毛熙震 定西番
蒼翠濃陰滿院,鶯對語,蝶交飛,戲薔薇。
斜日倚欄風好,餘香出繡衣。未得玉郎消息,幾時歸。
(辺境の守りの舞台を指揮して出征した夫を愁いて詠ったもの)
あのお方を送りだした後の奥座敷の前庭に、青々としたみどり色の樹木の葉が茂って、濃い木陰を中庭いっぱいにしている。ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。 ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。そして、チョウチョ二匹が交叉して、ひらひら飛んでいて、バラの花にたわむれる。太陽が西に傾くと、心地よい風が吹いてくると窓辺に寄り添い、西の空を眺めながら、欄干に寄ってたつ。風でひるがえる刺繍が施された袂から、残り香が漂う。いまだ、愛しい彼の人からの便りたよりは得ていない。いつ、女性の許へ帰ってくるのだろうか。
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《花間集》411巻十04 |
訴衷情五首其五 |
全詩訳注解説-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ-7549 |
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(改訂版Ver.2.1) |
13 魏承班 |
前蜀の詞人 |
930年前後に在世 |
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花間集 教坊曲 《定西番》 七首 |
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溫庭筠 |
巻一27定西番三首其一漢使昔年離別。攀弱柳,折寒梅,上高臺。千里玉關春雪,鴈來人不來。羌笛一聲愁絕,月徘徊。 |
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溫庭筠 |
巻一28定西番三首其二海鷰欲飛調羽。萱草綠,杏花紅,隔簾櫳。雙鬢翠霞金縷,一枝春豔濃。樓上月明三五,鏁窗中。 |
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溫庭筠 |
巻一29定西番三首其三細雨曉鶯春晚。人似玉,柳如眉,正相思。羅幕翠簾初捲,鏡中花一枝。腸斷塞門消息,鴈來稀。 |
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牛嶠 |
巻四23定西番紫塞月明千里,金甲冷,戍樓寒,夢長安。鄉思望中天闊,漏殘星亦殘。畫角數聲嗚咽,雪漫漫。 |
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孫光憲 |
巻八29定西番二首 其一鷄祿山前游騎,邊草白,朔天明,馬蹄輕。鵲面弓離短韔,彎來月欲成。一隻鳴髇雲外,曉鴻驚。 |
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孫光憲 |
巻八30定西番二首 其二帝子枕前秋夜,霜幄冷,月華明,正三更。何處戍樓寒笛,夢殘聞一聲。遙想漢關萬里,淚縱橫。 |
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毛熙震 |
《巻十04定西番》 蒼翠濃陰滿院,鶯對語,蝶交飛,戲薔薇。斜日倚欄風好,餘香出繡衣。未得玉郎消息,幾時歸。 |
『花問集』には教坊曲『定西番』が七首、その内の毛熙震作が一首収められている。既に溫庭筠と牛嶠、孫光憲については掲載済みである。
毛熙震
定西番
(辺境の守りの舞台を指揮して出征した夫を愁いて詠ったもの)
蒼翠濃陰滿院,鶯對語,蝶交飛,戲薔薇。
あのお方を送りだした後の奥座敷の前庭に、青々としたみどり色の樹木の葉が茂って、濃い木陰を中庭いっぱいにしている。ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。 ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。そして、チョウチョ二匹が交叉して、ひらひら飛んでいて、バラの花にたわむれる。
斜日倚欄風好,餘香出繡衣。
太陽が西に傾くと、心地よい風が吹いてくると窓辺に寄り添い、西の空を眺めながら、欄干に寄ってたつ。風でひるがえる刺繍が施された袂から、残り香が漂う。
未得玉郎消息,幾時歸。
いまだ、愛しい彼の人からの便りたよりは得ていない。いつ、女性の許へ帰ってくるのだろうか。
(定西番)
蒼翠 滿院に 濃陰たり,鶯 對して語り,蝶 交り飛びて,薔薇に 戲る。
斜日 風好く 欄に倚る,餘香 綉衣を出づ。
未だ 玉郞の消息を得ざる,幾れの時にか 歸らん。
『定西番』 現代語訳と訳註
(本文)
定西番
蒼翠濃陰滿院,鶯對語,蝶交飛,戲薔薇。
斜日倚欄風好,餘香出繡衣。
未得玉郎消息,幾時歸。
(下し文)
(定西番)
蒼翠 滿院に 濃陰たり,鶯 對して語り,蝶 交り飛びて,薔薇に 戲る。
斜日 風好く 欄に倚る,餘香 綉衣を出づ。
未だ 玉郞の消息を得ざる,幾れの時にか 歸らん。
(現代語訳)
(辺境の守りの舞台を指揮して出征した夫を愁いて詠ったもの)
あのお方を送りだした後の奥座敷の前庭に、青々としたみどり色の樹木の葉が茂って、濃い木陰を中庭いっぱいにしている。ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。 ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。そして、チョウチョ二匹が交叉して、ひらひら飛んでいて、バラの花にたわむれる。
太陽が西に傾くと、心地よい風が吹いてくると窓辺に寄り添い、西の空を眺めながら、欄干に寄ってたつ。風でひるがえる刺繍が施された袂から、残り香が漂う。
いまだ、愛しい彼の人からの便りたよりは得ていない。いつ、女性の許へ帰ってくるのだろうか。
(訳注)
定西番
(辺境の守りの舞台を指揮して出征した夫を愁いて詠ったもの)
1 辺墓の防備に当たる高貴なもの正妻なのか、側室なのかは不明だが、心配しながら暮らすのを題材としている。士の内容からは、辺塞詩に出てくる、徴兵によって義務的に西域の守りに出たものとは異なる。司令官クラスの妻の事であろう。
2 構成 双調三十五字、前段十五字四句二平韻、後段二十字四句二平韻で、63③③/65⑥③の詞形をとる。
蒼翠濃陰滿院 鶯對語 蝶交飛 戲薔薇
斜日倚欄風好 餘香出繡衣
未得玉郎消息 幾時歸
△●○○●△
○●● ●○○
△△○
○●△○△●
○○●●△
●●●○○●
△○○
蒼翠濃陰滿院,鶯對語,蝶交飛,戲薔薇。
あのお方を送りだした後の奥座敷の前庭に、青々としたみどり色の樹木の葉が茂って、濃い木陰を中庭いっぱいにしている。ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。 ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。そして、チョウチョ二匹が交叉して、ひらひら飛んでいて、バラの花にたわむれる。
蒼翠濃陰滿院:
あのお方を送りだした後の奥座敷の前庭に、青々としたみどり色の樹木の葉が茂って、濃い木陰を中庭いっぱいにしている。
3 蒼翠:あおみどり色。ここでは、樹木の緑色の葉が茂っている意で使われている。
4 濃陰:濃い木陰を作っている。緑蔭。
5 滿院:庭いっぱいに。中庭一面に。
鶯對語
ここには今、ウグイスが、つがいでさえずり合っている。
6 鶯:ウグイス。
7 對語:二羽のつがいが、さえずり合っている。
蝶交飛
そして、チョウチョが二匹が交叉して、ひらひら飛んでいて、
8 蝶:チョウチョ。
9 交飛:二匹が交叉して、ひらひら飛んでいる。
戲薔薇
チョウチョがバラの花にたわむれる。
10戲:たわむれる。
11薔薇:バラの花。
斜日倚欄風好,餘香出繡衣。
太陽が西に傾くと、心地よい風が吹いてくると窓辺に寄り添い、西の空を眺めながら、欄干に寄ってたつ。風でひるがえる刺繍が施された袂から、残り香が漂う。
斜日倚欄風好
太陽が西に傾くと、心地よい風が吹いてくると窓辺に寄り添い、西の空を眺めながら、欄干に寄ってたつ。
12斜日:夕日。夕方。
13倚欄:手すりに寄り添う。欄干に寄り添う。
14風好:吹いてくる風が心地よい。
餘香出綉衣
残り香が刺繍が施された衣服から漂う。
15餘香:残り香。染みついていたのこり香がにおうこと。
16綉衣:刺繍が施された衣服。繍衣。
未得玉郎消息,幾時歸。
いまだ、愛しい彼の人からの便りたよりは得ていない。いつ、女性の許へ帰ってくるのだろうか。
未得玉郞消息
いまだ、愛しい彼の人からの便りたよりは得ていない。
17未得:まだ、得ていない。
18玉郞:美男子であり、詩人であって名声がある。 ○郎について参考を添付した。したがって、、女の知らないうちに帰っても、他の女のもとに行っているのではないかと不安な気持ちを連想させるものである。
19消息:たより。
幾時歸
いつ、女性の許へ帰ってくるのだろうか。
20幾時:いつ。
21歸:ここでは、女性の許へ帰ってくる。
参考添付
○劉郎 別れ去る愛しい男。仙桃を味わった浦島太郎のような人物である劉晨=劉郎である夢心地の状態にある男、何年も訪れてくれなくなっているのでこのようにいう。12年もたっていることと、全く景色が変わって、ここにいる女を含めみんなが全く変わっていたというものだ。 劉禹錫『再遊玄都觀』「百畝庭中半是苔,桃花淨盡菜花開。種桃道士今何歸,前度劉郞今又來。」
○阮郎 別れ去って久しく帰らぬ愛しい男。後漢の劉展、阮肇は天台山に薬草を採りに入り、道に迷って仙女に出合い、しばらくともに暮らした。しかし家のことが思い起こされ、帰ってみると、既に数世が過ぎ、見知った人は誰もいなかった。そこで再び山に尋ね入ったが、仙女を探し当てられなかったと言う。以来、阮郎、劉部は、別れ去る男や別れ去って久しく帰らぬ愛しい男を指すようになった。
○檀郎/安仁/潘郎 晋の潘岳のあざな。彼は美男子であり、詩人であったが、妻の死にあい「悼亡」の詩三首を作った。後世、妻の死をなげいた模擬作が多く作られた。潘岳の幼名が檀奴だったので、「檀郎」は夫や恋い慕う男を意味する。・潘岳:安仁。滎陽(けいよう)中牟(河南省)の人。陸機と並ぶ美文の文学の大家で,錦を敷きのべたような絢爛(けんらん)たる趣をたたえられた。ことに人の死を悼む哀傷の詩文を得意とし,亡妻への尽きぬ思いをうたった〈悼亡詩(とうぼうし)〉3首はよく知られる。絶世の美男として,また権門の間を巧みに泳ぎまわる軽薄才子として,とかく話題にこと欠かなかった。八王の乱の渦中で悲劇的な刑死を遂げた。和凝『天仙子二首』其二「洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。天仙子二首 其二 和學士凝(和凝【わぎょう】)二十首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」情けの強い男を「潘郎」といい、劉郞、阮郎、檀郎、安仁など色町の女が男をそう呼んだ。



















