暫くすると、雲霧の中より、謝自然の姿が現れて、軽やかに空中に舞上って昇天したが、その有様は、飄然として、風に漂う煙のようであったという。昇天した後、広大な世界のはるか遠い先の先までも、その影響についても、理由、接縁などの痕跡は全くなかったのである。
437-#3 《謝自然詩》韓愈(韓退之)ID <1151> Ⅱ韓昌黎集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4739韓愈詩-437-#3
制作年: 794年貞元十年27歲
卷別: 卷三三六 文體: 五言古詩
韓昌黎集 巻一
詩題: 謝自然詩〔果州謝真人上昇在金泉山,貞元十年十一月十二日白晝輕舉,郡守李堅以聞,有詔褒諭。〕
及地點: 南充 (山南西道 果州 南充) 別名:南充縣
金泉山 (山南西道 果州 金泉山)
謝自然詩 #1
(果州の謝仙女が白日天に昇ったのを、郡守李堅が,詔して褒美したことを韓愈がこの詩を寄懐至極のことだと作った)#1
果州南充縣,寒女謝自然。
所は蜀で果州の南充縣という地に謝自然と名乗る一人の貧女がいた。
童騃無所識,但聞有神仙。
言ってもまだ、子供で、一向知識も何もないが、道教を聞きかじって世に神仙と称するありがたいものがあるということを承っていた。
輕生學其術,乃在金泉山。
人並みのものを食わず、自分の生を軽んじて、神仙の術をまなび、はては、金泉山に分け入って、修業をおこなった。
繁華榮慕絕,父母慈愛捐。
こうして、世の中の栄華富貴など念慮を絶ち、父母の慈愛をもすててしまったということだ。
#2
凝心感魑魅,慌惚難具言。
やがて、心を凝らした一念は、魑魅をも感動せしめ、その神變不思議なことは、とても、まじめで詳しく話もできないくらいであった。
一朝坐空室,雲霧生其間。
ある朝から、誰もいない講堂に坐していると、雲霧が忽然とその間に生じる。
如聆笙竽韻,來自冥冥天。
冥冥たる天上よりはものとはなしに、笙竽の微妙なる音楽の韻がきこえてくるようなのである。
白日變幽晦,蕭蕭風景寒。
その内に、一天、にわかに搔き曇り、はくじつのひかりをうしなって、幽晦に変ずると同時に、少々として、風景凄まじく寒く淋しいものとなる。
#3
簷楹暫明滅,五色光屬聯。
一団の黒雲が落ちてきたものと見え、軒端がしばらく明滅していたが、忽ちにして、五色の光がたがいに連なる様にして入って来る。
觀者徒傾駭,躑躅詎敢前。
耀きわたった故に、見るものは、全員が大いに驚いたが、何分恐ろしいので、踟蹰して敢て進まず、かといってどういうわけか、室中に入って真相を見極めることもしないようだ。
須臾自輕舉,飄若風中煙。
暫くすると、雲霧の中より、謝自然の姿が現れて、軽やかに空中に舞上って昇天したが、その有様は、飄然として、風に漂う煙のようであったという。
茫茫八紘大,影響無由緣。
昇天した後、広大な世界のはるか遠い先の先までも、その影響についても、理由、接縁などの痕跡は全くなかったのである。
#4
里胥上其事,郡守驚且歎。
驅車領官吏,甿俗爭相先。
入門無所見,冠履同蛻蟬。
皆云神仙事,灼灼信可傳。
#5
餘聞古夏后,象物知神姦。山林民可入,魍魎莫逢旃。
逶迤不復振,後世恣欺謾。幽明紛雜亂,人鬼更相殘。
#6
秦皇雖篤好,漢武洪其源。自從二主來,此禍竟連連。
木石生怪變,狐狸騁妖患。莫能盡性命,安得更長延。
#7
人生處萬類,知識最為賢。奈何不自信,反欲從物遷。
往者不可悔,孤魂抱深冤。來者猶可誡,余言豈空文。
人生有常理,男女各有倫。
#7
寒衣及飢食,在紡績耕耘。下以保子孫,上以奉君親。
苟異於此道,皆為棄其身。噫乎彼寒女,永托異物群。
感傷遂成詩,昧者宜書紳。
#8
寒衣及飢食,在紡績耕耘。
下以保子孫,上以奉君親。
苟異於此道,皆為棄其身。
噫乎彼寒女,永托異物群。
感傷遂成詩,昧者宜書紳。
謝自然の詩 #1
果州の南充縣,寒女の謝自然。
童騃 識る所無く,但だ神仙有るを聞く。
生を輕んじて其の術を學び,乃ち金泉山に在り。
繁華 榮慕絕え,父母 慈愛 捐【す】つ。
#2
心を凝らして 魑魅を感ぜしめ,慌惚 具【つぶさ】に言い難し。
一朝 空室に坐して,雲霧 其の間に生ず。
笙竽の韻を聆【き】くが如く,冥冥の天より來る。
白日 幽晦に變じ,蕭蕭として風景寒し。
#3
簷楹【えんえい】暫らく明滅し,五色 光 屬聯す。
觀る者 徒らに傾駭,躑躅【てきちょく】して詎んぞ敢て前【すす】まん。
須臾【しゅゆ】にして自ら 輕舉して,飄として 風中の煙の若し。
茫茫として 八紘大に,影響 緣に由し無し。
#4
里胥【りしょ】其の事を上【たてまつ】り,郡守 驚き且つ歎ず。
車を驅って官吏を領し,甿俗【ぼうぞく】爭うて相い先んず。
門に入って見る所無く,冠履【かんく】蛻蟬【ぜいぜん】に同じ。
皆云う 神仙の事,灼灼として 信び傳う可し と。
#5
餘聞く 古しえの夏后,物を象って神姦を知る。
山林 民入る可し,魍魎【ほうりょう】旃【これ】に逢うこと莫れ。
逶迤【いい】として復た振わず,後世 欺謾を恣にする。
幽明 紛として雜亂,人鬼 更【かわるがわ】る相い殘【そこな】う。
#6
秦皇 篤好と雖も,漢武 其の源を洪【おおい】にす。
二主より來【このかた】,此の禍 竟に連連。
木石 怪變を生じ,狐狸 妖患を騁【は】す。
能く性命を盡く莫く,安んぞ更に長延するを得んとする。
#7
人生 萬類を處す,知識を最も賢と為す。
奈何んぞ 自ら信ぜずして,反って物に從って遷らんと欲す。
往者 悔ゆ可からず,孤魂 深冤を抱く。
來者 猶お誡む可し,余の言 豈に空文ならんや。
人生常理有り,男女 各【おのお】の倫有り。
#8
寒衣と飢食と,紡績 耕耘に在り。
下は以って子孫を保ち,上は以て君親を奉ず。
苟しくも此の道に異ならば,皆 其の身を棄つと為す。
噫乎 彼の寒女,永く異物の群に托す。
感傷 遂に詩を成す,昧者は 宜しく紳に書すべし。
『謝自然詩』 現代語訳と訳註
(本文) #3
簷楹暫明滅,五色光屬聯。
觀者徒傾駭,躑躅詎敢前。
須臾自輕舉,飄若風中煙。
茫茫八紘大,影響無由緣。
(下し文) #3
簷楹【えんえい】暫らく明滅し,五色 光 屬聯す。
觀る者 徒らに傾駭,躑躅【てきちょく】して詎んぞ敢て前【すす】まん。
須臾【しゅゆ】にして自ら 輕舉して,飄として 風中の煙の若し。
茫茫として 八紘大に,影響 緣に由し無し。
(現代語訳)
一団の黒雲が落ちてきたものと見え、軒端がしばらく明滅していたが、忽ちにして、五色の光がたがいに連なる様にして入って来る。
耀きわたった故に、見るものは、全員が大いに驚いたが、何分恐ろしいので、踟蹰して敢て進まず、かといってどういうわけか、室中に入って真相を見極めることもしないようだ。
暫くすると、雲霧の中より、謝自然の姿が現れて、軽やかに空中に舞上って昇天したが、その有様は、飄然として、風に漂う煙のようであったという。
昇天した後、広大な世界のはるか遠い先の先までも、その影響についても、理由、接縁などの痕跡は全くなかったのである。
(訳注) #3
謝自然詩
(果州の謝仙女が白日天に昇ったのを、郡守李堅が,詔して褒美したことを韓愈がこの詩を寄懐至極のことだと作った)
〔果州謝真人上昇在金泉山,貞元十年十一月十二日白晝輕舉,郡守李堅以聞,有詔褒諭。〕
(果州の謝真人で上昇し、金泉山に在り,貞元十年十一月十二日、白晝に輕舉す,郡守李堅以聞し,詔を褒諭【ほうゆ】する有り。〕(果州の謝仙女は十四、五で道に修し、室を金泉山に築き在り,貞元十年十一月十二日、白日天に昇る。郡守李堅はこれらを表して聞きつけて,詔して褒美す。と有る〕
◎韓愈は道教を奉じた少女が、白日に昇天したなどと言うのは、無知蒙昧で決してこんなことがあるわけはない。それだけならまだしも郡守が上奏して、天子が詔を賜うという、寄懐至極のことだという。この詩は、韓愈《論佛骨表》の源泉というべきものである。
《論佛骨表》(1)元和十四年韓愈(韓退之) Ⅱ中唐詩 <884> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3404韓愈詩-227-1
簷楹暫明滅,五色光屬聯。
一団の黒雲が落ちてきたものと見え、軒端がしばらく明滅していたが、忽ちにして、五色の光がたがいに連なる様にして入って来る。
簷楹 のきの柱。「簷楹挂星斗、枕席響風水簷楹に星斗挂かり、枕席に風水響く」〔李白・宿清渓主人〕
五色 青(東)・赤(南)・黄(西)・白(天)・黒(北)の五色は『書経』にあり、道教では五色は神の色とする。
觀者徒傾駭,躑躅詎敢前。
耀きわたった故に、見るものは、全員が大いに驚いたが、何分恐ろしいので、踟蹰して敢て進まず、かといってどういうわけか、室中に入って真相を見極めることもしないようだ。
傾駭 全員が大いに驚いた。駭: ① 思いがけないことにあって,落ち着きを失う。びっくりする。 ② 思い知らされて,感心したり、あきれたりする。
躑躅 1 足踏みすること。ためらうこと。2 つつじ。中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみしてもがき、うずくまってしまったと伝えられ、このようになることを躑躅(てきちょく)と言う。
須臾自輕舉,飄若風中煙。
暫くすると、雲霧の中より、謝自然の姿が現れて、軽やかに空中に舞上って昇天したが、その有様は、飄然として、風に漂う煙のようであったという。
須臾 短い時間。しばらくの間。ほんの少しの間。
輕舉 軽やかに空中に舞上って昇天したこと。
茫茫八紘大,影響無由緣。
昇天した後、広大な世界のはるか遠い先の先までも、その影響についても、理由、接縁などの痕跡は全くなかったのである。
茫茫 1 広々としてはるかなさま。2 ぼんやりかすんではっきりしないさま。3 草・髪などが伸びて乱れているさま
八紘 国の八方の果て。国の隅々。八極。











































