李商隠 14 碧城(届かぬ思いの詩)

謝靈運index謝靈運詩古詩index漢の無名氏 
孟浩然index孟浩然の詩韓愈詩index韓愈詩集
杜甫詩index杜甫詩 李商隠index李商隠詩
李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 

碧城其 二
對影聞聲己可憐、玉池荷葉正田田。
逢ってはいけないあなただから、その香、声、気配、窓辺の-簾に映る影、その声を聞くだけで、私の五感は、充分、可憐さを感じている。仙界の玉池には、荷の花が咲き、はすの葉が水面田田といっぱいに重なりあって覆い広がっている様子であなたを思う。
不逢粛史休回首、莫見洪崖又拍肩。
古くからの民謡に恋歌の採蓮曲というのがある。今、その池の蓮も、曲歌の通りに茂っている。むかし秦の穆公の娘を娶った粛史のように私以外の者には,恋しいひとよ、頸をめぐらして色目を使ったりしないでくれ。たとえ洪崖の肩叩きといわれる備わった人があらわれても親しく肩に触れてはいけないよ。
紫鳳放嬌銜楚珮、赤鱗狂舞撥湘絃。
紫色の高貴な鳳が私のいとしい人をもてあそんでいる。まるで、逸話の鄭交甫が漢水のほとりで水の精にあい、佩びだまをもらって誓ったが、彼が十数歩も行かぬうちに、精は消え、約束の晶も懐中から消えたという裏切りがあるのだろうか。淵深く住む赤い鱗の魚のように、あなたは、はじかれる琴の音にあわせて、狂おしい愉楽の舞いを舞うのか。
卾君悵望舟中夜、繍被焚香濁自眠。

楚の卾君は歌を唄って讃えてくれる漕手もいなくてびとり、さびしく、逢いたいと望むだけでその夜を過ごした。
私もあなたに近づけず、わが繍衣の袖で身を被って、あなたが愛用した香を焚き、あなたを思いつつ孤独に眠るのである。

逢ってはいけないあなただから、その香、声、気配、窓辺の-簾に映る影、その声を聞くだけで、私の五感は、充分、可憐さを感じている。仙界の玉池には、荷の花が咲き、はすの葉が水面田田といっぱいに重なりあって覆い広がっている様子であなたを思う。
古くからの民謡に恋歌の採蓮曲というのがある。今、その池の蓮も、曲歌の通りに茂っている。むかし秦の穆公の娘を娶った粛史のように私以外の者には,恋しいひとよ、頸をめぐらして色目を使ったりしないでくれ。たとえ洪崖の肩叩きといわれる備わった人があらわれても親しく肩に触れてはいけないよ。
紫色の高貴な鳳が私のいとしい人をもてあそんでいる。まるで、逸話の鄭交甫が漢水のほとりで水の精にあい、佩びだまをもらって誓ったが、彼が十数歩も行かぬうちに、精は消え、約束の晶も懐中から消えたという裏切りがあるのだろうか。淵深く住む赤い鱗の魚のように、あなたは、はじかれる琴の音にあわせて、狂おしい愉楽の舞いを舞うのか。
楚の卾君は歌を唄って讃えてくれる漕手もいなくてびとり、さびしく、逢いたいと望むだけでその夜を過ごした。
私もあなたに近づけず、わが繍衣の袖で身を被って、あなたが愛用した香を焚き、あなたを思いつつ孤独に眠るのである。

(下し文)碧城其の二
影に対し声を開く 己に憐む可し
玉池の荷葉 正に田田たり
粛史に逢わざれば首を回らすを休めよ
洪崖を見て又た肩を拍つこと莫かれ
紫鳳は嬌を故にして楚珮を銜み
赤鱗は狂舞して湘絃を撥く
顎君 悵望す 舟中の夜
繍被 香を焚いて独り自ら眠る

對影聞聲己可憐、玉池荷葉正田田。
逢ってはいけないあなただから、その香、声、気配、窓辺の-簾に映る影、その声を聞くだけで、私の五感は、充分、可憐さを感じている。仙界の玉池には、荷の花が咲き、はすの葉が水面田田といっぱいに重なりあって覆い広がっている様子であなたを思う。
已可憐 己はそれだけでもすでに。可憐は可愛らしい。○玉池 ため池の名として後漢の張衡(78-139)の南都賦に登場するが、ここは仙界の池として用いられている。なお梁の武帝粛衍(464-549)の王金珠歓聞歌に「豔豔たり金楼の女、心は玉池の蓮の如し。」という句がある。○荷葉正田田 荷は蓮 田田は荷の葉のかっこうをいう擬声語。楽府古辞即ち漢代民謡の江南篇に「江南にては蓮を採る可し、蓮の葉は何ゆえかくも田田たる。」と歌われる。正は、まさしくその通りと言う語調。なお、〈蓮〉は(憐)に通ずる隠し言葉である。

不逢粛史休回首、莫見洪崖又拍肩。
古くからの民謡に恋歌の採蓮曲というのがある。今、その池の蓮も、曲歌の通りに茂っている。むかし秦の穆公の娘を娶った粛史のように私以外の者には恋しいひとよ、頸をめぐらして色目を使ったりしないでくれ。たとえ洪崖の肩叩きといわれる備わった人があらわれても親しく肩に触れてはいけないよ。
粛史 漢の劉向の「列仙伝」中の人物。秦の穆公の娘である弄玉のむこ。○洪崖拍肩 洪崖は東晋の葛洪の神仙伝中の人物。衛叔卿と賭博をしたという。東晋の詩人郭璞(277-324)の游仙詩の左に浮丘(仙人の名)の袖をとり、右に洪涯の肩を拍つ。」の句を利用した表現句。

紫鳳放嬌銜楚珮、赤鱗狂舞撥湘絃。
紫色の高貴な鳳が私のいとしい人をもてあそんでいる。まるで、逸話の鄭交甫が漢水のほとりで水の精にあい、佩びだまをもらって誓ったが、彼が十数歩も行かぬうちに、精は消え、約束の晶も懐中から消えたという裏切りがあるのだろうか。淵深く住む赤い鱗の魚のように、あなたは、はじかれる琴の音にあわせて、狂おしい愉楽の舞いを舞うのか。

銜楚珮 漢水の精である二妃が鄭交甫にあって、佩び玉を説いて彼に与えた。漢の韓嬰の「韓詩内伝」佚文に出てくる話を引き合いに出している。交甫は神女と知らず交わり、十歩ばかり行った時、女の姿は見えなくなり、懐にした女の佩び玉もなくなっていたという。銜は鳳がくちばしにくわえることをいう。○赤鱗 仙界の魚。川の淵にすみ赤い鱗をもつという。梁の江淹(444-505)の別れの賦に「駟馬は仰秣を驚かし淵魚は赤燐を䵷ぐ聳ぐ。」とあり、李善注に、「伯牙瑟を鼓すれば淵魚出でて聴き、弧巴琴を鼓すれば六馬仰いで秣う。」という、漢の韓嬰の「韓詩外伝」の言葉をひいている。瓠巴は上古の楚の琴の名手。伯牙は春秋時代の琴の名手。

卾君悵望舟中夜、繍被焚香濁自眠。
楚の卾君は歌を唄って讃えてくれる漕手もいなくてびとり、さびしく、逢いたいと望むだけでその夜を過ごした。
私もあなたに近づけず、わが繍衣の袖で身を被って、あなたが愛用した香を焚き、あなたを思いつつ孤独に眠るのである。

卾君 楚の貴公子の名。舟遊びして越人の漕手が楫を擁して歌うのを聞き、それを抱擁し繍被もて覆ったという故事。牡丹の詩(7/末か8/初頃掲載予定)参照。その越人の歌は、「(前略)山に木有り木に枝有り、心に君を悦ぶも君知らず。」というのだが、この詩で、卾君が孤独を嘆くことの故事。

  芸妓を恋してしまった。いとおしくて狂いそうだが、高貴な人の宴の席に出ていたら、あなたと過ごした時の繍衣を抱き、あなたの好きなお香を焚いて過ごすよりない。
やはり、私にはあなたしかいない。



李白の詩 96首 7/23現在 酒と女 詩連載       杜甫全詩開始 青年期の詩
burogutitl450toshi blog BN