玉臺新詠 全十巻 訳注解説

漢文委員会kanbuniinkai紀頌之   唐五代詞詩・花間集・玉臺新詠 中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。 5年以上のブログ連載。(魚玄機・薛濤・花間集)完掲載 現在《玉臺新詠》完全版連載中 予定(文選【詩篇】文選【賦篇 楚辞 詩經 ・・・・)

其二

中国の韻文学には、古くは周代の詩があり、漢魏六朝には古詩と楽府かあり、唐代になって古詩に対して新しい近体の律詩、絶句がおこった。楽府がおとろえ新しく勃興したのが詞である。詞ははじめ、学詞ともよばれ、楽曲の歌詞をさしていうものであるが、それが流行するとともに、唐詩などと相ならんで、一つの韻文学として成立したのである。
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温庭筠の詞詩を約60首程度掲載の後、魚玄機50首程度連載し,薛濤約百首、韋莊五十首
森鴎外小説 『魚玄機』 彼女の詩を冷静に、客観的に分析 過去の女性蔑視の見方を排除して解釈 訳註解説
現在、『花間集』全詩500首、全首連載が終了した。いま、500首全首、見直し、改訂版Ver.2.1として、根本的に語訳、注釈をやり直して掲載しています。出来るだけ(改訂版Ver.2.1)と記している詩を読まれることを薦めます。
現在 玉臺新詠 訳注解説連載中
   玉臺新詠 概要 目録・目次 http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/list1.html

20-529《女冠子二首,其二》十巻 李珣Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-712-20-(529) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5107

李珣《女冠子二首,其二》十巻 (これだけ綺麗な冠女にも別れていったいとしい男がいたと詠う)春が訪れても、この祠のある山は夜になれば静けさにおおわれる、それに伴って愁淋は神仙の住むとされる名山勝境に時々する声によってもたらせられる

 
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20-529《女冠子二首,其二》十巻 李珣Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-712-20-(529)  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5107

 

 

女冠子二首

 

女冠子二首其一

(若者同士で祠に来て女冠子と一夜を過そうとするが、自分はその気になれず、夜半過ぎからは、一人庭を開会し次こそは蓬莱山を目指そうと思うと詠う。)

星高月午,丹桂青松深處。

星空が晴わたり、夜半の月も高く昇っている。この祠に紅い木犀よ様な美女と青々とした松樹のような若者が奥深い所に一夜を共にする。

醮壇開,金磬敲清露,珠幢立翠苔。

祠の神を祭る祭壇をひらき、金きり音、清らかな露の滴り落ちる音、珠のとばり、祠の垂れ絹、辺りには大樹が立ち青々とした苔が敷き詰められている。

步虛聲縹緲,想像思徘徊。

自分一人、他のもののようにはできず、その中をむなしく歩き、はるか遠い先に声を聴く、頭ではいろんなことを想像し、ただ考えながら彷徨い歩くのである。

曉天歸去路,指蓬萊。

やがて朝が来て暁の空が晴れてその帰り道の向うには、自分は今度こそ、神仙の蓬莱山を目指そうと思うのである。

(女冠子二首 其の一)

星高く月午なり,丹桂 青松 深き處。

醮壇開き,金磬 清露を敲き,珠幢 翠苔に立つ。

步 虛しく 聲 縹緲たり,想像 思うて徘徊す。

曉天 歸去の路,蓬萊を指す。

 

女冠子二首其二

(これだけ綺麗な冠女にも別れていったいとしい男がいたと詠う)

春山夜靜,愁聞洞天疎磬。

春が訪れても、この祠のある山は夜になれば静けさにおおわれる、それに伴って愁淋は神仙の住むとされる名山勝境に時々する声によってもたらせられる

玉堂虛,細霧垂珠珮,輕煙曳翠裾。

かがやくほど飾られた奥の講堂には誰もいない。外には霧雨が降り、佩び玉のように簾が垂れていて、軽やかにお香の煙がただよい冠女は緑の裾の着物をひっぱって歩いてくる。

對花情脉脉,望月步徐徐。

こんな花のような美人に情感のこもったまなざしで見るだけであり、月の様な美女をずっと見るとしずしずと歩いている。

劉阮今何處?來書。

聞いてくるには、別れて去っていった愛しいあのお方は、今、何処にいるのでしょう、手紙も今は堪えてしまったと。

(女冠子二首其の二)

春山 夜靜かなり,愁いは洞天疎磬を聞く。

玉堂虛し,細霧 珠珮を垂れ,輕煙 翠裾を曳く。

花に對して 情 脉脉たり,月に望んで 步 徐徐たる。

劉阮 今 何處? 來書をつ。

 

宮島(10)
 

『女冠子二首其二』 現代語訳と訳註解説

(本文)

女冠子二首其二

春山夜靜,愁聞洞天疎磬。

玉堂虛,細霧垂珠珮,輕煙曳翠裾。

對花情脉脉,望月步徐徐。

劉阮今何處?來書。

bijo02 

(下し文)

(女冠子二首其の二)

春山 夜靜かなり,愁いは洞天疎磬を聞く。

玉堂虛し,細霧 珠珮を垂れ,輕煙 翠裾を曳く。

花に對して 情 脉脉たり,月に望んで 步 徐徐たる。

劉阮 今 何處? 來書をつ。

 

(現代語訳)
(これだけ綺麗な冠女にも別れていったいとしい男がいたと詠う)

春が訪れても、この祠のある山は夜になれば静けさにおおわれる、それに伴って愁淋は神仙の住むとされる名山勝境に時々する声によってもたらせられる

かがやくほど飾られた奥の講堂には誰もいない。外には霧雨が降り、佩び玉のように簾が垂れていて、軽やかにお香の煙がただよい冠女は緑の裾の着物をひっぱって歩いてくる。

こんな花のような美人に情感のこもったまなざしで見るだけであり、月の様な美女をずっと見るとしずしずと歩いている。

聞いてくるには、別れて去っていった愛しいあのお方は、今、何処にいるのでしょう、手紙も今は堪えてしまったと。

 

(訳注)

女冠子二首其二

 

唐の教坊の曲名。女冠は女黄冠”、女道士、道姑。唐代において女道士は皆、黄冠を戴いた。『花間集』 には李珣の作が二首収められている。双調四十一字、前段二十四字五句韻二平韻三仄韻、後段十八宇四句二平韻二仄韻で、❻③❺⑤/❺⑤❺③の詞形をとる。

春山夜,愁聞洞天疎

玉堂,細霧垂珠,輕煙曳翠

對花情脉,望月步徐

劉阮今何

○○●●  ○△△○△●

●○○  ●△○○● △○●●○

●○○●● △●●○○

○△○△● ●△○

 

春山夜靜,愁聞洞天疎磬。

春が訪れても、この祠のある山は夜になれば静けさにおおわれる、それに伴って愁淋は神仙の住むとされる名山勝境に時々する声によってもたらせられる

洞天 中国の道教で神仙の住むとされる名山勝境のこと。洞天は,壱中天と同じく,一つの限られた空間の中に全宇宙が存在するという考えから生まれたもののようであるが,同時に,それは地下の霊界とつながりをもった聖なる場としての〈洞窟〉に対する原始的な信仰にも基づくものであろう。この考えが唐代になって整理され,十大洞天,三十六小洞天,七十二福地の名が定められた。

 

玉堂虛,細霧垂珠珮,輕煙曳翠裾。

かがやくほど飾られた奥の講堂には誰もいない。外には霧雨が降り、佩び玉のように簾が垂れていて、軽やかにお香の煙がただよい冠女は緑の裾の着物をひっぱって歩いてくる。

虛 1 備えのないこと。油断。すき。2 事実でないこと。うそ。いつわり。3 中身・実体がないこと。むなしいこと。うつろ。から。

珠佩 真珠のおびもの。礼服の装飾で、玉を貫いた糸を数本つないで腰から靴の先まで垂れ、歩くとき鳴るようにしたもの。宮中に入るものすべてのものがつけていた。階級によって音が違った。

李白《宮中行樂詞、其八》

水綠南薰殿,花紅北闕樓。 鶯歌聞太液,鳳吹繞瀛洲。

素女鳴珠珮,天人弄綵球。 今朝風日好,宜入未央游。

(宮中行楽詞 其の八)

水は綠なり 南薫殿、花は紅なり 北闕楼。

鶯歌 太液に聞こえ、鳳吹 瀛洲を繞る。

素女は 珠佩を鳴らし、天人は 彩毬を弄す。

今朝 風日好し、宜しく未央に入りて遊ぶべし。

宮中行樂詞八首其八 李白 :Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白149

裾 1 衣服の下方の縁(ふち)。また、その部分。「着物の―をからげる」2 物の端。下端や末端の部分。「垂れ幕の―」3 頭髪の、襟首(えりくび)に近い、末端の部分。「―を刈り上げる」4 山などの麓。

 

對花情脉脉,望月步徐徐。

こんな花のような美人に情感のこもったまなざしで見るだけであり、月の様な美女をずっと見るとしずしずと歩いている。

脉脉(脈々)①みえないさま。②目の表情で気持ちを伝えようとする,情感のこもったまなざしで見ている.③連続して絶えないさま。

・脉/脈【みゃく】1 動物の体内で血液が流通する管。血管。2 脈拍。3 《医師が患者の脈拍をみて病状を診断するところから》先の望み。見込み。

温庭筠

 

夢江南二首 其一

千萬恨,恨極在天涯。

山月不知心裏事,水風空落眼前花,搖曳碧雲斜。

夢江南二首 其二

梳洗罷,獨倚望江樓。

過盡千帆皆不是,斜暉脉脉水悠悠,腸斷白蘋洲。

過盡千帆皆不是,斜暉脈脈水悠悠。
何もかも通り過ぎてしまったこと、千の帆かけ船が行き交うけれどあの人がのっている船ではないのです。そうしているといつの間にか太陽が西に傾いている、みゃくみゃくと思いつきないこの気持ちを、せつなくやるせない思いを知らないというように川の流れは悠悠と流れて行くのです。

『夢江南 之二』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-45-14-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1796


劉阮今何處?來書

聞いてくるには、別れて去っていった愛しいあのお方は、今、何処にいるのでしょう、手紙も今は堪えてしまったと。

劉阮 劉郎、阮郎 ○劉郎 別れ去る愛しい男。仙桃を味わった浦島太郎のような人物である劉晨=劉郎である夢心地の状態にある男、何年も訪れてくれなくなっているのでこのようにいう。12年もたっていることと、全く景色が変わって、ここにいる女を含めみんなが全く変わっていたというものだ。 劉禹錫『再遊玄都觀』「百畝庭中半是苔,桃花淨盡菜花開。種桃道士今何歸,前度劉郞今又來。」○阮郎 別れ去って久しく帰らぬ愛しい男。後漢の劉展、阮肇は天台山に薬草を採りに入り、道に迷って仙女に出合い、しばらくともに暮らした。しかし家のことが思い起こされ、帰ってみると、既に数世が過ぎ、見知った人は誰もいなかった。そこで再び山に尋ね入ったが、仙女を探し当てられなかったと言う。以来、阮郎、劉部は、別れ去る男や別れ去って久しく帰らぬ愛しい男を指すようになった。・檀郎/安仁/潘郎 晋の潘岳のあざな。彼は美男子であり、詩人であったが、妻の死にあい「悼亡」の詩三首を作った。後世、妻の死をなげいた模擬作が多く作られた。潘岳の幼名が檀奴だったので、「檀郎」は夫や恋い慕う男を意味する。・潘岳:安仁。滎陽(けいよう)中牟(河南省)の人。陸機と並ぶ美文の文学の大家で,錦を敷きのべたような絢爛(けんらん)たる趣をたたえられた。ことに人の死を悼む哀傷の詩文を得意とし,亡妻への尽きぬ思いをうたった〈悼亡詩(とうぼうし)〉3首はよく知られる。絶世の美男として,また権門の間を巧みに泳ぎまわる軽薄才子として,とかく話題にこと欠かなかった。八王の乱の渦中で悲劇的な刑死を遂げた。和凝『天仙子二首』其二「洞口春紅飛蔌蔌,仙子含愁眉黛綠。阮郎何事不歸來,懶燒金,慵篆玉。流水桃花空斷續。天仙子二首 其二  和學士凝(和凝【わぎょう】)二十首ⅩⅫ唐五代詞・「花間集」情けの強い男を「潘郎」といい、劉郞、阮郎、檀郎、安仁など色町の女が男をそう呼んだ。

顧夐『甘州子五首其三』

曾如劉阮訪仙蹤,深洞客,此時逢。

綺筵散後繡衾同,款曲見韶容。

山枕上,長是怯晨鐘。

(甘州子五首 其の三)

曾て劉阮の如く仙を訪ねた蹤あり,洞を深くし客あり,此の時逢う。

綺筵 散後 繡衾 同じゅうし,曲を款めて韶を見て容く。

山 枕の上,是を長くして 晨鐘に怯る。

13-12《甘州子五首其三》顧太尉(顧夐【こけい】)55首 Ⅻ唐五代詞・『花間集』全詩訳注解説Gs-465-13-(12) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3872

 

13-8《 河傳三首 其二 》顧太尉敻(顧夐【こけい】)五十五首Ⅻ唐五代詞・『花間集」Gs-460-13-(8) 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3847

《河傳三首其二》こんなことが人の世の中のことが天上の出来事であるならまだしも、遊び事であり、鑑賞されることには耐えられない。富貴の者は酔いつぶれた眼でいる。屏風や障子や幔幕で仕切られていることを疑いたくもなる。それは池の端の堤の所での事である。これほどのうららかな春の光の中での出来事は人間として惜しむべきことであり、花が咲けば咲くほどに思いは切なく下腹が痛くなるほどせつなく、何もかも全てのこと、ことごとくのものが狂っているとしか思えない。


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花間集  河傳 詞十八首
        
 1溫助教庭筠河傳三首 温庭筠66首 花間集1・2巻  
 3韋相莊河傳三首 韋莊47首 花間集二巻  
 6張舍人泌河傳二首 張泌27首 花間集四巻  
 11顧太尉河傳三首 顧夐56首 花間集6・7巻  
 12孫少監光憲河傳四首 孫光憲47首 花間集7・8巻  
 15閻處士選河傳一首 閻選8首 花間集9巻  
 18李秀才珣河傳二首 李珣39首 花間集10巻  
        
  

 

河傳三首 其一

(水辺の娼屋の女が帰ってこない男を思って詠う。)(河を題材にした悲しい三つの逸話 其の一)

鷰颺,晴景。

燕が舞い上がる季節が訪れ、春の盛りの景色、花が輝き鮮やかな景色になる。

屏暖,鴛鴦交頸。

小さな高い窓に日が射し、閨も暖かくなり、中庭内も暖かくなってくる、そこには鴛鴦が頭を交わして喜んでいる。

菱花掩卻翠鬟欹,慵整。海棠簾外影。

菱の花の簪が覆っている緑の黒髪を書き上げ耳をそばだて、物憂げに整えると、海棠の花が簾越しに、日が射し影を落とす。

繡幃香斷金鸂鶒,無消息,心事空相憶。

刺繍のとばりにお香が断たれ、金糸の鸂鶒が残される。それからは音沙汰亡くなってしまった、心に思い浮かべることでもその時の事が思い出され、空しく思い出すだけなのだ。

東風,春正濃。

春を知らせる風が吹き始めても、春の色が萌えからまさに緑濃くなっていっても消息は分からない。

愁紅,淚痕衣上重。

その葉が赤く色づいても愁いの思いは続く、涙の後は頬に残り、流れた涙は上衣に重なって残っている。

(河傳三首 其の一)

鷰颺【まいあが】り,景を晴らす。

は、屏は、暖かに,鴛鴦 頸を交わす。

菱花 卻を掩い翠鬟 欹【そばだ】つ,整を慵く。海棠 簾外の影。

繡幃 香斷し 金の鸂鶒【けいちょく】たり,消息無ければ,心事 空しく相い憶う。

東風あるも,春 正に濃ゆ。

紅に愁い,淚痕 衣の上 重る。

 

河傳三首 其二

(水際近くの娼屋の美しい女も富貴の者の愛妾でしかなく、やがては見向きもされない憐れなものであると詠う)

曲檻,春晚。

折れ曲がり奥まったところの水際の高楼に続く欄干に晩春の夕闇が迫っている。

碧流紋細,綠楊絲軟,露花,鮮杏,

翠に澄み切った緩やかな流れに波紋が細やかに広がり、緑に繁るしだれ柳の枝は柔らかに揺れている。花は露をためていて、杏の花が入り鮮やかに咲き誇る。
枝繁鶯囀,野蕪似剪。

枝は茂り鶯は囀る。野の蕪はきれいに成長して切りそろえた様に頭を並べる。

直是人間到天上,堪遊賞,

こんなことが人の世の中のことが天上の出来事であるならまだしも、遊び事であり、鑑賞されることには耐えられない。

醉眼疑屏障,對池塘,

富貴の者は酔いつぶれた眼でいる。屏風や障子や幔幕で仕切られていることを疑いたくもなる。それは池の端の堤の所での事である。

惜韶光,斷腸為花須盡狂。

これほどのうららかな春の光の中での出来事は人間として惜しむべきことであり、花が咲けば咲くほどに思いは切なく下腹が痛くなるほどせつなく、何もかも全てのこと、ことごとくのものが狂っているとしか思えない。

 

(河傳三首 其の二)

曲の檻,春の晚に。

碧の流れ 紋細やかに,綠の楊 絲軟らかに,露の花,鮮やかな杏に,

枝繁り 鶯囀く,野の蕪 剪に似る。

直ちに是れ人間 天上に到り,遊賞に堪える,

醉眼 屏障【びょうしょう】を疑い,池塘に對す,

韶光を惜み,花の為に斷腸し須らく盡く狂う。

 

其三

棹舉,舟去,

波光渺渺,不知何處,

岸花汀草共依依,雨微,鷓鴣相逐飛。

天涯離恨江聲咽,啼猿切,此意向誰

倚蘭橈,無憀。

魂消,小爐香欲焦。

 

 

『河傳三首』 現代語訳と訳註

(本文)

河傳三首 其二

曲檻,春晚。

碧流紋細,綠楊絲軟,露花,鮮杏,

枝繁鶯囀,野蕪似剪。

直是人間到天上,堪遊賞,

醉眼疑屏障,對池塘,

惜韶光,斷腸為花須盡狂。

 

(下し文)

(其の二)

曲の檻,春の晚に。

碧の流れ 紋細やかに,綠の楊 絲軟らかに,露の花,鮮やかな杏に,

枝繁り 鶯囀く,野の蕪 剪に似る。

直ちに是れ人間 天上に到り,遊賞に堪える,

醉眼 屏障【びょうしょう】を疑い,池塘に對す,

韶光を惜み,花の為に斷腸し須らく盡く狂う。

 

(現代語訳)

(水際近くの娼屋の美しい女も富貴の者の愛妾でしかなく、やがては見向きもされない憐れなものであると詠う)

折れ曲がり奥まったところの水際の高楼に続く欄干に晩春の夕闇が迫っている。

翠に澄み切った緩やかな流れに波紋が細やかに広がり、緑に繁るしだれ柳の枝は柔らかに揺れている。花は露をためていて、杏の花が入り鮮やかに咲き誇る。

枝は茂り鶯は囀る。野の蕪はきれいに成長して切りそろえた様に頭を並べる。

こんなことが人の世の中のことが天上の出来事であるならまだしも、遊び事であり、鑑賞されることには耐えられない。

富貴の者は酔いつぶれた眼でいる。屏風や障子や幔幕で仕切られていることを疑いたくもなる。それは池の端の堤の所での事である。

これほどのうららかな春の光の中での出来事は人間として惜しむべきことであり、花が咲けば咲くほどに思いは切なく下腹が痛くなるほどせつなく、何もかも全てのこと、ことごとくのものが狂っているとしか思えない。

 

roudai112
 

(訳注)

河傳三首

『花間集』には顧夐の作が三首収められている。双調五十一字、前段二十五字六句五仄韻、後段二十六字六句五仄韻で、❹❻❷❺❼❸❺❷❺の詞形をとる。

美女画555
 

其二

(水際近くの娼屋の美しい女も富貴の者の愛妾でしかなく、やがては見向きもされない憐れなものであると詠う)

 

 

曲檻,春晚。

折れ曲がり奥まったところの水際の高楼に続く欄干に晩春の夕闇が迫っている。

 

碧流紋細,綠楊絲軟,露花,鮮杏,

翠に澄み切った緩やかな流れに波紋が細やかに広がり、緑に繁るしだれ柳の枝は柔らかに揺れている。花は露をためていて、杏の花が入り鮮やかに咲き誇る。

○詩題の『河傳』の水際の高楼の盛春から晩春にかけての景色を述べる。この事によって妓女の盛りを過ぎることを連想させる。

 

枝繁鶯囀,野蕪似剪。

枝は茂り鶯は囀る。野の蕪はきれいに成長して切りそろえた様に頭を並べる。

○此の二句は富貴の男が幾人の女を侍らせていること、春の宴、行楽において美女を並べたことをいう。富貴の者が美人を集めて愛妾にして行く。それをあっせん商売にしているものがいることがうかがえる。

 

直是人間到天上,堪遊賞,

こんなことが人の世の中のことが天上の出来事であるならまだしも、遊び事であり、鑑賞されることには耐えられない。

 

醉眼疑屏障,對池塘,

富貴の者は酔いつぶれた眼でいる。屏風や障子や幔幕で仕切られていることを疑いたくもなる。それは池の端の堤の所での事である。

 

惜韶光,斷腸為花須盡狂。

これほどのうららかな春の光の中での出来事は人間として惜しむべきことであり、花が咲けば咲くほどに思いは切なく下腹が痛くなるほどせつなく、何もかも全てのこと、ことごとくのものが狂っているとしか思えない。

○韶光 うららかな春の光。また、のどかな春景色。

腸斷 セックスに満たされぬ思いを言う場合に断腸という語になる。心に思うことは別の語。

温庭筠『酒泉子 (一)』

羅帶惹香,猶系別時紅豆。

淚痕新,金縷舊,斷離腸。

一雙嬌燕語雕梁,還是去年時節。

綠陰濃,芳草歇,柳花狂。

『酒泉子』四首(一)温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-21-3-#1 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1700

李商隠『落花』

高閣客竟去、小園花亂飛。

参差連曲陌、迢遞送斜暉。

腸斷未忍掃、眼穿仍欲稀。

芳心向春盡、所得是沾衣。

高閣 客 竟に去る、小園 花 亂飛す。

参差(しんし)として 曲陌に連なり、迢遞として斜暉を送る。

腸斷れて未だ掃うに忍ばず、眼穿てば 仍 稀ならんと欲す。

芳心 春盡くるに向かい、得る所は 是れ 衣を沾すのみ。

落花 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-92
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