,擁鼻 含嚬して 樓上る。
濃柳 翠にし,晚霞 微かにす,江鷗 翼に接して飛ぶ。
簾 半ば捲き,屏 斜めに掩う,遠岫 參差 眼迷う。
歌 耳に滿ち,酒 罇に盈つ,前 不要論に非らず。
(現代語訳)
(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。
又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。
この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。
(訳注)
更漏子
(寵愛を失って、何もすることはなく、以前愉しい思いをしているころは、何にもいらない、何の助けもいらないと思っていたのに、今、夜を過ごすのに歌とお酒の助けがいると詠う。)
〇更漏子という題で、花間集には温庭筠、韋莊、牛嶠、毛文錫、孫光憲、毛熙震などの作が収録されている。逢瀬は時間を気にして過ごしたが、今は眠れず夜を過ごすというのが大方のストーリーである。
○更漏 ①古代用滴漏方法計時的器具,即漏壺:以更漏計時器。 ②夜晚:夜残更漏|更漏時分。夜間憑漏刻傳更, 故稱。
『花間集』には顧夐の作が一首収められている。双調四十六字、前段二十三字六句二仄韻二平韻、後段二十三字六句三仄韻二平韻で、3❸❻3③⑤/❸❸❻3③⑤の詞形をとる。
更漏子
舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
●○△ ○●△ ●●○○○●
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舊歡娛,新悵望,擁鼻含嚬樓上。
以前の夜を過ごすのはこんなにも楽しいものかと思っていたが、今はこんなにも儚く、悔しく妷らいものかとおもう。行場もなく楼上に上ると涙と鼻水でぬれてしまう。
〇歡娛 よろこび楽しむこと。 「美人西施を洒掃(せいそう)の妾(しよう)たらしめ,一日の歓娯に備ふべし
〇悵望 心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。
〇擁鼻 かなしくて涙と鼻水がこぼれたのを拭く。
〇含嚬 悔しさをかみしめ、口をゆがめる
濃柳翠,晚霞微,江鷗接翼飛。
又、春が来て柳は緑に繁り、夕暮れになれば靄が漂ってくる、大江に遊ぶカモメは飛び上がり翅を接している。
〇この三句、聯は春が過ぎ、夏が過ぎてゆく季節の変わりを述べる。
簾半捲,屏斜掩,遠岫參差迷眼。
半分簾をかかげてみたり、壁の屏風を出してみたり、それでも遠くの山の峯、山並みを眺め山の長城を臨んでみたり、ただ目をあちこちさせる。
〇簾半捲 簾の陰に隠れて遠方を眺める。見ている姿を見られたくないという女心をいう。
〇屏斜掩 屏風は逢瀬の際ベッドのそばにたてて小部屋のようにして使用する。ここは男が来ないから使うことがなく壁に立てかけておくことをいう。
〇岫【くき】1 山の洞穴。2 山の峰。
〇參差① 長短の等しくないさま。そろわないさま。②
入りまじるさま。入り組むさま。
〇迷眼 めをこらすことがなく、おちつかないこと。
歌滿耳,酒盈罇,前非不要論。
この御殿には歌はあちこちから聞こえて來るし、酒は盃に漫漫と注がれ、切らすことはない、以前にはなかったことだし、何にもいらないと思っていたのに。























