廟の門を閉じて、舟のへさきをめぐらして帰途につく、すると目出度い疾風が帆を送ってくれる。旗や毛羽の飾り旗、から牛の毛の飾り旗や指揮の小旗など、飛びひるがえり日差しを掩ほどの盛んな有様であった。
《南海神廟碑-(12)》韓愈(韓退之) Ⅱ唐宋八大家文読本 巻五 <1028> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4124韓愈詩-272-4-3
(10)四段-1
(10)四段-1
公遂升舟,風雨少弛,
公はそのまま舟に乗ったら、風雨はやや穏やかになった。
棹夫奏功,雲陰解駁,
櫂を漕ぐ人夫たちの努力の結果が奏功し、雲の暗さもまばらとなっていった。
日光穿漏,波伏不興。
日の光が雲をうがち漏れて射しはじめ、静まり伏した波は起こらなかった。
省牲之夕,載暘載陰;
供え物の犠牲を調べ見た夕べは、晴れて明るくなったりまた陰ったりであった。
將事之夜,天地開除,月星明既。
祭事を行ったその夜は、天地は晴れて雲もなく、月や星が明るく数繁く輝いた。
五鼓既作,牽牛正中,
五更を告げる太鼓もすでに鳴りわたり、牽牛星は中天にあった。
公乃盛服執笏,以入即事。
公はそこで立派な服装でしょう笏を手に持ち、そして廟に入って神事に従事した。
公 遂に舟に升り,風雨 少しく弛む,
棹夫 功を奏して,雲陰 駁を解く,
日光 穿ち漏れ,波 伏して興らず。
牲を省みるの夕,載【すなわ】ち暘【て】り載ち陰る;
將事を【おこな】うの夜,天地 開除し,月星 明概なり。
五鼓 既に作【おこ】り,牽牛 正に中す。
公 乃ち盛服して笏【こつ】を執【と】り,以て入りて事に即【つ】く。
(11)四段-2
文武賓屬,俯首聽位,
各執其職。
文武の官、幕賓や属官などは、皆首をたれてかしこみ、その座席にいて命を聴き、担当の職務を取り行った。
牲肥酒香,
樽爵淨潔,
犠牲は肥え、酒は香ばしくそなえ、酒樽や盃は清潔なものである。
降登有數,
神具醉飽。
階段を降り、登るにも一定の数に合致、神はみな十分に酔い飽きるまでである。
海之百靈祕怪,
慌惚畢出,
海の百霊や秘かに棲む寄怪のものも、ぼんやりとまたありありとことごとく現れ出るのである。
蜿蜿蛇蛇,來享飲食。
うねり続いて来て、自ら安んじ、満足して飲食を受けるのであった。
文武 賓屬【ひんぞく】,首を俯して位に聽き,各【おのお】の其の職を執る。
牲 肥え 酒 香しく,樽爵【そんしゃく】淨潔にす,
降登 數有り,神 具に醉飽す。
海の百靈 祕怪にし,慌惚として 畢【ことごと】く出ず,
蜿蜿【えんえん】蛇蛇【いい】として,來って飲食を享す。
(12)四段-3
闔廟鏇艫,祥飆送帆,
廟の門を閉じて、舟のへさきをめぐらして帰途につく、すると目出度い疾風が帆を送ってくれる。
旗纛旄麾,飛颺ㄙ靄,
旗や毛羽の飾り旗、から牛の毛の飾り旗や指揮の小旗など、飛びひるがえり日差しを掩ほどの盛んな有様であった。
饒鼓嘲轟,高管嗷噪,
銅羅や太鼓がさわがしくとどろき、高い笛の音はけたたましくさわぎまわる。
武夫奮掉,工師唱和,
武人は棹を奮って漕ぎ、船頭たちは声を合わせて唱う。
穹龜長魚,踴躍後先,
甲の丸く高い亀や長い魚などが、踊り飛び上がって後先になって送ってくる。
乾端坤倪,軒豁呈露。
天のはて、地のきわみまで見はるかせは、高く広くあらゆる物が姿をあらわし示していた。
祀之之歲,風災熄滅,
南海神を祀った歳は、風の災いが消えてなくなる。
人厭魚蟹,五穀胥熟。
人々は魚や蟹にあきて、五穀は皆熟した。
廟を闔【と】じ艫を鏇【めぐ】らせば,祥飆【しょうひょう】帆を送る,
旗纛【きとう】旄麾【ぼうき】,飛颺【ひよう】ㄙ靄【あんあい】たり,
饒鼓【とうこ】嘲轟【とうこう】,高管嗷噪【きょうそう】,
武夫 掉を奮い,工師唱和す,
穹龜【きゅうき】長魚,踴躍【ようやく】後先す,
乾端【けんたん】坤倪【こんげい】,軒豁【けんかつ】呈露す。
之を祀るの歲,風災 熄滅【そくめつ】す,
人 魚蟹【ぎょかい】に厭【あ】き,五穀 胥【みな】熟す。
(13)四段-4
明年祀歸,又廣廟宮而大之:
治其庭壇,改作東西兩序,
齋庖之房,百用具修。
明年其時,公又固往,不懈益虔,
歲仍大和,耋艾歌詠。
(13)四段-4
明年 祀りて歸り,又 廟宮を廣げて之を大いにす:
其の庭壇を治め,東西の兩序を改作す,
齋庖の房,百用 具に修む。
明年 其の時,公 又た固く往く,懈【おこた】らずして益【ますま】す虔【つつし】めり,
歲 仍って大いに和し,耋艾【てつがい】の歌 詠ず。
『南海神廟碑』 現代語訳と訳註
(本文) (12)四段-3
闔廟鏇艫,祥飆送帆,
旗纛旄麾,飛颺ㄙ靄,
饒鼓嘲轟,高管嗷噪,
武夫奮掉,工師唱和,
穹龜長魚,踴躍後先,
乾端坤倪,軒豁呈露。
祀之之歲,風災熄滅,
人厭魚蟹,五穀胥熟。
(下し文) (12)四段-3
廟を闔【と】じ艫を鏇【めぐ】らせば,祥飆【しょうひょう】帆を送る,
旗纛【きとう】旄麾【ぼうき】,飛颺【ひよう】ㄙ靄【あんあい】たり,
饒鼓【とうこ】嘲轟【とうこう】,高管嗷噪【きょうそう】,
武夫 掉を奮い,工師唱和す,
穹龜【きゅうき】長魚,踴躍【ようやく】後先す,
乾端【けんたん】坤倪【こんげい】,軒豁【けんかつ】呈露す。
之を祀るの歲,風災 熄滅【そくめつ】す,
人 魚蟹【ぎょかい】に厭【あ】き,五穀 胥【みな】熟す。
(現代語訳)
廟の門を閉じて、舟のへさきをめぐらして帰途につく、すると目出度い疾風が帆を送ってくれる。
旗や毛羽の飾り旗、から牛の毛の飾り旗や指揮の小旗など、飛びひるがえり日差しを掩ほどの盛んな有様であった。
銅羅や太鼓がさわがしくとどろき、高い笛の音はけたたましくさわぎまわる。
武人は棹を奮って漕ぎ、船頭たちは声を合わせて唱う。
甲の丸く高い亀や長い魚などが、踊り飛び上がって後先になって送ってくる。
天のはて、地のきわみまで見はるかせは、高く広くあらゆる物が姿をあらわし示していた。
南海神を祀った歳は、風の災いが消えてなくなる。
人々は魚や蟹にあきて、五穀は皆熟した。
(訳注) (12)四段-3
南海神廟碑
広州の南海神廟を修築した事を記した碑文である。これを以て広州の刺史孔公の治績を、神も人も喜んでいることを表彰するということが主意である。韓愈、820年、元和15年 53歳の作である。
闔廟鏇艫,祥飆送帆,
廟の門を閉じて、舟のへさきをめぐらして帰途につく、すると目出度い疾風が帆を送ってくれる。
○闔 閉じる。
○艫 へさき。舟の先。肺の反対。
○祥飆 めでたい疾風。飆は旋風。下から上に吹きあげる突風。祥はしあわせなの意。
旗纛旄麾,飛颺ㄙ靄,
旗や毛羽の飾り旗、から牛の毛の飾り旗や指揮の小旗など、飛びひるがえり日差しを掩ほどの盛んな有様であった。
○纛 毛羽のある旗。
○旄 から牛の毛で飾った旗。
○麾 揮の小旗。
〇ㄙ靄 たなびいて日光を蔽う。
饒鼓嘲轟,高管嗷噪,
銅羅や太鼓がさわがしくとどろき、高い笛の音はけたたましくさわぎまわる。
○饒 銅鑼。
○嘲轟 鳴りとどろく。
○高管 かん高い笛の音。
○嗷噪 さけびさわぐ。
武夫奮掉,工師唱和,
武人は棹を奮って漕ぎ、船頭たちは声を合わせて唱う。
○工師 技術者の長、ここでは船頭。
穹龜長魚,踴躍後先,
甲の丸く高い亀や長い魚などが、踊り飛び上がって後先になって送ってくる。
○穹龜 亀の甲の円く高くなったもの。
○後先 あとになりさきになる。送って行く。
乾端坤倪,軒豁呈露。
天のはて、地のきわみまで見はるかせは、高く広くあらゆる物が姿をあらわし示していた。
○乾端坤倪 乾坤は天地・端も倪もはて極み。天地のきわみ。
○軒豁 高くひらけて見える。
○呈露 さらけ出して見せる。
祀之之歲,風災熄滅,
南海神を祀った歳は、風の災いが消えてなくなる。
○熄滅 消えてなくなる。
人厭魚蟹,五穀胥熟。
人々は魚や蟹にあきて、五穀は皆熟した。
○胥 皆。



















