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無題(來是空言去絶蹤)李商隠 19
七言律詩 六朝時代の謝朓、李白、の閨怨の詩を受け継ぎ李商隠風に発展させた詩である。


無題
題をつけない詩。閨怨の詩。
來是空言去絶蹤、月斜楼上五更鐘。
また来てくれるというお約束でした、それが絵空事になるなんて、その上あなたが何処へ行かれたのかもわからない。月は傾き、ひと夜、二階座敷でまっていたら、はや、午前四時(五更)の鐘が鳴ったのです。
夢為遠別啼難喚、書被催成墨未濃。
うたたねの中で、あなたと遠く行ってお別れする夢を見ました。あなたを何度も呼ぶのに届かない、悲しくて声をあげて泣いてしまった。
せめてお手紙を差し上げよう思い、筆をとりましたけれど、墨は充分な濃さにすれなくお使いの出る時刻に焦ってしまった。

蝋照半籠金翡翠、麝薫微度繍芙蓉。
いま、部屋の蝋燭の明りは、半ばにこもり、金をあしらった翳翠羽の飾りに、麝薫の香りほのかにかおり、蓮花模様の褥の上に漂っているだけで蓮華は開けない。
劉郎已恨蓬山遠、更隔蓬山一萬重。

劉郎の喜びというものが、蓬莱山のように遠くて手の到かない気がするとくやんでいたけど、いまのわたしはそれ以上に、距てられている。いまは蓬莱山までの一万里をも重ねたくらい隔てられるている。


題をつけない詩。閨怨の詩

また来てくれるというお約束でした、それが絵空事になるなんて、その上あなたが何処へ行かれたのかもわからない。月は傾き、ひと夜、二階座敷でまっていたら、はや、午前四時(五更)の鐘が鳴ったのです。
うたたねの中で、あなたと遠く行ってお別れする夢を見ました。あなたを何度も呼ぶのに届かない、悲しくて声をあげて泣いてしまった。
せめてお手紙を差し上げよう思い、筆をとりましたけれど、墨は充分な濃さにすれなくお使いの出る時刻に焦ってしまった。
いま、部屋の蝋燭の明りは、半ばにこもり、金をあしらった翳翠羽の飾りに、麝薫の香りほのかにかおり、蓮花模様の褥の上に漂っているだけで蓮華は開けない。
劉郎の喜びというものが、蓬莱山のように遠くて手の到かない気がするとくやんでいたけど、いまのわたしはそれ以上に、距てられている。いまは蓬莱山までの一万里をも重ねたくらい隔てられるている。


(下し文)無題
来るとは是れ空言 去って蹤を絶つ
月は斜めなり 楼上 五更の鐘
夢に遠別を為して啼けども喚び難く
書は成すを催されて墨未だ濃からず
蝋照 半ば籠む 金翡翠
麝薫 微かに度る 繍芙蓉
劉郎は己に恨む 蓬山の遠きを
更に隔つ 蓬山 一万重
 
無題
無題 題をつけない詩。閨怨の詩
空閏、とどかぬ思い、胸の痛み、あのお方はなぜ来ない。やり切れぬ思い、女性の側から恋情を歌ったもの。

來是空言去絶蹤、月斜楼上五更鐘。
また来てくれるというお約束でした、それが絵空事になるなんて、その上あなたが何処へ行かれたのかもわからない。月は傾き、ひと夜、二階座敷でまっていたら、はや、午前四時(五更)の鐘が鳴ったのです。
空言 事実に裏付けされない言葉。空約束。絵空事。〇五更鐘 一夜を五分し、その度に夜番の者が更代(交代)する。五更は午前四時。

夢為遠別啼難喚、書被催成墨未濃。
うたたねの中で、あなたと遠く行ってお別れする夢を見ました。あなたを何度も呼ぶのに届かない、悲しくて声をあげて泣いてしまった。
せめてお手紙を差し上げよう思い、筆をとりましたけれど、墨は充分な濃さにすれなくお使いの出る時刻に焦ってしまった。
 声をあげて悲しみ泣く。梁の蕭綸(未詳―551)の秋胡の婦に代って閨怨する詩に「涙は尽く夢啼の中。」とある。○催成 催は催促されて気がせくこと。被催はせかされること。(夜明けが始業時間、朝廷の官僚も暗いうちから出勤した)したがって書被催成とは、夜が白みかけたら人の往来がある四、夜明けの鐘とともに使者が出発するので、それに間に合わないといけないために、早く手紙を書かかなければと焦っている状態を示す。また梁の劉孝威(496~549)の冬暁と題する詩に「妾が家は洛陽に辺す、慣れ知る暁鐘の声。鐘声猶お未だ尽きず、漢使応に行くべきを報ず。天寒くして硯の水凍る、心は悲しむ書の成らざるに。」寒くて墨がすれない。また、薄墨の言伝は心がないこと別れを意味する。だから、紛らわしくない濃い墨でとどけないといけない。

蝋照半籠金翡翠、麝薫微度繍芙蓉。
いま、部屋の蝋燭の明りは、半ばにこもり、金をあしらった翳翠羽の飾りに、麝薫の香りほのかにかおり、蓮花模様の褥の上に漂っているだけで蓮華は開けない。
金翡翠 蝋燭の光で閨に置く羽の飾り物が金色を散らしたようにみえる。翡翠はカワセミの長い綺麗な羽をいう。この翅は節句の飾りつけにつかわれる。○麝薫 麝薫 麝香鹿:中央アジア産の鹿の類 の腹からとった香料のかおり。○繍芙蓉 ぬいとりの蓮花模様。しとねの模様である。杜甫(712-770)の李監の宅の詩に「屏は開く金孔雀、裕は隠す繍芙蓉。」と。

劉郎已恨蓬山遠、更隔蓬山一萬重。
劉郎の喜びというものが、蓬莱山のように遠くて手の到かない気がするとくやんでいたけど、いまのわたしはそれ以上に、距てられている。いまは蓬莱山までの一万里をも重ねたくらい隔てられるている。
劉郎 中唐の詩人李賀(790-817)の「金銅仙人の漢を辞するの歌」に『茂陵の劉郎秋風の客。』から出る言葉。元来は漢の武帝劉徹を指すがそれにひっかけながらここは待っている人という意味で用いられている。○蓬山 東方海上、三仙山の一つ。〇 わたる。渡にひとしい。香りが漂いわたる。


 道教は老荘の学説と、神仙説と、天師道との三種の要素が混合して成立した宗致である。老荘の教は周知の如く、孔子孟子の儒教に対する反動思想として起ったものである。
これは仁義・礼節によって修身冶平天下を計る儒教への反動として、虚静、人為的な工作を避け天地の常道に則った生活によって、理想社会の出現を期待する。特に神仙説は、より具体的な形、東方の海上に存在する三神山(瀛州、方壷、蓬莱)ならびに西方極遠の地に存在する西王母の国を現在する理想国とした。ここには神仙が居住し、耕さず努めず、気を吸ひ、霞を食べ、仙薬を服し、金丹を煉(ね)って、身を養って不老長生である、闘争もなければ犯法者もない。かかる神仙との交通によって、同じく神仙と化し延寿を計り得るのであって、これ以外には施すべき手段はなく、これ以外の地上の営みはすべて徒為(むだ)であるとなすに至る。これらのことは、詩人の詩に多く取り上げられた。