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温庭筠 菩薩蠻 二
夜來皓月才當午,重簾悄悄無人語。
あの人が来るのをまちわびて、眠られぬままにすごしていると、あかるくさえわたった月が、ちょうど中空にかかっている。幾重にも垂れるすだれの内は、ひっそりとしずまりかえり人声もいっさいしない。
深處麝煙長,臥時留薄妝。
おくふかい後宮部屋のなかには、麝香の香煙がながくしずかにただよっている。臥所に入るときには、うす化粧の香りがあとにひろがりのこる。
當年還自惜,往事那堪憶。
かつては若いころはすぎ去ってゆく時を惜しむように愛し合う月日をすごしたものなのだ。今ひと年取ってしまうと以前のように愛してくれない、どうしてこんなせつない思いにたえることができようか。
花露月明殘,錦衾知曉寒。
花の甘露はおち、月はおちかかるように女の盛りを過ぎたというのか、今日も一人待つ、にしきの薄絹の掛布に、あかつきのそぞろ寒さをおぼえる。
夜來 皓月【こうげつ】才【はじめ】て午に當る,簾を重ねうは悄悄として人語るを無し。
處を深くするは麝煙長く,臥せし時 薄妝を留む。
年に當るは還りて自ら惜む,往事 那んぞ憶うを堪んや。
花露 月明殘り,錦衾 曉寒を知る。

『菩薩蠻』(夜來皓月才當午) 現代語訳と訳註
(本文) 菩薩蠻 二
夜來皓月才當午,重簾悄悄無人語。
深處麝煙長,臥時留薄妝。
當年還自惜,往事那堪憶。
花露月明殘,錦衾知曉寒。
(下し文)
夜來 皓月【こうげつ】才【はじめ】て午に當る,簾を重ねうは悄悄として人語るを無し。
處を深くする麝煙【じゃえん】長く,臥せし時 薄妝【はくしょう】を留む。
年に當るは還りて自ら惜みしを,往事 那んぞ憶うを堪んや。
花露 月の明り殘【あま】り,錦の衾【ふすま】 曉寒【ぎょうかん】を知る。
(現代語訳)
あの人が来るのをまちわびて、眠られぬままにすごしていると、あかるくさえわたった月が、ちょうど中空にかかっている。幾重にも垂れるすだれの内は、ひっそりとしずまりかえり人声もいっさいしない。
おくふかい後宮部屋のなかには、麝香の香煙がながくしずかにただよっている。臥所に入るときには、うす化粧の香りがあとにひろがりのこる。
かつては若いころはすぎ去ってゆく時を惜しむように愛し合う月日をすごしたものなのだ。今ひと年取ってしまうと以前のように愛してくれない、どうしてこんなせつない思いにたえることができようか。
花の甘露はおち、月はおちかかるように女の盛りを過ぎたというのか、今日も一人待つ、にしきの薄絹の掛布に、あかつきのそぞろ寒さをおぼえる。
(訳注) 菩薩蠻 二
夜來皓月才當午,重簾悄悄無人語。
あの人が来るのをまちわびて、眠られぬままにすごしていると、あかるくさえわたった月が、ちょうど中空にかかっている。幾重にも垂れるすだれの内は、ひっそりとしずまりかえり人声もいっさいしない。
・夜来胎月 夜中にでていたまっしろな月。来は語助詞。夜来は「夜来風雨声・花落知多少」のように昨夜からの時間的経過をもったことば。
・才 いまちょうど。
・皓月才當午 あかるくさえわたった月がちょうど天の中心に来たこと。
・重簾 幾重にも垂れるすだれの内。
・悄悄 ひっそりとさびしいさま。ひっそりとしずまりかえること。
深處麝煙長,臥時留薄妝。
おくふかい後宮部屋のなかには、麝香の香煙がながくしずかにただよっている。臥所に入るときには、うす化粧の香りがあとにひろがりのこる。
・麝煙 爵香のけぶり。麝の腹部の靡番線にある香嚢から取った香料で、芳香はきわめて強い。
當年還自惜,往事那堪憶。
かつては若いころはすぎ去ってゆく時を惜しむように愛し合う月日をすごしたものなのだ。今ひと年取ってしまうと以前のように愛してくれない、どうしてこんなせつない思いにたえることができようか。
・当年 若いころはすぎ去ってゆく時を惜しむように愛し合う月日をすごしたことをいう。
・那堪 このような思いにどうして堪えられようか。今夜も若い女の人のところにいっている、ということ。
花露月明殘,錦衾知曉寒。
花の甘露はおち、月はおちかかるように女の盛りを過ぎたというのか、今日も一人待つ、にしきの薄絹の掛布に、あかつきのそぞろ寒さをおぼえる。
・錦衾 にしきのふすま。身体をおおう夜具、薄絹のかけ布。
・曉寒 一人寝のさむさ。薄いかけ布でも二人で水根をしておれば寒くはなかった。
| 2 | <参考>漢詩大系24 中田勇次郎 下し文 | |
| 夜來皓月才當午, | 夜をこめて月はいましも中空にあり | |
| 重簾悄悄無人語。 | たれこめてひそひそと人聾もなし | |
| 深處麝煙長, | 靡香のくゆるねやおくふかく | |
| 臥時留薄妝。 | ふしどに入るときあととめしうすきよそはひ | |
| 當年還自惜, | そのかみはなはひとりして惜しみしを | |
| 往事那堪憶。 | すぎにしことのいかでかはおもひあへなむ | |
| 花露月明殘, | 花は露にそぼち月かたぶきしありあけの | |
| 錦衾知曉寒。 | 錦のふすまにおばゆるあかつきの寒さ | |
1 温庭筠 おんていいん
(812頃―870以後)本名は岐、字は飛卿、幷州(山西省大原)の人。初唐の宰相温彦博の子孫にあたるといわれる。年少のころから詩をよくしたが、素行がわるく頽廃遊蕩生活に耽り、歌樓妓館のところに出入して、艶麗な歌曲ばかりつくっていた。進士の試験にも落第をつづけ、官途につくこともできなかった。徐商が裏陽(湖北)の地方長官をしていたとき、採用されて巡官となり、ついで徐商が中央の高官(成通のはじめ尚書省に入る)になったので、さらに任用されようとしたが成らなかった。859年頃に詩名によって特に召されて登用され、国子(大学)助教となった。たが、叙任前に微行中の宣宗に無礼があって罷免され、晩年は流落して終わった。そのため、生歿が未詳である。
集に撞蘭集三巻、金墨集十巻、漢南其稿十巻があったという。かれは晩唐の詩人として李商隠と相並び、「温李」として名を知られている。音楽に精しく、鼓琴吹笛などを善くし、当時流行しつつあった詞の作家としても韋荘と相並んで「温韋」の称があった。その詞の大部分は超崇祚の編した花間集に収載されている。洗練された綺麗な辞句をもちいた、桃李の花を見るような艶美な作風は花間集一派の詞人を代表するもので、「深美閎約」と批評されているその印象的なうつくしさにおいてほ花間集中、及ぶものがないといってよく、韋荘の綺麗さとよい対照をなしている。王国維が花間集に収載する六十六首のほか他書に散見するものを合せて輯した金荃詞一巻があり、七十首を伝えている。















