悲恋を詠う詩人・李商隠 9 無題(相見時難別亦難) 題をつけられない詩。
誰からも祝福されない、二人の恋を支え応援してくれる人のいない悲恋を詠う。
七言律詩





無題
相見時難別亦難、東風無力百花残。
顔をあわせる機会も容易にもつことのできない間柄、会えば別れが一層つらい。だけど、どんなに別れ難いけど、やはり別れることになる。春の風は力無く、けだるく吹き、どの花すべてが、盛りをすぎてきて、形骸をとどめるだけだ。恋の終末にふさわしい風景なのだろう。
春蚕到死絲方盡、蝋炬成灰涙始乾。
春の蚕が死ぬその時まで細く美しい絹糸を吐き続けるように、私の思いはいつまでも細細と続いている、たらたらと雫を垂れる蝋燭が、燃え尽きてすっかり灰になりきるまで、蝋の涙を流しつづけるように、別れの悲しみはこの身の果てるまで続けてく。
暁鏡但愁雲鬢改、夜吟應覚月光寒。
あなたはどうしているのか? 朝の化粧をしようとして、鏡に姿をうつしながら、雲鬢の黒髪をきちんと整える。夜には、私の贈った詩を吟じながら、月光の寒々とした景色に、秋を感じて悲しむことだろう。
蓬山此去無多路、青鳥殷勤為探看。


蓬莱山の仙人の住む至楽の園は、私のいまいる所から、何ほどの距離もない。別れねばならぬとはいえ、あなたは同じ都の中にいる。恋の使いをするという青い鳥よ。せめて彼女と情を交わしたい、どうか誰にもきづかれず看さだめてきてくれないか。

(無題)
相見る時難く別わかれるも亦難し、東風は力無く百花 残(そこな) う。
春蚕 死に到たりて、糸方に尽き、蝋炬 灰と成り、涙 始めて乾く。
暁鏡に 但 愁 雲鬢を改め、夜に吟ず 応に覚える、月光の寒
蓬山 此より去ること多路無し、青鳥 殷勤 探り看ることう為さん。

海棠花021


『無題』 現代語訳と訳註
(本文)

無題

相見時難別亦難、東風無力百花残。

春蚕到死絲方盡、蝋炬成灰涙始乾。

暁鏡但愁雲鬢改、夜吟應覚月光寒。

蓬山此去無多路、青鳥殷勤為探看。


(下し文)

無題
相見る時難く別わかれるも亦難し、東風は力無く百花 残(そこな) う。
春蚕 死に到たりて、糸方に尽き、蝋炬 灰と成り、涙 始めて乾く。
暁鏡に 但 愁 雲鬢を改め、夜に吟ず 応に覚える、月光の寒
蓬山 此より去ること多路無し、青鳥 殷勤 探り看ることう為さん。


(現代語訳)

祝福されぬ恋の悲しみを歌う。

顔をあわせる機会も容易にもつことのできない間柄、会えば別れが一層つらい。だけど、どんなに別れ難いけど、やはり別れることになる。春の風は力無く、けだるく吹き、どの花すべてが、盛りをすぎてきて、形骸をとどめるだけだ。恋の終末にふさわしい風景なのだろう。

春の蚕が死ぬその時まで細く美しい絹糸を吐き続けるように、私の思いはいつまでも細細と続いている、たらたらと雫を垂れる蝋燭が、燃え尽きてすっかり灰になりきるまで、蝋の涙を流しつづけるように、別れの悲しみはこの身の果てるまで続けてく。

あなたはどうしているのか? 朝の化粧をしようとして、鏡に姿をうつしながら、雲鬢の黒髪をきちんと整える。夜には、私の贈った詩を吟じながら、月光の寒々とした景色に、秋を感じて悲しむことだろう。

蓬莱山の仙人の住む至楽の園は、私のいまいる所から、何ほどの距離もない。別れねばならぬとはいえ、あなたは同じ都の中にいる。恋の使いをするという青い鳥よ。せめて彼女と情を交わしたい、どうか誰にもきづかれず看さだめてきてくれないか。
朱槿花・佛桑華

(訳注)

○無題 題知らずと題して、祝福されぬ恋の悲しみを歌う。

相見時難別亦難、東風無力百花残。
顔をあわせる機会も容易にもつことのできない間柄、会えば別れが一層つらい。だけど、どんなに別れ難いけど、やはり別れることになる。春の風は力無く、けだるく吹き、どの花すべてが、盛りをすぎてきて、形骸をとどめるだけだ。恋の終末にふさわしい風景なのだろう。
東風 春の風。李商隠「無題」颯颯東風細雨來﹐芙蓉塘外有輕雷。参照。李白「早春寄王漢陽」昨夜東風入武昌とつかう。
百花残 残は衰え滅ぼす。そこなう。


春蚕到死絲方盡、蝋炬成灰涙始乾。

春の蚕が死ぬその時まで細く美しい絹糸を吐き続けるように、私の思いはいつまでも細細と続いている、たらたらと雫を垂れる蝋燭が、燃え尽きてすっかり灰になりきるまで、蝋の涙を流しつづけるように、別れの悲しみはこの身の果てるまで続けてく。
春蚕 春の蚕。カイコは4回脱皮しさなぎとなり、絹糸をはき繭を作るが春に孵化して娥となり、産卵して死ぬ。死ぬ間際の時期ととらえる。
絲方盡 方は、その時になってはじめての意味。(絲)は(思)と同音の掛けことばである
○蝋炬
 ろうそくのこと。なお蝋のしずくを涙にたとえ、悶え悲しむ涙、とか、故郷を憶涙を誘うものとして使用する。ここでは、蝋燭の燃えるのは、恋の思い、蝋の立たれたしずくはやるせない恋の涙となる。


暁鏡但愁雲鬢改、夜吟應覚月光寒。
あなたはどうしているのか? 朝の化粧をしようとして、鏡に姿をうつしながら、雲鬢の黒髪をきちんと整える。夜には、私の贈った詩を吟じながら、月光の寒々とした景色に、秋を感じて悲しむことだろう。
暁鏡 昨夜もやるせない思いに眠れぬ夜を過ごして明けた朝、鏡は思いを示す。
雲鬢 美女の黒髪。雲は毛の美しくゆたかなこと。鬢はびんの毛。ぼこぼことして大きな髪型にするほど高貴な女性であった。
 あらためる。きちんとしてあらため整える。


蓬山此去無多路、青鳥殷勤為探看。
蓬莱山の仙人の住む至楽の園は、私のいまいる所から、何ほどの距離もない。別れねばならぬとはいえ、あなたは同じ都の中にいる。恋の使いをするという青い鳥よ。せめて彼女と情を交わしたい、どうか誰にもきづかれず看さだめてきてくれないか。
蓬山 東方はるか海中にある三仙山の一つ蓬莱山(瀛州山、方丈山)。仙人のすまいのこと。
青鳥 仙界とのなかだちをするという青い鳥、恋の使者である。仙女西王母の使いの鳥。杜甫「麗人行」にもある。お誘いの手紙を届けるものを指す。
殷勤 丁寧に、ねんごろに。男女の情交。
探看 探はさぐる、肴は気をつけてみること。


○悲恋を表す言葉。百花残 春蚕 蝋炬 暁鏡 殷勤 
○韻  難、残、乾 寒、看。
蛺蝶02
(無題)
相見る時難く別わかれるも亦難し、東風は力無く百花 残(そこな) う。
春蚕 死に到たりて、糸方に尽き、蝋炬 灰と成り、涙 始めて乾く。
暁鏡に 但 愁 雲鬢を改め、夜に吟ず 応に覚える、月光の寒
蓬山 此より去ること多路無し、青鳥 殷勤 探り看ることう為さん。



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