温庭筠 菩薩蛮 十四首 index(2)
◆◆◆2012年12月22日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆
Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集
古代中国の結婚感、女性感について述べる三国時代の三曹の一人、曹丕魏文帝の詩
又清河作一首 曹丕(魏文帝) 魏詩<4> 女性詩621 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1701
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Ⅱ.中唐詩・晩唐詩
唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
誰氏子 韓愈 韓退之(韓愈)詩<99-#2>Ⅱ中唐詩534 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1702
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Ⅲ.杜甫詩1000詩集
"●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説するブログ
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、全詩1/3を掲載済。"
”成都紀行(11)” 鹿頭山 杜甫詩1000 <351>#3 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1703 杜甫1500- 525
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Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集
元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩 (12/22)
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Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩
森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。
温庭筠 菩薩蛮 14首index(2) まとめ-2
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謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html
温庭筠 菩薩蛮 14首index(2)
森鴎外『魚玄機』より温庭筠について
温庭筠は大中元年に、三十歳で太原から出て、始て進士の試に応じた。自己の詩文は燭一寸を燃さぬうちに成ったので、隣席のものが呻吟するのを見て、これに手を仮して遣った。その後挙場に入る毎に七八人のために詩文を作る。その中には及第するものがある。ただ温庭筠のみはいつまでも及第しない。
これに反して場外の名は京師に騒いで、大中四年に宰相になった令狐綯も、温庭筠を引見して度々筵席に列せしめた。ある日席上で綯が一の故事を問うた。それは荘子に出ている事であった。温庭筠が直ちに答えたのは好いが、その詞は頗る不謹慎であった。「それは南華に出ております。余り僻書ではございません。相公も爕理の暇には、時々読書をもなさるが宜しゅうございましょう」と云ったのである。
また宣宗が菩薩蛮の詞を愛するので、令狐綯が塡詞して上った。実は温に代作させて口止をして置いたのである。然るに温庭筠は酔ってその事を人に漏した。その上かつて「中書堂内坐将軍をざせしむ」と云ったことがある。令狐綯が無学なのを譏ったのである。
温庭筠の名は遂に宣宗にも聞えた。それはある時宣宗が一句を得て対を挙人中に求めると、温庭筠は宣宗の「金歩揺」に対するに「玉条脱」を以てして、帝に激賞せられたのである。然るに宣宗は微行をする癖があって、温庭筠の名を識ってから間もなく、旗亭で温庭筠に邂逅した。温庭筠は帝の顔を識らぬので、暫く語を交えているうちに傲慢無礼の言をなした。
既にして挙場では、沈詢が知挙になってから、温庭筠を別席に居らせて、隣に空席を置くことになった。詩名はいよいよ高く、帝も宰相もその才を愛しながら、その人を鄙んだ。趙顓【ちょうせん】の妻になっている温庭筠の姉などは、弟のために要路に懇請したが、何の甲斐もなかった。
『菩薩蠻 八』
鳳凰相對盤金縷,牡丹一夜經微雨。
明鏡照新妝,鬓輕雙臉長。
畫樓相望久,欄外垂絲柳。
音信不歸來,社前雙燕回。
鳳凰 相對して金縷を盤す,牡丹 一夜にして微雨に經る。
明鏡 新妝を照らし,鬓輕 雙びて臉 長し。
畫樓 相望久,欄外 絲柳を垂るる。
音信 歸えり來らず,社前 雙燕 回える。
今朝もさびしい朝化粧、鳳凰のむかいあい、金糸をぬいとりが尾のからみ渦巻く紋様がある。昨日一夜の春の小糠雨に、庭の牡丹の花が濡れ潤いうつくしい。(この女も少し前は若くてうつくしさは小雨に潤う牡丹の花であったのだ。)
部屋に日がさしこみ、鏡にうつすお化粧したてのすがたに日に照らされる、さびしさにおとろえたせいか、頬もうすくなり、そして鬢にかかる雲形の髪も薄くなり、二つの頬はやつれて精彩がなくなっている。
飾られた高楼にのぼって、今日もまた久しくあの人の帰りをまちわびる。欄干のかなたには、しだれ柳が芽をふき、風にふかれてゆれている。
音も沙汰もかえってこないで、今年もまた社日にさきだって交尾する仲むつまじそうな燕がでたりはいったりしている。

牡丹花謝莺聲歇,綠楊滿院中庭月。
相憶夢難成,背窗燈半明。
翠鈿金壓臉,寂寞香閨掩。
人遠淚闌幹,燕飛春又殘。
牡丹 花謝【お】ち 鶯聲歇【や】む,綠楊【りょくよう】院に滿ち 中庭の月。
相憶【そうおく】の夢 成し難く,窗を背に燈び明りを半ばにする。
翠鈿【すいてん】の金 臉【ほほ】に壓【くず】す,寂寞【せきばく】として香 閨に掩う。
人遠く淚 闌幹【らんかん】し,燕飛 春 又殘る。
晩春になり牡丹の花がちりはじめ、うぐいすのこえもなきやむ初夏のころとなった。青柳のみどりはもはや中庭一面に繁り、月かげがさしている。
女の部屋のうちにあって、帰ってこない夫をせめて夢の中にでも逢いたいと思うのである、その夢をむすぶ高窓に背を向けて「知らない!」といってみる、燃やし続ける蝋燭の芯は半ばの明かりとなっている。
その顔に化粧を施し、頬に金の翠の鈿をつけている、いかにもうつくしいお化粧ではあるがひとりの閨は寂寞としたうれいにしずんでいる。
かこわれた部屋はひっそりとして人かげもなく、涙を流し続けて頬には、くっきりと涙の後がついている。また今年も燕が飛び交う、そして春はまたその名残を残していくだけなのだ。

滿宮明月梨花白,故人萬裏關山隔。
金雁一雙飛,淚痕沾繡衣。
小園芳草綠,家住越溪曲。
楊柳色依依,燕歸君不歸。
宮に滿つ月明り 梨花の白,故人 萬裏 關山の隔。
金雁 一雙飛,淚痕 繡衣に沾う。
小園 芳草の綠,家住 越溪の曲。
楊柳 色 依依なり,燕歸 君 歸らず。
後宮の庭に月は明るく照らし、梨の花がまっ白に咲き満ちている。あのお方はこないのはまるでとおいとおい国境の山のかなたに行ってしまったままかえってこないことと同じである。
季節は廻って金星が流れて空の上をつがいの雁が渡ってゆく、宮女の部屋にお渡りがなくなって随分経つながれる涙は刺繍の衣服をうるおしている。
又季節が廻り、宮殿の中庭の園にはもう春の草がみどりに萌えでている。そう、わたしもむかし越の国の美人西施が住んでいた若耶渓の「詞曲」のように出会ったのです。
わたしはまだまだ楊柳色のようの若々しくそしてなまめかしい体なのです。そしてまた燕は愛の巢に帰ってきます。愛する君は若い宮女に行っていて私の所に帰ってくれないのです。

南園滿地堆輕絮,愁聞一霎清明雨。
雨後卻斜陽,杏花零落香。
無言勻睡臉,枕上屏山掩。
時節欲黃昏,無聊獨倚門。
南園は地に滿つ輕絮堆るを,愁 清明の雨一霎するを聞く。
雨後 卻て斜陽なり,杏花 零落して香る。
言無くて睡臉を勻し,枕上に屏山掩う。
時節 黃昏にならんと欲す,無聊 獨り門に倚る。
いつのまにかことしも春の盛りを過ぎて行く、南園には初夏の兆しが、地面いっぱいに雪のように柳絮の花がつもる。愁いの気持ちで、ふりしきりる清明の小雨の音をきいている。
雨がふりすぎたあとには、傾いた日差しが照りかえして、杏の花が一面に散り落ち、良いにおいをあたりにただよわせる。
日暮れになり、寝所に入ろうとして、一言も言わないで、寝覚めのための顔、頬にお化粧をつくろう。枕の上には屏風のように女の体がおおっている。
今年の春も過ぎてしまう。時も季節も、私も黄昏になる。ただひとりでわびしく門にもたれて、あの方が私の所にかえってくることを待ちわびるのである。

雨晴夜台玲珑日,萬枝香袅紅絲拂。
閑夢憶金堂,滿庭萱草長。
繡簾垂箓簌,眉黛遠山綠。
春水渡溪橋,憑欄魂欲消。
雨晴れ夜合 玲瓏の日,萬枝 香裊【こうじょう】 紅絲拂う。
閑夢は金堂を憶う,庭に滿つ萱草長し。
繡簾 箓簌【ろくそく】を垂し,眉黛【びたい】遠山の綠。
春水 溪橋を渡り,欄に憑【もた】れて魂消さんと欲す。
雨が晴れあがり、潤ったねむの花にうららかな日の光がさしこむ。庭中の枝という枝にいっぱいにさいている紅い糸の匂い袋のようなうつくしい花が、ゆらゆらとゆれうごく。
寂しくしずかな夢だけしかなく、あの人と過ごした奇麗な座敷のことを憶いだすだけしかないのです。かなしいのは庭にいっぱい「忘れの花」が生えているのです。
刺繍をした簾には美しい総が垂れ下っている。そのすだれをかかげて、遠い山々をながめるとみどりのまゆずみを掃いたかのようにうすくかすんで、この体を持て余したまま、季節は夏の装いになってくる。
そしてまた、谷川にかかる橋の下を春の雪解け水がながれてゆく。欄干にもたれて、あの人を思うこころをきしてしまいたいとおもうのです。

『菩薩蠻』十三
竹風輕動庭除冷,珠簾月上玲瓏影。
山枕隱濃妝,綠檀金鳳凰。
兩蛾愁黛淺,故國吳宮遠。
春恨正關情,畫樓殘點聲。
竹風 輕動して 庭除の冷,珠簾 月上りて瓏影するも玲なり。
山枕は濃妝を隱し,綠檀には金の鳳凰あり。
兩蛾は愁いて黛淺し,故國 吳宮の遠。
春恨 正に關情し,畫樓 點聲を殘す。
初夏のさわやかな風が竹の林を抜けて庭先から、軽やかに簾を動かして房に付いている風鈴がすきとおったように美しく鳴りつめたく響く。玉のすだれに月がさしのぼってあかるくすみわたった影をおとす。
閨に横向きで寝枕する女は今宵も待ち侘びて宵の濃い化粧のままある。綠壇でつられた枕には金の鳳風の紋様が彫描されている。
二つの眉はさびしそうにまゆずみがうすれている。むかし呉宮に送られた西施は、はるかにへだたった故国をなつかしくおもった。(今、ひとり待ち侘びる女は西施と同じ思いなのだ。)。
廻り廻って春は男女の交わりが始まるものであるのに待ち侘びる春の恨みはほんとに愛情に関連するものだ。夜明けが近くなったのか、飾られた高楼のうえで時をつげる太鼓の音の名残のようにがとぎれとぎれにきこえてくる。
水精簾裏頗黎枕,暖香惹夢鴛鴦錦。
江上柳如煙,雁飛殘月天。
藕絲秋色淺,人勝參差剪。
雙鬂隔香紅,玉钗頭上風。
水精の簾の裏 頗黎【はり】の枕,香を暖め夢に惹れ鴛鴦【えんおう】の錦。
江上 柳如の煙,雁飛 月天に殘る。
藕絲【ぐうし】秋色淺く,人勝【じんしょう】參差【さんさ】の剪。
雙鬂【そうびん】香紅を隔ち,玉钗【ぎょくさ】頭上の風。
もう晩秋になろうというのに水晶のすだれの内側に、あの人ための玻璃の枕を用意している、あたたかくする香を焚いて、夢にしか現れない鴛鴦の錦のふすまに横になり、あの人のことを思う。
春になり大江のほとりには、煙と見まごうばかりに柳絮が飛ぶ、雁が有明けの月が残る空をわたってゆく。
おんなは、秋には藕絲のうすいた秋の色の衣服をきていて、人日には髪かざりの人勝をふそろいに飾ってまっていた。
左右の鬢にはうつくしい花のかんざしをへだて挿している。玉のかんざしは風に吹かれてゆらゆらゆれている。























